(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054110
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】ポンプ兼用水力発電装置及び水力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 3/10 20060101AFI20220330BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20220330BHJP
H02P 101/10 20150101ALN20220330BHJP
H02P 103/20 20150101ALN20220330BHJP
【FI】
F03B3/10
H02P9/04 A
H02P101:10
H02P103:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161116
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】玉川 充
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智大
【テーマコード(参考)】
3H072
5H590
【Fターム(参考)】
3H072AA09
3H072AA17
3H072AA26
3H072BB08
3H072CC42
5H590CA11
5H590CC02
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE01
5H590CE05
5H590EA10
5H590FB02
5H590FC12
5H590FC17
5H590FC22
(57)【要約】
【課題】周辺のインバータ回路及び整流回路を含むポンプ兼用水力発電装置及び水力発電システムを実現する。
【解決手段】本発明の一態様に係るポンプ兼用水力発電装置は、インバータ部と、モータ兼用発電機と、ポンプ兼用逆転水車とが一体的に設けられている。前記インバータ部は、スイッチング素子にダイオードが逆並列接続された複数のアームがブリッジ接続されてなるインバータ回路を含んでいる。前記モータ兼用発電機は、前記インバータ回路に電気的に接続されている。前記ポンプ兼用水車は、前記モータ兼用発電機に機械的に接続されている。ここで、前記インバータ回路は、前記ポンプ兼用逆転水車により前記モータ兼用発電機が駆動された発電時には、前記モータ兼用発電機で発電された交流電源を前記ダイオードにより直流電源に変換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子にダイオードが逆並列接続された複数のアームがブリッジ接続されてなるインバータ回路を含むインバータ部と、
前記インバータ回路に電気的に接続されたモータ兼用発電機と、
前記モータ兼用発電機に機械的に接続されたポンプ兼用逆転水車と
が一体的に設けられたポンプ兼用水力発電装置であって、
前記インバータ回路は、前記ポンプ兼用逆転水車により前記モータ兼用発電機が駆動された発電時には、前記モータ兼用発電機で発電された交流電源を前記ダイオードにより直流電源に変換する、ポンプ兼用水力発電装置。
【請求項2】
前記モータ兼用発電機は、永久磁石式同期モータ兼用発電機である、請求項1記載のポンプ兼用水力発電装置。
【請求項3】
前記モータ兼用発電機の回転子の回転軸と、前記ポンプ兼用逆転水車の羽根車の回転軸とは、互いに同一直線上に位置する、請求項1又は2記載のポンプ兼用水力発電装置。
【請求項4】
前記インバータ部は、
商用電源に電気的に接続可能な整流回路と、
前記整流回路における正側出力ラインと負側出力ラインとの間に接続され、且つ前記インバータ回路に並列に接続されたコンデンサと、
前記正側出力ラインに接続された正側出力端子と、
前記負側出力ラインに接続された負側出力端子と、
を更に含み、
前記コンデンサは、前記直流電源を平滑化し、
前記正側出力端子及び前記負側出力端子は、前記平滑化された直流電源を出力する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポンプ兼用水力発電装置。
【請求項5】
請求項4記載のポンプ兼用水力発電装置と、
前記正側出力端子及び前記負側出力端子から出力された直流電源を交流電源に変換し、当該変換した交流電源を前記商用電源又は個別負荷に供給する系統連系インバータと
を備えた水力発電システム。
【請求項6】
前記ポンプ兼用逆転水車をポンプとして使用するときの吸込口及び吐出し口にそれぞれ接続された吸込配管及び吐出し配管と
を備え、
前記ポンプ兼用逆転水車の羽根車に前記吸込配管から押込圧力が加わる場合、前記羽根車が正転することにより前記モータ兼用発電機が交流電源を発電する、請求項5記載の水力発電システム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポンプ兼用水力発電装置と、
前記ポンプ兼用逆転水車をポンプとして使用するときの吸込口及び吐出し口にそれぞれ接続された吸込配管及び吐出し配管と
を備え、
前記ポンプ兼用逆転水車の羽根車に前記吸込配管から押込圧力が加わる場合、前記羽根車が正転することにより前記モータ兼用発電機が交流電源を発電する、水力発電システム。
【請求項8】
前記正側出力端子及び前記負側出力端子から出力された直流電源を蓄電する蓄電池と
を更に備え、
前記蓄電池は、前記発電時には、前記コンデンサの蓄電容量を超えた前記直流電源を蓄電し、前記ポンプ兼用逆転水車をポンプとして使用するときには、前記蓄電した直流電源を前記正側出力端子及び前記負側出力端子を介して前記インバータ回路に供給する、請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5乃至7のいずれか一項に記載の水力発電システム。
【請求項9】
請求項4記載のポンプ兼用水力発電装置と、
