(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054115
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】搬器の昇降駆動システムとそれを備えたエレベータ式駐車設備
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
E04H6/18 601D
E04H6/18 606A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161123
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】信藤 経雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮佑
(57)【要約】
【課題】 高速で昇降する搬器の水平レベルを適切に保つことができる搬器の昇降駆動システムを提供する。
【解決手段】 四隅が吊下げられて昇降する搬器と、搬器の前部と後部に備えられた動滑車と、前部の動滑車に掛けられた前部索状体及び後部の動滑車に掛けられた後部索状体と、前部索状体を巻上げ/巻下げする前部昇降駆動装置及び後部索状体を巻上げ/巻下げする後部昇降駆動装置と、搬器の前部における昇降位置を検出する前部位置検出装置及び搬器の後部における昇降位置を検出する後部位置検出装置と、前部昇降駆動装置及び後部昇降駆動装置を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、前部位置検出装置と後部位置検出装置の検出情報から搬器が水平レベルを保つように前部昇降駆動装置と後部昇降駆動装置を駆動制御して搬器の水平レベルを補正するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四隅が吊下げられ、ガイドに沿って昇降する搬器と、
前記搬器の前部及び後部に備えられた動滑車と、
前部の前記動滑車に掛けられた前部索状体及び後部の前記動滑車に掛けられた後部索状体と、
前記前部索状体を巻上げ/巻下げする前部昇降駆動装置及び前記後部索状体を巻上げ/巻下げする後部昇降駆動装置と、
前記搬器の前部における昇降位置を検出する前部位置検出装置及び前記搬器の後部における前記昇降位置を検出する後部位置検出装置と、
前記前部昇降駆動装置及び前記後部昇降駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記前部位置検出装置と前記後部位置検出装置の検出情報から前記搬器が水平レベルを保つように前記前部昇降駆動装置と前記後部昇降駆動装置を駆動制御して前記搬器の前記水平レベルを補正するように構成されている、
ことを特徴とする搬器の昇降駆動システム。
【請求項2】
前記前部昇降駆動装置と前記後部昇降駆動装置との間には、それぞれの動力伝達軸を接続又は切断するクラッチを更に備えている、
請求項1に記載の搬器の昇降駆動システム。
【請求項3】
前記前部昇降駆動装置による前記前部索状体の巻上げ力を軽減する前部カウンタウェイトと、前記後部昇降駆動装置による前記後部索状体の巻上げ力を軽減する後部カウンタウェイトと、を備え、
前記前部カウンタウェイトと前記後部カウンタウェイトとは並設され、それぞれが独立して昇降するように構成されており、
並設された前記前部カウンタウェイトと前記後部カウンタウェイトは、これらのカウンタウェイト同士の隣接部分にガイド部を有するとともに、前記ガイド部と反対側にそれぞれの昇降をガイドするガイド部材を有している、
請求項1又は2に記載の搬器の昇降駆動システム。
【請求項4】
前記前部昇降駆動装置及び前記後部昇降駆動装置は、トラクションドライブを有する駆動装置で構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の搬器の昇降駆動システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の搬器の昇降駆動システムを備えている、
ことを特徴とするエレベータ式駐車設備。
【請求項6】
前記搬器は、搬器側コンベア移載装置を備え、
駐車棚は、棚側コンベア移載装置を備え、
前記搬器で搬送する車両を前記搬器側コンベア移載装置と前記棚側コンベア移載装置との間で移載するように構成されている、
