(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054006
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】ロジン変性フェノール樹脂、平版印刷インキ、および印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20220330BHJP
B41M 1/06 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C09D11/102
B41M1/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160953
(22)【出願日】2020-09-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和哉
【テーマコード(参考)】
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA05
2H113BA06
2H113BB02
2H113BB22
2H113BC02
2H113DA60
2H113EA10
4J039AE02
4J039AF01
4J039BA04
4J039BA30
4J039BA31
4J039BC07
4J039BE12
4J039CA07
4J039EA33
4J039GA02
(57)【要約】
【課題】印刷物の光沢性やインキの流動性に優れ、長時間印刷時においてもブラン残りの発生の無い印刷物を得ることが可能な平版印刷インキ用樹脂、およびそれを含有する平版印刷インキの提供。
【解決手段】ロジン類(b)と、レゾール型フェノール樹脂(c)と、ポリオール(d)との反応物であって、
ロジン類(b)が、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)をロジン類全量に対して0.1~3.5質量%含み、
レゾール型フェノール樹脂(c)の水酸基価が15~40mgKOH/gであり、
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるMw/Mnが10~60であることを特徴とする、ロジン変性フェノール樹脂(A)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン類(b)と、レゾール型フェノール樹脂(c)と、ポリオール(d)との反応物であって、
ロジン類(b)が、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)をロジン類全量に対して0.1~3.5質量%含み、
レゾール型フェノール樹脂(c)の水酸基価が15~40mgKOH/gであり、
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるMw/Mnが10~60であることを特徴とする、ロジン変性フェノール樹脂(A)。
【請求項2】
ロジン類(b)が、共役二重結合を有する環式ジテルペンを20~80質量%含有することを特徴とする、請求項1記載のロジン変性フェノール樹脂(A)。
【請求項3】
ロジン変性フェノール樹脂原料の全質量を基準として、
ロジン類(b)30~85質量%と、
レゾール型フェノール樹脂(c)7~67質量%と、
ポリオール(d)3~20質量%と
の反応物であることを特徴とする、請求項1または2記載のロジン変性フェノール樹脂(A)。
【請求項4】
重量平均分子量が7,000~120,000であり、かつ、酸価が5~50mgKOH/gである、請求項1~3いずれか記載のロジン変性フェノール樹脂(A)。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載のロジン変性フェノール樹脂(A)を含有することを特徴とする平版印刷インキ。
【請求項6】
基材に、請求項5記載の平版印刷インキを印刷した印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍、チラシ、カタログ、新聞等の印刷物に使用される平版印刷インキ(以下、「インキ」と略す。)に使用する樹脂に関することであり、インキの流動性を向上させ、ブラン残りが少なく、高光沢な印刷物が得られることを特徴とする平版印刷インキ用樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平版印刷インキは5~100Pa・sの比較的粘度の高いインキである。平版印刷機の機構は、インキが印刷機のインキ壺から、複数のローラーを経由して版面の画線部に供給され、湿し水が版面の非画線部に供給される。さらに版面上に形成された画像は、ブランケットに転写された後、紙上に転写される。
【0003】
近年では、印刷時の省人、省力化、自動化、高速化の要求が高まりとともに、塗工紙から非塗工紙まで幅広い用紙への対応が求められている。そして、様々な印刷条件下に於いて長時間安定して高品位な印刷物が得られるインキが望まれており、特に、インキの流動性が良好で、印刷物の光沢性に優れ、ブラン残りなど印刷トラブルの低減できるインキが強く望まれている。ブラン残りとは印刷時、ブランケットの画線部と非画線部の境界にインキと紙粉の混合物が堆積することといい、堆積量が多いと画像形成不良を引き起こす。
【0004】
従来、印刷物の光沢性を向上させる方法としては、石油系溶剤や植物油などを増やし、インキの粘度を下げて印刷表面の平滑性を向上させたり、低分子高溶解性樹脂や石油樹脂などを使用してインキ系内の樹脂成分を増やすことによって、印刷紙基材へのインキの浸透を極力抑制して、インキ被膜厚を維持させるなどの方法が用いられてきた。
【0005】
しかしながら、インキ粘度を下げるために石油系溶剤や植物油を増やすと、インキのタック値が低下し、印刷機上でのローラー間転移が悪化する傾向にある。また、低分子高溶解性樹脂や石油樹脂などを使用してインキ系内の樹脂成分を増やすと、インキのタック値が上がりすぎ、紙剥けが発生したり、乳化の制御が困難となりインキの印刷適性が阻害される傾向にあり、印刷適性を維持しながら印刷物の光沢性を向上させるには限界があった。
【0006】
上記の方法以外に、インキ系内の樹脂成分に対する溶解性が高い石油系溶剤を用いることでインキ系内の相溶性を上げて、インキの低粘度化や樹脂成分の高濃度化を図る方法もある。しかしながら、上記の石油系溶剤の樹脂に対する溶解性では光沢効果が十分に得られない。また、上記の樹脂成分に対する溶解性が高い石油系溶剤の多くは、人体への悪影響の大きい芳香族炭化水素が主成分であり、印刷において、印刷作業環境や大気汚染などの環境負荷の要因となることから、最近では使用を見合わせている。
【0007】
