(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054155
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】配列装置、配列方法及び配列装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/007 20060101AFI20220330BHJP
A61C 13/36 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
A61C13/007
A61C13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161193
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 朝
(57)【要約】 (修正有)
【課題】義歯床に対して人工歯の位置を規定する配列装置及び配列方法を提供する。
【解決手段】配列装置10は、義歯床と1つ又は複数の人工歯とに装着することによって前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を配列する配列装置であって、前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部R1~R7を有する本体部11を備え、前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部12a,12b,12cが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯床と1つ又は複数の人工歯とに装着することによって前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を配列する配列装置であって、
前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、
前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている、配列装置。
【請求項2】
前記義歯床は、1つ又は複数の位置決め凸部を有し、
前記本体部の前記1つ又は複数の位置決め部は、前記1つ又は複数の位置決め凸部が挿入される1つ又は複数の位置決め凹部であり、
前記1つ又は複数の位置決め凹部の内壁が前記1つ又は複数の位置決め凸部の外壁に接触することによって、前記義歯床に配置される前記1つ又は複数の人工歯の高さ方向の位置が規定される、
請求項1に記載の配列装置。
【請求項3】
前記1つ又は複数の位置決め部は、前記1つ又は複数の人工歯のうち少なくとも中切歯の切縁を仮想咬合平面に位置決めする、
請求項1又は2に記載の配列装置。
【請求項4】
前記1つ又は複数の凹部の深さは、前記1つ又は複数の凹部に配置される前記1つ又は複数の人工歯の高さより小さい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の配列装置。
【請求項5】
前記本体部は、前記1つ又は複数の人工歯の口腔外側に配置される壁部を有し、
前記配列装置が前記義歯床と前記1つ又は複数の人工歯とに装着されているとき、前記壁部は、前記1つ又は複数の人工歯の対合歯側の先端と口腔外側の最大豊隆部との間に配置される、
請求項4に記載の配列装置。
【請求項6】
前記本体部は、U字状に形成されており、
前記複数の位置決め部は、
前記本体部の内側において前記複数の人工歯のうち中切歯が配置される中央の凹部に隣接する第1位置決め部と、
前記本体部の一端において前記複数の人工歯のうち第二大臼歯が配置される一端側の凹部に隣接する第2位置決め部と、
前記本体部の他端において前記複数の人工歯のうち第二大臼歯が配置される他端側の凹部に隣接する第3位置決め部と、
を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の配列装置。
【請求項7】
更に、
前記本体部において前記1つ又は複数の凹部が設けられる側と反対側に配置される押圧部を備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の配列装置。
【請求項8】
義歯床に1つ又は複数の人工歯を配列する配列方法であって、
前記義歯床を配置するステップ、
前記義歯床において前記1つ又は複数の人工歯が配置される1つ又は複数の配置穴に接着剤を塗布するステップ、
前記義歯床の前記1つ又は複数の配置穴に前記1つ又は複数の人工歯を配置するステップ、
前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている配列装置を、前記義歯床と前記1つ又は複数の人工歯とに装着するステップ、
前記義歯床と前記1つ又は複数の人工歯とに前記配列装置を装着した状態を維持するステップ、
前記義歯床及び前記1つ又は複数の人工歯から前記配列装置を取り外すステップ、
を含む、配列方法。
【請求項9】
前記義歯床は、1つ又は複数の位置決め凸部を有し、
前記本体部の前記1つ又は複数の位置決め部は、1つ又は複数の位置決め凹部であり、
前記配列装置を装着するステップは、前記1つ又は複数の位置決め凹部の内壁を前記1つ又は複数の位置決め凸部の外壁に接触させることによって、前記義歯床に配置される前記1つ又は複数の人工歯の高さ方向の位置を規定すること、を有する、
請求項8に記載の配列方法。
【請求項10】
前記配列装置を装着するステップは、前記本体部の1つ又は複数の位置決め部によって、前記1つ又は複数の人工歯のうち少なくとも中切歯の切縁を仮想咬合平面に位置決めすること、を有する、
請求項8又は9に記載の配列方法。
【請求項11】
前記配列装置を装着した状態を維持するステップは、前記配列装置を前記義歯床及び前記1つ又は複数の人工歯に向かって押圧すること、を有する、
請求項8~10のいずれか一項に記載の配列方法。
【請求項12】
コンピュータによって実行される配列装置の製造方法であって
患者の口腔内形状のスキャンデータを取得するステップ、
前記スキャンデータに基づいて義歯床の設計データを作成するステップ、
前記義歯床の設計データに基づいて、前記義歯床に配置される1つ又は複数の人工歯の設計データを作成するステップ、
前記義歯床の設計データ及び前記1つ又は複数の人工歯の設計データに基づいて、前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている配列装置の設計データを作成するステップ、
を含む、製造方法。
【請求項13】
前記配列装置の設計データを作成するステップは、前記1つ又は複数の人工歯の対合歯側の先端と仮想咬合平面とに基づいて、前記1つ又は複数の位置決め部の寸法を設計する、
請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記配列装置の設計データを作成するステップは、
前記義歯床の設計データに前記1つ又は複数の位置決め凸部を形成すること、
前記1つ又は複数の位置決め部として、前記1つ又は複数の位置決め凸部が挿入される1つ又は複数の位置決め凹部を前記本体部に形成すること、
を有する、
請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記配列装置の設計データを作成するステップは、
前記1つ又は複数の人工歯の設計データに基づいて前記1つ又は複数の人工歯の最大豊隆部を検出すること、
前記最大豊隆部の位置に基づいて、前記1つ又は複数の人工歯の口腔外側であって、前記1つ又は複数の人工歯の対合歯側の先端と前記最大豊隆部との間に、前記本体部の壁部を形成すること、
を有する、
請求項12~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
更に、
前記配列装置の設計データに基づいて前記配列装置を作製するステップ、
を含む、
請求項12~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記配列装置の設計データを作成するステップは、更に、前記本体部において前記1つ又は複数の凹部が設けられる側と反対側に配置される押圧部を設計すること、を有する、
請求項12~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
コンピュータに請求項12~17のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項19】
コンピュータに請求項12~17のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列装置、配列方法及び配列装置の製造方法に関する。具体的には、義歯床に1つ又は複数の人工歯を配列する配列装置、配列方法及び配列装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、義歯床と、義歯床に配列される少なくとも2本の人工歯と、を備える義歯を製作するための方法が開示されている。特許文献1に記載の方法では、少なくとも2本の人工歯を所望の相対的配列に維持するために、共通配置支持体を用いて義歯床に少なくとも2本の人工歯を配列している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、義歯床に対して人工歯を位置決めするという点で未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、義歯床に対して人工歯を位置決めすることができる配列装置、配列方法及び配列装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の配列装置は、
義歯床と1つ又は複数の人工歯とに装着することによって前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を配列する配列装置であって、
前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、
前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている。
