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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053941
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】生体情報演算システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/145 20060101AFI20220330BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20220330BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
A61B5/145
A61B5/1455
A61B5/02 310A
A61B5/02 310Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160846
(22)【出願日】2020-09-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】520339242
【氏名又は名称】SSST株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】石澤 広明
(72)【発明者】
【氏名】倉沢 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】千野 駿
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA12
4C017AC26
4C017BC11
4C017BC14
4C017BC21
4C017BD10
4C017CC02
4C017FF30
4C038KK01
4C038KK05
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX02
(57)【要約】
【課題】評価精度の向上を図る生体情報演算システムを提供する。
【解決手段】ユーザの血中二酸化炭素の特徴に関する情報を出力する生体情報演算システムであって、取得手段と、データベースと、生成手段とを備える。取得手段は、前記ユーザの脈波に基づく評価データを取得する。データベースは、予め取得された学習用脈波に基づく入力データ、及び前記入力データに紐づく血中二酸化炭素の特徴を含む参照データの一対を学習用データとして、複数の前記学習用データを用いて生成された分類情報が記憶される。生成手段は、前記データベースを参照し、前記評価データに対する前記血中二酸化炭素の特徴を含む評価結果を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの血中二酸化炭素の特徴に関する情報を出力する生体情報演算システムであって、
前記ユーザの脈波に基づく評価データを取得する取得手段と、
予め取得された学習用脈波に基づく入力データ、及び前記入力データに紐づく血中二酸化炭素の特徴を含む参照データの一対を学習用データとして、複数の前記学習用データを用いて生成された分類情報が記憶されたデータベースと、
前記データベースを参照し、前記評価データに対する前記血中二酸化炭素の特徴を含む評価結果を生成する生成手段と、
を備えること
を特徴とする生体情報演算システム。
【請求項2】
前記参照データは、前記学習用脈波を計測した被検者の健康状態を示す状態情報を含み、
前記分類情報は、複数の前記学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルを含み、
前記生成手段は、前記学習済みモデルを参照し、前記評価データに紐づく前記ユーザの健康状態を示す健康状態結果を、前記評価結果に含ませて生成することを含むこと
を特徴とする請求項1記載の生体情報演算システム。
【請求項3】
複数の前記学習用データは、前記被検者の健康時における前記入力データ及び前記参照データのみを含み、
前記健康状態結果は、前記評価データに紐づく前記ユーザの健康状態が、健康、又は健康以外を示すこと
を特徴とする請求項2記載の生体情報演算システム。
【請求項4】
前記分類情報は、前記入力データを説明変数とし、前記参照データを目的変数としたPLS回帰分析を用いて得られた検量モデルであること
を特徴とする請求項1記載の生体情報演算システム。
【請求項5】
前記取得手段は、前記脈波に基づき、前記評価データとは異なる予備評価データを取得することを含み、
前記生成手段は、前記データベースを参照し、前記予備評価データに対する前記ユーザの生体情報を算出することを含むこと
を特徴とする請求項1記載の生体情報演算システム。
【請求項6】
前記データベースには、前記学習用脈波に基づく予備入力データ、及び前記予備入力データに紐づく前記生体情報を含む予備参照データの一対を予備学習用データとして、複数の前記予備学習用データを用いて生成された予備分類情報が記憶され、
前記生成手段は、前記予備分類情報を参照し、前記予備評価データに対する前記生体情報を算出することを含むこと
を特徴とする請求項5記載の生体情報演算システム。
【請求項7】
前記取得手段は、前記脈波に基づき、前記評価データとは異なる予備評価データを取得することを含み、
前記分類情報は、それぞれ異なる前記学習用データを用いて算出された複数の属性別分類情報を含み、
前記生成手段は、
前記予備評価データを参照し、複数の前記属性別分類情報のうち第1分類情報を選択する選択手段と、
前記第1分類情報を参照し、前記評価データに対する前記評価結果を生成する属性別生成手段と
を含むこと
を特徴とする請求項1記載の生体情報演算システム。
【請求項8】
前記取得手段は、
前記脈波に基づく速度脈波に相当するデータを、前記評価データとして取得し、
前記脈波に基づく加速度脈波に相当するデータを、前記予備評価データとして取得すること
を含むこと
を特徴とする請求項7記載の生体情報演算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの血中二酸化炭素の特徴に関する情報を出力する生体情報演算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの血中二酸化炭素分圧(PaCO)等の生体に関する情報を推定する方法として、例えば特許文献1のような方法が提案されている。
【0003】