また、インキ中に脂肪酸エステルを含有させることで、光沢性に優れたオフセットインキ組成物が開発されている(特許文献1、2)。しかしながら、これらの方法では、脂肪酸エステルの紙への浸透制御が困難であり、印刷時に使用される用紙に制限が加えられたり、インキの乾燥性の点で十分満足できない状況がある。
【0008】
インキに使用されるロジン変性フェノール樹脂についての改良も行われてきた。特許文献3では、ロジンと動植物油脂肪酸との混合物をモノアルコールで部分エステル化したモノエステル体に、多価アルコールおよびフェノールホルムアルデヒド初期縮合物を反応させる方法が開示されている。しかしながら、この方法では、エステル化にモノアルコールを使用することで、ロジンおよび動植物油脂肪酸とのエステル結合による架橋が行われず、分子量制御が困難となる。
【0009】
特許文献4には、環状テルペニルフェノールを反応させてなるロジン変性フェノール樹脂が開示されているが、反応、もしくは抽出により環状テルペニルフェノールを得るのに多大なコストを必要とする。さらに、特許文献4では、市場で求められている印刷中の汚れ抑制や、印刷機上での挙動に関する記載はなく、市場で望まれているインキの提供には至っていない。
【0010】
特許文献5には、低沸点成分を2%以下に溜去させたロジンのα、β-不飽和カルボン酸付加物を2種以上の金属化合物で中和反応してなる樹脂金属塩について開示されているが、グラビア印刷用樹脂であり、ブランケットを介した印刷では無く、平版印刷での課題解決には至らない。また、樹脂金属塩では、平版印刷用インキに必要な粘度、弾性を得ることが不可能であるため、平版印刷インキ用樹脂としては不適格である。さらに、低沸点成分を2%以下に溜去するために250℃~300℃で加熱するとあるが、この温度まで加熱すると、ロジン中の樹脂酸が反応性の低いデヒドロアビエチン酸へと変化し、樹脂化時の反応性を確保できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003-313482号公報
【特許文献2】特開2007-169574号公報
【特許文献3】特開2004-269752号公報
【特許文献4】特開2015-193790号公報
【特許文献5】特開平9-169953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、インキの流動性に優れ、長時間印刷時において、ブラン残りが少なく、高光沢な印刷物を得ることが可能な平版印刷インキを得るための、平版印刷インキ用樹脂の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、以下に定める素材により作製したロジン変性フェノール樹脂(A)を含有させた平版印刷インキは、インキの流動性に優れ、長時間印刷時においてブラン残りが少なく、高光沢な印刷物を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、ロジン類(b)と、レゾール型フェノール樹脂(c)と、ポリオール(d)との反応物であって、
ロジン類(b)が、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)をロジン類全量に対して0.1~3.5質量%含み、
レゾール型フェノール樹脂(c)の水酸基価が15~40mgKOH/gであり、
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるMw/Mnが10~60であることを特徴とする、ロジン変性フェノール樹脂(A)に関する。
【0015】
また、本発明は、ロジン類(b)が、共役二重結合を有する環式ジテルペンを20~80質量%含有することを特徴とする、上記ロジン変性フェノール樹脂(A)に関する。
【0016】
また、本発明は、ロジン変性フェノール樹脂原料の全質量を基準として、
ロジン類(b)30~85質量%と、
レゾール型フェノール樹脂(c)7~67質量%と、
ポリオール(d)3~20質量%と
の反応物であることを特徴とする、上記ロジン変性フェノール樹脂(A)に関する。
【0017】
また、本発明は、重量平均分子量が7,000~120,000であり、かつ、酸価が5~50mgKOH/gである、上記ロジン変性フェノール樹脂(A)に関する。
【0018】
また、本発明は、上記ロジン変性フェノール樹脂(A)を含有することを特徴とする、平版印刷インキに関する。
【0019】
また、本発明は、基材に、上記平版印刷インキを印刷した印刷物に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の平版印刷インキ用樹脂を用いることで、インキの流動性に優れ、長時間印刷時においてブラン残りが少なく、高光沢な印刷物を得ることが可能な平版印刷インキを提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
モノテルペン類、セスキテルペン類等のテルペン類は、植物や昆虫、菌類によって作り出される生体物質である。平版印刷インキ用樹脂として使用される、ロジン変性フェノール樹脂の原料であるロジン類にも、これらのテルペン類を含有する物がある。
本発明のロジン変性フェノール樹脂(A)の原料として使用するロジン類(b)は、モノテルペン類(a1)、およびセスキテルペン類(a2)の含有量の総和が、ロジン類(b)全量を基準として0.1~3.5質量%であることを特徴とする。
【0022】
ロジン類(b)は、生松ヤニを蒸留処理することにより得られ、蒸留温度は200℃以下が好ましい。200℃以上であると、ロジン中のジテルペンの異性化が進行し、樹脂合成時の反応性が低下する。
【0023】
モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量の総和が0.1~3.5質量%のロジン類(b)を、ロジン変性フェノール樹脂(A)の原料に用いることで、インキ成分との相溶性が向上し、そのインキを使用した印刷物の光沢性が良化する。しかし、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量の総和が3.5質量%を超えているロジンを用いると、インキに必要な粘弾性や顔料分散性が低下し、印刷物の地汚れの発生やインキの流動性が不足する。また、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量の総和は、好ましくは0.5~3.0質量%である。
【0024】