【0007】
本発明の一態様の配列方法は、
義歯床に1つ又は複数の人工歯を配列する配列方法であって、
前記義歯床を配置するステップ、
前記義歯床において前記1つ又は複数の人工歯が配置される1つ又は複数の配置穴に接着剤を塗布するステップ、
前記義歯床の前記1つ又は複数の配置穴に前記1つ又は複数の人工歯を配置するステップ、
前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている配列装置を、前記義歯床と前記1つ又は複数の人工歯とに装着するステップ、
前記義歯床と前記1つ又は複数の人工歯とに前記配列装置を装着した状態を維持するステップ、
前記義歯床及び前記1つ又は複数の人工歯から前記配列装置を取り外すステップ、
を含む。
【0008】
本発明の一態様の配列装置の製造方法は、
コンピュータによって実行される配列装置の製造方法であって
患者の口腔内形状のスキャンデータを取得するステップ、
前記スキャンデータに基づいて義歯床の設計データを作成するステップ、
前記義歯床の設計データに基づいて、前記義歯床に配置される1つ又は複数の人工歯の設計データを作成するステップ、
前記義歯床の設計データ及び前記1つ又は複数の人工歯の設計データに基づいて、前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている配列装置の設計データを作成するステップ、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、義歯床に対して人工歯を位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施の形態1の配列装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の配列装置を別の方向から見た斜視図である。
【
図4】義歯床に複数の人工歯を配置した状態の一例を示す斜視図である。
【
図5】義歯床と複数の人工歯とに配列装置を装着した状態の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図5の配列装置を装着した状態の義歯床及び複数の人工歯を正面から見た概略図である。
【
図7】
図5の上顎中切歯の部分の概略断面図である。
【
図8】
図5の上顎第一大臼歯及び上顎第二大臼歯の部分の概略断面図である。
【
図9】本発明に係る実施の形態1の製造システムの一例を示すブロック図である。
【
図11】本発明に係る実施の形態1の配列装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明に係る実施の形態1の配列方法の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明に係る実施の形態2の配列装置の一例を示す平面図である。
【
図15】実施例1及び比較例1の上顎義歯の測定ポイントを示す図である。
【
図16】実施例2及び比較例2の下顎義歯の測定ポイントを示す図である。
【
図17】義歯床と人工歯との間のクリアランスを示す図である。
【
図18】実施例1及び比較例1の測定結果の一例を示す表である。
【
図19】実施例2及び比較例2の測定結果の一例を示す表である。
【
図20】実施例1-2及び比較例1-2の作業時間の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明に至った経緯)
失った歯及びその周囲の組織を補うために義歯が使用されている。義歯は、土台となる義歯床と、義歯床に配列される人工歯と、を有する。近年、義歯は、CAD(Computer Aided Design)/CAM(Computer Aided Manufacturing)技術を用いて切削又は3Dプリンタ造形等で作製される場合がある。義歯をCADで作製する場合、義歯床と人工歯の設計データが作成される。当該設計データは、義歯床に対して人工歯を理想的な位置に配列した状態のデータである。
【0012】
CAMで義歯を作製する場合、CADで設計された設計データに基づいて、義歯床と人工歯とが別々に作製される。例えば、義歯床は、3Dプリンタなどの光造形装置を用いて作製される。人工歯は、予め製造された既成人工歯を用いる。このため、歯科技工士は、義歯床に人工歯を接着することによって、義歯を作製している。具体的には、義歯床には、人工歯を配置するための配置穴が設けられている。歯科技工士は、義歯床の配置穴が設けられている部分に接着剤を塗布し、人工歯を配置穴に嵌め込んでいる。このように、歯科技工士は、手作業によって、義歯床に人工歯を配列し、義歯を作製している。
【0013】
しかしながら、義歯床に人工歯を接着する場合、義歯床の配置穴と人工歯との公差のばらつき、接着剤の塗布量のばらつき及び/又は歯科技工士の熟練度によって、義歯床に接着される人工歯の位置がばらつく場合がある。例えば、公差によって配置穴が設計データよりも深く形成されている場合、人工歯の高さ位置が設計データよりも低くなる。また、配置穴に塗布される接着剤の厚みのばらつきによって、人工歯の高さ位置がばらつく。このように、実際に作製した義歯の人工歯の配列状態が、CADで設計した設計データの義歯の人工歯の配列状態に比べてずれてしまう場合があり、義歯床に対して人工歯を理想的な位置に配列することができないという問題がある。義歯床に対して人工歯の配列位置がずれてしまうと審美性が低下したり、咀嚼機能が低下してしまう。また、歯科技工士は、人工歯を設計データの義歯の配列状態にするために、各人工歯の位置を測定しながら義歯床に対して人工歯を接着している。このため、作業効率を向上させることが難しいという問題がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、鋭意検討したところ、義歯床に対して人工歯の位置決めを行う配列装置の構成を見出した。具体的には、本発明者らは、位置決め部によって義歯床に対して人工歯を位置決めする配列装置の構成を見出し、以下の発明に至った。
【0015】
本発明の第1態様の配列装置は、義歯床と1つ又は複数の人工歯とに装着することによって前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を配列する配列装置であって、前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている。
【0016】
本発明の第2態様の配列装置においては、前記義歯床は、1つ又は複数の位置決め凸部を有し、前記本体部の前記1つ又は複数の位置決め部は、前記1つ又は複数の位置決め凸部が挿入される1つ又は複数の位置決め凹部であり、前記1つ又は複数の位置決め凹部の内壁が前記1つ又は複数の位置決め凸部の外壁に接触することによって、前記義歯床に配置される前記1つ又は複数の人工歯の高さ方向の位置が規定されてもよい。
【0017】
本発明の第3態様の配列装置においては、前記1つ又は複数の位置決め部は、前記1つ又は複数の人工歯のうち少なくとも中切歯の切縁を仮想咬合平面に位置決めしてもよい。
【0018】
本発明の第4態様の配列装置においては、前記1つ又は複数の凹部の深さは、前記1つ又は複数の凹部に配置される前記1つ又は複数の人工歯の高さより小さくてもよい。
【0019】
本発明の第5態様の配列装置においては、前記本体部は、前記1つ又は複数の人工歯の口腔外側に配置される壁部を有し、前記配列装置が前記義歯床と前記1つ又は複数の人工歯とに装着されているとき、前記壁部は、前記1つ又は複数の人工歯の対合歯側の先端と口腔外側の最大豊隆部との間に配置されてもよい。
【0020】
本発明の第6態様の配列装置においては、前記本体部がU字状に形成されており、前記複数の位置決め部は、前記本体部の内側において前記複数の人工歯のうち中切歯が配置される中央の凹部に隣接する第1位置決め部と、前記本体部の一端において前記複数の人工歯のうち第二大臼歯が配置される一端側の凹部に隣接する第2位置決め部と、前記本体部の他端において前記複数の人工歯のうち第二大臼歯が配置される他端側の凹部に隣接する第3位置決め部と、を有していてもよい。
【0021】
本発明の第7態様の配列装置は、更に、前記本体部において前記1つ又は複数の凹部が設けられる側と反対側に配置される押圧部を備えていてもよい。
【0022】
本発明の第8態様の配列方法においては、義歯床に1つ又は複数の人工歯を配列する配列方法であって、前記義歯床を配置するステップ、前記義歯床において前記1つ又は複数の人工歯が配置される1つ又は複数の配置穴に接着剤を塗布するステップ、前記義歯床の前記1つ又は複数の配置穴に前記1つ又は複数の人工歯を配置するステップ、前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている配列装置を、前記義歯床と前記1つ又は複数の人工歯とに装着するステップ、前記義歯床と前記1つ又は複数の人工歯とに前記配列装置を装着した状態を維持するステップ、前記義歯床及び前記1つ又は複数の人工歯から前記配列装置を取り外すステップ、を含む。
【0023】
本発明の第9態様の配列方法においては、前記義歯床は、1つ又は複数の位置決め凸部を有し、前記本体部の前記1つ又は複数の位置決め部は、1つ又は複数の位置決め凹部であり、前記配列装置を装着するステップは、前記1つ又は複数の位置決め凹部の内壁を前記1つ又は複数の位置決め凸部の外壁に接触させることによって、前記義歯床に配置される前記1つ又は複数の人工歯の高さ方向の位置を規定すること、を有していてもよい。
【0024】
本発明の第10態様の配列方法においては、前記配列装置を装着するステップは、前記本体部の1つ又は複数の位置決め部によって、前記1つ又は複数の人工歯のうち少なくとも中切歯の切縁を仮想咬合平面に位置決めすること、を有していてもよい。
【0025】
本発明の第11態様の配列方法においては、前記配列装置を装着した状態を維持するステップは、前記配列装置を前記義歯床及び前記1つ又は複数の人工歯に向かって押圧すること、を有していてもよい。
【0026】
