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特開2022-54148電子部品実装方法及びマイクロLEDディスプレイの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054148
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】電子部品実装方法及びマイクロLEDディスプレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220330BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20220330BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20220330BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20220330BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H05K13/04 B
H01L33/48
G09F9/33
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161183
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】西田 光志
【テーマコード(参考)】
5C094
5E353
5F044
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA42
5C094BA25
5C094CA19
5C094GB01
5E353BB08
5E353BC03
5E353HH61
5E353JJ13
5E353JJ19
5E353MM08
5E353QQ12
5E353QQ22
5E353QQ30
5F044KK03
5F044LL01
5F044LL09
5F044RR01
5F044RR12
5F142DA14
5F142DA23
5F142DA36
5F142EA34
5F142FA32
5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435HH18
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】電子部品の実装時の歩留りを向上し得るようにする。
【解決手段】回路を搭載した基板に電子部品を実装する電子部品実装方法であって、一方の面に予め定められた配列に従って複数の電子部品1が形成されている光透過性基板2に、紫外線照射により粘着力が低下する第1の転写部材3を貼り付ける工程と、光透過性基板2から電子部品1を剥離させるレーザリフトオフにより、第1の転写部材3の一方の面に電子部品1を転写する工程と、電子部品1が転写された第1の転写部材3に対して、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後、紫外線を第1の転写部材3に照射して、その第1の転写部材3の粘着力を低下させる工程と、粘着力を低下させた第1の転写部材3よりも粘着力が強い第2の転写部材5を用いて、粘着力の差を利用して電子部品1を第1の転写部材3から第2の転写部材5に転写する工程と、第2の転写部材5から電子部品1を基板6に実装する工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路を搭載した基板に電子部品を実装する電子部品実装方法であって、
一方の面に予め定められた配列に従って複数の電子部品が形成されている光透過性基板に、紫外線照射により粘着力が低下する第1の転写部材を貼り付ける工程と、
前記光透過性基板から電子部品を剥離させるレーザリフトオフにより、前記第1の転写部材の一方の面に前記電子部品を転写する工程と、
前記電子部品が転写された前記第1の転写部材に対して、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後、紫外線を前記第1の転写部材に照射して、該第1の転写部材の粘着力を低下させる工程と、
前記粘着力を低下させた第1の転写部材よりも粘着力が強い第2の転写部材を用いて、前記粘着力の差を利用して前記電子部品を前記第1の転写部材から前記第2の転写部材に転写する工程と、
前記第2の転写部材から前記電子部品を前記基板に実装する工程と、
を含むことを特徴とする電子部品実装方法。
【請求項2】
前記第1の転写部材の粘着力を低下させる工程では、前記電子部品が転写された前記第1の転写部材の一方の面に保護フィルムを貼り付けた後に、紫外線を前記第1の転写部材に照射することを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装方法。
【請求項3】
前記第1の転写部材の粘着力を低下させる工程では、予め設定した真空度の真空チャンバー内で、紫外線を前記第1の転写部材に照射することを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装方法。
【請求項4】
前記第1の転写部材の粘着力を低下させる工程では、窒素を充填した窒素ガスチャンバー内で、紫外線を前記第1の転写部材に照射することを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装方法。
【請求項5】
前記第2の転写部材に転写する工程では、前記第2の転写部材として平板状の粘着シートを用いて、前記第1の転写部材に前記粘着シートを貼り付けて、前記第1の転写部材を剥がすことにより、前記電子部品を前記第1の転写部材から前記粘着シートに転写することを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装方法。
【請求項6】
前記電子部品を前記基板に実装する工程では、前記粘着シートと前記基板とを位置合わせして、前記基板に前記粘着シートを貼り付けて、前記基板に前記電子部品を接着固定した後に、前記粘着シートを前記基板から剥がすことを特徴とする請求項5に記載の電子部品実装方法。
【請求項7】
前記第2の転写部材に転写する工程では、前記第2の転写部材としてローラ状の粘着ローラを用いて、該粘着ローラを回転させることにより、前記第1の転写部材上の前記電子部品と前記粘着ローラとを接触させて、前記電子部品を前記第1の転写部材から前記粘着ローラに転写することを特徴とする請求項1に記載の部品実装方法。
【請求項8】
前記電子部品を前記基板に実装する工程では、前記粘着ローラを予め定めた角度ずつ回転させると共に、前記粘着ローラと前記基板とを相対的に移動させて、前記粘着ローラが予め定めた角度で回転する毎に、前記基板上に前記電子部品を接着固定することを特徴とする請求項7に記載の部品実装方法。
【請求項9】
フルカラー表示が可能なマイクロLEDディスプレイの製造方法であって、
一方の面に予め定められた配列に従って複数のマイクロLEDが形成されている光透過性基板に、紫外線照射により粘着力が低下する第1の転写部材を貼り付ける工程と、
前記光透過性基板から前記マイクロLEDを剥離させるレーザリフトオフにより、前記第1の転写部材の一方の面に前記マイクロLEDを転写する工程と、
前記マイクロLEDが転写された前記第1の転写部材に対して、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後、紫外線を前記第1の転写部材に照射して、該第1の転写部材の粘着力を低下させる工程と、