本発明に使用するロジン類(b)は、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量の総和がロジン類全量に対して0.1~3.5質量%であれば特に制限はなく、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン、該ロジンから誘導される重合ロジン、天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加して得られる安定化ロジン、天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジンなどを用いることができる。不飽和酸変性ロジンとは、例えばマレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、またはこれらに対応する酸変性重合ロジンがあげられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
モノテルペン類(a1)としては、特に限定されないが、α‐ピネン、β‐ピネン、カンフェン、α‐フェランドレン、β‐フェランドレン、α‐ミルセン、β‐ミルセン、カレン、リモネン、γ‐テルピネン、α‐テルピネン、α‐テルピネオール、β‐テルピネオール、γ‐テルピネオールなどが例示される。
【0026】
セスキテルペン類(a2)としては、特に限定されないが、α‐セドレン、β‐セドレン、α‐コパエン、β‐コパエン、イソロギンホレン、ロンギホレン、カリオフィレン、β‐フムレン、α‐ファルネセン、β‐ファルネセン、β‐カリオフィレン、α‐グアイエン、β‐グアイエン、γ‐グアイエン、α‐エレメン、β‐エレメン、γ‐エレメン、δ‐エレメン、α‐ビサボレン、β‐ビサボレン、γ‐ビサボレン、アロマデンドレン、セドロールなどが例示される。
【0027】
ロジン類(b)中の、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量は、ガスクロマトグラフィーのピーク面積比によって求めることができる。具体的には、ロジン類(b)の全ピーク面積100%に対する、(a1)および(a2)に相当するピーク面積の比(%)により求めることができる。なお、ロジン類(b)中の、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量の総和がロジン類全量に対して0.1~3.5質量%であれば、モノテルペン類(a1)またはセスキテルペン類(a2)どちらか一方のみを含有するものであっても構わない。
【0028】
また、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量が3.5質量%より多いロジン類の場合、精製することでモノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量を0.1~3.5質量%とし、ロジン類(b)として用いることもできる。精製方法としては蒸留法などの公知の方法が挙げられる。
【0029】
また、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量が0.1質量%より少ないロジン類の場合、モノテルペン類(a1)および/またはセスキテルペン類(a2)を添加し、モノテルペン類(a1)およびセスキテルペン類(a2)の含有量を0.1~3.5質量%とすることで、ロジン類(b)として用いることもできる。
【0030】
ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどのロジン類中には、複数のジテルペン酸が含有される。本発明においては、共役二重結合を有する環式ジテルペンを20~80質量%とすることで、より高弾性樹脂を得ることが可能となり、ブラン残りが低減できる。
【0031】
共役二重結合を有する環式ジテルペンの含有量は、ガスクロマトグラフィーのピーク面積比によって求めることができる。ロジン類(b)の全ピーク面積100%に対する、共役二重結合を有する環式ジテルペンのピーク面積比(%)により求めることができる。共役二重結合を有する環式ジテルペンとしては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸が挙げられる。
【0032】
レゾール型フェノール樹脂(c)は、常法により得ることが出来る。合成方法の一例としては、フェノール類とホルムアルデヒド類とを仕込み、揮発性有機溶剤(キシレンなど)を添加し、金属酸化物触媒、金属水酸化物触媒またはアルカリ触媒の存在下で縮合反応させることにより得られる。フェノール類とホルムアルデヒド類の比率は、通常mol比で、フェノール類:ホルムアルデヒド類=1:1~1:3が好ましく、更に好ましくは1:1.5~1:2.5であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等の金属水酸化物触媒の存在下または、有機アミンなどのアルカリ触媒の存在下で常圧または加圧下で付加・縮合して得られる各種公知の縮合物が用いられる。得られたレゾール型フェノール樹脂は、硫酸などで中和、水洗を行い、ロジン類(b)との反応に用いる。
【0033】
フェノール類としては、フェノール水酸基を持つすべての芳香族化合物が使用でき、石炭酸、クレゾール、p-アミルフェノール、ビスフェノールA、p-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0034】
上記により得られたレゾール型フェノール樹脂(c)は、水酸基価が15~40mgKOH/gの範囲のものを用いる。これにより、ロジン変性フェノール樹脂(A)の親水性基を適正範囲に調整し、印刷時の水の過剰な取り込みを抑制可能となり、ブラン残りが低減できる。尚、水酸基価は中和滴定法にて測定する。レゾール型フェノール樹脂の水酸基価が上記範囲内であれば1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、レゾール型フェノール樹脂の水酸基価を上記範囲にするには、レゾール型フェノール樹脂を合成するときの反応温度、時間、触媒量などを調整すれば良い。
【0035】
本発明におけるポリオール(d)としては、2価アルコールとして、直鎖状アルキレン2価アルコールである1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等が、
分岐状アルキレン2価アルコールである2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ジメチルペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が、
環状アルキレン2価アルコールとして、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等が、
さらに、ポリエチレングリコール(n=2~20)、ポリプロピレングリコール(n=2~20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2~20)等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0036】
