(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054094
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】樹脂材料
(51)【国際特許分類】
A61C 7/08 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161090
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】520154416
【氏名又は名称】株式会社ホワイトライン
(71)【出願人】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩之
(72)【発明者】
【氏名】西村 亮
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ09
(57)【要約】
【課題】マウスピースとして成形され装着されたとき、装着者に対して違和感を生じさせにくく、また、歯に対してマウスピースを簡単に装着させることが可能な樹脂材料を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂材料4は、マウスピースに用いられる樹脂材料であって、歯に装着されたとき歯に面する層であって、熱可塑性ポリウレタンを含有するポリウレタン層4Aと、ポリウレタン層4Aに接合され、熱可塑性ポリウレタンを含有するポリウレタン層4Bと、歯に装着されたとき外側に位置する層であって、ポリウレタン層4Bに接合され、ポリエステルを含有するポリエステル層4Cとを備え、全厚さが600μm以上1000μm以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピースに用いられる樹脂材料であって、
熱可塑性ポリウレタンを含有するポリウレタン層からなり、
全厚さが700μm以上800μm以下である樹脂材料。
【請求項2】
マウスピースに用いられる樹脂材料であって、
歯に装着されたとき前記歯に面する層であって、ポリエステルを含有する第1ポリエステル層と、
前記第1ポリエステル層に接合され、熱可塑性ポリウレタンを含有するポリウレタン層と、
前記歯に装着されたとき外側に位置する層であって、前記ポリウレタン層に接合され、ポリエステルを含有する第2ポリエステル層と、
を備え、
全厚さが600μm以上900μm以下である樹脂材料。
【請求項3】
マウスピースに用いられる樹脂材料であって、
歯に装着されたとき前記歯に面する層であって、熱可塑性ポリウレタンを含有するポリウレタン層と、
前記歯に装着されたとき外側に位置する層であって、前記ポリウレタン層に接合され、ポリエステルを含有するポリエステル層と、
を備え、
全厚さが600μm以上1000μm以下である樹脂材料。
【請求項4】
マウスピースに用いられる樹脂材料であって、
歯に装着されたとき前記歯に面する層であって、熱可塑性ポリウレタンを含有する第1ポリウレタン層と、
前記第1ポリウレタン層に接合され、熱可塑性ポリウレタンを含有する第2ポリウレタン層と、
前記歯に装着されたとき外側に位置する層であって、前記第2ポリウレタン層に接合され、ポリエステルを含有するポリエステル層と、
を備え、
全厚さが600μm以上1000μm以下である樹脂材料。
【請求項5】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又は酸変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)である請求項2から4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリウレタンは、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル-エーテル系ポリウレタン又はポリカーボネート系ポリウレタンである請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスピース、特に歯列矯正用マウスピースに用いられる樹脂材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯列に沿って装着されるマウスピースは、シート材料を歯型模型に加熱しながら圧着させることによって形成される。マウスピースには、歯列矯正用のものがあり、歯列矯正用マウスピースは、歯科医療従事者に限らず、装着者自らが装着したり外したりすることも可能である。
【0003】
下記の特許文献1には、歯科用成形体に関する発明であって、歯科用成形体が、歯列矯正用のマウスピースの材料である例が開示されており、歯科用成形体(シート)が、シクロオレフィンポリマー樹脂を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マウスピースのシート材料は、マウスピースとして成形され歯列に装着されたとき、歯列を矯正できるように歯列に対して圧力を付与できる弾性力を有することが要求される。また、マウスピースのシート材料は、マウスピースを製作する際、歯型模型に対応した形状に変形されるように成形容易であることが要求される。