前記粘着力を低下させた第1の転写部材よりも粘着力が強い第2の転写部材を用いて、前記粘着力の差を利用して前記マイクロLEDを前記第1の転写部材から前記第2の転写部材に転写する工程と、
前記第2の転写部材から前記マイクロLEDを、回路を搭載した基板に実装する工程と、
前記マイクロLEDが実装された基板上に、平板状の平坦化膜を形成する工程と、
前記平坦化膜が形成された基板上に、前記マイクロLEDの配列に応じて配置が定まる蛍光体セルを複数有する蛍光体セルアレイを形成する工程と、
を含むことを特徴とするマイクロLEDディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロLED(Light Emitting Diode)等の電子部品の実装技術に関し、特に、電子部品の実装時の歩留りを向上し得るようにした電子部品実装方法及びこの方法を採用したマイクロLEDディスプレイの製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロLEDからなる半導体チップを回路基板に実装する実装方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の実装方法によれば、第1の転写工程と、粘着力低減工程と、第2の転写工程と、実装工程と、を順次実行することを特徴としている。
【0003】
具体的には、第1の転写工程では、先ず、複数の半導体チップを有するキャリア基板と、第1の粘着シートとを準備する。そして、第1の転写工程では、半導体チップにレーザ光を照射することにより、半導体チップをキャリア基板から剥離させ、該半導体チップを第1の粘着シートへ転写させる。
【0004】
次に、粘着力低減工程では、半導体チップ及び第1の粘着シートを加熱することにより、第1の粘着シートの粘着力を低減させる。さらに、第2の転写工程では、第1の粘着シートを透過させて半導体チップの一方の面にレーザ光を照射することにより、半導体チップを第1の粘着シートから剥離して第2の粘着シートに転写させる。そして、実装工程では、第2の粘着シートに転写された半導体チップと回路基板とを熱圧着させることにより半導体チップを回路基板に実装する。
【0005】
ここで、上記粘着力低減工程では、詳細には、第1の粘着シートの粘着膜を所定温度に加熱することにより、粘着膜の粘着力を低減する方法を採用している。なお、特許文献1では、UV(Ultra Violet)光の照射によって粘着力が変化する粘着膜が使用されている場合には、粘着膜に向かってUV光を照射することによって粘着力を低減させる方法を実施してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019―114660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、UV光(紫外線)の照射によって粘着力が変化する粘着膜が使用された場合の具体的な内容については、上記以外に開示されていない。これに対し、紫外線照射により粘着力が低下する転写部材(例えばUV剥離用のテープ)を用いて、電子部品としてマイクロLEDの転写に関する実験を独自に実行したところ、マイクロLEDが正常に転写されないことが起こり得ることが分かった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題に対処し、紫外線照射により粘着力が低下する転写部材を採用した場合について、電子部品の実装時の歩留りを向上し得るようにした電子部品実装方法及びその電子部品実装方法を適用したマイクロLEDディスプレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、回路を搭載した基板に電子部品を実装する電子部品実装方法であって、一方の面に予め定められた配列に従って複数の電子部品が形成されている光透過性基板に、紫外線照射により粘着力が低下する第1の転写部材を貼り付ける工程と、上記光透過性基板から電子部品を剥離させるレーザリフトオフにより、上記第1の転写部材の一方の面に上記電子部品を転写する工程と、上記電子部品が転写された上記第1の転写部材に対して、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後、紫外線を上記第1の転写部材に照射して、該第1の転写部材の粘着力を低下させる工程と、上記粘着力を低下させた第1の転写部材よりも粘着力が強い第2の転写部材を用いて、上記粘着力の差を利用して上記電子部品を上記第1の転写部材から上記第2の転写部材に転写する工程と、上記第2の転写部材から上記電子部品を上記基板に実装する工程と、を含む。
【0010】
上記目的を達成するために、第2の発明は、フルカラー表示が可能なマイクロLEDディスプレイの製造方法であって、一方の面に予め定められた配列に従って複数のマイクロLEDが形成されている光透過性基板に、紫外線照射により粘着力が低下する第1の転写部材を貼り付ける工程と、上記光透過性基板から上記マイクロLEDを剥離させるレーザリフトオフにより、上記第1の転写部材の一方の面に上記マイクロLEDを転写する工程と、上記マイクロLEDが転写された上記第1の転写部材に対して、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後、紫外線を上記第1の転写部材に照射して、該第1の転写部材の粘着力を低下させる工程と、上記粘着力を低下させた第1の転写部材よりも粘着力が強い第2の転写部材を用いて、上記粘着力の差を利用して上記マイクロLEDを上記第1の転写部材から上記第2の転写部材に転写する工程と、上記第2の転写部材から上記マイクロLEDを、回路を搭載した基板に実装する工程と、上記マイクロLEDが実装された基板上に、平板状の平坦化膜を形成する工程と、上記平坦化膜が形成された基板上に、上記マイクロLEDの配列に応じて配置が定まる蛍光体セルを複数有する蛍光体セルアレイを形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る電子部品実装方法によれば、上記第1の転写部材の粘着力を低下させる工程において、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後、上記紫外線を上記第1の転写部材に照射して、該第1の転写部材の粘着力を低下させているので、酸素に対する暴露による悪影響を受けずに済み、電子部品が容易に上記第1の転写部材に転写され、電子部品の実装時の歩留りを向上させることができる。
【0012】
また、第2の発明に係るマイクロLEDディスプレイの製造方法によれば、第1の発明に係る電子部品実装方法を採用しているので、電子部品としてマイクロLEDを採用した場合、マイクロLEDの実装時の歩留りを向上させたマイクロLEDディスプレイを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による電子部品実装方法の第1実施形態の全工程を示す流れ図である。
図2】本発明による電子部品実装方法の第1実施形態の前半の工程を示す説明図である。
図3】本発明による電子部品実装方法の第1実施形態の後半の工程を示す説明図である。
図4】光透過性基板の構成を示す説明図である。
図5】第1の転写部材の構成を示す概略断面図である。
図6】第2の転写部材の構成を示す概略断面図である。
図7】基板の構成を示す概略断面図である。
図8】電子部品が実装された後の基板の平面図である。
図9】酸素に対する暴露を防ぐ処理の一例を示す説明図である。
図10】酸素に対する暴露を防ぐ処理の他の例を示す説明図である。
図11】本発明による電子部品実装方法の第2実施形態における第2の転写部材による第2の転写の工程を示す説明図である。