さらに、3価以上のアルコールである、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、ジグリセリン、ジトリメチロ-ルプロパン、ジペンタエリスリト-ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0037】
本発明のロジン変性フェノール樹脂(A)は、質量基準で、仕込み処方全量に対し、ロジン類(b)30~85質量%、レゾール型フェノール樹脂(c)7~67質量%、ポリオール(d)3~20質量%が好ましい。ロジン類(b)が30質量%以上、かつ、レゾール型フェノール樹脂(c)が67質量%以下であれば、合成樹脂がゲル化し難くなり反応制御が容易である。ロジン類(b)が85質量%以下、かつ、レゾール型フェノール樹脂(c)が7質量%以上であると、インキに必要な粘度および弾性が得られやすくなる。また、より好ましくはロジン類(b)が35~80質量%、レゾール型フェノール樹脂(c)が10~60質量%である。上記範囲内にすることで、より効果が発現しやすくなる。
【0038】
本発明のロジン変性フェノール樹脂(A)の製造方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば反応釜にロジン類(b)を120~200℃で加熱溶融し、レゾール型フェノール樹脂(c)を添加し、1~10時間反応させる。その後ポリオール(d)、必要に応じて触媒を添加し、200~300℃で5~30時間エステル化反応させる方法や、
ロジン類(b)を120~200℃で加熱溶融し、ポリオール(d)、必要に応じて触媒を添加し、200~300℃で1~20時間エステル化反応させ、180~280℃でレゾール型フェノール樹脂(c)を添加し、200~300℃で1~20時間反応させる方法が挙げられる。
前記触媒としては、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、硫酸、塩酸等の鉱酸、トリフルオロメチル硫酸、トリフルオロメチル酢酸等が例示できる。さらに、テトラブチルジルコネート、テトライソブチルチタネート等の金属錯体、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の金属塩触媒等も使用可能である。これら触媒は、全樹脂中0.01~5質量%の範囲で通常使用される。触媒使用による樹脂の着色を抑制するために、次亜リン酸、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィン等を併用することもできる。
【0039】
上記の方法によって得られたロジン変性フェノール樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポリスチレン換算、溶媒:テトラヒドロフラン)によって求めることができ、重量平均分子量と数平均分子量との比を示すMw/Mnが10~60である。また、Mw/Mnは、15~55であることが好ましい。
Mw/Mnが10~60の範囲であると、インキ流動性が良好かつ、ブラン残りを低減することができる。一方、Mw/Mnが10未満であると、インキ流動性が不足し、Mw/Mnが60を超えると、ブラン残りが顕著に発生する。
また、重量平均分子量は、7,000~120,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~110,000であり、特に好ましくは15,000~80,000である。7,000以上であるとインキの粘弾性が好適で、印刷時の地汚れの発生とブラン残りが抑制できる。120,000以下であると、印刷物の光沢性が好適となる。
【0040】
本発明におけるロジン変性フェノール樹脂(A)の酸価は、5~50mgKOH/gが好ましく、より好ましくは7~40mgKOH/gである。酸価を前記範囲内とすることで、インキにしたときの乳化適性が好適となり、地汚れの発生を抑制できる。なお、酸価は、中和滴定法によって測定した値である。
【0041】
ロジン変性フェノール樹脂(A)に、必要に応じて植物油類、インキ用石油系溶剤、ゲル化剤等を加えて加熱溶解させて、平版印刷インキ用ワニスを製造することができる。
【0042】
平版印刷インキ用ワニスに用いられる植物油類としては、各種公知のものを限定無く使用することができる。具体的には例えば、亜麻仁油、桐油、大豆油、サフラワー油、脱水ひまし油、または、これら植物油の熱重合油、酸化重合油がある。また、亜麻仁油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸メチル、亜麻仁油脂肪酸エチル、大豆油脂肪酸エチル、亜麻仁油脂肪酸プロピル、大豆油脂肪酸プロピル、亜麻仁油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸ブチル、亜麻仁油脂肪酸イソブチル、大豆油脂肪酸イソブチル等といった、前述の植物油類のモノエステルが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を適宜併用しても良い。回収、再生処理した植物油を植物油類として使用することも好ましい。再生植物油を使用することは、廃棄物の削減やCO2排出量の削減が可能となり、環境負荷を低減できる。
【0043】
再生植物油としては、含水率を0.3重量%以下、ヨウ素価を90以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましく、より好ましくはヨウ素価100以上である。含水率を0.3重量%以下にすることにより水分に含まれる塩分等のインキの乳化挙動に影響を与える不純物を除去することが可能となり、ヨウ素価を90以上として再生することにより、乾燥性、すなわち酸化重合性の良いものとすることが可能となり、さらに酸価が3以下の植物油を選別して再生することにより、インキの過乳化を抑制することが可能となる。回収植物油の再生処理方法としては、濾過、静置による沈殿物の除去、および活性白土等による脱色といった方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
平版印刷インキ用ワニスに用いられる平版印刷インキ用石油系溶剤としては、従来公知の印刷インキ用溶剤を特に限定無く使用することができる。具体的には例えば、JXTGエネルギー社製の0号ソルベント、4号ソルベント、5号ソルベント、6号ソルベント、7号ソルベント、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を適宜併用しても良い。特に環境対策として、芳香族炭化水素の含有率が1重量%以下であるアロマフリーソルベントを使用することが好ましい。
【0045】
