(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054017
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】紫外線照射装置および紫外線照射システム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20220330BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160969
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200159
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】貴家 学
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058AA28
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD07
4C058DD13
4C058DD16
4C058KK02
4C058KK23
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH17
4C180HH19
4C180KK04
4C180LL04
(57)【要約】
【課題】照射形態を変更可能な紫外線照射装置および紫外線照射システムを提供する。
【解決手段】紫外線を照射する光照射部と、光照射部から、光照射の光が照射される照射対象までの距離を導出可能なデータを取得する検知部と、距離を元に光照射部の出力を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を照射する光照射部と;
前記光照射部から、前記光照射部の光が照射される照射対象までの距離を導出可能なデータを取得する検知部と;
前記距離を元に前記光照射部の出力を制御する制御部と;
を備える紫外線照射装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記距離を元に、前記照射対象が受ける光の強度が閾値以下となるように前記光照射部の出力を制御することを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記検知部はカメラであり、
前記検知部で取得したデータから、照射対象の属性を判断し、前記閾値を設定する処理部を備えることを特徴とする請求項2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
紫外線を照射する光照射部と;
前記光照射部から、前記光照射部の光が照射される照射対象までの距離を導出可能なデータを取得する検知部と;
前記距離を元に、前記照射対象が受ける光の強度が閾値以下となる前記光照射部の出力を判断する処理部と;
前記処理部から受け取った制御信号を元に前記光照射部の出力を制御する制御部と;
を備える紫外線照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紫外線照射装置および紫外線照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染症の対策のために、室内に紫外線照射装置を配置し、空気や、室内に存在する人ないし物を殺菌する手法が注目を集めている。このような紫外線を用いた殺菌においては、照射される紫外線の強度が高くなるほど、また紫外線を長時間照射するほど、高い殺菌効果を得ることができる。しかし、照射対象によっては紫外線を照射することで、対象にダメージを与えてしまう虞があるため、一概に高強度の紫外線を照射したり、長時間紫外線を照射したりすることが好まれない可能性がある。そのため、紫外線の照射形態を柔軟に変更可能な紫外線照射装置が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、照射形態を変更可能な紫外線照射装置および紫外線照射システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の紫外線照射装置は、紫外線を照射する光照射部と、光照射部から、光照射部の光が照射される照射対象までの距離を導出可能なデータを取得する検知部と、距離を元に光照射部の出力を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
