(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054120
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】車両用電動駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 17/356 20060101AFI20220330BHJP
F16H 3/089 20060101ALI20220330BHJP
F16H 57/023 20120101ALI20220330BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20220330BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20220330BHJP
B60K 17/14 20060101ALI20220330BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B60K17/356 B
F16H3/089
F16H57/023
B60K17/06 Z
B60K1/00
B60K17/14
B60T13/74 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161134
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉見 拓也
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三宅 洋好
【テーマコード(参考)】
3D039
3D042
3D043
3D048
3D235
3J063
3J528
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AB01
3D039AC37
3D039AC64
3D039AC86
3D042AA06
3D042AB01
3D042BE01
3D043AA06
3D043EA05
3D043EA32
3D043EA42
3D043EA44
3D048BB59
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH58
3D048KK13
3D048QQ11
3D235AA01
3D235BB18
3D235CC12
3D235DD11
3D235FF32
3D235FF35
3J063AA04
3J063AB02
3J063AC03
3J063BA03
3J063BB41
3J063CA01
3J063CB13
3J063CD13
3J063CD14
3J063CD17
3J063CD42
3J528EA25
3J528EB63
3J528EB74
3J528FC32
3J528FC42
3J528GA08
3J528HA23
3J528JE02
3J528JJ02
(57)【要約】
【課題】軸方向の寸法を小さく抑えることができる車両用電動駆動装置を提供する。
【解決手段】回転電機MGの側から伝達される回転を変速する変速機1は、上下方向Vに沿う上下方向視で一対の車軸DSに対して直交する方向に沿って配置された第1変速軸TS1と、当該第1変速軸TS1と同軸に配置された第1変速ギヤTG1と、を備え、ブレーキ機構3は、第1変速軸TS1と一体的に回転するように連結された回転部材31と、当該回転部材31の回転を規制する規制部材32と、当該規制部材32を駆動する駆動ユニット33と、を備え、第1変速軸TS1は、差動歯車機構2に対して軸方向第1側L1に配置され、回転部材31は、第1変速ギヤTG1に対して軸方向第1側L1に配置され、駆動ユニット33は、回転部材31に対して軸方向第2側L2に突出すると共に、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で、変速機1と重複するように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記回転電機の側から伝達される回転を変速する変速機と、
前記変速機から伝達される回転を、一対の前記車輪にそれぞれ駆動連結された一対の車軸に分配する差動歯車機構と、
前記差動歯車機構と一対の前記車軸の少なくとも一部とを収容すると共に、前記回転電機と前記変速機とを支持するアクスルケースと、
一対の前記車軸の回転を選択的に規制するブレーキ機構と、を備え、
前記変速機は、上下方向に沿う上下方向視で一対の前記車軸に対して直交する方向に沿って配置された第1変速軸と、前記第1変速軸と同軸に配置された第1変速ギヤと、を備え、
前記ブレーキ機構は、前記第1変速軸と一体的に回転するように連結された回転部材と、前記回転部材の回転を規制する規制部材と、前記規制部材を駆動する駆動ユニットと、を備え、