前記ゲル化剤としては、例えば、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムジブトキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムトリアセチルアセテートなどの各種公知な物を使用できる。
【0046】
平版印刷インキ用ワニスにおける、ロジン変性フェノール樹脂(A)、植物油類、石油系溶剤、ゲル化剤の組成比率は、用途に応じて適宜それぞれ適宜決定すればよいが、通常、
ロジン変性フェノール樹脂5~60質量%程度、
植物油類の0~80質量%程度、
石油系溶剤0~80質量%程度、
ゲル化剤の割合は0~4質量%程度、
である。また、本発明のロジン変性フェノール樹脂(A)と、本発明の範囲外のロジン変性フェノール樹脂や、石油樹脂等を併用することもできる。
【0047】
上記石油樹脂は市販のものを適宜使用することが可能であり、脂肪族系石油樹脂としては、日本ゼオン社製クイントンA100、クイントンB170、クイントンK100、クイントンM100、クイントンR100、クイントンC200S、丸善石油化学社製マルカレッツT-100AS、マルカレッツR-100AS、芳香族系石油樹脂としては、JXTGエネルギー社製ネオポリマーL-90、ネオポリマー120、ネオポリマー130、ネオポリマー140、ネオポリマー150、ネオポリマー170S、ネオポリマー160、ネオポリマーE-100、ネオポリマーE-130、ネオポリマー130S、ネオポリマーS、東ソー社製ペトコールLX、ペトコールLX-HS、ペトコール100T、ペトコール120、ペトコール120HS、ペトコール130、ペトコール140、ペトコール140HM、ペトコール140HM5、ペトコール150、ペトコール150AS、共重合系石油樹脂としては、日本ゼオン社製クイントンD100、クイントンN180、クイントンP195N、クイントンS100、クイントンS195、クイントンU185、クイントンG100B、クイントンG115、クイントンD200、クイントンE200SN、クイントンN295、東ソー社製ペトロタック60、ペトロタック70、ペトロタック90、ペトロタック100、ペトロタック100V、ペトロタック90HM、DCPD系石油樹脂としては、丸善石油化学社製マルカレッツM-890A、マルカレッツM-845A、日本ゼオン社製クイントン1325、クイントン1345、クイントン1500、クイントン1525L、クイントン1700等が挙げられる。
【0048】
平版印刷インキ用ワニスは各種公知の方法にて製造することができる。たとえば、上記各成分を100~250℃、好ましくは120~200℃で加熱溶解し、製造することができる。
【0049】
本発明のロジン変性フェノール樹脂(A)(上記の平版印刷インキワニスとして配合しても良い)、顔料、石油系溶剤および添加剤により平版印刷インキが製造される。
本発明で使用される顔料としては、酸化チタンなどの白顔料、ミネラルファーネスイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS,ハンザイエローG,キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG,タートラジンレーキなどの黄顔料、インダスレンブリリアントオレンジRK、ピラゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKなどの橙色顔料、パーマネントレッド4R、リオノールレッド、ピラロゾンレッド、ウオッチングレッツドカルシウム塩、レーキレッドD,ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどの赤色顔料、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどの紫色顔料、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどの青色顔料、ピグメントグリーンB、マラカイドグリーンレーキ、ファイナスイエリーグリーンGなどの緑色顔料、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラックなどの黒色顔料などが挙げられる。
【0050】
また、平版印刷インキ中への、その他添加剤として、耐摩擦、ブロッキング防止、スベリ、スリキズ防止を目的とする各種添加剤を使用することができ、必要に応じて、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、等を添加してもよい。
【0051】
本発明の平版印刷インキの組成の一例としては、
・本発明により製造されるロジン変性フェノール樹脂(A)を
含有する平版印刷インキ用ワニス 5~75質量%
・植物油類 0~80質量%
・石油系溶剤 0~80質量%
・顔料 5~40質量%
・その他の樹脂 0~40質量%
・その他添加剤 0~5質量%
などが好ましい組成として挙げられる。
その他の樹脂とは、一般的に平版印刷インキ組成物に用いられる、本発明以外のロジン変性フェノール樹脂(またはロジン変性フェノール樹脂ワニス)、石油樹脂(または石油樹脂ワニス)、あるいはアルキッド樹脂等を表す。
【0052】
本発明の平版印刷インキは、通常、湿し水を使用する平版オフセット印刷に好適に使用することができる。しかし、このような実施形態に限らず、上記インキは、湿し水を使用しない水無し平版印刷においても好適に使用することができる。
本発明の印刷物を得る印刷機についてはオフセット印刷機であれば特に限定することなく使用することができ、オフセット輪転印刷機、新聞印刷機、枚葉印刷機等が挙げられる。
【0053】
上記インキが適用される基材は、平版印刷に用いられる用紙を特に限定すること無く使用することができる。使用可能な基材の具体例として、アート紙、コート紙、キャストコート紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポなどの合成紙等が挙げられる。
【実施例0054】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、本発明において、特に断らない限り、「部」は、「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0055】
(重量平均分子量および数平均分子量)
本発明において、ロジン変性フェノール樹脂(A)の重量平均分子量および数平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(HLC-8320)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
【0056】
(酸価)
