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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054112
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】監視装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20220330BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20220330BHJP
   H02H 3/34 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
G01R31/52
H02H3/00 N
H02H3/34 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161119
(22)【出願日】2020-09-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.HDMI
(71)【出願人】
【識別番号】503032382
【氏名又は名称】古屋 一彦
(71)【出願人】
【識別番号】392022721
【氏名又は名称】株式会社和田電業社
(71)【出願人】
【識別番号】592208806
【氏名又は名称】一般財団法人関東電気保安協会
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】古屋 一彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 功
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正美
【テーマコード(参考)】
2G014
5G058
5G142
【Fターム(参考)】
2G014AA04
2G014AA16
2G014AB33
2G014AC15
5G058AA02
5G058BB02
5G058CC02
5G058CC08
5G142AA16
5G142AB01
(57)【要約】
【課題】電力回路の状況を把握することのできる監視装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、電力回路の状態を監視する監視装置が提供される。この監視装置は、受付部と、特定部とを備える。受付部は、電力回路の零相変流器が検出した電流値と、電力回路の電源側変圧器の対地電圧値との入力を受け付け可能に構成される。特定部は、電流値と対地電圧値とに基づいて電力回路の零相電流の位相角を特定し、該位相角に基づいて電力回路の配線のうち絶縁劣化が生じている相の配線を特定可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力回路の状態を監視する監視装置であって、
受付部と、特定部とを備え、
前記受付部は、電力回路の零相変流器が検出した電流値と、前記電力回路の電源側変圧器の対地電圧値との入力を受け付け可能に構成され、
前記特定部は、前記電流値と前記対地電圧値とに基づいて前記電力回路の零相電流の位相角を特定し、該位相角に基づいて前記電力回路の配線のうち絶縁劣化が生じている相の配線を特定可能に構成される
監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置において、
前記特定部は、監視状態において前記零相変流器が検出した零相電流値から前記電力回路に絶縁劣化が無いことが確認された状態における該電力回路の零相電流値を減じた値から前記電力回路の地絡事故点の地絡電流値を特定可能に構成される
監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の監視装置において、
前記特定部は、前記電源側変圧器の相電圧値と、前記電源側変圧器の対地電圧と値、前記地絡電流値とに基づいて、前記電力回路の地絡事故点の対地絶縁抵抗値を特定可能に構成される
監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の監視装置において、
前記特定部は、前記電源側変圧器の電源周波数と、前記電源側変圧器の相電圧値と、前記電源側変圧器の対地電圧値と、前記地絡電流値とに基づいて、前記電力回路の非対称対地静電容量の成分値を特定可能に構成される
監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の監視装置において、
前記特定部は、前記電源側変圧器の相電圧値と、前記電源側変圧器の対地電圧値と、前記地絡事故点の対地絶縁抵抗値と、前記非対称対地静電容量の成分値とに基づいて、前記電力回路の不平衡対地静電容量値を特定可能に構成される
監視装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の監視装置において、
判定部と、出力部とを備え、
前記判定部は、前記地絡電流値が第1の閾値を超えた場合に、前記電力回路に地絡事故が発生したと判定し、