特許文献1では、互いに異なる光波長を有する少なくとも2つの容積脈波のそれぞれについての平均フレームを構成した後、それら2つの容積脈波についての2つの平均フレーム間のゲインを推定するために用いることが可能であり、そのゲイン値を、血中酸素飽和度を取得するための情報、または血中に存在する他の成分、例えば、ヘモグロビン、二酸化炭素またはその他のようなものを推定するために用いてもよい旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-513876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ユーザの血中二酸化炭素分圧等の値を計測する際、計測値を特定周期でモニタリングすることで、ユーザの健康状態を詳細に把握することができる。しかしながら、計測値をモニタリングする際、計測条件等に起因する計測値のバラつきが大きくなり、評価精度の低下が課題として挙げられている。この点、特許文献1では、2種類の光波長を用いた容積脈波に基づき、血中二酸化炭素の特徴を推定する。このため、光の出射や、センサに入射する角度の僅かな差により、計測値に大きなバラつきが生じる懸念がある。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、評価精度の向上を図る生体情報演算システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る生体情報演算システムは、ユーザの血中二酸化炭素の特徴に関する情報を出力する生体情報演算システムであって、前記ユーザの脈波に基づく評価データを取得する取得手段と、予め取得された学習用脈波に基づく入力データ、及び前記入力データに紐づく血中二酸化炭素の特徴を含む参照データの一対を学習用データとして、複数の前記学習用データを用いて生成された分類情報が記憶されたデータベースと、前記データベースを参照し、前記評価データに対する前記血中二酸化炭素の特徴を含む評価結果を生成する生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る生体情報演算システムは、第1発明において、前記参照データは、前記学習用脈波を計測した被検者の健康状態を示す状態情報を含み、前記分類情報は、複数の前記学習用データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルを含み、前記生成手段は、前記学習済みモデルを参照し、前記評価データに紐づく前記ユーザの健康状態を示す健康状態結果を、前記評価結果に含ませて生成することを含むことを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る生体情報演算システムは、第2発明において、複数の前記学習用データは、前記被検者の健康時における前記入力データ及び前記参照データのみを含み、前記健康状態結果は、前記評価データに紐づく前記ユーザの健康状態が、健康、又は健康以外を示すことを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る生体情報演算システムは、第1発明において、前記分類情報は、前記入力データを説明変数とし、前記参照データを目的変数としたPLS回帰分析を用いて得られた検量モデルであることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る生体情報演算システムは、第1発明において、前記取得手段は、前記脈波に基づき、前記評価データとは異なる予備評価データを取得することを含み、前記生成手段は、前記データベースを参照し、前記予備評価データに対する前記ユーザの生体情報を含む予備評価結果を生成することを含むことを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る生体情報演算システムは、第5発明において、前記データべースには、前記学習用脈波に基づく予備入力データ、及び前記予備入力データに紐づく前記生体情報を含む予備参照データの一対を予備学習用データとして、複数の前記予備学習用データを用いて生成された予備分類情報が記憶され、前記生成手段は、前記予備分類情報を参照し、前記予備評価データに対する前記予備評価結果を生成することを含むことを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る生体情報演算システムは、第1発明において、前記取得手段は、前記脈波に基づき、前記評価データとは異なる予備評価データを取得することを含み、前記分類情報は、それぞれ異なる前記学習用データを用いて算出された複数の属性別分類情報を含み、前記生成手段は、前記予備評価データを参照し、複数の前記属性別分類情報のうち第1分類情報を選択する選択手段と、前記第1分類情報を参照し、前記評価データに対する前記評価結果を生成する属性別生成手段とを含むことを特徴とする。
【0014】
第8発明に係る生体情報演算システムは、第7発明において、前記取得手段は、前記脈波に基づく速度脈波に相当するデータを、前記評価データとして取得し、前記脈波に基づく加速度脈波に相当するデータを、前記予備評価データとして取得することを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明~第8発明によれば、生成手段は、データベースを参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴を含む評価結果を生成する。また、データベースには、複数の学習用データを用いて算出された分類情報が記憶される。このため、評価結果を生成する際、過去に実績のあるデータ(入力データ及び血中二酸化炭素の特徴)を踏まえた定量的な血中二酸化炭素の特徴を含ませることができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0016】
特に、第2発明によれば、生成手段は、学習済みモデルを参照し、評価データに紐づく健康状態結果を、評価結果に含ませて生成することができる。このため、血中二酸化炭素の特徴を判断材料とした健康状態を、ユーザに報知することができ、血中二酸化炭素の特徴のみを報知する場合に比べて、健康状態を容易に把握することができる。これにより、ユーザに対する利便性の向上を図ることが可能となる。
【0017】
特に、第3発明によれば、複数の学習用データは、被検者の健康時における入力データ及び参照データのみを含み、健康状態結果は、評価データに紐づくユーザの健康状態が、健康か否かを示す。このため、不健康時における学習用脈波に基づく入力データ、及び血中二酸化炭素の特徴を準備できない場合においても、ユーザの健康状態を示す結果を生成することができる。これにより、分類情報を生成する際の難易度を高めることなく、ユーザに対する利便性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0018】
特に、第4発明によれば、分類情報は、入力データを説明変数とし、参照データを目的変数としたPLS回帰分析を用いて得られた検量モデルである。このため、機械学習等を用いて分類情報を算出する場合に比べて、学習用データの数を大幅に減らすことができるとともに、検量モデルの更新を容易に実施することができる。これにより、生体情報演算システムの構築及び更新の容易化を図ることが可能となる。
【0019】
特に、第5発明によれば、生成手段は、データベースを参照し、予備評価データに対するユーザの生体情報を含む予備評価結果を生成する。このため、評価結果とは異なる観点により生成された予備評価結果を利用することができ、多角的な評価を実施することができる。これにより、ユーザの要求に応じた適切な評価を実現することが可能となる。
【0020】
特に、第6発明によれば、生成手段は、予備分類情報を参照し、予備評価データに対する予備評価結果を生成することを含む。このため、評価結果とは異なる情報を参照して生成された予備評価結果を利用することができ、より多角的な評価を実施することができる。これにより、ユーザの要求に応じた適切な評価を容易に実現することが可能となる。
【0021】
特に、第7発明によれば、生成手段は、予備評価データを参照し、第1分類情報を選択する選択手段と、第1分類情報を参照し、評価データに対する評価結果を生成する属性別生成手段とを含む。このため、脈波の特徴に対して最適な属性分類情報を選択した上で、評価データに対する評価結果を生成することができる。これにより、評価精度のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0022】
