IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高橋 康一の特許一覧

<>
  • 特開-検査方法 図1
  • 特開-検査方法 図2
  • 特開-検査方法 図3
  • 特開-検査方法 図4
  • 特開-検査方法 図5
  • 特開-検査方法 図6
  • 特開-検査方法 図7
  • 特開-検査方法 図8
  • 特開-検査方法 図9
  • 特開-検査方法 図10
  • 特開-検査方法 図11
  • 特開-検査方法 図12
  • 特開-検査方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054178
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
G01N21/88 K
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161226
(22)【出願日】2020-09-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】599104587
【氏名又は名称】高橋 康一
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康一
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051AC15
2G051BA05
2G051CA04
2G051CB10
2G051GE01
(57)【要約】
【課題】作業者が構造物の検査対象領域付近まで直接的に行かなくても、検査対象領域に生じる異変を高精度に検出し得る技術を提供する。
【解決手段】検査システム1では、締結構造10において少なくとも締結体110と被締結体190とに挟まれる領域の外側に発光層24が設けられる。そして、締結体110に固定され且つ発光層を覆うように被覆層22が設けられる。そして、飛行体30の飛行により撮像部45の撮像範囲内に被覆層22が位置する位置関係となっている場合に、照射部44が被覆層22に対して励起光を照射しつつ撮像部45が被覆層22を撮像する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記構造物の検査対象領域に前記発光層を設けた後、前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含む検査方法。
【請求項2】
被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に前記発光層を設けた後、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含む検査方法。
【請求項3】
更に、検出部が、前記撮像部の撮像によって得られる撮像画像を解析し、当該撮像画像から前記発光層の発光を示す画像を検出する第4工程を含む
請求項1又は請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記発光層は、前記照射部から前記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光し、
前記撮像部は、特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し、
前記特定波長帯に前記所定波長が含まれる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項5】
構造物を検査する検査システムであって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を備え、
前記発光層は、前記構造物の検査対象領域を覆うように設けられ、
前記被覆層は、前記発光層を覆うように設けられ、
前記移動体が飛行又は航行した状態で、前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射しつつ前記撮像部が前記被覆層を撮像する
検査システム。
【請求項6】
被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査システムであって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を備え、
前記発光層は、前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に設けられ、
前記被覆層は、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように設けられ、
前記移動体が飛行又は航行した状態で、前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射しつつ前記撮像部が前記被覆層を撮像する
検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査方法及び検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
締結体において生じる緩み等の異常を検査する技術として、特許文献1のような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、被締結部体を締結する締結体の締結の緩みを検出する緩み検出システムが開示されている。特許文献1で開示される緩み検出具は、第1部材と第2部材との相対的な位置が合わせられた初期状態から、第2部材が第1部材に対して回転すると、検出用領域部の遮蔽部に遮蔽されない露出部分の面積が増加するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-87592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、ボルトの緩みに起因して第2部材が第1部材に対して回転すると、露出部分の面積が増加するため、遮蔽部近傍を撮像部によって撮像し、撮像画像を解析すれば、露出部分の面積を計測することができる。そして、この露出部分の面積が基準を超えているか否かを判定すれば、締結体の緩みが生じているか否かを判定することができる。
【0006】
しかし、特許文献1の技術は、ボルト近傍の領域を特定の方向から高精度に撮像しなければボルトの緩みを検出しにくい技術である。この技術を採用する場合、飛行体のように揺れが生じやすい移動体からの撮像では、露出部分を正しい向きで撮像した静止画像を取得することすら難しく、仮に露出部分を含んだ静止画像を撮像できたとしても不鮮明な画像である場合には、露出部分の面積を正確に評価することが困難である。また、このような問題は、締結体の緩みを検査する場面だけでなく、移動体によって構造物の亀裂等を検査する他の場面でも同様に懸念される。
【0007】
そこで、本開示は、作業者が構造物の検査対象領域付近まで直接的に行かなくても、検査対象領域に生じる異変を高精度に検出することを容易化し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一つである検査方法は、
構造物を検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記構造物の検査対象領域に前記発光層を設けた後、前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含む。
【0009】
本開示の一つである検査方法は、
被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に前記発光層を設けた後、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含む。
【0010】
本開示の一つである検査システムは、
構造物を検査する検査システムであって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を備え、
前記発光層は、前記構造物の検査対象領域を覆うように設けられ、
前記被覆層は、前記発光層を覆うように設けられ、
前記移動体が飛行又は航行した状態で、前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射しつつ前記撮像部が前記被覆層を撮像する。
【0011】
本開示の一つである検査システムは、
被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査システムであって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を備え、
前記発光層は、前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に設けられ、
前記被覆層は、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように設けられ、
前記移動体が飛行又は航行した状態で、前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射しつつ前記撮像部が前記被覆層を撮像する。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る技術は、作業者が構造物の検査対象領域付近まで直接的に行かなくても、検査対象領域に生じる異変を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態の検査システムを説明する説明図であり、移動体の一例として空中を飛行し得る飛行体を用いた例を示す説明図である。
図2図2は、第1実施形態の検査システムの電気的構成等を説明する説明図である。
図3図3は、第1実施形態の検査システムにおける検査対象の締結体付近の断面図であり、締結体に緩みが生じていない場合の締結構造を説明する説明図である。
図4図4は、第1実施形態の検査システムにおいて、締結体に緩みが生じている場合の締結構造を説明する説明図である。
図5図5は、第1実施形態の検査システムにおいて、締結体に緩みが生じている場合の検査時の様子を概念的に説明する説明図である。
図6図6は、締結体に緩みが生じていない場合に当該締結体付近を撮像した撮像画像を概念的に説明する説明図である。
図7図7は、締結体に緩みが生じている場合に当該締結体付近を撮像した撮像画像を概念的に説明する説明図である。
図8図8は、撮像部の撮像によって得られる撮像画像に対して発光部の領域を強調する画像処理を施した画像を例示する説明図である。