前記出力部は、前記判定部の判定に応じて、前記電力回路に地絡事故が発生したことを示す情報を出力する
監視装置。
【請求項7】
請求項6に記載の監視装置において、
前記判定部は、前記地絡電流値が第2の閾値を超えた場合に、前記電力回路の対地絶縁性能が劣化したと判定し、ここで、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも小さい値であり、
前記出力部は、前記判定部の判定に応じて、前記電力回路の対地絶縁性能が劣化したことを示す情報を出力する
監視装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の監視装置において、
前記判定部は、前記電力回路の既知の回路定数と、前記特定部が特定した対地絶縁抵抗値と、前記特定部が特定した不平衡対地静電容量値と、前記電力回路に接続可能な地絡電流抑制装置の抵抗値とに基づいて、該地絡電流抑制装置を該電力回路に接続した際の効果を判定可能に構成され、ここで、前記地絡電流抑制装置は、所定値の直流抵抗を備え、地絡事故発生時に前記電力回路の接地線に接続されるものであり、
前記出力部は、前記判定部による判定の結果を、地絡事故電流の抑制効果が大きいこと、地絡事故電流の抑制効果が小さいことと、地絡事故電流が増大することとのいずれかを示す情報を出力する
監視装置。
【請求項9】
請求項8に記載の監視装置において、
制御部を備え、
前記制御部は、前記判定部の判定よる判定の結果に応じて前記地絡電流抑制装置を制御する制御信号を生成し、
前記出力部は、前記制御部が生成した制御信号を前記地絡電流抑制装置に出力する
監視装置。
【請求項10】
請求項9に記載の監視装置において、
前記制御部は、前記地絡電流抑制装置が前記電力回路に接続された状態で、前記零相変流器が検出した電流値が所定の値よりも減少した場合に、前記地絡電流抑制装置と前記電力回路との接続を開放する制御信号を生成する
監視装置。
【請求項11】
コンピュータを監視装置として動作させるプログラムであって、
コンピュータを請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の監視装置として機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力回路の分布定数としての対地静電容量は、大小の差はあるものの、不平衡であり、負荷機器の稼働にも追従して、大きさと不平衡さが変動している。このような電力回路において、対地絶縁抵抗の劣化や地絡事故が発生した場合、地絡電流を検出する零相変流器の検知電流値より地絡事故点の地絡電流の方が大きくなる現象があり、それは、対地静電容量とその不平衡の大きさと、D種接地、B種接地の抵抗値が大きくなるほど大きくなることが、実現場の調査と試験において確認できた。
【0003】
このような電力回路においては、地絡電流を検出する零相変流器の検知電流から、地絡事故点の電流を把握し、把握した電流に基づいて動作する地絡電流検出装置や監視装置を設置することにより、漏電による人身や設備の安全性をさらに高めることが望まれている。
【0004】
さらに、自然災害、特に地震、洪水などの災害時に建築物が大きな被害を受け、電力配線設備も大きな損傷を被り停電となった時、電源設備の復旧が急務となる。そのような状況下で、損傷を受けた電力配線設備の地絡が原因とされる漏電火災が発生した過去の事例がある。一方、無人の建物、特に歴史的建築物等の休館日や、夜間などにおいて、地絡が原因と想定される漏電火災が起きた事例もある。
【0005】
このため、電気設備の保安業務を外部委託しているビルや工場において、休日や深夜の無人状態に地絡事故が発生した場合に、その建物が平日状態に戻るまでの間の対策として、単相トランス、三相トランスごと、または単相トランスと三相トランスの共通のB種接地線に数1000Ωの直流抵抗を有する地絡電流抑制装置の設置が認められている。
【0006】
なお、地絡電流抑制装置には、例えば、特許文献1に記載されたようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5455430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電力回路に地絡電流が生じている状況で、前述した地絡電流抑制装置を投入した際には、その結果として、地絡事故点の電流を大きく抑制できる場合、地絡事故点の電流の抑制効果が小さい若しくは無い場合、地絡事故点の電流を増大させる場合とがあることが判明した。
【0009】
地絡電流抑制装置の投入により、地絡事故点の電流が増大する場合には、地絡電流抑制装置の投入を回避する必要があり、また、地絡事故点の電流の抑制効果が小さい場合も、保安業務担当者がその旨を把握している必要がある。
【0010】
地絡電流抑制装置を投入した場合の事象が異なるのは、負荷機器を含む配線回路の対地静電容量の大きさや不平衡性、また、その不平衡性が不規則に変動するためである。したがって、保安業務担当者が電力回路の対地絶縁抵抗のみならず、対地静電容量の状況を把握できるようにすることは、重要事項となる。
【0011】
