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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054187
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】茶系アルコール飲料の香味改良剤
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/06 20060101AFI20220330BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20220330BHJP
   A23F 3/40 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C12G3/06
A23F3/16
A23F3/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161239
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祥恵
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真希
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】田墨 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中島 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】増崎 瑠里子
【テーマコード(参考)】
4B027
4B115
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FB17
4B027FC01
4B027FK15
4B027FP85
4B027FP90
4B115MA03
(57)【要約】
【課題】茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制するための香味改良剤の提供。
【解決手段】ソフトフルーツ抽出物または柑橘抽出物を含んでなる、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制するための香味改良剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトフルーツ抽出物または柑橘抽出物を含んでなる、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制するための香味改良剤。
【請求項2】
ソフトフルーツ抽出物がトロピカルフルーツ抽出物である、請求項1に記載の香味改良剤。
【請求項3】
トロピカルフルーツ抽出物がマンゴー抽出物またはアボカド抽出物である、請求項2に記載の香味改良剤。
【請求項4】
柑橘抽出物がオレンジ抽出物である、請求項1に記載の香味改良剤。
【請求項5】
茶系アルコール飲料のアルコール濃度が1~10v/v%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の香味改良剤。
【請求項6】
茶系アルコール飲料のpHが5.0~7.5である、請求項1~5のいずれか一項に記載の香味改良剤。
【請求項7】
茶系アルコール飲料が無炭酸の飲料である、請求項1~6のいずれか一項に記載の香味改良剤。
【請求項8】
茶系アルコール飲料を製造する方法であって、茶系アルコール飲料の製造過程において、請求項1~7のいずれか一項に記載の香味改良剤を添加することを含んでなる、方法。
【請求項9】
茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制する方法であって、茶系アルコール飲料の製造過程において、請求項1~7のいずれか一項に記載の香味改良剤を添加することを含んでなる、方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の香味改良剤を含んでなる、茶系アルコール飲料。
【請求項11】
アルコール濃度が1~10v/v%であり、pHが5.0~7.5である、無炭酸の茶系アルコール飲料であって、ソフトフルーツ抽出物または柑橘抽出物を含んでなる、茶系アルコール飲料。
【請求項12】
ソフトフルーツ抽出物がトロピカルフルーツ抽出物である、請求項11に記載の茶系アルコール飲料。
【請求項13】
トロピカルフルーツ抽出物がマンゴー抽出物またはアボカド抽出物である、請求項12に記載の茶系アルコール飲料。
【請求項14】
柑橘抽出物がオレンジ抽出物である、請求項11に記載の茶系アルコール飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶系アルコール飲料の香味改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料の市場において、茶を含む商品は多く発売されている。そして、そのような飲料における香味の改良についても、様々な試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、果汁由来の糖を用いて、アルコールのべたつき、苦味や渋味を始めとした雑味の少ない茶アルコール飲料を提供する技術が記載されている。特許文献2には、茶系粒子径の制御によって、飲み応えがあるとともにアルコール感も感じられる茶系アルコール飲料を提供する技術が記載されている。特許文献3には、茶抽出物、アルコール、さとうきび由来のバガス抽出物を混合することによって、茶系アルコール飲料のえぐみを低減する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-99420号公報