特に、第8発明によれば、取得手段は、脈波に基づく速度脈波に相当するデータを、評価データとして取得する。また、予備取得手段は、脈波に基づく加速度脈波に相当するデータを、予備評価データとして取得する。このため、速度脈波に比べて、脈波の特徴を分類し易い加速度脈波を用いて、属性分類情報を選択することができる。また、加速度脈波に比べて、血中二酸化炭素の特徴を算出し易い速度脈波を用いて、評価結果を生成することができる。これにより、評価精度のさらなる向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1実施形態における生体情報演算システムの一例を示す模式図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、第1実施形態における生体情報演算システムの動作の一例を示す模式図である。
図3図3(a)は、分類情報の一例を示す模式図であり、図3(b)及び図3(c)は、センサデータに対する処理の一例を示す模式図である。
図4図4(a)は、生体情報演算装置の構成の一例を示す模式図であり、図4(b)は、生体情報演算装置の機能の一例を示す模式図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、センサの一例を示す模式図である。
図6図6は、第1実施形態における生体情報演算システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態における生体情報演算システムの動作の一例を示す模式図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、センサデータに対する生体情報を算出する処理の一例を示す模式図である。
図9図9は、第2実施形態における生体情報演算システムの動作の変形例を示す模式図である。
図10図10は、第3実施形態における生体情報演算システムの動作の一例を示す模式図である。
図11図11は、加速度脈波に相当するデータの分類例を示す模式図である。
図12図12は、速度脈波に相当するデータの分類例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態における生体情報演算システムの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
(第1実施形態:生体情報演算システム100)
図1は、第1実施形態における生体情報演算システム100の一例を示す模式図である。
【0026】
生体情報演算システム100は、ユーザの血中二酸化炭素の特徴に関する情報を出力するために用いられる。生体情報演算システム100は、ユーザの脈波に基づく評価データから、血中二酸化炭素の特徴を含む評価結果を生成することができる。なお、「血中二酸化炭素の特徴」とは、ユーザの血液に含まれる二酸化炭素の程度を示す。血中二酸化炭素の特徴として、例えば血中二酸化炭素分圧(PaCO)の値が用いられるほか、血中二酸化炭素の溶存濃度や、血液に含まれる重炭酸・バイカーボネート(HCO )の濃度が用いられてもよく、状況に応じて血液のpHを考慮した値が用いられてもよい。以下、血中二酸化炭素の特徴として、血中二酸化炭素分圧の値が用いられる場合について、主に説明する。
【0027】
生体情報演算システム100は、例えば図1に示すように、生体情報演算装置1を備え、例えばセンサ5及びサーバ4の少なくとも何れかを備えてもよい。生体情報演算装置1は、例えば通信網3を介してセンサ5やサーバ4と接続される。
【0028】
生体情報演算システム100では、例えば図2(a)に示すように、生体情報演算装置1が、センサ5等により生成されたセンサデータを取得する。その後、生体情報演算装置1は、取得したデータに対し、フィルタ処理等の前処理を実施し、評価データを取得する。
【0029】
生体情報演算装置1は、データベースを参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴(例えば血中二酸化炭素分圧の値)を算出する。データベースには、例えば評価データから血中二酸化炭素分圧の値を算出するための分類情報が記憶される。
【0030】
分類情報は、例えば図3(a)に示すように、過去に取得された学習用脈波に基づく入力データ、及び入力データに紐づく血中二酸化炭素分圧の値を含む参照情報の一対を学習データとして、複数の学習データを用いて生成される。このため、学習データとして、健康状態等が明確な被検者等を対象としたデータを用いることができるため、単純に蓄積されたデータを用いた場合に比べ、信頼できる分類情報を生成することが可能となる。また、分類情報を参照することで、経時で算出基準が変動することなく、定量的な血中二酸化炭素分圧の値を算出することができる。
【0031】
生体情報演算装置1は、算出した血中二酸化炭素分圧の値を含む評価結果を生成し、例えばディスプレイ等に出力する。評価結果には、血中二酸化炭素分圧の値のほか、例えば「正常」、「異常」等のような、血中二酸化炭素分圧の値に対する評価を示す情報が含まれてもよい。
【0032】
上記のように、本実施形態における生体情報演算システム100では、データベースを参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴を含む評価結果を生成することができる。このため、評価結果を生成する際、過去に実績のあるデータを踏まえた定量的な血中二酸化炭素の特徴を含ませることができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0033】
なお、生体情報演算システム100では、例えば図2(b)に示すように、センサ5等から評価データを取得してもよい。この場合、センサデータから評価データを取得する前処理は、センサ5等により実施される。
【0034】
<センサデータ>
センサデータは、ユーザの脈波の特徴を示すデータを含み、例えば脈波以外の特徴を示すデータ(ノイズ)を含んでもよい。センサデータは、計測時間に対する振幅を示すデータであり、用途やセンサデータの生成条件に応じたフィルタ処理を実施することで、センサデータから加速度脈波や速度脈波等に相当するデータを取得することができる。
【0035】
センサデータは、ひずみセンサ、ジャイロセンサ、光電容積脈波(PPG)センサ圧力センサ等の公知のセンサにより生成することができる。センサデータは、デジタル信号のほか、例えばアナログ信号でもよい。なお、センサデータを生成する際の計測時間は、例えば脈波の1~20周期分の計測時間であり、センサデータの処理方法や、データ通信方法等の条件に応じて、任意に設定することができる。
【0036】
<評価データ>
評価データは、血中二酸化炭素の特徴を算出するためのデータを示す。評価データは、例えばユーザの脈波に基づく加速度脈波に相当するデータを示し、特定の周期(例えば1周期)に対する振幅を示す。
【0037】
評価データは、センサデータを生体情報演算装置1等によって処理(前処理)を実施することで取得される。例えば図3(b)及び図3(c)に示すように、センサデータに対して複数の処理を実施することで、評価データを得ることができる。各処理の詳細については、後述する。
【0038】
<データベース>