請求項5に記載のエレベータ式駐車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ式駐車設備などに用いられる搬器の昇降駆動システムとそれを備えたエレベータ式駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータ式駐車設備などで用いられる搬器は、四隅が索状体(ワイヤロープなど)で吊り下げられた状態で昇降させられている。搬器は、負荷の偏重量や、搬器を昇降させる索状体が掛けられたシーブ径、索状体の直径などの偏差、索状体を巻取るドラムの巻取り量などの差から、前後の昇降量に差がでて傾きを生じる。そのため、搬器の傾きを補正する技術が提案されている。
【0003】
例えば、搬器のレベルを水平にするための先行技術として、搬器のフレームにフローティングフレームを設け、フローティングフレームの複数の支持点をフレームに対して上下動させることで水平を保つものがある(例えば、特許文献1参照)。この先行技術では、搬器に水平制御装置を備えさせ、フローティングフレームに固定された姿勢角センサの検出結果に基づいて、フローティングフレームを複数の支持点に設けたリフト装置で上下動させている。
【0004】
一方、近年、高層ビル等に並設されるエレベータ式駐車設備などは搬器の昇降速度が高速化している。高速で昇降する搬器は、その傾きを検知して水平レベルを保つようにすることが課題としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した先行技術では、搬器にフローティングフレームを設けるとともに、そのフローティングフレームを上下動させる複数のリフト装置、水平制御装置など、複数の装置を搬器に備えさせる必要がある。そのため、搬器の重量が増加し、高速で昇降する搬器に適用することは難しい。特に、搬器の昇降ストロークが長くなることで傾きも大きくなり、水平レベルの狂いを抑えることが困難な場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、高速で昇降する搬器の水平レベルを適切に保つことができる搬器の昇降駆動システムとそれを備えたエレベータ式駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る搬器の昇降駆動システムは、四隅が吊下げられ、ガイドに沿って昇降する搬器と、前記搬器の前部及び後部に備えられた動滑車と、前部の前記動滑車に掛けられた前部索状体及び後部の前記動滑車に掛けられた後部索状体と、前記前部索状体を巻上げ/巻下げする前部昇降駆動装置及び前記後部索状体を巻上げ/巻下げする後部昇降駆動装置と、前記搬器の前部における昇降位置を検出する前部位置検出装置及び前記搬器の後部における前記昇降位置を検出する後部位置検出装置と、前記前部昇降駆動装置及び前記後部昇降駆動装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記前部位置検出装置と前記後部位置検出装置の検出情報から前記搬器が水平レベルを保つように前記前部昇降駆動装置と前記後部昇降駆動装置を駆動制御して前記搬器の前記水平レベルを補正するように構成されている。
【0009】
この構成により、四隅が吊下げられてガイドに沿って昇降する搬器は、前部と後部に設けられた動滑車にそれぞれ掛けられた索状体が別々の駆動装置によって巻上げ/巻下げられる。搬器を前後に設けた動滑車で昇降させることで、搬器の左右位置における水平レベルの狂いが昇降ストロークに依存しないようにできる。そして、搬器の昇降中に前部位置検出装置と後部位置検出装置とで検出している位置情報からレベル差を検出し、前部昇降駆動装置と後部昇降駆動装置を駆動制御することで搬器の水平レベルを保つように補正できる。この制御は、フィードバック制御によってできる。よって、高速で昇降する搬器であっても、水平レベルを適切に保つように昇降させることができる。
【0010】
また、前記前部昇降駆動装置と前記後部昇降駆動装置との間には、それぞれの動力伝達軸を接続又は切断するクラッチを更に備えていてもよい。
【0011】
このように構成すれば、搬器が高速域で昇降している時はクラッチを接続して前部昇降駆動装置と後部昇降駆動装置の動力伝達軸を連結して高精度で駆動し、減速開始後の低速域に到達した後はクラッチを切断して前部昇降駆動装置と後部昇降駆動装置を別々に駆動するようにできる。これにより、制御装置を高速域での高精度な制御が不要な構成として安価に製造することができる。
【0012】
また、前記前部昇降駆動装置による前記前部索状体の巻上げ力を軽減する前部カウンタウェイトと、前記後部昇降駆動装置による前記後部索状体の巻上げ力を軽減する後部カウンタウェイトと、を備え、前記前部カウンタウェイトと前記後部カウンタウェイトとは並設され、それぞれが独立して昇降するように構成されており、並設された前記前部カウンタウェイトと前記後部カウンタウェイトは、これらのカウンタウェイト同士の隣接部分にガイド部を有するとともに、前記ガイド部と反対側にそれぞれの昇降をガイドするガイド部材を有していてもよい。