【特許文献2】特開2017-216936号公報
【特許文献3】特開2012-147775号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、甘さのない中性・無炭酸の容器詰め茶系アルコール飲料において味の不調和を見出した。ここでいう「味の不調和」は、えぐみ、収れん味、刺激的な苦味、味の分離感、辛味、バーニング感、雑味、キレの悪さ等を指し、アルコール単体およびお茶単体で感じられる香味とは明確に区別されるものである。そして、本発明者らは、茶系アルコール飲料にソフトフルーツ抽出物または柑橘抽出物を添加することにより、味の不調和の原因である雑味とキレの悪さを抑制できることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0006】
従って、本発明は、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制するための香味改良剤を提供する。
【0007】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)ソフトフルーツ抽出物または柑橘抽出物を含んでなる、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制するための香味改良剤。
(2)ソフトフルーツ抽出物がトロピカルフルーツ抽出物である、前記(1)に記載の香味改良剤。
(3)トロピカルフルーツ抽出物がマンゴー抽出物またはアボカド抽出物である、前記(2)に記載の香味改良剤。
(4)柑橘抽出物がオレンジ抽出物である、前記(1)に記載の香味改良剤。
(5)茶系アルコール飲料のアルコール濃度が1~10v/v%である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の香味改良剤。
(6)茶系アルコール飲料のpHが5.0~7.5である、前記(1)~(5)のいずれかに記載の香味改良剤。
(7)茶系アルコール飲料が無炭酸の飲料である、前記(1)~(6)のいずれかに記載の香味改良剤。
(8)茶系アルコール飲料を製造する方法であって、茶系アルコール飲料の製造過程において前記(1)~(7)のいずれかに記載の香味改良剤を添加することを含んでなる、方法。
(9)茶系アルコール飲料のアルコール濃度が1~10v/v%である、前記(8)に記載の方法。
(10)茶系アルコール飲料のpHが5.0~7.5である、前記(8)または(9)に記載の方法。
(11)茶系アルコール飲料が無炭酸の飲料である、前記(8)~(10)のいずれかに記載の方法。
(12)茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制する方法であって、茶系アルコール飲料の製造過程において、前記(1)~(7)のいずれかに記載の香味改良剤を添加することを含んでなる、方法。
(13)茶系アルコール飲料のアルコール濃度が1~10v/v%である、前記(12)に記載の方法。
(14)茶系アルコール飲料のpHが5.0~7.5である、前記(12)または(13)に記載の方法。
(15)茶系アルコール飲料が無炭酸の飲料である、前記(12)~(14)のいずれかに記載の方法。
(16)前記(1)~(7)のいずれかに記載の香味改良剤を含んでなる、茶系アルコール飲料。
(17)アルコール濃度が1~10v/v%である、前記(16)に記載の茶系アルコール飲料。
(18)pHが5.0~7.5である、前記(16)または(17)に記載の茶系アルコール飲料。
(19)無炭酸の飲料である、前記(16)~(18)のいずれかに記載の茶系アルコール飲料。
(20)アルコール濃度が1~10v/v%であり、pHが5.0~7.5である、無炭酸の茶系アルコール飲料であって、ソフトフルーツ抽出物または柑橘抽出物を含んでなる、茶系アルコール飲料。
(21)ソフトフルーツ抽出物がトロピカルフルーツ抽出物である、前記(20)に記載の茶系アルコール飲料。
(22)トロピカルフルーツ抽出物がマンゴー抽出物またはアボカド抽出物である、前記(21)に記載の茶系アルコール飲料。
(23)柑橘抽出物がオレンジ抽出物である、前記(20)に記載の茶系アルコール飲料。
【0008】
本発明によれば、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制することができる。本発明によれば、さらに、茶系アルコール飲料のえぐみと収れん味を抑制することも可能である。本発明によれば、さらに、茶系アルコール飲料の刺激的な苦味を抑制することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
【0010】