本発明の第12態様の製造方法は、コンピュータによって実行される配列装置の製造方法であって、患者の口腔内形状のスキャンデータを取得するステップ、前記スキャンデータに基づいて義歯床の設計データを作成するステップ、前記義歯床の設計データに基づいて、前記義歯床に配置される1つ又は複数の人工歯の設計データを作成するステップ、前記義歯床の設計データ及び前記1つ又は複数の人工歯の設計データに基づいて、前記1つ又は複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部を有する本体部を備え、前記本体部には、前記義歯床に前記1つ又は複数の人工歯を位置決めする1つ又は複数の位置決め部が設けられている配列装置の設計データを作成するステップ、を含む。
【0027】
本発明の第13態様の製造方法においては、前記配列装置の設計データを作成するステップは、前記1つ又は複数の人工歯の対合歯側の先端と仮想咬合平面とに基づいて、前記1つ又は複数の位置決め部の寸法を設計してもよい。
【0028】
本発明の第14態様の製造方法においては、前記配列装置の設計データを作成するステップは、前記義歯床の設計データに前記1つ又は複数の位置決め凸部を形成すること、前記1つ又は複数の位置決め部として、前記1つ又は複数の位置決め凸部が挿入される1つ又は複数の位置決め凹部を前記本体部に形成すること、を有していてもよい。
【0029】
本発明の第15態様の製造方法においては、前記配列装置の設計データを作成するステップは、前記1つ又は複数の人工歯の設計データに基づいて前記1つ又は複数の人工歯の最大豊隆部を検出すること、前記最大豊隆部の位置に基づいて、前記1つ又は複数の人工歯の口腔外側であって、前記1つ又は複数の人工歯の対合歯側の先端と前記最大豊隆部との間に、前記本体部の壁部を形成すること、を有していてもよい。
【0030】
本発明の第16態様の製造方法においては、更に、前記配列装置の設計データに基づいて前記配列装置を作製するステップ、を含んでいてもよい。
【0031】
本発明の第17態様の製造方法においては、前記配列装置の設計データを作成するステップは、更に、前記本体部において前記1つ又は複数の凹部が設けられる側と反対側に配置される押圧部を設計すること、を有していてもよい。
【0032】
本発明の第18態様のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータに前記第12~17態様のいずれかの態様の方法を実行させるためのプログラムを記録する。
【0033】
本発明の第19態様のプログラムは、コンピュータに前記第12~17態様のいずれかの態様の方法を実行させる。
【0034】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0035】
(実施の形態1)
[配列装置]
図1は、本発明に係る実施の形態1の配列装置10の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1の配列装置10を別の方向から見た斜視図である。なお、
図1は配列装置10を上方から見た図を示し、
図2は配列装置10を下方から見た図を示す。なお、
図1及び
図2に示す配列装置10は、上顎歯列の人工歯を義歯床に配列するための装置である。ここで、「人工歯」とは有床義歯の製作に用いられる予めヒトの歯の解剖学的な形態で歯科医師または歯科技工士に提供される歯冠材料であり、数種類の形態、大きさ及び色調を持ち、患者の欠損状態・治療方針に従い適宜選択され使用されるものである。大別して陶製加工の「陶歯」と、樹脂製加工の「レジン歯」、レジン材料と無機充填剤を複合した硬質レジン歯がある。、「人工歯」とは、人工臓器である義歯を作製する際に使用される既製品の歯であり、その種類、色調、形態によって多種多様のものがあるが、大別して陶製加工の「陶歯」と、樹脂製加工の「レジン歯」がある。
【0036】
図1及び
図2に示すように、配列装置10は、本体部11を備える。本体部11は、複数の凹部R1~R7と、複数の位置決め部12a~12cと、を有する。
【0037】
本体部11は、一端E1と他端E2とを有する板状に形成されている。具体的には、本体部11は、U字状に形成されている。即ち、本体部11は、歯列弓状に形成されている。本体部11は、例えば、3Dプリンタなどの光造形装置によって作製可能な材料で形成されている。例えば、本体部11を形成する材料としては、光硬化性樹脂 ポリ乳酸 ABS ナイロンなどが挙げられる。
【0038】
複数の凹部R1~R7は、本体部11に設けられている。複数の凹部R1~R7は、本体部11の厚み方向に窪んでいる。複数の凹部R1~R7は、それぞれ、複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んでいる。ここで、人工歯の「歯冠」とは、義歯床に人工歯を配列している状態で、義歯床から露出している部分を意味する。
【0039】
複数の凹部R1~R7は、連続して形成されており、本体部11の底面側にU字状に配列されている。本体部11には、中央から左右両側に向かって順に複数の凹部R1~R7が設けられている。具体的には、本体部11には、14個の凹部R1~R7が設けられている。本体部11の左側において、中央から一端E1に向かって7個の凹部R1~R7が設けられており、本体部11の右側において、中央から他端E2に向かって7個の凹部R1~R7が設けられている。
【0040】
実施の形態1では、複数の凹部R1~R7は、上顎歯列の複数の人工歯の歯冠形状に合わせて窪んでいる。言い換えると、複数の凹部R1~R7は、それぞれ、複数の人工歯における、上顎中切歯、上顎側切歯、上顎犬歯、上顎第一小臼歯、上顎第二小臼歯、上顎第一大臼歯及び上顎第二大臼歯の歯冠形状に合わせて窪んでいる。このため、配列装置10が複数の人工歯に装着された状態において、複数の凹部R1~R7は、上顎中切歯、上顎側切歯、上顎犬歯、上顎第一小臼歯、上顎第二小臼歯、上顎第一大臼歯及び上顎第二大臼歯の歯冠部分にフィットする。
【0041】
複数の位置決め部12a~12cは、義歯床に複数の人工歯を位置決めする。複数の位置決め部12a~12cは、義歯床に配置される複数の人工歯の高さ方向および水平方向の位置を規定する。
【0042】
実施の形態1では、本体部11には、第1位置決め部12a、第2位置決め部12b及び第3位置決め部12cが設けられている。第1位置決め部12aは、本体部11の内側において複数の人工歯のうち中切歯が配置される中央の凹部R1に隣接している。第2位置決め部12bは、本体部11の一端E1において複数の人工歯のうち第二大臼歯が配置される一端E1側の凹部R7に隣接する。第3位置決め部12cは、本体部11の他端E2において複数の人工歯のうち第二大臼歯が配置される他端E2側の凹部R7に隣接する。第2位置決め部12b及び第3位置決め部12cは、複数の凹部R1~R7の配列方向に設けられている。
【0043】
第1位置決め部12aは、複数の人工歯のうち前歯用の人工歯の高さ方向の位置を規定する。前歯用の人工歯とは、中切歯、側切歯及び犬歯である。第1位置決め部12aは、中切歯の切縁及び側切歯の切縁及び犬歯の尖頭を仮想咬合平面に位置決めする。「切縁」とは、中切歯及び側切歯において、対合歯と接する歯冠部分のうち尖った部分を意味する。「尖頭」とは、犬歯において、対合歯と接する歯冠部分のうち尖った部分を意味する。「仮想咬合平面」とは、左右いずれかの鼻翼下縁と両側の耳珠上縁によって形成されるカンペル平面を利用して決定される平面をいい、咬合平面を設定する際の基準となるものである。
【0044】
第2位置決め部12b及び第3位置決め部12cは、複数の人工歯のうち臼歯用の人工歯の高さ方向の位置を規定する。臼歯用の人工歯とは、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯及び第二大臼歯である。第2位置決め部12b及び第3位置決め部12cは、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯及び第二大臼歯の咬頭頂を、それぞれ、仮想咬合平面から所定の距離離れた位置に規定する。「咬頭頂」とは、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯及び第二大臼歯において、対合歯と接する歯冠部分のうち尖った部分を意味する。
【0045】
実施の形態1では、複数の位置決め部12a~12cは、本体部11に設けられる複数の位置決め凹部12a~12cである。複数の位置決め凹部12a~12cは、円柱状に窪んだ穴である。複数の位置決め凹部12a~12cの寸法を調整することによって、複数の人工歯の高さ方向の位置を規定することができる。例えば、複数の位置決め凹部12a~12cの深さを調整することによって、複数の人工歯の高さ方向の位置を規定することができる。
【0046】
図3は、義歯床20の一例を示す斜視図である。
図3に示すように、義歯床20は、複数の人工歯が配置される土台である。義歯床20は、口腔内の形状に合わせた形状で作製される。例えば、義歯床20は、扇形状を有する。実施の形態1では、義歯床20は、上顎の口腔内の形状に合わせた形状を有する。
【0047】
義歯床20には、複数の人工歯が配置される複数の配置穴S1~S7が設けられている。義歯床20において、複数の配置穴S1~S7は、U字状に形成されている。即ち、義歯床20は、歯列弓状に設けられている。
【0048】
義歯床20には、中央から左右両側に向かって順に複数の配置穴S1~S7が設けられている。具体的には、義歯床20には、14個の配置穴S1~S7が設けられている。義歯床20において、中央から左側に向かって7個の配置穴S1~S7が設けられており、中央から右側に向かって7個の配置穴S1~S7が設けられている。
【0049】
実施の形態1では、複数の配置穴S1~S7は、上顎歯列の複数の人工歯の基底部形状に合わせて窪んでいる。言い換えると、複数の配置穴S1~S7は、それぞれ、複数の人工歯における、上顎中切歯、上顎側切歯、上顎犬歯、上顎第一小臼歯、上顎第二小臼歯、上顎第一大臼歯及び上顎第二大臼歯の基底部形状に合わせて窪んでいる。ここで「基底部」とは、人工歯において義歯床20の複数の配置穴S1~S7に配置される部分であって、義歯床20に埋まっている部分を意味する。このため、配列装置10が複数の人工歯に装着された状態において、複数の配置穴S1~S7は、上顎中切歯、上顎側切歯、上顎犬歯、上顎第一小臼歯、上顎第二小臼歯、上顎第一大臼歯及び上顎第二大臼歯の歯冠部分にフィットする。