図12】本発明による電子部品実装方法の第2実施形態における電子部品の実装の工程を示す説明図である。
図13】本発明によるマイクロLEDディスプレイの製造方法の工程を示す流れ図である。
図14】平坦化膜の形成の工程を示す説明図である。
図15】蛍光体セルアレイの形成の工程を示す説明図である。
図16】蛍光体セルアレイの平面図である。
図17】マイクロLEDディスプレイの形成の工程を示す説明図である。
図18】マイクロLEDディスプレイの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明による電子部品実装方法の第1実施形態の全工程を示す流れ図である。図2は、本発明による電子部品実装方法の第1実施形態の前半の工程を示す説明図である。図3は、本発明による電子部品実装方法の第1実施形態の後半の工程を示す説明図である。本発明による電子部品実装方法により基板に実装する電子部品としては、例えば、半導体プロセスでサファイア基板等のウェハ上に形成される電子部品であればよく、以下、マイクロLED1を例にして説明をする。なお、前半の工程と後半の工程とは、説明の便宜上、分けたのであって、これに限定されない。
【0015】
先ず、図1に示す第1の転写部材の貼り付け(工程S1)では、図2(a)に示すとおり、一方の面(以下、単に「表面」という)に予め定められた配列に従って複数のマイクロLED1が形成されている光透過性基板2に、紫外線照射により粘着力が低下する第1の転写部材3を貼り付ける処理を実行する。光透過性基板2は、後述するレーザリフトオフに使用するレーザ光を透過させる基板であって、例えば、サファイア基板である。第1の転写部材3は、例えば、UV剥離用のテープである。
【0016】
図4は、光透過性基板2の構成を示す説明図である。図4(a)は、光透過性基板2の平面図である。但し、光透過性基板2(以下、単に「基板2」という)は、円形状のウェハがダイシングされ、その一部が取り出されたものである。図4(b)は、マイクロLED1の拡大平面図である。各々のマイクロLED1は、図4(a)に示すとおり、予め定められた配列ピッチの2次元配列により、基板2の表面に行列状に形成されている。図4(a)において、一例として、各々のマイクロLED1は、5行12列の配列で形成されている。この場合、例えば、行方向の配列ピッチの間隔はP1であり、列方向の配列ピッチの間隔はP2である。
【0017】
また、マイクロLED1は、図4(b)に示すとおり、一対の電極部1a、1b(以下、電極部1a、1bをまとめて「電極部10」ということがある)と、LED本体部1cとを備える。一対の電極部1a、1bは、例えば、外部回路からマイクロLED1へ通電を可能とする電極パッドであって、電極部1aがn側電極パッド(カソード電極)、電極部1bがp側電極パッド(アノード電極)である。
【0018】
マイクロLED1は、LED本体部1cが例えば窒化ガリウム(GaN)を主材料として製造されたものである。具体的には、マイクロLED1は、紫外光発光ダイオード(UV-LED)であっても青色光を発光するLEDであってもよい。本実施形態では、例えば、後述するマイクロLEDディスプレイの製造方法で使用されるRGB蛍光体の変換効率等を考慮して、例えばピーク波長が385nmに対応する光を発光する紫外光発光ダイオード(UV-LED)を選択してもよい。なお、図4において、マイクロLED1は、例えば、外形サイズが横(15~20μm)×縦(30~45μm)程度の範囲内で選択されたものであればよい。また、マイクロLED1の厚みは、例えば10~30μm程度の範囲内で選択されたものであればよい。
【0019】
図5は、第1の転写部材3の構成を示す概略断面図である。第1の転写部材3は、下層から基材フィルム31、粘着剤層32の順番に設けられている。さらに、第1の転写部材3の上層には繰り返し貼り付けが可能な着脱式の保護フィルム4が貼り付けられている。第1の転写部材3及び保護フィルム4としては、例えば、ELP UB-3103AC(日東電工株式会社製)が用いられている。基材フィルム31及び保護フィルム4は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されている。この基材フィルム31の厚みは約50μmである。
【0020】
粘着剤層32は、アクリル系のポリマー、オリゴマー(比較的少数のモノマーが結合した重合体)等の成分を有するものである。この粘着剤層32の厚みは約50μmである。なお、粘着剤層32には、紫外線照射により光重合を開始させる光重合開始剤も含まれている。粘着剤層32は、紫外線照射により粘着剤層32の成分が光重合を引き起こし、粘着剤層32の柔軟性が失われ、粘着力が低下することになる。
【0021】
保護フィルム4は、粘着剤層32の保護用のラミネートフィルム(「セパレータ」ともいう)であって、使用時に第1の転写部材3から剥離されるものである。この保護フィルム4の厚みは約40μmである。本実施形態では、この保護フィルム4を、図1に示す第1の転写部材の粘着力の低下(工程S3)で再利用している(詳細については、図2(d)を用いて後述する)。
【0022】
工程S1では、例えば、図2(a)に示す基板2にテープ状の第1の転写部材3を貼り付ける貼付装置(図示省略)を使用する。貼付装置は、図5に示す保護フィルム4が剥がされた後の第1の転写部材3を載置して保持する載置台と、その載置台の上方に設けられ、基板2の外周端部を支持する支持具と、その支持具を昇降させる駆動機構と、基板2の他方の面(以下、単に「裏面」という)から加圧する加圧手段とを備える。この場合、基板2の表面と、第1の転写部材3の粘着剤層32とが一定の距離を隔てて対向することになる。
【0023】
工程S1において、貼付装置は、支持具を下降させることにより、基板2の表面に形成されているマイクロLED1の電極部10(図4(b)参照)を第1の転写部材3の粘着剤層32に当接させる。そして、貼付装置は、基板2の裏面から加圧させることにより、基板2に第1の転写部材3を貼り付ける。貼り合わせ荷重は、例えば、1つのマイクロLED1に対して、1~100MPaの範囲の力のうちで選択された力を、10~300秒間のうちで選択された時間だけ加えることが好ましい。本実施形態では、貼り合わせ荷重が最適値になるように実験により、その最適値を予め求めている。貼付装置は、圧力センサの検出値をモニターして、貼り合わせ荷重が最適値になるように調整している。
【0024】
なお、基板2に第1の転写部材3を貼り付けるとは、第1の転写部材3が、マイクロLED1の電極部10側の面にも貼り付くことを意味している。
【0025】
図2(a)は、工程S1において、基板2に第1の転写部材3を貼り付けた状態を示している。図2(a)では、説明の便宜上、マイクロLED1が第1の転写部材3に貼り付いている状態を示している。本実施形態では、第1の転写部材3がマイクロLED1を介して基板2に貼り付いている箇所があっても、全体視で基板2に第1の転写部材3を貼り付けた状態としている。
【0026】
次に、図1に示す第1の転写部材による第1の転写(工程S2)では、図2(a)に示す状態で基板2からマイクロLED1を剥離させるレーザリフトオフにより、第1の転写部材3の一方の面(以下、単に「第1面」という)にマイクロLED1を転写する処理を実行する。
【0027】
レーザリフトオフは、基板2の表面に形成されたマイクロLED1に対して、基板2の裏面からパルス発振によるレーザ光Lを照射し、各々のマイクロLED1を基板2から剥離させる手段である。具体的には、レーザリフトオフでは、剥離させたい箇所の界面領域(例えば剥離層)にレーザ光Lをフォーカスして照射することによって、例えばGaNの窒素が気化する現象(アブレーション)に伴って、界面領域でマイクロLED1が基板2から剥離される。