前記第1変速軸の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記第1変速軸は、前記差動歯車機構に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記回転部材は、前記第1変速ギヤに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記駆動ユニットは、前記回転部材に対して前記軸方向第2側に突出すると共に、前記第1変速軸の径方向に沿う径方向視で、前記変速機と重複するように配置されている、車両用電動駆動装置。
【請求項2】
前記アクスルケースに固定され、前記変速機を収容する変速機ケースを更に備え、
前記変速機ケースは、前記径方向に沿って延在する側壁部を備え、
前記第1変速軸は、当該第1変速軸の一部である突出部が前記側壁部から前記軸方向第1側に突出するように、前記側壁部を前記軸方向に貫通すると共に、第1軸受を介して前記側壁部に対して回転可能に支持され、
前記回転部材は、前記第1変速軸と一体的に回転するように、前記突出部に係合し、
前記駆動ユニットは、前記径方向視で前記第1軸受と重複するように配置されている、請求項1に記載の車両用電動駆動装置。
【請求項3】
前記変速機は、前記第1変速ギヤに噛み合う第2変速ギヤと、前記第2変速ギヤと同軸に配置された第2変速軸と、を備え、
前記第2変速軸は、前記第2変速ギヤに対して前記軸方向第1側に配置された第2軸受を介して、前記変速機ケースに対して回転可能に支持され、
前記駆動ユニットは、前記径方向視で前記第2軸受と重複するように配置されている、請求項2に記載の車両用電動駆動装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記軸方向に沿う軸心を有する筒状に形成された筒状部を備え、
前記規制部材は、前記筒状部に対して前記径方向視で重複するように配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用電動駆動装置。
【請求項5】
一対の前記車軸が延在する方向を幅方向として、
前記駆動ユニットは、前記回転部材の周方向の一部の領域において、前記回転部材に対して前記径方向の外側であって前記幅方向の一方側に突出するように配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用電動駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の車輪の駆動力源として機能する回転電機と、当該回転電機の側から伝達される回転を変速する変速機と、当該変速機から伝達される回転を一対の車軸に分配する差動歯車機構と、アクスルケースと、一対の車軸の回転を選択的に規制するブレーキ機構と、を備えた車両用電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用電動駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用電動駆動装置では、一対の車軸(2)に直交する方向において、変速機(7)と回転電機(8)とが、差動歯車機構(1)を挟んで互いに反対側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3501867号明細書(
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特許文献1の車両用電動駆動装置では、変速機(7)の出力軸(6)が、一対の車軸(2)に直交するように配置されている。そして、出力軸(6)の回転軸に沿う方向を軸方向として、変速機(7)に対して軸方向に隣接するように、ブレーキ機構(13,14)が配置されている。そのため、特許文献1の車両用電動駆動装置は、軸方向に大型化し易いという課題があった。
【0006】
そこで、軸方向の寸法を小さく抑えることができる車両用電動駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、車両用電動駆動装置の特徴構成は、
一対の車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記回転電機の側から伝達される回転を変速する変速機と、
前記変速機から伝達される回転を、一対の前記車輪にそれぞれ駆動連結された一対の車軸に分配する差動歯車機構と、
前記差動歯車機構と一対の前記車軸の少なくとも一部とを収容すると共に、前記回転電機と前記変速機とを支持するアクスルケースと、
一対の前記車軸の回転を選択的に規制するブレーキ機構と、を備え、
前記変速機は、上下方向に沿う上下方向視で一対の前記車軸に対して直交する方向に沿って配置された第1変速軸と、前記第1変速軸と同軸に配置された第1変速ギヤと、を備え、