【0050】
義歯床20は、複数の位置決め凸部21a~21cを有する。複数の位置決め凸部21a~21cは、義歯床20の厚み方向に突出する。例えば、複数の位置決め凸部21a~21cは、円柱形状を有する。複数の位置決め凸部21a~21cは、それぞれ、配列装置10の複数の位置決め凹部12a~12cに挿入される。
【0051】
実施の形態1では、義歯床20は、第1位置決め凸部21a、第2位置決め凸部21b及び第3位置決め凸部21cを有する。第1位置決め凸部21a、第2位置決め凸部21b及び第3位置決め凸部21cは、それぞれ、第1位置決め凹部12a、第2位置決め凹部12b及び第3位置決め凹部12cに挿入される。第1位置決め凸部21aは、義歯床20の内側において複数の人工歯のうち中切歯が配置される中央の配置穴S1に隣接している。第2位置決め凸部21bは、義歯床20の左側において複数の人工歯のうち第二大臼歯が配置される配置穴S7に隣接する。第3位置決め凸部21cは、義歯床20の右側において複数の人工歯のうち第二大臼歯が配置される配置穴S7に隣接する。第2位置決め凸部21b及び第3位置決め凸部21cは、複数の配置穴S1~S7の配列方向に設けられている。ここで「配列方向」とは、複数の配置穴S1~S7が配列される方向を意味する。
【0052】
図4は、義歯床20に複数の人工歯T1~T7を配置した状態の一例を示す斜視図である。なお、
図4は、複数の配置穴S1~S7に接着剤を塗布した後に複数の人工歯T1~T7を配置した状態を示す。
図4に示すように、義歯床20の複数の配置穴S1~S7には、複数の人工歯T1~T7が配置される。具体的には、義歯床20の複数の配置穴S1~S7には、それぞれ、上顎中切歯T1、上顎側切歯T2、上顎犬歯T3、上顎第一小臼歯T4、上顎第二小臼歯T5、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の基底部が配置される。
【0053】
図5は、義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに配列装置10を装着した状態の一例を示す斜視図である。
図6は、
図5の配列装置10を装着した状態の義歯床20及び複数の人工歯T1~T7を正面から見た概略図である。
図5及び
図6に示すように、義歯床20の複数の位置決め凸部21a~21cが複数の位置決め凹部12a~12cに挿入されるように、配列装置10を義歯床20と複数の人工歯T1~T7に装着する。このため、複数の位置決め凹部12a~12cの内壁が複数の位置決め凸部21a~21cの外壁に接触する。これにより、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の高さ方向の位置が規定される。
【0054】
配列装置10は、複数の人工歯T1~T7の歯冠部分を覆うように、義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に装着されている。また、配列装置10は、複数の人工歯T1~T7の全体を覆うのではなく、複数の人工歯T1~T7の歯冠上部を覆っている。これにより、複数の人工歯T1~T7の歯冠上部よりも基底部を配列装置10から露出させている。ここで「歯冠上部」とは、人工歯の対合歯側の先端である切縁、尖頭又は咬頭頂から最大豊隆部までの範囲を意味する。「最大豊隆部」とは、人工歯の水平方向の膨らみが最大となる部分を意味する。
【0055】
配列装置10の本体部11は、複数の人工歯T1~T7の口腔外側に配置される壁部11aを有する。壁部11aは、複数の人工歯T1~T7の一部を覆っている。壁部11aは、複数の人工歯T1~T7の口腔外側に連続して設けられている。
【0056】
図7は、
図5の上顎中切歯T1の部分の概略断面図である。
図5に示すように、上顎中切歯T1は、義歯床20の配置穴S1に配置される。具体的には、上顎中切歯T1の基底部が配置穴S1に配置されている。配置穴S1には、接着剤30が塗布されている。このため、上顎中切歯T1は、接着剤30の厚みだけ配置穴S1の底部から浮き上がった状態で配置されている。
【0057】
上顎中切歯T1の歯冠上部は、配列装置10の凹部R1に配置されている。凹部R1は、上顎中切歯T1の歯冠上部の形状に合わせて窪んでいるため、凹部R1の内壁と上顎中切歯T1の歯冠上部とがフィットする。このように、配列装置10が上顎中切歯T1に装着されている状態では、上顎中切歯T1の歯冠部分は、配列装置10によって覆われている。
【0058】
配列装置10の凹部R1の深さL1は、凹部R1に配置される上顎中切歯T1の高さH1より小さい。これにより、上顎中切歯T1の一部を配列装置10から露出させている。
【0059】
上顎中切歯T1の口腔外側においては、配列装置10の凹部R1の一部を形成する壁部11aが上顎中切歯T1の歯冠上部を覆っている。壁部11aは、上顎中切歯T1が口腔外側に倒れることを抑制している。壁部11aは、口腔外側において上顎中切歯T1の歯冠上部を覆っているが、歯冠上部より基底面側に位置する歯冠下部を覆っていない。
【0060】
壁部11aは、上顎中切歯T1の切縁D1と口腔外側の最大豊隆部F1との間に配置されている。具体的には、壁部11aは、上顎中切歯T1の切縁D1から下部に向かって延び、最大豊隆部F1より下部に配置されていない。
図7においては、壁部11aは、最大豊隆部F1より上方に位置している。
【0061】
このように、配列装置10が上顎中切歯T1全体を覆わず、一部を露出させることによって、接着剤30が配置穴S1から流出する逃げ道を形成することができる。このため、配列装置10によって義歯床20に対して上顎中切歯T1を位置決めする場合、配置穴S1から余分な接着剤30を配置穴S1の外側に押し出すことができる。また、人工歯の舌側には、ブロックアウトを付与することで接着剤の逃げを形成することもできる。
【0062】
配列装置10の第1位置決め凹部12a及び義歯床20の第1位置決め凹部21aは、上顎中切歯T1に隣接して設けられている。配列装置10の第1位置決め凹部12aには、義歯床20の第1位置決め凸部21aが挿入される。このため、第1位置決め凹部12aの内壁が第1位置決め凸部21aの外壁に接触することによって、義歯床20の配置穴S1に配置される上顎中切歯T1の高さ方向の位置が規定される。
【0063】
第1位置決め凹部12aは、上顎中切歯T1の切縁D1を仮想咬合平面PL1に位置決めする。具体的には、接着剤30が塗布された配置穴S1に上顎中切歯T1を配置した状態で、配列装置10を装着する。また、第1位置決め凹部12aに第1位置決め凸部21aが挿入されるように配列装置10を義歯床20及び上顎中切歯T1に装着する。このとき、第1位置決め凹部12aの内壁が第1位置決め凸部21aの外壁に接触するまで、配列装置10を義歯床20及び上顎中切歯T1に対して押し当てる。これにより、上顎中切歯T1が配置穴S1の底面に向かって押し下げられると共に、余分な接着剤30が配置穴S1から外部へ押し出される。そして、第1位置決め凹部12aの内壁が第1位置決め凸部21aの外壁に接触することで、義歯床20に対して上顎中切歯T1が位置決めされる。その結果、上顎中切歯T1の切縁D1が仮想咬合平面PL1に位置決めされる。このように位置決めすることにより、審美性を向上させることができる。また、人工歯の舌側には、ブロックアウトを付与することで接着剤の逃げを形成することもできる。
【0064】
第1位置決め凹部12aの内壁が第1位置決め凸部21aの外壁に接触する位置は、第1位置決め凹部12aの寸法によって調整することができる。具体的には、第1位置決め凹部12aの寸法は、上顎中切歯T1の切縁D1と仮想咬合平面PL1とに基づいて決定される。実施の形態1では、第1位置決め凹部12aの深さL11は、第1位置決め凸部21aの高さL21と略等しい。ここで「略」とは誤差5%以内を意味する。これにより、第1位置決め凹部12aの凹面と、第1位置決め凸部21aの凸面とが接触することによって、義歯床20の配置穴S1に配置される上顎中切歯T1の高さ方向の位置を規定することができる。
【0065】
なお、
図7に示す上顎中切歯T1の説明は、他の前歯用の人工歯についても同様である。また、凹部R1の深さL1と上顎中切歯T1の高さH1の関係及び壁部11aの説明は、臼歯用の人工歯についても同様である。
【0066】
図8は、
図5の上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の部分の概略断面図である。
図8に示すように、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7は、それぞれ、義歯床20の配置穴S6、S7に配置される。配置穴S6、S7には、接着剤30が塗布されている。このため、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7は、接着剤30の厚みだけ配置穴S6,S7の底部から浮き上がった状態で配置されている。
【0067】
上顎第一大臼歯T6の歯冠部分は、配列装置10の凹部R6に配置されている。凹部R6は、上顎第一大臼歯T6の歯冠部分の形状に合わせて窪んでいるため、凹部R6の内壁と上顎第一大臼歯T6の歯冠部分とがフィットする。上顎第二大臼歯T7の歯冠部分は、配列装置10の凹部R7に配置されている。凹部R7は、上顎第二大臼歯T7の歯冠部分の形状に合わせて窪んでいるため、凹部R7の内壁と上顎第二大臼歯T7の歯冠部分とがフィットする。このように、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の歯冠部分は、配列装置10によって覆われている。
【0068】
配列装置10の第3位置決め凹部12c及び義歯床20の第3位置決め凹部21cは、上顎第二大臼歯T7に隣接して設けられている。配列装置10の第3位置決め凹部12cには、義歯床20の第3位置決め凸部21cが挿入される。このため、第3位置決め凹部12cの内壁が第3位置決め凸部21cの外壁に接触することによって、義歯床20の配置穴S6、S7に配置される上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の高さ方向の位置が規定される。
