(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054014
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】金属パターンの検査方法および集束イオンビーム装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20220330BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20220330BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20220330BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H01J37/20 F
H01J37/317 D
H01J37/28 Z
H01L21/66 S
H01L21/66 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160965
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【テーマコード(参考)】
4M106
5C001
5C033
5C034
【Fターム(参考)】
4M106AA09
4M106AA11
4M106BA03
4M106CA16
4M106DE02
4M106DE18
4M106DE24
4M106DH07
4M106DH24
4M106DJ27
5C001BB07
5C033UU03
5C033UU10
5C034DD05
5C034DD09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属パターンの断線欠陥位置および短絡位置の同定を容易に行える金属パターンの検査方法および集束イオンビーム装置を提供する。
【解決手段】金属パターン38にパルス状の電圧を印加し、パルス状の電圧の周期を集束イオンビームの走査周期より短く設定し、二次荷電粒子像における断線部分で分離された金属パターンのうち、パルス状の電圧が印加される部分に対応する領域のみを時間変動する表面電位を反映させた第1パターンの領域38Aとして形成し、時間的に変化していない表面電位に依存する第2パターンの領域38Cとの境界領域を分離部分38Bとして検出し、分離部分38Bの有無に基づいて金属パターンの断線あるいは短絡を検出する。
【選択図】
図3-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に沿って金属パターンが形成された被検査基板の前記金属パターンに電圧印加し、
前記金属パターンを含む検査領域を、集束イオンビームで前記検査領域の全体に亘ってラスタスキャン方式にて周期的に順次走査して、前記被検査基板から放出される二次荷電粒子の強度に基づいて前記検査領域の二次荷電粒子像として表示し、
前記二次荷電粒子像から前記金属パターンの断線あるいは短絡を検出する金属パターンの検査方法であって、
前記金属パターンに時間変化するパルス状の電圧を印加し、
前記パルス状の電圧の周期を、前記集束イオンビームの縦あるいは横の走査周期より短く設定する
ことを特徴とする金属パターンの検査方法。
【請求項2】
前記二次荷電粒子像における、前記パルス状の電圧が印加されている前記金属パターンの部分には時間変化する前記パルス状の電圧に依存した第1パターンを表示させ、
前記パルス状の電圧が印加されない前記金属パターンの部分には時間変化のない電位に依存した第2パターンとして表示させ、
前記第1パターンと前記第2パターンの2領域の境界部分を分離部分として検出し、
前記分離部分の有無に基づいて金属パターンの断線を検出する
請求項1に記載の金属パターンの検査方法。
【請求項3】
前記二次荷電粒子像における、前記パルス状の電圧が印加されている前記金属パターンの部分には時間変化する前記パルス状の電圧に依存した第1パターンを表示させ、
前記パルス状の電圧が印加されない前記金属パターンの部分には時間変化のない電位に依存した第2パターンとして表示させ、
互いに電気的に独立する設計パターン画像と、前記二次荷電粒子像と、を比較して短絡部分を検出する
請求項1に記載の金属パターンの検査方法。
【請求項4】
前記集束イオンビームの走査方向を、前記金属パターンの延在方向と直交する方向に設定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属パターンの検査方法。
【請求項5】
表面に沿って金属パターンが形成された被検査基板に、集束イオンビームを照射する集束イオンビーム光学系と、
前記集束イオンビームの照射に伴って前記被検査基板より放出される二次荷電粒子の強度を検出する二次荷電粒子検出器と、
前記二次荷電粒子検出器からの検出値に基づいて前記被検査基板の二次荷電粒子像として表示する画像生成部と、
前記被検査基板に電圧を印加することができる機構と、
を備える集束イオンビーム装置であって、
前記集束イオンビーム光学系が、前記被検査基板における前記金属パターンを含む検査領域の全体に亘って、集束イオンビームでラスタスキャン方式にて周期的に順次走査するように設定され、