図9図9は、第2実施形態の検査システムにおける検査対象の締結体付近の断面図であり、締結体に緩みが生じていない場合の締結構造を説明する説明図である。
図10図10は、第3実施形態の検査システムにおける検査対象の締結体付近の断面図であり、締結体に緩みが生じていない場合の締結構造を説明する説明図である。
図11図11は、第4実施形態の検査システムを説明する説明図であり、移動体の一例として空中を飛行し得る飛行体を用いた例を示す説明図である。
図12図12は、第4実施形態の検査システムによる検査の対象である検査対象領域付近の断面構造を概略的に示す断面概略図であり、被覆層に亀裂が発生していない状態を示す図である。
図13図13は、第4実施形態の検査システムによる検査の対象である検査対象領域付近の断面構造を概略的に示す断面概略図であり、被覆層に亀裂が発生している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔10〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わされてもよい。
【0015】
〔1〕構造物を検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記構造物の検査対象領域に前記発光層を設けた後、前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含む検査方法。
【0016】
上記の〔1〕の検査方法は、移動体が移動し得る場所であれば、作業者の移動や作業に負担や困難が伴う場所(例えば、高所など)であっても、容易に検査場所に到達しやすく、検査負担を軽減することができる。しかも、この検査方法は、被覆層に覆われた検査対象領域に亀裂等の異変が生じている場合、被覆層において「励起光の通過を許容する領域」(亀裂等)が生じる可能性が高くなる。そして、このように「励起光の通過を許容する領域」が生じている場合に被覆層に対して励起光が照射されつつ被覆層の撮像が行われれば、「励起光が発光層まで到達して発光層が発光した状態」が撮像される可能性が高い。ゆえに、上記の検査方法は、構造物の検査対象領域に亀裂等の異変が発生している場合に、この異変を高精度に示す撮像画像を容易に得ることができる。
【0017】
例えば、水中などの暗所での検査、視界が悪く直接的に視認する場合や動画などを撮像する場合に揺らいで見える状況が生じやすい場所での検査、航行する移動体が波などによって揺れてしまうことにより静止画像が撮像できないような状況での検査などにおいても、亀裂等の異変を励起光により発光させることで、容易に検出することができる。
【0018】
〔2〕被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に前記発光層を設けた後、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含む締結体の検査方法。
【0019】
上記の〔2〕の検査方法は、移動体が移動し得る場所であれば、作業者の移動や作業に負担や困難が伴う場所(例えば、高所など)であっても、容易に検査場所に到達しやすく、検査負担を軽減することができる。しかも、この検査方法は、締結体に緩みが生じている場合、締結体に固定された被覆層において「励起光の通過を許容する領域」(亀裂等)が生じる可能性が高くなる。そして、このように「励起光の通過を許容する領域」が生じている場合に被覆層に対して励起光が照射されつつ被覆層の撮像が行われれば、「励起光が発光層まで到達して発光層が発光した状態」が撮像される可能性が高い。ゆえに、上記の検査方法は、締結体の緩みが発生している場合に、緩みの発生を高精度に示す撮像画像を容易に得ることができる。
【0020】
例えば、上記の検査方法は、締結体の緩みが生じている場合、画像内に発光状態が映り込んでいれば緩みを確認できる可能性が高いため、移動体が風などの影響を受けて多少揺れても検査が実行できる可能性が高く、撮像方向の制限も少なくて済む。例えば、「合マーク」を撮像して確認する方法を想定した場合、このような方法では、撮像方向が制限されやすく、移動体が風などによって煽られて静止状態を維持することができない場合の撮像では検査不能となる可能性が高い。特に、移動体から「合マーク」の撮像を行う場合、「合マーク」の状態を正確に判定できるような鮮明な画像を得るためには、移動体を安定的に静止させた状態で「合マーク」近傍を撮像しなければならない。しかし、移動体は横風などの影響を受けやすいため、移動体を確実に静止させた状態で「合マーク」付近を鮮明に撮像することは困難である。これに対し、上記の検査方法では、このような問題が生じにくい。一方、別の比較例として、上述の特許文献1のような方法を想定した場合、この方法も、撮像方向が制限されやすいという問題がある。この特許文献1の方法は、締結体において緩みが発生すると検出用領域部の露出面積が増加するという特徴を有するが、この方法では、露出面積が増加したことを特定可能な画像を撮像できなければ、緩みを検出することができない。そのためには、締結体付近を決められた向き(例えば締結体の設置面に対して垂直に近い方向)に撮像しなければならず、撮像方向の制限が大きい。しかも、特許文献1の方法は、撮像画像において検出用領域部の画像とその他の部分の画像が区別できなければ締結体の緩みを検出できない方法であるが、検出用領域部は、蛍光色でもなく、発光する特徴も有していないため、例えば、撮像時に何らかの原因(例えば、照明が暗い等の原因)により締結体付近が暗い環境であることに起因して、撮像画像において検出用領域部とその他の部分(遮蔽部等)とが明確に区別できない場合や、錆の発生によって検出用領域部とその他の部分(遮蔽部等)が同系色になっている場合には、撮像画像において検出用領域部を正確に特定できなくなる。このような場合には、締結体において緩みが発生していても、緩みの発生を検出することができない。これに対し、上記の検査方法では、このような問題が生じにくい。
【0021】
〔3〕更に、検出部が、前記撮像部の撮像によって得られる撮像画像を解析し、当該撮像画像から前記発光層の発光を示す画像を検出する第4工程を含む〔1〕又は〔2〕に記載の検査方法。
【0022】
上記の〔3〕の検査方法では、検出部が撮像画像を解析して「発光層の発光を示す画像」を検出することができるため、検査対象に異変が発生しているか否かを、労力(例えば目視確認の労力等)を抑えてより正確に検出することができる。
【0023】
〔4〕前記発光層は、前記照射部から前記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光し、前記撮像部は、特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し、前記特定波長帯に前記所定波長が含まれる〔1〕から〔3〕のいずれか一つに記載の検査方法。
【0024】
上記の〔4〕の検査方法は、検査対象に対して励起光以外の外乱光(例えば太陽光)の影響が生じる環境下において、外乱光の影響を抑えつつ特定波長帯の発光部位を選択的に撮像することができる。従って、上記外乱光の状況下であっても発光層が励起光によって発光する場合には、この発光部位がより明瞭に撮像されやすい。
【0025】
〔5〕直射日光下において、前記撮像部は、前記特定波長帯の発光部位を選択的に撮像する〔4〕に記載の検査方法。
【0026】
上記の〔5〕の検査方法は、直射日光下で検査を行う場合において発光層が励起光によって発光する場合に、直射日光の影響を抑えて発光部位をより明瞭に撮像しやすい。
【0027】
〔6〕前記移動体は、外部装置と通信を行う通信部を有し、前記通信部は、前記撮像部が撮像した画像を前記外部装置に送信する〔1〕から〔5〕のいずれか一つに記載の検査方法。
【0028】
上記の〔6〕の検査方法は、撮像部が撮像した画像を移動体と外部装置との通信によって外部装置へ送信し、外部装置において画像を処理することができる。
【0029】
〔7〕前記移動体は、外部装置と通信を行う通信部を有し、前記照射部が前記励起光を照射しつつ前記撮像部が撮像を行っている状態で前記通信部によって前記撮像部が撮像する画像を継続的に前記外部装置に送信し、前記外部装置の表示部において前記撮像部が撮像した画像を表示する〔4〕又は〔5〕に記載の検査方法。
【0030】
上記の〔7〕の検査方法は、外乱光の影響を抑えつつ特定波長帯の発光部位を選択的に撮像した画像を、当該画像を撮像しながら継続的に外部装置に送信することができるため、外部装置では、外乱光の影響を排除した画像をより早期に処理することができる。例えば、上記〔7〕の検査方法において、照射部が励起光を照射しつつ撮像部が撮像を行っている状態で撮像部が撮像する画像を通信部によって継続的に外部装置に送信しながら、その送信された画像(撮像部が撮像した画像)を撮像部の撮像動作と並行して外部装置の表示部に表示するようにしてもよい。上述された「継続的に外部装置に送信すること」の具体例は、例えば、「画像信号を連続的に外部装置に送信すること」であってもよく、「画像信号を断続的に外部装置に送信すること」であってもよい。例えば、このように継続的に送信される画像に基づいて、並行して外部装置において動画が表示されてもよく、静止画の表示が切り替えられてもよい。
【0031】
〔8〕前記移動体は、前記撮像部が撮像した画像を保存する保存部を有する〔1〕から〔7〕のいずれか一つに記載の検査方法。
【0032】
〔8〕の検査方法は、撮像部が撮像した画像を移動体に保存しておくことができ、その後に保存した画像を扱うことができる。
【0033】
〔9〕構造物を検査する検査システムであって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を備え、
前記発光層は、前記構造物の検査対象領域を覆うように設けられ、
前記被覆層は、前記発光層を覆うように設けられ、
前記移動体が飛行又は航行した状態で、前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射しつつ前記撮像部が前記被覆層を撮像する
検査システム。
【0034】
〔9〕の検査システムは、〔1〕の検査方法と同様の効果が得られる。
【0035】
〔10〕被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査システムであって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を備え、