前記正側出力端子及び前記負側出力端子から出力された直流電源を蓄電する蓄電池と
を備え、
前記蓄電池は、前記発電時には、前記コンデンサの蓄電容量を超えた前記直流電源を蓄電し、前記ポンプ兼用逆転水車をポンプとして使用するときには、前記蓄電した直流電源を前記正側出力端子及び前記負側出力端子を介して前記インバータ回路に供給する、水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ兼用水力発電装置及び水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの駆動によりポンプの羽根車を回転させるポンプ装置が知られている。また、ポンプを水車として用い、水車の羽根車を逆回転させて発電機を駆動する水力発電装置が知られている。
【0003】
ポンプ装置及び水力発電装置は、羽根車を用いる点と、羽根車に連動する回転子及び固定子を有する回転電機(モータ、発電機)を用いる点とで似ているものの、用途がポンプ(揚水、給水、排水など)又は発電というように異なっている。また、ポンプ装置は、モータの入力側がインバータ回路に接続されている。一方、水力発電装置は、発電機の出力側が整流回路に接続されている。すなわち、ポンプ装置及び水力発電装置は、それぞれ用途及び周辺回路が互いに相違している。
【0004】
このようなポンプ装置及び水力発電装置は、互いの相違により、周辺のインバータ回路及び整流回路を含んでポンプ装置と水力発電装置とを兼用したポンプ兼用水力発電装置やシステムを実現することが困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、周辺のインバータ回路及び整流回路を含むポンプ兼用水力発電装置及び水力発電システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るポンプ兼用水力発電装置は、インバータ部と、モータ兼用発電機と、ポンプ兼用逆転水車とが一体的に設けられている。
前記インバータ部は、スイッチング素子にダイオードが逆並列接続された複数のアームがブリッジ接続されてなるインバータ回路を含んでいる。
前記モータ兼用発電機は、前記インバータ回路に電気的に接続されている。
前記ポンプ兼用水車は、前記モータ兼用発電機に機械的に接続されている。
ここで、前記インバータ回路は、前記ポンプ兼用逆転水車により前記モータ兼用発電機が駆動された発電時には、前記モータ兼用発電機で発電された交流電源を前記ダイオードにより直流電源に変換する。
【0008】
本発明の別の態様に係る水力発電システムは、前記ポンプ兼用水力発電装置と、系統連系インバータとを備えている。
前記インバータ部は、整流回路と、コンデンサと、正側出力端子と、負側出力端子と、を更に含む。
前記整流回路は、商用電源に電気的に接続可能となっている。
前記コンデンサは、前記整流回路における正側出力ラインと負側出力ラインとの間に接続され、且つ前記インバータ回路に並列に接続されている。
前記正側出力端子は、前記正側出力ラインに接続されている。
前記負側出力端子は、前記負側出力ラインに接続されている。
前記コンデンサは、前記直流電源を平滑化する。
前記正側出力端子及び前記負側出力端子は、前記平滑化された直流電源を出力する。
前記系統連系インバータは、前記正側出力端子及び前記負側出力端子から出力された直流電源を交流電源に変換し、当該変換した交流電源を前記商用電源又は個別負荷に供給する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周辺のインバータ回路及び整流回路を含むポンプ兼用水力発電装置及び水力発電システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係るポンプ兼用水力発電装置を例示する回路図。
【
図2】
図1のポンプ兼用水力発電装置の外観を例示する正面図。
【
図3】
図1のポンプ兼用水力発電装置の外観を例示する側面図。
【
図4】
図1のポンプ兼用水力発電装置の外観を例示する平面図。
【
図5】
図1のポンプ兼用水力発電装置のポンプとしての動作を例示する模式図。
【
図6】
図1のポンプ兼用水力発電装置の発電機としての動作を例示する模式図。
【
図7】
図1のポンプ兼用水力発電装置の発電機としての他の動作を例示する模式図。
【
図8】第2の実施形態に係る水力発電システムを例示する回路図。
【
図9】
図8の水力発電システム及びその配管系統を例示する模式図。
【
図10】
図9の水力発電システムのポンプとしての動作を例示する模式図。
【
図11】
図9の水力発電システムの発電機としての動作を例示する模式図。
【
図12】
図9の水力発電システムのポンプとしての他の動作を例示する模式図。
【
図13】第2の実施形態の変形例に係る水力発電システムを例示する回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態の説明を述べる。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号及び/又は英小文字を用いることもある。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るポンプ兼用水力発電装置を例示する回路図である。
図2乃至
図4は、それぞれポンプ兼用水力発電装置の外観を例示する正面図、側面図及び平面図である。ポンプ兼用水力発電装置1は、インバータ部10と、モータ兼用発電機20と、ポンプ兼用逆転水車30とが一体的に設けられている。すなわち、ポンプ兼用水力発電装置1は、互いに一体的に設けられたインバータ部10、モータ兼用発電機20及びポンプ兼用逆転水車30を備えている。ここで、「一体的に」とは、インバータ部10、モータ兼用発電機20及びポンプ兼用逆転水車30が「1つの製品として」設けられた構成を意味する。例えば
