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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054140
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】電線端末カバー
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/02 20060101AFI20220330BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220330BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20220330BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H02G15/02
H02G1/02
H02G7/00
H01B17/56 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161168
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000139573
【氏名又は名称】株式会社愛洋産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岸 泰至
【テーマコード(参考)】
5G333
5G352
5G367
5G375
【Fターム(参考)】
5G333AA09
5G333AB25
5G333CB20
5G333EA02
5G333EB08
5G352AC03
5G352AE03
5G367BB05
5G375CB06
5G375DA20
(57)【要約】
【課題】電線からの脱落を良好に抑制できる電線端末カバーを提案する。
【解決手段】電線の端末に装着される電線端末カバーは、第1構成体と、第2構成体と、を備える。第2構成体は、第1構成体と所定の回転軸により開閉自在に連結される。第1構成体は、電線の末端を収容可能である半筒状の収容部を備える。第2構成体は、蓋部を備える。第1構成体と第2構成体とが閉じた閉状態では、収容部と蓋部とによって電線を保持可能な筒状保持部が形成されるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に装着される電線端末カバーであって、
第1構成体と、前記第1構成体と所定の回転軸により開閉自在に連結される第2構成体と、を備え、
前記第1構成体は、前記電線の末端を収容可能である半筒状の収容部を備え、
前記第2構成体は、蓋部を備え、
前記第1構成体と前記第2構成体とが閉じた閉状態では、前記収容部と前記蓋部とによって前記電線を保持可能な筒状保持部が形成されるように構成されている、電線端末カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の電線端末カバーであって、
前記蓋部における、前記閉状態で前記電線と当接する当接領域は、前記筒状保持部により保持可能な径を有する電線の外周縁の曲率よりも小さい曲率を有する形状、又は、前記収容部に向かって突出する形状である、電線端末カバー。
【請求項3】
請求項2に記載の電線端末カバーであって、
前記当接領域は、略平面状である、電線端末カバー。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の電線端末カバーであって、
前記蓋部は、前記第1構成体と前記第2構成体が開くことで、前記当接領域が前記収容部から距離を開けた位置に移動するように構成されており、
前記第1構成体と前記第2構成体が開いたときに、前記収容部への前記電線の収容が可能であり、かつ、前記収容部と前記蓋部の間に電線が誤って入らないように、前記第1構成体と前記第2構成体との回転角度の範囲を制限する範囲制限部を有する、電線端末カバー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電線端末カバーであって、
前記第1構成体は、複数の電線の径に対応する複数の前記収容部を有し、
前記複数の収容部は、収容される電線の軸方向に沿って直列に並び、かつ、隣接する2つの前記収容部の底面の少なくとも一部が滑らかに繋がるように配置されている、電線端末カバー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電線端末カバーであって、
