(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053962
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】アンカー材及びそれを用いるドレーン工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
E02D3/10 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160874
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】本保 寿拡
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043DA09
2D043DC01
2D043DC08
2D043DC09
(57)【要約】
【課題】ドレーン材の共上がりを防止して施工効率を向上させる。
【解決手段】アンカー材10は、板状の本体部12と、この本体部12の、ケーシングの貫入時にケーシングの先端に接触して押圧される位置に設けられた弾性体30とを含んでいる。このため、弾性体30は、ケーシングの貫入時に、押し込まれるケーシングの先端と地盤からの反力を受ける本体部12との間で圧縮され、反発力が蓄積される。そして、設計深度に達してケーシングが引き抜かれ始めた直後に、弾性体30は、蓄積されていた反発力が本体部12を起点として解放され、元の形状へと復帰するため、ケーシングの先端から弾性体30が離れるように作用する。従って、弾性体30を介して、ケーシングの先端からアンカー材10を能動的に離脱させることができる。これにより、ドレーン材の共上がりを防止することができ、ドレーン工法の施工効率を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングを利用して軟弱地盤に打設されるドレーン材の、打設時に前記ケーシングの先端から突出する部位に取り付けられるアンカー材であって、
板状の本体部と、
該本体部の、前記ケーシングの貫入時に該ケーシングの先端に接触して押圧される位置に設けられた弾性体と、を含むことを特徴とするアンカー材。
【請求項2】
前記弾性体が、前記ケーシングの先端の互いに異なる位置に接触する複数の板バネであることを特徴とする請求項1記載のアンカー材。
【請求項3】
前記複数の板バネは、前記本体部の一部が切り起こし加工されて形成されていることを特徴とする請求項2記載のアンカー材。
【請求項4】
ケーシングを利用して軟弱地盤にドレーン材を打設するドレーン工法であって、
前記ドレーン材の打設時に、前記ケーシングの先端から突出する前記ドレーン材の部位に取り付けるアンカー材として、板状の本体部と、該本体部の、前記ケーシングの貫入時に該ケーシングの先端に接触して押圧される位置に設けた弾性体とを含むアンカー材を使用することを特徴とするドレーン工法。
【請求項5】
前記弾性体として、前記ケーシングの先端の互いに異なる位置に接触する複数の板バネを設けることを特徴とする請求項4記載のドレーン工法。
【請求項6】
前記複数の板バネを、前記アンカー材の前記本体部の一部を切り起こし加工することで形成することを特徴とする請求項5記載のドレーン工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤に打設されるドレーン材に取り付けられるアンカー材と、それを用いるドレーン工法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤の改良のために、ペーパードレーンやプラスチックドレーンなどの帯状をしたドレーン材を、その先端にアンカー材を取り付けた状態で、ケーシングを利用して軟弱地盤に打設するドレーン工法では、ケーシングの引き抜きの際に共上がりと呼ばれる現象が発生することがある。すなわち、ケーシング内に土砂が浸入してドレーン材が拘束されることなどに起因して、地盤内に定着されるはずのアンカー材がケーシング先端に付着するなどして、ケーシングと共にドレーン材が引き上がってしまう現象である。このような現象が発生してしまうと、ドレーン材を打ち直す必要があるため、共上がりを防止する対策が必要となる。例えば特許文献1には、ケーシング内に設置した撮影手段によりドレーン材の様子を撮影することで、ドレーン材の共上がりを監視する工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
