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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054111
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
F04D15/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161118
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】加代 将士
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
【テーマコード(参考)】
3H020
【Fターム(参考)】
3H020AA05
3H020AA07
3H020BA03
3H020BA07
3H020BA16
3H020BA22
3H020BA23
3H020CA08
3H020DA02
3H020DA04
3H020DA21
3H020EA04
3H020EA07
(57)【要約】
【課題】浸水による影響を抑制することが可能な給水装置を提供する。
【解決手段】実施形態の給水装置は、ポンプと、制御部と、浸水検出部を備える。ポンプは給水を行い、制御部は、ポンプに電力を供給して、ポンプを制御し、浸水検出部は、ポンプの電気的な配線部分よりも低い位置に設けられ、浸水を検出し、そして、制御部は、浸水検出部が浸水を検出した場合に、ポンプへの電力供給を停止する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を行うポンプと、
このポンプに電力を供給して、前記ポンプを制御する制御部と、
前記ポンプの電気的な配線部分よりも低い位置に設けられ、浸水を検出する浸水検出部とを備え、
前記制御部は、前記浸水検出部が浸水を検出した場合に、前記ポンプへの電力供給を停止することを特徴とする
給水装置。
【請求項2】
さらに、前記浸水検出部が浸水を検出した場合に、浸水を通知する通信部を備えることを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記浸水検出部が浸水を検出した場合に、前記通信部が浸水を通知した後に、前記ポンプへの電力供給を停止することを特徴とする請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
さらに、電力を蓄える蓄電部を備え、
前記制御部は、前記浸水検出部が浸水を検出した場合に、電力供給を停止し、その後、前記通信部は、前記蓄電部が蓄える電力を利用して、浸水を通知することを特徴とする請求項2に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルやマンションなどの集合住宅、工場、公共施設など、種々の建物や施設に対して、水道水などを供給する給水装置が広く設置されている。
近年、台風やゲリラ豪雨などによる大量の降水や、装置の故障などに起因して、給水装置が浸水する事故に遭うことがある。特に都市部においては、給水装置は地下に設置されることが多々あり、浸水の影響を受けやすい。
【0003】
また給水装置が浸水した状態に陥ったにもかかわらず通電を継続すると、モータで駆動するポンプには大きな電力が供給されるため、ショートなどにより激しく損傷して、大がかりな修理が必要な状態に陥ることがある。
なお、従来より商用電源に代わって蓄電池を用いて給水装置を稼働させる技術は存在するが、給水装置を保護することを目的とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-119512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、浸水による影響を抑制することが可能な給水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の給水装置は、ポンプと、制御部と、浸水検出部を備える。ポンプは給水を行い、制御部は、ポンプに電力を供給して、ポンプを制御し、浸水検出部は、ポンプの電気的な配線部分よりも低い位置に設けられ、浸水を検出し、そして、制御部は、浸水検出部が浸水を検出した場合に、ポンプへの電力供給を停止する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】給水装置の構成を示す図。
図2図1に示した給水装置の制御盤の構成を各種センサと共に示す図。
図3図1に示した給水装置の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、一実施形態に係わる給水装置について説明する。
図1は、実施形態に係わる給水装置10を示す図である。この図は、例えば、建物や施設の地下の設備室などに設置された給水装置10を側面方向から見た図であり、パッケージ型の給水装置10の筐体11内に収められた機器の配置例を示している。