前記ブレーキ機構は、前記第1変速軸と一体的に回転するように連結された回転部材と、前記回転部材の回転を規制する規制部材と、前記規制部材を駆動する駆動ユニットと、を備え、
前記第1変速軸の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記第1変速軸は、前記差動歯車機構に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記回転部材は、前記第1変速ギヤに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記駆動ユニットは、前記回転部材に対して前記軸方向第2側に突出すると共に、前記第1変速軸の径方向に沿う径方向視で、前記変速機と重複するように配置されている点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、第1変速軸の径方向に沿う径方向視で変速機と重複するスペースを利用して、ブレーキ機構の回転部材に対して軸方向第2側に突出する駆動ユニットを配置することができる。これにより、駆動ユニットが径方向視で変速機と重複しない構成と比べて、車両用電動駆動装置の軸方向の寸法を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る車両用電動駆動装置の軸方向に沿う断面図
【
図2】実施形態に係る車両用電動駆動装置のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、実施形態に係る車両用電動駆動装置100について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、車両用電動駆動装置100は、一対の車輪Wの駆動力源として機能する回転電機MGと、当該回転電機MGの側から伝達される回転を変速する変速機1と、当該変速機1から伝達される回転を、一対の車輪Wにそれぞれ駆動連結された一対の車軸DSに分配する差動歯車機構2と、を備えている。
【0011】
回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、回転電機MGは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機MGは、一対の車軸DSの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0012】
本実施形態では、変速機1は、変速入力軸11と、低速入力ギヤ12Lと、高速入力ギヤ12Hと、変速出力軸13と、低速出力ギヤ14Lと、高速出力ギヤ14Hと、変速出力ギヤ15と、係合装置CLと、を備えている。
【0013】
変速入力軸11は、変速機1の入力要素である。本実施形態では、変速入力軸11は、上下方向Vに沿う上下方向視で、一対の車軸DSに対して直交する方向に沿って配置されている。つまり、本実施形態では、変速入力軸11は、上下方向Vに沿う上下方向視で、一対の車軸DSに対して直交状に配置されている。ここで、「上下方向V」は、車載状態における車両用電動駆動装置100の上下方向である。また、「直交状」とは、直交する状態、又は誤差の範囲(例えば5°以下)で実質的に直交とみなせる状態を意味する。
【0014】
低速入力ギヤ12Lは、高速入力ギヤ12Hよりも小径に形成されている。低速入力ギヤ12L及び高速入力ギヤ12Hは、変速入力軸11と同軸に配置されている。本実施形態では、低速入力ギヤ12L及び高速入力ギヤ12Hは、変速入力軸11と一体的に回転するように連結されている。
図1に示す例では、低速入力ギヤ12L及び高速入力ギヤ12Hは、変速入力軸11と一体的に形成されている。
【0015】
変速出力軸13は、上下方向Vに沿う上下方向視で、一対の車軸DSに対して直交する方向に沿って配置されている。本実施形態では、変速出力軸13は、変速入力軸11と平行に配置されている。
【0016】
低速出力ギヤ14Lは、高速出力ギヤ14Hよりも大径に形成されている。低速出力ギヤ14Lは、低速入力ギヤ12Lに噛み合っている。高速出力ギヤ14Hは、高速入力ギヤ12Hに噛み合っている。低速出力ギヤ14L及び高速出力ギヤ14Hは、変速出力軸13と同軸に配置されている。このように、低速入力ギヤ12Lに対する低速出力ギヤ14Lの歯数比は、高速入力ギヤ12Hに対する高速出力ギヤ14Hの歯数比よりも大きい。
【0017】
本実施形態では、低速出力ギヤ14L及び高速出力ギヤ14Hは、変速出力軸13に対して相対的に回転可能に支持されている。
【0018】