図3中、モータ兼用発電機20の回転子の回転軸と、ポンプ兼用逆転水車30の羽根車の回転軸とは、互いに同一直線40上に位置するが、これに限定されない。例えば、各々の回転軸が互いに略平行に配置され、且つベルト又は増速機(ギア)といった動力伝達装置を介して接続された場合でも、インバータ部10、モータ兼用発電機20及びポンプ兼用逆転水車30は、動力伝達装置を含めて一体的に設けられている。また、各々の回転軸が同一直線40上に位置する場合でも、各々の回転軸は、互いに軸継手を介さずに直結してもよく、互いに軸継手を介して結合してもよい。また、
図3中、インバータ部10は、モータ兼用発電機20に取り付けられているが、これに限らず、ポンプ兼用逆転水車30に取り付けてもよい。あるいは、インバータ部10は、ポンプ兼用逆転水車30を設置した板状部材の上、又はこの板状部材に設けた支持台の上に配置してもよい。この場合でも、インバータ部10、モータ兼用発電機20及びポンプ兼用逆転水車30は、板状部材を含めて一体的に設けられている。また、ポンプ兼用水力発電装置1は、1台に限らず、複数台を並列に稼働させてもよい。
【0013】
ここで、インバータ部10は、スイッチング素子TrにダイオードDが逆並列接続された複数のアーム13a~13fがブリッジ接続されてなるインバータ回路13を含む。詳しくは、インバータ回路13は、正側出力ライン14に一端が接続されたアーム13a~13cと、当該アーム13a~13cと負側出力ライン15との間に接続されたアーム13d~13fとがブリッジ接続されてなる。アーム13a~13fの各々は、スイッチング素子TrにダイオードDが逆並列接続されてなる。このダイオードDは、「フリーホイールダイオード」又は「還流ダイオード」ともいう。スイッチング素子Trとしては、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)やIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の半導体スイッチング素子が適宜、使用可能となっている。また、正側のアームと負側のアームとの組は、交流の相数だけ配置される。
図1に示す三相交流(例、三相200V)の例では、正側のアームと負側のアームとの組は、アーム13a、13dの組と、アーム13b、13eの組と、アーム13c、13fの組との3つが配置される。このようなインバータ回路13は、図示しないインバータ制御基板からのゲート駆動信号によるPWM(パルス幅変調)制御により、パルス状(矩形波状)の電圧をモータ兼用発電機20に供給する。補足すると、インバータ回路13は、ゲート駆動信号による可変速制御により、例えば、目標圧力一定制御運転を行うためのパルス状の電圧をモータ兼用発電機20に供給する。インバータ制御基板は、インバータ部に含めてもよく、外部の制御盤(図示せず)に含めてもよい。なお、インバータ部10は、整流回路11、コンデンサ12、正側出力端子P及び負側出力端子Nを更に含んでもよい。また、インバータ回路13は、ポンプ兼用逆転水車30によりモータ兼用発電機20が駆動された発電時には、モータ兼用発電機20で発電された交流電源をダイオードDにより直流電源に変換する。
【0014】
整流回路11は、インバータ入力端子(R,S,T)を介して、商用電源50に電気的に接続可能な回路であり、例えば、三相ブリッジ接続されたダイオード11a~11fからなる。整流回路11は、商用電源50から供給された三相交流電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧を正側出力ライン14と負側出力ライン15との間からコンデンサ12を介してインバータ回路13に供給する。
【0015】
コンデンサ12は、整流回路11における正側出力ライン14と負側出力ライン15との間に接続され、且つインバータ回路13に並列に接続されている。コンデンサ12は、正側出力ライン14と負側出力ライン15との間の直流電圧を蓄電して平滑化する。
【0016】
正側出力端子Pは、正側出力ライン14に接続されている。
【0017】
負側出力端子Nは、負側出力ライン15に接続されている。
【0018】
モータ兼用発電機20は、モータ及び発電機のいずれでも使用可能な回転電機であり、インバータ回路13に電気的に接続されている。また、モータ兼用発電機20は、ポンプ兼用逆転水車に機械的に接続されている。具体的には例えば、モータ兼用発電機20は、インバータ回路13に電気的に接続された固定子と、ポンプ兼用逆転水車30に機械的に接続された回転子とを備えている。「機械的に接続」という用語は、モータ兼用発電機20の回転子の回転軸と、ポンプ兼用逆転水車30の羽根車の回転軸とが直結した構成と、各々の回転軸が動力伝達装置を介して接続されている構成とを包含する。すなわち、モータ兼用発電機20の回転子の回転軸と、ポンプ兼用逆転水車30の羽根車の回転軸とは、互いに同一直線40上に位置してもよく、互いに同一直線40上に位置しなくてもよい。このようなモータ兼用発電機20は、例えば回転子が永久磁石を備えた、永久磁石式同期モータ兼用発電機としてもよい。
【0019】
また、モータ兼用発電機20は、ポンプ兼用逆転水車30を駆動するモータとして使用される場合、インバータ部10から供給されたパルス状の電圧により回転子を回転させることにより、各々の回転軸を介してポンプ兼用逆転水車30の羽根車を回転させる。
【0020】
また、モータ兼用発電機20は、ポンプ兼用逆転水車30に駆動される発電機として使用される場合、ポンプ兼用逆転水車30の羽根車の回転により、各々の回転軸を介して回転子が回転することで、固定子のコイルに生じた交流電圧をインバータ回路13に供給する。
【0021】