データベースは、主に、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴を算出する際に用いられる。データベースには、1つ以上の分類情報が記憶されるほか、例えば分類情報の生成に用いられた複数の学習データが記憶されてもよい。
【0039】
分類情報は、例えば予め取得された過去の評価データ(入力データ)と、血中二酸化炭素の特徴を含む参照情報との相間関係を示す関数である。分類情報は、例えば入力データを説明変数とし、参照情報を目的変数として、回帰分析等により解析し、その解析結果に基づいて生成される検量モデルを示す。分類情報は、例えば検量モデルを定期的に更新することができるほか、ユーザの性別、年齢、健康状態等の属性情報に応じて生成してもよい。
【0040】
分類情報を生成する際に用いる回帰分析の方法として、例えばPLS(Partial Least Squares)回帰分析、クラス毎に主成分分析を行って主成分モデルを得るSIMCA(Soft Independent Modeling of Class Analogy)法を利用した回帰分析等を用いることができる。
【0041】
分類情報は、例えば複数の学習用データを用いた機械学習により生成された、学習済みモデルを含んでもよい。学習済みモデルは、例えばCNN(Convolutional Neural Network)等のニューラルネットワークモデルを示すほか、SVM(Support vector machine)等を示す。また、機械学習として、例えば深層学習を用いることができる。
【0042】
入力データは、評価データと同種のデータが用いられ、例えば対応する血中二酸化炭素の特徴が明確となっている過去の評価データを示す。入力データは、健康状態等が明確な被検者の脈波(学習用脈波)に基づき取得されたデータを示す。
【0043】
例えば、被検者にセンサ5等を装着させ、学習用脈波の特徴を示すセンサデータ(学習用センサデータ)を生成する。そして、学習用センサデータに対して処理を実施することで、入力データを取得することができる。なお、入力データは、生体情報演算システム100のユーザから取得するほか、例えばユーザとは別のユーザから取得してもよい。即ち、上述した被検者は、生体情報演算システム100のユーザであるほか、ユーザ以外を対象としてもよく、特定又は不特定の多数でもよい。
【0044】
入力データは、例えば評価データを取得する際に利用するセンサ5等の種類、センサデータの生成条件、及びセンサデータに対する処理条件と同様の内容によって取得されることが好ましい。例えば上記3つの内容を統一することで、血中二酸化炭素の特徴を算出する際の精度を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0045】
参照情報は、計測装置を用いて計測された、被検者の血中二酸化炭素の特徴を含む。例えば被検者にセンサ5等を装着させて学習用センサデータを生成する際、被検者の血中二酸化炭素の特徴を計測することで、入力データに紐づく参照情報を取得することができる。この場合、血中二酸化炭素の特徴を計測するタイミングは、学習用センサデータを生成するタイミングと同時が好ましいが、例えば1~10分程度前後するタイミングでもよい。
【0046】
計測装置として例えば経皮血液ガスモニタTCM5(ラジオメーターバーゼル社製)等の公知の装置が用いられるほか、例えば公知の血中二酸化炭素分圧(PaCO)を計測又は推定する装置が用いられてもよい。なお、例えば計測装置として、血液に含まれる重炭酸・バイカーボネート(HCO )の濃度や、血中のpHを計測又は推定できる公知の計測装置が用いられてもよい。また、参照情報は、血中二酸化炭素分圧の値等の血中二酸化炭素の特徴を含むほか、例えば酸素飽和度の値や、大気圧の値等のような、血中二酸化炭素の特徴と関連し得る計測値を含ませてもよい。
【0047】
<生体情報演算装置1>
生体情報演算装置1は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等の電子機器を示し、例えばユーザの操作に基づいて、通信網3を介して通信可能な電子機器を示す。なお、生体情報演算装置1は、センサ5を内蔵してもよい。以下、生体情報演算装置1として、PCが用いられる場合の一例を説明する。
【0048】
図4(a)は、生体情報演算装置1の構成の一例を示す模式図であり、図4(b)は、生体情報演算装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0049】
生体情報演算装置1は、例えば図4(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。各構成101~107は、内部バス110により接続される。
【0050】
CPU101は、生体情報演算装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、データベースや評価データ等の各種情報が記憶される。保存部104として、例えばHDD(Hard Disk Drive)のほか、SSD(Solid State Drive)等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば生体情報演算装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0051】
I/F105は、通信網3を介して、必要に応じてサーバ4やセンサ5等との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部108として、例えばキーボードが用いられ、生体情報演算装置1のユーザ等は、入力部108を介して、各種情報、又は生体情報演算装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、表示部109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。表示部109は、保存部104に保存された各種情報、又は評価結果等を表示する。表示部109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式の場合、入力部108と一体に設けられる。
【0052】
図4(b)は、生体情報演算装置1の機能の一例を示す模式図である。生体情報演算装置1は、取得部11と、生成部12と、出力部13と、記憶部14とを備え、例えば学習部15を備えてもよい。なお、図4(b)に示した各機能は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0053】
<取得部11>
取得部11は、ユーザの脈波に基づく評価データを取得する。取得部11は、例えばセンサ5等からセンサデータを取得したあと、センサデータに対して処理を実施することで、評価データを取得する。
【0054】
取得部11は、例えば図3(b)に示すように、取得したセンサデータに対し、フィルタリング処理(フィルタ処理)を実施する。フィルタ処理では、例えば0.5~5.0Hzのバンドパスフィルタが用いられる。これにより、取得部11は、ユーザの脈波に相当するデータ(脈波データ)を抽出する。脈波データは、例えば速度脈波に相当するデータを示す。なお、脈波データは、例えば加速度脈波又は容積脈波に相当するデータを示してもよく、センサの種類や用途に応じて任意に設定できる。また、バンドパスフィルタのフィルタ範囲は、用途に応じて任意に設定することができる。