前記発光層は、前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に設けられ、
前記被覆層は、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように設けられ、
前記移動体が飛行又は航行した状態で、前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射しつつ前記撮像部が前記被覆層を撮像する締結体の検査システム。
【0036】
〔10〕の検査システムは、〔2〕の検査方法と同様の効果が得られる。
【0037】
〔11〕前記撮像部の撮像によって得られる撮像画像を解析し、前記発光層の発光を示す画像を検出する検出部を有する〔9〕又は〔10〕に記載の締結体の検査システム。
【0038】
〔11〕の検査システムは、〔3〕の検査方法と同様の効果が得られる。
【0039】
〔12〕前記発光層は、前記照射部から前記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光し、前記撮像部は、前記特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し、前記特定波長帯に前記所定波長が含まれる〔9〕から〔11〕のいずれか一つに記載の締結体の検査システム。
【0040】
〔12〕の検査システムは、〔4〕の検査方法と同様の効果が得られる。
【0041】
螺子締結とは、ボルト・ナットなどの螺子部品を用いて複数の被締結体を結合する方法の総称であり、本明細書においては、このように構成される構造の全体又は一部を螺子締結体という。螺子締結体は、締結体の一例に相当する。螺子締結の信頼性向上には、螺子部品の機械的強度、延性のほかに、緩みのない締め付け方法が必要とされる。しかし、機械部品などの螺子締結体においては、地震や風などに起因する振動が繰り返されて、経年的に緩みが発生するおそれがある。螺子締結体に緩みが発生すると、応力が一か所に集中して構造物が破壊する危険性があるので、定期的に緩みを監視する必要がある。特に、送電鉄塔用のボルト・ナットには防錆上、溶融亜鉛メッキが施されており、ナットの嵌合を考慮してボルト・ナット間の隙間が大きくなっている。更に、被締結体にも防錆上溶融亜鉛メッキや防錆塗料が施されているので、溶融亜鉛メッキや防錆塗料の肉厚が経年劣化によって薄くなると螺子締結体が緩むことが考えられる。このために、簡便にして迅速な螺子締結体の緩み検査方法及び検査システムが求められている。
【0042】
[第1実施形態]
1-1.検査システム
(検査システムの概要)
検査システム1は、締結構造10(図2図3)における締結体110の緩みを検査するシステムである。図1には、高所に締結体110が配置される構造物190を検査対象とし、飛行体30を用いて高所に締結された締結体110を検査する検査システム1が例示される。図1の例では、構造物190が送電線の鉄塔であるが、締結体が用いられる構造物であれば橋梁、ビル、煙突、ダムなどの様々な構造物における締結体が検査システム1による検査の対象となり得る。
【0043】
図2のように、検査システム1は、主に、管理装置80と、飛行体30と、外部装置60と、締結構造10に設けられた被検査部20(図3)と、を備える。なお、管理装置80及び外部装置60のいずれか又は両方は、検査システム1に含まれていなくてもよい。
【0044】
飛行体30は、移動体の一例に相当し、主に、検査装置40と、検査装置40が搭載された飛行部32と、を備える。飛行部32は、例えば、公知のドローンによって構成されており、空中を飛行し得る。なお、図1では、空中を飛行し得る飛行部32が例示されるが、飛行部32は、水中又は水上を航行し得る移動部であってもよい。つまり、飛行体30は、水中又は水上を航行し得る移動体に置き換えられてもよい。飛行部32は、ドローンに限定されず、無人飛行によって空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行し得る物体であればよい。図1図2の例では、飛行部32は、例えば、飛行部32から離れた位置にある操作装置によって操作され、空中を運転され得る。この場合、操作装置は、外部装置60によって実現されてもよく、外部装置60とは異なる装置によって実現されてもよい。飛行体30が操作装置との間で無線通信を行う際の通信方式は、公知の様々な通信方式が採用され得る。
【0045】
飛行体30に設けられた検査装置40には、主に、制御部41、通信部42、記憶部43、照射部44、撮像部45、などが設けられている。
【0046】
通信部42は、公知の無線通信方式によって管理装置80や外部装置60と無線通信又は有線通信を行い得る1以上の通信装置を備える。通信部42が管理装置80や外部装置60と無線通信又は有線通信を行う際の通信方式は特に限定されない。通信部42は、共通の通信方式によって管理装置80及び外部装置60と無線通信を行ってもよく、管理装置80と無線通信を行う際の通信方式と、外部装置60と無線通信を行う際の通信方式とが異なっていてもよい。
【0047】
記憶部43は、例えば、半導体メモリ、HDD、SSDなどの1種以上の記憶媒体を有する。記憶媒体は常設式であってもよく、着脱式であってもよい。
【0048】
照射部44は、励起光を照射する装置である。励起光は、後述する発光層24を発光させる光である。照射部44は、具体的には、紫外線照射装置によって構成されている。この場合、励起光は、例えば所定波長の紫外線である。
【0049】
撮像部45は、予め設定された撮像範囲を撮像して当該撮像範囲の動画又は静止画を生成しうるカメラによって構成されている。撮像部45の撮像範囲は、撮像部45の位置及び向きを基準としたときの所定方向における所定範囲である。撮像部45は、例えば、特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し得るカメラによって構成することができる。撮像部45としては、例えば、スペクトルカメラが用いられてもよく、CCDカメラやCMOSカメラ又はこれらのカメラに波長選択フィルタが付加されたカメラなどが用いられてもよい。
【0050】
制御部41は、例えば、マイクロコンピュータなどの情報処理装置を有しており、様々な演算や処理を行い得る装置である。制御部41は、撮像部45が取得した撮像画像を解析する機能を有していてもよく、後述する検査部としての機能を有していてもよい。制御部41は、通信部42と協働して管理装置80や外部装置60との間で情報の送受信を行い得る。
【0051】
検査システム1では、後述する発光層24(図3)は、照射部44から上記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光するものである。上記所定波長は、発光層24(図3)が励起光によって発光するときの発光する光の波長である。撮像部45が撮像し得る上記特定波長帯は、上記所定波長を含む波長帯である。上記特定波長帯は、例えば、太陽光が発光層24に当てられたときに発光層24で反射して生じうる反射光の波長帯よりも狭い波長幅である。上記特定波長帯は、可視光の波長帯よりも狭い波長幅であり、例えば、特定色の光の波長帯であることが望ましい。
【0052】
外部装置60は、飛行体30の外部において飛行体30と通信し得る装置である。外部装置60は、情報処理機能を有する情報処理装置を有している。具体的には、外部装置60は、制御部61、通信部62、記憶部63、操作部68、表示部69を有する。
【0053】
制御部61は、例えば、マイクロコンピュータなどの情報処理装置を有しており、様々な演算や処理を行い得る装置である。制御部61は、飛行体30から与えられた情報(例えば撮像画像)を解析する機能を有していてもよく、後述する検査部としての機能を有していてもよい。制御部61は、通信部62と協働して管理装置80や飛行体30との間で情報の送受信を行い得る。通信部42は、公知の無線通信方式によって管理装置80や飛行体30と無線通信を行い得る1以上の通信装置を備える。記憶部63は、例えば、半導体メモリ、HDD、SSDなどの1種以上の記憶媒体を有する。記憶媒体は常設式であってもよく、着脱式であってもよい。
【0054】
操作部68は、例えば、作業者による入力操作を可能とする入力デバイスであり、マウス、キーボード、タッチパネル、音声入力部などの入力装置を備える。なお、操作部68は、飛行体30を操縦(運転)するためのコントロールレバーなどの操縦操作部を有していてもよい。
【0055】
表示部69は、公知のディスプレイを有しており、様々な画像を表示し得る装置である。表示部69は、制御部61と協働して撮像部45が生成した撮像画像を表示する機能を有していてもよい。表示部69は、制御部61と協働して撮像画像の解析結果を表示する機能を有していてもよい。表示部69は、制御部61と協働して撮像部45が撮像している際の撮像画像を撮像部45の撮像と並行してリアルタイムに又は時間差で表示する機能を有していてもよい。
【0056】
管理装置80は、例えばサーバとして機能する。図2の例では、管理装置80は飛行体30及び外部装置60のそれぞれと無線通信を行い得る。管理装置80は、飛行体30から撮像画像を受信し得る構成であってもよく、飛行体30から検査結果を受信し得る構成であってもよく、外部装置60から撮像画像や検査結果を受信し得る構成であってもよい。管理装置80は、後述する検査部を有していてもよい。
【0057】
このように構成された検査システム1では、操作装置による操縦によって飛行体30が飛行しつつ様々な場所に移動し得る。そして、この検査システム1では、飛行体30が撮像部45の撮像範囲内に被検査部20が位置する位置関係となった場合において撮像条件が成立している場合に、照射部44が被覆層22に対して励起光を照射しつつ撮像部45が被覆層22を撮像し得る。撮像部45の撮像範囲内に被検査部20が位置する位置関係とは、具体的には、上記撮像範囲内に被覆層22が位置する位置関係のことである。検査システム1による具体的な検査方法は後に詳述される。
【0058】
(締結構造)
図3は、締結体110を被締結体192に螺着した状態の締結構造10(螺子締結体)を示す断面図である。締結構造10は、主に、締結体110と、被締結体192と、被検査部20と、を備える。被検査部20は、主に、被覆層22及び発光層24を備える。締結体110及び被締結体192は、構造物190の一部を構成する。
【0059】
締結体110は、例えば螺子部品であり、螺子部品としては、ボルト・ナット、各種のねじが想定される。もちろん、締結体110(螺子部品)と被締結体192の間にはワッシャーなどの補助部材が介在してもよい。図3の締結構造10は、被締結体192の孔状のねじ部192Bに対して締結体110の凸状のねじ部114が嵌め込まれて螺着されている図3の例では、被締結体192の外面192Aに孔状のねじ部192Bが形成されている。