本発明において「茶系アルコール飲料」とは、茶またはその水抽出液を含有するアルコール飲料であって、その茶の風味を有するものをいう。茶またはその水抽出液の含有量は特に限定されるものではなく、使用する茶の風味の強さや、茶系アルコール飲料に付与しようとする風味の強さなどに応じて当業者が適宜決定することができる。例えば、茶系アルコール飲料を製造する際に、その茶を単独で飲用するときと同じ様式で茶の水抽出液を製造し、得られた水抽出液を他の原料と混合することができる。茶の水抽出液は、その茶に適した温度の水で抽出することにより製造すればよく、その温度および抽出処理の時間は、使用する茶の風味の強さや、茶系アルコール飲料に付与しようとする風味の強さなどに応じて当業者が適宜決定することができる。茶系アルコール飲料全体の質量に対する茶の使用比率は、当業者が適宜決定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば0.01~5質量%、好ましくは0.01~1.0質量%とすることができる。
【0011】
本発明において「茶」とは、水または湯で抽出して飲用に供される、一般的に茶として認識されているものを意味する。このような茶としては、例えば、緑茶、ほうじ茶、紅茶、烏龍茶、穀物茶、ルイボス茶、ブレンド茶等を挙げることができる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様では、茶としては、Camellia sinensisに属する茶葉を用いることができ、例えば、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、番茶、ほうじ茶等の緑茶葉のような不発酵茶に限らず、烏龍茶のような半発酵茶や、紅茶のような発酵茶、プーアル茶のような後発酵茶等も用いることができる。
【0013】
本発明の他の好ましい実施態様では、茶としては、茶を単独で飲用するときと同じ様式で茶の水抽出液を製造した際に、その水抽出液がポリフェノールを含有するようなものが用いられる。ここで、ポリフェノールは、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシル基をもつ成分のことを意味する。茶由来のポリフェノールとしては、例えば、カテキン類やプロアントシアニジン類などの一次ポリフェノールのみならず、それらの酸化重合等による生成物であるテアシネンシン類、ウーロンテアニン、テアフラビン類、テアルビジン類等の二次ポリフェノールも包含する。本発明において、ポリフェノールの含有量はタンニン量として規定することができる。このタンニン量は、茶類のポリフェノール量を評価する際の基準である酒石酸鉄法(中林敏郎他著「緑茶・紅茶・烏龍茶の化学と機能」弘学出版、137ページ参照)を用いて測定することができる。この測定方法においては、液中のポリフェノールと、酒石酸鉄試薬とを反応させて生じた紫色成分について、吸光度(540nm)を測定することにより、没食子酸エチルを標準物質として作成した検量線を用いて定量することができる。このようにして得られた定量値を1.5倍したものをタンニン量とすることができる。本発明の茶系アルコール飲料に含まれる茶に起因するポリフェノールの量は、タンニン量として、好ましくは10~100mg/100mLであり、より好ましくは15~80mg/100mL、さらに好ましくは20~60mg/100mLである。
【0014】
本発明の特に好ましい実施態様では、茶として、ほうじ茶、紅茶またはこれらの混合物が用いられる。
【0015】
本発明の香味改良剤は、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制するための香味改良剤である。本発明の香味改良剤は、有効成分として、ソフトフルーツ抽出物または柑橘抽出物(以下、これらの抽出物をあわせて「果実抽出物」ということがある。)を含有する。
【0016】
本発明において「ソフトフルーツ」とは、仁果類果実、核果類果実、しょう果類果実、ならびに熱帯性および亜熱帯性果実のいずれかを意味する。仁果類果実としては、例えば、りんご、なし(例えば、日本なし、西洋なし等)などを挙げることができる。核果類果実としては、例えば、あんず、桃、すもも、梅などを挙げることができる。トロピカルフルーツ(熱帯性果実)としては、例えば、マンゴー、パイナップル、グアバ、バナナ、キウイフルーツ、パパイヤ、パッションフルーツ、アセロラ、アボカドなどを挙げることができる。本発明の好ましい実施態様によれば、ソフトフルーツとしてはトロピカルフルーツが使用され、さらに好ましくはマンゴー、アボカドまたはこれらの混合物が使用される。
【0017】
柑橘としては、例えば、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、マンダリン、シークヮーサー、イヨカン、ブンダン、キンカン、ベルガモット、ライム、ユズ、スダチ、カボスなどを挙げることができ、好ましくはオレンジが使用される。
【0018】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の香味改良剤は、有効成分として、マンゴー抽出物、アボカド抽出物、オレンジ抽出物またはこれらの任意の混合物とされる。
【0019】