【0006】
さらに、マウスピースが歯列に沿って装着されたとき、マウスピースが歯茎等の口腔内で接触する部分があることから、装着者に対して極力違和感を生じさせないことが望ましい。またさらに、歯列矯正の治療期間、装着者によってマウスピースが着脱される回数が多いことから、装着者自らがマウスピースを簡単に装着できることが好ましい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、マウスピースとして成形され装着されたとき、装着者に対して違和感を生じさせにくく、また、歯に対してマウスピースを簡単に装着させることが可能な樹脂材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の樹脂材料は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る樹脂材料は、マウスピースに用いられる樹脂材料であって、熱可塑性ポリウレタンを含有するポリウレタン層からなり、全厚さが700μm以上800μm以下である。
【0009】
本発明に係る樹脂材料は、マウスピースに用いられる樹脂材料であって、歯に装着されたとき前記歯に面する層であって、ポリエステルを含有する第1ポリエステル層と、前記第1ポリエステル層に接合され、熱可塑性ポリウレタンを含有するポリウレタン層と、前記歯に装着されたとき外側に位置する層であって、前記ポリウレタン層に接合され、ポリエステルを含有する第2ポリエステル層とを備え、全厚さが600μm以上900μm以下である。
【0010】
本発明に係る樹脂材料は、マウスピースに用いられる樹脂材料であって、歯に装着されたとき前記歯に面する層であって、熱可塑性ポリウレタンを含有するポリウレタン層と、前記歯に装着されたとき外側に位置する層であって、前記ポリウレタン層に接合され、ポリエステルを含有するポリエステル層とを備え、全厚さが600μm以上1000μm以下である。
【0011】
本発明に係る樹脂材料は、マウスピースに用いられる樹脂材料であって、歯に装着されたとき前記歯に面する層であって、熱可塑性ポリウレタンを含有する第1ポリウレタン層と、前記第1ポリウレタン層に接合され、熱可塑性ポリウレタンを含有する第2ポリウレタン層と、前記歯に装着されたとき外側に位置する層であって、前記第2ポリウレタン層に接合され、ポリエステルを含有するポリエステル層とを備え、全厚さが600μm以上1000μm以下である。
【0012】
本発明に係る樹脂材料は、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又は酸変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)でもよい。
【0013】
本発明に係る樹脂材料は、前記熱可塑性ポリウレタンは、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル-エーテル系ポリウレタン又はポリカーボネート系ポリウレタンでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マウスピースとして成形され装着されたとき、装着者に対して違和感を生じさせにくく、また、歯に対してマウスピースを簡単に装着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂材料を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る樹脂材料を示す分解断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る樹脂材料を示す分解断面図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る樹脂材料を示す分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る樹脂材料1は、例えば成形品としての歯列矯正用マウスピース(アライナーとも呼ばれる。)を形成するために用いられる。樹脂材料1は、シート状であり、全厚さが例えば700μm以上800μm以下である。
【0017】
樹脂材料1は、装着者の歯に基づいて形成された歯型模型に加熱しながら圧着させることによって、マウスピースとして形成される。なお、マウスピースは、歯列矯正用に限定されず、他の用途に用いられるものでもよい。
【0018】
樹脂材料1は、
図1に示すように、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含有するポリウレタン層1Aのみからなる。熱可塑性ポリウレタンは、例えばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル-エーテル系ポリウレタン又はポリカーボネート系ポリウレタンなどである。熱可塑性ポリウレタンは、ポリウレタン樹脂でもよく、また、ポリウレタンエラストマーでもよい。ポリウレタン層1Aは、例えば、TPU樹脂層である。樹脂材料1は、押し込み硬さ(硬度)がD硬度75以上である。