ポンプ兼用逆転水車30は、ポンプ及び逆転水車のいずれでも使用可能な流体機械であり、例えば、渦巻ポンプ、タービンポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプ及び摩擦ポンプ(カスケードポンプ)などの任意のポンプが適宜、使用可能となっている。例えば、ポンプ兼用逆転水車30は、吸込口から羽根車へ流体を導き、回転中の羽根車から出た流体を吐出口に導いて吐出させるケーシングと、ケーシング内に回転可能に収容された羽根車と、羽根車に固定され、当該羽根車に動力を伝える回転軸(主軸)とを備えている。逆に、ポンプ兼用逆転水車30を逆転水車とする場合、ポンプ使用時とは吸込口と吐出口を逆に接続し、吐出口から羽根車へ流体を導き、逆回転する羽根車から出た流体を吸込に導いて吐出させる。この場合、ポンプ兼用逆転水車30が逆転水車となり、モータ兼用発電機20が発電機となって交流電源を発電する。
【0022】
また、ポンプ兼用逆転水車30は、用途に応じた場所に設置されて使用される。すなわち、ポンプ兼用逆転水車30は、モータ兼用発電機20に駆動されるポンプとして使用される場合、例えば、建物の給水配管に設置される。ポンプとしてのポンプ兼用逆転水車30は、直結給水方式又は受水槽方式などの任意の給水方式が適用可能である。例えば、ポンプ兼用逆転水車30は、水道本管に直結され、水道本管を流れる水を直接増圧し、建造物に設けられた蛇口やシャワーヘッド等の供給先に給水する、いわゆる直結増圧型のポンプとして使用可能となっている。あるいは、ポンプ兼用逆転水車30は、水道本管から受水槽に貯められた水を吸い込んで増圧し、建造物に設けられた蛇口やシャワーヘッド等の供給先に給水する、いわゆる加圧ポンプ型のポンプとして使用可能となっている。いずれにしても、ポンプとしてのポンプ兼用逆転水車30は、モータ兼用発電機20に駆動された羽根車の回転により、吸込配管に接続された吸込口31を介して一次側にある水を吸い込んで増圧し、吐出口32から吐出配管を介して二次側の供給先へ給水する。
【0023】
また、ポンプ兼用逆転水車30は、モータ兼用発電機20を駆動する逆転水車として使用される場合、例えば、川や用水路など、水流のある場所に設置される。逆転水車としてのポンプ兼用逆転水車30は、ポンプにおける吐出口32から取り込んだ水流により羽根車を逆回転させてモータ兼用発電機20を駆動し、ポンプにおける吸込口31から水流を吐き出す。
【0024】
次に、以上のように構成されたポンプ兼用水力発電装置の動作例について
図5乃至
図7を参照しながら説明する。この動作例は、ポンプとして使用する時の動作(
図5)と、発電機として使用する時の動作(
図6及び
図7)とを含んでいる。以下、各動作例を順に述べる。
【0025】
(ポンプとして使用する時の動作:
図5)
始めに、ポンプ兼用水力発電装置1は、例えば、建物の地下のポンプ室に設置されているとする。また、ポンプ兼用逆転水車30は、建物の給水配管に接続されているとする。ここで、給水配管における一次側の吸込配管としては、例えば、直結給水方式における水道本管としてもよく、受水槽方式における受水槽の吸込配管としてもよい。
【0026】
ここで、インバータ部10は、矢印51に示すように、商用電源50から供給された三相交流電圧を変換することにより、得られたパルス状の電圧をモータ兼用発電機20に供給する。詳しくは、インバータ部10の整流回路11は、商用電源50から供給される三相交流電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧を正側出力ライン14と負側出力ライン15との間からコンデンサ12を介してインバータ回路13に供給する。なお、コンデンサ12は、正側出力ライン14と負側出力ライン15との間の直流電圧を平滑化する。
【0027】
インバータ回路13は、図示しないインバータ制御基板からのゲート駆動信号によるPWM制御により、アーム13a~13fのスイッチング素子Trの各々をオン状態又はオフ状態に切替え制御し、パルス状の電圧をモータ兼用発電機20に供給する。なお、スイッチング素子Trのオンオフ切替え時に、アーム13a~13fのダイオードDは、モータ等の誘導性負荷により生じた逆起電力を、順方向電流を流すことにより消費している。すなわち、ダイオードDは、オンオフ切替え時の逆起電力による過電圧からスイッチング素子Trを保護している。
【0028】
以上のように、インバータ部10は、商用電源50から供給された三相交流電圧を整流回路11、コンデンサ12及びインバータ回路13を介して変換し、得られたパルス状の電圧をモータ兼用発電機20に供給している。
【0029】
一方、モータ兼用発電機20は、当該パルス状の電圧により駆動され、回転子が回転することにより、ポンプ兼用逆転水車30の回転軸を回転させる。
【0030】
ポンプ兼用逆転水車30は、当該回転軸に固定された羽根車が回転することにより、吸込口31を介して一次側にある水を吸い込んで増圧し、吐出口32から吐出配管を介して二次側の供給先へ給水する。
【0031】
このように、ポンプ兼用水力発電装置1は、ポンプとして使用される。
【0032】
(発電機として使用する時の動作:
図6及び
図7)
始めに、ポンプ兼用水力発電装置1は、例えば、水流のある用水路の上方に設けた小屋に設置されているとする。また、ポンプ兼用逆転水車30は、ポンプ使用時とは吸込口と吐出し口とが逆になるように配管が接続される。例えば、ポンプ兼用逆転水車30は、ポンプにおける吐出口32に接続された吸込配管が用水路内に配置され、ポンプにおける吸込口31に接続された吐出配管が用水路内で吸込配管よりも下流側に配置されているとする。すなわち、ポンプ兼用水力発電装置1は、インバータ部10及びモータ兼用発電機20等の電気系統を用水路の外に位置させた状態で、用水路の水流がポンプ兼用逆転水車30内を流れるように、配置されているとする。なお、この場合、用水路の全ての水流がポンプ兼用逆転水車30内を流れることが好ましい。また例えば、インバータ部10の正側出力端子Pと負側出力端子Nとの間には、系統連系インバータ60が電気的に接続されているとする。なお、系統連系インバータ60としては、電源回生コンバータやパワーコンディショナーなどが適宜、使用可能となっている。系統連系インバータ60は、
図6及び
図7に示すように、正側出力端子P及び負側出力端子Nから出力された直流電源を交流電源に変換し、当該変換した交流電源を商用電源50又は個別負荷55に供給する。但し、以下の説明では、