前記金属パターンに時間変化するパルス状の電圧が印加されるように設定され、
前記パルス状の電圧の周期が、前記集束イオンビームの縦の走査周期より短く設定され、
前記画像生成部が、
前記二次荷電粒子像における、前記パルス状の電圧が印加されている前記金属パターンの部分には時間変化する前記パルス状の電圧に依存した第1パターンと、
前記パルス状の電圧が印加されない前記金属パターンの部分には時間変化のない電位に依存した第2パターンと、
を表示する
ことを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項6】
前記集束イオンビームの走査方向を、前記金属パターンの延在方向と直交する方向に設定する、
請求項5に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項7】
前記画像生成部で作成された前記二次荷電粒子像に基づいて検出された前記金属パターンの断線部分に堆積用ガスを供給するように制御を行う成膜制御部を備え、
前記集束イオンビーム光学系は、前記集束イオンビームの照射により、前記断線部分に前記堆積用ガスを分解して修正用CVD膜を堆積させる、
請求項5または請求項6に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項8】
前記集束イオンビーム光学系は、前記画像生成部で作成された前記二次荷電粒子像に基づいて検出された前記金属パターンの短絡部分に、前記集束イオンビームの照射を行い、前記短絡部分をスパッタリングして除去することが可能である、
請求項5または請求項6に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項9】
前記被検査基板に電圧を印加することができる機構は、前記金属パターンに前記パルス状の電圧を印加するプロービング機構を備える、請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の集束イオンビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属パターンの検査方法および集束イオンビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集束イオンビーム装置を用いて、配線に交流信号を印加しながら集束イオンビームをスキャンし、二次荷電粒子を検出して表面電位分布を画像として表示する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来方法によれば、得られた画像を用いて配線あるいは短絡不良の原因を分析することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の方法を用いて配線不良を検査した場合、得られた画像では、配線の途中で断線が発生している場合、印加されている電圧がかかる断線以外の部分は表面電位が印加電圧となり、その表面電位に応じた二次電子放出量となる一方で、断線部分は、その断線の度合い(抵抗値)で印加電圧とは関係のない表面電位となるため、断線以外の部分とは異なる二次電子放出量となる。これにより断線部分とこれ以外の部分の二次電子放出量差に基づいたコントラストのついた画像が得られる。しかしながら、このような従来の配線不良の検査では、断線部分の状態により断線有無のコントラストが低い場合もあり、欠陥位置を確認しづらいといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、金属パターンの断線欠陥位置の同定を容易に行え、しかも金属パターンの短絡の検出を容易にする検査方法および集束イオンビーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、表面に沿って金属パターンが形成された被検査基板の前記金属パターンに電圧印加し、前記金属パターンを含む検査領域を、集束イオンビームで前記検査領域の全体に亘ってラスタスキャン方式にて周期的に順次走査して、前記被検査基板から放出される二次荷電粒子の強度に基づいて前記検査領域の二次荷電粒子像として表示し、前記二次荷電粒子像から前記金属パターンの断線あるいは短絡を検出する金属パターンの検査方法であって、前記金属パターンに時間変化するパルス状の電圧を印加し、前記パルス状の電圧の周期を、前記集束イオンビームの縦あるいは横の走査周期より短く設定することを特徴とする。
【0007】
上記態様としては、前記二次荷電粒子像における、前記パルス状の電圧が印加されている前記金属パターンの部分には時間変化する前記パルス状の電圧に依存した第1パターンを表示させ、前記パルス状の電圧が印加されない前記金属パターンの部分には時間変化のない電位に依存した第2パターンとして表示させ、
前記第1パターンと前記第2パターンの2領域の境界部分を分離部分として検出し、前記分離部分の有無に基づいて金属パターンの断線を検出することが好ましい。
【0008】