【0009】
すなわち、この図は、給水装置10を構成する機器の配置を説明するためのものであって、実際の運用時には、図示しない開閉式の扉によって給水装置10の内部(機器)は外部から保護されるので、各機器は、この図に見えるような露出した状態にはない。なお、設置環境によっては、必要に応じて上記扉を設けない場合も考えられる。
【0010】
給水装置10は、設置された建物や施設に例えば水道水を供給するものであって、筐体11、第1ポンプ部20a、第2ポンプ部20b、配管部30、アキュムレータ40、漏水センサ51、流量センサ52、第1レベルセンサ53a、第2レベルセンサ53b、制御盤60などの機器を備える。
【0011】
また、上記機器は、金属が多用された重量物であるが、筐体11は、これらの機器を内部に固定して収容できる剛性を備えた金属製の堅牢な筐体である。また筐体11は、外周部には、固定治具として、床固定用フレーム11fと壁固定用フレーム11wを備える。
【0012】
床固定用フレーム11fは、筐体11に溶接などにより強固に連結された金具であり、筐体11を床にボルト固定するため孔が設けてある。同様に、壁固定用フレーム11wは、筐体11に溶接などにより強固に連結された金具であり、筐体11を壁面にボルト固定するため孔が設けてある。
【0013】
また筐体11の内部は、上段領域には主に、第1ポンプ部20a、第2ポンプ部20b、アキュムレータ40、制御盤60が設けられ、中段領域には主に、配管部30や漏水センサ51、流量センサ52、第1レベルセンサ53a、第2レベルセンサ53bが設けられる。また下段領域は、設置された建物や施設の配管との接続などの使用可能なスペースとなっている。
【0014】
このように、給水装置10は、水没や浸水に対して比較的脆弱な機器を上の領域に優先的に設けるようにして下段に設けることを避けることで、水没や浸水に対する耐性を高めている。水没や浸水に対して比較的脆弱な機器としては、例えば、電気を利用する機器や物理的な圧力(水圧)の影響を受けやすい機器、水などへの耐食性の低い機器、機器の単価(価格)の高い物などが考えられる。これらの要素の1つまたは複数を組み合わせ、製造コスト、設置やメンテナンスの容易性など、総合的な判断の元に機器のレイアウトを決定する。
【0015】
第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bは、それぞれ少なくとも、ポンプやモータの他に、ポンプ吸込口やポンプ吐出口などの送水管を備え、一次側としてポンプ吸込口に与えられた液体に対して、モータの動力により複数段のインペラを有するポンプが増圧して圧送を行い、二次側としてポンプ吐出口より液体を送出する。すなわち、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bは、給水を行うポンプの一例である。
【0016】
この実施形態では、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bが並列してそれぞれ縦置きに設置される。なお、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bは、上述したポンプやモータ以外に、後述する制御盤60内に設けられる、上記モータを駆動させるためのインバータを、設けるようにしてもよい。なお、インバータは、浸水や水没を避けるために、できるだけ上方に設けることが望ましい。
【0017】
配管部30は、液体、例えば水道管(あるいは受水槽)から水道水の入水を受け付けるとともに、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20b(あるいは、後述するアキュムレータ40)を介して増圧された水道水を、建物や施設の給水管に送水するための流水路であって、液体の圧力に耐えうる金属製の配管やバルブによって構成される。
【0018】
より具体的には、配管部30は、吸込側ボール弁31a、吐出側ボール弁31b、逆流防止装置32、吸込用ヒータ33a、連結管用ヒータ33b、排気弁34、チェック弁35a、バイパス側チェック弁35b、連結管36、吸込圧力用発信器37a、吐出圧力用発信器37b、アキュムレータ用ボール弁38を備える。
【0019】
なお、これらのうち、流水路として、吸込側ボール弁31a、逆流防止装置32、第1ポンプ部20aあるいは第2ポンプ部20b、チェック弁35a、連結管36、吐出側ボール弁31bが連通している。
【0020】
吸込側ボール弁31aは、一次側が水道管(あるいは受水槽を介して)に接続され、弁体の手動回転により流路を開閉して、二次側より水道水を逆流防止装置32を介して、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bに給水する。