本実施形態では、変速出力軸13が、上下方向Vに沿う上下方向視で一対の車軸DSに対して直交する方向に沿って配置された「第1変速軸TS1」に相当する。そして、低速出力ギヤ14L及び高速出力ギヤ14Hのそれぞれが、第1変速軸TS1と同軸に配置された「第1変速ギヤTG1」に相当する。また、本実施形態では、低速入力ギヤ12L及び高速入力ギヤ12Hのそれぞれが、第1変速ギヤTG1に噛み合う「第2変速ギヤTG2」に相当する。そして、変速入力軸11が、第2変速ギヤTG2と同軸に配置された「第2変速軸TS2」に相当する。
【0019】
係合装置CLは、低速出力ギヤ14L及び高速出力ギヤ14Hのいずれかを、変速出力軸13に選択的に連結する装置である。上述したように、本実施形態では、低速入力ギヤ12Lに対する低速出力ギヤ14Lの歯数比は、高速入力ギヤ12Hに対する高速出力ギヤ14Hの歯数比よりも大きい。そのため、係合装置CLが低速出力ギヤ14Lを変速出力軸13に連結させた場合には、比較的変速比が大きい変速段である低速段が形成される。一方、係合装置CLが高速出力ギヤ14Hを変速出力軸13に連結させた場合には、比較的変速比が小さい変速段である高速段が形成される。また、本実施形態では、係合装置CLは、いずれの変速段も形成しないニュートラル状態に切り替え可能に構成されている。係合装置CLがニュートラル状態の場合、変速機1が回転電機MGの側から伝達された回転を差動歯車機構2に伝達しない状態、つまり、回転電機MGの駆動力が一対の車輪Wに伝達されない状態となる。
【0020】
以下の説明では、第1変速軸TS1(ここでは、変速出力軸13)の回転軸心に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。
【0021】
変速出力ギヤ15は、変速機1の出力要素である。変速出力ギヤ15は、変速出力軸13と一体的に回転するように連結されている。
図1に示す例では、変速出力ギヤ15は、変速出力軸13と一体的に形成されている。本実施形態では、変速出力ギヤ15は、変速出力軸13の軸方向第2側L2の端部に配置されている。そして、変速出力ギヤ15は、変速出力軸13と同軸に配置されている。また、本実施形態では、変速出力ギヤ15は傘歯車である。
【0022】
本実施形態では、回転電機MGは、その回転軸心としての第1軸X1上に配置されている。また、変速入力軸11、低速入力ギヤ12L、及び高速入力ギヤ12Hは、それらの回転軸心としての第2軸X2上に配置されている。そして、変速出力軸13、低速出力ギヤ14L、高速出力ギヤ14H、及び変速出力ギヤ15は、それらの回転軸心としての第3軸X3上に配置されている。
【0023】
本例では、上記の軸X1~X3は、互いに平行に配置されている。そのため、本例では、上記の軸X1~X3は、軸方向Lに沿って配置されている。以下の説明では、上記の軸X1~X3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合や、どの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0024】
差動歯車機構2は、変速機1に対して軸方向第2側L2に配置されている。そのため、変速機1の第1変速軸TS1(ここでは、変速出力軸13)は、差動歯車機構2に対して軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、差動歯車機構2は、回転電機MGに対して軸方向第1側L1に配置されている。つまり、本実施形態では、変速機1と回転電機MGとが、差動歯車機構2を挟んで互いに軸方向Lの反対側に配置されている。
【0025】
本実施形態では、差動歯車機構2は、変速機1の変速出力ギヤ15に噛み合う差動入力ギヤ21と、当該差動入力ギヤ21と一体的に回転するように連結された差動ケース22と、を備えている。
【0026】
差動入力ギヤ21は、差動歯車機構2の入力要素である。差動入力ギヤ21は、差動ケース22から径方向Rの外側に突出するように形成されている。差動入力ギヤ21は、一対の車軸DSと同軸に配置されている。本実施形態では、差動入力ギヤ21は傘歯車である。
【0027】
差動ケース22は、中空の部材である。差動ケース22の内部には、差動入力ギヤ21の回転を一対の車軸DSに分配するギヤ群が収容されている。
【0028】
本実施形態では、回転電機MGは、ステータStと、当該ステータStに対して回転自在に支持されたロータRoと、当該ロータRoと一体的に回転するように連結されたロータ軸RSと、を備えている。本実施形態では、本実施形態では、ロータRoは、ステータStに対して径方向Rの内側に配置されている。そして、ロータRoは、ロータ軸RSを径方向Rの外側から支持している。本実施形態では、ロータ軸RSは、軸方向Lに沿って延在する円筒状に形成されている。
【0029】
本実施形態では、回転電機MGのロータ軸RSの回転は、第1軸部材S1、第1ギヤG1、第2ギヤG2、第2軸部材S2、及び連結軸CSを介して、変速機1に伝達される。第1軸部材S1及び第1ギヤG1は、第1軸X1上に配置されている。第2ギヤG2、第2軸部材S2、及び連結軸CSは、第2軸X2上に配置されている。
