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  • 特開-液化石油ガスの供給装置 図1
  • 特開-液化石油ガスの供給装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054139
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】液化石油ガスの供給装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 7/04 20060101AFI20220330BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
F17C7/04
F17C13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161164
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000146962
【氏名又は名称】カグラベーパーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】玉井 健一
(72)【発明者】
【氏名】丸本 義幸
(72)【発明者】
【氏名】李 洋
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA06
3E172AB05
3E172BA04
3E172BD05
3E172DA90
3E172EB02
3E172GA17
3E172GA24
(57)【要約】
【課題】効率よく熱交換をすることができ、短時間で操業状態に到達して安定的にガスを供給することができる液化石油ガスの供給装置を提供する。
【解決手段】液相ラインの途中に液化石油ガス液を蒸発させる電気ヒータによって加熱する熱交換器を設け、この熱交換器の上流側には熱交換器の温度によって作動する電磁弁を設ける一方、前記気相ラインの圧力を検知して所定の圧力を下回ればオンする圧力スイッチを設け、この圧力スイッチのオン信号によって液相ラインの途中に設けた別の電磁弁を開弁して前記熱交換器に対してガス液を供給する 。液相ラインと気相ラインが合流した下流側の圧力を検知する別の圧力スイッチをさらに設け、設定圧まで圧力が低下すると該別の圧力スイッチをオンし、前記別の電磁弁を閉弁する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化石油ガスが充填されたバルク貯槽から気相ラインと液相ラインを介してそれぞれ液化石油ガスを供給する装置であって、前記液相ラインの途中には液化石油ガス液を蒸発させる電気ヒータによって加熱する熱交換器を設け、この熱交換器の上流側には熱交換器の温度によって作動する電磁弁を設ける一方、前記気相ラインの圧力を検知して所定の圧力を下回ればオンする圧力スイッチを設け、この圧力スイッチのオン信号によって液相ラインの途中に設けた液相ライン電磁弁を開弁して前記熱交換器に対してガス液を供給することを特徴とする液化石油ガスの供給装置 。
【請求項2】
液相ラインと気相ラインが合流した下流側の圧力を検知する別の圧力スイッチをさらに設け、設定圧まで圧力が低下すると該別の圧力スイッチをオンし、前記液相ライン電磁弁を閉弁する請求項1に記載の液化石油ガスの供給装置。
【請求項3】
前記別の圧力スイッチによって閉弁した液相ライン電磁弁は、電気的にインターロックして閉弁を維持することとした請求項2に記載の液化石油ガスの供給装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、その本体をアルミニウムで形成し、電気ヒータによって加熱する請求項1~3のいずれか記載の液化石油ガスの供給装置 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルク貯槽などに蓄えられた液化石油ガスから気相と液相を別個に取り出して選択的にガスを供給する装置において、効率よく、かつ安全に気相からの供給と液相からの供給を切り替えることができる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液化石油ガスを供給する際には、自然気化したガスをそのまま燃焼装置に供給する流路と、液化石油を熱交換器で強制的に気化させて供給する流路を並列に持ち、これを切り替えて使用している。
【0003】