図6に示す如き、商用電源50に供給(回生)する場合を例に挙げて述べる。また、以下の説明は、ポンプ兼用水力発電装置1と、系統連系インバータ60とを備えた水力発電システムの動作例としてもよい。ここで、系統連系インバータ60は、インバータ回路13と同様の回路構成を有している。例えば、系統連系インバータ60は、スイッチング素子trにダイオードdが逆並列接続された複数のアーム61~66がブリッジ接続されてなる。詳しくは、系統連系インバータ60は、正側出力端子Pに一端が接続されたアーム61~63と、当該アーム61~63と負側出力端子Nとの間に接続されたアーム64~66とがブリッジ接続されてなる。このような系統連系インバータ60は、インバータ回路13と同様のPWM制御により、各スイッチング素子trのオンオフ状態を切替え可能となっている。
【0033】
ここで、ポンプ兼用逆転水車30は、ポンプにおける吐出口32から取り込んだ水流により羽根車を逆回転させてモータ兼用発電機20を駆動し、ポンプにおける吸込口31から水流を吐き出す。
【0034】
モータ兼用発電機20は、ポンプ兼用逆転水車30の羽根車の回転により、回転軸が駆動されて回転子が回転することで、固定子に生じた交流電圧をインバータ回路13に供給する。すなわち、モータ兼用発電機20は、ポンプ兼用逆転水車30により駆動され、交流電源を発電してインバータ回路13に供給する。
【0035】
ここで、インバータ回路13、コンデンサ12及び系統連系インバータ60は、矢印21に示すように、モータ兼用発電機20で発電された交流電源を直流電源に変換して平滑化し、当該平滑化した直流電源を交流電源に変換して商用電源50に回生する。
【0036】
詳しくは、インバータ回路13は、モータ兼用発電機20で発電された交流電源をダイオードDにより直流電源に変換する。補足すると、インバータ回路13は、モータ兼用発電機20を発電機として使用する発電時には、モータ兼用発電機20を駆動しないのでゲート駆動信号が入力されず、全てのスイッチング素子Trがオフ状態となる。このため、インバータ回路13は、ダイオードDがブリッジ接続された整流回路の等価回路となる。すなわち、インバータ回路13は、モータ兼用発電機20による発電時には、ダイオードDがブリッジ接続された整流回路として動作する。よって、インバータ回路13は、発電された交流電源を当該ダイオードブリッジによって直流電源に変換する。すなわち、ポンプ兼用水力発電装置1を逆転水車として発電させると、直流電源を自動的に作り出すことができる。
【0037】
コンデンサ12は、ダイオードDにより変換された直流電源を平滑化する。
【0038】
正側出力端子P及び負側出力端子Nは、当該平滑化された直流電源を系統連系インバータ60に出力する。
【0039】
系統連系インバータ60は、当該出力された直流電源を交流電源に変換し、当該変換した交流電源を商用電源50に回生する。
【0040】
以上のように、インバータ回路13、コンデンサ12及び系統連系インバータ60は、発電された交流電源を直流電源に変換して平滑化し、当該平滑化した直流電源を交流電源に変換して商用電源50に回生している。
【0041】
上述したように第1の実施形態によれば、ポンプ兼用水力発電装置は、スイッチング素子にダイオードが逆並列接続された複数のアームがブリッジ接続されてなるインバータ回路を含むインバータ部と、インバータ回路に電気的に接続されたモータ兼用発電機と、モータ兼用発電機に機械的に接続されたポンプ兼用逆転水車とが一体的に設けられている。ここで、インバータ回路は、ポンプ兼用逆転水車によりモータ兼用発電機が駆動された発電時には、モータ兼用発電機で発電された交流電源をダイオードにより直流電源に変換する。
【0042】
このように、インバータ回路は、ポンプとしての使用時にはインバータとして動作し、発電機としての使用時には、ダイオードがブリッジ接続された整流回路として動作する。すなわち、ポンプ使用時のインバータ回路が発電機使用時の整流回路を兼用する構成により、周辺のインバータ回路及び整流回路を含むポンプ兼用水力発電装置を実現することができる。また、第1の実施形態によれば、ポンプ兼用水力発電装置という一つの製品を、ポンプ用途だけでなく、ポンプ逆転水車として発電用途にも容易に使うことができる。すなわち、モータポンプとして製造した製品を逆転水車発電機として使用することができる。言い換えると、インバータ駆動モータ直結ポンプと、インバータ搭載ポンプ逆転水車とを兼用化させることができる。また、インバータ部、モータ兼用発電機及びポンプ兼用逆転水車を一体化させた構成により、コンパクト化と、量産性の向上とを図ることができる。補足すると、インバータ回路は、ポンプとしての使用時にはスイッチング素子及びダイオードの両者が用いられる。これに対し、インバータ回路は、発電機としての使用時には、スイッチング素子及びダイオードのうち、ダイオードのみが用いられる。従って、ポンプ兼用水力発電装置という一つの製品を発電用途にのみ用いる場合、インバータ回路のスイッチング素子が使用されないにもかかわらず、実装されていることになる。一方、当該ポンプ兼用水力発電装置は、ポンプ装置と水力発電装置とを別々に管理する場合に比べ、容易に管理できる利点がある。また例えば、当該ポンプ兼用水力発電装置は、ポンプ装置と水力発電装置とを別々に設計する場合に比べ、価格を下げることが可能であり、発電用途で使用しないスイッチング素子が実装されていても、割高な価格になることを防ぐことができる。
【0043】
また、第1の実施形態によれば、モータ兼用発電機は、永久磁石式同期モータ兼用発電機としてもよい。この場合、前述した作用効果に加え、ポンプ兼用水力発電装置のモータ効率及び発電効率の向上を図ることができる。
【0044】
また、第1の実施形態によれば、モータ兼用発電機の回転子の回転軸と、ポンプ兼用逆転水車の羽根車の回転軸とは、互いに同一直線上に位置するようにしてもよい。この場合、前述した作用効果に加え、回転軸間にベルト等を介在させないことから、回転軸間での動力伝達損失を抑制できると共に、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0045】