上記態様としては、前記二次荷電粒子像における、前記パルス状の電圧が印加されている前記金属パターンの部分には時間変化する前記パルス状の電圧に依存した第1パターンを表示させ、前記パルス状の電圧が印加されない前記金属パターンの部分には時間変化のない電位に依存した第2パターンとして表示させ、互いに電気的に独立する設計パターン画像と、前記二次荷電粒子像と、を比較して短絡部分を検出することが好ましい。
【0009】
上記態様としては、前記集束イオンビームの走査方向を、前記金属パターンの延在方向と直交する方向に設定することが好ましい。
【0010】
本発明の他の態様は、表面に沿って金属パターンが形成された被検査基板に、集束イオンビームを照射する集束イオンビーム光学系と、前記集束イオンビームの照射に伴って前記被検査基板より放出される二次荷電粒子の強度を検出する二次荷電粒子検出器と、前記二次荷電粒子検出器からの検出値に基づいて前記被検査基板の二次荷電粒子像として表示する画像生成部と、前記被検査基板に電圧を印加することができる機構と、を備える集束イオンビーム装置であって、前記集束イオンビーム光学系が、前記被検査基板における前記金属パターンを含む検査領域の全体に亘って、集束イオンビームでラスタスキャン方式にて周期的に順次走査するように設定され、前記金属パターンに時間変化するパルス状の電圧が印加されるように設定され、前記パルス状の電圧の周期が、前記集束イオンビームの縦の走査周期より短く設定され、前記画像生成部が、
前記二次荷電粒子像における、前記パルス状の電圧が印加されている前記金属パターンの部分には時間変化する前記パルス状の電圧に依存した第1パターンと、前記パルス状の電圧が印加されない前記金属パターンの部分には時間変化のない電位に依存した第2パターンと、を表示することを特徴とする。
【0011】
上記態様としては、前記集束イオンビームの走査方向を、前記金属パターンの延在方向と直交する方向に設定することが好ましい。
【0012】
上記態様としては、前記画像生成部で作成された前記二次荷電粒子像に基づいて検出された前記金属パターンの断線部分に堆積用ガスを供給するように制御を行う成膜制御部を備え、前記集束イオンビーム光学系は、前記集束イオンビームの照射により、前記断線部分に前記堆積用ガスを分解して修正用CVD膜を堆積させることが好ましい。
【0013】
上記態様としては、前記集束イオンビーム光学系は、前記画像生成部で作成された前記二次荷電粒子像に基づいて検出された前記金属パターンの短絡部分に、前記集束イオンビームの照射を行い、前記短絡部分をスパッタリングして除去することが可能であることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記被検査基板に電圧を印加することができる機構は、前記金属パターンに前記パルス状の電圧を印加するプロービング機構を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属パターンの断線欠陥位置の同定を容易に行え、しかも短絡の検出が可能な金属パターンの検査方法および集束イオンビーム装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の概略構成を示す要部断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る金属パターンの検査方法を示す斜視図である。
【
図3-1】
図3-1は、本発明の第1の実施の形態に係る金属パターンの検査方法における検査領域と集束イオンビームの走査方向を示す平面説明図ある。
【
図3-2】
図3-2は、本発明の第1の実施の形態に係る金属パターンの検査方法に関し、X方向のラスタスキャン電圧(X)とその周期Tx示す図である。
【
図3-3】
図3-3は、本発明の第1の実施の形態に係る金属パターンの検査方法に関し、Y方向の走査方向ラスタスキャン電圧(Y)とその周期Tyを示す図である。
【
図3-4】
図3-4は、本発明の第1の実施の形態に係る金属パターンの検査方法に関し、プロービング電圧(Vp)とその周期TVpを示す図である。
【
図4-1】
図4-1は、本発明の第1の実施の形態に係る金属パターンの検査方法で得られた二次荷電粒子像を示す図である。
【
図4-2】
図4-2は、比較例の二次荷電粒子像を示す図である。
【
図4-3】
図4-3は、互いに隣接して配置され、互いに電気的に独立する設計パターンを示す説明図である。
【
図4-4】
図4-4は、
図4-3に示した、互いに電気的に独立する設計パターンに対応する配線部を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置で行う配線の断線検出と断線部分の修正を行う制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る集束イオンビーム装置の概略構成を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る金属パターンの検査方法は、半導体装置における配線、薄型ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)の配線、およびフォトマスクのマスクパターンなどの金属パターンにおける断線あるいは短絡の検出に適用できる。また、本発明に係る集束イオンビーム装置は、二次荷電粒子を検出して二次荷電粒子像を生成して断線検出に利用すること以外に、金属パターン上の絶縁膜の除去や、CVD成膜を行う機能や、金属パターンに電圧を印加したりするためのプロービング機構などを備えている。