又、具体的な共上がりの防止策として、ドレーン材に取り付けて地盤内に残置するアンカー材の受圧面積を大きくすることなどが挙げられるが、ケーシングの貫入時における抵抗力の増加に繋がるため、拡大できる大きさに限界があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドレーン材の共上がりを防止して施工効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)ケーシングを利用して軟弱地盤に打設されるドレーン材の、打設時に前記ケーシングの先端から突出する部位に取り付けられるアンカー材であって、板状の本体部と、該本体部の、前記ケーシングの貫入時に該ケーシングの先端に接触して押圧される位置に設けられた弾性体と、を含むアンカー材(請求項1)。
【0007】
本項に記載のアンカー材は、ケーシングを利用して軟弱地盤にドレーン材を打設するドレーン工法に用いられるものであり、ドレーン材の打設時にケーシングの先端から突出するドレーン材の部位に取り付けられ、板状の本体部と弾性体とを含んでいる。板状の本体部には、ドレーン材が通されるスリットなどが設けられ、その一方の面がケーシングの先端位置で打設方向へと向けられる。更に、本体部の、打設方向へ向けられる面とは反対側の面には、ケーシングの貫入時にケーシングの先端に接触して押圧される位置に弾性体が設けられる。このため、弾性体は、ケーシングの貫入時に、押し込まれるケーシングの先端と地盤からの反力を受ける本体部との間で圧縮され、反発力が蓄積される。
【0008】
そして、設計深度に達してケーシングが引き抜かれ始めた直後に、弾性体は、ケーシングの先端から受けていた押し込み力がなくなるため、蓄積されていた反発力が本体部を起点として解放され、元の形状へと復帰する。このときの復元力は、ケーシングから受けていた押し込み力と反対の方向、すなわち、ケーシングの引き抜き方向と同じ方向に作用するため、ケーシングの先端から弾性体が離れるように作用する。従って、弾性体を介して、ケーシングの先端からアンカー材が能動的に離脱することとなる。これにより、ケーシングの先端に対するアンカー材の付着が防止されると共に、ドレーン材の共上がりが防止されるものとなり、延いては、ドレーン材を打ち直す必要がないため、ドレーン工法の施工効率が向上されるものである。しかも、アンカー材と共に施工で使用されるケーシングやドレーン材には、従来から使用していたものが用いられるため、コストアップが抑制されるものである。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記弾性体が、前記ケーシングの先端の互いに異なる位置に接触する複数の板バネであるアンカー材(請求項2)。
本項に記載のアンカー材は、本体部に設けられる弾性体が、ケーシングの先端の互いに異なる位置に接触する複数の板バネであることで、それら複数の板バネの各々が、ケーシングの貫入時に反発力を蓄積する。そして、複数の板バネは、蓄積した反発力を、ケーシングの引き抜き時に、ケーシングの先端に接触する複数の異なる位置で解放して、ケーシングの先端からアンカー材を効果的に離脱させるものである。このため、板バネという単純な機構を利用しながらも、ケーシングの先端へのアンカー材の付着やドレーン材の共上がりが、より効果的に防止されるものとなる。
【0010】
(3)上記(2)項において、前記複数の板バネは、前記本体部の一部が切り起こし加工されて形成されているアンカー材(請求項3)。
本項に記載のアンカー材は、本体部の一部が切り起こし加工されることにより、本体部に弾性体としての複数の板バネが形成されたものである。これにより、別部材の板バネが本体部に取り付けられる場合と比較して、材料費が抑制されるため、コストアップがより抑制されるものとなる。
【0011】
(4)ケーシングを利用して軟弱地盤にドレーン材を打設するドレーン工法であって、前記ドレーン材の打設時に、前記ケーシングの先端から突出する前記ドレーン材の部位に取り付けるアンカー材として、板状の本体部と、該本体部の、前記ケーシングの貫入時に該ケーシングの先端に接触して押圧される位置に設けた弾性体とを含むアンカー材を使用するドレーン工法(請求項4)。
【0012】
(5)上記(4)項において、前記弾性体として、前記ケーシングの先端の互いに異なる位置に接触する複数の板バネを設けるドレーン工法(請求項5)。
(6)上記(5)項において、前記複数の板バネを、前記アンカー材の前記本体部の一部を切り起こし加工することで形成するドレーン工法(請求項6)。