実施形態によれば、照射形態を変更可能な紫外線照射装置および紫外線照射システムを提供することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態の紫外線照射装置の使用環境を示す側面図である。
【
図2】一実施形態の紫外線照射装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態の判断部で行われる処理を示すフロー図である。
【
図4】一実施形態の判断部の処理で用いられる対応表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1に、本実施形態における紫外線照射装置1の使用環境を示す。紫外線照射装置1は、環境A内に紫外線を照射し、環境A内の空気や、環境A内の照射対象100を殺菌する。なお本明細書では、紫外線照射装置や紫外線照射システムによって「殺菌」することを例として説明するが、紫外線照射装置や紫外線照射システムで行われるのは「殺菌」に限定されるものではない。「滅菌」、「除菌」、「減菌」、「消毒」など、照射対象100に滞在、付着している菌などを減らす効果が得られるものであれば適用可能である。そのため、以下に説明する「殺菌」の用語は、「滅菌」や「除菌」や「減菌」や「消毒」に置き換え可能である。
【0010】
環境Aは、例えば、屋内の環境である。環境Aは、オフィス、店舗、家の部屋、乗り物の車内、エレベータなどの閉ざされた空間であったり、廊下やエントランスなどの比較的開かれた空間であったりする。
【0011】
照射対象100は、環境A内に配設される物に加えて、環境A内の空気と、環境A内に滞在している人を含む。そして、環境A内に配設される物の一例として
図1では机を示しているが、環境A内に配設される照射対象100は机に限定されるものではなく、上述した環境Aなどに配設されうるものであれば何でもよい。例えば、机、食器、商品陳列棚、吊り革、リモコン、エレベータのボタン、自動ドア開閉ボタン、などである。なお、照射対象100は、人の体の一部(例えば、手、足、尻など)が触れるようなものであることが好ましい。なお、ここでの触れるとは直接的な接触だけではなく、間接的な接触(例えば、間に服や手袋を介して接触)も含んでいてもよい。つまり、多くの場合で、尻とは服を介して接触する椅子やソファも照射対象100となってもよい。
【0012】
照射対象100によっては、高い強度の紫外線の照射や、長時間の紫外線の照射が好ましくない虞がある。そのため、本実施形態の紫外線照射装置1は、紫外線の照射強度や、紫外線の照射方向などの紫外線照射形態を変更可能に構成されている。以下の、紫外線照射装置1の詳細について説明する。
【0013】
図2に紫外線照射装置1の構成を示す。紫外線照射装置1は、天井面や壁面などの設置面や、設置用ポールなどに取付けられる紫外線照射装置であり、光照射部10と、検知部20と、処理部30と、を備える。紫外線照射装置1は、波長が380nm以下の紫外光を照射可能に構成されており、ベースライト、シーリングライト、ダウンライトなどの一般的な照明装置の形態で構成されてもよい。例えば、紫外線照射装置1が天井面などの設置面に配設されるベースライトやシーリングライトの形態で構成される場合は、紫外線照射装置1から照射される紫外光方向を変えることはできない。しかし、紫外線照射装置1が設置面に配設され照射方向を変えられるダウンライトの形態で構成される場合は紫外線照射装置1から照射される紫外光の方向を変えることが可能となる。
【0014】
まず、光照射部10について説明する。光照射部10は、光源部11と、光源部11を制御する制御部12と、を備える。また、
図2には図示しないが、光照射部10は、光源部11が照射する光を取り出す照射窓を備える。光源部11は、少なくとも紫外光を照射可能な光源を備える。光源部11は、例えば、光源として1つないし複数の紫外線ランプやUV-LEDなどの固体発光光源を備えており、波長が100nm以上380nm以下の帯域の光を照射する。好ましい形態としては、光源部11から照射される紫外光はUV-C(波長が100nm以上280nm以下の帯域の光)であり、例えば照射する光の分光分布のピーク波長が約254nmまたは約222nmまたは約185nmである。ここでのピーク波長とは、分光分布において最も高い強度を示す波長に限定されるものではなく、2番目に高い強度を示す第2ピーク波長、3番目に高い強度を示す第3ピーク波長であってもよい。光源部11は、異なる複数のピーク波長の光を照射可能に構成されていてもよい。