ところで、従来の供給装置では、自然気化圧が十分にある場合には熱交換器の運転を停 止して気化ガスを燃焼装置に供給し、この気化圧が十分にガスを提供できない程度まで低 下した場合に熱交換器を運転するので、自然気化と強制気化の切り替えには時間的に遅れ が生じてしまい、安定したガス供給をすることができないという課題がある。そこでこれ を解消しようとすれば、自然気化圧を頻繁に監視し、圧が所定よりも低下するにもかかわらずガス消費量が多いと判断した場合には手動によって熱交換器の運転を開始するという 煩わしい作業をしなければならない。あるいは、常時熱交換器を作動させておき、自然気 化圧が低下した場合には即座に熱交換器で強制的に気化したガスを燃焼装置に供給する構 成もあるが、不要時にも熱交換器を運転しておかなければならず、効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-121036号公報
【特許文献2】特開2005-344735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明は、既に述べたような課題がある。これを解消しようとしたのが特許文献2に記載された発明であり、バルク貯槽の自然気化圧の変動によって自動的に気相からの供給と液相からの供給を切り替えることによって余分な熱交換器の運転を行うことなく効率のよいガス供給ができるようにしたものである。また、供給圧が異常に低下した場合には即座に熱交換器の運転を停止して 余分な熱エネルギーの消費を抑えるとともに、液状の液化石油ガスが熱交換器から流出することを防止している。
【0006】
ところで、特許文献2の発明は本願出願人に係るものであるが、液化石油ガス液をガス化するために利用されている熱交換器は蛇管構造のものであり、蛇管の周囲を熱媒で加熱した状態で蛇管内に液化石油ガスを通過させている。この場合、熱媒を安定した温度に昇温させるためには熱エネルギーを多量に必要とするとともに、時間がかかる。そのために、運転開始直後から石油ガスを得ることができないという課題がある。
【0007】
本発明は、これら従来の構造に備わっている課題を解決するもので、効率よく熱交換をすることができ、短時間で操業状態に到達して安定的にガスを供給することができる液化石油ガスの供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の装置では、液化石油ガスが充填されたバルク貯槽から気相ラインと液相ラインを介してそれぞれ液化石油ガスを供給する装置であって、前記液相ラインの途中には液化石油ガス液を蒸発させる電気ヒータによって加熱する熱交換器を設け、この熱交換器の上流側には熱交換器の温度によって作動する電磁弁を設ける一方、前記気相ラインの圧力を検知して所定の圧力を下回ればオンする圧力スイッチを設け、この圧力スイッチのオン信号によって液相ラインの途中に設けた別の電磁弁を開弁して前記熱交換器に対してガス液を供給するという手段を用いた。この手段においては、熱交換器は電気的に加熱するので昇温動作が敏捷であり、圧力スイッチの採用と伴って感度が高い供給装置とすることができる。
【0009】
また、液相ラインと気相ラインが合流した下流側の圧力を検知する別の圧力スイッチをさらに設け、設定圧まで圧力が低下すると該別の圧力スイッチをオンし、前記別の電磁弁を閉弁するという手段も用いた。この手段によると、例えば停電などの事故が発生した場合に熱交換器に対してガス液の供給が持続されてガス液がそのままの形態で流出することが防止される。さらに、前記別の圧力スイッチによって閉弁した別の電磁弁は、電気的にインターロックして閉弁を維持することとした。これによって、なんらかの原因で圧力が戻った場合でも手動によって電磁弁を開弁しない限り閉弁状態を維持することになり、さらなる事故を防止することができる。
【0010】
熱交換器の本体をアルミニウムで形成し、電気ヒータによって加熱するという選択的な手段では、良好な熱交換器の感度を発揮することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では上述した手段を用いたので、ガス圧に対して感度が高い装置とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の液化石油ガスの供給装置の一例を示したフロー図。