本発明では上記事情を鑑み、電力回路の状況を把握することのできる監視装置及びプログラムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、電力回路の状態を監視する監視装置が提供される。この監視装置は、受付部と、特定部とを備える。受付部は、電力回路の零相変流器が検出した電流値と、電力回路の電源側変圧器の対地電圧値との入力を受け付け可能に構成される。特定部は、電流値と対地電圧値とに基づいて電力回路の零相電流の位相角を特定し、該位相角に基づいて電力回路の配線のうち絶縁劣化が生じている相の配線を特定可能に構成される。
【0013】
本発明の一態様によれば、電力回路への給電を停止することなく、当該電力回路の状況を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る監視装置1の構成の概略を示した図である。
図2】監視装置1の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】複素平面の回転座標変換により0度変換(変換無し)を行った例を示した図である。
図4】複素平面の回転座標変換により180度変換を行った例を示した図である。
図5】単相3線式配線回路の力率角の例を示した図である。
図6】三相3線式変圧器と単相3線式変圧器が同一のB種接地で構成される電力回路の接地抵抗成分と不平衡な対地静電容量成分で構成される系統回路の閉回路の例である。
図7図6に示した回路で、R相に地絡事故(対地絶縁抵抗RR1で示す)が起こった状態の例を示した図である。
図8】IRB-CIRBの計算例を複素平面で表したものでる。
図9】監視装置1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0016】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0017】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0018】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0019】
1.監視装置の構成
図1は、本発明の実施形態に係る監視装置1の構成の概略を示した図である。同図に示すように、監視装置1は、処理部11と、記憶部12と、一時記憶部13と、外部装置接続部14と、通信部15とを有しており、これらの構成要素が監視装置1の内部において通信バス16を介して電気的に接続されている。
【0020】
処理部11は、例えば、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)により実現されるもので、記憶部12に記憶された所定のプログラムに従って動作し、種々の機能を実現する。
【0021】
記憶部12は、様々な情報を記憶する不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばROM(Read Only Memory)やソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスにより実現される。もちろん、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)であってもよい。
【0022】
一時記憶部13は、揮発性の記憶媒体である。これは、例えばランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリにより実現され、処理部11が動作する際に一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶する。
【0023】
外部装置接続部14は、例えばユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus:USB)や高精細度マルチメディアインターフェース(High-Definition Multimedia Interface:HDMI)といった規格に準じた接続部であり、電圧や電流を計測する計測器やモニタ、地絡電流抑制装置等を接続可能としている。
【0024】
通信部15は、例えばローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)規格に準じた通信手段であり、監視装置1とローカルエリアネットワークやこれを介したインターネット等のネットワークとの間の通信を実現する。なお、通信部15は、必ずしも必要な構成ではなく、通信が必要な場合には、所望の通信装置を外部装置接続部14に接続して、通信部15に代えることが可能である。
【0025】
なお、監視装置1は、専用の装置として構成してもよく、汎用のコンピュータ等を利用することが可能である。
【0026】
2.監視装置1の機能
次に、監視装置1の機能について説明する。監視装置1は、プログラムにしたがって動作することで、後述する各機能部を実現する。このプログラムは、コンピュータを監視装置として動作又は機能させるプログラムである。
【0027】