【0019】
マウスピースに用いられる樹脂材料1は、マウスピースとして成形され歯列に装着されたとき、歯列を矯正できるように歯列に対して圧力を付与できる弾性力を有する。また、樹脂材料1は、歯型模型に押し付けられてマウスピースとして製作される際、歯型模型に対応した形状に変形される性質を有する。
【0020】
さらに、樹脂材料1は、所定の硬度や弾性力を有することによって、樹脂材料1によるマウスピースが歯列に沿って装着されたとき、歯茎等の口腔内で接触する部分において、装着者に対して違和感を生じさせにくい。樹脂材料1は、歯に面する側が熱可塑性ポリウレタンを含有する層であり、所定の硬度や弾性力を有するため、マウスピースを簡単に装着できる。これにより、歯列矯正の治療期間、装着者が自らマウスピースを着脱しやすくなる。
【0021】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る樹脂材料2は、例えば成形品としての歯列矯正用マウスピース(アライナーとも呼ばれる。)を形成するために用いられる。樹脂材料2は、シート状であり、全厚さが例えば600μm以上900μm以下である。
【0022】
樹脂材料2は、装着者の歯に基づいて形成された歯型模型に加熱しながら圧着させることによって、マウスピースとして形成される。なお、マウスピースは、歯列矯正用に限定されず、他の用途に用いられるものでもよい。
【0023】
樹脂材料2は、
図2に示すように、3層構造であり、各層は、マウスピースとして形成されマウスピースが歯に装着されたときに歯に面する側から、ポリエステル層2A、ポリウレタン層2B、ポリエステル層2Cの順に配置される。本実施形態に係る樹脂材料2では、ポリウレタン層2Bのほうがポリエステル層2A及びポリエステル層2Cよりも軟らかく、ポリエステル層2A及びポリエステル層2Cの硬度はほぼ同じである。すなわち、樹脂材料2は、中間に軟らかい材料が挟まれた構造を有している。ポリエステル層2Aは、第1ポリエステル層の一例であり、ポリエステル層2Cは、第2ポリエステル層の一例である。
【0024】
ポリエステル層2Aは、マウスピースが歯に装着されたとき歯に面する層であって、ポリエステルを含有する。ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又は酸変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)などである。ポリエステルは、樹脂でもよいし、エラストマーでもよい。ポリエステル層2Aは、厚さが例えば200μm以上300μm以下である。ポリエステル層2Aは、例えば、PET樹脂層である。
【0025】
ポリウレタン層2Bは、ポリエステル層2Aに接合され、熱可塑性ポリウレタンを含有する。熱可塑性ポリウレタンは、例えばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル-エーテル系ポリウレタン又はポリカーボネート系ポリウレタンなどである。熱可塑性ポリウレタンは、ポリウレタン樹脂でもよく、また、ポリウレタンエラストマーでもよい。ポリウレタン層2Bは、厚さが例えば200μm以上300μm以下である。ポリウレタン層2Bは、押し込み硬さ(硬度)がD硬度75以上である。ポリウレタン層2Bは、例えば、TPU樹脂層である。
【0026】
ポリエステル層2Aとポリウレタン層2Bとの接合は、複数の樹脂層又はエラストマー層を積層する際に用いられる通常の技術で行われる。ポリエステル層2Aとポリウレタン層2Bは他の物質を介して隣り合うように接合されてもよい。
【0027】
ポリエステル層2Cは、ポリウレタン層2Bに接合され、マウスピースが歯に装着されたとき外側に位置する層であって、ポリエステルを含有する。ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又は酸変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)などである。ポリエステルは、樹脂でもよいし、エラストマーでもよい。ポリエステル層2Cは、厚さが例えば200μm以上300μm以下である。ポリエステル層2Cは、例えば、PET樹脂層である。
【0028】
ポリウレタン層2Bとポリエステル層2Cとの接合は、複数の樹脂層又はエラストマー層を積層する際に用いられる通常の技術で行われる。ポリウレタン層2Bとポリエステル層2Cは他の物質を介して隣り合うように接合されてもよい。
【0029】
マウスピースに用いられる樹脂材料2は、中間に軟らかい材料が挟まれた構造を有しており、マウスピースとして成形され歯列に装着されたとき、歯列を矯正できるように歯列に対して圧力を付与できる弾性力を有する。また、樹脂材料2は、歯型模型に押し付けられてマウスピースとして製作される際、歯型模型に対応した形状に変形される性質を有する。
【0030】