図2】熱交換器の主要部を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に従って説明する。図中、1は液化石油ガスのバルク貯槽である。液化石油ガスは周知のように沸点が低いので常温常圧雰囲気で気化することから、バルク貯槽1内には液化石油ガス液からなる液相2と、これが蒸発したガス状の気相3の二相で構成されている。夏場などのように外気温が高く、バルク貯槽1内の圧力が高い場合には気相3から直接ガスを燃焼装置(図示せず)などに供給するための気相ライン4が設けられている。一方 、冬場や自然気化ガスの消費によってバルク貯槽1内の圧力が低下した場合には液相2から液化石油ガス液を熱交換器5に供給するための液相ライン6が設けられている。
【0014】
気相ライン4の途中には手動弁である気相側貯槽元弁7、均圧弁8、および圧力調整器9が設けられ、気相側からのガス供給のためのガス出口弁10が設けられている。これらの構成は一般的な気相ラインにおいても利用される構造である。一方、液相ライン6の途中には液相の石油ガスを気化させるための熱交換器5が設けられるとともに、手動弁である液相側貯槽元弁11が備えられている。12は熱交換器5の安全弁、13は液相側からのガス出口弁である。そして、気相ライン4と液相ライン6を合流させた直後の位置にはガスを燃焼装置に安定した圧力で供給するために圧力調整器14が設けられている。
【0015】
本実施形態のガス供給装置の基本的な回路は上記に説明したものであるが、本発明では気相と液相を効率よく制御するために複数の電磁弁を配置した。図中、21は気相側圧力スイッチ、22は気相ライン4と液相ライン6を合流させた後の圧力スイッチであり、それぞれ気相ガスまたは液相ガスの圧力によってスイッチをオンオフさせている。本実施形態では、気相側圧力スイッチ21は0.45MPaに設定し、液相側圧力スイッチ22は0.02MPaに設定している。ただし、これらの数値は例示したものであり、機器の能力などによって適宜変更される。そして、これらの圧力スイッチ21、22の信号は制御盤23に入力され、この信号によって液相ライン電磁弁23と、熱交換器の電磁弁24を制御している。
【0016】
上記制御の形態を説明すると、まず正常運転時において、貯槽1の圧力が所定の圧力よりも高い場合、例えば設定値0.45MPaよりも高い場合には、圧力スイッチ22はオフの状態であり、液相ライン電磁弁25と熱交換器の電磁弁24への通電は停止されている。通電が停止している場合には、液相ライン電磁弁25は閉止しており、熱交換器5に対するガス液は流入しない。つまり、この状態の場合には燃焼装置には気相ライン4からガスが供給される。反対に、貯槽1の圧力が所定の圧力よりも低い場合には、圧力スイッチ22がオンとなり、液相ライン電磁弁25と熱交換器5への通電が開始される。液相ライン電磁弁25が開き、ガス液は熱交換器5の電磁弁24の直前まで流入する。そして、熱交換器5に備えられた蒸発器本体の温度が所定の温度(例えば50°C)よりも高くなると、熱交換器の電磁弁24は自動的に開き、ガス域は熱交換器5の蒸発器内に流入する。つまり、燃焼装置には熱交換器5によって気化されたガスが供給される。貯槽1の圧力が再度所定圧力まで上昇すると、圧力スイッチ22がオフし、液相ライン電磁弁25が閉止して熱交換器5へのガス液の供給は停止する。そして、圧力が高まった気相ラインから燃焼装置に対して気化ガスが供給されることになる。
【0017】
ところで、停電などの事故が発生した場合であっても、本実施形態では液相ラインの電磁弁25は常時閉止しているので、液が液相のままで熱交換器5のガス出口から流出することはない。そして、この場合には気相ラインから気化ガスが燃焼装置に対して供給を続けることになる。このような状態が長時間続いて二段一次圧力調整器の出口圧力が所定の圧力(本実施形態では0.02MPa)まで低下すると、圧力スイッチ22がオンし、通電が自動的に復帰しないように電気的にインターロックするようにして安全を確保している。つまり、本実施形態では液相ライン電磁弁25が自動的に開弁することはない。通電の復帰操作については、制御盤に備えられた復帰スイッチ(図示せず)を操作することによって達成する。
【0018】