【0069】
第3位置決め凹部12cは、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の咬頭頂D6、D7を仮想咬合平面PL1から所定の距離の位置に位置決めする。具体的には、接着剤30が塗布された配置穴S6、S7に上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7を配置した状態で、配列装置10を装着する。また、第3位置決め凹部12cに第3位置決め凸部21cが挿入されるように配列装置10を義歯床20及び上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7に装着する。このとき、第3位置決め凹部12cの内壁が第3位置決め凸部21cの外壁に接触するまで、配列装置10を義歯床20、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7に対して押し当てる。これにより、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7が配置穴S6、S7の底面に向かって押し下げられると共に、余分な接着剤30が配置穴S6、S7の外部へ押し出される。そして、第3位置決め凹部12cの内壁が第3位置決め凸部21cの外壁に接触することで、義歯床20に対して上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7が位置決めされる。その結果、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の咬頭頂D6、D7が仮想咬合平面PL1から所定の距離で位置決めされる。このように位置決めすることにより、咀嚼機能を向上させることができる。
【0070】
第3位置決め凹部12cの内壁が第3位置決め凸部21cの外壁に接触する位置は、第3位置決め凹部12cの寸法によって調整することができる。具体的には、第3位置決め凹部12cの寸法は、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の咬頭頂D6,D7と仮想咬合平面PL1とに基づいて決定される。実施の形態1では、第3位置決め凹部12cの深さL12は、第3位置決め凸部21cの高さL22より小さく設計されている。これにより、第3位置決め凹部12cの凹面と、第3位置決め凸部21cの凸面とが接触することによって、義歯床20の配置穴S6,S7に配置される上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の高さ方向の位置を規定することができる。その結果、上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の咬頭頂D6、D7を仮想咬合平面PL1から所定の距離の位置に位置決めすることができる。
【0071】
なお、
図8に示す上顎第一大臼歯T6及び上顎第二大臼歯T7の説明は、他の臼歯用の人工歯についても同様である。また、
図8に示す第3位置決め凹部12c及び第3位置決め凸部21cの説明は、第2位置決め凹部12b及び第2位置決め凸部21bについても同様である。
【0072】
[製造システム]
図9は、本発明に係る実施の形態1の製造システム50の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、製造システム50は、配列装置10を製造するためのシステムであって、スキャナ60、設計装置70及び加工装置80を備える。実施の形態1では、上顎歯列の複数の人工歯T1~T7を義歯床20に配列するための配列装置10を製造する例について説明する。
【0073】
<スキャナ>
スキャナ60は、患者の上下顎歯列の形状をスキャンする。例えば、スキャナ60は、患者の口腔内を直接スキャンすることによって、患者の上下顎歯列の形状データ、即ちスキャンデータを取得する。
【0074】
あるいは、スキャナ60は、患者の口腔内形状を再現した作業模型をスキャンすることによって、患者の上下顎歯列の形状データ、即ちスキャンデータを取得する。具体的には、患者の口腔内を印象材で印象採得し、石膏を流すことによって作業模型を作製する。次に咬合床を製作し、咬合採得する。さらに、作業模型を咬合器に装着した状態で、作業模型をスキャンする。
【0075】
スキャナ60は、例えば、歯科用3Dスキャナである。歯科用3Dスキャナとしては、例えば、光学式のスキャナである。スキャンデータは、上下顎歯列の三次元形状データである。
【0076】
スキャナ60でスキャンされた上顎歯列の形状データ、即ちスキャンデータは、設計装置70に送信される。
【0077】
<設計装置>
設計装置70は、スキャナ60から上下顎歯列のスキャンデータを取得する。設計装置70は、取得したスキャンデータに基づいて上顎歯列の義歯の設計データを作成する。具体的には、設計装置70は、スキャンデータに基づいて義歯床20の設計データを作成する。次に、設計装置70は、義歯床20の設計データに基づいて、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の設計データを作成する。
【0078】
設計装置70は、義歯床20の設計データ及び複数の人工歯T1~T7を含む義歯の設計データに基づいて、配列装置10の設計データを作成する。
【0079】
設計装置70は、例えば、CADソフトウェアを記憶したコンピュータである。
【0080】
設計装置70で設計された配列装置10の設計データは、加工装置80に送信される。例えば、設計データは、STLデータである。
【0081】
<加工装置>
加工装置80は、設計装置70で設計された設計データに基づいて配列装置10を作製する。例えば、加工装置80は、3Dプリンタ、切削装置であってもよい。
【0082】
設計装置70について詳細に説明する。
図10は、本発明に係る実施の形態1の設計装置70の一例を示すブロック図である。
図10に示すように、設計装置70は、プロセッサ71、記憶部72、入力部73及び表示部74を備える。設計装置70は、例えば、コンピュータである。
【0083】
<プロセッサ>
プロセッサ71は、例えば、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、又はコンピュータ実行可能命令の実行が可能なその他の処理ユニットである。プロセッサ71は、記憶部72に記憶された命令を実行可能である。
【0084】
<記憶部>
記憶部72は、例えば、プロセッサにより実行される命令を記憶するコンピュータ記録媒体である。記憶部72は、例えば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気記憶デバイスであってもよい。
【0085】
記憶部72は、歯科用CADのプログラムを記憶している。
【0086】
<入力部>
入力部73は、ユーザによる入力を受け付ける機器である。入力部73は、例えば、キーボード、マウス、音声入力器を含んでもよい。ユーザは、入力部73を操作することによって、義歯床20、複数の人工歯T1~T7及び配列装置10の設計を行うことができる。
【0087】
<表示部>
表示部74は、情報を表示する機器である。表示部74は、例えば、ディスプレイである。例えば、表示部74には、義歯床20、複数の人工歯T1~T7及び配列装置10を設計するための設計画面が表示される。
【0088】
設計装置70を構成する要素は、半導体素子などで実現可能な演算装置で実現することができる。これらの構成要素の機能は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。
【0089】
なお、設計装置70を構成する要素は、これらに限定されない。設計装置70は、これらの要素以外の要素を含んでいてもよい。例えば、設計装置70は、他の機器と通信する通信部を備えていてもよい。通信部は、所定の通信規格(例えばLAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、USB、HDMI(登録商標)、CAN(controller area network)、SPI(Serial Peripheral Interface))に準拠して外部機器との通信を行う回路を含む。
【0090】
[製造方法]
配列装置10の製造方法について説明する。
図11は、本発明に係る実施の形態1の製造方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図11に示す方法は、製造システム50によって実施される。
【0091】
図11に示すように、ステップST1では、患者の口腔内形状のスキャンデータを取得する。スキャンデータは、例えば、患者の口腔内形状を再現した作業模型をスキャンしたスキャンデータである。スキャナ60でスキャンされたスキャンデータは、設計装置70に送信される。ステップST1においては、設計装置70がスキャナ60からスキャンデータを取得する。
【0092】
ステップST2では、スキャンデータに基づいて義歯床20の設計データを作成する。ステップST2においては、設計装置70がスキャンデータに基づいて、複数の人工歯T1~T7が配置される複数の配置穴S1~S7が設けられた義歯床20の設計データを作成する。
【0093】
ステップST3では、義歯床20の設計データに基づいて、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の設計データを作成する。ステップST3においては、設計装置70は、義歯床20の設計データに、複数の人工歯T1~T7の設計データを配置する。複数の人工歯T1~T7の設計データは、例えば、予め作成された既成設計データである。
【0094】
設計装置70は、CAD上に義歯床20の設計データと複数の人工歯T1~T7の既成設計データを表示し、複数の人工歯T1~T7を義歯床20の複数の配置穴S1~S7に配置することによって、義歯の設計データを作成する。また、設計装置70は、複数の人工歯T1~T7の既成設計データをCAD上で修正してもよい。例えば、上下顎歯列の咬合を理想的な状態にするために、複数の人工歯T1~T7の既成設計データを患者に応じて修正してもよい。