【0055】
取得部11は、例えば脈波データに対し、微分処理を実施する。例えば速度脈波に相当する脈波データに対して微分処理が実施される場合、取得部11は、加速度脈波に相当するデータ(微分データ)を取得する。なお、微分処理では、1回微分のほか2回微分が実施されてもよい。
【0056】
取得部11は、例えば微分データに対し、分割処理を実施する。分割処理では、例えば複数周期の加速度脈波に相当する微分データが、1周期毎の加速度脈波に相当するデータ(分割データ)に分割される。このため、取得部11は、例えば1つの微分データに対して微分処理を実施することで、複数の分割データを取得することができる。なお、分割処理では、用途に応じて任意の周期(例えば周期の正数倍)毎に、微分データを分割することができる。
【0057】
例えば分割処理において、分割した各分割データにおけるデータ量が、それぞれ異なる場合がある。この場合、取得部11は、最も少ないデータ量の分割データを特定し、他の分割データに対して、データ量の削減(トリミング)を実施してもよい。これにより、各分割データにおけるデータ量を統一することができ、各分割データにおけるデータの対比が容易になる。
【0058】
上記のほか、例えば分割データの時間軸に対応する値を対象に規格化処理を実施してもよい。規格化処理では、例えば時間軸に対応する値の最小値を0とし、最大値を1とした規格化が実施される。これにより、各分割データにおけるデータの対比が容易になる。
【0059】
取得部11は、例えばデータ量の削減、又は規格化を実施した複数の分割データにおける平均を算出し、分割データとしてもよい。
【0060】
取得部11は、分割データに対し、規格化処理を実施する。規格化処理では、振幅に対応する値を対象に、規格化されたデータ(規格化データ)が生成される。規格化処理では、例えば振幅の最低値を0とし、振幅の最高値を1とした規格化が実施される。取得部11は、例えば規格化データを評価データとして取得する。この場合、評価データとして、ユーザの加速度脈波に相当するデータが得られる。
【0061】
取得部11は、上述した各処理を順次実施するほか、例えば図3(c)に示すように、微分処理を実施しなくてもよい。この場合、評価データとして、ユーザの速度脈波に相当するデータが得られる。
【0062】
また、取得部11は、例えば上述した各処理の一部のみを実施してもよい。この場合、取得部11は、脈波データ、微分データ、分割データ、トリミングされた分割データ、及び時間軸に対応する値を規格化した分割データの何れかを、評価データとして取得してもよく、用途に応じて任意に設定できる。
【0063】
<生成部12>
生成部12は、データベースを参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴(例えば血中二酸化炭素分圧の値)を含む評価結果を生成する。生成部12は、例えばデータベースに記憶された分類情報を参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴を算出する。生成部12は、例えば保存部104等に予め記憶された表示用のフォーマットを用いて、血中二酸化炭素の特徴をユーザが理解できる形式に変換した評価結果を生成する。
【0064】
例えば、分類情報が学習済みモデルを含む場合、生成部12は、学習済みモデルを参照し、評価データに紐づくユーザの健康状態を示す健康状態結果を、評価結果に含ませて生成してもよい。この場合、学習済みモデルを生成する際に用いた参照データは、学習用脈波を計測した被検者の健康状態を示す状態情報を含む。状態情報は、例えば「健康」、「○○の可能性あり」、「過去に□□疾患の経験あり」等のような、被検者の現在及び過去の健康状態を詳細に関する情報を含む。
【0065】
なお、学習済みモデルを生成する際に用いた複数の学習用データは、例えば被検者の健康時における入力データ及び参照データのみを含んでもよい。この場合、評価結果(健康状態結果)は、評価データに紐づくユーザの健康状態が、健康、又は健康以外のみを示してもよい。即ち、評価データが学習用データに類似する場合に、健康状態結果として「健康」を示し、評価データが学習データと乖離する場合に、健康状態結果として「健康以外」を示すように、生成部12が評価結果を生成してもよい。なお、「健康」、「健康以外」を分類する閾値は、任意に設定することができる。
【0066】
<出力部13>
出力部13は、評価結果を出力する。出力部13は、表示部109に評価結果を出力するほか、例えばセンサ5等に評価結果を出力してもよい。
【0067】
<記憶部14>
記憶部14は、保存部104に保存されたデータベース等の各種データを、必要に応じて取出す。記憶部14は、各構成11~13、15により取得又は生成された各種データを、必要に応じて保存部104に保存する。
【0068】
<学習部15>
学習部15は、例えば複数の学習データを用いて、分類情報を生成する。学習部15は、例えば新たな学習データを取得し、既存の分類情報を更新してもよい。
【0069】
<通信網3>
通信網3は、生体情報演算装置1と、サーバ4と、センサ5とを通信回線を介して接続される公知のインターネット網等である。通信網3は、生体情報演算システム100を一定の狭いエリア内で運用する場合には、LAN(Local Area Network)等で構成されてもよい。また、通信網3は、いわゆる光ファイバ通信網で構成されてもよい。また、通信網3は、有線通信網に限定されるものではなく、無線通信網で実現されてもよく、用途に応じて任意に設定できる。
【0070】
サーバ4は、通信網3を介して送られてきた情報が蓄積される。サーバ4は、生体情報演算装置1からの要求に基づき、通信網3を介して蓄積された情報を生体情報演算装置1へと送信する。
【0071】
<センサ5>
センサ5は、センサデータを生成する。センサ5は、例えば図5(a)に示すように、検出部6を備える。センサ5は、検出部6を介してユーザの脈波を検出可能な位置に装着され、例えばリストバンド55に固定される。
【0072】
検出部6は、ユーザの脈波を検出可能な公知の検出装置が用いられる。検出部6として、例えばファイバブラッググレーティング(FBG)センサ等のひずみセンサ、ジャイロセンサ、脈波信号測定のための1つ以上の電極、光電容積脈波(PPG)センサ、圧力センサ、及び光検出モジュールの少なくとも何れかが用いられる。検出部6は、例えば複数配置されてもよい。
【0073】
なお、センサ5は、衣服に埋め込まれてもよい。また、センサ5を装着するユーザは、人間のほか、犬や猫等のペットを対象としてもよく、例えば牛や豚等の家畜、魚等の養殖を対象としてもよい。
【0074】
センサ5は、例えば図5(b)に示すように、取得部50と、通信I/F51と、メモリ52と、命令部53とを備え、各構成がそれぞれ内部バス54で接続される。
【0075】
取得部50は、検出部6を介してユーザの脈波を測定し、センサデータを生成する。取得部50は、例えば生成したセンサデータを、通信I/F51、又はメモリ52へと送信する。
【0076】
通信I/F51は、通信網3を介して、センサデータ等の各種データを生体情報演算装置1やサーバ4に送信する。また、通信I/F51は、通信網3と接続するための回線制御回路や、生体情報演算装置1やサーバ4との間でデータ通信を行うための信号変換回路等が、実装されている。通信I/F51は、内部バス54からの各種命令に変換処理を施して、これを通信網3側へ送出するとともに、通信網3からのデータを受信した場合には、これに所定の変換処理を施して内部バス54へ送信する。