図2は、監視装置1の機能的な構成を示すブロック図である。この監視装置1は、電力回路の状態を監視する監視装置である。同図に示すように、監視装置1は、受付部101と、特定部102と、判定部103と、制御部104と、出力部105とを備える。
【0028】
受付部101は、監視対象の電力回路の零相変流器が検出した電流値と、電力回路の電源側変圧器の対地電圧値との入力を受け付け可能に構成される。対地電圧値は、電源側変圧器の接地相の対地電圧を測定してもよく、電圧の測定に代えて、D種接地抵抗値とB種接地抵抗値の和にB種接地線の電流値を乗じた値を用いてもよい。また、零相変流器が検出する零相電流や電源側変圧器の対地電圧値に含まれる高調波成分等の影響を除去するために、各種のフィルターなどの対策を講じるとことが望ましい。なお、当該フィルタに代えて、受付部101が受け付けた電流値や電圧値をディジタル変換した後に、ディジタルフィルタにより、高調波成分等の影響を除去するようにしてもよい。
【0029】
特定部102は、監視対象の電力回路の配線のうち絶縁劣化が生じている相の特定、当該電力回路における地絡事故点電流値の特定、当該電力回路における対地絶縁抵抗値の特定、当該電力回路の不平衡対地静電容量値の特定、当該電力回路に地絡電流抑制装置が投入された場合、または地絡電流抑制装置が開放された場合の地絡事故点電流の予測計算等を行う。
【0030】
このため、特定部102は、受付部101が受け付けた電流値と対地電圧値とに基づいて電力回路の零相電流の位相角を特定し、特定した位相角に基づいて電力回路の配線のうち絶縁劣化が生じている相の配線を特定可能に構成される。なお、絶縁劣化が生じている配線相の特定の詳細については、後述する。
【0031】
また、特定部102は、監視状態において零相変流器が検出した零相電流値から監視対象の電力回路に絶縁劣化が無いことが確認された状態における該電力回路の零相電流値を減じた値から該電力回路の地絡事故点の地絡電流値を特定可能に構成される。なお、地絡電流値の特定の詳細については、後述する。
【0032】
また、特定部102は、電源側変圧器の相電圧値と、電源側変圧器の対地電圧値、地絡電流値、具体的には、零相変流器が検出した零相電流値とに基づいて、監視対象の電力回路の地絡事故点の対地絶縁抵抗値を特定可能に構成される。
電源側変圧器の相電圧値は、監視対象の電力回路の状態に応じて変動するものではないため、定数として扱うことが可能である。なお、対地絶縁抵抗値の特定の詳細については、後述する。
【0033】
さらに、特定部102は、電源側変圧器の電源周波数と、電源側変圧器の相電圧値と、電源側変圧器の対地電圧値と、地絡電流値、具体的には、零相変流器が検出した零相電流値とに基づいて、当該電力回路の非対称対地静電容量の成分値を特定可能に構成される。非対称対地静電容量の成分値は、R相の対地静電容量値とT相の対地静電容量値との差であってもよい。電源側変圧器の電源周波数と相電圧は、監視対象の電力回路の状態に応じて変動するものではないため、定数として扱うことが可能である。なお、不平衡対地静電容量の特定の詳細については、後述する。また、監視対象の電力回路の場合は、電源側変圧器の接地相の対地電圧は、D種接地抵抗値とB種接地抵抗値の合成値に電源側変圧器のB種接地線の電流値を乗じた値を用いてもよい。なお、不平衡対地静電容量値の特定の詳細については、後述する。
【0034】
また、特定部102は、電源側変圧器の相電圧値と、電源側変圧器の対地電圧値と、地絡事故点の対地絶縁抵抗値と、非対称対地静電容量の成分値とに基づいて、当該電力回路の不平衡対地静電容量値を特定可能に構成される。なお、対地静電容量の非対称成分値の特定の詳細については、後述する。
【0035】
判定部103は、地絡事故の発生や、地絡事故には至らないものの対地絶縁性能が劣化している状態を判定する。また、地絡事故が発生した場合には、地絡電流抑制装置を用いた場合の効果を判定する。地絡電流抑制装置は、所定値、例えば、数千Ωの直流抵抗を備え、地絡事故発生時に電力回路の接地線に接続されるものである。
【0036】
判定部103は、地絡電流値が第1の閾値を超えた場合に、監視対象の電力回路に地絡事故が発生したと判定する。また、判定部103は、地絡電流値が第2の閾値を超えた場合に、監視対象の電力回路の対地絶縁性能が劣化したと判定する。第2の閾値は、第1の閾値よりも小さい値である。
【0037】
さらに、判定部103は、監視対象の電力回路の既知の回路定数と、特定部が特定した対地絶縁抵抗値と、特定部が特定した不平衡対地静電容量値と、当該電力回路に接続可能な地絡電流抑制装置の抵抗値とに基づいて、該地絡電流抑制装置を該電力回路に接続した際の効果を判定可能に構成される。
【0038】
制御部104は、判定部103の判定よる判定の結果に応じて地絡電流抑制装置を制御する制御信号を生成する。例えば、判定部103が、地絡電流抑制装置の投入が地絡事故点の地絡電流の抑制に効果があると判定した場合に、地絡電流抑制装置を投入する制御信号を生成して、地絡電流抑制装置投入実行後の零相変流器の零相電流を保存する。その後、地絡電流抑制装置が投入された状態で、零相変流器の検出電流が所定の下限値の幅以上に変化し、かつ所定の時間が経過した場合、該接続を短時間(例えば数秒間)開放する制御信号を生成する。つまり、制御部104は、地絡電流抑制装置が電力回路に接続された状態で、零相変流器が検出した電流値が所定の値よりも減少した場合に、地絡電流抑制装置と電力回路との接続を開放する制御信号を生成する。