【0013】
このように構成すれば、前部昇降駆動装置の巻上げ力を軽減する前部カウンタウェイトと後部昇降駆動装置の巻上げ力を軽減する後部カウンタウェイトとをコンパクトに配置し、それぞれのカウンタウェイトにおける昇降量の差はガイド部の昇降量差で吸収することができる。
【0014】
また、前記前部昇降駆動装置及び前記後部昇降駆動装置は、トラクションドライブを有する駆動装置で構成されていてもよい。
【0015】
このように構成すれば、搬器を昇降させる時の駆動装置における騒音の低減と、搬器の昇降速度の高速化を実現することができる。
【0016】
一方、本発明に係るエレベータ式駐車設備は、前記したいずれかの搬器の昇降駆動システムを備えている。
【0017】
この構成によれば、高層化されたエレベータ式駐車設備において高速で昇降する搬器を適切に制御し、搬器の水平レベルを保つように昇降制御することができる。
【0018】
また、前記搬器は、搬器側コンベア移載装置を備え、駐車棚は、棚側コンベア移載装置を備え、前記搬器で搬送する車両を前記搬器側コンベア移載装置と前記棚側コンベア移載装置との間で移載するように構成されていてもよい。
【0019】
このように構成すれば、搬器と駐車棚との間で車両を移載する構成の上下方向寸法を低く形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高速で昇降する搬器の水平レベルを適切に保つことができる搬器の昇降駆動システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る搬器の昇降駆動システムを備えたエレベータ式駐車設備を示す正面視の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すエレベータ式駐車設備の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す前部昇降駆動装置を拡大した正面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す前部昇降駆動装置のトラクションドライブの部分を示す拡大正面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すクラッチの部分を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す搬器と棚側コンベア移載装置の一部を示す拡大正面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すカウンタウェイトが配置された部分を含む拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、搬器20の昇降駆動システム60を備えさせた上部駆動方式のエレベータ式駐車設備1を例に説明する。この実施形態では、階層の少ない図で説明するが、例えば、高さ100m以上の高層のエレベータ式駐車設備1においても利用できる。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、
図2に示す前後左右方向の概念と一致するものとする。
【0023】
(エレベータ式駐車設備)
図1は、一実施形態に係る搬器20の昇降駆動システム60を備えさせたエレベータ式駐車設備1を示す正面視の断面図である。
図2は、
図1に示すエレベータ式駐車設備1の概略構成を示す斜視図である。これらの図では概略を示し、
図2では搬器20とその昇降駆動システム60、駐車棚7を示している。
【0024】
図1に示すように、エレベータ式駐車設備1は鉄骨構造体で形成された駐車塔2を有している。駐車塔2は、外形を形成するように鉛直方向に設けられた主柱5と、主柱5の間を連結するように水平方向に設けられた上部梁3及びその他の水平梁4(
図7)によって枠状に形成されている。駐車塔2には、エレベータ式駐車設備1の制御装置9が設けられている。図示する制御装置9は一例である。
【0025】
駐車塔2の幅方向中央部には、搬器20を昇降させる昇降路10が設けられ、昇降路10の左方と右方に複数段の駐車棚7が設けられている。駐車棚7には、棚側コンベア移載装置11が設けられている。図では、棚側コンベア移載装置11のみを示している。搬器20には、車両Vを各棚側コンベア移載装置11との間で移載する搬器側コンベア移載装置45が設けられている。棚側コンベア移載装置11には、左右方向に移動するコンベア部12が設けられている。搬器側コンベア移載装置45には、左右方向に移動するコンベア部44が設けられている。