逆流防止装置32は、流路における液体の流れの方向を一方向に規制する。逆流防止装置32の下部には逃がし弁部が設けられている。この逃がし弁部は逆流防止装置32から下方に延びている。
【0021】
連結管36は、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bの二次側と、吐出側ボール弁31bを連結させるものである。
吐出側ボール弁31bは、連結管36の二次側に接続され、弁体の手動回転により流路を開閉して、連結管36からの水道水を図示しない給水管に給水する。
【0022】
吸込用ヒータ33aは、吸込側ボール弁31aの近傍における流水路の凍結を防ぐためのヒータである。
連結管用ヒータ33bは、連結管36における流水路の凍結を防ぐためのヒータである。
排気弁34は、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bの二次側に設けられ、二次側の流水路に溜まった気体(空気)を外部に排出するための弁である。
【0023】
チェック弁35aは、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bの二次側と、連結管36との間に設けられた逆止弁であって、逆方向への流体の流れを阻止する。
バイパス側チェック弁35bは、連結管36とアキュムレータ40の一次側との間に設けられた逆止弁であって、逆方向への流体の流れを阻止する。
【0024】
吸込圧力用発信器37aは、吸込側ボール弁31aを介して流入する液体の圧力を検出するものであって、検出値を無線送信する。
吐出圧力用発信器37bは、吐出側ボール弁31bより流出する液体の圧力を検出するものであって、検出値を無線送信する。
【0025】
アキュムレータ用ボール弁38は、アキュムレータ40用のボール弁であって、弁対の手動回転により、アキュムレータ40への流路を開閉する。
アキュムレータ40は、窒素ガスなどの気体が封入されたダイヤフラムを利用して貯圧を行い、この圧力により、連結管36内の圧力変動を緩やかにする。
【0026】
漏水センサ51は、例えば、吐出側ボール弁31bの下側に設けられ、吐出側ボール弁31b付近からの漏水を検出し、制御盤60に通知する。
流量センサ52は、吐出側ボール弁31bより供給される水道水の量を検出し、制御盤60に通知する。
【0027】
第1レベルセンサ53aと第2レベルセンサ53bは、給水装置10の浸水や水没を検出するものである。第2レベルセンサ53bは、制御盤60の下端に設けられ、制御盤60における電気的な配線が露出した部分が、上昇する水位により水没する前を検出できる。
【0028】
なお、この実施形態でいう「電気的な配線が露出した部分」とは、電気の導通に利用される金属がむき出しになった部分であり、被覆された導線のうち、例えば、銅線、半田付け部分、圧着端子、コネクタ端子や回路基板上の配線パターンを想定するが、より安全性を考慮して、導線の被覆された部分を含めて考えてもよい。
【0029】
一方、第1レベルセンサ53aは、第2レベルセンサ53bよりも低い位置に設置され、上昇する水位を、より高い位置に設置された第2レベルセンサ53bよりも早く検出する。例えば、第1レベルセンサ53aは、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bにおける電気的な配線が露出した部分が、上昇する水位により水没する前を検出できる。
【0030】
なお、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bにおける電気的な配線が露出した部分は、第2レベルセンサ53bよりも高い位置になるようにしてもよい。すなわち、第1レベルセンサ53aは、ポンプの動作に関わる電気的な配線部分よりも低い位置に設けられ、浸水を検出する浸水検出部の一例である。
【0031】
また、第1レベルセンサ53aと第2レベルセンサ53bは、いったん浸水や水没すると、しばらくの間、各センサの検知部分が湿った状態となり、浸水や水没を継続的に検出するような物理的な構造を有しており、これにより、各センサの検知部分が所定のレベルまで乾燥するまで、浸水や水没していると判定する。
【0032】
具体的な構造としては、例えばコップのような小型の水槽に液体が溜まるようにし、その中に設けたセンサ部分(例えば、電極)により水分の有無を検出するように、第1レベルセンサ53aと第2レベルセンサ53bを構成する。あるいは、上記電極を布などの素材で覆い、その素材が乾燥するまで時間がかかるようにしてもよい。いずれの方法であっても、センサ部分の乾燥までの時間が、水没した機器が乾燥により正常な運転ができるまでの時間に一致、あるいは、それ以上に要するものであればよい。
【0033】
制御盤60は、給水装置10の各部を統括して制御する回路を備え、例えば、図2に示すように構成される。すなわち、制御盤60は、電源回路61、表示部62、操作部63、通信部64、記憶部65、通信コネクタ66、センサインタフェース(I/F)67、蓄電池68、制御部600を少なくとも備える。また制御盤60は、金属や樹脂などのケースに上記の構成が収まったものであり、ケースには簡易な防水性能を持たせてもよい。