【0028】
工程S2では、具体的には、レーザリフトオフを行なう装置(図示省略)を利用して、レーザパワー、レーザ光Lの照射領域、パルス照射に基づく照射回数等のパラメータを調節することによって、基板2からマイクロLED1を剥離させる。ここで、パラメータとしては、1Hz~100kHzのパルスレーザ(パルス幅:1psec~10nsec)、100~1000mJ/cm程度のエネルギー密度の中から最適な条件が選択される。
【0029】
工程S2において、レーザリフトオフを行なう場合、例えば、固体UV領域のYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ発振器により、第4高調波(FHG:Fourth-Harmonic Generation)である波長266nmのピコ秒パルスレーザを使用することが好ましい。
【0030】
図2(b)は、レーザリフトオフの状態を模式的に例示している。パルスレーザのレーザ光Lが、基板2の表面とマイクロLED1の底面との境界領域に照射されている。
【0031】
次に、工程S2では、レーザ照射後、基板2を持ち上げることにより、基板2が第1の転写部材3から剥離される。これにより、マイクロLED1が第1の転写部材3に転写される。
【0032】
図2(c)は、マイクロLED1が第1の転写部材3に転写された状態を例示している。この場合、マイクロLED1の電極部10(図4(b)参照)が第1の転写部材3の第1面に貼り付いているので、この状態で基板6にマイクロLED1を転写することができない。電極部10が露出していないからである。そこで、電極部10が露出するように後述する第2の転写の処理が必要となる。
【0033】
次に、第1の転写部材の粘着力の低下(工程S3)では、マイクロLED1が転写された第1の転写部材3に対して、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後、紫外線を第1の転写部材3に照射して、その第1の転写部材3の粘着力を低下させる。
【0034】
具体的には、工程S3では、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施すため、マイクロLED1が転写された後の第1の転写部材3の第1面に上記の保護フィルム4を貼り付ける処理を実行する。
【0035】
図2(d)は、第1の転写部材3の第1面に保護フィルム4を貼り付けた状態を例示している。つまり、本実施形態では、保護フィルム4を再利用している。これにより、生産コストを抑制することができる。ここで、第1の転写部材3の第1面に保護フィルム4を貼り付けるとは、マイクロLED1にも保護フィルム4が貼り付けられていることを含んでいる。図2(d)では、説明の便宜上、マイクロLED1に保護フィルム4が貼り付いている状態を示している。マイクロLED1の厚みは上述したとおり、ミクロンオーダであるので、保護フィルム4は、全体視で、第1の転写部材3にも貼り付いていることになる。
【0036】
次に、工程S3では、第1の転写部材3の粘着力を低下させるために、紫外線UVを第1の転写部材3に照射すると、粘着剤層32において光重合による紫外線硬化反応が起きる。紫外線硬化反応では、光重合開始剤の存在下、先ず、光重合開始剤が紫外線照射によりラジカル(不対電子を持つ化学種)になる。続いて、そのラジカルは、粘着剤層32の成分として重合性基を有するポリマー、オリゴマーに反応し活性化される。そして、これらのポリマー、オリゴマー同士が連鎖的に結合することにより、その粘着剤層32が硬化することになる。これにより、第1の転写部材3の粘着力は低下する。
【0037】
図2(e)は、保護フィルム4が貼り付けられた第1の転写部材3に紫外線UVを照射している状態を例示している。なお、図2(e)では、紫外線UVを第1の転写部材3の他方の面に向けて照射しているが、これに限られない。すなわち、保護フィルム4及び基材フィルム31(図5参照)は、PETで構成されているので、共に紫外線UVを透過させることができる。したがって、紫外線UVを保護フィルム4に向けて照射してもよいし、両方向から照射してもよいので、装置設計の自由度が向上する。
【0038】
工程S3では、例えば、紫外線照射装置(図示省略)を使用して、中心波長が365nmの紫外線を第1の転写部材3に照射する。最適な紫外線の照射条件は、使用するUV剥離用のテープやUVランプの種類等によって異なる。UV照射量は、積算光量として求められる値であって、積算光量(mJ/cm)=照度(mW/cm)×照射時間(sec)によって算出される。ここで、単位の換算として、1(mW・h/cm)=3600(mJ/cm)の関係を有している。本実施形態では、実験から最適な紫外線の照射条件を求め、例えば、積算光量を1000(mJ/cm)とし、照度を170(mW/cm)としている。一例として、いわゆる180度剥離試験では、粘着力は、紫外線照射により、9(N/25mm)から0.2(N/25mm)まで低下した。
【0039】
ここで、第1の転写部材3の第1面に保護フィルム4を貼り付けずに紫外線UVを照射した場合、空気中の酸素が、紫外線硬化反応を引き起こしている粘着剤層32内のラジカルを失活させる作用を及ぼすため、光重合が阻害されることになる。光重合が阻害されると粘着力の低下が抑制されるので、後述する第2の転写部材による第2の転写(工程S4)で、例えば、全てのマイクロLED1が転写されず、一部のマイクロLED1が基板2に残存することが起こる。これが、歩留りが低くなることに繋がる。本実施形態では、酸素に対する暴露を防ぐ処理として、第1の転写部材3の第1面に保護フィルム4を貼り付けることにより、粘着剤層32への酸素の侵入を遮断するので、光重合が阻害されることを防いでいる。
【0040】
なお、保護フィルム4側から紫外線UVを照射した場合、マイクロLED1が紫外線UVを遮光し、紫外線UVが粘着剤層32に照射されずに粘着力が低下しない懸念があった。しかし、実験により、マイクロLED1の外形の面積について、1辺を50μm以下にすれば、マイクロLED1の周辺に照射された紫外線UVにより、上記の紫外線硬化化学反応が進行することが見出された。
【0041】
次に、工程S3では、第1の転写部材3から保護フィルム4を剥離する処理を実行する。図2(f)は、第1の転写部材3から保護フィルム4が剥離された状態を例示している。保護フィルム4の粘着力は、紫外線照射後の第1の転写部材3の粘着力よりも低い素材を使用しているので、工程S3では、第1の転写部材3から保護フィルム4を容易に剥離することができる。以上より、図2に示す前半の工程が終了する。
【0042】
次に、後半の工程として、図1に示す第2の転写部材による第2の転写(工程S4)の処理を実行する。図3(a)、(b)は、第2の転写部材による第2の転写(工程S4)を模式的に示す説明図である。工程S4では、具体的には、図3(a)、(b)に示すとおり、紫外線照射により粘着力を低下させた第1の転写部材3よりも粘着力が強い面を有する第2の転写部材5を用いて、粘着力の差を利用してマイクロLED1を第1の転写部材3から第2の転写部材5に転写する処理を実行する。工程S4では、第2の転写部材5として平板状の粘着シート5aを用いて、第1の転写部材3に粘着シート5aを貼り付けた後、粘着力の差を利用してマイクロLED1を第1の転写部材3から粘着シート5aに転写する。これにより、工程S4では、容易にマイクロLED1を第1の転写部材3から、第2の転写部材5の一例である粘着シート5aに転写することができる。
【0043】