【0030】
第1軸部材S1は、ロータ軸RSと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1軸部材S1は、ロータ軸RSに対して軸方向第1側L1に延在するように形成されている。そして、第1軸部材S1は、ロータ軸RSに対して径方向Rの内側に配置された状態で、例えばスプライン係合等によってロータ軸RSと一体的に回転するように連結されている。
【0031】
第1ギヤG1は、第1軸部材S1と一体的に回転するように連結されている。
図1に示す例では、第1ギヤG1は、第1軸部材S1と一体的に形成されている。
【0032】
第2ギヤG2は、第1ギヤG1に噛み合っている。第2ギヤG2は、第2軸部材S2と一体的に回転するように連結されている。
図1に示す例では、第2ギヤG2は、第2軸部材S2と一体的に形成されている。
【0033】
連結軸CSは、第2軸部材S2と変速機1の変速入力軸11とを連結するように形成されている。連結軸CSは、第2軸部材S2及び変速入力軸11と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、連結軸CSの軸方向第2側L2の端部は、第2軸部材S2の軸方向第1側L1の端部を径方向Rの外側から覆う筒状に形成されており、それらが例えばスプライン係合等によって一体的に回転するように互いに連結されている。また、連結軸CSの軸方向第1側L1の端部は、変速入力軸11の軸方向第2側L2の端部と連結されている。
図1に示す例では、連結軸CSと変速入力軸11とが一体的に形成されている。
【0034】
図1に示すように、車両用電動駆動装置100は、アクスルケース7を備えている。本実施形態では、車両用電動駆動装置100は、回転電機ケース8と、変速機ケース9と、を更に備えている。
【0035】
アクスルケース7は、差動歯車機構2と一対の車軸DSの少なくとも一部とを収容している。本実施形態では、連結軸CSが、アクスルケース7と回転電機ケース8と変速機ケース9とに亘って配置されている。つまり、本実施形態では、アクスルケース7は、連結軸CSの軸方向Lの中央部分も収容している。また、アクスルケース7は、回転電機MGと変速機1とを支持している。本実施形態では、アクスルケース7は、回転電機ケース8を介して回転電機MGを支持している。そして、アクスルケース7は、変速機ケース9を介して変速機1を支持している。
【0036】
回転電機ケース8は、回転電機MGを収容している。本実施形態では、回転電機ケース8は、連結軸CSの軸方向第2側L2の部分、第1軸部材S1、第2軸部材S2、第1ギヤG1、及び第2ギヤG2も収容している。また、回転電機ケース8は、アクスルケース7に固定されている。本実施形態では、回転電機ケース8は、軸方向第2側L2からアクスルケース7に結合されている。
【0037】
変速機ケース9は、変速機1を収容している。本実施形態では、変速機ケース9は、連結軸CSの軸方向第1側L1の部分も収容している。また、変速機ケース9は、アクスルケース7に固定されている。本実施形態では、変速機ケース9は、軸方向第1側L1からアクスルケース7に結合されている。
【0038】
本実施形態では、変速機ケース9は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された周壁部91と、当該周壁部91の軸方向第1側L1の開口を塞ぐように形成された側壁部92と、周壁部91の径方向Rの内側の空間を軸方向Lに隔てる隔壁部93と、を備えている。
【0039】
周壁部91は、変速機1の径方向Rの外側を囲むように形成されている。側壁部92及び隔壁部93は、周壁部91から径方向Rの内側に向けて延在するように形成されている。本実施形態では、側壁部92は、第1変速ギヤTG1(ここでは、低速出力ギヤ14L、高速出力ギヤ14H)及び第2変速ギヤTG2(ここでは、低速入力ギヤ12L、高速入力ギヤ12H)に対して軸方向第1側L1に配置されている。そして、隔壁部93は、第1変速ギヤTG1及び第2変速ギヤTG2に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0040】
本実施形態では、変速入力軸11が、側壁部92及び隔壁部93に対して回転可能に支持されている。具体的には、変速入力軸11は、第2変速ギヤTG2(ここでは、低速入力ギヤ12L、高速入力ギヤ12H)に対して軸方向第1側L1に配置された第1変速入力軸受B11を介して、側壁部92に対して回転可能に支持されている。本例では、変速入力軸11の軸方向第1側L1の端部は、第1変速入力軸受B11を介して、側壁部92に対して回転可能に支持されている。また、変速入力軸11は、第2変速ギヤTG2(ここでは、低速入力ギヤ12L、高速入力ギヤ12H)に対して軸方向第2側L2に配置された第2変速入力軸受B12を介して、隔壁部93に対して回転可能に支持されている。本例では、変速入力軸11における低速入力ギヤ12L及び高速入力ギヤ12Hよりも軸方向第2側L2の部分が、隔壁部93を軸方向Lに貫通した状態で、第2変速入力軸受B12を介して隔壁部93に対して回転可能に支持されている。