【0039】
この場合、短時間内での、地絡電流抑制装置が開放された状態において、零相電流変流器の検出電流値が、地絡電流抑制装置を投入する設定された判定値を所定の値だけ下回り、かつ、所定の時間が経過した場合に、地絡電流抑制装置の接続を開放させる信号を生成する。
【0040】
一方、零相変流器の検出電流が所定の上限値の幅以上に変化し、かつ所定の時間が経過した場合、地絡電流抑制装置の投入状態を計測のままとし、地絡事故の増大を示す情報を生成する。
【0041】
零相電流変流器の検出電流が所定の幅以上に変化しない場合は制御部104の制御信号は変わらない。
【0042】
出力部105は、判定部103の判定に応じて、監視対象の電力回路に地絡事故が発生したことを示す情報、監視対象の電力回路の対地絶縁性能が劣化したことを示す情報を出力する。また、出力部105は、判定部103が地絡電流抑制装置を監視対象の電力回路に接続した場合の効果を判定した場合には、判定部103による判定の結果を、地絡事故電流の抑制効果が大きいこと、地絡事故電流の抑制効果が小さいことと、地絡事故電流が増大することとのいずれかを示す情報を出力する。また、出力部105は、地絡電流抑制装置の接続を開放させる信号、地絡事故の増大を示す情報等も出力する。これらの情報は、監視装置1に接続されたモニタ装置、又は、通信部15又は図示しない通信装置を介して通信可能なモニタ装置等に出力される。
【0043】
また、出力部105は、制御部104が生成した制御信号を地絡電流抑制装置に出力する。地絡電流抑制装置は、外部装置接続部14に接続されていてもよく、通信部15又は図示しない通信装置を介して通信可能な状態に接続されていてもよい。
【0044】
3.特定部102による特定
次に、特定部102による各値の特定について説明する。
【0045】
3-1.回転座標変換
まず、不平衡対地静電容量、絶縁劣化、地絡事故予兆、地絡事故点の配線相、地絡事故点の
地絡電流値、及び地絡事故点の対地絶縁抵抗値等の検知に用いる回転座標変換について説明する。特定部102は、複素数平面の回転座標変換により、単相3線交流回路における、配線相の不平衡な対地静電容量の差の検知、絶縁劣化や地絡事故発生の配線相の検知を行う。単相3線式配線回路を例として説明すると、中性相がB種接地された電源側変圧器の中性相端子とプラス電位端子(ここではR相端子とする)間の電圧の位相を基準位相0度とする。そして、零相変流器が検出する零相電流IRBを、複素平面の回転座標変換により0度変換(変換無し)と180度変換の2通りの座標変換を行う。図3は、複素平面の回転座標変換により0度変換(変換無し)を行った例を示した図である。また、図4は、複素平面の回転座標変換により180度変換を行った例を示した図である。なお、図3中の破線と図4中の実線は、参考のために記したものであり、条件が異なる場合の零相電流に相当するものである。
【0046】
特定部102は、0度変換(変換無し)により変換した零相電流IRBの位相角θが-90度以上90度以下となる場合に、R相を不平衡対地静電容量が大きい配線相、絶縁劣化を起こしている配線相、地絡事故を起こしている配線相と特定する。また、180度変換(変換無し)により変換した零相電流IRBの位相角θが-90度以上90度以下となる場合に、T相を不平衡対地静電容量が大きい配線相、絶縁劣化を起こしている配線相、地絡事故を起こしている配線相と特定する。なお、図3及び図4に示した例の場合は、R相を不平衡対地静電容量が大きい配線相、絶縁劣化を起こしている配線相、地絡事故を起こしている配線相と特定する。
【0047】
3-2.地絡事故の予兆検知
電力回路の対地間絶縁性能を示す閉回路インピーダンス(ループインピーダンス)は、電力回路や負荷機器に絶縁劣化や地絡事故がない状況においては、配線各相の対地静電容量(配線の分布定数+機器のCy型コンデンサー)とそれに直列になるD種接地抵抗(又はA種D種共用接地抵抗)とC種接地抵抗の並列と、さらに直列につながるB種接地抵抗と接地設備の配線インピーダンスで構成される。
【0048】
その結果、閉回路インピーダンスは、対地静電容量成分だけではなく、接地抵抗の成分を持った形になり、図5に示す単相3線式配線回路の例のように、それらの成分の大きさに対応した力率角になっている。図5は、単相3線式配線回路の力率角の例を示した図である。
【0049】