そして、(4)~(6)項に記載のドレーン工法は、各々、上記(1)~(3)項のアンカー材を用いて実行されることで、上記(1)~(3)項のアンカー材と同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のような構成であるため、ドレーン材の共上がりを防止して施工効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るアンカー材の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1のアンカー材がドレーン材と共にケーシングにセットされた状態を示しており、(a)がケーシングの先端近傍の簡易断面図、(b)がアンカー材近傍の拡大イメージ図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るドレーン工法のケーシング及びドレーン材の打設工程を示すイメージ図であり、(a)が打設中の状態、(b)が設計深度まで打設した状態である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るドレーン工法のケーシングの引き抜き工程を示すイメージ図であり、(a)が引き抜き開始の状態、(b)が引き抜き中の状態である。
【
図5】施工中のアンカー材近傍の拡大イメージ図であり、(a)がケーシングの打設中の状態、(b)がケーシングの引き抜き開始直後の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分若しくは対応する部分は、同一の符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係るアンカー材10の構成を概略的に示している。このアンカー材10は、従来のアンカー材と同様に、
図2(a)に示すように、ケーシング50によって軟弱地盤SG(
図3及び
図4参照)に打設される、ペーパードレーンやプラスチックドレーンなどの帯状のドレーン材40の先端に取り付けられ、軟弱地盤SG中に残置されるものである。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るアンカー材10は、板状の本体部12と、本実施形態では複数の板バネ32により形成される弾性体30とで大略構成されている。本体部12は、本実施形態では平面視で2つの長辺及び2つの短辺を有する矩形の板状をなし、2つの面12a及び12bを有している。そして、それら2つの面12a及び12b間を貫通して、平面視矩形の長辺と平行に延在する2つのスリット14が設けられている。これら2つのスリット14は、帯状のドレーン材40が巻き通されることで、アンカー材10をドレーン材40の先端に固定するための部位である。又、本実施形態の本体部12は、その平面視矩形の長辺両端側が僅かに折り曲げられ、面12b側へと傾いた翼部16、18が形成されている。本体部12は、軟弱地盤SG(
図3及び
図4参照)内への定着性の観点から、従来の標準サイズのアンカー材よりも大きいものが好ましく、敢えて一例を挙げるとすれば、これに限定されるものではないが、短辺が140mm、長辺が180mm、厚さが3.2mm程度である。
【0017】
弾性体30は、上述したように本実施形態では複数(4つ)の板バネ32により形成されており、本体部12の片側の面12bに設けられている。板バネ32の各々は、本体部12に固定された基端部34と、基端部34から斜め上方へ延びたバネ部36とを有しており、バネ部36の先端側が上下方向に揺動可能になっている。本実施形態では、2つのスリット14を挟むような位置に2つずつ、バネ部36同士が向かい合う向きで、スリット14の延在方向と平行に4つの板バネ32が設けられている。又、このような板バネ32は、本体部12の一部が切り起こし加工されることで形成されてもよく、本体部12とは別部材のものであってもよい。
【0018】
切り起こし加工の場合は、例えば、本体部12に平面視コの字状の切り込みが入れられ、そのコの字の開口部分に相当する部位が折り曲げられることで、その折り曲げによって本体部12から起こされた部分がバネ部36に相当し、折り曲げの根元部分が基端部34に相当するものとなる。又、別部材の場合は、例えば、折り曲げ加工された1枚の板部材の、折り曲げ位置を境にした一方の板状部が本体部12に固定されることで、その一方の板状部により基端部34が形成され、折り曲げ位置を境にしたもう一方の板状部によりバネ部36が形成されるものとなる。なお、弾性体30(板バネ32)が具備する復元力(反発力)の強さは、例えば、本体部12の大きさや本体部12への土の付着力などを考慮して決定すればよい。
【0019】
次に