【0015】
また光源部11からは、紫外光に加えて可視光が照射されてもよい。ここでの可視光とは、波長が380nm以上780nm以下の帯域の光であり、2700Kや5000Kといった照明用の白色光であったり、赤色、緑色、青色といった単色光であったりする。このとき、光源部11が備える1つの光源から紫外光と可視光が照射されてもよいし、光源部11が紫外光光源と、可視光光源と、を備えていてもよい。なお、可視光を照射する可視光光源も、紫外光を照射する紫外光光源と同様に、ランプ(例えば、蛍光灯、白熱電球など)であったり、固体発光光源(例えば、LED、O-LED、LDなど)であったりしてもよい。
【0016】
制御部12は、光源部11の点灯状態を制御する。ここでの光源部11の点灯状態とは、例えば、光源部11の発光強度である。光源部11の発光強度とは、光源部11から出力される光の強度を指し、例えば、光束(lm)、光度(cd)、輝度(cd/m^2)、照度(lx)、紫外線照度(mW/cm^2)、紫外線強度(mJ/cm^2)などの名称や単位で表される値である。光源部11の発光強度を制御する方法は、例えば、光源部11に供給する電流値を変動させたり、光源部11に供給する電流のデューティー比を変動させたりする。また制御部12は、光源部11が複数種類の光源を備えている場合に光源部11から照射される光の種類を制御してもよい。光源部11を制御することで、紫外光を照射したり、可視光を照射したり、紫外光と可視光を合わせて照射したり、と発光形態を切り替えることができる。また、光源部11を制御することで光源部11から照射される光の波長を切り替えることも可能となる。例えば、紫外光であればピーク波長222nmの紫外光から、ピーク波長254nmの紫外光に切り替えたり、可視光であれば赤色の発光から白色への発光へ切り替えたりすることが可能である。
【0017】
また、制御部12は、光照射部10または光源部11から照射される光の照射方向を制御してもよい。
【0018】
制御部12が制御を行うための制御指令(制御信号)は、後述する処理部30から送信されたり、外部(例えば、リモコンや制御端末)から無線通信もしくは有線通信で入力されたりする。そのため、光照射部10は、光照射通信部を備えるように構成し、処理部30から送信された制御指令(制御信号)を光照射通信部で受信して制御部12へ渡してもよいし、外部から送信された制御指令(制御信号)を光照射通信部で受信して制御部12へ渡してもよい。なお、制御部12への制御指令(制御信号)は、光照射部10に取付けられた調整機構(例えば、ツマミや切替スイッチなど)を操作することで入力されてもよい。
【0019】
次に、検知部20について説明する。検知部20は、光源部11から照射される光の照射範囲の少なくとも一部を検知、検知結果を取得できるように配設される、例えばセンサやカメラである。そして、検知部20で取得された検知結果は後述する処理部30へ無線通信もしくは有線通信で送信される。そのため、
図2には図示していないが、検知部20は検知通信部を備えており、検知通信部から検知結果が送信されるように構成されていてもよい。また、検知部20は、光照射部10と一体に構成されていてもよいし、別体に構成されていてもよい。検知部20と光照射部10とが一体に構成されている場合は、光照射部10からの光の照射方向と、検知部20の検知方向と、が略一致するように検知部20が配設される。検知部20と光照射部10とが別体に構成されている場合は、光照射部10からの光の照射範囲と、検知部20の検知範囲の少なくとも一部と、が重なるように検知部20が配設される。
【0020】
検知部20は、例えば、検知部20からの距離を測定可能なセンサ(以下、距離センサ)である。この場合、検知部20は、光照射部10から照射される光の照射範囲の中心に向けて配設され、検知部20から光照射部10から照射される光の照射範囲の中心までの距離を測定する。そして、検知部20は、距離センサで測定された距離データを、検知結果として後述する処理部30へ送信する。
【0021】
また、検知部20は、例えば、画像や動画を取得可能なカメラである。この場合、検知部20は、検知部20での撮影範囲と、光照射部10から照射される光の照射範囲と、が少なくとも一部で重なるように配設される。そして、光照射範囲の一部または全体の画像データもしくは動画データを取得する。そして、検知部20は、カメラで取得した画像データもしくは動画データを、検知結果として後述する処理部30へ送信する。