図6は、第2の転写部材5の概略断面図である。第2の転写部材5の一例である粘着シート5aは、基材51aと、その基材51aの両面に各々積層された粘着剤層52a、53aとを備える。さらに、粘着シート5aにおいて、粘着剤層52aには、保護フィルム4aが貼り付けられている。また、粘着剤層53aには、保護するフィルム4bが貼り付けられている。この粘着シート5aと保護フィルム4a、4bとしては、一例として、繰り返し使用可能な高耐熱粘着シート(京写株式会社製)を採用している。この粘着シート5aの粘着力は、例えば1N/25mmである。
【0044】
基材51aは、合成樹脂フィルム等のシート材料を用いることができる。合成樹脂フィルムとしては、耐熱性の観点から例えばポリイミドフィルムであることが好ましい。粘着剤層52a、53aは、シリコーン系粘着樹脂で構成されている。保護フィルム4a、4bは、粘着剤層32の保護用のラミネートフィルムであって、使用時に粘着剤層52a、53aから剥離されるものである。そのため、粘着シート5aは、保護フィルム4a、4bの何れか一方を剥がした場合には、片面粘着タイプのものとして機能し、保護フィルム4a、4bの両方を剥がすと、両面粘着タイプのものとして機能する。基材51aの膜厚は、例えば50μmであり、粘着剤層52a、53aの膜厚は、例えば75μmであり、保護フィルム4a、4bの膜厚は、数μm程度である。
【0045】
工程S4では、例えば、図3(a)に示すようにして第1の転写部材3に粘着シート5aを貼り付ける。続いて、工程S4では、粘着シート5aを持ち上げると、粘着シート5aのマイクロLED1への粘着力が、第1の転写部材3のマイクロLED1への粘着力よりも5倍程度強いため、図3(b)に示すようにして第1の転写部材3を剥離させることができる。
【0046】
次に、図1に示す電子部品の実装(工程S5)では、第2の転写部材5の一例である粘着シート5aからマイクロLED1を基板6に実装する処理を実行する。
【0047】
図7は、基板6の概略断面図である。この概略断面図は、マイクロLED1が実装される前の構成を示している。基板6は、例えば、フレキシブルプリント回路基板(FPC:Flexible Printed Circuits)であって、下層から順番に、ポリイミドフィルムのベース基板61と、TFT駆動回路62と、そのTFT駆動回路62の画素パターンの所定位置に設けられているバンプ電極(突起状の端子)63とを備える。バンプ電極63は、図4(b)に示すマイクロLED1の一対の電極部1a、1b(電極部10)に対応して、一対の電極部(図示省略)を有している。
【0048】
図7において、バンプ電極63は、一方の方向(図8に示す列方向)の画素ピッチ(バンプ電極ピッチ)としてP3の間隔としている。基板6上に規定される画素ピッチは、バンプ電極63同士の距離で定められている。マイクロLED1を基板6に転写した場合、各バンプ電極63とマイクロLED1の電極部10とは電気的に接続する。なお、バンプ電極63の周囲には、マイクロLED1を接着固定するために予め異方性導電接着剤からなる接着層64(図8参照)を形成しておく。
【0049】
図3(c)~(e)は、電子部品の実装(工程S5)を模式的に示す説明図である。工程S5では、例えば、基板貼り合わせ装置(図示省略)を使用し、粘着シート5aと基板6とを位置合わせして、基板6に粘着シート5aを貼り付けて、基板6にマイクロLED1を接着固定した後に、粘着シート5aを基板6から剥がす処理を実行する。これにより、容易にマイクロLED1の実装が行われる。その結果、基板6はマイクロLED1を実装した実装基板となる。
【0050】
基板貼り合わせ装置は、基板上にマイクロLED等のチップを実装するものである。チップ表面と基板とを電気的に接続する際,ワイヤ・ボンディングのようにワイヤによって接続するのではなく,アレイ状に並んだ突起状の端子(バンプ電極)によって接続するのに適している。
【0051】
具体的には、工程S5において、基板貼り合わせ装置等の実装装置を使用することにより、図3(c)に示すように、粘着シート5aと基板6とを位置合わせを行なう。ここで、基板6については、各バンプ電極63の位置が重要であるので、図7に示すベース基板61、TFT駆動回路62の図示を省略する(以下、同様)。この位置合わせを行なうことは、詳細には、粘着シート5aの一方の面上に貼り付けられた複数のマイクロLED1の電極部10と、基板6上でマイクロLED1を実装する位置に設けられているバンプ電極63とを各々接続するように位置決めすることを意味する。この位置決めは、一例としてアライメント用の撮像カメラを用いて、各マイクロLED1の位置と、各バンプ電極63の位置とを画像解析して行われる。
【0052】
続いて、工程S5において、図3(d)に示すように、粘着シート5aと基板6とを貼り合わせる。工程S5では、圧力センサの検出値をモニターして、貼り合わせ荷重が予め定めた最適値になるように調整している。そして、工程S5では、予めバンプ電極63の表面にSnやInの半田層を形成しておき、マイクロLED1の電極部10側には、化学的に安定な金属であるAuを形成しておく。これにより、マイクロLED1の電極部10と、基板6のバンプ電極63とは、当接後に、AuとSn又はAuとInによる合金が界面で形成される半田付けにより電気的に接続される。また、加熱により、異方性導電接着剤の作用により、マイクロLED1が基板6に機械的に接着固定される。
【0053】
さらに、工程S5において、図3(d)に示す粘着シート5aを剥離することにより、マイクロLED1が基板6に実装される(図3(e)参照)。以上より、図3に示す後半の工程が終了する。
【0054】
図8は、マイクロLED1が実装された後の基板6の平面図である。工程S5では、マイクロLED1の電極部10(図4参照)と、基板6のバンプ電極63(図7参照)とを接続しているので、図8において、マイクロLED1は光放出面が露出していることになる。各々のマイクロLED1は、接着層64により基板6に接着固定されている。なお、図8において、一例として、各々のマイクロLED1は、5行12列の配列で形成されている。また、基板6のバンプ電極63は隠れて見えないが、5行12列の配列で形成されている。基板6において、行方向の画素ピッチの間隔はP4であり、列方向の画素ピッチの間隔はP3である。
【0055】
ここで、図4(a)に示すマイクロLED1の行方向の配列ピッチ(間隔P1)と、図8に示すバンプ電極63の行方向の画素ピッチ(間隔P4)とは、一致する。また、図4(a)に示すマイクロLED1の列方向の配列ピッチ(間隔P2)と、図8に示すバンプ電極63の列方向の画素ピッチ(間隔P3)とは一致する。マイクロLED1の配列ピッチとバンプ電極63の画素ピッチとが一致することは、図4(b)に示すマイクロLED1の一対の電極部1a、1bにそれぞれ対応するバンプ電極63の一対の電極部の位置が一致することを意味する。つまり、第1実施形態では、マイクロLED1の配列ピッチとバンプ電極63の画素ピッチとを1対1の関係としている。
【0056】
以上より、本発明の電子部品実装方法の第1実施形態によれば、第1の転写部材3の粘着力を低下させる工程において、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後、紫外線を第1の転写部材3に照射して、その第1の転写部材3の粘着力を低下させているので、酸素に対する暴露による悪影響を受けずに済み、マイクロLED1等の電子部品が容易に第1の転写部材3に転写され、マイクロLED1等の電子部品の実装時の歩留りを向上させることができる。
【0057】
また、本発明の電子部品実装方法の第1実施形態によれば、比較例として、基板2と基板6とを対向させて位置合わせした後、貼り合わせて、レーザリフトオフにより基板2を剥離させると共に、マイクロLED1を基板6に実装する方式と比べて以下の点が優れている。