ロジン変性フェノール樹脂(A)の酸価は、中和滴定法に準じて測定した。具体的には、先ず、ロジン変性フェノール樹脂2gを精秤し、キシレン:エタノール=2:1の質量比で混合した溶媒20mLに溶解させた。次いで、先に調製したロジン変性フェノール樹脂の溶液に、指示薬として3質量%のフェノールフタレイン溶液を3mL加えた後に、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で中和滴定を行った。酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0057】
レゾール型フェノール樹脂(c)の水酸基価は、中和滴定法によって測定した。具体的には、先ず、レゾール型フェノール樹脂(c)のキシレン溶液(固形分60%)4gを精秤し、ピリジン20mlを加え溶解する。これに、無水フタル酸とイミダゾールをピリジンに溶解したエステル化剤を10ml加え、100℃で撹拌しながら30分反応する。冷却後、蒸留水2mlを加えて撹拌し、さらにアセトン30mlを加える。これに指示薬として3質量%のフェノールフタレイン溶液を3mL加えた後に0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で中和滴定を行った。水酸基価の単位はmgKOH/gである。
【0058】
(ロジン類中のテルペン類含有量の定量)
ロジン類(b)中のモノテルペン類(a1)、およびセスキテルペン類(a2)の含有量は、質量分析計にて各成分を同定し、その後ガスクロマトグラフィーにてロジン類(b)の全ピーク面積100%に対するピーク面積比(%)により算出した。測定装置は、アジレント・テクノロジー(株)製ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた。ガスクロマトグラフ部は、6890N、質量分析計は、5973Nを使用した。カラムには、HP-5MS 30m×0.25mm id、0.25μmを使用し、キャリアーガスとして、2.0ml/minの流量のヘリウムガスを用いた。検出器条件は、フルスキャン(m/z40-500)、250℃トランスファーラインにて測定した。
【0059】
(ロジン中の共役二重結合を有する環式ジテルペン)
ロジン類(b)中の共役二重結合を有する環式ジテルペンの含有量は、ガスクロマトグラフィーのピーク面積比によって求めることができ、質量分析計にて各成分を同定し、その後ロジン類(b)の全ピーク面積100%に対するピーク面積比(%)により算出した。測定装置は、アジレント・テクノロジー(株)製ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた。ガスクロマトグラフ部は、6890N、質量分析計は、5973Nを使用した。カラムには、HP-5MS 30m×0.25mm id、0.25μmを使用し、キャリアーガスとして、2.0ml/minの流量のヘリウムガスを用いた。検出器条件は、フルスキャン(m/z40-500)、250℃トランスファーラインにて測定した。
【0060】
(レゾール型フェノール樹脂の合成例1)
撹拌機、冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、パラオクチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド350部、98%水酸化カルシウム5部、キシレン882部を加えて、90℃で4時間反応させた。その後、水道水220部を加え、98%硫酸を25部滴下し、中和、水洗を行った。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分(固形分)60%のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液を得て、これをレゾール液R1とした。このレゾール型フェノール樹脂の水酸基価は37.0であった。
【0061】
(レゾール型フェノール樹脂の合成例2)
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、パラオクチルフェノール500部、パラ-t-ブチルフェノール182部、パラノニルフェノール533部、92%パラホルムアルデヒド395部、98%水酸化カルシウム20部、キシレン1052部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、90℃で6時間反応させた。水道水260部を加え、98%硫酸を103部滴下し、中和、水洗を行った。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分(固形分)60%のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液を得て、これをレゾール液R2とした。このレゾール型フェノール樹脂の水酸基価は20.9であった。
【0062】
(レゾール型フェノール樹脂の合成例3)
攪拌機、還流冷却器、温度計付4つ口フラスコに、パラオクチルフェノール200部、パラ-t-ブチルフェノール583部、92%パラホルムアルデヒド475部、98%水酸化カルシウム4部、キシレン813部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら昇温し、90℃で2時間反応させた。水道水203部を加え、98%硫酸を21部滴下し、中和、水洗を行った。撹拌、静置後、上層部を取り出し、不揮発分(固形分)60%のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液を得て、これをレゾール液R3とした。このレゾール型フェノール樹脂の水酸基価は44.2であった。
【0063】
(実施例1)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.4%、セスキテルペン類0.7%、共役二重結合を有する環式ジテルペン56%を含有するガムロジンを585部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、360部(固形分として)を2時間かけて滴下した。次いで、255℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン54部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、12時間反応させ、重量平均分子量36500、重量平均分子量/数平均分子量=38、酸価22の樹脂1を得た。
【0064】