また、第1の実施形態によれば、インバータ部は、商用電源に電気的に接続可能な整流回路と、整流回路における正側出力ラインと負側出力ラインとの間に接続され、且つインバータ回路に並列に接続されたコンデンサと、正側出力ラインに接続された正側出力端子と、負側出力ラインに接続された負側出力端子と、を更に含んでもよい。ここで、コンデンサは、直流電源を平滑化し、正側出力端子及び負側出力端子は、平滑化された直流電源を出力する。この場合、前述した作用効果に加え、ポンプ使用時における整流回路及びコンデンサ等をインバータ部が更に含むので、ポンプ兼用水力発電装置のインバータ部において、ポンプの構成要素を兼用する度合いを大きくすることができる。また、正側出力端子及び負側出力端子をインバータ部が更に含むので、発電により得られた直流電源をインバータ部の外に出力することができる。
【0046】
また、第1の実施形態によれば、上述したポンプ兼用水力発電装置と、当該正側出力端子及び当該負側出力端子から出力された直流電源を交流電源に変換し、当該変換した交流電源を商用電源又は個別負荷に供給する系統連系インバータとを備えた水力発電システムを設けてもよい。この場合、前述した作用効果に加え、周辺のインバータ回路及び整流回路を含むポンプ兼用水力発電装置を備えた水力発電システムを実現できると共に、発電により得られた交流電源を商用電源又は個別負荷に供給することができる。補足すると、正側出力用端子及び負側出力端子から取り出した直流電源を系統連系インバータを経由して、電力系統へ接続して売電することや、個別負荷へ接続して他機器の電源とすることが可能となるので、発電された電気を有効活用することができる。
【0047】
[第1の実施形態の第1変形例]
なお、第1の実施形態は、以下の第1変形例のように変形してもよい。
第1変形例に係る水力発電システムは、配管系統を切り替えずに、ポンプ兼用水力発電装置をポンプ及び発電機の各々として交替的に切り替えて使用する形態である。
【0048】
具体的には、第1変形例に係る水力発電システムは、上述したポンプ兼用水力発電装置と、ポンプ兼用逆転水車をポンプとして使用するときの吸込口及び吐出し口にそれぞれ接続された吸込配管及び吐出し配管とを備えている。また、ポンプ兼用逆転水車の羽根車に当該吸込配管から押込圧力が加わる場合、当該羽根車が正転することによりモータ兼用発電機が交流電源を発電する。なお、押込圧力が加わる場合としては、例えば、当該吸込配管が直結給水方式における水道本管である場合などがある。すなわち、上述したポンプ兼用水力発電装置を直結水道方式のポンプとして設置した場合、モータ兼用発電機により駆動するときにはポンプ兼用逆転水車をポンプとして使用でき、当該駆動しないときにはポンプ兼用逆転水車を水車として使用することができる。補足すると、インバータ部の停止状態でもポンプ兼用逆転水車の吸込口に押込圧力があれば、ポンプが正転運転して発電することはできる。しかしながら、押込圧力により発電したままの状態では直流電源としてコンデンサに蓄電されるのみである。これに対し、予めインバータ部の中間電圧となる直流電源部に正側出力端子P及び負側出力端子Nを設けておけば、直流電源をインバータ部の外に出すことができる。以上の作用効果は、第1変形例に係る水力発電システムが、前述した系統連系インバータを備える場合でも同様に得ることができる。この場合、前述同様に、正側出力用端子及び負側出力端子から取り出した直流電源を系統連系インバータを経由して、電力系統へ接続して売電することや、個別負荷へ接続して他機器の電源とすることが可能となり、発電された電気を有効活用することができる。
【0049】
[第1の実施形態の第2変形例]
なお、第1の実施形態の第1変形例は、以下の第2変形例のように変形してもよい。
第2変形例に係る水力発電システムは、第1変形例における切り替え使用の形態において、蓄電池を更に備えた形態である。
【0050】
具体的には、第2変形例に係る水力発電システムは、
図8に示すように、第1変形例に係るポンプ兼用水力発電装置1に加え、インバータ部10の正側出力端子P及び負側出力端子Nから出力された直流電源を蓄電する蓄電池70を更に備えている。
【0051】
ここで、蓄電池70は、発電時には、コンデンサ12の蓄電容量を超えた直流電源を蓄電し、ポンプ兼用逆転水車30をポンプとして使用するときには、当該蓄電した直流電源を正側出力端子P及び負側出力端子Nを介してインバータ回路13に供給する。
【0052】
すなわち、ポンプ兼用逆転水車を直結水道方式のポンプとして接続した場合、インバータ停止中に吸込口からの押込圧力によって水車とし、水車の正転による発電時にコンデンサ12の蓄電容量を超えた直流電源を蓄電池70が蓄電する。また、ポンプ使用時には、蓄電池70が、当該蓄電した直流電源を正側出力端子P及び負側出力端子Nを介してインバータ回路13に供給し、インバータ回路13がモータ兼用発電機を駆動してポンプ兼用逆転水車の羽根車を回転させる。このように、発電時に、余った直流電源を蓄電池に蓄電し、当該た直流電源を、ポンプ使用時に使用する構成により、発電した電気を有効活用することができる。この蓄電池70を用いた作用効果は、第2変形例に係る水力発電システムが、前述した系統連系インバータを備える場合でも同様に得ることができる。
【0053】
<第2の実施形態>
図9は、第2の実施形態に係る水力発電システムを例示する回路図及び同システムの配管系統を例示する模式図であり、
図1及び
図5と略同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは、主に、異なる部分について述べる。以下の各実施形態も同様にして重複した部分の説明を省略する。
【0054】