【0058】
第1に、比較例の方式では、サファイア基板のような基板2に反りがあると、レーザ光の焦点位置にずれが生じ、レーザリフトオフがうまくいかないマイクロLED1は基板2に残存し、基板6に実装されないことが起こり得る。これに対し、上記第1実施形態によれば、粘着シート5aと基板6とを貼り合わせるので、基板2の反りの問題を回避できる。
【0059】
第2に、比較例の方式では、基板2のマイクロLED1の配列ピッチは、基板6上に規定される画素ピッチと同じにする必要が生じる。これに対し、上記第1実施形態の場合、第1の転写部材3や粘着シート5aのようなキャリア材を使用すると、転写するマイクロLED1の配列ピッチをバンプ電極63の画素ピッチと同じにする必要がない。すなわち、上記第1実施形態の場合、基板2のマイクロLED1の配列ピッチを、バンプ電極63の画素ピッチよりも、2以上の整数倍になるように間隔を狭めていくことで精細化することができる。
【0060】
例えば、図8に示す画素ピッチの間隔P3に対して、図4(a)に示す配列ピッチの間隔P2を、2倍になるように間隔を狭めた場合、P2=P3/2であれば、配列ピッチの間隔P2が画素ピッチの間隔P3よりも2倍狭まるので、間隔P2は、間隔P3の半分(ハーフピッチ)になり、その分、集積度が上がることになる。
【0061】
図4(a)では、図面上、間隔P2を間隔P3の半分(ハーフピッチ)にした場合、これ以上、間隔を狭めることができないが、実際の基板2において、例えば、画素ピッチの間隔P3の値に応じて、配列ピッチの間隔P2を、P3/2、P3/3、P3/4というように2以上の整数倍になるように間隔を狭めていくことで精細化を図ることができる。
【0062】
詳細には、上記電子部品実装方法は、上記工程S1~S5を含み、複数枚の基板6にマイクロLED1等の電子部品を実装できるようにするため、基板6上に規定される画素ピッチに応じて、配列ピッチを画素ピッチよりも2以上の整数倍になるように間隔を狭めて形成された電子部品を一方の面に有する基板2を使用することを特徴としてもよい。この場合、工程S1を、この基板2に紫外線照射により粘着力が低下する第1の転写部材3を貼り付けるようにすることを特徴としてもよい。
【0063】
この基板2を用いた場合、工程S2を、上記画素ピッチに基づいて定められる上記電子部品の実装位置に応じて、上記基板2から剥離させる電子部品を決定し、基板2から決定された電子部品を剥離させる選択的なレーザリフトオフにより、第1の転写部材3の一方の面に電子部品を転写することを特徴としてもよい。
【0064】
これにより、上記工程S2において、電子部品として実装に使うマイクロLED1だけをリフトオフして、余ったマイクロLED1を次に実装する基板用に使用することができるので、コストダウンに繋がる。また、基板2上に形成されるマイクロLED1は可能な限り集積度を上げることができる。
【0065】
また、上記第1実施形態では、酸素に対する暴露を防ぐ処理として、マイクロLED1が転写された第1の転写部材3の第1面に着脱式の保護フィルム4を貼り付けた後に、紫外線UVを第1の転写部材3に照射するようにしたが、本発明は、これに限定されない。
【0066】
図9は、酸素に対する暴露を防ぐ処理の一例を示す説明図である。この一例では、図1に示す電子部品実装方法の工程S3を以下のように変更することを特徴とする。この一例では、予め設定した真空度の真空チャンバー7内で、紫外線UVを第1の転写部材3に照射するようにしている。図9に示す真空チャンバー7内において、例えば、酸素濃度は、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。この程度の酸素濃度になるようにすれば、図2(c)に示すような保護フィルム4を利用せずに、酸素に対する暴露を防ぐ効果が得られる。
【0067】
したがって、図9に示すような酸素に対する暴露を防ぐ処理の一例を採用した場合であっても、マイクロLED1が容易に第1の転写部材3に転写され、マイクロLED1等の電子部品の実装時の歩留りを向上させることができる。
【0068】
但し、この一例では、予め設定した真空度の真空チャンバー7内で、さらに、マイクロLED1が転写された第1の転写部材3の第1面に保護フィルム4を貼り付けた後に、紫外線UVを第1の転写部材3に照射するようにしてもよい。保護フィルム4を貼り付ける際に気泡の混入を防ぐことができ、より、酸素に対する暴露を防ぐ効果が得られる。
【0069】
図10は、酸素に対する暴露を防ぐ処理の他の例を示す説明図である。この他の例では、図1に示す電子部品実装方法の工程S3を以下のように変更することを特徴とする。この他の例では、窒素で充填された窒素ガスチャンバー8内で、紫外線UVを第1の転写部材3に照射するようにしている。図10において、窒素ガスチャンバー8内に示す各ドットが窒素(N)の気体(窒素ガス)を模式的に表している。図10に示す窒素ガスチャンバー8内は、例えば、窒素で充填されるため、酸素に対する暴露を防ぐことが可能になり、工程S3の保護フィルム4の貼り付けが不要になる。
【0070】
したがって、酸素に対する暴露を防ぐ処理の他の例を採用した場合であっても、マイクロLED1が容易に第1の転写部材3に転写され、マイクロLED1等の電子部品の実装時の歩留りを向上させることができる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、本発明による電子部品実装方法の第2実施形態について説明する。なお、電子部品実装方法の第1実施形態で説明した同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0072】
電子部品実装方法の第2実施形態では、第1実施形態の工程に示す流れ図(図1参照)において、工程S4~S5の処理が、第1実施形態と異なる。したがって、上述した工程S1~工程S3の処理については説明を省略し、図1に示す流れ図を流用して、工程S4~S5の処理について説明する。
【0073】
図11は、本発明による電子部品実装方法の第2実施形態における第2の転写部材による第2の転写の工程を示す説明図である。図11(a)は転写前、(b)は転写開始直後、(c)は転写終了後の状態を例示している。上述した工程S1~工程S3の実行後、第2の転写部材による第2の転写(工程S4)では、第2の転写部材5としてローラ状の粘着ローラ5bを用いて、その粘着ローラ5bを回転させることにより、第1の転写部材3上に転写されたマイクロLED1と粘着ローラ5bとを接触させて、マイクロLED1を第1の転写部材3から粘着ローラ5bに転写する処理を実行する。工程S4では、全体構成の図示を省略した転写用装置により実行される。この転写用装置は、上記処理だけでなく後述する工程S5の処理を行なうために上記粘着ローラ5bや3軸(XYZ)方向に載置物を移動させる機構を有しているステージ9を備えている。載置物は、工程S4で使用する第1の転写部材3や、後述する工程S5で使用する基板6である。
【0074】
具体的には、図11において、工程S4では、粘着ローラ5bと第1の転写部材3とを相対的に移動させて、粘着ローラ5bが予め定めた角度で回転する毎に、ステージ9に載置されている第1の転写部材3からマイクロLED1を粘着ローラ5bに転写することを特徴とする。
【0075】
ここで、粘着ローラ5bと第1の転写部材3とを相対的に移動させるとは、例えば、粘着ローラ5bを回転させながら、(1)第1の転写部材3をステージ9上で静止状態にさせて、粘着ローラ5bを一軸方向(図中左方向)に移動させることと、(2)粘着ローラ5bは回転駆動のみとし、ステージ9上に載置されている第1の転写部材3を一軸方向(図中右方向)に移動させることと、が含まれる。工程S4では、上記(1)を採用している。ここで、上記(1)を採用する場合には、別途、粘着ローラ5bを一軸方向に移動させる機構が転写用装置に組み込まれる。