上記の抽出物は、フルーツの抽出物の製法として一般的な方法により製造されるものである。このような方法としては、例えば、生果または乾燥果を水、湯、エタノールなどの溶剤で抽出する方法、生果または乾燥果を水蒸気蒸留する方法、生果または乾燥果を超臨界抽出する方法などが挙げられる。フルーツの生果または乾燥果は、そのままの状態で用いてもよいが、抽出処理の効率の観点から、破砕、摩砕等の加工を加えてもよいし、ペレット状にしてもよい。さらに、フルーツの生果または乾燥果は、抽出の前に、固形物を分解するための酵素処理に供してもよい。この酵素処理に用いられる酵素は当業者により適宜選択されるが、好ましくはセルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびペクチナーゼのうちの少なくとも一種の酵素(これら酵素の任意の組合せを含む)、より好ましくはこれら3種の組合せとされる。酵素の添加量、反応溶液のpH、酵素処理の温度および時間などの条件は、当業者であれば適宜設定することができる。この酵素処理では、固形物を完全に分解する必要はなく、ある程度分解されれば十分である。酵素処理が終わった後は、酵素の失活処理が行われることが望ましく、例えば、タンパク質が変性する温度(例えば80℃)で10分程度インキュベートすることにより失活処理を行うことができる。
【0020】
抽出処理が終わった後、得られる混合物の濾液を、本発明の香味改良剤とすることができる。本発明の香味改良剤には、保存安定性の観点から、食品としての安全性が確認された保存剤、例えばエタノールを添加して保存することができる。また、本発明の香味改良剤は、香料の形態とすることができる。
【0021】
本発明の香味改良剤は、本発明の茶系アルコール飲料の茶の香味に悪影響を与えないよう、茶の香味と比較して強い香気を有さないものとすることが好ましい。本発明の香味改良剤の有効成分である果実抽出物におけるそのフルーツの香味の強弱は、抽出に用いるフルーツの量や各種抽出条件の調節等によって、当業者であれば適宜調整することができる。
【0022】
本発明の香味改良剤は、茶系アルコール飲料に添加することにより、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制することができる。従って、本発明の他の態様によれば、本発明の香味改良剤を含んでなる茶系アルコール飲料が提供される。このような飲料は、茶系アルコール飲料の製造過程において、飲料の原料に本発明の香味改良剤を添加することにより製造することができる。本発明のさらに別の態様によれば、茶系アルコール飲料の製造過程において、本発明の香味改良剤を飲料の原料に添加することを含んでなる、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さを抑制する方法が提供される。
【0023】
茶系アルコール飲料における本発明の香味改良剤の含有量(つまり添加量)は、特に制限されるものではなく、茶の種類や、所望の改良効果の程度に応じて、当業者により適宜決定される。当業者であれば、様々な濃度で本発明の香味改良剤を含有する茶系アルコール飲料のサンプルを実際に調製し、各サンプルについて所望の効果を確認することにより、その飲料に最適な香味改良剤の量を見出すことができる。例えば、果実抽出物に含まれる香味成分の量を示す指標としてエキス分が考えられる。このようなエキス分は、例えば、振動式密度計を用いて測定することができる。また、振動式密度計を用いたエキス分の定量は、例えば、国税庁所定分析法(国税庁訓令第1号、昭和36年1月11日、平19国税庁訓令第6号)の5-3 B)に準じて行うことができる。このエキス分を用いて茶系アルコール飲料における本発明の香味改良剤の含有量(つまり添加量)を規定する場合には、例えば、0.000001w/v%~0.06w/v%(エキス分換算)、好ましくは0.000002w/v%~0.05w/v%とすることができる。
【0024】
本発明の茶系アルコール飲料のアルコール濃度は、特に制限されるものではないが、好ましくは1~10v/v%とされる。また、茶系アルコール飲料の雑味とキレの悪さは、アルコール濃度が高いほど顕著に表れるため、本発明は、3v/v%以上、好ましくは6v/v%以上のアルコール濃度を有する茶系アルコール飲料にとって有利である。本発明の一つの実施態様によれば、本発明の茶系アルコール飲料のアルコール濃度は、3~10v/v%、好ましくは3~9v/v%、あるいは、6~10v/v%、好ましくは6~9v/v%とされる。
【0025】
本発明の茶系アルコール飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料であってもよい。しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の茶系アルコール飲料は無炭酸の飲料とされる。
【0026】
本発明の茶系アルコール飲料のpHは、特に制限されるものではないが、好ましくは5.0~7.5に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0027】
本発明の茶系アルコール飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができる。
【0028】
本発明の茶系アルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0029】