前記第1構成体及び前記第2構成体のいずれか一方には、貫通孔が形成され、また前記一方とは異なる他方には、前記貫通孔に挿入されて前記貫通孔の縁部に係止する係止部が形成され、前記貫通孔の縁部に前記係止部が係止することで前記閉状態が維持されるように構成されており、
さらに、前記一方には、前記他方とは反対側の位置に設けられ、前記貫通孔を囲い、当該電線端末カバーの開口側の端部に開口を有する保護部が形成されている、電線端末カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電線の末端に装着される電線端末カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧絶縁電線の端末は、電気的絶縁性を確保するために電線端末カバーで覆って保護される。このような技術の一つとして、例えば特許文献1には、開口部から嵌挿することで取り付けることができる電線端末カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-143745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線端末カバーは、脱落を良好に防止するため、電線に対して強固に固定されることが望まれる。
本開示の目的は、電線からの脱落を良好に抑制できる電線端末カバーを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、電線の端末に装着される電線端末カバーであって、第1構成体と、第2構成体と、を備える。第2構成体は、第1構成体と所定の回転軸により開閉自在に連結される。第1構成体は、電線の末端を収容可能である半筒状の収容部を備える。第2構成体は、蓋部を備える。第1構成体と第2構成体とが閉じた閉状態では、収容部と蓋部とによって電線を保持可能な筒状保持部が形成されるように構成されている。
【0006】
このような構成であれば、第1構成体と第2構成体とが閉じた閉状態とすることにより、電線を挟み込んで強固に保持することができる。よって、電線端末カバーの電線からの脱落を良好に抑制できる。
【0007】
上述した電線端末カバーにおいて、蓋部における、閉状態で電線と当接する当接領域は、筒状保持部により保持可能な径を有する電線の外周縁の曲率よりも小さい曲率を有する形状、又は、収容部に向かって突出する形状であってもよい。
【0008】
このような構成であれば、蓋部の当接領域が、電線に強く押し当てられることとなる。そのため、電線を強く挟み込むことができ、電線端末カバーの電線からの脱落を良好に抑制できる。
【0009】
上述した電線端末カバーにおいて、当接領域は、略平面状であってもよい。このような構成であれば、電線に当接領域を強く押し当てることができる。
上述した電線端末カバーにおいて、蓋部は、第1構成体と第2構成体が開くことで、当接領域が収容部から距離を開けた位置に移動するように構成されていてもよい。第1構成体と第2構成体が開いたときに、収容部への電線の収容が可能であり、かつ、収容部と蓋部の間に電線が誤って入らないように、第1構成体と第2構成体との回転角度の範囲を制限する範囲制限部を有してもよい。このような構成であれば、電線端末カバーを電線に取り付ける際に、電線を収容部に収容し易くなり、作業性の低下を抑制できる。
【0010】
上述した電線端末カバーにおいて、第1構成体は、複数の電線の径に対応する複数の収容部を有してもよい。複数の収容部は、収容される電線の軸方向に沿って直列に並び、かつ、隣接する2つの収容部の底面の少なくとも一部が滑らかに繋がるように配置されていてもよい。
【0011】
このような構成であれば、異なる径の電線に対しても同一の電線端末カバーを用いることができる。また、電線の径によって取り付け操作を変更する必要がなく、同様の取り付けの操作によって取り付けることができる。また、隣接する収容部の滑らかに繋がる部分が存在するため、電線の端末を滑動させ易くなり、取り付け操作を容易にすることができる。
【0012】
上述した電線端末カバーにおいて、第1構成体及び第2構成体のいずれか一方には、貫通孔が形成され、また一方とは異なる他方には、貫通孔に挿入されて貫通孔の縁部に係止する係止部が形成され、貫通孔の縁部に係止部が係止することで閉状態が維持されるように構成されていてもよい。さらに、上述した一方には、他方とは反対側の位置に設けられ、貫通孔を囲い、当該電線端末カバーの開口側の端部に開口を有する保護部が形成されていてもよい。