【0041】
また、本実施形態では、変速出力軸13が、側壁部92及び隔壁部93に対して回転可能に支持されている。具体的には、変速出力軸13は、第1変速ギヤTG1(ここでは、低速出力ギヤ14L、高速出力ギヤ14H)に対して軸方向第1側L1に配置された第1変速出力軸受B21を介して、側壁部92に対して回転可能に支持されている。本例では、変速出力軸13は、変速出力軸13の一部である突出部13aが側壁部92から軸方向第1側L1に突出するように、側壁部92を軸方向Lに貫通している。そして、変速出力軸13は、第1変速出力軸受B21を介して、側壁部92に対して回転可能に支持されている。ここでは、第1変速出力軸受B21は、第1変速入力軸受B11に対して軸方向第1側L1に配置されている。また、変速出力軸13は、第1変速ギヤTG1(ここでは、低速出力ギヤ14L、高速出力ギヤ14H)に対して軸方向第2側L2に配置された第2変速出力軸受B22を介して、隔壁部93に対して回転可能に支持されている。本例では、変速出力軸13における低速出力ギヤ14L及び高速出力ギヤ14Hよりも軸方向第2側L2の部分が、隔壁部93を軸方向Lに貫通した状態で、第2変速出力軸受B22を介して隔壁部93に対して回転可能に支持されている。ここでは、第2変速出力軸受B22は、軸方向Lに並んで配置された2つのラジアル軸受22a,22bを含む。また、変速出力軸13における隔壁部93から軸方向第2側L2に突出した部分に、変速出力ギヤ15が形成されている。
【0042】
図1に示すように、車両用電動駆動装置100は、一対の車軸DSの回転を選択的に規制するブレーキ機構3を備えている。ブレーキ機構3は、回転部材31と、規制部材32と、駆動ユニット33と、を備えている。
【0043】
回転部材31は、第1変速軸TS1(ここでは、変速出力軸13)と一体的に回転するように連結されている。回転部材31は、第1変速ギヤTG1(ここでは、低速出力ギヤ14L、高速出力ギヤ14H)に対して軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、回転部材31は、変速機ケース9の側壁部92に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0044】
本実施形態では、回転部材31は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された筒状部311と、当該筒状部311と第1変速軸TS1(ここでは、変速出力軸13)とを連結する連結部312と、を備えている。
【0045】
筒状部311は、連結部312を介して、第1変速軸TS1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、筒状部311は、連結部312に対して径方向Rの外側に配置されている。
【0046】
連結部312は、第1変速軸TS1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、連結部312は、第1変速軸TS1としての変速出力軸13の突出部13aに対して相対回転不能に係合されている。このように、本実施形態では、回転部材31は、第1変速軸TS1と一体的に回転するように、突出部13aに係合している。本例では、連結部312は、突出部13aの径方向Rの外側を覆う筒状に形成されている。そして、連結部312は、突出部13aに対して径方向Rの外側に配置された状態で、例えばスプライン係合等によって突出部13aと一体的に回転するように連結されている。
【0047】
また、連結部312は、筒状部311と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、連結部312の軸方向第1側L1の端部に、径方向Rの外側に突出するフランジ部が形成され、筒状部311の軸方向第1側L1の端部に、径方向Rの内側に突出するフランジ部が形成されている。そして、これらのフランジ部同士が、軸方向Lに当接した状態で、ボルト等の固定部材によって互いに固定されている。
【0048】
規制部材32は、回転部材31の回転を規制する部材である。本実施形態では、規制部材32は、筒状部311に対して径方向Rに沿う径方向視で重複するように配置されている。本例では、規制部材32は、筒状部311に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で重複する位置に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0049】