【0060】
締結構造10は、被締結体192に締結体110が締結され且つ締結体110の一部をなす外側配置部112と被締結体192の外面192Aとが直接又は他部材を介して間接的に対向する締結構造である。図3に例示される締結構造10は、外側配置部112におけるねじ部114側の端面が外面192Aに近接又は接触する形態で締結されている。
【0061】
検査システム1が適用される検査方法では、後述される第1工程(事前処理工程)により、例えば、図3のように発光層24が準備される。図3の例では、締結体110と被締結体192の接合部外縁に発光層24が形成されている。発光層24は、紫外線などの励起光によって発光する蛍光色素が包含された樹脂層である。図3の例では、締結構造10において少なくとも締結体110と被締結体192とに挟まれる領域の外側(より具体的には、外側配置部112と被締結体192の外面192Aとに挟まれる領域の外側)に発光層24が設けられている。締結体110と被締結体192とに挟まれる領域の外側の領域のうち、発光層24に覆われる領域は、構造物の検査対象領域の一例に相当する。図3の例では、発光層24は、外側配置部112の外周面112Aを少なくとも部分的に覆う構成で外周面112Aの周囲に配置され、被締結体192の外面192Aを少なくとも部分的に覆う構成で外面192A上に配置され、外周面112Aと外面192Aとに跨っている。なお、図3の例では、発光層24が外周面112A及び外面192Aのそれぞれに直接接触しているが、発光層24と外周面112A及び被締結体192のいずれか一方又は両方との間に他の部材が介在してもよい。
【0062】
検査システム1が適用される検査方法では、第1工程(事前処理工程)により、例えば、図3のように被覆層22を準備する。被覆層22は、上述した励起光の透過を抑制する抑制剤が包含された樹脂層である。この抑制剤は、励起光の透過を阻止する遮光剤であることが望ましく、具体的には、励起光を吸収したり散乱したりする遮光剤などが望ましい。図3の例では、被覆層22は、発光層24の表面24Aに形成されている。被覆層22は、締結体110に固定され且つ発光層24を覆うように設けられる。具体的には、被覆層22は、発光層24の表面24Aの全体を覆い、発光層24を被覆層22の外側に露出させない構成をなす。図3の例では、被覆層22の裏面22Bが発光層24の表面24Aに密着する。被覆層22の表面22Aは、外部に露出し、大気に晒されている。図3の例はあくまで一例であり、被覆層22の表面22Aを、更に他の層(例えば、他の樹脂層)が覆っていてもよい。図3の例では、被覆層22が外周面112Aに直接接触して固定されているが、被覆層22と外側配置部112との間に他の部材が介在する形態で被覆層22が外側配置部112に固定されていてもよい。図3の例では、被覆層22が外面192Aに直接接触して固定されているが、被覆層22と被締結体192との間に他の部材が介在する形態で被覆層22が被締結体192に固定されていてもよい。
【0063】
発光層24は、高い延性を有する高弾性であって、緩みが発生したときにも亀裂が発生しないことが望ましい。発光層24を形成するための塗料として、エチレン酢酸ビニルコポリマー系、アクリルポリマー系、酢酸ビニルホモポリマー系、ポリウレタン系、SBR系の水性弾性塗料及び各種の水性エマルジョン塗料(酢酸ビニル系、スチレン-ブタジエン系及びアクリル系等の水性弾性塗料)が使用され得る。これらの塗料は、可塑剤の添加によって延性、弾性が調整され得る。可塑剤としては、フタル酸エステル、リン酸エステルグリコール類、エポキシ系可塑剤などが使用され得る。塗料には、耐候性、耐熱性、難燃性等を有する添加剤が、構造物の機能に合わせて適宜添加されてもよい。塗料としては、紫外線硬化型塗料がもちいられてもよい。
【0064】
発光層24には、照射部44からの励起光の照射によって発光する蛍光色素が包含されている。照射部44は、励起光として、紫外線又は波長が500nm以下の青色系可視光を使用し得る。例えば、発光層24は、波長が500nmを超えて長い光が照射されても、蛍光色素を発光不能又は発光困難である。照射部44が励起光として紫外線を照射するものである場合、紫外線ランプや紫外線LEDなどを照射部44として好適に用いることができる。照射部44が励起光として青色系可視光を照射するものである場合、青色のLEDライトを照射部44として好適に用いることができる。
【0065】
上述の蛍光色素とは、蛍光顔料及び蛍光染料の総称である。蛍光顔料としては、蓄光材、蛍光材が使用され得る。蛍光染料としては、蛍光増白材が使用され得る。蓄光材としては、アルミナ系酸化物の無機顔料が使用されてもよく、各種希土類系蓄光材(アルミン酸ストロンチウム+ユーロピウム、ネオジムドープ、アルミン酸カルシウム+ユーロピウム,ジスプロシウムドープなど)や、硫化亜鉛+銅ドープなどが使用されてもよい。
【0066】
蛍光材とは、励起光に刺激されて蛍光を発光し、刺激を停止すると発光が止まるものである。蛍光材として、例えば、フルオレセイン系、スチルベンゼン系、各種希土類蛍光材や、バリウム、ストロンチウム、亜鉛などの硫化物が使用され得る。
【0067】
蛍光増白材とは、太陽光線の中の紫外線を選択的に吸収し、これを目に見える紫~青色の可視光に変え、放射させる能力を持ったものである。蛍光増白材としては、例えば、ジアミノスチルベンジルスルホン酸誘導体系、ビススチリルビフェニル誘導体系、クマリン誘導体系、ピラゾロン誘導体系、ビスベンゾオキサゾール誘導体系、ナフタルイミド誘導体系等の一般的な蛍光増白材が使用され得る。
【0068】
発光層24に対して、被覆層22は低延性で脆弱なものであるのが望ましい。被覆層22を形成する塗料としては、例えばカルボキシル基、エポキシ基、水酸基及びアルコキシシリル基等をビヒクル成分とする塗料、あるいは基体樹脂に硬化剤の配合比率を大きくしたり、顔料含有濃度を高くしたり、更には架橋性官能基量を多くして架橋点を多くするなどの手法によって得られる塗料が使用され得る。
【0069】
被覆層22には、例えば、上述の励起光の透過を遮蔽する遮光剤が混入されている。遮光剤として紫外線吸収剤、紫外線散乱剤などが使用され得る。紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸オクチル、オキシベンゼン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどが使用され得る。紫外線散乱剤としては、酸化チタンや酸化亜鉛が使用され得る。これらの紫外線吸収剤、紫外線散乱剤は、青色系可視光を遮蔽する効果をも有することがある。
【0070】
塗料を塗布する方法としては、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、刷毛塗り法、ディッピング法などの各種の方法が、構造物の形状に対応して適宜選択され得る。塗布後の塗料は、常温乾燥、又は40~200°Cで加熱乾燥されることで、塗布層が形成され得る。
【0071】
1-2.検査方法
次の説明は、検査システムによって行われる検査方法に関する。
本実施形態に係る検査方法は、検査システム1により締結構造10における締結体110の緩みを検査する方法である。この検査方法は、主に、検査システム1における飛行体30と発光層24と被覆層22とを用いる。
【0072】
本実施形態に係る検査方法において、第1工程は、事前処理を行う事前処理工程である。第1工程は、締結体110が取り付けられる構造物の建設時、建設後の確認時、メンテナンス時などに行う工程である。事前処理は、検査対象である締結体110に対して被検査部20を設ける処理である。第1工程(事前処理工程)では、まず、発光層24を設ける工程が行われる。発光層24を設ける工程では、被検査部20の形成前の締結構造10(図3の構成から被検査部20が除かれた構造)において、少なくとも締結体110と被締結体192とに挟まれる領域の外側(より具体的には、外側配置部112と被締結体192の外面192Aとに挟まれる領域の外側)に発光層24が設けられる。発光層24の具体的形成方法は、上述された通りである。発光層24の形成は何らかの装置(塗布装置等)によって行われてもよく、人為的な作業によって行われてもよい。
【0073】
第1工程(事前処理工程)では、発光層24を設ける工程が行われた後、被覆層22を設ける工程が行われる。被覆層22を設ける工程では、発光層24の表面24Aを覆うように且つ少なくとも締結体110の一部(図3では外側配置部112の外周面112A)に固定されるように被覆層22が形成される。図3の例では、被締結体192の外面192Aを被覆しつつ外面192Aに固定されるように被覆層22が形成される。被覆層22の具体的形成方法は、上述された通りである。被覆層22の形成は何らかの装置(塗布装置等)によって行われてもよく、人為的な作業によって行われてもよい。
【0074】
本実施形態に係る検査方法において、第2工程は、第1工程(事前処理工程)の後、飛行体30を締結体110が取り付けられた構造物まで飛行させる飛行工程である。第2工程(飛行工程)は、第1工程が行われた日と同日に行われてもよいが、基本的には、第1工程が行われた日からある程度の期間が経過した日に行うことが望ましい工程である。第2工程(飛行工程)は、具体的には、飛行体30を飛行させつつ撮像部45の撮像範囲内に被覆層22が位置する位置関係となるように飛行体30を移動させる工程である。飛行体30の移動方法は、例えば、作業者が図示されていない操作装置(例えば外部装置60又は外部装置60とは異なる装置)を操縦することで、飛行体30が上記操作装置の操縦動作に応じた飛行動作を行うような方法であってもよい。或いは、飛行体30の移動方法は、飛行体30が外部に設けられた自動操縦システムからの制御を受けて自動飛行を行うような方法であってもよい。
【0075】
本実施形態に係る検査方法において、第3工程は、第2工程によって上記飛行体30が上記位置関係(撮像部45の撮像範囲内に被覆層22が位置する位置関係)となるまで移動した後、照射部44が被覆層22に対して励起光を照射した状態で撮像部45が被覆層22を撮像する工程である。第3工程では、飛行体30が上記位置関係となってから照射部44が励起光を照射し始めてもよく、上記位置関係となる前から照射部44が励起光を照射し始めてもよい。また、第3工程では、飛行体30が締結体110にある程度接近してから撮像部45が撮像動作を開始してもよく、飛行体30が締結体110に接近する前から撮像部45が撮像動作を開始してもよい。撮像部45が撮像動作を行う時期は、照射部44が励起光を照射する時期と同一であってもよく、ずれていてもよい。