図2(a)を参照すると、ドレーン材40の打設に使用されるケーシング50の先端側近傍が図示されており、打設するための準備として、ケーシング50の後端側(図中上側)からケーシング50内部に挿通されたドレーン材40が、ケーシング50の内部を透過して示されている。そして、ケーシング50の先端50aから外側に出た位置には、本体部12のスリット14にドレーン材40が巻き通されることで、ドレーン材40の先端に固定されたアンカー材10が配置されている。このとき、アンカー材10は、本体部12の一方の面12aを図中下側(ケーシング50の貫入方向)へ向けると共に、本体部12の他方の面12bを図中上側(ケーシング50側)へ向けた状態になっている。そして、ドレーン材40が弛まないように図中上方側で固定されていることで、アンカー材10は、その本体部12の面12b側がケーシング50の先端50aに当接している。なお、
図2(a)では、アンカー材10の弾性体30の図示を省略している。
【0020】
ここで、アンカー材10の弾性体30は、上述したようにドレーン材40及びアンカー材10がケーシング50にセットされた状態で、ケーシング50の先端50aに接触するような位置に設けられている。すなわち、
図2(b)に示すように、本実施形態において弾性体30を構成する板バネ32のバネ部36が、ケーシング50の先端50aに接触するようになっている。より詳しくは、4つの板バネ32のバネ部36は、
図1に示したような夫々の設置位置に応じて、ドレーン材40が突出しているケーシング50の先端開口部の環状縁部分(50a)の、互いに異なる位置に接触する。なお、
図2(b)及び後述する
図5では、ケーシング50の先端50a近傍の形状を簡略化して図示している。
【0021】
続いて、
図3~
図5を参照して、上述したアンカー材10を用いて実行する、本発明の実施の形態に係るドレーン工法について説明する。本説明は、水上の作業台船60から水中の軟弱地盤SGに、ドレーン材40を打設する場合を例にして説明する。
まず、施工現場に応じて、ドレーン材40の打ち込み計画深度を設定した後、作業台船60を、ドレーン材40を設計位置へ打設するための適切な位置へ移動させる。そして、
図2に示したように、ケーシング50の先端50aに、ドレーン材40の先端に取り付けた状態のアンカー材10を設置した状態で、
図3(a)に示すように、作業台船60のヤグラ62からケーシング50を貫入して、ドレーン材40を水中の軟弱地盤SGへ打設する。この際、貫入深度が徐々に深くなるケーシング50に追従するように、リール64を介してドレーン材40を繰り出していく。
【0022】
このようにしてケーシング50が軟弱地盤SG中へ貫入されていく状況下で、アンカー材10は、
図5(a)に示すような状態になる。すなわち、図中に下方向矢印で示すような、貫入されるケーシング50の先端50aから受ける押し込み力と、図中に上方向矢印で示すような、本体部12が軟弱地盤SGから受ける反力とにより、弾性体30が圧縮される。より詳しくは、弾性体30を構成する4つの板バネ32の各々のバネ部36が、本体部12に押し付けられるようにして、基端部34と平行になる。そして、アンカー材10が
図5(a)のような状態のままで、
図3(b)に示すように、ドレーン材40が計画深度に打設されるまで、ケーシング50を軟弱地盤SGへ貫入する。
【0023】
ドレーン材40を計画深度に打設したら、
図4(a)に示すように、軟弱地盤SGからのケーシング50の引き抜きを開始する。すると、ケーシング50からアンカー材10への押し込み力がなくなるのと同時に、本体部12が軟弱地盤SGから受ける反力もなくなるため、
図5(b)に示すように、弾性体30が圧縮状態から解放されて元の形状へと復帰する。より詳しくは、弾性体30を構成する4つの板バネ32の各々のバネ部36が、基端部34を基点として本体部12から起き上がり、図中に上方向矢印で示すような復元力を発揮する。これによって、アンカー材10がケーシング50の先端50aから離脱する。以降は、例えば図示しないドレーン検知器などでドレーン材40の共上がりの有無を確認しながら、
図4(b)に示すように、ケーシング50の引き抜きを続行する。そして、軟弱地盤SGに打設したドレーン材40を切り離すために、適切な位置でドレーン材40を切断する。
【0024】
なお、上記の例では、水上の作業台船60から、水中の軟弱地盤SGにドレーン材40を打設する場合を例にして説明したが、本発明の実施の形態に係るドレーン工法は、これに限定されることなく、地上の軟弱地盤SGに対するドレーン材40の打設にも適用できるものである。又、本発明の実施の形態に係るドレーン工法は、ケーシング50の貫入時や引き抜き時に、ケーシング50の内部に注水してケーシング50内を水で満たすことで、水圧によってケーシング50内への土砂の浸入を防止するようにしてもよい。更に、ドレーン工法で用いる本発明の実施の形態に係るアンカー材10も、