【0022】
検知部20は、上述した、距離センサとカメラのいずれか1つを備えていてもよいし、両方を備えていてもよい。また、検知部20は、他のセンサを備えていてもよい。
【0023】
例えば、検知部20は、紫外線照射装置1から紫外光を照射する対象である照射対象100の反射率を測定可能なセンサ(以下、反射率センサ)も備えている。この場合、検知部20は、光照射部10から照射される光の照射範囲に向けて配設され、照射対象100の反射率を測定する。なお、この反射率センサは、波長380nm以下の紫外領域の光に対する反射率を測定可能であることが望ましい。またこの反射率センサは、一定の面積の平均反射率を測定するものであってもよいし、1点の反射率を測定するものであってもよい。そして、検知部20は、反射率センサで測定された反射率データも、検知結果として後述する処理部30へ送信する。
【0024】
次に処理部30について説明する。処理部30は、判断部31と、記憶部32と、を備える。処理部30は、検知部20での検知結果から光照射部10の制御内容を判断し、光照射部10へ制御指令(制御信号)を送信する。そのため、
図2には記載していないが、処理部30は、処理通信部を備えており、検知部20から送信された検知結果を処理通信部で受信して、処理通信部から判断部31へ検知結果を渡すように構成してもよく、また、判断部31で判断した光処理部10の制御内容に基づく制御指令(制御信号)を、処理通信部から光照射部10へ送信するように構成してもよい。
【0025】
判断部31では、検知部20での検知結果を用いて照射対象100が受ける光の強度を推定し、その光の強度から光照射部10の制御範囲を判断し、その判断に基づく制御指令(制御信号)を出力する動作が行われる。
図3を用いて判断部31で行われる処理を説明する。
図3は、判断部31で行われる処理のフロー図を示している。
【0026】
まず、判断部31は検知部20での検知結果を受け取る(ステップS1)。このとき、上述したように、処理通信部から検知結果を受け取ってもよいし、判断部31自体が通信機能を備えており、検知部20から検知結果を直接受け取ってもよい。そして、この検知結果は、距離データであったり、画像・動画データであったりするが、判断部31は受け取った検知結果の種類を判断してもよい。例えば、判断部31は、受け取った検知結果のデータ容量を確認して、検知結果が規定の値以上のデータ容量を備えている場合は、検知結果が画像・動画データであると判断する。反対に、検知結果が規定の値以下のデータ容量の場合は、検知結果が画像・動画データ以外であると判断する。なお、判断部31は、受け取った検知結果のファイル形式(例えば、拡張子など)から、検知結果の種類を判断してもよい。
【0027】
検知結果が距離データの場合は、判断部31は、検知部20から検知対象までの距離を検知結果として受け取っている。しかし上述したように、検知部20である距離センサは、検知対象が光照射部10から照射される光の照射範囲の中心となるように配設されるため、検知部20である距離センサで検知されるのは、検知部20から光照射部10の照射対象までの距離、と言い換えることが可能である。つまり、判断部31が受け取った検知結果は、検知部20から照射対象までの距離データと言える。
【0028】
また、検知結果が画像・動画データの場合は、判断部31は、検知部20で撮影対象を撮影した画像・動画データを検知結果として受け取っている。しかし上述したように、検知部20であるカメラは、撮影範囲は光照射部10から照射される光の照射範囲と少なくとも一部が重なるにように配設されるため、検知部20であるカメラでは、光照射部10の光照射対象を撮影することとなる。つまり、検知部20での撮影対象は、光照射部10の照射対象であり、判断部31が受け取った検知結果は、照射対象を含む画像・動画データであると言える。
【0029】
次に、検知結果が、検知部20であるカメラで撮影された画像・動画データである場合は、距離の推定が行われる(ステップS1.5)。ここでの距離とは、検知部20から撮影対象までの距離であるが、上述したように、撮影対象は、光照射部10の照射対象であるため、検知部20から照射対象までの距離を推定することに等しい。この距離の推定のステップにおいては、例えば、画像データもしくは動画データを入力して、距離データを出力するような学習済みニューラルネットワークに、検知結果である画像・動画データを入力することで距離を推定する。