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る金属パターンの断線あるいは短絡の検査方法および集束イオンビーム装置の詳細を図面に基づいて説明する。なお、図面は模式的なものであり、各部材の寸法や寸法の比率や数、形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0019】
[第1の実施の形態]
(集束イオンビーム装置の概略構成)
金属パターンの検査方法の説明に先駆けて、この方法を実施する集束イオンビーム装置について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置1の概略構成を示している。集束イオンビーム装置1は、差動排気装置2と、集束イオンビームカラム(以下、FIBカラムという)3と、被検査基板30を載せる基板支持ステージ4と、昇降手段5と、移動制御部20と、差動排気制御部21と、画像生成部22と、成膜制御部23と、FIB制御部24と、を備える。
【0021】
図2に示すように、本実施の形態において検査を行う被検査基板30は、例えば、SiO
2でなる絶縁基板31の表面に、互いに平行な複数の配線部34~42と、を備える。これら配線部34~42は、集束イオンビーム装置1で断線部分あるいは短絡部分を検出する対象となる金属パターンである。
【0022】
なお、
図2に示す被検査基板30は、説明のためのサンプルであり、配線部35には、途中で分離部分(以下、断線部分という)35Bが生じており、部分35Aと部分35Cに分断されている。同様に、配線部38,41においても、途中で断線部分38B,41Bが生じており、部分38A,41Aと部分38C,41Cに分断されている。また、配線部36には、途中で断線部分36Bが生じている。同様に、配線部39,42においても、途中で断線部分39B,42Bが生じている。勿論、通常の検査においては、被検査基板30としては、断線欠陥の有無が判明していないものを用いる。
【0023】
基板支持ステージ4は、被検査基板30を載せた状態で支持するようになっている。基板支持ステージ4は、図示しない駆動手段が移動制御部20によって制御されることにより、X-Y方向に移動されるようになっている。
【0024】
図1に示すように、差動排気装置2は、ヘッド部6を備える。ヘッド部6は、被検査基板30の面積に比較してごく小さな面積の円盤形状の金属プレートによって構成されている。ヘッド部6は、基板支持ステージ4がX-Y方向に移動することにより、被検査基板30の任意領域に対向し得るようになっている。この差動排気装置2は、差動排気制御部21によって制御される。
【0025】
ヘッド部6の下面には、同心状(同心円上)に配置された3つの環状溝7A,7B,7Cが形成されている。ヘッド部6における、これら複数の環状溝7A,7B,7Cのうち最も内側の環状溝7Aには、堆積用ガス供給パイプ10を介して堆積用ガス送出部11が連結されている。この堆積用ガス送出部11は、成膜制御部23により制御される。
【0026】
環状溝7B,7Cには排気用パイプ8を介して真空ポンプ9が接続されている。真空ポンプ9は、差動排気制御部21によって制御されている。ヘッド部6は、被検査基板30に下面を対向させた状態で、環状溝7B,7Cからの空気吸引作用により、ヘッド部6の中央の下方を高真空状態に維持する機能を備える。そして、この状態で、環状溝7Aから堆積用ガスを供給することにより、例えば、
図2に示した断線部分35B,36B,38B,39B,41B,42Bなどに対して修復用のCVD成膜を行うことを可能にしている。
【0027】
図1に示すように、FIBカラム3は、ヘッド部6における上面側に設置され、ヘッド部6の中央開口部に先端部が埋没するように嵌め込まれた状態で連結されている。FIBカラム3の上端部には、FIBカラム3および差動排気装置2を昇降させる昇降手段5が設けられている。昇降手段5は、図示しない支持フレーム側に支持されている。この昇降手段5は、FIBカラム3および差動排気装置2を昇降させる機能を有する。この昇降手段5は、上記の移動制御部20によって制御される。
【0028】
FIBカラム3は、鏡筒12と、鏡筒12内に内蔵された集束イオンビーム光学系13と、を備える。FIBカラム3の先端部からは、集束イオンビームIbを被検査基板30の表面に向けて出射するようになっている。集束イオンビーム光学系13は、イオン源14と、集束レンズ15と、絞り16と、偏向器17と、対物レンズ18と、を備えている。偏向器17は、FIB制御部24により、検査領域A(
図2参照)内を集束イオンビームIbのビームスポットが所定の走査方向S(
図2参照)の走査動作を行いながらラスタスキャン方式にて周期的に走査するようになっている。
【0029】
鏡筒12の下部には、例えば、シンチレータでなる二次荷電粒子検出器19が設けられており、集束イオンビームIbの照射に伴って被検査基板30側から放出される二次荷電粒子の強度を検出するようになっている。この二次荷電粒子検出器19は、画像生成部22に接続されている。画像生成部22では、二次荷電粒子検出器19からの検出値に基づいて被検査基板30の表面電位分布を二次荷電粒子像として生成し表示することが可能である。