このように、本実施形態では、回転部材31は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された筒状部311を備え、
規制部材32は、筒状部311に対して径方向Rに沿う径方向視で重複するように配置されている。
【0050】
この構成によれば、ブレーキ機構3が、回転部材31と規制部材32とが軸方向Lに並んで配置された構成(例えば、ディスクブレーキ)と比べて、車両用電動駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0051】
図3に示すように、本例では、ブレーキ機構3は、回転部材31の軸心(第3軸X3)に対して幅方向Hの両側に配置された一対の規制部材32を、当該規制部材32のそれぞれに取り付けられたライニング34が筒状部311の内周面に接触するように移動させることで、回転部材31の制動を行うドラムブレーキとして構成されている。ここで、「幅方向H」は、一対の車軸DSが延在する方向である。以下の説明では、幅方向Hの一方側を「幅方向第1側H1」とし、幅方向Hの他方側を「幅方向第2側H2」とする。
【0052】
また、本例では、一対の規制部材32は、車両用電動駆動装置100が搭載される車両に設けられたパーキングブレーキを動作させるためのスイッチやレバー等を運転者が操作した場合に、駆動ユニット33により回転部材31の筒状部311に向けて付勢される。ここでは、一対の規制部材32は、バッキングプレート36に対して幅方向Hに相対的に移動可能に支持されている。
図1に示すように、バッキングプレート36は、回転部材31の連結部312に対して径方向Rの外側に延在する円環板状に形成されている。バッキングプレート36は、変速機ケース9の側壁部92に対して軸方向第1側L1から、ボルト等の固定部材により固定されている。
【0053】
駆動ユニット33は、規制部材32を駆動するように構成されている。本実施形態では、駆動ユニット33は、一対の規制部材32を回転部材31の筒状部311に向けて付勢するように駆動するモータ、及び、例えばボールねじ等の動力変換機構を含む。本実施形態では、駆動ユニット33は、バッキングプレート36に支持されている。
【0054】
駆動ユニット33は、回転部材31に対して軸方向第2側L2に突出するように配置されている。そして、駆動ユニット33は、第1変速軸TS1(ここでは、変速出力軸13)の径方向Rに沿う径方向視で、変速機1と重複するように配置されている。本実施形態では、駆動ユニット33は、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で、第1変速出力軸受B21と重複するように配置されている。また、本実施形態では、駆動ユニット33は、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で、第1変速入力軸受B11と重複するように配置されている。
【0055】
このように、本実施形態では、第1変速軸TS1は、当該第1変速軸TS1の一部である突出部13aが側壁部92から軸方向第1側L1に突出するように、側壁部92を軸方向Lに貫通すると共に、第1変速出力軸受B21を介して側壁部92に対して回転可能に支持され、
回転部材31は、第1変速軸TS1と一体的に回転するように、突出部13aに係合し、
駆動ユニット33は、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で第1変速出力軸受B21と重複するように配置されている。
ここで、第1変速出力軸受B21は、「第1軸受」に相当する。
【0056】
この構成によれば、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で第1変速出力軸受B21と重複するスペースを利用して、ブレーキ機構3の回転部材31に対して軸方向第2側L2に突出する駆動ユニット33を配置することができる。これにより、駆動ユニット33が径方向視で第1変速出力軸受B21と重複しない構成と比べて、車両用電動駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態では、第2変速軸TS2は、第2変速ギヤTG2に対して軸方向第1側L1に配置された第1変速入力軸受B11を介して、変速機ケース9に対して回転可能に支持され、
駆動ユニット33は、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で第1変速入力軸受B11と重複するように配置されている。
ここで、第1変速入力軸受B11は、「第2軸受」に相当する。
【0058】