【0076】
照射部44に対する照射開始の指示は、操作装置(例えば外部装置60又は外部装置60とは異なる装置)において所定の照射開始指示操作がなされた場合になされてもよい。この場合、上記操作装置は、作業者等によって上記照射開始指示操作がなされたことに応じて照射指示信号を検査装置40に無線送信し、検査装置40がこの照射指示信号を受信した場合に、照射部44が励起光の照射を開始するように制御部41によって制御されてもよい。例えば、外部装置60が操作装置である場合、撮像部45が継続的に撮像する画像を、表示部69においてリアルタイムに又は時間差で継続的に表示できるように検査システム1を構成し、作業者等が表示部69の表示画面を見ながら上記照射開始指示操作を行うタイミングを決定してもよい。同様に、撮像部45に対する撮像開始の指示が、操作装置(例えば外部装置60又は外部装置60とは異なる装置)において所定の撮像開始指示操作がなされた場合になされてもよい。この場合、上記操作装置は、作業者等によって上記撮像開始指示操作がなされたことに応じて撮像指示信号を飛行体30の検査装置40に送信し、検査装置40がこの撮像指示信号を受信した場合に、撮像部45が撮像を開始するように制御部41によって制御されてもよい。なお、照射開始指示操作と撮像開始指示操作は共通の操作であってもよく、照射指示信号と撮像指示信号は共通の信号であってもよい。
【0077】
照射部44による照射の開始は、所定の照射開始条件が成立した場合になされてもよい。また、撮像部45による撮像の開始は、所定の撮像開始条件が成立した場合になされてもよい。
【0078】
例えば、検査装置40は、飛行体30の位置が予め定められた所定エリアに入ったことを「所定の照射開始条件が成立した場合」とし、飛行体30の位置が所定エリアに入った場合に照射部44が励起光の照射を開始するように制御部41によって照射部44が制御されてもよい。この例では、所定エリア外での励起光の照射が抑えられる。同様に、検査装置40は、飛行体30の位置が所定エリアに入ったことを「所定の撮像開始条件が成立した場合」とし、飛行体30の位置が所定エリアに入った場合に撮像部45が撮像を開始するように制御部41によって撮像部45が制御されてもよい。この例では、所定エリア外での撮像動作が抑えられる。
【0079】
検査装置40は、飛行体30の高度が予め定められた所定高度範囲に入ったことを「所定の照射開始条件が成立した場合」とし、飛行体30の高度が所定高度範囲に入った場合に照射部44が励起光の照射を開始するように制御部41によって照射部44が制御されてもよい。この例では、所定高度範囲外での励起光の照射が抑えられる。同様に、検査装置40は、飛行体30の高度が所定高度範囲に入ったことを「所定の撮像開始条件が成立した場合」とし、飛行体30の高度が所定高度範囲に入った場合に撮像部45が撮像を開始するように制御部41によって撮像部45が制御されてもよい。この例では、所定高度範囲外での撮像動作が抑えられる。
【0080】
検査装置40は、飛行体30が飛行している最中に撮像部45が継続的に画像を撮像し、解析部(例えば制御部41)は、撮像部45が撮像する撮像画像を継続的に解析し、解析部が撮像画像において予め定められた所定画像を検出した場合に照射部44が励起光の照射を開始するように制御部41によって照射部44が制御されてもよい。この場合の「所定画像」は、例えば、締結体110の外形の一部の画像であってもよく、構造物190の外形の一部の画像であってもよい。或いは、「所定画像」は、構造物190や締結体110に付された特定の色彩の画像であってもよく、構造物190や締結体110に付された特定のマークの形状や色彩の画像であってもよい。この例では、「所定画像」が検出される前までの励起光の照射が抑えられる。
【0081】
飛行体30は、図示されない物体検出センサ(測距センサや近接センサなど)を備えていてもよく、この物体検出センサによって飛行体30が物体に接近したことを検出し得る構成であってもよい。検査装置40は、飛行体30が物体(例えば構造物190)に接近したことが物体検出センサによって検出された場合を、「所定の照射開始条件が成立した場合」としてもよい。この例では、飛行体30が物体に接近するまでの励起光の照射が抑えられる。同様に、検査装置40は、飛行体30が物体(例えば構造物190)に接近したことが物体検出センサによって検出された場合を、「所定の撮像開始条件が成立した場合」としてもよい。この例では、飛行体30が物体に接近するまでの撮像が抑えられる。
【0082】
次の説明は、緩み検査の詳細に関する。
図3のように「被覆層22に亀裂が発生していない通常の状態」では、照射部44から被検査部20に対して上述の励起光が照射されても、被検査部20における表面側の被覆層22内の抑制剤(遮光剤)により励起光の透過が妨げられるので、内部側の発光層24まで十分な励起光が到達しない。よって、励起光が被覆層22に照射されても発光層24は発光状態にはならない。このような状態の締結体110及び被覆層22を撮像部45によって撮像しても「発光層24が発光する画像は得られず」、例えば図6のような撮像画像(特定波長帯の発光部位を選択的に抽出する画像)が得られる。図6の撮像画像において、符号110Zは、締結体110の位置を仮想的に示す図形である。図6の撮像画像では、符号110Zによって仮想的に示される図形の付近において、所定波長の光で発光する部位の画像が存在しない。よって、図6の撮像画像を作業者が目視によって確認したり、制御部41や制御部61が解析したりすることで、所定波長の光で発光する部位の画像が存在しないことを特定することができ、撮像された締結体110において緩みが生じていないと判定することができる。
【0083】
一方、地震や風などに起因する振動を原因として締結体110に緩みが発生した場合には、図4のように、上層である脆弱な被覆層22に亀裂22Zが発生するが、下層である比較的柔軟な発光層24は単に延びるだけで亀裂は発生しない。このような状態において、図5のように照射部44(図2)から紫外線などの励起光が照射されると、励起光は亀裂22Z内を通過して、発光層24における亀裂22Zの下側の領域24Zに十分な励起光が到達するので、この領域24Zは蛍光色素によって発光部として発光する。そして、このように発光部(領域24Z)が発光した状態で発光部近傍を撮像部45が撮像すると、例えば図7のように、撮像部45によって得られる撮像画像において発光部(領域24Z)の画像Laは他の部分の画像と区別された鮮明な色彩の画像となる。よって、このような撮像画像により、亀裂22Zが容易に検出されやすくなり、締結体110に緩みが発生したことが容易に検出されやすくなる。なお、上記発光部の発光の色彩は、蛍光顔料が変更されることによって、赤色、緑色、黄色などの適宜な色彩となり得る。図5では、励起光を矢印にて概念的に示しているが、亀裂22Zが発生している場合に下側の領域24Zを発光させ得る態様であれば、励起光の照射の向きや範囲、励起光の種類は上述の具体例に限定されない。
【0084】
検査システム1を用いた検査方法は、上述の第1~第3工程だけでなく、第4工程を含んでいてもよい。第4工程は、第3工程で生成された撮像画像(例えば、撮像部45が生成する図6図7のような撮像画像)に基づいて締結体110に緩みが発生しているか否かを判定する工程である。第4工程では、第3工程で生成された撮像画像を作業者が目視によって確認し、締結体110に緩みが発生しているか否かを作業者が判定してもよい。或いは、第4工程では、制御部41又は制御部61若しくは管理装置80が検出部の一例として機能し、第3工程で撮像部45が被覆層22を撮像した撮像画像を検出部が解析し、検出部が上記撮像画像から「発光層24の発光を示す画像」を検出するように動作してもよい。そして、検出部は、上記撮像画像において「発光層24の発光を示す画像」を検出した場合に当該撮像画像付近の締結体に緩みが発生していると判定し、上記撮像画像において「発光層24の発光を示す画像」を検出しない場合には、当該撮像画像付近に緩みが発生している締結体が存在しないと判定するように動作してもよい。
【0085】
いずれの例でも、検出部は、第3工程で撮像部45が被覆層22を撮像した撮像画像を解析し、当該撮像画像に含まれる所定色の画像を「発光層24の発光を示す画像」としてもよい。この例では、所定色は、予め定められた1以上の色であればよい。この例では、検出部は、第3工程で撮像部45が被覆層22を撮像した撮像画像において上記所定色の画像が含まれている場合に、当該撮像画像に含まれる締結体に緩みが発生していると判定することができる。逆に、検出部は、第3工程で撮像部45が被覆層22を撮像した撮像画像において上記所定色の画像が含まれていない場合に当該撮像画像に含まれる締結体に緩みが発生していないと判定してもよい。
【0086】
別例としては、検出部は、第3工程で撮像部45が被覆層22を撮像した撮像画像に含まれる所定輝度範囲の輝度の画像を「発光層24の発光を示す画像」としてもよい。この例では、検出部は、第3工程で撮像部45が被覆層22を撮像した撮像画像において所定輝度範囲の輝度の画像が含まれている場合に、当該撮像画像に含まれる締結体に緩みが発生していると判定することができる。逆に、検出部は、第3工程で撮像部45が被覆層22を撮像した撮像画像において所定輝度範囲の輝度の画像が含まれていない場合に当該撮像画像に含まれる締結体に緩みが発生していないと判定してもよい。
【0087】
飛行体30の検査装置40は、撮像部45によって締結体110の画像を撮像した場合、その撮像動作によって得られる撮像画像と、その撮像画像を取得した際の飛行体30の位置情報とを対応付けた対応データを生成することもできる。検査装置40は、この対応データを飛行体30の記憶部43に保存してもよい。或いは、検査装置40は、上記対応データを飛行体30から外部装置60や管理装置80に送信してもよい。
【0088】
飛行体30は、GPS(Global Positioning System)センサが搭載されていてもよい。この場合、上記対応データに含まれる上記位置情報は、飛行体30の緯度情報及び経度情報であってもよい。この技術によれば、撮像部45が生成した撮像画像の視認又は解析によって締結体110の緩みが確認された場合に、その撮像画像が撮像された位置が特定可能となり、例えば、メンテナンス作業の際に緩みが生じている締結体110を探す手間が大幅に削減され得る。更に、飛行体30は、上記GPSセンサの一機能として又は別センサとして、方位センサを含んでいてもよい。この場合、撮像画像と位置情報とを対応付けた上記対応データは、当該撮像画像が撮像された際の飛行体30の方位情報が当該撮像画像と対応付けられて含まれていてもよい。この技術によれば、撮像画像の視認又は解析によって締結体110の緩みが確認された場合に、その撮像画像が撮像された位置だけでなく方位も特定され得る。