【0030】
図1に示すように、鏡筒12の下部には、被検査基板30に電圧印加することができる機構として、電圧印加用プローブ25が被検査基板30(図中矢印Rで示す進退方向)へ向けて出没可能なプロービング機構が設けられている。本実施の形態では、電圧印加用プローブ25がパルス電源44に接続され、被検査基板30の配線部34~42に接触して電気的に接続可能に設定されている。このように、電圧印加用プローブ25を用いることにより、配線部34~42に電圧を印加することができる。
【0031】
本実施の形態では、パルス状の電圧(以下、パルス電圧またはプロービング電圧ともいう)の周期を、上記のラスタスキャン方式の縦方向(y方向)の走査周期よりも短く設定している。このため、本実施の形態では、
図2および
図4-1に示すように、上記の二次荷電粒子像における、例えば、断線部分38Bで分離された配線部38の部分38Aのみに、パルス電圧が印加される。この部分38Aのみで表面電位が時間変化するため、縞々状の第1パターンとして表示されるように設定されている。すなわち、電圧印加用プローブ25からのパルス電圧が及ばない部分38Cでは、表面電位が時間変化しないため、モノトーンの第2パターンとしての画像となる。このような断線に伴う表示状態の明確な差異は、他の断線部分が生じた配線部においても同様である。
【0032】
(金属パターンの検査方法および作用・動作)
次に、本発明の第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置1を用いて、被検査基板30における金属パターンの検査方法および作用について説明する。なお、この実施の形態に係る集束イオンビーム装置1では、
図5に示すフローチャートに基づいて動作を行う。
【0033】
先ず、集束イオンビーム装置1の基板支持ステージ4の上に被検査基板30を載せて固定する。基板支持ステージ4を移動制御部20からの制御信号により制御して、
図2に示すように、未処理の検査領域Aに集束イオンビームIbが照射可能になるようにFIBカラム3を相対移動させる(ステップS1)。
【0034】
図1に示すように、電圧印加用プローブ25を進退方向R(矢印で示す)に伸ばして、
図2に示すように、配線部34~42のうちの任意の配線部に接続させる(ステップS2)。
【0035】
電圧印加用プローブ25にパルス電圧を印加する(ステップS3)。なお、ステップS2の工程において、既に電圧印加用プローブ25にパルス電圧を印加させておいてもよい。
【0036】
検査領域A内において、集束イオンビームIbのビームスポットをラスタスキャンさせる。このとき、パルス電圧の周期を、縦方向(Y方向)の走査周期(画像掃引周期)より短く設定する。このようにラスタスキャンして、二次荷電粒子検出器19から得られた検出値に基づいて二次荷電粒子像を画像生成部22で作成する(ステップS4)。
【0037】
上記任意の配線部(
図2においては配線部38)において、二次荷電粒子像内に時間的に変化している第1パターンの領域と、時間的に変化していない第2パターンの領域特定する(ステップS5)。二次荷電粒子像内に時間的に変化していない第2パターン(モノトーンのパターン)の領域がない場合は、スタートへ戻る。
【0038】
二次荷電粒子像内に時間的に変化していない第2パターンの領域がある場合は、第1パターンの領域と第2パターンの領域との間の領域を断線部分と特定する(ステップS6)。
【0039】
特定した断線部分を、集束イオンビーム光学系13を用いて修復する(ステップS7)。具体的には、成膜制御部23により、堆積用ガス送出部11を制御して堆積用ガスを環状溝7Aに供給して、集束イオンビームIbにより堆積用ガスを分解してCVD成膜を行う。
【0040】
未処理の観察領域としての検査領域Aがあるか否か判定する(ステップS8)。
【0041】
未処理の観察領域としての検査領域Aがない場合は、処理が終了する。未処理の検査領域Aがある場合は、スタートに戻る。
【0042】
(第1パターンの作成条件)
図3-1に示すように、本実施の形態では、検査領域Aにおいて集束イオンビームIbの走査方向をX方向(図中、「スキャンX」で示す方向)としてラスタスキャン方式の周期的な走査を行う。
図3-2は、ラスタスキャンにおけるX方向(横方向)のラスタスキャン電圧(X)およびその周期Txを示す。
図3-3は、ラスタスキャンにおけるY方向(縦方向)のラスタスキャン電圧(Y)およびその周期Tyを示す。
図3-4は、電圧印加用プローブ25に印加するプロービング電圧(Vp)とその周期TVpを示す。本実施の形態では、例えば、配線部38に着目すると、配線の延在方向がY方向(
図3-1中、「スキャンY」で示す方向)になるように設定している。本実施の形態では、配線の延長方向がY方向となる場合を例に説明したが、Y方向に限らずいずれの方向でもよい。また、本実施の形態において、上記の各周期は、「Tx<TVp<Ty」の関係となるように設定されている。
【0043】