【0013】
このような構成であれば、係止部が想定外に外れてしまうことを抑制でき、閉状態をより良好に維持することができる。また、電線端末カバーの開口側と同じ方向が開いていることから、雨などで水が浸入したときに、電線端末カバーから水が抜けることを妨げないので、電線端末カバーの内部に水が残ってしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の閉状態の電線端末カバーを示す斜視図である。
図2図2Aが、実施形態の開状態の電線端末カバーを示す斜視図であり、図2Bが、図2Aとは異なる視点の斜視図である。
図3】第1構造体と第2構造体とを分解した斜視図である。
図4図4Aが閉状態の電線端末カバーを示す正面図であり、図4Bが電線端末カバーを示す平面図であり、図4Cが電線端末カバーを示す背面図であり、図4Dが電線端末カバーを示す底面図である。
図5図5Aが電線端末カバーを示す左側面図であり、図5Bが電線端末カバーを示す右側面図である。
図6図6A図4AのVIA-VIA切断面による端面図であり、図6B図4AのVIB-VIB切断面による端面図であり、図6C図4AのVIC-VIC切断面による端面図である。
図7】第1構造体と第2構造体との回転動作を説明する図である。
図8】第1構造体と第2構造体とが最大に開いた状態を説明する図である。
図9図9A及び図9Bが、蓋部の変形例を示す模式的な端面図である。
図10】蓋部の変形例、及び、当接領域の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.実施形態]
[1-1.電線端末カバーの構成]
図1図5Bに、本実施形態の電線端末カバー1を示す。電線端末カバー1は、電線の端末に装着され、電線の端末からの漏電を抑制する。電線端末カバー1は、例えば合成樹脂などの絶縁性材料によって形成されている。ここでいう電線とは、絶縁体で被覆された電線であって、電柱に掛けて用いられる高圧絶縁電線を含む。
【0016】
電線端末カバー1は、第1構成体100と、第2構成体200と、を備える。第1構成体100と第2構成体200とは、所定の回転軸により開閉自在に連結されている。電線端末カバー1は、図1に示される、第1構成体100と第2構成体200とが閉じた閉状態と、図2A-2Bに示される、第1構成体100と第2構成体200とが開いた開状態と、に遷移可能に構成されている。
【0017】
第1構成体100は、収容部110、延出部120、軸支持片130、リブ140、突出片150、及び、第1突起160などを有する。
収容部110は、第1収容部111、第2収容部112、及び、第3収容部113を含む。これら3つの収容部111-113を区別せずに指すときには、単に収容部110と記載する。
【0018】
収容部110は、半筒状であり、電線の末端を収容可能に構成されている。図2B及び図5Aに明瞭に示されるように、第1収容部111、第2収容部112、及び第3収容部113はそれぞれ内径の異なる半筒状であり、収容に適する電線の径が異なる。収容部110の底面の内壁面には、収容部110の内側に向かう先端が尖った複数の突起114が形成されている。収容部110の底面は、第1構成体100と第2構成体200の開く開口側からみて奥に位置する面である。
【0019】
3つの収容部111-113は、収容される電線の軸方向に沿って直列に並び、かつ、隣接する2つの収容部の底面の一部が滑らかに繋がるように配置されている。つまり、第1収容部111と第2収容部112の底面の最も深い部分は段差なく連なっており、同様に、第2収容部112と第3収容部113の底面の最も深い部分は段差なく連なっている。その結果、3つの収容部111-113の底面の少なくとも一部は、図5Aに示されるように同一平面上に位置しており、底面の少なくとも一部が直線状に並ぶ。上述した突起114は、収容部110の底面における上述した直線状となる部分に配置される。
【0020】