【0089】
更に、飛行体30は、上記GPSセンサの代わりに又は上記GPSセンサと併用される構成で、高度センサが搭載されていてもよい。この構成では、検査装置40は、撮像部45が締結体110を撮像した場合に、その撮像動作によって得られる撮像画像と、その撮像画像を取得した際の飛行体30の高度情報とを対応付けた対応データを生成することもできる。この技術によれば、撮像画像の視認又は解析によって締結体110の緩みが確認された場合に、その撮像画像が撮像された高度が特定され得る。この場合の対応データは、上記高度情報だけでなく上記位置情報が上記撮像画像と対応付けて含まれていていることが望ましく、上記方位情報が上記撮像画像と対応付けて含まれているとなお良い。
【0090】
検査システム1を用いた検査方法では、第3工程で撮像部45が撮像動作を行うことで生成される撮像画像(図6図7のような撮像画像)に対し、第3工程又は第4工程において画像処理を施してもよい。具体的には、検査システム1は、第3工程で撮像部45が生成した撮像画像において上記発光部の発光に対応する画像領域に着色処理を施し、上記撮像画像を着色処理が施された着色画像に変換してもよい。例えば、検査システム1は、第3工程で撮像部45が生成した撮像画像(図6図7のような撮像画像)において予め定められた色相の領域(発光部での発光に対応する色相の領域)又は予め定められた輝度範囲の領域(発光部での発光に対応する輝度範囲の領域)に対し、色相、濃度、輝度の少なくともいずれかを変化させる画像処理を行ってもよい。より具体的には、検査システム1は、第3工程で撮像部45が生成した撮像画像(図6図7参照)から予め定められた色相の領域を抽出し、その抽出された領域を所定の色相(例えば予め定められた鮮明色)の領域に変換するように上記撮像画像の該当部分を強調する強調処理を行ってもよい。なお、この場合の「予め定められた色相」は、1つの色相に限定されない。或いは、検査システム1は、第3工程で撮像部45が生成した撮像画像から輝度が一定値以上の領域を抽出し、その抽出された領域の輝度を更に高めたり、その抽出された領域を所定の色相(例えば鮮明色)の領域に変換するように強調処理を行ってもよい。図8の画像は、第3工程で撮像部45が生成した撮像画像において図7のように発光部が発光した領域の画像Laが「予め定められた色相の領域」として含まれる場合に、その画像Laの領域を抽出して所定の色相(例えば鮮明色)の画像Lbに変換した画像処理後の画像である。
【0091】
第3工程で撮像部45が生成した撮像画像に対して上述の画像処理を施した場合には、第4工程では、画像処理後の画像(図8のような強調処理がなされた画像)を、作業者が目視によって確認し、締結体110に緩みが発生しているか否かを作業者が判定してもよい。或いは、第4工程では、強調処理後の画像を検出部が解析し、検出部がこの画像に基づいて撮像画像に含まれる締結体に緩みが発生しているか否かを判定してもよい。
【0092】
1-3.効果の例
次の説明は、本実施形態に係る検査方法及び検査システム1の効果に関する。
本実施形態に係る検査方法及び検査システム1は、飛行体30が移動し得る場所であれば、例えば作業者の移動や作業に大きな負担や困難が伴う場所(高所など)であっても、容易に検査場所に到達しやすく、検査負担を軽減することができる。この検査方法及び検査システム1は、締結体110に緩みが生じている場合、締結体110に固定された被覆層22において「励起光の通過を許容する領域」(亀裂等)が生じる可能性が高くなる。そして、このように「励起光の通過を許容する領域」が生じている場合に被覆層22に対して励起光が照射されつつ被覆層22の撮像が行われれば、「励起光が発光層24まで到達して発光層24が発光した状態」が撮像される可能性が高い。ゆえに、この検査方法及び検査システム1は、締結体110の緩みを高精度に検出することを容易化することができる。
【0093】
例えば、本実施形態に係る検査方法及び検査システム1は、締結体110に緩みが生じている場合、撮像部45によって締結体110を撮像したときの撮像画像内に発光状態が映り込んでいれば、緩みを確認できる可能性が高いため、飛行体30が風などの影響を受けて多少揺れても検査が実行できる可能性が高く、撮像方向の制限も少なくて済む。例えば、「合マーク」を撮像して確認する方法を想定した場合、このような方法では、撮像方向が制限されやすく、飛行体が風などによって煽られて静止状態を維持することができない場合の撮像では検査不能となる可能性が高い。特に、飛行体から「合マーク」の撮像を行う場合、「合マーク」の状態を正確に判定できるような鮮明な画像を得るためには、飛行体を安定的に静止させた状態で「合マーク」近傍を撮像しなければならない。しかし、飛行体は横風などの影響を受けやすいため、飛行体を確実に静止させた状態で「合マーク」付近を鮮明に撮像することは困難である。これに対し、本実施形態に係る検査方法及び検査システム1では、このような問題が生じにくい。一方、別の比較例として、上述の特許文献1のような方法を想定した場合、この方法も、撮像方向が制限されやすいという問題がある。この特許文献1の方法は、締結体において緩みが発生すると検出用領域部の露出面積が増加するという特徴を有するが、この方法では、露出面積が増加したことを特定可能な画像を撮像できなければ、緩みを検出することができない。そのためには、締結体付近を決められた向き(例えば締結体の設置面に対して垂直に近い方向)に撮像しなければならず、撮像方向の制限が大きい。しかも、特許文献1の方法は、撮像画像において検出用領域部の画像とその他の部分の画像が区別できなければ締結体の緩みを検出できない方法であるが、検出用領域部は、蛍光色でもなく、発光する特徴も有していないため、例えば、撮像時に何らかの原因(例えば、照明が暗い等の原因)により締結体付近が暗い環境であることに起因して、撮像画像において検出用領域部とその他の部分(遮蔽部等)とが明確に区別できない場合や、錆の発生によって検出用領域部とその他の部分(遮蔽部等)が同系色になっている場合には、撮像画像において検出用領域部を正確に特定できなくなる。このような場合には、締結体において緩みが発生していても、緩みの発生を検出することができない。これに対し、本実施形態の検査方法では、このような問題が生じにくい。
【0094】
本実施形態に係る検査方法及び検査システム1は、締結体110に対して励起光以外の外乱光(例えば太陽光)の影響が生じる環境下において、外乱光の影響を抑えつつ特定波長帯の発光部位を選択的に撮像することができる。従って、外乱光の状況下で発光層24が励起光によって発光する場合には、この発光部位がより明瞭に撮像されやすい。特に、日中の直射日光下で検査を行う場合において、発光層24が励起光によって発光する場合には、直射日光の影響が抑えられた状態で発光部位がより明瞭に撮像されやすい。
【0095】
本実施形態に係る検査方法及び検査システム1では、照射部44が励起光を照射しつつ撮像部45が撮像を行っている状態で、通信部42によって撮像部45が撮像する画像を継続的に外部装置60に送信してもよい。そして、外部装置60は、表示部69において撮像部45が撮像した画像を表示するようにしてもよい。このような技術では、外乱光の影響を抑えつつ特定波長帯の発光部位を選択的に撮像した画像を、当該画像を撮像しながら継続的に外部装置60に送信することができるため、外部装置60において外乱光の影響を排除した画像をより早期に処理することができる。例えば、この検査方法及び検査システム1において、照射部44が上記励起光を照射しつつ撮像部45が撮像を行っている状態で当該撮像画像を通信部42によって継続的に外部装置60に送信しながら、撮像部45の撮像動作と並行して外部装置60の表示部69に表示するようにしてもよい。この場合、作業者が、撮像部45の撮像画像(特定波長帯の発光部位を選択的に撮像した画像)をリアルタイムに又は時間差で早期に視認することができる。
【0096】
[第2実施形態]
第2実施形態の検査システム1は、図3で示される締結構造10の代わりに図9で示される締結構造210が用いられる点のみが第1実施形態の検査システム1と異なり、それ以外は第1実施形態と同一である。第2実施形態の検査方法は、締結構造10の代わりに締結構造210を用いて検査を行う点のみが第1実施形態の検査方法と異なり、その他の点は第1実施形態の検査方法と同一である。第2実施形態の検査システムの締結構造210において、締結構造10と同様の部分については同一の符号が付され、詳細な説明は省略される。なお、第2実施形態の検査システム1は、締結構造210以外は図1図2と同様であるため、以下の説明では、締結構造10が締結構造210に変更されたものとして、適宜図1図2が参照される。
【0097】
第2実施形態の検査システム1を用いた検査方法は、第1工程において締結構造10(図3)の代わりに図9のような締結構造210を準備する点が第1実施形態における第1工程と異なる。第2実施形態の検査システム1に用いられる締結構造210において、締結体110及び被締結体192は、第1実施形態と同様の構成をなす。締結構造210は、補助部材216及び被検査部220の構成が第1実施形態と異なる。締結構造210は、締結体110と被締結体192との接合部に、ワッシャーなどの補助部材216が介挿されている。補助部材216の外面には励起光によって発光する蛍光色素が包含された発光層224が塗布されている。発光層224は、少なくとも、外側配置部112と被締結体192の外面192Aとに挟まれる領域の外側に設けられている。図9の例では、外側配置部112の下端と外面192Aとの間に発光層224が設けられている。発光層224は、第1実施形態で例示される発光層24と同様の材料からなる。補助部材216が介挿された締結体110と被締結体192との接合部外縁には、励起光の透過を阻止する遮光剤が包含された被覆層22が形成されている。被覆層22は、締結体110に固定され且つ発光層224を覆うように設けられている。被覆層22は、第1実施形態で例示される被覆層22と同様の材料からなる。図6の例でも、被覆層22は、外側配置部112の外周面112Aを少なくとも部分的に覆う構成で外周面112Aに固定され、被締結体192の外面192Aを少なくとも部分的に覆う構成で外面192Aに固定されている。なお、第2実施形態においては、被覆層22は発光層224より必ずしも低延性で脆弱なものである必要はない。