【0030】
次に、照射対象が受ける光の強度の推定が行われる(ステップS2)。検知結果が距離データの場合は、ステップS1の後にステップS2へ移行し、検知結果が画像・動画データである場合は、ステップS1.5の後にステップS2へ移行する。上述したように、検知結果が距離データ、画像・動画データいずれの場合でも、ステップS2に移行する前に、判断部31は検知部20から照射対象までの距離の測定値ないし推定値を保有している。ステップS2では、検知部20から照射対象までの距離を、光照射部10の照射窓から照射対象までの距離に置き換えて、照射対象が受ける光の強度を推定する。光照射部10の近傍に検知部20が配設され、光照射部10の照射窓と照射対象との間の距離と、検知部20と照射対象との間の距離と、がほぼ同じである場合は、判断部31が保有している距離の測定値ないし推定値に補正は必要なく、そのまま使用することが可能である。光照射部10と検知部20との距離が離れている場合は、ステップS2での推定を行う前に、判断部31が保有している距離の測定値ないし推定値に補正をかけ、光照射部10の照射窓から照射対象までの距離に換算した値を用いて、照射対象が受ける光の強度を推定する。なお、ここで行う補正は、光照射部10と、検知部20と、の位置関係に基づく距離の補正であり、それぞれの位置座標から補正値を導出可能である。以下では、補正をかけた距離の値と、補正をかけていない距離の値と、の両方をまとめて距離データと呼ぶ。
【0031】
ステップS2の照射対象が受ける光の強度の推定においては、例えば、
図4に示す対応表が用いられる。この対応表は、光照射部10の照射窓から照射対象までの距離と、光源部11の出力と、をそれぞれ変えた時の、照射対象が受ける光の強度を示したものである。例えば、距離が1.5[m]かつ光源部11の照射窓の位置における紫外線照度が40[mW/cm^2]の場合は、照射対象の位置における紫外線照度は10[mW/cm^2]と推定される。この対応表は、例えば、処理部30の記憶部32に予め記憶されており、判断部31が記憶部32を参照して、または判断部31が記憶部32から対応表を受け取って、処理が行われる。この対応表の数値は、光学シミュレーションで導出される値であってもよいし、光の減衰の法則の逆二条の法則に則って導出される値であってもよい。また、光源部11の出力や、照射対象における紫外線照度は、[mW/cm^2]の単位に限定されるものではなく、光の出力や強度を示す単位であれば他の単位を用いてもよい。また、光源部11の出力については調光率[%]で示されていてもよい。
【0032】
ステップS2では、対応表と、距離データと、を用いて、照射対象が受ける可能性がある光の強度の範囲が推定される。この照射対象が受ける可能性がある光の強度の範囲とは、光源部11が最大出力の場合から、光源部11が最小出力の場合を含むものであることが望ましい。
図4の対応表を例にすると、距離データはステップS2までに1点に定まっているため、ステップS2では、次のステップで参照する列を特定する。(例えば、距離1.5[m]の列)
次に、光照射部10の制御を判断するステップが行われる(ステップS3)。ステップS3では、照射対象が受ける光の強度を規定する閾値を元に、照射対象が受ける光の強度が閾値を超えないような光照射部10の光源部11の出力を特定する。この閾値は、照射対象がこの閾値を超える強度の光を受けることが好ましくないことを示す値である。この閾値は、例えば、処理部30の記憶部32に予め記憶されていたり、外部から入力されたりする。外部から入力される場合は、先述した処理通信部が、外部から例えば制御端末を使って入力した閾値を受け取り、記憶部32に渡し、記憶部32に記憶する。そして、判断部31が記憶部32を参照して、または判断部31が記憶部32から閾値を受け取って、処理が行われる。なお、外部から閾値が入力される場合は、処理通信部から判断部31が閾値を直接受け取ってもよい。
【0033】
図4の対応表を例にすると、ステップS2で距離データを元に参照する列は特定されているため、この列に対して、閾値を下回るような光源部11の出力を特定すればよい。例えば、距離1.5[m]の列に特定されている状態で、閾値が15[mW/cm^2]の場合は、光源部11の出力は60[mW/cm^2]以下と特定される。
【0034】
次に、判断部31から制御指令(制御信号)の出力が行われる(ステップS4)。ここでの制御指令は、ステップS3で特定された光源部11の出力に制御する指令であってもよいし、ステップS3で特定された光源部11の出力以下にしか制御できなくするような指令であってもよい。