プロービング電圧の周期TVpをラスタスキャンのY方向走査周期(Ty)よりも、短く設定しているため、
図3-1に示すように、集束イオンビームIbのX方向の走査線がY方向に移動するに従い、プロービング電圧の高さが低い(L)と高い(H)を繰り返す。断線部分38Bで分離され、電圧印加用プローブ25に接続されている部分38Aのみにパルス電圧が印加されるため、部分38Aのみが明るい領域と暗い領域を交互に繰り返す縞々状に表示された第1パターンの領域となる。すなわち、電圧印加用プローブ25からのパルス電圧が及ばない部分38Cでは、表面電位が時間変化しないため、二次荷電粒子像においては、
図3-1および
図4-1に示すように、モノトーンの画像となる。
【0044】
(金属パターンの検査方法および集束イオンビーム装置の効果)
本実施の形態では、
図4-1に示すように、配線部34~41のうちプロービング電圧(パルス電圧)が印加されている部分が縞々状の第1パターンに表示され、プロービング電圧(パルス電圧)の及ばない部分が縞々状に表示されない第2パターンとなるため、断線部分がある配線部を容易に確認できる。これに対して、
図4-2に示す比較例のように、金属パターンに電圧を印加しない状態で得られた二次荷電粒子像では、全ての配線部がモノトーンで表示されてしまうため、全ての配線部を逐一確認しなければならず、断線部分の発見が容易ではない。
【0045】
また、本実施の形態では、上記の集束イオンビーム装置1を用いることにより、設計パターン画像と、実際の第1パターンで表示された実際の二次荷電粒子像と、を比較して、短絡部分を容易に同定することが可能である。すなわち、予め
図4-3に示すような、互いに電気的に独立する設計パターン画像を用意する。
図4-3は、設計パターン画像の一部であり、互いに隣接して電気的に独立する設計パターン45Pと設計パターン46Pを示す。
図4-4は、
図4-3の設計パターン45Pと設計パターン46Pに対応する実際の配線部(金属パターン)45と配線部(金属パターン)46を示す。
図4-4に示すように、配線部45のみに電圧印加用プローブ25を接続したときに、配線部46も縞々状の第1パターンで表示された場合、
図4-3に示す設計パターン画像との差分をとることにより、短絡部分47を検出することができる。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、二次荷電粒子像において縞々状の第1パターンの部分が電気的に独立した隣接した配線部(金属パターン)に及んだときに、短絡不良が発生していることを容易に検出できる。上述のように第1パターンで表示された部分と、互いに電気的に独立する設計パターンとの比較により短絡位置を容易に特定できる。このため、本実施の形態によれば、互いに電気的に独立させるべき配線部同士の間の抵抗を測定する手間を要しないため、短絡部分の検出を簡便に行える。
【0047】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る集束イオンビーム装置1Aの要部断面図である。この集束イオンビーム装置1Aは、集束イオンビーム光学系13が試料ステージとチャンバ内に設置されている構成である。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態に係る集束イオンビーム装置1と同様である
【0048】
[その他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0049】
例えば、上記の実施の形態では、二次荷電粒子検出器をシンチレータで構成したが、これに限定されるものではない。
【0050】
上記の実施の形態では、集束イオンビームIbのビームスポットをラスタスキャン方式で走査する方向を配線部34~42の延在方向と同一としたが、ビームスポットの径寸法がそれぞれの配線部の幅寸法よりも短く設定すれば、走査方向と配線部の延在方向とが交わっても電圧印加用プローブ25が接続された配線部を縞々状(縦縞状)に表示することができる。
【0051】
上記の実施の形態では、パルス状の電圧として、パルス電圧を適用したが、のこぎり波電圧や正弦波電圧などの時間的に変化する電圧を適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
A 検査領域
B 明るい領域
D 暗い領域
Ib 集束イオンビーム
R 進退方向
S 走査方向
1 集束イオンビーム装置
2 差動排気装置
3 集束イオンビームカラム(FIBカラム)
4 基板支持ステージ
5 昇降手段
6 ヘッド部
7A 環状溝(最も内側の環状溝)
7B,7C 環状溝
8 排気用パイプ
9 真空ポンプ
10 堆積用ガス供給パイプ
11 堆積用ガス送出部
12 鏡筒
13 集束イオンビーム光学系
14 イオン源
15 集束レンズ
16 絞り
17 偏向器
18 対物レンズ
19 二次荷電粒子検出器
20 移動制御部
21 差動排気制御部
22 画像生成部
23 成膜制御部
24 FIB制御部
25 電圧印加用プローブ
30 被検査基板
31 絶縁基板
34~42,45,46 配線部(金属パターン)
35B,36B,38B,39B,41B,42B 断線部分(分離部分)
44 パルス電源
50 真空チャンバ