図1や
図2に示した構成に限定されるものではない。
【0025】
例えば、弾性体30は、板バネ32に限定されるものではなく、別形状のバネやゴムなどで構成されてもよい。又、本体部12における弾性体30の取り付け位置や取り付け方向は、弾性体30がケーシング50の先端50aに接触し、かつ、弾性体30がスリット14を介して本体部12に取り付けられるドレーン材40に干渉しなければ、任意である。更に、板状の本体部12の形状や大きさも任意であり、例えば、翼部16、18が形成されていなくてもよく、又、従来から用いられている板状のアンカー材を本体部12として利用してもよい。
【0026】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るアンカー材10は、
図3及び
図4に示すように、ケーシング50を利用して軟弱地盤SGにドレーン材40を打設するドレーン工法に用いられるものであり、
図1及び
図2に示すように、ドレーン材40の打設時にケーシング50の先端50aから突出するドレーン材40の部位に取り付けられ、板状の本体部12と弾性体30とを含んでいる。板状の本体部12には、ドレーン材40が通されるスリット14などが設けられ、その一方の面12aがケーシング50の先端位置で打設方向へと向けられる。更に、本体部12の、打設方向へ向けられる面12aとは反対側の面12bには、ケーシング50の貫入時にケーシング50の先端50aに接触して押圧される位置に弾性体30が設けられる。このため、弾性体30は、ケーシング50の貫入時に、
図5(a)に示すように、押し込まれるケーシング50の先端50aと地盤SGからの反力を受ける本体部12との間で圧縮され、反発力が蓄積される。
【0027】
そして、設計深度に達してケーシング50が引き抜かれ始めた直後に、弾性体30は、ケーシング50の先端50aから受けていた押し込み力がなくなるため、
図5(b)に示すように、蓄積されていた反発力が本体部12を起点として解放され、元の形状へと復帰する。このときの復元力は、ケーシング50から受けていた押し込み力と反対の方向、すなわち、ケーシング50の引き抜き方向と同じ方向に作用するため、ケーシング50の先端50aから弾性体30が離れるように作用する。従って、弾性体30を介して、ケーシング50の先端50aからアンカー材10を能動的に離脱させることができる。これにより、ケーシング50の先端50aに対するアンカー材10の付着を防止することができると共に、ドレーン材40の共上がりを防止することができ、延いては、ドレーン材40を打ち直す必要がないため、ドレーン工法の施工効率を向上させることが可能となる。しかも、アンカー材10と共に施工で使用するケーシング50やドレーン材40には、従来から使用していたものを用いることができるため、コストアップを抑制することもできる。
【0028】
又、本発明の実施の形態に係るアンカー材10は、
図1及び
図2に示すように、本体部12に設けられる弾性体30が、ケーシング50の先端50aの互いに異なる位置に接触する複数の板バネ32であることで、それら複数の板バネ32の各々が、ケーシング50の貫入時に反発力を蓄積する。そして、複数の板バネ32は、蓄積した反発力を、ケーシング50の引き抜き時に、ケーシング50の先端50aに接触する複数の異なる位置で解放して、ケーシング50の先端50aからアンカー材10を効果的に離脱させることができる。このため、板バネ32という単純な機構を利用しながらも、ケーシング50の先端50aへのアンカー材10の付着やドレーン材40の共上がりを、より効果的に防止することが可能となる。
【0029】
更に、本発明の実施の形態に係るアンカー材10は、複数の板バネ32が、本体部12の一部が切り起こし加工されて形成されたものであることで、別部材の板バネ32が本体部12に取り付けられる場合と比較して、材料費を抑制することができるため、コストアップをより抑制することが可能となる。
一方、本発明の実施の形態に係るドレーン工法は、上述したような本発明の実施の形態に係るアンカー材10を用いて実行されることで、本発明の実施の形態に係るアンカー材10と同等の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0030】
10:アンカー材、12:本体部、30:弾性体、32:板バネ、40:ドレーン材、50:ケーシング、50a:先端、SG:軟弱地盤