延出部120は、特に図2Bに示されるように、収容部110の端から広がる部分であり、平板状の部分と、3つの収容部111-113の並ぶ方向(以下、軸方向とも記載する)に延びる溝部121と、を有する。溝部121はV字状の溝であり、収容部110から遠い側に位置する壁面に3つの貫通孔122が形成されている。また延出部120には、閉状態のときに第2構成体200とは反対側となる位置に設けられ、3つの貫通孔122を囲う3つの保護部123が形成されている。この保護部123は角筒型であって、電線端末カバー1の開口側の端部に開口を有する。ここでいう電線端末カバー1の開口側とは、第1構成体100及び第2構成体200が閉状態から開状態となるときに開く(大きく離れる)側という意味である。保護部123の外側壁面には、図2Aに示されるように、軸方向に延びる4つの突条が形成されている。4つの突条のうち、中央の2つの突条は、外側の2つの突条よりも突出量が小さい。
【0021】
軸支持片130は、図3に示されるように、第1構成体100の軸方向の両端に1つずつ設けられる舌片状の部分である。2つの軸支持片130は、上述した収容部110の底近傍から延び出している。2つの軸支持片130には貫通孔131が形成されている。
【0022】
リブ140は、図3に示されるように、溝部121の収容部110に近い側に位置する壁面と、収容部110と、を結ぶ。またリブ140は、第1収容部111、第2収容部112、及び、第3収容部113のそれぞれに対して設けられている。
【0023】
突出片150は、第1構成体100の外側壁面に設けられ、軸方向に長さを有する。この突出片150は、主に沿面距離を大きくする目的で形成されている。
第1突起160は、第1構成体100の外側壁面のうち、2つの軸支持片130の近傍に設けられる突起である。
【0024】
第2構成体200は、蓋部210、平面部220、軸部230、突出片240、係止部250、リブ260、及び、押圧部270を備える。
蓋部210は、閉状態において収容部110の開口の少なくとも一部に蓋をする部分である。蓋部210は、第1蓋部211、第2蓋部212、及び、第3蓋部213を含む。3つの蓋部を区別せずに指すとき、単に蓋部210と記載する。閉状態では、収容部110と蓋部210とによって電線を保持可能な筒状保持部が形成される。筒状保持部の詳細は後述する。
また蓋部210には、軸方向に長さを有し、外側に飛び出す溝部214が形成されている。この溝部214は、閉状態において突出片150が収まる。
【0025】
平面部220は、特に図3に示されるように、蓋部210の端から広がる部分である。平面部220は、閉状態で第1構成体100側となる面に、突出片240及び3つの係止部250が設けられる。また、平面部220における3つの係止部250の裏側には、3つの押圧部270が設けられる。
【0026】
軸部230は、棒状に長さを有しており、両端に挿入部231が設けられている。軸部230は2つの軸支持片130に挟まれるように配置され、その際に、2つの挿入部231は2つの軸支持片130それぞれの貫通孔131に収まる。この貫通孔131と挿入部231とを回転中心として第1構成体100と第2構成体200は相対的に回動し、開状態と閉状態とに遷移する。この回動の軸方向は、上述した3つの収容部111-113の並ぶ方向、すなわち収容される電線3の軸と同一の方向である。
【0027】
また軸部230の両端部近傍の側面には、2つの第2突起232が設けられている。第2突起232は、第1突起160と当接することで、第1構成体100と第2構成体200との回転の角度範囲を制限する。図2A-2Bにおいて、第1突起160と第2突起232とは当接しており、すなわち、第1構成体100と第2構成体200とが最も大きく開いた状態である。
【0028】
突出片240は平面部220に設けられ、軸方向に長さを有する。この突出片240は、主に沿面距離を大きくする目的で形成されている。
3つの係止部250は、3つの貫通孔122に挿入されて貫通孔122の縁部に係止する。貫通孔122の縁部に係止部250が係止することで、閉状態が維持される。
【0029】
3つのリブ260は、軸部230から押圧部270まで延びる。リブ260は、第1蓋部211、第2蓋部212、第3蓋部213のそれぞれに対して設けられている。
3つの押圧部270は、軸方向に延びる4つの突状により構成されている。4つの突条のうち、中央の2つの突条は、外側の2つの突条よりも突出量が小さい。押圧部270は係止部250の裏側に配置されている。
【0030】
[1-2.筒状保持部]