【0076】
図11(a)に示す粘着ローラ5bは、ローラ51bと、そのローラ51bの周面に粘着シート52bが貼り付けられている。粘着ローラ5bは、回転軸53bを軸中心として回転するものである。この粘着シート52bは、上述した粘着シート5aと同じもの(高耐熱粘着シート(京写株式会社製))である。第2実施形態では、粘着シート52bを両面テープとして用いるため、粘着シート52bの一方の粘着剤層(図示省略)がローラ51bに貼り付いており、他方の粘着剤層(図示省略)にマイクロLED1が貼り付くことになる。したがって、粘着シート52bの形状はローラ状になる。
【0077】
図11(a)において、工程S4では、ステージ9に載置された第1の転写部材3上のマイクロLED1と、粘着ローラ5bとを位置合わせする。工程S4では、第1の転写部材3上のマイクロLED1を撮像カメラで確認して位置を合わせる。
【0078】
なお、一例として、図4に示す基板2を使用して各々のマイクロLED1を第1の転写部材3に転写しているため、1回の転写で1列のマイクロLED1として5個単位で粘着ローラ5bに転写されることになる。図4に示すように、基板2のマイクロLED1の配列が5行12列になっており、1列に5個のマイクロLED1が形成されているためである。
【0079】
工程S4では、図11(b)において、ステージ9を鉛直上向き方向に上昇させ、ローラ状の粘着ローラ5bのローラ面に設けられている粘着シート52bをマイクロLED1に接触させる。この状態下では、粘着シート52bのマイクロLED1への粘着力が、第1の転写部材3に貼り付いているマイクロLED1への粘着力よりも5倍程度強い。そのため、工程S4では、粘着ローラ5bを回転させると共に、粘着ローラ5bを一軸方向(図中左方向)に移動させることにより、マイクロLED1を粘着シート52bに転写することができる。
【0080】
このようにして、工程S4では、粘着ローラ5bを回転させながら、図11(b)に示すように一軸方向(図中左方向)に粘着ローラ5bを移動させていくと、図11(c)に示すように、全てのマイクロLED1を、粘着シート52bを介して粘着ローラ5bに容易に転写させることができる。なお、説明を分かりやすくするため、粘着ローラ5bには、30度の角度ピッチでマイクロLED1が一列毎に転写されている。但し、実際には、転写させたいマイクロLED1の数に応じて、角度ピッチが定まる。
【0081】
ここで、工程S4が終了すると、転写用装置は、粘着ローラ5bを図11(a)に示す初期状態の設定位置に戻すと共に、ステージ9を下降させた後、第1の転写部材3を取り除き、次の工程S5で使用する基板6をステージ9上に載置する。
【0082】
次に、電子部品の実装(工程S5)の処理を実行する。図12は、本発明による電子部品実装方法の第2実施形態における電子部品の実装の工程を示す説明図である。工程S5では、上記転写用装置を用いて、上記粘着ローラ5bを予め定めた角度ずつ回転させると共に、粘着ローラ5b(第2の転写部材5)と基板6とを相対的に移動させて、粘着ローラ5bが予め定めた角度で回転する毎に、マイクロLED1を粘着ローラ5bから基板6に転写する処理を実行する。なお、粘着ローラ5bと基板6とを相対的に移動させるとは、(1)粘着ローラ5bを回転駆動のみとし、基板6を一軸方向(図中右方向)に移動させることと、(2)基板6をステージ9上で静止状態にし、粘着ローラ5bを回転駆動及び一軸方向(図中左方向)に移動させることと、が含まれる。工程S5では、上記(1)を採用している。
【0083】
工程S5では、図12(a)に示すとおり、粘着シート52bに転写された1列のマイクロLED1と、基板6の1列のバンプ電極63との位置を合わせる。具体的には、工程S5では、基板6のバンプ電極63と、各マイクロLED1が転写された粘着シート52bとを撮像カメラで確認して位置を合わせる。図12(a)は、位置合わせをした状態を示している。すなわち、基板6の一列のバンプ電極63と、鉛直方向に対向する1列のマイクロLED1の電極部10とが位置合わせされる。なお、図12では、図8に示す接着層64については、図示を省略している。
【0084】
続いて、工程S5では、ステージ9を上昇させることにより、最初の1列のマイクロLED1の電極部10(図4(b)参照)と1列のバンプ電極63とを当接させる。この場合、上記第1実施形態と同様にして、工程S5では、予めバンプ電極63の表面にSnやInの半田層を形成しておき、マイクロLED1の電極部10側には、化学的に安定な金属であるAuを形成しておく。その後、工程S5では、マイクロLED1の電極部10とバンプ電極63とに対して、AuとSn又はAuとInによる合金が界面に形成される半田付けを1列毎に実行して電気的に接続する。また、マイクロLED1の周囲には、1列毎に接着させる局所加熱により、接着層64(図8参照)がマイクロLED1の周囲を囲むようにして、そのマイクロLED1を接着固定する。図12(b)は、最初の1列のマイクロLED1が電気的及び機械的に基板6に接続された状態を示している。
【0085】
次に、工程S5では、ステージ9の移動速度と粘着ローラ5bの回転速度とを同期させながら、一列のマイクロLED1を基板6に順次実装していく。具体的には、粘着ローラ5bには、上述した工程S4において、30度の角度ピッチでマイクロLED1が一列毎に転写されているので、粘着ローラ5bを反時計回りに30度回転させる回転速度と、ステージ9の移動速度(図中、右向き)とを同期させる。ここで、粘着ローラ5bを反時計回りに30度回転する毎に、マイクロLED1の配列ピッチが間隔P2の距離だけ移動するので、ステージ9は、基板6のバンプ電極63の画素ピッチとして間隔P3の距離だけ移動させる。これにより、マイクロLED1の配列ピッチとバンプ電極63の画素ピッチとを一致させることができる。
【0086】
この場合、ステージ9の移動速度と粘着ローラ5bの回転速度とを同期させると、最初の一列のマイクロLED1に対して、粘着ローラ5bの粘着力よりも、基板6の接着力の方が強いため、これらのマイクロLED1は、粘着ローラ5bから基板6に転写されて実装されることになる。
【0087】
そして、粘着ローラ5bが30度回転すると、次の一列のマイクロLED1とが接触し、マイクロLED1の電極部10と、基板6上のバンプ電極63とが位置決めされる。すると、工程S5では、上述したとおり、次の1列のマイクロLED1の電極部10と次の1列のバンプ電極63とを電気的及び機械的に基板6に接続する。図12(c)は、次の1列のマイクロLED1が接着固定により電気的及び機械的に基板6に接続された状態を示している。
【0088】
以後、同様の処理を繰り返していくことにより、全てのマイクロLED1を基板6に実装させることができる。図12(d)は、全てのマイクロLED1を基板6に実装させた状態を示している。なお、図12(d)は、説明の便宜上、ステージ9が一軸方向(図中右方向)に移動を完了した状態を示しており、粘着ローラ5bの位置は、図12(a)~(c)と同じ位置にあることを意味している。
【0089】
ここで、第1実施形態では、粘着シート5aと基板6とは面的に粘着され貼り合わされた後、マイクロLED1が転写されて基板6に接着固定される。これに対して、第2実施形態では、粘着ローラ5bの一列のマイクロLED1が線的に基板6に接着固定されていくので、第1実施形態のように粘着シート5aを基板6に面的に粘着させる必要がなく、さらに、第1実施形態のように粘着シート5aを基板6から剥がす処理も不要となる。