【0026】
搬器側コンベア移載装置45のコンベア部44と棚側コンベア移載装置11のコンベア部12とにより、車両Vのタイヤを左右方向に送ることで、搬器20と各駐車棚7との間で車両Vを移載することができる。搬器側コンベア移載装置45及び棚側コンベア移載装置11は、公知のコンベア式移載装置を利用できる。搬器側コンベア移載装置45と棚側コンベア移載装置11とによって車両Vを移載するため、駐車棚7の上下方向寸法を低く設定することができる。また、駆動部を減らして、保守を容易に行えるようにできる。
【0027】
図2にも示すように、エレベータ式駐車設備1は、搬器20を昇降させる昇降駆動システム60を備えている。昇降駆動システム60は、搬器20を、駐車塔2の上部梁3に設けられた昇降駆動装置25,26によって昇降路10で昇降させる。搬器20には、前部と後部の下部に動滑車21,22がそれぞれ設けられ、これらの動滑車21,22に掛けられたそれぞれの索状体23,24(「索状体」は、「ワイヤロープ」等をいう)によって昇降させられる。すなわち、搬器20は、前部と後部が別々の前部昇降駆動装置25と後部昇降駆動装置26とによって昇降駆動させられる前部索状体23と後部索状体24とによって昇降させられる。
【0028】
前部昇降駆動装置25と後部昇降駆動装置26は、トラクションドライブ27,28を備えている。それぞれの昇降駆動装置25,26に備えられたトラクションドライブ27,28のトラクションシーブ29,30に掛けられた索状体23,24は、一端側がトラクションシーブ29,30から下方に延び、他方がトラクションシーブ29,30からカウンタウェイト35,36の方向に延びている。下方に延びた索状体23,24は、搬器20の動滑車21,22に掛けられた後、上方へ延びて駐車塔2の固定部8にそれぞれ固定されている。また、カウンタウェイト35,36の方向へ延びた索状体23,24の他端側は、前方の索状体23は、2つの転向ローラ43に掛けられて下方へ曲げられた後、カウンタウェイト35の動滑車37に掛けられ、端部は駐車塔2の固定部8に固定されている。後方の索状体24は、下向きに延びてカウンタウェイト36の動滑車38に掛けられ、端部は駐車塔2の固定部8に固定されている。カウンタウェイト35,36は、駐車塔2の後部に並設されている。カウンタウェイト35,36は、搬器20の巻上げに要する昇降駆動装置25,26の力を軽減する。
【0029】
従って、前部と後部の昇降駆動装置25,26を駆動し、それぞれのトラクションシーブ29,30で索状体23,24を巻上げ・巻下げ駆動することで、搬器20は前部と後部の動滑車21,22に掛けられた索状体23,24によって動滑車方式で昇降させられる。搬器20の昇降時には、搬器20の昇降方向と逆方向にカウンタウェイト35,36が昇降する。
【0030】
(昇降駆動装置)
図3は、
図1に示す前部昇降駆動装置25を拡大した正面図である。
図4は、
図3に示す前部昇降駆動装置25のトラクションドライブ27の部分を示す拡大正面図である。
図3,4に基づいて、搬器20の前部を昇降させる前部昇降駆動装置25を例に説明する。後部昇降駆動装置26の構成は同様であるため、説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、前部昇降駆動装置25は、トラクションドライブ27を備えている。トラクションドライブ27には、トラクションシーブ29が設けられ、このトラクションシーブ29は、出力軸39と一体的に回転するように取り付けられている。また、トラクションシーブ29と対向するように所定距離離れた位置に反らせプーリ40が設けられている。反らせプーリ40は、トラクションシーブ29の径に比べて小径で形成されている。また、反らせプーリ40は、出力軸39から反らせプーリ40の方向に延びるように設けられた支持部材41の先端部に回転自在に軸支されている。
【0032】
図4に示すように、上記昇降駆動装置25(26)によれば、搬器20を吊下げる索状体23(24)は、トラクションシーブ29(30)に巻き掛けられた後、反らせプーリ40(41)に掛けられ、その後、トラクションシーブ29(30)に再び巻き掛けられた後、搬器20と転向プーリ43又は動滑車38へと延びている。実線で示す矢印は搬器20の上昇時における索状体23(24)の移動方向を示し、一点鎖線で示す矢印は搬器20の下降時における索状体23(24)の移動方向を示している、なお、索状体23(24)の本数は、搬器20で昇降させる車両Vを含む重量、昇降速度などに応じて設定すればよい。トラクションドライブ27(28)を備えた昇降駆動装置25(26)は、公知技術を利用することができる。
【0033】
(クラッチ)