第2の実施形態に係る水力発電システムは、第1の実施形態の第2変形例とは異なり、配管系統を切り替えることにより、ポンプ兼用水力発電装置をポンプ及び発電機の各々として交替的に切り替えて使用する形態である。なお、配管系統以外の構成は、
図8に示した如き、第2変形例と同様である。
【0055】
これに伴い、ポンプ兼用逆転水車30に接続された配管系統は、発電時と、ポンプ使用時(揚水時)との間で配管を切り替え可能となっている。例えば
図9に示すように、ポンプ兼用逆転水車30のポンプ使用時における吸込口31には、第1貯水槽80に対して水を吸込/吐出し可能な一次側配管81が接続されている。また、ポンプ兼用逆転水車30のポンプ使用時における吐出口32には、二次側配管82が接続されている。二次側配管82は、三方弁82a及び吐出配管82bを介して第2貯水槽83に水を吐出可能となっている。また、第2貯水槽83の底部と三方弁82aとの間は、流出配管82cを介して接続されている。三方弁82aは、ポンプ使用時には二次側配管82と吐出配管82bとを連通させ、発電時には流出配管82cと二次側配管82とを連通させるように、配管系統を切り替え可能な弁である。なお、第1貯水槽80は、第2貯水槽83よりも上方に配置されるため、上側貯水槽と呼んでもよい。同様に、第2貯水槽83は、下側貯水槽と呼んでもよい。また、第1貯水槽80及び第2貯水槽83は、それぞれ水槽に限らず、池としてもよい。また、一次側配管81、二次側配管82、吐出配管82b及び流出配管82cなどの配管の名称は、便宜的なものであり、適宜、変更してもよい。
【0056】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
次に、以上のように構成された水力発電システムの動作例について
図8、
図10乃至
図12を参照しながら説明する。この動作例は、蓄電池70の蓄電前後において、ポンプとして使用する時の動作(
図10及び
図12)と、蓄電池70を蓄電可能な発電機として使用する時の動作(
図11)とを含んでいる。以下、各動作例を順に述べる。
【0058】
(ポンプとして使用する時の動作_蓄電池70の蓄電前:
図10)
始めに、三方弁82aは、二次側配管82と吐出配管82bとを連通させているとする。また、蓄電池70は、まだ蓄電されていないとする。
【0059】
ここで、インバータ部10は、
図10の矢印51に示すように、商用電源50から供給された三相交流電圧を変換することにより、得られたパルス状の電圧をモータ兼用発電機20に供給する。
【0060】
モータ兼用発電機20は、当該パルス状の電圧により駆動され、回転子が回転することにより、ポンプ兼用逆転水車30の回転軸を回転させる。
【0061】
ポンプ兼用逆転水車30は、当該回転軸に固定された羽根車が回転することにより、矢印84に示すように、吸込口31から水を吸い込んで増圧し、吐出口32から吐き出す。詳しくは、ポンプ兼用逆転水車30は、吸込口31及び一次側配管81を介して第1貯水槽80にある水を吸い込んで増圧し、吐出口32から二次側配管82、三方弁82a及び吐出配管82bを介して第2貯水槽83へ給水する。
【0062】
このように、水力発電システムは、蓄電池70の蓄電前には商用電源50から供給される三相交流電圧により、ポンプ兼用水力発電装置1をポンプとして使用している。
【0063】
(発電機として使用する時の動作_蓄電池70を蓄電:
図11)
始めに、三方弁82aは、第2貯水槽83の底部に接続された流出配管82cと、二次側配管82とを連通させているとする。
【0064】
これにより、第2貯水槽83の水が流出配管82c、三方弁82a及び二次側配管82を通って吐出口32からポンプ兼用逆転水車30に取り込まれる。ポンプ兼用逆転水車30は、矢印85に示すように、当該吐出口32から取り込んだ水流により羽根車を逆回転させてモータ兼用発電機20を駆動し、ポンプにおける吸込口31から一次側配管81を介して第1貯水槽80に水流を吐き出す。
【0065】
モータ兼用発電機20は、ポンプ兼用逆転水車30の羽根車の回転により、回転軸が駆動されて回転子が回転することで、
図8に示したように、固定子に生じた交流電圧をインバータ回路13に供給する。すなわち、モータ兼用発電機20は、ポンプ兼用逆転水車30により駆動され、交流電源を発電してインバータ回路13に供給する。
【0066】
ここで、インバータ回路13及びコンデンサ12は、矢印22に示すように、モータ兼用発電機20で発電された交流電源を直流電源に変換して平滑化及び蓄電を行い、蓄電池70は、コンデンサ12の蓄電容量を超えた直流電源を蓄電する。
【0067】
このように、水力発電システムは、発電時にはポンプ兼用水力発電装置1を発電機として使用しつつ、ポンプ兼用水力発電装置1内のコンデンサ12の蓄電容量を超えた直流電源を蓄電池70に蓄電させている。
【0068】
(ポンプとして使用する時の動作_蓄電後の放電:
図12)
始めに、三方弁82aは、二次側配管82と吐出配管82bとを連通させているとする。蓄電池70は、蓄電完了しているとする。
【0069】
ここで、蓄電池70は、
図12の矢印71に示すように、蓄電した直流電源を
図8に示した正側出力端子P及び負側出力端子Nを介してインバータ回路13に供給する。
【0070】
モータ兼用発電機20は、当該パルス状の電圧により駆動され、回転子が回転することにより、ポンプ兼用逆転水車30の回転軸を回転させる。
【0071】
ポンプ兼用逆転水車30は、当該回転軸に固定された羽根車が回転することにより、
図12の矢印84に示すように、吸込口31から水を吸い込んで増圧し、吐出口32から吐き出す。すなわち、前述同様に、ポンプ兼用逆転水車30は、吸込口31及び一次側配管81を介して第1貯水槽80にある水を吸い込んで増圧し、吐出口32から二次側配管82、三方弁82a及び吐出配管82bを介して第2貯水槽83へ給水する。
【0072】
このように、水力発電システムは、蓄電池70の蓄電後には、蓄電池70から供給される直流電源により、ポンプ兼用水力発電装置1をポンプとして使用することができる。
【0073】