【0095】
ステップST4では、義歯床20の設計データ及び複数の人工歯T1~T7の設計データに基づいて、配列装置10の設計データを作成する。ステップST4においては、設計装置70が義歯の設計データに基づいて配列装置10の設計データを作成する。具体的には、設計装置70は、複数の人工歯T1~T7の配列方向に沿った形状を有する配列装置10の設計データを作成する。また、設計装置70は、配列装置10において、複数の人工歯T1~T7の歯冠形状に合わせて窪んだ複数の凹部R1~R7を形成する。
【0096】
また、ステップST4では、設計装置70が配列装置10の本体部11に複数の位置決め部を作成する。具体的に説明すると、まず、設計装置70は、義歯床20の設計データに複数の位置決め凸部21a~21cを形成する。実施の形態1では、第1位置決め凸部21aは、義歯床20の中央の配置穴S1に隣接する位置に形成される。第2位置決め凸部21bは、義歯床20の左側の配置穴S7に隣接する位置に形成される。第3位置決め凸部21cは、義歯床20の右側の配置穴S7に隣接する位置に形成される。次に、設計装置70は、複数の位置決め部として、複数の位置決め凸部21a~21cが挿入される複数の位置決め凹部12a~12cを本体部11に形成する。設計装置70は、複数の人工歯T1~T7の対合歯側の先端D1、D6,D7と仮想咬合平面PL1とに基づいて、複数の位置決め凹部12a~12cの寸法L11,L21を設計する。具体的には、第1位置決め凹部12aは、配列装置10の中央側において中切歯T1が嵌まる凹部R1に隣接する位置に形成される。第2位置決め凹部12bは、配列装置10の左側において第二大臼歯T7が嵌まる凹部R7に隣接する位置に形成される。第3位置決め凹部12cは、配列装置10の右側において第二大臼歯T7が嵌まる凹部R7に隣接する位置に形成される。
【0097】
また、ステップST4では、設計装置70は、複数の人工歯T1~T7の設計データに基づいて複数の人工歯T1~T7のそれぞれにおいて最大豊隆部を検出する。設計装置70は、それぞれの最大豊隆部F1の位置に基づいて、複数の人工歯T1~T7の口腔外側であって、複数の人工歯T1~T7の対合歯側の先端と最大豊隆部との間に、本体部11の壁部11aを形成する。ここで「対合歯側の先端」とは、歯冠上部の最も対合歯に近い位置に配置される端部である。「対合歯側の先端」は、例えば、切縁、尖頭又は咬頭頂である。
【0098】
ステップST4で設計された設計データは、加工装置80に送信される。
【0099】
ステップST5では、配列装置10の設計データに基づいて配列装置10を作製する。ステップST5においては、加工装置80が配列装置10の設計データに基づいて配列装置10を作製する。
【0100】
このように、ステップST1~ST5を実施することによって、配列装置10を製造することができる。
【0101】
[配列方法]
配列装置10を用いた配列方法について説明する。
図12は、本発明に係る実施の形態1の配列方法の一例を示すフローチャートである。
【0102】
図12に示すように、ステップST11では、義歯床20を配置する。例えば、義歯床20は、作業台又は咬合器に配置される。
【0103】
ステップST12では、義歯床20において複数の人工歯T1~T7が配置される複数の配置穴S1~S7に接着剤30を塗布する。例えば、接着剤30としては、常温重合レジン(株式会社松風製のプロビナイス等)を使用することができる。
【0104】
ステップST13では、義歯床20の複数の配置穴S1~S7に複数の人工歯T1~T7を配置する。
【0105】
ステップST14では、義歯床20と複数の人工歯T1~T7に配列装置10を装着する。ステップST14では、複数の位置決め凹部12a~12cの内壁を複数の位置決め凸部21a~21cの外壁に接触させることによって、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の高さ方向の位置を規定する。
【0106】
具体的には、第1位置決め部12aの内壁を第1位置決め凸部21aの外壁に接触させることによって前歯用の人工歯T1~T3を仮想咬合平面PL1に位置決めする。第2位置決め凹部12a及び第3位置決め凹部12bの内壁を第2位置決め凸部21b及び第3位置決め凸部21cの外壁に接触させることによって臼歯用の人工歯T4~T7を仮想咬合平面PL1から所定の距離に位置決めする。
【0107】
ステップST14では、複数の位置決め凹部12a~12cの内壁を複数の位置決め凸部21a~21cの外壁に接触させるために、配列装置10を義歯床20と複数の人工歯T1~T7に押し当ててもよい。これにより、余分な接着剤30を複数の配置穴S1~S7から押し出すことができる。
【0108】
ステップST15では、義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに配列装置10を装着した状態を維持する。ステップST15では、義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに配列装置10を装着した状態を、所定の時間維持する。所定の時間は、接着剤30の硬化時間に基づいて決定される。
【0109】
ステップST15では、配列装置10を義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に向かって押圧していてもよい。このように、押圧した状態を維持することによって、複数の人工歯T1~T7の浮き上がりを抑制することができる。
【0110】
ステップST15では、義歯床20及び複数の人工歯T1~T7から配列装置10を取り外す。取り外した後、義歯床20の複数の位置決め凸部21a~21cを取り除く。これにより、義歯が完成する。
【0111】
このように、ステップST11~ST15を実施することによって、配列装置10を用いて義歯床20に複数の人工歯T1~T7を配列することができる。
【0112】
[効果]
本発明に係る実施の形態1の配列装置、配列方法及び製造方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0113】
配列装置10は、義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに装着することによって義歯床20に複数の人工歯T1~T7を配列する。配列装置10は、複数の人工歯T1~T7の歯冠形状に合わせて窪んだ1つ又は複数の凹部R1~R7を有する本体部11を備える。本体部11には、義歯床20に複数の人工歯T1~T7を位置決めする複数の位置決め部12a~12cが設けられている。
【0114】
このような構成により、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を位置決めすることができる。具体的には、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を理想的な配列状態を実現することができる。例えば、設計通りの審美性及び咀嚼機能を実現することができる。また、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を容易に配列することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0115】
義歯床20は、複数の位置決め凸部21a~21cを有する。本体部11の複数の位置決め部12a~12cは、複数の位置決め凸部21a~21cが挿入される複数の位置決め凹部12a~12cである。複数の位置決め凹部12a~12cの内壁が複数の位置決め凸部21a~21cの外壁に接触することによって、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の高さ方向の位置が規定される。
【0116】
このような構成により、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を精度高く位置決めすることができる。また、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の高さ方向の位置を規定することによって、理想的な配列状態をより実現しやすくなり、義歯の審美性及び咀嚼機能を向上させることができる。また、作業効率を更に向上させることができる。
【0117】
複数の位置決め部12a~12cは、複数の人工歯T1~T7のうち中切歯T1、側切歯T2及び犬歯T3の尖頭を仮想咬合平面PL1に位置決めする。
【0118】
このような構成により、義歯の審美性を向上させることができる。
【0119】
複数の凹部R1~R7の深さL1は、複数の凹部R1~R7に配置される複数の人工歯T1~T7の高さH1より小さい。
【0120】
このような構成により、複数の人工歯T1~T7の一部及び義歯床20を配列装置10から露出させることができる。義歯床20と複数の人工歯T1~T7とは、接着剤30によって接着される。具体的には、義歯床20において複数の人工歯T1~T7が配置される複数の配置穴S1~S7に接着剤30が塗布される。配列装置10を義歯床20と複数の人工歯T1~T7に装着したときに、義歯床20の複数の配置穴S1~S7から余分な接着剤30が、配列装置10から露出する部分から流出する。このように、複数の人工歯T1~T7の一部及び義歯床20を配列装置10から露出させることによって、余分な接着剤30の逃げ道を作ることができる。
【0121】
本体部11は、複数の人工歯T1~T7の口腔外側に配置される壁部11aを有する。配列装置10が義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに装着されているとき、壁部11aは、複数の人工歯T1~T7の対合歯側の先端(切縁、尖頭、咬頭頂)と口腔外側の最大豊隆部との間に配置される。
【0122】
このような構成により、義歯床20に対する複数の人工歯T1~T7の位置決め精度を向上させつつ、余分な接着剤30の逃げ道を作成することができる。
【0123】