図5は、
図2に示すクラッチの部分を示す平面図である。図示するように、前部昇降駆動装置25と後部昇降駆動装置26との間には、それぞれの動力伝達軸(図示略)を接続又は切断するクラッチ46が備えられている。
【0034】
前部昇降駆動装置25の動力伝達軸から延びる接続軸47と後部昇降駆動装置26の動力伝達軸から延びる接続軸48とは、クラッチ46で接続又は切断できるようになっている。このように構成することで、搬器20が高速域で昇降している時はクラッチ46を接続して前部昇降駆動装置25と後部昇降駆動装置26を同期させて高精度で駆動し、減速開始後の低速域に到達した後はクラッチ46を切断して前部昇降駆動装置25と後部昇降駆動装置26を別々に駆動するように制御できる。高速域でクラッチ46を接続することで、高速運転時のレベル制御を不要にできる。低速域でクラッチ46を切断することで、前部昇降駆動装置25と後部昇降駆動装置26とを別々に駆動して搬器20の前部と後部のレベル補正を適切に行うことができる。
【0035】
このような制御は、この実施形態では、エレベータ式駐車設備1に備えられた制御装置9によって行われている。このように制御することで、制御装置9は高速域での高精度な制御が不要な構成とできるため、制御部を安価な構成にできる。制御装置9には、前部昇降駆動装置25、後部昇降駆動装置26及びクラッチ46を制御する制御部が備えられている。制御部は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。制御部による搬器20の昇降速度、昇降位置などの情報に基づく前部昇降駆動装置25、後部昇降駆動装置26及びクラッチ46の駆動制御は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。
【0036】
(コンベア移載装置)
図6は、
図1に示す搬器20と棚側コンベア移載装置11の一部を示す拡大正面図である。
図7は、
図1に示すカウンタウェイトが配置された部分を含む拡大平面図である。
【0037】
図示するように、搬器20には、駐車塔2の鉛直方向に設けられたガイド柱6が設けられた方向(図の右方向)の枠体31の上下位置に、ガイド柱6に沿って昇降するガイドローラ32が設けられている。ガイドローラ32は、ガイド柱6を挟むように設けられている。ガイドローラ32は、搬器20の搬器側コンベア移載装置45よりも上方の位置と、動滑車21,22よりも下方の位置とに設けられている。これにより、搬器20をガイド柱6に安定して支持している。
【0038】
搬器20には、前部と後部に位置検出装置が設けられている。搬器20の枠体31の前部には、ガイド柱6に向けて前部位置検出装置たる前部回転エンコーダ33が設けられている。枠体31の後部には、ガイド柱6に向けて後部位置検出装置たる後部回転エンコーダ34が設けられている。回転エンコーダ33,34は、枠体31からガイド柱6に向けて押し付けられている(
図7では、ガイドローラ32の下方で回転エンコーダ33,34がガイド柱6に押し付けられている)。回転エンコーダ33,34の回転角パルスから、搬器20の昇降位置を検出することができる。搬器20の前部と後部にそれぞれ設けられた回転エンコーダ33,34により、搬器20の前部と後部の昇降位置をそれぞれ検出することができる。そして、それぞれの回転エンコーダ33,34の検出情報から、搬器20の昇降中におけるレベル差(昇降位置差)を検出することができる。
【0039】
制御装置9は、このレベル差に基づいて、搬器20の昇降時、停止前の低速時、停止させる時(昇降路10の乗入れ階などでの停止する時)などに、前部昇降駆動装置25と後部昇降駆動装置26とを駆動制御することで、搬器20が水平レベルを保つように適切に補正される。例えば、搬器20の前部が下方に傾いていれば、後部昇降駆動装置26による後部索状体24の巻上げ量に対して、前部昇降駆動装置25による前部索状体23の巻上げ量を多くして、搬器20の水平レベルが補正される。
【0040】
また、
図7に示すように、駐車塔2の後部に並設された前部カウンタウェイト35と後部カウンタウェイト36は、それぞれが独立して昇降するようになっている。前部カウンタウェイト35と後部カウンタウェイト36との隣接部分には、上下方向に延びる凹凸状のガイド部50が設けられている。この実施形態のガイド部50は、前部カウンタウェイト35の側面に設けられた凹状ガイド51と、後部カウンタウェイト36の側面に設けられた凸状ガイド52とを有している。ガイド部50は、凸状ガイド52が凹状ガイド51に挿入された状態となっている。
【0041】