図6A-6Cを用いて、電線端末カバー1の備える筒状保持部を説明する。図6A-6Cは、いずれも、閉状態における端面図である。電線端末カバー1には、3つの筒状保持部が形成される。第1筒状保持部301は、第1収容部111と第1蓋部211によって形成される。第2筒状保持部302は、第2収容部112と第2蓋部212によって形成される。また第3筒状保持部303は、第3収容部113と第3蓋部213によって形成される。3つの蓋部211-213における、閉状態で電線3と当接する領域を、それぞれ当接領域211a、212a、213aとする。これら当接領域211a-213aは、いずれも、軸方向に沿って広がる平面状である。
【0031】
第1筒状保持部301により保持可能な電線3a、第2筒状保持部302により保持可能な電線3b、及び、第3筒状保持部303により保持可能な電線3cは、それぞれ径が異なる。ここでいう、第1筒状保持部301が保持可能な電線3aとは、第1収容部111に収まる電線であって、さらに、閉状態において当接領域211aと常に当接する程度の直径を有する電線である。仮に、電線3aが当接領域211aと当接せず、その結果、電線3aが第1収容部111と第1蓋部211から確りと挟まれなければ、電線は第1筒状保持部301から抜け落ちる危険が増加してしまう。そのため、第1筒状保持部301は、当接領域211aと常に当接した状態とならない電線は保持できない。なお、第2筒状保持部302が保持可能な電線3b、及び、第3筒状保持部303が保持可能な電線3cにおいても同様である。図6A-6Cにおいては、電線3と蓋部210とが交差したように図示されている。しかしながら、実際には電線3が蓋部210により圧縮され、また、蓋部210は電線3により外側に押圧され、それにより、第2構成体200は蓋部210を中心に外側に向かって弾性変形する。
【0032】
第1筒状保持部301は、突起114が存在するため、電線3aを第1収容部111の底よりもわずかに浮いた状態で保持する。第1蓋部211は電線3aを第1収容部111の底側に向かって押圧している。当接領域211aは上述したように平面状であるから、例えば当接領域が電線3aの外周縁と同じ曲率の曲面状である場合と比較して、小さい面積で電線3aを押圧することとなる。したがって、押圧力の分散が抑制されることから、電線3aの外周形状のばらつきなどの影響を抑制し、安定して強い力で電線3aを押圧することができる。これらは、第2筒状保持部302、第3筒状保持部303においても同様である。
【0033】
また図7に示される第2筒状保持部302のように、第2蓋部212は第2収容部112の開口部に向かって、図中の矢印で示すように、開口の横方向から移動する。よって、閉状態になる直前において、当接領域212aは電線3bの表面を第2収容部112に向かって押し込むようにスライドする。これらは、第1筒状保持部301、第3筒状保持部303においても同様である。
【0034】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)上述した電線端末カバー1では、蓋部210の当接領域が平面状であるから、当接領域が電線3に強く押し当てられることとなる。そのため、電線を強く挟み込むことができ、電線端末カバー1の電線3からの脱落を良好に抑制できる。
【0035】
(1b)電線端末カバー1では、蓋部210の当接領域は電線3の当接部分に対して横方向から接近して押圧する。仮に当接領域に大きな突起等が設けられていると、突起等が電線3の表面に当たって蓋部210のスムーズな移動が阻害されてしまうが、当接領域が平面状であることから、滑らかに電線3の表面をスライドし、容易に閉状態に遷移することができる。
【0036】
(1c)電線端末カバー1には、3つの筒状保持部(301,302,303)が設けられている。よって、異なる太さの電線に対して同一の電線端末カバー1を用いることができる。また、3つの収容部111-113が収容される電線3の軸方向に沿って直列に並んでいるため、電線3の挿入深さを変更するだけで、電線に応じた適切な収容部に電線を収容することができる。よって、電線の太さに関わらず、同様の取り付けの操作によって電線端末カバー1を取り付けることができる。
【0037】
また、3つの収容部111-113のうち、隣接する2つの収容部の底面の一部が滑らかに繋がるように配置されている。そのため、直列に並ぶ複数の収容部110の間の段差が小さくなることから、電線3の端末を収容部110の底面で滑動させ易くなり、取り付け操作を容易にすることができる。
【0038】
[1-4.実施形態のその他の特徴]