前記本体部11は、U字状に形成されている。複数の位置決め部12a~12cは、第1位置決め凹部12a、第2位置決め凹部12b及び第3位置決め凹部12cを有する。第1位置決め凹部12aは、本体部11の内側において複数の人工歯T1~T7のうち中切歯T1が配置される中央の凹部R1に隣接する。第2位置決め凹部12bは、本体部11の一端E1において複数の人工歯T1~T7のうち第二大臼歯T7が配置される一端E1側の凹部R7に隣接する。第3位置決め凹部12cは、本体部11の他端E2において複数の人工歯T1~T7のうち第二大臼歯T7が配置される他端E2側の凹部R7に隣接する。
【0124】
このような構成により、義歯において審美性に影響を与える前歯用の人工歯の位置決めと、咀嚼機能に影響を与える臼歯用の人工歯の位置決めと、を精度高く行うことができる。これにより、義歯の審美性を向上させると共に、咀嚼機能の向上を実現するのに理想的な配列状態で複数の人工歯T1~T7を義歯床20に配列することができる。
【0125】
配列方法は、義歯床20に複数の人工歯T1~T7を配列する。配列方法は、配置ステップST11、塗布ステップST12、配置ステップST13、装着ステップST14、維持ステップST15及び取り外しステップST16を含む。配置ステップST11は、義歯床を配置する。塗布ステップST12は、義歯床20において複数の人工歯T1~T7が配置される複数の配置穴S1~S7に接着剤30を塗布する。装着ステップST14は、配列装置10を義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに装着する。維持ステップST15は、義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに配列装置10を装着した状態を維持する。取り外しステップST16は、義歯床20及び複数の人工歯T1~T7から配列装置10を取り外す。
【0126】
このような構成により、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を位置決めすることができる。具体的には、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を理想的な配列状態を実現することができる。例えば、設計通りの審美性及び咀嚼機能を実現することができる。また、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を容易に配列することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0127】
配列方法において、義歯床20は、複数の位置決め凸部21a~21cを有する。本体部11の複数の位置決め部12a~12cは、複数の位置決め凹部12a~12cである。装着ステップST14は、複数の位置決め凹部12a~12cの内壁を複数の位置決め凸部21a~21cの外壁に接触させることによって、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の高さ方向の位置を規定すること、を有する。
【0128】
このような構成により、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を精度高く位置決めすることができる。また、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の高さ方向の位置を規定することによって、理想的な配列状態をより実現しやすくなり、義歯の審美性及び咀嚼機能を向上させることができる。また、作業効率を更に向上させることができる。
【0129】
装着ステップST14は、本体部11の複数の位置決め部12a~12cによって、複数の人工歯T1~T7のうち中切歯T1、側切歯T2及び犬歯T3の尖頭を仮想咬合平面PL1に位置決めすること、を有する。
【0130】
このような構成により、義歯の審美性を向上させることができる。
【0131】
維持ステップST16は、配列装置10を義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に向かって押圧すること、を有する。
【0132】
このような構成により、複数の人工歯T1~T7の浮き上がりを抑制し、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を位置決めすることができる。また、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を理想的な配列状態をより実現しやすくなる。
【0133】
配列装置10の製造方法は、取得ステップST1、作成ステップST2、作成ステップST3及び作成ステップST4を含む。取得ステップST1は、患者の口腔内形状のスキャンデータを取得する。作成ステップST2は、スキャンデータに基づいて義歯床20の設計データを作成する。作成ステップST3は、義歯床20の設計データに基づいて、義歯床20に配置される複数の人工歯T1~T7の設計データを作成する。作成ステップST4は、義歯床20の設計データ及び複数の人工歯T1~T7の設計データに基づいて配列装置10の設計データを作成する。
【0134】
このような構成により、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を位置決めすることができる配列装置10を製造することができる。具体的には、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を理想的な配列状態を実現することができる配列装置10を製造することができる。
【0135】
配列装置10の設計データを作成するステップST4は、複数の人工歯T1~T7の対合歯側の先端と仮想咬合平面PL1とに基づいて、複数の位置決め部12a~12cの寸法L11,L21を設計する。
【0136】
このような構成により、複数の人工歯T1~T7の位置決め精度を更に向上させた配列装置10を製造することができる。
【0137】
配列装置10の設計データを作成するステップST4は、義歯床20の設計データに複数の位置決め凸部21a~21cを形成すること、複数の位置決め部として、複数の位置決め凸部21a~21cが挿入される1つ又は複数の位置決め凹部12a~12cを本体部11に形成すること、を有する。
【0138】
このような構成により、複数の人工歯T1~T7の位置決め精度を更に向上させた配列装置10を製造することができる。
【0139】
配列装置10の設計データを作成するステップST4は、複数の人工歯T1~T7の設計データに基づいて複数の人工歯T1~T7の最大豊隆部を検出することを有する。また、配列装置10の設計データを作成するステップST4は、最大豊隆部の位置に基づいて、複数の人工歯T1~T7の口腔外側であって、複数の人工歯T1~T7の対合歯側の先端と前記最大豊隆部との間に、本体部11の壁部11aを形成すること、を有する。
【0140】
このような構成により、装着したときに余分な接着剤30の逃げ道を作成することができる配列装置10を製造することができる。
【0141】
なお、実施の形態1では、配列装置10が上顎歯列の人工歯T1~T7を配列する例について説明したが、これに限定されない。配列装置10は下顎歯列の人工歯を配列してもよい。
【0142】
実施の形態1では、配列装置10が複数の人工歯T1~T7を義歯床20に配列する例について説明したが、これに限定しない。例えば、配列装置10は、1つ又は複数の人工歯を配列すればよい。
【0143】
実施の形態1では、配列装置10が複数の位置決め部12a~12cを有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、配列装置10は1つ又は複数の位置決め部を有していればよい。
【0144】
実施の形態1では、複数の位置決め部12a~12cが複数の位置決め凹部12a~12cである例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の位置決め部12a~12cは、複数の位置決め凸部であってもよい。この場合、義歯床20には、複数の位置決め凸部21a~21cの代わりに複数の位置決め凹部が設けられてもよい。
【0145】
実施の形態1では、配列装置10の本体部11に複数の凹部R1~R7が設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、配列装置10の本体部11には、1つ又は複数の凹部R1~R7が設けられていればよい。
【0146】
実施の形態1では、義歯床20に複数の配置穴S1~S7が設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、義歯床20には、1つ又は複数の配置穴が設けられていればよい。義歯床20は、総義歯床に限定されず、部分義歯床であってもよい。
【0147】
実施の形態1では、義歯床20が複数の位置決め凸部21a~21cを有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、義歯床20は1つ又は複数の位置決め凸部を有していればよい。
【0148】
実施の形態1では、第1位置決め部12aによって、前歯用の人工歯である中切歯T1の切縁D1、側切歯T2の切縁及び犬歯T3の尖頭を仮想咬合平面PL1に位置決めする例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1位置決め部12aによって、少なくとも中切歯T1の切縁D1を仮想咬合平面PL1に位置決めすればよい。
【0149】
実施の形態1では、第2位置決め部12b及び第3位置決め部12cによって、臼歯用の人工歯である第一小臼歯T4、第二小臼歯T5、第一大臼歯T6及び第二大臼歯T7の咬頭頂を仮想咬合平面PL1から所定の距離に位置決めする例について説明したが、これに限定されない。例えば、第2位置決め部12b及び第3位置決め部12cによって、少なくとも第二大臼歯T7の咬頭頂D7を仮想咬合平面PL1から所定の距離に位置決めすればよい。
【0150】
実施の形態1では、配列装置1の製造方法が、ステップST1~ST5を含む例について説明したが、これに限定されない。製造方法においては、ステップST1~ST5は、減少、分割、及び統合してもよい。あるいは、製造方法は、追加のステップを含んでいてもよい。