上述したように第2の実施形態によれば、水力発電システムは、第1の実施形態に係るポンプ兼用水力発電装置と、正側出力端子及び負側出力端子から出力された直流電源を蓄電する蓄電池とを備えている。ここで、蓄電池は、発電時には、コンデンサの蓄電容量を超えた直流電源を蓄電し、ポンプ兼用逆転水車をポンプとして使用するときには、蓄電した直流電源を正側出力端子及び負側出力端子を介してインバータ回路に供給する。
【0074】
従って、第1の実施形態の作用効果に加え、蓄電池を備えた構成により、商用電源を用いる度合いを低減させ、ポンプ使用時の省電力化を図ることができる。
【0075】
[第2の実施形態の変形例]
なお、第2の実施形態は、以下の変形例のように変形してもよい。
変形例に係る水力発電システムは、第1及び第2の実施形態を組み合わせたものであり、
図13に示すように、第2の実施形態に係るポンプ兼用水力発電装置1の蓄電池70に並列に、第1の実施形態に係る系統連系インバータ60が接続された形態である。なお、ポンプ兼用逆転水車30は、第2の実施形態に係る切り替え可能な配管系統に接続されている。
【0076】
ここで、系統連系インバータ60は、前述同様に、ポンプ兼用水力発電装置1の正側出力端子P及び負側出力端子Nから出力された直流電源を交流電源に変換し、当該変換した交流電源を商用電源50又は個別負荷55に供給する。但し、系統連系インバータ60が接続される正側出力端子P及び負側出力端子Nの両端子間には蓄電池70が接続されている。また、系統連系インバータ60と、商用電源50及び個別負荷55との間には、分電盤58が接続されている。分電盤58は、系統連系インバータ60と商用電源50との間の接続又は切り離しを行う。また、分電盤58は、系統連系インバータ60と個別負荷55との間の接続又は切り離しを行う。
【0077】
以上のような構成によれば、前述した
図10のポンプ動作及び
図11の蓄電動作の後、系統連系インバータ60は、蓄電池70から供給される直流電源を交流電源に変換し、当該変換した交流電源を商用電源50又は個別負荷55に供給することができる。
【0078】
従って、本変形例によれば、第1及び第2の実施形態の両者の作用効果を得ることができる。
【0079】
上述の実施形態は、本発明の概念の理解を助けるための具体例を示しているに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図されていない。実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な構成要素の付加、削除または転換をすることができる。
【0080】
上述の実施形態では、いくつかの機能部を説明したが、これらは各機能部の実装の一例に過ぎない。例えば、1つの装置に実装されると説明された複数の機能部が複数の別々の装置に亘って実装されることもあり得るし、逆に複数の別々の装置に亘って実装されると説明された機能部が1つの装置に実装されることもあり得る。
【0081】
また、以上のようなポンプ兼用水力発電装置及び水力発電システムは、以下の[1]~[6]に示すように、表現してもよい。
【0082】
[1]インバータ駆動のモータ直結ポンプを使用し、ポンプ使用時とは吸込口と吐出し口を逆に配管し発電させるポンプ逆転水車において、インバータとモータ(発電機)とポンプ(逆転水車)を一体化し、発電時には発電機(モータ)と接続するインバータ部(インバータ回路)のダイオードを利用して、発電機から発電された交流電源を直流電源に変換する、ポンプ兼用水力発電装置。
【0083】
[2]上記[1]において、永久磁石式同期発電機(モータ)を使用するポンプ兼用水力発電装置。
【0084】
[3]上記[1]又は[2]において、インバータの中間電圧部となる直流電源部にて出力端子(正側P,負側N)を有し、発電された直流電源を出力するポンプ兼用水力発電装置。
【0085】
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかにおいて、直流電源出力端子から発電出力された直流電源を、電源回生コンバータやパワーコンディショナーなどの系統連系インバータを経由して、電力系統や個別負荷へ接続させるポンプ兼用水力発電装置。
【0086】
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかにおいて、ポンプ使用時と同じ吸込口と吐出し口に配管接続し、水道直結増圧ポンプなど押込圧力がある場合、ポンプ停止時に弁を開けることで正転であってもポンプが回転し発電させるポンプ兼用水力発電装置。
【0087】
[6]上記[1]乃至[5]のいずれかにおいて、発電時、コンデンサの蓄電容量を超えた場合、外部接続された蓄電池にて蓄電し、ポンプ駆動に蓄電された電気を使用することができるポンプ兼用水力発電装置。
【0088】
[7]インバータ搭載PMモータ一体ポンプの直流中間電圧部に出力用端子を設け、出力用端子に接続された外付けの電源回生コンバータ又はパワーコンディショナーにより、出力用端子から供給された直流電源から交流電源を作成する水力発電システム。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0090】
1・・・ポンプ兼用水力発電装置、10・・・インバータ部、11・・・整流回路、11a~11f,D,d・・・ダイオード、12・・・コンデンサ、13・・・インバータ回路、13a~13f,61~66・・・アーム、14・・・正側出力ライン、15・・・負側出力ライン、20・・・モータ兼用発電機、30・・・ポンプ兼用逆転水車、31・・・吸込口、32・・・吐出口、40・・・同一直線、50・・・商用電源、55・・・個別負荷、58・・・分電盤、60・・・系統連系インバータ、70・・・蓄電池、80・・・第1貯水槽、81・・・一次側配管、82・・・二次側配管、82a・・・三方弁、82b・・・吐出配管、82c・・・流出配管、83・・・第2貯水槽、Tr,tr・・・スイッチング素子、P・・・正側出力端子、N・・・負側出力端子。