【0098】
第2実施形態の検査システム及び検査方法では、締結体110に緩みが発生していない場合、図9に示される被覆層22には亀裂は発生しない。一方、締結体110に緩みが発生した場合には、上層である被覆層22には亀裂が発生するが、下層である発光層224には亀裂は発生しない。このような状態において、照射部44(図2)から紫外線などの励起光が照射されると、励起光は亀裂内を通過して、発光層224における亀裂の下側の領域に到達するので、この領域は蛍光色素によって発光部として発光する。このように発光部が発光した状態で発光部近傍を撮像部45(図2)が撮像すると、発光部の画像が他の部分の画像と区別された鮮明な色彩の撮像画像が得られる。得られた撮像画像の扱いは、第1実施形態で例示されたどのような扱いであってもよい。
【0099】
第2実施形態の検査システム1は、締結構造210以外は、第1実施形態の検査システム1の全ての技術を用いることができる。第2実施形態の検査システム1を用いた検査方法は、第1工程以外は第1実施形態に係る検査方法の全ての技術を用いることができる。なお、第2実施形態の検査システム1において締結体110の緩みを検出する技術及び思想は、特開2019-138459号公報に記載された技術及び思想を用いることができる。その上で、第1実施形態と同様の特徴を付加することで相乗的な効果を得ることができる。
【0100】
[第3実施形態]
第3実施形態の検査システムは、締結構造10の代わりに図10で示される締結構造310が用いられる点のみが第1実施形態の検査システム1と異なり、それ以外は第1実施形態と同一である。第3実施形態の検査方法は、締結構造10の代わりに締結構造310を用いて検査を行う点のみが第1実施形態の検査方法と異なり、その他の点は第1実施形態の検査方法と同一である。第3実施形態の検査システムの締結構造310において、締結構造10と同様の部分については同一の符号が付され、詳細な説明は省略される。なお、第3実施形態の検査システム1は、締結構造310以外は図1図2と同様であるため、以下の説明では、締結構造10が締結構造310に変更されたものとして、適宜図1図2が参照される。
【0101】
第3実施形態の検査システム1を用いた検査方法は、第1工程において締結構造10(図3)の代わりに図10のような締結構造310を準備する点が第1実施形態における第1工程と異なる。第3実施形態の検査システム1に用いられる締結構造310において、締結体110及び被締結体192は、第1実施形態と同様の構成をなす。締結構造310は、被検査部320の構成が第1実施形態と異なる。
【0102】
締結構造310において、被検査部320は、高伸展性の下側層(発光層24、基礎シート326、粘着層)と、低伸展性の上側層(被覆層22)とを用いて構造物の亀裂を検出する亀裂検出用接着シートとして構成される。図10に例示される被検査部320では、下側層は、発光層24と基礎シート326とからなる二層構造を有し更に粘着層を備えたものである。基礎シート326は、下側のシートであり、高伸展性且つ樹脂製のシートである。発光層24は、基礎シート326の上側の層であり、蛍光色素が混入された層である。発光層24は、第1実施形態で例示された発光層24と同一の特性の層であってもよく、多少異なる特性であってもよい。発光層24は、例えば樹脂からなり且つ高伸展性の塗布層である。下側層において基礎シート326の下面には、図示が省略された粘着層が形成されている。上側層である被覆層22は、第1実施形態で例示された被覆層22と同一の特性の層であってもよく、特性が多少異なる層であってもよい。被覆層22は、下側層の上側に、例えば樹脂の塗布によって形成されている。
【0103】
第3実施形態に係る検査方法を実現する場合、第1工程では、締結体110が被締結体192に締結された後、被検査部320が貼り付けられる前の状態(図10の状態から被検査部320を除いた状態)の締結体110の外側配置部112(締結後の螺子の頭部)を覆うように被検査部320(亀裂検出用シート)を貼り付ける。図10は、第1工程を終えた後の貼り付け後の状態を示す図である。図10の例では、高伸展性の下側層の発光層24に蛍光色素が含有され、低伸展性の上側層(被覆層22)に抑制剤(遮光剤)が含有されている。この例でも、締結構造310において少なくとも締結体110と被締結体192とに挟まれる領域の外側に発光層24が設けられ、締結体110に固定され且つ発光層24を覆うように被覆層22が設けられる。
【0104】
第3実施形態の検査システム及び検査方法では、締結体110に緩みが発生していない場合、図10に示される被覆層22には亀裂は発生しない。一方、締結体110に緩みが発生した場合には、上層である被覆層22には亀裂が発生するが、下層である発光層24には亀裂は発生しない。このような状態において、照射部44(図2)から紫外線などの励起光が照射されると、発光層24における亀裂の下側の領域は蛍光色素によって発光部として発光する。従って、第1実施形態や第2実施形態と同様の第2~第4工程を行うことで締結体110の緩みを検査することができる。
【0105】
第3実施形態の検査システム1は、締結構造310以外は、第1実施形態の検査システム1の全ての技術を用いることができる。第3実施形態の検査システム1を用いた検査方法は、第1工程以外は第1実施形態に係る検査方法の全ての技術を用いることができる。なお、第3実施形態の検査システム1において締結体110の緩みを検出する技術及び思想は、特開2020-52026号公報に記載された技術及び思想を用いることができる。その上で、第1実施形態と同様の特徴を付加することで相乗的な効果を得ることができる。
【0106】
[第4実施形態]
第4実施形態の検査システムは、図1に示される構造物190の締結構造10の代わりに図11で示される構造物490が検査対象とされる点、発光層24及び被覆層22を締結構造10の検査対象領域に設ける代わりに、構造物490の検査対象領域に設けている点のみが第1実施形態の検査システム1と異なり、それ以外は第1実施形態と同一である。第4実施形態の検査システム1を用いた検査方法は、第1実施形態の第1工程に代えて、後述される第1工程が用いられる点が第1実施形態に係る検査方法と異なる。第4実施形態の検査システム1において、第1実施形態と同様の部分については第1実施形態と同一の符号が付され、詳細な説明は省略される。なお、第4実施形態の検査システム1は、構造物490の構成及び発光層24や被覆層22の配置以外は図1図2と同様であるため、以下の説明では、構造物490、発光層24、被覆層22以外は、適宜図1図2が参照される。
【0107】
第4実施形態の検査システム1は、図2のような構成をなし、図11のように構造物490を検査するシステムとして構成される。この検査システム1は、飛行体30と、発光層24(図12)と、被覆層22(図12)と、外部装置60(図2)と、管理装置80(図2)とを備える。飛行体30、外部装置60、管理装置80は、第1実施形態の検査システム1における各々と同一の構成をなし、同一の機能を有する。発光層24及び被覆層22は、第1実施形態の検査システム1における各々と同一の材料によって構成され、同一の機能を有する。なお、発光層24は、励起光によって発光する色素が含有されたものであれば上述の実施形態で説明された発光層24のいずれの材料が用いられてもよい。被覆層22は、励起光の透過を抑制する抑制剤が含有されたものであれば上述の実施形態で説明された発光層24のいずれの材料が用いられてもよい。飛行体30に設けられた撮像部45及び照射部44は、第1実施形態の撮像部45及び照射部44と同一の構成をなし、同一の機能を有する。
【0108】
第4実施形態の検査システム1に適用可能な移動体は、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行し得るものである。図11では、飛行体30が空中を飛行する例が代表例として示される。
【0109】
第4実施形態の検査システム1を用いて行われる検査方法では、第1工程では、構造物490の検査対象領域に発光層24を設けた後、この発光層24を覆うように被覆層22を配置する。図12には、第1工程後の検査対象領域付近が示される。この第1工程は、発光層24や被覆層22の配置領域が異なる点以外は、第1実施形態での第1工程と同一である。図12の例では、構造物490の平坦な表面を覆うように発光層24を積層させた後、この発光層24を覆うように被覆層22を積層させている。構造物490において発光層24に覆われる領域が検査対象領域である。このように、発光層24は、構造物490の検査対象領域を覆い、被覆層22は、発光層24の全体を覆いつつ発光層24を露出させないように設けられる。
【0110】
第4実施形態に係る検査方法において、第2工程、第3工程、第4工程のそれぞれは、第1実施形態に係る検査方法の第2工程、第3工程、第4工程のそれぞれと同様である。この例でも、第2工程では、第1工程の後、飛行体30を飛行させつつ撮像部45の撮像範囲内に被覆層22が位置する位置関係となるように飛行体30を移動させる。そして、第3工程では、飛行体30が飛行した状態で、照射部44が被覆層22に対して励起光を照射し、この照射状態で撮像部45が被覆層22を撮像する。第4工程では、このような撮像部45の撮像によって得られる撮像画像を第1実施形態と同様の検出部が解析し、当該撮像画像から発光層24の発光を示す画像を検出する。発光層24の発光を示す画像の検出方法は、第1実施形態と同様である。
【0111】
図12のように、構造物490に異変がなく被覆層22に亀裂が発生していない通常の状態では、照射部44から被検査部20に対して上述の励起光が照射されても、被覆層22内の抑制剤(遮光剤)により励起光の透過が妨げられるので、下層の発光層24まで十分な励起光が到達しない。よって、励起光が被覆層22に照射されても発光層24は発光状態にはならない。このような状態の被覆層22付近を撮像部45によって撮像しても発光層24が発光する画像は得られない。
【0112】
一方、図13の例では、構造物490の検査対象領域に亀裂490Zが発生し、これに応じて、上層である脆弱な被覆層22には亀裂22Zが発生している。一方、下層である比較的柔軟な発光層24は単に延びるだけで亀裂は発生していない。このような状態において、照射部44から紫外線などの励起光が照射されると、励起光は亀裂22Z内を通過し、発光層24における亀裂22Zの下側の領域24Zに十分な励起光が到達する。よって、この領域24Zは蛍光色素によって発光部として発光する。このように発光部(領域24Z)が発光した状態で発光部近傍を撮像部45が撮像すると、撮像画像において発光部の画像は他の部分の画像と区別された鮮明な色彩の画像となる。よって、このような撮像画像により、被覆層22に亀裂22Zが生じたことが容易に検出され、構造物490における亀裂22Z付近の検査対象領域に異変(図13では亀裂490Z)が発生したことが容易に検出される。