【0077】
メモリ52は、取得部50から送信されたセンサデータ等の各種データを保存する。メモリ52は、例えば通信網3を介して接続される他の末端装置から命令を受けることにより、保存したセンサデータ等の各種データを、通信I/F51へ送信する。
【0078】
命令部53は、センサデータを取得するための操作ボタンやキーボード等を含み、例えばCPU等のプロセッサを含む。命令部53は、センサデータの取得の命令を受け付けた場合に、これを取得部50に通知する。この通知を受けた取得部50は、センサデータを取得する。なお、命令部53は、例えば図3(b)及び図3(c)に示すように、センサデータから評価データを取得するための処理を実施してもよい。
【0079】
ここで、センサデータを取得する一例として、FBGセンサを用いる場合を説明する。
【0080】
FBGセンサは、1本の光ファイバ内に所定間隔をあけて回折格子構造を形成したである。FBGセンサは、例えばセンサ部分の長さが10mm、波長分解能が±0.1pm、波長範囲が1550±0.5nm、ファイバの直径が145μm、コア径10.5μmである特徴を持つ。FBGセンサを上述した検出部6として、ユーザの皮膚に接触させた状態で測定をすることができる。
【0081】
例えば光ファイバに用いる光源として、波長範囲1525~1570nmのASE(Amplified Spontaneous Emission)光源が用いられる。光源からの出射光は、サーキュレータを介してFBGセンサに入射させる。FBGセンサからの反射光は、サーキュレータを介してマッハツェンダー干渉計に導き、マッハツェンダー干渉計からの出力光を、光検出器によって検知する。マッハツェンダー干渉計は、ビームスプリッタにより光路差のある2つの光路に分離し、再びビームスプリッタにより一つに重ね合わせて干渉光を作り出すためのものである。光路差をつけるため、例えば一方の光ファイバの長さを長くしてもよい。コヒーレント光は、光路差に応じて干渉縞が生じるため、干渉縞のパターンを測定することによって、FBGセンサに生じた歪の変化、すなわち脈波を検知することができる。取得部50は、検知された脈波に基づき、センサデータを生成する。これにより、センサデータが取得される。
【0082】
なお、FBGセンサの歪み量を検出して、脈波の波形を検出する光ファイバセンサシステムは、FBGセンサに入射させる光源の他に、広い帯域のASE光源とする手段、サーキュレータ、マッハツェンダー干渉計、ビームスプリッタといった光学系や、光検出器が備える受光センサや、波長シフト量を解析する解析手段を含む。光ファイバセンサシステムは、使用するFBGセンサの特性に応じて光源や帯域光を選択して使用することができ、検波方法等の解析手段についても種々の方法を採用することができる。
【0083】
(実施形態1:生体情報演算システム100の動作)
次に、本実施形態における生体情報演算システム100の動作の一例について説明する。図6は、本実施形態における生体情報演算システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0084】
生体情報演算システム100は、例えば生体情報演算装置1内にインストールされた生体情報演算プログラムを介して実行する。即ち、ユーザは、生体情報演算装置1、又はセンサ5を操作し、生体情報演算装置1にインストールされている生体情報演算プログラムを通じて、センサデータから血中二酸化炭素の特徴(例えば血中二酸化炭素分圧の値)を含む評価結果を取得することができる。
【0085】
生体情報演算システム100の動作は、取得手段S110と、生成手段S120とを備え、例えば出力手段S130を備えてもよい。
【0086】
<取得手段S110>
取得手段S110は、ユーザの脈波に基づく評価データを取得する。例えばセンサ5の取得部50は、検出部6を介してユーザの脈波を測定し、センサデータを生成する。取得部50は、通信I/F51、及び通信網3を介して、センサデータを生体情報演算装置1へ送信する。生体情報演算装置1の取得部11は、センサ5からセンサデータを受信する。
【0087】
取得部11は、例えば図3(b)に示した処理を、センサデータに対して実施し、評価データを取得する。取得部11は、例えば記憶部14を介して、取得した評価データを保存部104に保存する。なお、取得部11がセンサ5からセンサデータを取得する頻度等の条件は、用途に応じて任意に設定することができる。
【0088】
<生成手段S120>
次に、生成手段S120は、データベースを参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴(例えば血中二酸化炭素分圧の値)を含む評価結果を生成する。例えば生成部12は、分類情報を参照し、評価データに対する血中二酸化炭素分圧の値を算出する。生成部12は、算出した値を含む評価結果を生成する。生成部12は、例えば記憶部14を介して、生成した評価結果を保存部104に保存する。なお、血中二酸化炭素分圧の値として、特定の値を示すほか、例えば誤差範囲(例えば「○○±2mmHg」等)が算出されてもよい。
【0089】
生成部12は、例えば計測時間の異なる複数の評価データに対する血中二酸化炭素分圧の値をそれぞれ算出し、各値を評価結果に含ませてもよい。この場合、ユーザ等が血中二酸化炭素分圧の経時変化や平均値等を容易に把握することができる。
【0090】
<出力手段S130>
次に、例えば出力手段S130は、評価結果を出力してもよい。例えば出力部13は、表示部109に評価結果を出力する。
【0091】
これにより、生体情報演算システム100の動作が終了する。なお、各ステップを実施する頻度や順番は、用途に応じて任意に設定できる。
【0092】
本実施形態によれば、生成手段S120は、データベースを参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴を含む評価結果を生成する。また、データベースには、複数の学習用データを用いて算出された分類情報が記憶される。このため、評価結果を生成する際、過去に実績のあるデータ(入力データ及び血中二酸化炭素の特徴)を踏まえた定量的な血中二酸化炭素の特徴を含ませることができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0093】
また、本実施形態によれば、生成手段S120は、学習済みモデルを参照し、評価データに紐づく健康状態結果を、評価結果に含ませて生成することができる。このため、血中二酸化炭素の特徴を判断材料とした健康状態を、ユーザに報知することができ、血中二酸化炭素の特徴のみを報知する場合に比べて、健康状態を容易に把握することができる。これにより、ユーザに対する利便性の向上を図ることが可能となる。
【0094】
また、本実施形態によれば、複数の学習用データは、被検者の健康時における入力データ及び参照データのみを含み、健康状態結果は、評価データに紐づくユーザの健康状態が、健康か否かを示す。このため、不健康時における学習用脈波に基づく入力データ、及び血中二酸化炭素の特徴を準備できない場合においても、ユーザの健康状態を示す結果を生成することができる。これにより、分類情報を生成する際の難易度を高めることなく、ユーザに対する利便性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0095】