図6は、三相3線式変圧器と単相3線式変圧器が同一のB種接地で構成される電力回路の接地抵抗成分と不平衡な対地静電容量成分で構成される系統回路の閉回路の例である。なお、同図において、ER1は単相3線R相電圧、ET1は単相3線T相電圧、ER3は三相3線R相電圧、ET3は三相3線T相電圧、CR1は単相3線R相対地静電容量、CT1は単相3線T相対地静電容量、CN1は単相3線N相対地静電容量、CR3は三相3線R相対置静電容量、CT3は三相3線R相対置静電容量、CS3は三相3線S相対置静電容量、ZCTは零相変流器、RDはD種接地抵抗、RBはB種接地抵抗、EBはB種接地極、EDはD種接地極を示す。特定部102は数ミリアンペア(mA)以下の小地絡領域における絶縁劣化現象や、分布定数の非対称対地静電容量の検知、特定を可能にするために、対地絶縁性能が所定の性能を満たす状態における、負荷機器を含む監視対象電力回路の零相電流をCIRBとして保存する。例えば、監視対象が単相3線式210V/105Vで、D種接地とB種接地の合成抵抗値が50Ωの電力回路において、受付部101で、電源側変圧器のB種接地の対地間端子電圧VN=0.1068+j1.658Vと零相変流器の電流IRB=2.1367+j32.8516mAを検出し、特定部102が、監視対象の電力回路の零相電流IRBに基づいて、当該電力回路の対地絶縁抵抗値が所定の値を満たしていると判定した場合、特定部102により、CIRB=2.13 +j32.8mAと特定して保存する。
【0050】
そして、監視対象の電力回路の零相電流IRBと、CIRBと、電源側変圧器の所定の端子電圧Eと、B種接地端子の対地電圧VNに基づいて、対地絶縁抵抗値RR1と対地静電容量の非対称成分値CDを特定する。すなわち、特定部102は対地絶縁性能が所定の値を満たす状態の電力回路において、E-VNをIRB-CIRBで除して、RR1とCDを特定する。
【0051】
例えば、前述したのと同様に、電源側変圧器の対地電圧VN=0.1068+j1.658V、零相変流器の電流IRB=2.136+j32.85mAであった場合、特定部102は、当該電力回路の対地絶縁抵抗値をRR1=2.015MΩと特定し、対地静電容量の非対称成分を、IRBの位相角がプラスであるから、R相が大きい非対称成分(位相角がマイナスの場合はT相)として、CD=0.999μFと特定する。
【0052】
3-3.非対称対地静電容量
次に、監視対象である電力回路に地絡事故が起こり、地絡電流抑制装置を投入する時の地絡電流抑制効果の予測計算に必要な、当該電力回路の各相のである非対称対地静電容量値(分布定数)の特定について説明する。例えば、監視対象の電力回路は、R相の対地静電容量CR1は、数1により算出することができる。
【0053】
【数1】
【0054】
例えば、監視対象の電力回路が、電源側変圧器の対地電圧VN=0.1068+j1.658V、零相変流器の電流IRB=2.136+j32.85mAであった場合、R相の絶縁抵抗RR1と、CDに加え、電源側変圧器の所定の端子電圧と、B種接地端子の対地電圧と、D種、B種の接地抵抗と、電源周波数f=50Hzなどの各値に基づいて、ω=2πf=314.16、CN1はN相の対地電圧が小さいので変動が無いものとすると、数1に示した計算式の各項は、数2から数5に示すものとなる。
【0055】
【数2】

【数3】

【数4】

【数5】
【0056】
したがって、R相の対地静電容量CR1は、数6に示すように特定することができる。
【数6】
【0057】
このCR1の値は、後述する地絡電流抑制装置の投入後の効果予測計算のために保存する。なお、CR1の値は、全ての回路定数を既知として汎用ソフトを用いて計算した場合の値とほぼ一致し、数1の計算式により計算が有効であることを確認している。
【0058】
一方、絶縁劣化状態、小さい漏電状態においても電力回路の接地抵抗の影響は無視できない。前述の閉回路インピーダンスは、不平衡な対地静電容量(分布定数)と、絶縁劣化点や地絡点の絶縁抵抗が並列になり、それに直列になるD種接地抵抗(又はA種D種共用接地抵抗)とC種接地抵抗の並列と、さらにそれに直列につながるB種接地抵抗と接地設備の配線インピーダンスで構成されている。図7は、図6に示した回路で、単相3線回路のR相に地絡事故(対地絶縁抵抗RR1で示す)が起こった状態の例を示した図である。
【0059】
特定部102は、絶縁が劣化した電力回路の零相電流IRBからCIRBを減じることで、絶縁劣化状態を特定する。例えば、監視対象の電力回路が前述と同様の回路で、変圧器のB種接地端子電圧VN=0.208+j1.63V、零相変流器の電流IRB=4.17+j32.7mAを検知すると、特定部102はIRBの位相角がプラスなので、電力回路のR相に絶縁劣化が起こり、絶縁劣化点の漏れ電流はIRBから前記CIRBを減じて、IRB-CIRB=2.04-j0.11mAと特定し、絶縁劣化点の対地絶縁抵抗値を51kΩと特定する。なお、前述の汎用ソフトを用いた算出した対地絶縁抵抗値は、50kΩである。
【0060】
3-4.地絡事故点電流と対地絶縁抵抗
特定部102は、電力回路の零相電流IRBからCIRBを減じることで、地絡事故点電流の特定を行うこともできる。地絡事故の予兆検知は、絶縁劣化状態における小さい地絡電流を特定するものであるが、これよりも地絡電流の大きい地絡事故の際にも、同様に地絡電流を特定することができる。具体的には、図6に示した単相3線式電力回路のR相に地絡事故が起こり、図7に示した単相3線電力回路のR相の絶縁抵抗RR1に地絡事故点電流IRR1が流れた時、零相変流器ZCTが検知する零相電流から、図6に示した同じ電力回路のZCTが検知する零相電流を引き去ることで、地絡事故が発生した配線相と地絡事故点電流を特定する。