(実施例2)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.8%、セスキテルペン類2.0%、共役二重結合を有する環式ジテルペン48%を含有するガムロジンを702部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R2、235部(固形分として)を2時間かけて滴下した。次いで、255℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン62部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、10時間反応させ、重量平均分子量21800、重量平均分子量/数平均分子量=28、酸価18の樹脂2を得た。
【0065】
(実施例3)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.4%、セスキテルペン類0.9%、共役二重結合を有する環式ジテルペン82%を含有するガムロジンを640部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、301部(固形分として)を2時間かけて滴下した。次いで、252℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン58部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、10時間反応させ、重量平均分子量24600、重量平均分子量/数平均分子量=30、酸価20の樹脂3を得た。
【0066】
(実施例4)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.1%、セスキテルペン類0.4%、共役二重結合を有する環式ジテルペン50%を含有するトールロジンを270部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、717部(固形分として)を4時間かけて滴下した。次いで、255℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン12部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、9時間反応させ、重量平均分子量38200、重量平均分子量/数平均分子量=36、酸価53の樹脂4を得た。
【0067】
(実施例5)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.3%、セスキテルペン類1.1%、共役二重結合を有する環式ジテルペン36%を含有するガムロジンを622部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R2、280部(固形分として)を2時間かけて滴下した。次いで、255℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン95部、パラトルエンスルホン酸3部を添加し、12時間反応させ、重量平均分子量51200、重量平均分子量/数平均分子量=48、酸価4の樹脂5を得た。
【0068】
(実施例6)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.4%、セスキテルペン類0.7%、共役二重結合を有する環式ジテルペン54%を含有するガムロジンを802部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R2、120部(固形分として)を1.5時間かけて滴下した。次いで、260℃まで昇温し、撹拌しながらペンタエリスリトール76部、パラトルエンスルホン酸2部を添加し、9時間反応させ、重量平均分子量4700、重量平均分子量/数平均分子量=12、酸価10の樹脂6を得た。
【0069】
(実施例7)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.8%、セスキテルペン類1.9%、共役二重結合を有する環式ジテルペン44%を含有するガムロジンを565部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、376部(固形分として)を2.5時間かけて滴下した。次いで、255℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン45部、ペンタエリスリトール13部、酸化カルシウム1部を添加し、11時間反応させ、重量平均分子量14200、重量平均分子量/数平均分子量=18、酸価21の樹脂7を得た。
【0070】
(実施例8)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.8%、セスキテルペン類1.9%、共役二重結合を有する環式ジテルペン44%を含有するガムロジンを577部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、369部(固形分として)を2.5時間かけて滴下した。次いで、255℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン47部、ペンタエリスリトール6部、酸化亜鉛1部を添加し、12時間反応させ、重量平均分子量39100、重量平均分子量/数平均分子量=40、酸価24の樹脂8を得た。
【0071】
(実施例9)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.4%、セスキテルペン類1.0%、共役二重結合を有する環式ジテルペン37%を含有するガムロジンを431部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、527部(固形分として)を3.5時間かけて滴下した。次いで、250℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン41部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、16時間反応させ、重量平均分子量131200、重量平均分子量/数平均分子量=58、酸価14の樹脂9を得た。
【0072】
(比較例A)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類、セスキテルペン類を含有せず、共役二重結合を有する環式ジテルペン51%を含有するガムロジンを624部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、321部(固形分として)を2時間かけて滴下した。次いで、250℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン54部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、10時間反応させ、重量平均分子量9800、重量平均分子量/数平均分子量=9、酸価28の樹脂Aを得た。