【0113】
なお、図11図13では、構造物490の一例として、建物が示された、検査対象領域として建物の表面部の領域が示されたが、この例に限定されない。例えば、トンネル、橋梁、ダム、洞道、水路、排水管、地中配管、工場内の構造部(例えば、工場内に設置された天井クレーンの構造部分であるクレーンガータ、サドル、その他の要素)などの表面部が検査対象領域であってもよい。また、検査対象領域は屋外であっても屋内であってもよい。また、検査対象領域の材料は、コンクリートの場合が好適例であるが、亀裂が発生し得る材料であればよく、例えば、石材、木材、金属などであってもよい。また、構造物490に発光層及び被覆層を積層する構造は、図12の例に限定されず、特開2013-83493号公報、特許第6575886号公報、特開2014-85195号公報、特開2014-85200号公報、などに開示されるいずれの構造が採用されてもよい。例えば、構造物490の基体の表面に下塗層や剥落防止用シート層などを積層させ、その上に、高弾性の発光層24と発光層24よりも弾性が低い低弾性の被覆層22を積層させてもよい。
【0114】
[他の実施形態]
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0115】
上述した実施形態では、外側配置部(例えばボルト)の外周面に被覆層が直接接触して固定される構成であったが、被覆層が接触する部分は、締結体110が回転する場合に、締結体110と一体的に回転する部分であればよい。例えば、外側配置部に取り付けられる取付部(外側配置部が回転する場合に外側配置部と一体的に回転する取付部材や被覆部分など)が存在する場合、被覆層は、この取付部に接触して固定される構成であってもよい。
【0116】
第3実施形態で例示された被検査部320は、下側層が発光層24と基礎シート326とからなる二層構造を有していたが、この二層構造の部分が一層構造とされた亀裂検出用接着シートであってもよい。この例では、第3実施形態の下側層において上記二層構造となっていた部分が、「上述の励起光によって発光する蛍光色素が混入された高伸展性の樹脂シート」とされていればよい。そして、この樹脂シートの下面に第3実施形態と同様の粘着層が形成され、下側層(樹脂シート及び粘着層)の上に、遮光材が混入された上側層(被覆層22)が樹脂の塗布等により形成されてもよい。この例では、上記樹脂シートが発光層の一例に相当する。
【0117】
上述の実施形態の説明では、被覆層22に亀裂が発生した場合に発光層24に亀裂が発生しない例が説明された。しかし、被覆層22に亀裂が発生した場合に発光層24に励起光が到達する状態となり発光層24の発光状態を示す画像が撮像され得る状態になるのであれば、発光層24に多少亀裂が発生してもよい。
【0118】
上述の実施形態の説明では、主に、陸上に設けられた構造物190に締結構造10が設けられた例、或いは、構造物490が検査対象領域とされた例が説明されたが、構造物190の一部又は全部、及び締結構造10が水中や水面付近に設けられていてもよく、水中や水面付近の構造物の表面部が検査対象領域とされてもよい。つまり、水中や水面付近に設けられた締結構造10又は締結構造10以外の検査対象領域に対して上述の実施形態の技術を適用してもよい。この場合、飛行体30は、水中又は水上を航行し得る移動体(例えば、水中ドローンなど)に置き換えられればよく、この移動体が図2と同様の検査装置40を有していればよい。この場合、第2工程は、上記移動体を水中又は水上において航行させつつ撮像部45の撮像範囲内に被覆層22が位置する位置関係となるように移動体を移動させる工程であればよい。そして、第3工程は、この移動体が水中又は水上を航行している状態で照射部44が被覆層22に対して励起光を照射した状態で撮像部45が被覆層22を撮像する工程であればよい。なお、上述されたいずれの例でも、移動体は、空中、水中、水上のいずれか2以上の場所を移動し得る移動体であってもよい。
【0119】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
1…検査システム
10…締結構造
22…被覆層
24…発光層
30…飛行体(移動体)
44…照射部
45…撮像部
110…締結体
190,490…構造物
192…被締結体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記構造物の検査対象領域に前記発光層を設けた後、前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含み、
前記発光層は、前記照射部から前記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光し、
前記撮像部は、特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し、
前記特定波長帯に前記所定波長が含まれ、
前記第3工程では、前記第2工程によって前記移動体の移動が開始した後に所定条件が成立した場合に前記照射部が前記励起光の照射を開始する
検査方法。
【請求項2】
被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に前記発光層を設けた後、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含み、
前記発光層は、前記照射部から前記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光し、
前記撮像部は、特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し、
前記特定波長帯に前記所定波長が含まれ、
前記第3工程では、前記第2工程によって前記移動体の移動が開始した後に所定条件が成立した場合に前記照射部が前記励起光の照射を開始する
検査方法。
【請求項3】
更に、検出部が、前記撮像部の撮像によって得られる撮像画像を解析し、当該撮像画像から前記発光層の発光を示す画像を検出する第4工程を含む
請求項1又は請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
構造物を検査する検査システムであって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、を備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を備え、
前記発光層は、前記構造物の検査対象領域を覆うように設けられ、前記照射部から前記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光し、
前記被覆層は、前記発光層を覆うように設けられ、
前記移動体が飛行又は航行した状態で、前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射しつつ前記撮像部が前記被覆層を撮像し、
前記撮像部は、特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し、
前記特定波長帯に前記所定波長が含まれ、
前記移動体の移動が開始した後に所定条件が成立した場合に前記照射部が前記励起光の照射を開始する
検査システム。
【請求項5】
被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査システムであって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、を備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を備え、
前記発光層は、前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に設けられ、前記照射部から前記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光し、
前記被覆層は、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように設けられ、
前記移動体が飛行又は航行した状態で、前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射しつつ前記撮像部が前記被覆層を撮像し、
前記撮像部は、特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し、
前記特定波長帯に前記所定波長が含まれ、
前記移動体の移動が開始した後に所定条件が成立した場合に前記照射部が前記励起光の照射を開始する
検査システム。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結体に締結体が締結される締結構造における前記締結体の緩みを検査する検査方法であって、
撮像部と、励起光を照射する照射部と、を備え、空中、水中、水上の少なくともいずれかを飛行又は航行する移動体と、
前記励起光によって発光する色素が含有された発光層と、
前記励起光の透過を抑制する抑制剤が含有された被覆層と、
を用い、
前記締結構造において少なくとも前記締結体と前記被締結体とに挟まれる領域の外側に前記発光層を設けた後、前記締結体に固定され且つ前記発光層を覆うように前記被覆層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記移動体を飛行又は航行させつつ前記撮像部の撮像範囲内に前記被覆層が位置する位置関係となるように前記移動体を移動させる第2工程と、
前記照射部が前記被覆層に対して前記励起光を照射した状態で前記撮像部が前記被覆層を撮像する第3工程と、
を含み、
前記発光層は、前記照射部から前記励起光を受けた場合に所定波長の光を発光し、
前記撮像部は、特定波長帯の発光部位を選択的に撮像し、
前記特定波長帯に前記所定波長が含まれ、
前記第3工程では、前記第2工程によって前記移動体の移動が開始した後に所定条件が成立した場合に前記照射部が前記励起光の照射を開始し、
更に、検出部が、前記撮像部の撮像によって得られる撮像画像を解析し、当該撮像画像から前記発光層の発光を示す画像を検出する第4工程を含む
検査方法。