また、本実施形態によれば、分類情報は、入力データを説明変数とし、参照データを目的変数としたPLS回帰分析を用いて得られた検量モデルである。このため、機械学習等を用いて分類情報を算出する場合に比べて、学習用データの数を大幅に減らすことができとともに、検量モデルの更新を容易に実施することができる。これにより、生体情報演算システム100の構築及び更新の容易化を図ることが可能となる。
【0096】
(第2実施形態:生体情報演算システム100)
次に、第2実施形態における生体情報演算システム100の一例について説明する。上述した実施形態と、第2実施形態との違いは、脈波に基づく予備評価データを取得する点である。なお、上述した実施形態と同様の内容については、説明を省略する。
【0097】
本実施形態における生体情報演算装置1は、例えば図7に示すように、脈波に基づき生成された1つセンサデータに対し、2種類の処理を実施する。これにより、生体情報演算装置1は、評価データと、評価データとは異なる予備評価データを取得する。なお、予備評価データは、複数取得されてもよい。
【0098】
生体情報演算装置1は、予備評価データに対する生体情報を算出し、例えば生体情報を含む予備評価結果を生成する。例えば生体情報演算装置1では、評価結果に加え、予備評価結果を出力することができる。なお、例えば生体情報演算装置1では、評価結果に生体情報を含ませてもよい。
【0099】
生体情報として、例えば脈拍数及び呼吸数の少なくとも何れかを算出することができる。この場合、例えば図8(a)及び図8(b)に示すように、取得手段S110において実施される前処理の内容、及び生成手段S120において参照されるデータベースの内容が異なる場合がある。以下、脈拍数及び呼吸数を生体情報として算出する例を説明する。
【0100】
<脈拍数の算出>
例えば脈拍数を算出する場合、図8(a)に示すように、取得部11は、上述したフィルタ処理をセンサデータに対して実施し、脈波データを抽出する。
【0101】
そして、取得部11は、脈波データに対し、ピーク位置算出処理を実施する。ピーク位置算出処理では、脈波データに含まれる複数のピーク(振幅の最大値)を検出し、サンプリングされた順番(測定開始からの時間に相当)を特定する。これにより、取得部11は、脈波データに含まれるピーク位置データを取得する。
【0102】
その後、取得部11は、ピーク位置データに対し、ピーク間隔平均算出処理を実施する。ピーク間隔平均算出処理は、ピーク位置データに含まれるピークの間隔(隣接するピークがサンプリングされた順番の差分)を算出し、例えばピーク間隔の平均値を算出する。その後、取得部11は、ピーク間隔又はピーク間隔の平均値に対し、センサデータのサンプリングレートで割り、秒数に相当するピーク間隔を示すデータを、予備評価データとして取得する。
【0103】
その後、生成部12は、データベースを参照し、予備評価データに対する脈拍数を算出する。この際、生成部12は、データベースに記憶された脈拍数用分類情報を参照する。脈拍数用分類情報は、例えば60[秒]をピーク間隔で割る関数を示す。このため、生成部12は、例えば予備評価データ(ピーク間隔=0.85[秒])に対する脈拍数(=71[bpm])を算出することができる。これにより、生成部12は、脈拍数を含む評価結果又は予備評価結果を生成することができる。
【0104】
<呼吸数の算出>
例えば呼吸数を算出する場合、図8(b)に示すように、取得部11は、上述したフィルタ処理をセンサデータに対して実施し、脈波データを抽出する。
【0105】
その後、取得部11は、脈波データに対し、フーリエ変換処理を実施する。フーリエ変換処理では、例えばサンプリング時間対振幅を示す脈波データが、周波数対強度を示す周波数データに変換される。これにより、取得部11は、脈波データに対する周波数データを取得する。
【0106】
その後、取得部11は、周波数データに対し、最大周波数検出処理を実施する。最大周波数検出処理では、周波数データのうち、0.15~0.35Hzの間における最大強度の周波数が特定される。これにより、取得部11は、特定された周波数の値を、予備評価データとして取得する。
【0107】
その後、生成部12は、データベースを参照し、予備評価データに対する呼吸数を算出する。この際、生成部12は、データベースに記憶された呼吸数用分類情報を参照する。呼吸数用分類情報は、例えば特定された周波数に60[秒]をかける関数を示す。このため、生成部12は、例えば予備評価データ(特定された周波数=0.225Hz)に対する呼吸数(=13.5[bpm])を算出することができる。これにより、生成部12は、例えば呼吸数を含む評価結果又は予備評価結果を生成することができる。
【0108】
このように、生体情報演算装置1では、予備評価結果に含ませる生体情報の内容に応じて、センサデータに対する前処理を設定し、参照するデータベースの内容を任意に設定することができる。
【0109】
なお、生体情報として、上述した脈拍数、呼吸数のほか、例えばストレス、血糖値、血圧、酸素飽和度、血管年齢、糖尿病の程度等のような、脈波に基づき算出可能な情報を用いることができる。
【0110】
また、算出する生体情報の内容に応じて、算出に用いる予備分類情報を予めデータベースに記憶させてもよい。この場合、上述した学習用脈波を示す予備入力データ、及び予備入力データに紐づく生体情報を含む予備参照データの一対を、予備学習用データとして複数準備する。そして、例えば学習部15は、複数の予備学習用データを用いて予備分類情報を生成し、データベースに記憶させる。
【0111】
なお、予備参照データに含まれる生体情報の取得は、例えば上述した参照情報と同様に、必要な生体情報を計測するための計測装置を用いて、被検者を対象に計測することで取得できる。また、予備分類情報の学習方法は、上述した分類情報と同様の方法を用いることができる。
【0112】
上記のほか、生体情報演算装置1では、例えば図9に示すように、評価結果、及び予備評価結果に基づき、総合評価結果を生成し、出力等をすることができる。このため、生体情報演算システム100では、評価結果とは異なる観点により生成された予備評価結果を利用することができ、多角的な評価を実施することができる。
【0113】
生体情報演算装置1では、例えば図3(b)及び図3(c)に示した2種類の処理を実施することで、センサデータから評価データ、及び予備評価データを取得してもよい。即ち、評価データとして、ユーザの加速度脈波に相当するデータが得られた場合、予備評価データとして、ユーザの速度脈波に相当するデータが得られる。この場合、評価データに対して生成された評価結果と、予備評価結果に対して生成された予備評価結果と、を用いることで、より精度の高い評価を実現することができる。
【0114】
本実施形態によれば、上述した実施形態の効果に加え、生成手段S120は、データベースを参照し、予備評価データに対するユーザの生体情報を含む予備評価結果を生成する。このため、評価結果とは異なる観点により生成された予備評価結果を利用することができ、多角的な評価を実施することができる。これにより、ユーザの要求に応じた適切な評価を実現することが可能となる。
【0115】
また、本実施形態によれば、生成手段S120は、予備分類情報を参照し、予備評価データに対する予備評価結果を生成することを含む。このため、評価結果とは異なる情報を参照して生成された予備評価結果を利用することができ、より多角的な評価を実施することができる。これにより、ユーザの要求に応じた適切な評価を容易に実現することが可能となる。