【0061】
図8は、IRB-CIRBの計算例を複素平面で表したものでる。同図に示した例は、R相に地絡事故が生じた場合の例であるが、地絡事故点がT相であっても、前述した回転座標変換を用いて、同様に地絡点の事故電流を特定することができる。例えば、監視対象の電力回路が前述と同様の回路で、電源側変圧器のB種接地端子の対地電圧VN=2.65+j1.45Vと、零相変流器の電流IRB=53.0+J28.9mAを検出すると、CIRB=2.13+j32.8mAから、特定部102は、地絡事故点の電流をIRB-CIRB=50.9-j3.9mAと特定し、上記IRBの位相角がプラスであるから、地絡事故相はR相と特定し、地絡事故点の対地絶縁抵抗をRR1=2005.9Ωと特定する。そしてこれは、前述した汎用ソフトにより算出した2000Ωとも良く一致する。前述のとおり、T相に地絡事故が起きた場合でも、前述した回転座標変換を用いて、同様に地絡事故点の地絡電流と地絡抵抗を特定することができる。
【0062】
3-5.不平衡対地静電容量
特定部102は、電源側変圧器の所定の端子電圧(E)とB種接地端子の対地電圧(VN)の差の電圧(E-VN)を地絡事故点電流で除することで、対地絶縁インピーダンスを特定する。そして、電源周波数を用いることで、対象となる電力回路の対地絶縁抵抗値と、不平衡対地静電容量値とを特定する。このとき、絶縁劣化又は地絡事故がT相で発生している場合には、E-VNと、地絡点事故電流とを共に180度回転座標変換する。
【0063】
3-6.地絡電流抑制装置の適正運用に対する効果
前述のように、特定部102は、対象となる電力回路の地絡事故点電流、対地絶縁抵抗値、不平衡対地静電容量値を特定することができる。これに、既知として扱うことのできる電源周波数、電源側変圧器の相電圧、接地抵抗値、地絡電流抑制装置の設定抵抗値等の各値を用いることで、特定部102は、電力回路に地絡電流抑制装置が接続された場合の状態や、当該接続が開放された場合の状態を予測することができる。
【0064】
特定部102は、特定した値や既知の値に基づいて、対象となる電力回路の等価回路に基づいて、当該電力回路に地絡電流抑制装置が接続された場合に地絡事故点電流がどのように変化するかを予測計算によって特定する。例えば、監視対象の電力回路が前述と同様の回路で、R相に地絡事故が起こり、受付部101で、零相変流器の電流IRB=53.0+J28.9mAを検出して、特定部102が地絡事故点の電流をIRR1=50.9-j3.9mAと特定する。この値が、所定の電源変圧器のB種接地線に、地絡電流抑制装置を接続するための所定の判定値を超えた状態で、かつ所定の時間が継続したと、判定部103が判定した場合(例えば、判定値50mA、継続時間20分)、特定部102は地絡電流抑制装置を接続後の地絡事故点の電流を以下の方法で予測計算する。D種、B種の接地抵抗値に地絡電流抑制装置の抵抗値、例えば2000Ωを合成した値=2050Ωと、特定した値、既知の値などから、電源側変圧器の接地端子の予測電圧VNVを計算する。上記の条件から、特定部102は予測VNV=36.8-j13.2Vを特定する。そして、電源側変圧器の所定の相電圧(地絡相R)と前記予測VNVの差を、特定した地絡相の対地インピーダンスで除して、地絡相の地絡電流IR=26.0+j50.2mAを特定し、地絡相の対地インピーダンスのR成分とC成分から、IRを分流計算して、地絡電流抑制装置を接続した場合の地絡事故点の地絡電流IRR1=34.4+j6.6mAを特定する。そしてこれは、前述の汎用ソフトによる計算値34.4Ωとも良く一致する。つまり、特定部102は、地絡電流抑制装置接続前の地絡事故点の電流50.9-j3.9mAが、地絡電流抑制装置の接続により、34.4+j6.6mAに抑制されると予測計算する。この結果に従って、判定部103は、当該監視対象の電力回路に対し、地絡電流抑制装置の接続に効果ありの信号を生成する。
【0065】
また、特定部102は、対象となる電力回路の等価回路に地絡電流抑制装置が接続されている場合には、当該接続を開放した場合に地絡事故点電流がどのように変化するかを特定する。
【0066】
4.制御部104の動作
次に、制御部104の動作について説明する。図9は、監視装置1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
【0067】
制御部104は、判定部103により地絡事故が発生したことが判定されると、地絡電流抑制装置を制御するための動作を開始する。判定部103は、前述のように、地絡電流値が第1の閾値を超えた場合に、監視対象の電力回路に地絡事故が発生したと判定する。
【0068】
制御部104は、動作を開始すると、ます、特定部102が特定した地絡電流制装置の接続後の地絡点電流の予測値である地絡点予測電流値を確認する(A101)。その結果、地絡電流抑制装置の接続により、地絡点電流が増大することが確認できた場合には、地絡電流抑制装置を制御せずに処理を終了する。
【0069】
一方、地絡電流抑制装置の接続による効果が認められる場合には、地絡電流抑制装置を対象の電力回路に接続するための制御信号を生成する(A102)。
【0070】