さらに、前部カウンタウェイト35と後部カウンタウェイト36との間のガイド部50と反対側(左右方向)の面の上下方向には、それぞれのカウンタウェイト35,36の昇降をガイドするガイド部材53が設けられている。ガイド部材53は、前部カウンタウェイト35及び後部カウンタウェイト36の側面に設けられた凹状ガイド54と、駐車塔2側から突出する凸状の案内板55とを有している。案内板55が、凹状ガイド54に挿入されており、前部カウンタウェイト35及び後部カウンタウェイト36が案内板55に沿って昇降するようになっている。
【0042】
(搬器の昇降動作と水平レベルの補正)
上記した図と説明に基づいて、搬器20の昇降動作と、搬器20の水平レベルの補正について説明する。搬器20は、前部動滑車21に掛けられた前部索状体23を昇降駆動する前部昇降駆動装置25と、後部動滑車22に掛けられた後部索状体24を昇降駆動する後部昇降駆動装置26とによって昇降させられる。このように、前部索状体23は前部トラクションドライブ27を備えた前部昇降駆動装置25によって昇降駆動され、後部索状体24は後部トラクションドライブ28を備えた後部昇降駆動装置26によって昇降駆動される。よって、搬器20を高速で昇降させることができ、昇降時の騒音低減を図ることができる。
【0043】
また、搬器20の前部の昇降位置を前部回転エンコーダ(位置検出装置)33によって計測するとともに、搬器20の後部の昇降位置を後部回転エンコーダ(位置検出装置)34によって検出している。これにより、それぞれの回転エンコーダ33,34の検出情報に基づいて、搬器20の昇降時、停止前の低速時、停止させる時などに水平レベルを適切に調整することが容易にできる。
【0044】
さらに、搬器20と駐車棚7との間での車両Vの移載を、搬器側コンベア移載装置45と棚側コンベア移載装置11とによって行うため、車両Vの移載の円滑性を向上させることができる。
【0045】
また、搬器20を高速で昇降させる区間では、クラッチ46を接続して前部昇降駆動装置25と後部昇降駆動装置26の動力伝達軸を連結した状態で駆動すれば、高速域における複雑な昇降位置制御を行う必要がないようにできる。そして、低速域でクラッチ46を切断することで、前部回転エンコーダ33と後部回転エンコーダ34が検出している値の差分から、搬器20の水平レベルを適切に補正することができる。
【0046】
なお、搬器20の水平レベルを調整する制御は、乗入れ階においてリセットして新たな制御を開始するようにしてもよい。また、搬器20を所定の駐車棚7で停止させたときに、公知のロッキング装置を用いて駐車棚7に固定するようにしてもよい。
【0047】
(その他の変形例)
搬器20の前部と後部を昇降させる昇降駆動装置25,26は、エレベータ式駐車設備1の構成に限定されない。荷物用エレベータの搬器を昇降させる昇降駆動装置として利用することもでき、昇降駆動装置25,26は上記した実施形態のような利用に限定されるものではない。
【0048】
また、エレベータ式駐車設備1は、上記した実施形態に限定されない。例えば、下部乗入れ式、中間乗入れ式などで適用でき、エレベータ式駐車設備1の形式は限定されるものではない。
【0049】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0050】
(総括)
以上のように、上記した搬器20の昇降駆動装置25,26によれば、搬器20の前部と後部を別々の昇降駆動装置25,26で昇降させるとともに、搬器20の前部と後部の昇降位置を別々の回転エンコーダ(位置検出装置)33,34で検出し、そのレベル差から水平レベルを保つように制御することが可能となる。これにより、高速で昇降させる搬器20であっても、停止時に水平レベルを適切に保つことが容易に可能となる。
【0051】
よって、この昇降駆動装置25,26を備えたエレベータ式駐車設備1によれば、搬器20の昇降速度が高速化(例えば、昇降速度が100~200m/min)しても、搬器20の水平レベルを保った安定した運用が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 エレベータ式駐車設備
2 駐車塔
6 ガイド柱
7 駐車棚
9 制御装置
10 昇降路
11 棚側コンベア移載装置
20 搬器
21 前部動滑車
22 後部動滑車
23 前部索状体
24 後部索状体
25 前部昇降駆動装置
26 後部昇降駆動装置
29 トラクションシーブ
30 トラクションシーブ
33 前部回転エンコーダ(位置検出装置)
34 後部回転エンコーダ(位置検出装置)
35 前部カウンタウェイト
36 後部カウンタウェイト
37 動滑車
38 動滑車
45 搬器側コンベア移載装置
46 クラッチ
50 ガイド部
53 ガイド部材
60 昇降駆動システム
V 車両