さらに、樹脂材料2は、所定の硬度や弾性力を有することによって、樹脂材料2によるマウスピースが歯列に沿って装着されたとき、歯茎等の口腔内で接触する部分において、装着者に対して違和感を生じさせにくい。また、樹脂材料2は、外側、すなわち咬合側の硬度が高いことから、使用による摩耗を低減でき、耐久性が向上する。樹脂材料2は、所定の硬度や弾性力を有するため、マウスピースを簡単に装着できる。これにより、歯列矯正の治療期間、装着者が自らマウスピースを着脱しやすくなる。
【0031】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る樹脂材料3は、例えば成形品としての歯列矯正用マウスピース(アライナーとも呼ばれる。)を形成するために用いられる。樹脂材料3は、シート状であり、全厚さが例えば600μm以上1000μm以下である。
【0032】
樹脂材料3は、装着者の歯に基づいて形成された歯型模型に加熱しながら圧着させることによって、マウスピースとして形成される。なお、マウスピースは、歯列矯正用に限定されず、他の用途に用いられるものでもよい。
【0033】
樹脂材料3は、
図3に示すように、2層構造であり、各層は、マウスピースとして形成されマウスピースが歯に装着されたときに歯に面する側から、ポリウレタン層3A、ポリエステル層3Bの順に配置される。本実施形態に係る樹脂材料3では、ポリウレタン層3Aのほうがポリエステル層3Bよりも軟らかい。すなわち、樹脂材料3を構成する複数の層は、マウスピースが歯に装着されたとき歯に面する側から順に硬度が高くなっている。
【0034】
ポリウレタン層3Aは、マウスピースが歯に装着されたとき歯に面する層であって、熱可塑性ポリウレタンを含有する。熱可塑性ポリウレタンは、例えばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル-エーテル系ポリウレタン又はポリカーボネート系ポリウレタンなどである。熱可塑性ポリウレタンは、ポリウレタン樹脂でもよく、また、ポリウレタンエラストマーでもよい。ポリウレタン層3Aは、厚さが例えば200μm以上400μm以下である。ポリウレタン層3Aは、押し込み硬さ(硬度)がD硬度75以上である。ポリウレタン層3Aは、例えば、TPU樹脂層である。
【0035】
ポリエステル層3Bは、ポリウレタン層3Aに接合され、マウスピースが歯に装着されたとき外側に位置する層であって、ポリエステルを含有する。ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又は酸変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)などである。ポリエステルは、樹脂でもよいし、エラストマーでもよい。ポリエステル層3Bは、厚さが例えば400μm以上600μm以下である。ポリエステル層3Bは、例えば、PET樹脂層である。
【0036】
ポリウレタン層3Aとポリエステル層3Bとの接合は、複数の樹脂層又はエラストマー層を積層する際に用いられる通常の技術で行われる。ポリウレタン層3Aとポリエステル層3Bは他の物質を介して隣り合うように接合されてもよい。
【0037】
マウスピースに用いられる樹脂材料3は、マウスピースとして成形され歯列に装着されたとき、歯列を矯正できるように歯列に対して圧力を付与できる弾性力を有する。また、樹脂材料3は、歯型模型に押し付けられてマウスピースとして製作される際、歯型模型に対応した形状に変形される性質を有する。
【0038】
さらに、樹脂材料3は、歯に面する側が熱可塑性ポリウレタンを含有する層であり、所定の硬度や弾性力を有するため、マウスピースが歯列に沿って装着されたとき、歯茎等の口腔内で接触する部分において、装着者に対して違和感を生じさせにくく、かつ、マウスピースを簡単に装着できる。これにより、歯列矯正の治療期間、装着者が自らマウスピースを着脱しやすくなる。
【0039】
本実施形態に係る樹脂材料3では、ポリウレタン層3Aのほうがポリエステル層3Bよりも軟らかいため、樹脂材料3によるマウスピースが歯に装着されたとき、歯に面する側から順に硬度が高くなっている。これにより、樹脂材料3によるマウスピースが歯列に沿って装着されたとき、歯茎等の口腔内で接触する部分において、装着者に対して違和感を生じさせにくい。そして、樹脂材料3は、外側、すなわち咬合側の硬度が高いことから、使用による摩耗を低減でき、耐久性が向上する。
【0040】
また、樹脂材料3は、歯に面する側が熱可塑性ポリウレタンを含有する層であり、ポリウレタン層3Aのほうがポリエステル層3Bよりも軟らかいため、マウスピースを簡単に装着できる。これにより、歯列矯正の治療期間、装着者が自らマウスピースを着脱しやすくなる。
【0041】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る樹脂材料4は、例えば成形品としての歯列矯正用マウスピース(アライナーとも呼ばれる。)を形成するために用いられる。樹脂材料4は、シート状であり、全厚さが例えば600μm以上1000μm以下である。
【0042】
樹脂材料4は、装着者の歯に基づいて形成された歯型模型に加熱しながら圧着させることによって、マウスピースとして形成される。なお、マウスピースは、歯列矯正用に限定されず、他の用途に用いられるものでもよい。