【0034】
電源回路61は、図示しない分電盤から分岐されて供給された電力や蓄電池68から供給される電力を、当該給水装置10内の電気機器での使用に適した電力に変換するものであって、少なくとも、ポンプ用電源回路61a、制御用電源回路61b、電源切換部61cを備える。また電源回路61は、分電盤からの電力を基に、蓄電池68を充電する機能を備える。
【0035】
ポンプ用電源回路61aは、モータ用のインバータを備え、これにより、分電盤から供給される電力を第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bで使用可能な交流電力に変換する。
制御用電源回路61bは、DCコンバータを備え、これにより、分電盤から供給される電力を制御盤60内の機器や各種センサで使用可能な直流電力に変換する。
【0036】
電源切換部61cは、制御部600からの指示にしたがって、制御用電源回路61bからの直流電力と、蓄電池68から供給される直流電力とのうち、一方を選択的に制御盤60内の各部や、センサインタフェース67を通じて、各種センサに供給する。
【0037】
表示部62は、液晶や有機ELを用いた表示パネル、7セグメントLED、LEDランプなど用いた表示装置であって、制御部600の表示制御により、当該給水装置10の運転状態や設定情報などを保守員や作業員などに通知するものである。
【0038】
操作部63は、キースイッチ、ディップスイッチ、トグルスイッチなどの各種スイッチや、表示部62の表示パネルなどと組み合わせたタッチパネルを備えた入力インタフェースであって、保守員や作業員などから、運転の始動や停止、パラメータの入力や動作設定の指示を受け付ける。なお、以下では、操作部63には、主電源のスイッチも含まれるものとして説明する。
【0039】
通信部64は、外部と通信を行う通信装置であって、制御部600の制御により、当該給水装置10が設置される施設内のコントロールルームの機器や、インターネットなどのネットワークを通じて保守サービスを担うコントロールセンターの機器と通信を行う。また通信部64には、保守員や作業員が携帯する保守端末と無線通信を行う機能を備えてもよい。
【0040】
なお、通信部64は、第1レベルセンサ53a(あるいは第2レベルセンサ53b)が浸水を検出した場合に、浸水を外部に通知する機能を備えてもよい。また、通信部64は、第1レベルセンサ53a(あるいは第2レベルセンサ53b)が浸水を検出した場合に、制御部600が外部からの電力供給を停止した後、蓄電池68が蓄える電力を利用して、浸水を外部に通知する機能を備えてもよい。
【0041】
すなわち、通信部64による通信は、有線でも無線でもよく、電話回線、光通信回線、専用通信回線、インターネット、移動通信網、公衆無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)など、いずれに対応するものであってもよい。
【0042】
通信コネクタ66は、例えばRS-232などのインタフェースであって、パーソナルコンピュータや、専用のコントローラなどの外部機器を有線接続し、この外部機器からの指示を制御部600に与えて、当該給水装置10の動作を制御したり、設定の変更や制御プログラムや制御データの書き換えを行ったり、あるいは記憶部65に保存される動作ログを読み出すために使用する。
【0043】
記憶部65は、SDRAM(Synchronous Dynamic RAM)、NANDフラッシュメモリやEPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリを用いたものであって、制御部600の制御プログラムや制御データ、動作ログ、各種センサの検出結果などを記憶する。
【0044】
センサインタフェース67は、各種センサを制御部600に接続するためのインタフェースである。制御部600は、このセンサインタフェース67を通じて、各センサに動作電力を供給するとともに、各センサが検出した情報を受け取る。
【0045】
蓄電池68は、防水措置が施された、非常用の電力を蓄える二次電池であって、電源回路61によって充電が行われるとともに、非常時には制御盤60の動作用の電力を供給する。なお、非常用の電力としては、蓄電池68以外に蓄えられた電力を用いるようにしてもよい。蓄電池68は、蓄電部の一例である。
【0046】
また例えば、制御盤60の回路内のコンデンサに蓄えられた電力を用いることも考えられる。この場合、後述する制御部600は、制御盤60内の一部の機能のみ稼働させるようにしてもよい。また、制御盤60は、バックアップ電池(図示しない)を備え、このバックアップ電池の電力により、制御部600の時計機能による時刻計時の維持や、記憶部65に記憶される情報を維持する。