この後、対象の電力回路の分電盤分岐回路の漏電遮断器などの動作や配線回路の絶縁環境の回復などにより地絡電流が減少することがあるため、制御部104は、地絡点事故電流値を確認し(A103)、その値が所定値未満となった場合、地絡電流抑制装置と対象の電力回路との接続を開放するための制御信号を生成する(A104)。そして、特定部102が特定した地絡電流抑制装置の接続後の地絡点電流の予測値である予測電流値を確認する(A105)。
【0071】
そして、地絡電流抑制装置の接続による効果が認められる場合には、地絡電流抑制装置を対象の電力回路に接続するための制御信号を生成する(A102)。地絡電流抑制装置の接続による効果が認められない場合、つまり、地絡電流抑制装置の接続が不要であれば、制御部104は、動作を終了する。
【0072】
なお、A103からA105の処理に代えて、特定部102が特定した地絡電流抑制装置の開放時の地絡事故点電流値に基づいて、地絡電流抑制装置と対象の電力回路との接続を開放するための制御信号を生成するようにしてもよい。
【0073】
5.その他
本発明に係る監視装置の判定部により、地絡電流抑制装置を該電力回路に接続した際の効果を判定結果に基づいて、当該地絡電流抑制装置を制御することで、地震、洪水などの災害時に、損傷を受けた電力配線設備の地絡が原因とされる漏電火災や、歴史的建築物等の無人の建物の休館日や、夜間などにおける地絡が原因と想定される漏電火災等を防止することが可能となる。
【0074】
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記監視装置において、前記特定部は、監視状態において前記零相変流器が検出した零相電流値から前記電力回路に絶縁劣化が無いことが確認された状態における該電力回路の零相電流値を減じた値から前記電力回路の地絡事故点の地絡電流値を特定可能に構成される監視装置。
前記監視装置において、前記特定部は、前記電源側変圧器の相電圧値と、前記電源側変圧器の対地電圧と値、前記地絡電流値とに基づいて、前記電力回路の地絡事故点の対地絶縁抵抗値を特定可能に構成される監視装置。
前記監視装置において、前記特定部は、前記電源側変圧器の電源周波数と、前記電源側変圧器の相電圧値と、前記電源側変圧器の対地電圧値と、前記地絡電流値とに基づいて、前記電力回路の非対称対地静電容量の成分値を特定可能に構成される監視装置。
前記監視装置において、前記特定部は、前記電源側変圧器の相電圧値と、前記電源側変圧器の対地電圧値と、前記地絡事故点の対地絶縁抵抗値と、前記非対称対地静電容量の成分値とに基づいて、前記電力回路の不平衡対地静電容量値を特定可能に構成される監視装置。
前記監視装置において、判定部と、出力部とを備え、前記判定部は、前記地絡電流値が第1の閾値を超えた場合に、前記電力回路に地絡事故が発生したと判定し、前記出力部は、前記判定部の判定に応じて、前記電力回路に地絡事故が発生したことを示す情報を出力する監視装置。
前記監視装置において、前記判定部は、前記地絡電流値が第2の閾値を超えた場合に、前記電力回路の対地絶縁性能が劣化したと判定し、ここで、前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも小さい値であり、前記出力部は、前記判定部の判定に応じて、前記電力回路の対地絶縁性能が劣化したことを示す情報を出力する監視装置。
前記監視装置において、前記判定部は、前記電力回路の既知の回路定数と、前記特定部が特定した対地絶縁抵抗値と、前記特定部が特定した不平衡対地静電容量値と、前記電力回路に接続可能な地絡電流抑制装置の抵抗値とに基づいて、該地絡電流抑制装置を該電力回路に接続した際の効果を判定可能に構成され、ここで、前記地絡電流抑制装置は、所定値の直流抵抗を備え、地絡事故発生時に前記電力回路の接地線に接続されるものであり、前記出力部は、前記判定部による判定の結果を、地絡事故電流の抑制効果が大きいこと、地絡事故電流の抑制効果が小さいことと、地絡事故電流が増大することとのいずれかを示す情報を出力する監視装置。
前記監視装置において、制御部を備え、前記制御部は、前記判定部の判定よる判定の結果に応じて前記地絡電流抑制装置を制御する制御信号を生成し、前記出力部は、前記制御部が生成した制御信号を前記地絡電流抑制装置に出力する監視装置。
前記監視装置において、前記制御部は、前記地絡電流抑制装置が前記電力回路に接続された状態で、前記零相変流器が検出した電流値が所定の値よりも減少した場合に、前記地絡電流抑制装置と前記電力回路との接続を開放する制御信号を生成する監視装置。
コンピュータを監視装置として動作させるプログラムであって、コンピュータを前記監視装置として機能させるプログラム。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0075】
1 :監視装置
11 :処理部
12 :記憶部
13 :一時記憶部
14 :外部装置接続部
15 :通信部
16 :通信バス
101 :受付部
102 :特定部
103 :判定部
104 :制御部
105 :出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9