この構成によれば、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で第1変速入力軸受B11と重複するスペースを利用して、ブレーキ機構3の回転部材31に対して軸方向第2側L2に突出する駆動ユニット33を配置することができる。これにより、駆動ユニット33が径方向視で第1変速入力軸受B11と重複しない構成と比べて、車両用電動駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができる。
【0059】
図3に示すように、本実施形態では、駆動ユニット33は、回転部材31の周方向の一部の領域において、回転部材31に対して径方向Rの外側であって幅方向第1側H1に突出するように配置されている。
【0060】
この構成によれば、駆動ユニット33が、回転部材31に対して径方向Rの外側に突出するにあたり、幅方向Hの一方側である幅方向第1側H1に突出するように配置されている。これにより、駆動ユニット33が回転部材31に対して幅方向Hに偏らずに径方向Rの外側に突出する構成と比べて、ブレーキ機構3の上下方向Vの寸法を小さく抑えることができる。その結果、車両用電動駆動装置100の上下方向Vの寸法を小さく抑えることができ、車両への搭載性を高めることができる。
【0061】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、変速機1が2つの変速段である低速段と高速段とを形成可能である構成、つまり、変速機1が、第2変速ギヤTG2としての低速入力ギヤ12L及び高速入力ギヤ12Hと、第1変速ギヤTG1としての低速出力ギヤ14L及び高速出力ギヤ14Hと、を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、変速機1が、3つ以上の変速段を形成可能である構成であっても良い。或いは、変速機1が、回転電機MGの側から伝達される回転を、一定の変速比で変速する固定変速比の変速機(減速機又は増速機)であっても良い。
【0062】
(2)上記の実施形態では、駆動ユニット33が、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で、第1変速入力軸受B11及び第1変速出力軸受B21の双方と重複するように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、駆動ユニット33が、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で、第1変速入力軸受B11及び第1変速出力軸受B21のいずれか一方と重複するように配置されていても良い。或いは、駆動ユニット33が、第1変速軸TS1の径方向Rに沿う径方向視で、第1変速入力軸受B11及び第1変速出力軸受B21の双方と重複しないように配置されていても良い。
【0063】
(3)上記の実施形態では、規制部材32が、筒状部311に対して径方向Rの内側であって、径方向Rに沿う径方向視で重複する位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、規制部材32が、筒状部311に対して径方向Rの外側であって、径方向Rに沿う径方向視で重複する位置に配置された構成(例えば、バンドブレーキ)であっても良い。或いは、回転部材31が筒状部311を備えず、回転部材31と規制部材32とが軸方向Lに並んで配置された構成(例えば、ディスクブレーキ)であっても良い。
【0064】
(4)上記の実施形態では、駆動ユニット33が、回転部材31の周方向の一部の領域において、回転部材31に対して径方向Rの外側であって幅方向第1側H1に突出するように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、駆動ユニット33が、回転部材31に対して幅方向Hに突出せず、上側又は下側に突出した構成としても良い。
【0065】
(5)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示に係る技術は、一対の車輪の駆動力源として機能する回転電機と、当該回転電機の側から伝達される回転を変速する変速機と、当該変速機から伝達される回転を一対の車軸に分配する差動歯車機構と、アクスルケースと、一対の車軸の回転を選択的に規制するブレーキ機構と、を備えた車両用電動駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
100:車両用電動駆動装置、1:変速機、2:差動歯車機構、3:ブレーキ機構、31:回転部材、32:規制部材、33:駆動ユニット、7:アクスルケース、TS1:第1変速軸、TG1:第1変速ギヤ、MG:回転電機、DS:車軸、W:車輪、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、R:径方向