【0047】
制御部600は、当該制御盤60内の各部を統括して制御する制御中枢であって、記憶部65から読み出した制御プログラムや制御データを記憶するメモリ(図示しない)と、このメモリに記憶される制御プログラムや制御データに基づく処理を実行するプロセッサ(図示しない)を備え、これらにより各種制御機能を実現する。
【0048】
より具体的には、制御部600は、制御プログラムや制御データ、各種センサの検出結果に基づいて、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bの運転を制御して、安全かつ安定した給水を行う給水制御を行うものであって、また、これに合わせて、浸水や水没の発生を監視し、浸水や水没の後の電源制御(運転制御)などを行う。
【0049】
例えば、制御部600は、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bに動作用の電力を供給して、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bの動作を制御する。また、制御部600は、第1レベルセンサ53aが浸水を検出した場合に、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bへの電力供給を停止する。
【0050】
また例えば、制御部600は、第1レベルセンサ53aが浸水を検出した場合に、通信部64が浸水を外部に通知した後に、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bへの電力供給を停止する機能を備えてもよい。
【0051】
次に、動作について説明する。以下の説明では特に、浸水や水没に関わる電源制御について説明し、通常の給水に関わる第1ポンプ部20aや第2ポンプ部20bの運転制御の詳細については省略する。図3は、浸水や水没に関わる電源制御を説明するためのフローチャートである。このフローは、操作部63の主電源スイッチがONされると開始される。
【0052】
ステップS301では、主電源スイッチのONにより分電盤からの電力が電源回路61に供給されると、制御用電源回路61bがONとなる。これにより、制御用電源回路61bは、分電盤から入力される電力を直流電力に変換して、制御盤60内の機器や各種センサへの電力供給を開始して、上記機器や各種センサが動作を開始する。
【0053】
ステップS302では、電源が投入されたことにより、制御部600が記憶部65に記憶される制御プログラムや制御データを読み込んで、制御を開始し、上記制御データに基づく初期設定を行った後、ステップS303に移行する。
【0054】
ステップS303において制御部600は、第2レベルセンサ53bが浸水や水没を検出しているか否か、すなわち、浸水による水位のレベルが(第1レベルより高い)第2レベルまで達しているか否かを判定する。ここで、第2レベルセンサ53bが第2レベルの水位を検出している場合には、制御盤60を至急、保護するために、ステップS317に移行し、一方、検出していない場合には、ポンプの運転が行える状態にあるかを確認するために、ステップS304に移行する。
【0055】
ステップS304において制御部600は、第1レベルセンサ53aが浸水や水没を検出しているか否か、すなわち、浸水による水位のレベルが第1レベルまで達しているか否かを判定する。ここで、第1レベルセンサ53aが第1レベルの水位を検出している場合には、ポンプの運転が行える状態にないため、ステップS305に移行し、一方、検出していない場合には、ポンプの運転を行うべく、ステップS306に移行する。
【0056】
ステップS305において制御部600は、表示部62を制御して、第1レベルの警報発令を意味する表示を行うとともに、通信部64を制御して、外部に第1レベルの警報が発令した旨を示す情報を送信し、ステップS318に移行する。
【0057】
なお、ここでの警報は、第1レベル以下の水没や浸水、あるいは、水没や浸水後に、第1レベル以下の機器が十分に乾燥していない可能性を報知することを目的としたものであり、例えば、ポンプの再稼働の危険性を保守員や作業員、外部に知らしめるものである。
【0058】
ステップS306において制御部600は、ポンプ用電源回路61aをONにし、ステップS307に移行する。これにより、ポンプ用電源回路61aは、分電盤から入力される電力を変換して、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bに電力供給が可能な状態となるが、この時点ではまだ電力の供給は行わない。
【0059】
ステップS307において制御部600は、操作部63を通じて、保守員や作業員からポンプの始動操作を受けたか否かを判定する。ここで、始動操作を受けた場合には、ステップS308に移行し、一方、受けていない場合には、操作を待機する。
【0060】