【0073】
(比較例B)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類1.0%、セスキテルペン類2.8%、共役二重結合を有する環式ジテルペン44%を含有するガムロジンを540部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、409部(固形分として)を2時間かけて滴下した。次いで、250℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン50部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、15時間反応させ、重量平均分子量86200、重量平均分子量/数平均分子量=58、酸価13の樹脂Bを得た。
【0074】
(比較例C)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.2%、セスキテルペン類1.0%、共役二重結合を有する環式ジテルペン36%を含有するガムロジンを510部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R1、432部(固形分として)を2時間かけて滴下した。次いで、250℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン46部、ペンタエリスリトール11部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、16時間反応させ、重量平均分子量108200、重量平均分子量/数平均分子量=62、酸価12の樹脂Cを得た。
【0075】
(比較例D)
撹拌機、水分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、モノテルペン類0.8%、セスキテルペン類1.4%、共役二重結合を有する環式ジテルペン51%を含有するガムロジンを600部仕込み、窒素を吹き込みながら180℃で融解し、200℃でレゾール液R3、353部(固形分として)を2時間かけて滴下した。次いで、255℃まで昇温し、撹拌しながらグリセリン46部、パラトルエンスルホン酸1部を添加し、11時間反応させ、重量平均分子量22400、重量平均分子量/数平均分子量=17、酸価25の樹脂Dを得た。
【0076】
実施例の樹脂1~9、比較例の樹脂A~Dの配合組成、樹脂物性を表1に示す。
【0077】
【0078】
<ワニスの実施例、比較例>
撹拌機、水分離器付還流冷却器、温度計付き4つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂(樹脂1~9、樹脂A~D)を、表2に示した配合組成で仕込み、窒素ガスを吹き込みながら190℃にて1時間加熱撹拌してワニス(ワニス1~9、ワニスA~D)を製造した。表2中のAFソルベント7は石油系溶剤(JXTGエネルギー社製AFソルベント7号)、ALCHはゲル化剤(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を用いた。
【0079】
【0080】
<平版印刷インキの実施例、比較例>
前記方法で得られたワニス(1~9、A~D)と、カーボン顔料三菱カーボンMA7(三菱ケミカル社製)と、石油系溶剤(JXTGエネルギー社製AFソルベント7号)とを、表3の配合組成にて、常法に従い三本ロールを用いて練肉分散し、実施例1~9、比較例A~Dのインキを製造した。
【0081】
【0082】
実施例および比較例で得られた平版印刷インキについて、下記の方法で光沢性、流動性、ブラン残りを評価した。評価結果を表4に示す。
【0083】
<光沢性の評価>
光沢性は、プルーフバウ展色機にて、三菱製紙社製パールコートに同一濃度に展色し、光沢計グロスメーターモデルGM-26((株)村上色彩技術研究所製)にて60°光沢値を測定した。数値が高い程、光沢性が良いことを表す。◎~△であれば、実用上好ましい。
(評価基準) ◎:60以上、〇:56以上~60未満、△:50以上~56未満、×:50未満
【0084】
<流動性の測定方法>
2.1ccを半球状の窪みのついた金属板にインキを入れ、15分間静置させた後、60度に傾け10分間で流れた長さを測定し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。値が高いほどインキのしまりが少なく、流動性が良好であることを示す。◎~△であれば、実用上好ましい。
(評価基準)◎:80mm以上、〇:70mm以上~80mm未満、△:60mm以上~70mm未満、×:60mm未満
【0085】
<ブラン残り評価>
印刷試験は、オフ輪印刷機三菱重工株式会社製NEO800を用いて、一般的な絵柄、濃度にて以下の条件にて、50000部連続印刷した時の印刷物、ブランケットを目視にて観察し、ブラン残りの状態を確認した。
評価が◎~△であれば、実用上好ましい。なお「水巾の下限」とは、正常な印刷が可能である、湿し水の最低供給量を意味し、「水ダイヤル」とは、上記湿し水の供給量を調整するために、上記印刷機に備えられたダイヤルを意味する。
CTP版:富士フイルム株式会社製XP-F
用紙:三菱製紙株式会社製パールコートN
湿し水:東洋インキ株式会社製アクアユニティWKKの2%水溶液
印刷速度:600rpm
チラー設定温度:25℃
水ダイアル値:水巾下限より2%高い値
(評価基準)
◎:印刷物にインキ転移不良による絵柄の欠損無く、ブランケットにインキ・紙粉混合成分の付着少ない
〇:印刷物にインキ転移不良による絵柄の欠損無いが、ブランケットにインキ・紙粉混合成分の付着あり。
△:印刷物にインキ転移不良による絵柄の欠損がわずかにあり、ブランケットにインキ・紙粉混合成分の付着あり。
×:印刷物にインキ転移不良による絵柄の欠損があり、ブランケットにインキ・紙粉混合成分の付着が多く堆積。
【0086】
【0087】
実施例1~9は比較例A~Dに比べ良好な結果を示した。特に実施例1~2、7~8は、光沢値、流動性、ブラン残りが特に良好な結果であった。
モノテルペン類、セスキテルペン類のいずれも含有しないロジン類を使用した比較例Aは、重量平均分子量/数平均分子量が10を下回り、光沢値、流動性が劣り、また、ブラン残りが多く堆積しており、実用に適さないレベルであった。モノテルペン類、セスキテルペン類の含有量の総和が3.5%を上回った比較例Bは、流動性が劣っていた。さらに、エステル化反応時間が長く、重量平均分子量/数平均分子量が60以上である比較例Cはブラン残りが劣り、共に実用に適さないレベルであった。また、レゾール型フェノール樹脂に水酸基価が40mgKOH/g以上のものを用いた比較例Dは、ブラン残りが劣っていた。