第1構成体100と第2構成体200が回転する回転軸(貫通孔131及び挿入部231)は、収容部110の底部に近い位置にある。つまり、回転軸は、当接領域211a-213aから離れた位置にある。よって、第1構成体100と第2構成体200が開閉するとき、当接領域211a-213aは回転軸を中心とした円周方向に大きく移動する。第1構成体100と第2構成体200が開くことで、図2A-2B、図6A-6Cなどに示されるように、蓋部210の当接領域211a-213aが収容部110から距離を開けた位置に移動する。
【0039】
上述したように、最も開いたときの回転角度は、第1突起160と第2突起232とによって制御される。図8に示されるように、第1構成体100と第2構成体200が開いたときに、収容部110への電線3の収容が可能である(図8の白抜きの矢印)。一方、収容部110と蓋部210の間隔は小さいので、電線3はその間隔を通るように移動できない(図8の破線の矢印)。仮に第1突起160と第2突起232によって回転角度の範囲が制限されていなければ、蓋部210はより大きな回転角度まで開く可能性がある。その場合、収容部110の壁面と蓋部210との間の空間が大きくなってしまうため、電線3を収めようとするときに、その空間に誤って電線が入ってしまう可能性があり、その場合、電線端末カバー1の取り付けの作業性が低下してしまう。しかしながら、上述した電線端末カバー1であれば、電線端末カバー1を電線3に取り付ける際に、電線3が上述した隙間に誤って入る危険が低減されるため正しく収容部110に収容され易くなり、作業性の低下を抑制できる。なお、第1突起160と第2突起232が、第1構成体100と第2構成体200との回転角度の範囲を制限する範囲制限部に相当する。
【0040】
また、保護部123と押圧部270は、貫通孔122と係止部250が設けられた部分に設けられている。したがって、開状態から閉状態に遷移させるときには、保護部123と押圧部270を手で挟みこむようにして、係止部250を貫通孔122の縁部に係止させることができる。保護部123と押圧部270は指で押さえる部分に複数の突条を有しているため、指が滑りにくくなっている。また押圧部270によって係止部250周辺の強度が向上するため、係止部250の変形が抑制され、意図せず係止部250が貫通孔122から外れてしまうことが抑制される。また保護部123によって、貫通孔122の縁部に係止された係止部250に電線端末カバー1の外部から何らかの物体が当接することが抑制される。そのため、保護部123によっても意図せず係止部250が貫通孔122から外れてしまうことが抑制される。
【0041】
また、保護部123の開口が電線端末カバー1の開口側と同じ方向が開いていることから、雨などで水が浸入したときに、保護部123が電線端末カバー1から水が抜けることを妨げないので、電線端末カバー1の内部に水が残ってしまうことを抑制できる。
【0042】
[2.その他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0043】
(2a)上記実施形態では、当接領域(211a、212a、213a)は、平面状である構成を例示した。しかし、当接領域は、筒状保持部(301、302、303)により保持可能な径を有する電線の外周縁の曲率よりも小さい曲率を有する形状、又は、収容部に向かって突出する形状であれば、特に限定されない。ここでいう形状は、軸方向と直交する平面による切断面の形状を指す。
【0044】
図9Aに示される蓋部401は、電線3の外周縁の曲率よりも小さい曲率を有する当接領域401aを有する。言い換えると、当接領域401aは電線3の外周の曲率半径Rよりも曲率半径Rが大きい。当接領域401aは、電線3の外周縁よりも曲率が小さい。ここでいう、電線3の外周縁よりも曲率が小さい当接領域、とは、以下のように説明されてもよい。当接領域は、電線3の外周縁と同じ曲率の曲面と比較して平面状に近く、結果として、電線3に押し当てられたときに当接する面積が上記の曲面よりも小さい。すなわち、当接領域の表面形状に起因して、実質的に接触面積が小さくなる当接領域が広く含まれる。
【0045】
また、図9Bに示される蓋部501は、当接領域501aが電線3に向かって突出するように構成されている。このような構成であれば、当接領域501aにおける電線3と当接する面積をより小さくできる。
【0046】