ステップS308において制御部600は、図示しないリレースイッチをONにして、ポンプ用電源回路61aから、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bに電力供給を開始して、両ポンプを始動させ、ステップS309に移行する。これにより当該給水装置10は運用状態となり、給水が開始される。以後、給水動作中における水没や浸水の発生を監視する。
【0061】
ステップS309において制御部600は、第1レベルセンサ53aが浸水や水没を検出しているか否か、すなわち、浸水による水位のレベルが第1レベルまで達しているか否かを判定する。ここで、第1レベルセンサ53aが第1レベルの水位を検出している場合には、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bを、至急保護するために、ステップS312に移行し、一方、検出していない場合には、ポンプの運転を継続して、ステップS310に移行する。
【0062】
ステップS310において制御部600は、操作部63を通じて、保守員や作業員、あるいは外部からポンプの停止操作を受けたか否かを判定する。ここで、停止操作を受けた場合には、ステップS311に移行し、一方、受けていない場合には、再びステップS309に移行して、第1レベルの水没を判定する。なお、ここでの停止操作は、保守員や作業員の任意の判断によるもので、例えば、通常の保守や点検、再始動に伴う保守や点検などの場合が考えられる。
【0063】
ステップS311において制御部600は、図示しないリレースイッチをOFFにして、ポンプ用電源回路61aから、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bへの電力供給を停止して、両ポンプを停止させ、ステップS307に移行する。これにより当該給水装置10は給水運転が停止状態となる。
【0064】
ステップS312において制御部600は、表示部62を制御して、第1レベルの警報発令を意味する表示を行うとともに、通信部64を制御して、外部に第1レベルの警報が発令した旨を示す情報を送信し、ステップS313に移行する。
【0065】
なお、ここでの警報は、第1レベル以下の水没や浸水、あるいは、水没や浸水後に、第1レベル以下の機器が十分に乾燥していない可能性を報知することを目的としたものであり、例えば、ポンプの再稼働の危険性を保守員や作業員、外部に知らしめるものである。
【0066】
ステップS313において制御部600は、図示しないリレースイッチをOFFにして、ポンプ用電源回路61aから、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bへの電力供給を停止して、両ポンプを停止させ、ステップS314に移行する。これにより当該給水装置10は給水運転が停止状態となる。
【0067】
ステップS314において制御部600は、図示しないリレースイッチをOFFにして、ポンプ用電源回路61aへの電力供給を停止し、ステップS315に移行する。すなわち、遮断回路により、電力供給を停止する。これにより、分電盤からポンプ用電源回路61a、そしてポンプ用電源回路61aから第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bまでの電力供給経路には、一切の通電が行われない状態となり、ポンプを含む、この経路における通電に伴うショートによる故障発生が抑制される。
【0068】
ステップS315において制御部600は、第2レベルセンサ53bが浸水や水没を検出しているか否か、すなわち、浸水による水位のレベルが第1のレベルを越えて、第2レベルまで達しているか否かを判定する。ここで、第2レベルセンサ53bが第2レベルの水位を検出している場合には、制御盤60を、至急保護するために、ステップS317に移行し、一方、検出していない場合には、給水の復帰を求める操作を待機するために、ステップS316に移行する。
【0069】
ステップS316において制御部600は、操作部63を通じて、保守員や作業員、あるいは外部からポンプを再稼働させる復帰操作を受けたか否かを判定する。ここで、復帰操作を受けた場合には、ステップS304に移行し、一方、受けていない場合には、再びステップS315に移行して、第2レベルの水没を判定する。なお、ここでの復帰操作は、保守員や作業員の任意の判断によるもので、例えば、浸水によるポンプ停止後に、安全を確認したのちに行われる場合が考えられる。
【0070】
ステップS317において制御部600は、表示部62を制御して、第2レベルの警報発令を意味する表示を行うとともに、通信部64を制御して、外部に第2レベルの警報が発令した旨を示す情報を送信し、ステップS318に移行する。
【0071】
なお、ここでの警報は、第1レベルを越え第2レベルまで、水没や浸水したことを報知するものであり、例えば、ポンプの再稼働については、第1レベルの警報よりも高いリスクが伴い、制御盤60の点検が必須であることを保守員や作業員、外部に知らしめるものである。