【0116】
(第3実施形態:生体情報演算システム100)
次に、第3実施形態における生体情報演算システム100の一例について説明する。上述した実施形態と、第3実施形態との違いは、複数の分類情報から、評価データに適した分類情報を選択する点である。なお、上述した実施形態と同様の内容については、説明を省略する。
【0117】
本実施形態における生体情報演算装置1は、例えば図10に示すように、予備評価データを参照し、複数の属性別分類情報のうち特定の分類情報(例えば第1分類情報)を選択する(選択手段)。また、生体情報演算装置1は、選択した第1分類情報を参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴(例えば血中二酸化炭素分圧の値)を算出し、評価結果を生成する(属性別生成手段)。
【0118】
複数の属性別分類情報は、それぞれ異なる学習用データを用いて算出される。例えば学習用データの入力データとして、被検者の加速度脈波に相当するデータが用いられる場合、例えば図11のような7種類(A~G)毎に入力データを準備し、7種類の属性分類情報を生成する。
【0119】
このような複数の属性別分類情報がデータベースに記憶される場合、例えば取得部11は、ユーザの加速度脈波に相当する評価データ、及び予備評価データを取得する。そして、生成部12は、予備評価データを参照し、第1分類情報を選択する。その後、生成部12は、第1分類情報を参照し、評価データに対する血中二酸化炭素の特徴(例えば血中二酸化炭素分圧の値)を算出する。このため、各属性分類情報のうち、ユーザに最適な分類情報を選択することができる。
【0120】
なお、例えば学習用データの入力データとして、被検者の速度脈波に相当するデータが用いられる場合、例えば図12のような2種類(グループ1、グループ2)毎に入力データを準備し、2種類の属性分類情報を生成してもよい。
【0121】
ここで、図11に示す加速度脈波に相当するデータは、特徴に基づく詳細な分類が容易である反面、血中二酸化炭素の特徴を算出する際、ピークの誤検出等に伴う精度低下が懸念として挙げられる。また、図12に示す速度脈波に相当するデータは、加速度脈波に相当するデータに比べ、特徴に基づく詳細な分類が困難であるが、ピークの誤検出等が少ないため、血中二酸化炭素の特徴を高精度に算出し得る。
【0122】
上記を踏まえ、複数の属性分類情報は、特定の分類情報を選択するために用いられる選択用データとして、例えば図11のような加速度脈波に相当するデータを含み、属性分類情報を生成する際の学習データには、速度脈波に相当するデータが用いられてもよい。
【0123】
この場合、取得手段S110として、例えば取得部11は、ユーザの脈波に基づくセンサデータから、速度脈波に相当するデータを評価データとして取得する。また、取得部11は、センサデータから、加速度脈波に相当するデータを予備評価データとして取得する。
【0124】
次に、選択手段として、例えば生成部12は、予備評価データを参照し、加速度脈波に相当するデータを含む複数の選択用データのうち、予備評価データに最も類似する選択用データ(第1選択用データ)を特定し、第1選択用データに紐づく第1分類情報を選択する。そして、属性別生成手段として、生成部12は、第1分類情報を参照し、評価データに対する評価結果を生成する。これにより、評価精度のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0125】
ここで、上述した選択用データ等に用いられるデータの一例を説明する。
【0126】
例えば図11に示すように、加速度脈波には、a~eの変曲点が存在する。例えば、加速度脈波における最大のピークをa点とし、a点から順に各変曲点をb点、c点、d点、e点とし、a点を1とし、最小値であるb点もしくはd点を0とした規格化を行った場合、加速度脈波は、各変曲点の値と、その差の大小関係により分類する方法を用いて、7パターンに分類することができる。まず、変曲点の値がb<dの場合は、パターンAまたはBに分類する。b<dでさらにc≧0.5であればA、そうでなければBに分類する。次に変曲点の値がb≒dの場合、パターンCまたはDに分類する。b≒dでさらにc≒0の場合はパターンD、そうでなければパターンCに分類する。最後に、b>dの場合は、パターンE、F、Gの何れかに分類できる。b>dでさらにb<cであればパターンEに、b≒cであればパターンF,b>cであればパターンGに分類する。
【0127】
例えば生成部12は、予備評価データが、例えば図11のどのパターンに当てはまるかを判断し、第1選択用データを特定する。例えば、入力された予備評価データの変曲点bが変曲点dより小さく、さらに変曲点c≧0.5であれば、パターンAを第1選択用データとする。これにより、評価データの特徴に適した分類情報を参照し、血中二酸化炭素の特徴を精度良く算出することができる。
【0128】
本実施形態によれば、上述した実施形態の効果に加え、生成手段S120は、予備評価データを参照し、第1分類情報を選択する選択手段と、第1分類情報を参照し、評価データに対する評価結果を生成する属性別生成手段とを含む。このため、脈波の特徴に対して最適な属性分類情報を選択した上で、評価データに対する評価結果を生成することができる。これにより、評価精度のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0129】
また、本実施形態によれば、取得手段S110は、脈波に基づく速度脈波に相当するデータを、評価データとして取得する。また、予備取得手段は、脈波に基づく加速度脈波に相当するデータを、予備評価データとして取得する。このため、速度脈波に比べて、脈波の特徴を分類し易い加速度脈波を用いて、属性分類情報を選択することができる。また、加速度脈波に比べて、血中二酸化炭素の特徴を算出し易い速度脈波を用いて、評価結果を生成することができる。これにより、評価精度のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0130】
なお、上述した各実施形態では、血中二酸化炭素の特徴として、主に血中二酸化炭素分圧の値が用いられる場合について説明したが、血中二酸化炭素の溶存濃度、血液に含まれる重炭酸・バイカーボネートの濃度、及び血液のpHの少なくとも何れかが用いられる場合についても同様のため、説明を省略する。特に、血中二酸化炭素の特徴として血中二酸化炭素分圧の値が用いられる場合、他の値に比べて参照情報を収集し易い傾向がある。このため、分類情報を生成する際に費やす時間及び費用の大幅な削減を実現することが可能となる。
【0131】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0132】
1 :生体情報演算装置
3 :通信網
4 :サーバ
5 :センサ
6 :検出部
10 :筐体
11 :取得部
12 :生成部
13 :出力部
14 :記憶部
15 :学習部
50 :取得部
51 :通信I/F
52 :メモリ
53 :命令部
54 :内部バス
55 :リストバンド
100 :生体情報演算システム
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部
109 :表示部
110 :内部バス
S110 :取得手段
S120 :生成手段
S130 :出力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12