なお、当接領域は平滑な面でなくてもよい。例えば、図10に示されるように、蓋部601が複数の微小な突起が形成された凹凸面602を備え、その凹凸面602が当接領域601aとなっていてもよい。このような場合には、微小な突起の先端部分、すなわち電線3と当接する複数の部分を含む仮想的な面を当接領域601aとみなしてもよい。なお、略平面状の当接領域とは、実質的に曲率が0に近い平面のみでなく、上述した仮想的な面が略平面である当接領域を含む。
【0047】
(2b)上記実施形態では、範囲制限部の例として第1突起160と第2突起232とを例示したが、範囲制限部の構成はこれに限定されない。例えば、上述した突起の位置は、軸部230から離れた位置に設けられていてもよい。また、第1構成体100と第2構成体200との回転角度の範囲を制限するための様々な態様のストッパを用いてもよい。また、第1構成体100と第2構成体200の壁面が直接当接することで回転角度の範囲を制限するように構成されていてもよい。その場合は、当接する部分が範囲制限部に相当する。なお、範囲制限部は設けられていなくてもよい。
【0048】
(2c)上記実施形態では、第1構成体100が、異なる径の電線3を収容可能な3つの収容部(111、112、113)を有し、閉状態では3つの筒状保持部が形成される構成を例示した。しかしながら、収容部の数、すなわち筒状保持部の数は、1つ又は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0049】
また上記実施形態では、3つの収容部が、収容される電線の軸方向に沿って直列に並び、かつ、隣接する2つの収容部の底面の少なくとも一部が滑らかに繋がる構成を例示した。しかしながら、複数の収容部を有する場合に、収容部は必ずしも直列に並んでいなくてもよい。また、隣接する2つの収容部の底面に、滑らかに繋がる部分を有していなくてもよい。ここでいう、滑らかに繋がる部分、とは、2つの収容部の底面の少なくとも一部に段差がなく繋がる部分、及び、傾斜角度が緩やかに変化する傾斜面によって繋がる部分、を含む。
【0050】
(2d)上記実施形態では、貫通孔122の縁部に係止部250が係止されることで閉状態が維持される構成を例示した。しかしながら、閉状態を維持するための具体的なロック機構は特に限定されず、公知の様々な構成を採用しうる。また保護部123は設けられていなくてもよい。また保護部123が設けられる場合、その開口は、第1構成体100と第2構成体200の開口側でなくてもよい。
【0051】
(2e)本開示の電線端末カバー1はあくまでも例示であり、具体的な形状は、公知の技術を利用して様々な態様に変更できる。第1構成体100及び第2構成体200の具体的な形状は特に限定されず、例えば、リブ(140、260)や突起114などは設けられていなくてもよいし、実施形態とは異なる位置に設けられていてもよい。また、第1構成体100と第2構成体200とを回転可能に連結するための回転軸の構成は、例示された構成以外の構成であってもよい。また、貫通孔122が第2構成体200に設けられ、係止部250が第1構成体100に設けられていてもよい。
【0052】
また上記実施形態において、蓋部211-213は、それぞれ軸方向の断面形状が一定であり、軸方向の広い範囲で電線3と当接する当接領域が形成される構成を例示した。しかしながら、軸方向の一部の範囲でのみ電線3と当接する構成であってもよい。このような構成では、当接する範囲において、上述した本開示の当接領域の特徴を有していてもよい。
【0053】
(2f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…電線端末カバー、3,3a,3b,3c…電線、100…第1構成体、110…収容部、111…第1収容部、112…第2収容部、113…第3収容部、114…突起、120…延出部、121…溝部、122,131…貫通孔、123…保護部、130…軸支持片、140,260…リブ、150,240…突出片、160…第1突起、200…第2構成体、210,401,501,601…蓋部、211…第1蓋部、211a,212a,213a,401a,501a,601a…当接領域、212…第2蓋部、213…第3蓋部、214…溝部、220…平面部、230…軸部、231…挿入部、232…第2突起、250…係止部、270…押圧部、301…第1筒状保持部、302…第2筒状保持部、303…第3筒状保持部、602…凹凸面
図1
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図7
図8
図9
図10