さらに、本明細書によれば、新規な風味を有する茶系アルコール飲料を提供する目的において、アルコール濃度が1~10v/v%であり、pHが5.0~7.5である、無炭酸の茶系アルコール飲料であって、上述のソフトフルーツ抽出物または柑橘抽出物を含んでなる茶系アルコール飲料が提供される。
【実施例0030】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1:茶系アルコール飲料に特有の香味の検討
官能評価に用いる茶系アルコール飲料のサンプルを次のようにして調製した。すなわち、アルコールを含有した水溶液に市販の様々な茶(そのまま飲用するための商品)を加え、得られた混合液のアルコール濃度を3v/v%、6v/v%、または9v/v%に調整し、容器詰め後に殺菌した。
【0032】
各サンプルを官能評価試験に供した。具体的には、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル6名により、味の不調和の要素である(i)えぐみ・収れん味、(ii)刺激的な苦み、(iii)雑味・キレの悪さの3つの評価項目について、1(アルコール濃度0v/v%と同等)~5(アルコール濃度0v/v%と比較しなくても明確に感じられる)のスコア(0.5刻み)で評価した。結果を以下の表に示す。評価結果は、スコアの平均値±標準偏差として表す。
【0033】
【表1】
【0034】
上記の表によれば、茶とアルコールの組み合わせにより味の不調和があり、特に紅茶とほうじ茶で顕著であることがわかった。
【0035】
実施例2:ほうじ茶系アルコール飲料への果実抽出物の添加試験
官能評価に用いる茶系アルコール飲料のサンプルを次のようにして調製した。まず、アルコールを含有した水溶液にほうじ茶抽出液(飲料サンプルにおけるタンニン量:25mg/100mL)を加え、さらにマンゴー抽出物(水蒸気蒸留抽出。エキス分0.02w/v%)、オレンジ抽出物(エタノール抽出。エキス分5w/v%)、またはアボカド抽出物(水蒸気蒸留抽出。エキス分0.02w/v%)を、0.01w/v%、0.1w/v%、または0.5w/v%の濃度で加え、得られた混合液のアルコール濃度を3v/v%、6v/v%、または9v/v%に調整し、容器詰後に殺菌した。なお、エキス分は、国税庁所定分析法(国税庁訓令第1号、昭和36年1月11日、平19国税庁訓令第6号)の5-3 B)に準じて、振動式密度計を用いて測定した。
【0036】
各サンプルを官能評価試験に供した。具体的には、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル6名により、味の不調和の要素である(i)えぐみ・収れん味、(ii)刺激的な苦み、(iii)雑味・キレの悪さの3つの評価項目について、1(アルコール濃度0v/v%と同等)~5(アルコール濃度0v/v%と比較しなくても明確に感じられる)のスコア(0.5刻み)で評価した。結果を以下の表に示す。評価結果は、スコアの平均値±標準偏差として表す。
【0037】
【表2】
【0038】
結果から、上記の果実抽出物の添加により、ほうじ茶とアルコールの組み合わせによる雑味・キレの悪さが抑制されることがわかった。また、上記の果実抽出物の添加により、えぐみ・収れん味および刺激的な苦みも抑制されることがわかった。よって、ほうじ茶とアルコールの組み合わせによる味の不調和は、果実抽出物の添加により改善できることがわかった。
【0039】
実施例3:紅茶系アルコール飲料への果実抽出物の添加試験
官能評価に用いる茶系アルコール飲料のサンプルを次のようにして調製した。まず、アルコールを含有した水溶液に紅茶抽出液(飲料サンプルにおけるタンニン量:50mg/100mL)を加え、さらにマンゴー抽出物(水蒸気蒸留抽出。エキス分0.02w/v%)、オレンジ抽出物(エタノール抽出。エキス分5w/v%)、またはアボカド抽出物(水蒸気蒸留抽出。エキス分0.02w/v%)を、0.01w/v%、0.1w/v%、または0.5w/v%の濃度で加え、得られた混合液のアルコール濃度を3v/v%、6v/v%、または9v/v%に調整し、容器詰後に殺菌した。なお、エキス分は、国税庁所定分析法(国税庁訓令第1号、昭和36年1月11日、平19国税庁訓令第6号)の5-3 B)に準じて、振動式密度計を用いて測定した。
【0040】
各サンプルを官能評価試験に供した。具体的には、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル6名により、味の不調和の要素である(i)えぐみ・収れん味、(ii)刺激的な苦み、(iii)雑味・キレの悪さの3つの評価項目について、1(アルコール濃度0v/v%と同等)~5(アルコール濃度0v/v%と比較しなくても明確に感じられる)のスコア(0.5刻み)で評価した。結果を以下の表に示す。評価結果は、スコアの平均値±標準偏差として表す。
【0041】
【表3】
【0042】
結果から、上記の果実抽出物の添加により、紅茶とアルコールの組み合わせによる雑味・キレの悪さが抑制されることがわかった。また、上記の果実抽出物の添加により、えぐみ・収れん味および刺激的な苦みも抑制されることがわかった。よって、紅茶とアルコールの組み合わせによる味の不調和は、果実抽出物の添加により改善できることがわかった。