本発明において採用する熱交換器は、動作が開始されれば極力早く通常動作を行うことができる構造が好ましい。つまり、本実施形態の回路では圧力スイッチの信号によって電磁弁を制御しているので、この制御の反応時間は短時間で行うことができる。熱交換器の作動が緩やかであったり、反応が遅いような構造であれば、本実施形態に示した回路を有効に活用することができないからである。本実施形態における熱交換器5の一例を図2に示す。図2は本発明で採用する好ましい熱交換器の主要部を示した斜視図であって、直柱体状の本体ブロック30に対して、その中央に熱源であるカートリッジヒータ(図示せず)のヒータ挿入孔31を4本穿設して加熱部32を構成する一方、該加熱部32の周囲に11本の垂直孔33を前記ヒータ挿入孔31と平行して穿設すると共に、隣合う前記垂直孔33の上部同士と下部同士を交互に水平孔34・35により連通し、さらに本体ブロック30の表面に開口する垂直孔33と水平孔34・45の開口部をプラグ36・37で閉塞することで、最終的には前記加熱部32を取り囲んで全ての垂直孔33と水平孔34・35が連通した1本の矩形波状の熱交換流路を構成している。
【0019】
各部の詳細について説明すると、まず、本体ブロック30は、熱伝導性が良好で、成形も比較的容易なアルミニウムを素材として、その無垢材等を直柱体状に成形している。この実施形態では、横断面が正方形な縦長な直方体(角柱)を採用している。具体的寸法は、一例として横断面を105mm角とし、高さを257mmとしている。なお、30aは設置に際してボルト止め等をするために本体ブロック30の下面側に連設した台座部である。
【0020】
このような本体ブロック30の中央には4本のヒータ挿入孔31が穿設されているが、本実施形態では、各ヒータ挿入孔31を本体ブロック30の中心線CLから等距離の位置に、等間隔で配列している。これによって加熱部32周囲の温度分布を均一にすることができる。また、各ヒータ挿入孔31は、本体ブロック30の上下を貫通するように穿設している。これは、ヒータ挿入孔31にカートリッジヒータをグリス等を塗布して圧入する際、挿入側と反対側の開口が圧抜き口となって、カートリッジヒータをスムーズに圧入することができるからである。なお、カートリッジヒータの挿入後は、ヒータ挿入孔31の片方の開口はリード線の引き出し口とする一方、もう片方の開口はねじ込みプラグ等によって閉塞する。本実施形態では、本体ブロック30の下面(底面)側を開口したままとし、上面(天面)側の開口は閉塞している。
【0021】
そして、上述したヒータ挿入孔31に挿入した4本のカートリッジヒータを一組として加熱部32を構成し、その周囲には、熱交換流路の主たる構成要素である垂直孔33を穿設している。この垂直孔33は、ヒータ挿入孔31と平行して垂直方向に穿設されるもので、本実施形態では最も近接するヒータ挿入孔31との離間距離が等距離となるように、合計11本の垂直孔33を加熱部32を取り囲む環列状に配置している。なお、この場合の等距離は、穿設時に誤差を全く許さない厳密なものではなく、設計思想として存在することで足りるものである。
【0022】
また、垂直孔33を穿設する際、本体ブロック30を上下貫通させてもよいが、そうすると、垂直孔33の上下が開口部となるため、その両方を閉塞するためには、1本の垂直孔32につき、常に2つのプラグ36が必要となる。そこで、本実施形態では垂直孔33を本体ブロック30の上面から穿設して、反対側の下面を貫通しない非貫通孔としている。これによって、開口部が1箇所となり、プラグ36の必要数を半減することができる。また、上下に完全に貫通させる場合よりも切削屑の量も減らすことができる。なお、開口部を閉塞するプラグ7には、ねじ込みプラグを採用することが、シール性やメンテナンス性の面で有利であるが、これに限定するものではない。
【0023】
上記実施形態は、本発明に適応する熱交換器5の蒸発器の一形態であって、本体ブロックは円柱状などの他の直柱体状であってもよく、また、加熱部を構成するカートリッジヒータ(の挿入孔)の数や、熱交換流路を構成する垂直孔・水平孔の数も、所望する気化量等に応じて増減することができる。本発明において必要なことは、この蒸発器を適用することによって比熱の小さいアルミニウムを加熱して立ち上がりが早い稼働をすること、および電気的に加熱するヒータにより感度よくガス液を気化させることである。これと相まって、本実施形態の回路に採用した圧力スイッチ21、22が比較的高感度であるので、このオンオフ信号に応じて的確に液相を制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 バルク貯槽
2 液相
3 気相
4 気相ライン
5 熱交換器
6 液相ライン
7 気相側貯槽元弁
9 圧力調整器
10 ガス出口弁
11 液相側貯槽元弁
12 熱交換器の安全弁
13 ガス出口弁
14 圧力調整器
21 気相側圧力スイッチ
22 気相ラインと液相ラインを合流させた後の圧力スイッチ
23 制御盤
24 熱交換器の電磁弁
25 液相ライン電磁弁
30 本体ブロック
31 ヒータ挿入孔
図1
図2