【0072】
ステップS318において制御部600は、図示しないリレースイッチをOFFにして、制御用電源回路61bへの電力供給を停止し(すなわち、遮断回路により、電力供給を停止)、これにより制御部600がOFF状態となって停止して、当該処理が終了する。これにより、分電盤から制御用電源回路61b、そして制御用電源回路61bから制御盤60内の機器までの電力供給経路には、一切の通電が行われない状態となり、この経路における通電に伴うショートによる故障発生が抑制される。
【0073】
以上のように、上記構成の給水装置10では、制御盤60、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bにおける電気的な配線が露出した部分よりも低い位置に、第1レベルセンサ53aや第2レベルセンサ53bを設けて、これらのセンサが浸水を検出した場合に、制御盤60、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bへの電力供給を停止するようにしている。
【0074】
したがって、上記構成の給水装置10によれば、制御盤60、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bが、浸水や水没した状態で通電を行ってショートなどによって破損することを防止でき、浸水や水没による影響を抑制することができる。
【0075】
また、上記構成の給水装置10では、制御盤60、第1ポンプ部20aおよび第2ポンプ部20bが浸水する前に、通信部64が外部に浸水の情報を送信して、電力の供給を停止するようにしている。このため、給水装置10の浸水や水没、運転停止を外部で認識することができるので、例えば、保守員や作業員などの派遣など、復旧までに要する期間を短縮することができる。
【0076】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0077】
例えば、上記実施の形態では、通信部64が外部に浸水の情報を送信した後に、電力の供給を停止するようにしたがこれに限定されるものではない。例えば、浸水をセンサが検出した場合に、すぐに分電盤からの電力の供給を停止し、蓄電池68や制御盤60内のコンデンサの電力を利用して、制御部600および通信部64が、外部に浸水の情報を送信するようにしてもよい。
【0078】
また上記実施形態では、2つの浸水センサ(第1レベルセンサ53aと第2レベルセンサ53b)を高さを変えて設けているので、様々な制御(停止制御、復帰制御)を行うことができ、上記実施形態に限定されるものではない。
【0079】
例えば、停止については、第2レベルセンサ53bが浸水を検出した場合に、ポンプ用電源回路61aおよび/または制御用電源回路61bをOFFにして電力の供給を停止し、一方、その後の復帰については、第1レベルセンサ53aが浸水を検出しない場合に、ポンプ用電源回路61aおよび/または制御用電源回路61bをONにして電力の供給を再開するようにしてもよい。すなわち、スレッショルドにより、復帰は、停止よりも水位が低い場合に行うようにする。
【0080】
また反対に、例えば、停止については、第1レベルセンサ53aが浸水を検出した場合に、ポンプ用電源回路61aおよび/または制御用電源回路61bをOFFにして電力の供給を停止し、一方、その後の復帰については、第2レベルセンサ53bがいったん浸水を検出した後、第2レベルセンサ53bが浸水を検出しなくなった場合に、ポンプ用電源回路61aおよび/または制御用電源回路61bをONにして電力の供給を再開するようにしてもよい。すなわち、停止については、例えば水位の急激な上昇を考慮して早期に行い、復帰については、いったん下がった水位の再上昇によるポンプ故障のリスクよりも給水を優先して、停止よりも緩い条件で、運転を再開するようにする。
【0081】
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0082】
10…給水装置、11…筐体、11f…床固定用フレーム、11w…壁固定用フレーム、20a…第1ポンプ部、20b…第2ポンプ部、30…配管部、31a…吸込側ボール弁、31b…吐出側ボール弁、32…逆流防止装置、33a…吸込用ヒータ、33b…連結管用ヒータ、34…排気弁、35a…チェック弁、35b…バイパス側チェック弁、36…連結管、37a…吸込圧力用発信器、37b…吐出圧力用発信器、38…アキュムレータ用ボール弁、40…アキュムレータ、51…漏水センサ、52…流量センサ、53a…第1レベルセンサ、53b…第2レベルセンサ、60…制御盤、61…電源回路、61a…ポンプ用電源回路、61b…制御用電源回路、61c…電源切換部、62…表示部、63…操作部、64…通信部、65…記憶部、66…通信コネクタ、67…センサインタフェース、68…蓄電池、600…制御部。
図1
図2
図3