【0043】
樹脂材料4は、
図4に示すように、3層構造であり、各層は、マウスピースとして形成されマウスピースが歯に装着されたときに歯に面する側から、ポリウレタン層4A、ポリウレタン層4B、ポリエステル層4Cの順に配置される。本実施形態に係る樹脂材料4では、ポリウレタン層4Bのほうがポリエステル層4Cよりも軟らかく、ポリウレタン層4Aのほうがポリウレタン層4Bよりも軟らかい。すなわち、樹脂材料4を構成する複数の層は、マウスピースが歯に装着されたとき歯に面する側から順に硬度が高くなっている。ポリウレタン層4Aは、第1ポリウレタン層の一例であり、ポリウレタン層4Bは、第2ポリウレタン層の一例である。
【0044】
ポリウレタン層4Aは、マウスピースが歯に装着されたとき歯に面する層であって、熱可塑性ポリウレタンを含有する。熱可塑性ポリウレタンは、例えばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル-エーテル系ポリウレタン又はポリカーボネート系ポリウレタンなどである。熱可塑性ポリウレタンは、ポリウレタン樹脂でもよく、また、ポリウレタンエラストマーでもよい。ポリウレタン層4Aは、厚さが例えば150μm以上250μm以下である。ポリウレタン層4Aは、押し込み硬さ(硬度)がD硬度75以上である。ポリウレタン層4Aは、例えば、TPU樹脂層である。
【0045】
ポリウレタン層4Bは、ポリウレタン層4Aに接合され、熱可塑性ポリウレタンを含有する。熱可塑性ポリウレタンは、例えばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル-エーテル系ポリウレタン又はポリカーボネート系ポリウレタンなどである。熱可塑性ポリウレタンは、ポリウレタン樹脂でもよく、また、ポリウレタンエラストマーでもよい。ポリウレタン層4Bは、厚さが例えば150μm以上250μm以下である。ポリウレタン層4Bは、押し込み硬さ(硬度)がD硬度75以上である。ポリウレタン層4Bは、例えば、TPU樹脂層である。
【0046】
ポリウレタン層4Aとポリウレタン層4Bは、いずれも熱可塑性ポリウレタンを含有するが、ポリウレタン層4Aのほうがポリウレタン層4Bよりも軟らかく、ポリウレタン層4Bのほうがポリウレタン層4Aよりも硬度が高い。
【0047】
ポリウレタン層4Aとポリウレタン層4Bとの接合は、複数の樹脂層又はエラストマー層を積層する際に用いられる技術で行われる。ポリウレタン層4Aとポリウレタン層4Bは他の物質を介して隣り合うように接合されてもよい。
【0048】
ポリエステル層4Cは、ポリウレタン層4Bに接合され、マウスピースが歯に装着されたとき外側に位置する層であって、ポリエステルを含有する。ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又は酸変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)などである。ポリエステルは、樹脂でもよいし、エラストマーでもよい。ポリエステル層4Cは、厚さが例えば300μm以上500μm以下である。ポリエステル層4Cは、例えば、PET樹脂層である。
【0049】
ポリウレタン層4Bとポリエステル層4Cとの接合は、複数の樹脂層又はエラストマー層を積層する際に用いられる技術で行われる。ポリウレタン層4Bとポリエステル層4Cは他の物質を介して隣り合うように接合されてもよい。
【0050】
マウスピースに用いられる樹脂材料4は、マウスピースとして成形され歯列に装着されたとき、歯列を矯正できるように歯列に対して圧力を付与できる弾性力を有する。また、樹脂材料4は、歯型模型に押し付けられてマウスピースとして製作される際、歯型模型に対応した形状に変形される性質を有する。
【0051】
さらに、本実施形態に係る樹脂材料4では、ポリウレタン層4Bのほうがポリエステル層4Cよりも軟らかく、ポリウレタン層4Aのほうがポリウレタン層4Bよりも軟らかいため、樹脂材料4によるマウスピースが歯に装着されたとき、歯に面する側から順に硬度が高くなっている。これにより、マウスピースが歯列に沿って装着されたとき、歯茎等の口腔内で接触する部分において、装着者に対して違和感を生じさせにくい。そして、樹脂材料4は、外側、すなわち咬合側の硬度が高いことから、使用による摩耗を低減でき、耐久性が向上する。
【0052】
また、樹脂材料4は、歯に面する側が熱可塑性ポリウレタンを含有する層であり、ポリウレタン層4Aのほうがポリウレタン層4Bよりも軟らかいため、マウスピースを簡単に装着できる。これにより、歯列矯正の治療期間、装着者が自らマウスピースを着脱しやすくなる。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3,4 樹脂材料
1A ポリウレタン層
2A ポリエステル層(第1ポリエステル層)
2B ポリウレタン層
2C ポリエステル層(第2ポリエステル層)
3A ポリウレタン層
3B ポリエステル層
4A ポリウレタン層(第1ポリウレタン層)
4B ポリウレタン層(第2ポリウレタン層)
4C ポリエステル層