【0151】
実施の形態1では、製造方法が製造システムによって実施される例について説明したが、これに限定されない。製造方法は、コンピュータによって実行されていればよい。
【0152】
実施の形態1では、配列方法が、ステップST11~ST16を含む例について説明したが、これに限定されない。製造方法においては、ステップST11~ST16は、減少、分割、及び統合してもよい。あるいは、製造方法は、追加のステップを含んでいてもよい。
【0153】
配列方法においては、前歯用の人工歯と、臼歯用の人工歯とを別々に配列してもよい。例えば、ステップST12~ST16を複数回実施することによって、前歯用の人工歯と、臼歯用の人工歯を順に配列してもよい。例えば、配列方法は、3回に分けて複数の人工歯T1~T7を配列してもよい。この場合、1回目の配列においては、義歯床20の左側の第一小臼歯T4、第二小臼歯T5、第一大臼歯T6及び第二大臼歯T7を配列してもよい。2回目の配列においては、義歯床20の左右両側の中切歯T1、側切歯T2及び犬歯T3を配列してもよい。3回目の配列においては、義歯床20の右側の第一小臼歯T4、第二小臼歯T5、第一大臼歯T6及び第二大臼歯T7を配列してもよい。
【0154】
実施の形態1では、配列装置10、配列方法及び製造方法を例として説明したが、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体にも適用可能である。例えば、プログラムは、コンピュータに上述した製造方法を実行させてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータに上述した製造方法を実行させるためのプログラムを記憶していてもよい。
【0155】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る配列装置、配列方法及び製造方法について説明する。なお、実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0156】
実施の形態2の配列装置の一例について、
図13及び
図14を用いて説明する。
図13は、本発明に係る実施の形態2の配列装置10Aの一例を示す平面図である。
図14は、
図13の配列装置10Aの底面図である。
【0157】
実施の形態2では、押圧部13を備える点で、実施の形態1と異なる。配列装置10Aにおいて、その他の構成は実施の形態1の配列装置10の構成と同様である。
【0158】
図13及び
図14に示すように、配列装置10Aは、押圧部13をさらに備える。
【0159】
押圧部13は、本体部11において複数の凹部R1~R7が設けられる側と反対側に配置される。押圧部13は、フラット面を有する。押圧部13は、例えば、板状に形成されている。押圧部13は、本体部11の上部全体に形成されている。
【0160】
例えば、押圧部13は、3Dプリンタ又は切削装置などの加工装置によって作製される。押圧部13は、配列装置10Aの本体部11と一体で形成されてもよい。押圧部13は、本体部11とは別に形成され、接着剤によって接着されてもよい。あるいは、押圧部13は、本体部11と勘合することによって取り付けられてもよい。
【0161】
実施の形態2において、配列方法において、義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに配列装置10Aを装着した状態を維持するステップST15は、押圧部13を押圧することによって、配列装置10Aを義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に向かって押圧すること、を有する。
【0162】
実施の形態2において、配列装置10Aの製造方法において、配列装置10Aの設計データを作成するステップST4は、本体部11において複数の凹部R1~R7が設けられる側と反対側に配置される押圧部13を設計すること、を有する。
【0163】
[効果]
本発明に係る実施の形態2の配列装置、配列方法及び製造方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0164】
配列装置10Aは、本体部11において複数の凹部R1~R7が設けられる側と反対側に配置される押圧部13を備える。このような構成により、押圧部13を押圧することによって配列装置10Aに均等に力を加えることができる。これにより、配列装置10Aを義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に装着しやすくなる。また、押圧部13によって、配列装置10Aを義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に対して押圧しやすくなる。
【0165】
配列方法において、義歯床20と複数の人工歯T1~T7とに配列装置10Aを装着した状態を維持するステップST15は、押圧部13を押圧することによって、配列装置10Aを義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に向かって押圧すること、を有する。これにより、配列装置10Aを義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に押し当てた状態を維持することができる。その結果、接着剤30が硬化するまで、義歯床20に対して複数の人工歯T1~T7を固定し、配列状態を維持することができる。
【0166】
配列装置10Aの製造方法において、配列装置10Aの設計データを作成するステップST4は、本体部11において複数の凹部R1~R7が設けられる側と反対側に配置される押圧部13を設計すること、を有する。このような構成により、配列装置10Aを義歯床20及び複数の人工歯T1~T7に対して押圧しやすくなる押圧部13を備える配列装置10Aを作製することができる。
【0167】
なお、実施の形態2では、押圧部13が本体部11の上面全体に形成されている例について説明したが、これに限定されない。押圧部13は、本体部11の上面の少なくとも一部に形成されていればよい。また、配列装置10Aは、1つ又は複数の押圧部13を備えていてもよい。
【実施例0168】
実施例1-2及び比較例1-2について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例1-2により制限されない。
【0169】
実施例1においては、本発明の実施の形態1の配列装置10を用いて上顎の義歯を作製した。実施例2においては、本発明の実施の形態1の配列装置10を用いて下顎の義歯を作製した。なお、実施例1-2においては、3Dプリンタで義歯床20を造形し、複数の人工歯として既成人工歯(株式会社松風製のベラシアSA)を用いた。接着剤30としては、株式会社松風製のプロビナイスを用いた。
【0170】
実施例1-2においては、義歯の設計データを作成する際に、義歯床20と複数の人工歯との間にクリアランスを設けた。
図15は、義歯床20と上顎中切歯T1との間のクリアランスCL1を示す図である。
図15に示すように、義歯床20と上顎中切歯T1との間に、接着剤30を塗布する分の厚みを確保するために、クリアランスCL1を設けた。クリアランスCL1は、0.1mmとした。なお、クリアランスCL1はすべての人工歯と義歯床20との間に設けた。
【0171】
実施例1-2では、配列装置10を用いて、複数の人工歯を3回に分けて配列した。具体的には、1回目の配列において、義歯床20の左側の第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯及び第二大臼歯を配列した。2回目の配列において、義歯床20の左右両側の中切歯、側切歯及び犬歯を配列した。3回目の配列において、義歯床20の右側の第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯及び第二大臼歯を配列した。
【0172】
比較例1においては、歯科技工士がフリーハンドで上顎の義歯を作製した。比較例2においては、歯科技工士がフリーハンドで下顎の義歯を作製した。比較例1-2においては、配列装置10を用いずに、歯科技工士がフリーハンドで複数の人工歯を1本ずつ義歯床20に配列した。比較例1-2においては、その他の条件は実施例1-2と同じである。
【0173】
実施例1-2及び比較例1-2においては、設計データに対する作製した義歯の表面偏差を測定した。表面偏差は、評価用ソフトウェアとして、GOM社製のGOM Inspect 2018を使用した。
【0174】
図16は、実施例1及び比較例1の上顎義歯の測定ポイントを示す図である。
図17は、実施例2及び比較例2の下顎義歯の測定ポイントを示す図である。
図16及び
図17に示すように、実施例1及び比較例1においては、上顎中切歯T1の切縁中央部、上顎側切歯T2の切縁中央部及び上顎犬歯T3の尖頭部における表面偏差を測定した。実施例2及び比較例2においては、下顎中切歯T8の切縁中央部、下顎側切歯T9の切縁中央部及び下顎犬歯T10の尖頭部における表面偏差を測定した。
【0175】
図18は、実施例1及び比較例1の測定結果の一例を示す表である。
図19は、実施例2及び比較例2の測定結果の一例を示す表である。
図18及び
図19に示すように、実施例1-2においては、比較例1-2と比べて、表面偏差が小さくなっている。このように、実施例1-2においては、設計データとのずれを抑制することができている。
【0176】
図20は、実施例1-2及び比較例1-2の作業時間の一例を示す表である。
図20に示すように、実施例1-2の作業時間は、比較例1-2の作業時間と比べて、短くなっている。このように、実施例1-2においては、作業時間を短くすることができ、作業効率を向上できている。
【0177】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
本発明に係る配列装置及び配列方法によれば、義歯床に対して人工歯を容易かつ効率的に位置決めすることができる。このため、歯科領域における歯科補綴装置の品質向上及び均一化に有用である。