【0090】
以上より、本発明の電子部品実装方法の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、第1の転写部材3の粘着力を低下させる工程において、酸素に対する暴露を防ぐ処理を施した後に紫外線を第1の転写部材3に照射して、その第1の転写部材3の粘着力を低下させているので、酸素に対する暴露による悪影響を受けずに済み、マイクロLED1等の電子部品が容易に第1の転写部材3に転写され、マイクロLED1等の電子部品の実装時の歩留りを向上させることができる。
【0091】
[マイクロLEDディスプレイの製造方法]
次に、マイクロLEDディスプレイの製造方法について説明する。図13は、本発明によるマイクロLEDディスプレイの製造方法の工程を示す流れ図である。マイクロLEDディスプレイの製造方法では、上記電子部品実装方法を採用している点を特徴としている。つまり、本製造方法では、上述した上記電子部品実装方法を実行した後に、基板6の上層に蛍光体セル12aを行列状に配置した蛍光体セルアレイ12を形成することにより、外部からの電力の供給によりフルカラー表示が可能なマイクロLEDディスプレイ(図18参照)を製造する。
【0092】
本実施形態においては、例えば、紫外光発光ダイオード(UV-LED)等の短波長の光を発光するLEDとRGB蛍光体とを組み合わせてフルカラー表示を実現する方式を採用する。この場合、マイクロLED1の光放出面側には、紫外又は青色波長帯の光を予め定められた対応色に各々変換するRGB蛍光体を有する蛍光体セル12aが設けられる(図17参照)。
【0093】
具体的には、マイクロLEDの実装(工程S11)では、図1を用いて説明した電子部品実装方法の各工程を実行する。これにより、マイクロLED1が基板6に実装される(図8参照)。
【0094】
次に、平坦化膜の形成(工程S12)について説明する。工程S12では、後述する蛍光体セルアレイ12(図16参照)を接着して支持する平板状の平坦化膜11を基板6上に形成する。平板状の平坦化膜11は、感光性熱硬化型の接着層としての機能を有する。
【0095】
図14は、平坦化膜の形成の工程を示す説明図である。(a)は、平坦化膜11をさらに積層した基板6の平面図である。(b)は、(a)の破線で囲む領域R1の3つのマイクロLED1のA-A線断面図である。工程S12では、例えばマイクロディスペンサーを用いて、基板6上に感光性熱硬化型接着剤を高さ方向が一定になるように制御しながら塗布する。
【0096】
続いて、工程S12では、フォトリソグラフィーにより、感光性熱硬化型接着剤を露光して平坦化膜11を成膜する。図14(b)において、基板6上には、バンプ電極63とマイクロLED1の電極部10とが接続しており、その周囲を接着層64がマイクロLED1を接着固定している。そして、さらに平坦化膜11がその基板6上を平坦化している。この際、図14(b)に示すマイクロLED1の光放出面1dには、感光性熱硬化型接着剤が成膜されないようにすることが好ましい。
【0097】
次に、蛍光体セルアレイの形成(工程S13)について説明する。工程S13では、サファイア基板2a上に、マイクロLED1の配列に応じて配置が定まる蛍光体セル12aを複数有する蛍光体セルアレイ12を形成する。
【0098】
図15は、蛍光体セルの形成の工程を示す説明図である。工程S13では、リブ構造の形成及び蛍光材の充填からなる。リブ構造の形成には、図15に示すとおり、隔壁14の形成、金属膜13の形成、金属膜13のレーザ加工が含まれる。詳細には、工程S13では、サファイア基板2a上に蛍光レジストを全面に塗布して、フォトリソグラフィーにより隔壁14のパターンを形成する。
【0099】
続いて、工程S13では、混色を防止するために、隔壁14内部を金属膜13でメタルコートし、底面のみをパルスレーザを照射してアブレーションにより金属膜13を剥離する。さらに、工程S13では、赤色の蛍光色素を充填した蛍光材層12R、緑色の蛍光色素を充填した蛍光材層12G、青色の蛍光色素を充填した蛍光材層12Bを形成する。これにより、蛍光体セル12aが形成される。このようにして、サファイア基板2a上に蛍光体セル12aを行列状に複数有する蛍光体セルアレイ12が形成される。
【0100】
図16は、蛍光体セルアレイ12の平面図である。蛍光体セルアレイ12は、サファイア基板2a上に、蛍光材層12R、蛍光材層12G、蛍光材層12Bで構成される蛍光発光層を有する蛍光体セル12aをマトリクス状に配置したものである。
【0101】
次に、マイクロLEDディスプレイの形成(工程S14)について説明する。図17は、マイクロLEDディスプレイの形成の工程を示す説明図である。工程S14では、上記基板貼り合わせ装置等の実装装置を使用することにより、先ず、マイクロLED1を実装した基板6と蛍光体セルアレイ12を有する基板2aとを貼り合わせる。
【0102】
図17(a)は、マイクロLED1を実装した基板6と蛍光体セルアレイ12を有する基板2aとを貼り合わせた状態を示している。但し、図17では、説明を分かりやすくするため、蛍光体セルアレイ12の構成単位である蛍光体セル12aに着目し、図16に示すB-B線断面図のうちの1つの蛍光体セル12a及びその下層に位置する3つのマイクロLED1を含む基板6を描いている。この場合、基板6の3つのマイクロLED1と、1つの蛍光体セル12aの各蛍光材層12R,12G,12Bとが各々接続することになる。図17に示す符号については、既に、図14(b)、図15で説明したとおりである。
【0103】
工程S14では、平坦化膜11を加熱硬化し、蛍光体セルアレイ12を基板6に固着する。続いて、工程S14では、サファイア基板2aから蛍光体セルアレイ12をレーザリフトオフする。図17(b)は、工程S14により、レーザリフトオフを模式的に示している。これにより、マイクロLEDディスプレイ100が形成される。
【0104】
図18は、マイクロLEDディスプレイ100の平面図である。マイクロLEDディスプレイ100は、マイクロLED1を実装した基板2上に、蛍光体セル12aを複数有する蛍光体セルアレイ12を形成したものである。
【0105】
以上より、本実施形態では、基板6に複数のマイクロLED1を実装する電子部品実装方法を採用したマイクロLEDディスプレイの製造方法を適用することにより、マイクロLED1等の電子部品の実装時の歩留りを向上させたマイクロLEDディスプレイを製造することができる。
【0106】
これにより、本発明のマイクロLEDディスプレイの製造方法により製造されたマイクロLEDディスプレイを表示パネルとして流通させることができる。さらに、例えば表示部を有する電子機器(一例としてスマートフォン)の製造段階で、表示部として、本発明のマイクロLEDディスプレイの製造方法により製造されたマイクロLEDディスプレイが組み込まれた場合、このマイクロLEDディスプレイは、電力の供給を受けることにより映像をフルカラー表示することができる。
【0107】
上述した実施形態は、本発明が理解及び実施できる程度に示したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲を逸脱しない限り種々に変更及び修正をすることができる。
【符号の説明】
【0108】
1…マイクロLED(電子部品)
2…光透過性基板
3…第1の転写部材
4…保護フィルム
5…第2の転写部材
5a…粘着シート
5b…粘着ローラ
6…基板
7…真空チャンバー
8…窒素ガスチャンバー
11…平坦化膜
12…蛍光体セルアレイ
12a…蛍光体セル
100…マイクロLEDディスプレイ
図1
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