【0035】
このようにして、検知部20から受け取った検知結果を元に、処理部30の判断部31から、光照射部10へ制御指令(制御信号)が出される。制御指令(制御信号)を受け取った光照射部10の制御部12は、その制御指令(制御信号)に則って光源部11を制御する。
【0036】
また、検知部20がカメラである場合、判断部31は、検知部20の検知結果である画像・動画データから照射対象の属性(照射対象の部材や材質など)を推定してもよく、その照射対象の属性推定結果を元に、判断部31が閾値を判断して設定されてもよい。例えば、照射対象が紫外線に強い金属である場合は、判断部31は閾値を高くするように判断し設定する。また、例えば、照射対象が紫外線に弱い樹脂、紙、人体などである場合は、判断部31は閾値を低くするように判断し設定する。また閾値は、判断部31が生成することで設定されてもよいし、閾値の候補リストから判断部31が判断して選択することで設定されてもよい。
【0037】
また、検知部20が反射率センサも備えている場合は、判断部31は、反射率センサでの検知結果を用いて閾値を判断してもよい。例えば、照射対象の反射率が高い場合、紫外線照射装置から照射した紫外線を反射して、予期せぬ対象に紫外線を照射してしまう虞がある。そのため照射対象の反射率が高い場合は、判断部31は閾値を低くするように判断してもよい。
【0038】
またさらに、上述した例では、判断部31は、
図4に示した対応表を用いて光源部11の出力を特定しているが、この方式に限定されるものではない。例えば、判断部31は、ステップS2とステップS3の機能を備えた学習済みニューラルネットワークに、距離データと、閾値と、を入力することで、光源部11の出力を特定してもよい。この学習済みニューラルネットワークは、例えば、所定の距離に対する光の減衰量を学習しており、距離データと、閾値と、を入力することで、一定の距離に対する、閾値を下回る光源部11の出力を結果として出力するものである。
【0039】
紫外線照射装置1を使用する例を以下に示す。
【0040】
例えば、殺菌力が高いが人体の悪影響を及ぼす波長が約254nmの紫外線を照射する紫外線照射装置1を、人が滞在、もしくは往来する場所に設置する場合は、人体に影響を与えないために閾値を低い値にしておき、光源部11は、照射対象まで届く紫外線が弱くなるように点灯することが好ましい。
【0041】
また、紫外線照射装置1の照射対象に絵画などの美術品が含まれる可能性がある場合は、絵画の劣化を防ぐために閾値を0に設定しておき、光源部11は、照射対象まで届かない出力で点灯することが好ましい。
【0042】
また、紫外線照射装置1の照射対象に紫外線検知型の火災報知器が含まれる可能性がある場合は、火災報知器の誤作動を防ぐために閾値を0に設定しておき、光源部11は、照射対象まで届かない出力で点灯することが好ましい。
【0043】
また、検知部20がカメラである場合、判断部31は、検知部20の検知結果である画像・動画データから、光照射部10の光照射範囲に存在する物の属性(部材や材質など、その物が何かを特定してもよい)を判断してもよく。光照射部10の光照射範囲に紫外線照射に適さないもの(例えば、紙、絵画や火災報知器など)が存在する場合は、判断部31が閾値を0にするように判断してもよい。また、紫外線照射装置1が光の照射方向を調整可能である場合は、判断部31は紫外線照射に適さない照射対象に向けて紫外線が照射されないように方向制御してもよい。ここでの方向制御とは、照射方向が紫外線照射に適さない照射対象の方向に向かないように照射方向を制限したり、光照射部10の光照射範囲に紫外線照射に適さない照射対象が含まれないように照射方向を変更したりしてもよい。
【0044】
ここまで、光照射部10と、検知部20と、処理部30と、を含む紫外線照射装置1を説明したが、紫外線照射装置として構成されず、紫外線照射システムとして構成されてもよい。この場合、環境Aに配設される光照射部10と、環境A内を検知するように配設される検知部20と、処理部30と、を備える。処理部30は、環境Aとは別のクラウドサーバー上に存在していてもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 紫外線照射装置
10 光照射部
11 光源部
12 制御部
20 検知部
30 処理部
31 判断部
32 記憶部