(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054190
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】水素水製造装置及び水素水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20060101AFI20220330BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20220330BHJP
【FI】
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C02F1/68 530L
C02F1/68 540Z
B01F1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161244
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】512179429
【氏名又は名称】株式会社光未来
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】羅 景珍
(72)【発明者】
【氏名】金 成權
(72)【発明者】
【氏名】張 文士
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AA01
4G035AE02
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】供給される水から連続して水素水を取り出し可能であって、生産性に優れるとともに、安定した水素濃度の水素水を得られるような水素水製造装置の提供。
【解決手段】中空筒状の密閉容器からなる溶存槽の上部及び下部にそれぞれ上部管路及び下部管路を設けて、上部管路から水をその内部に供給し気圧よりも高い圧力で水素と二相共存状態にして、下部管路から水を水素水として取り出す水素水製造装置である。上流から下流に向けて下部管路を上部管路へと順次接続して直列接続された複数の溶存槽を含み、最上流にある溶存槽の上部管路である流入配管に送水管を接続し、全ての溶存槽を流入配管の送水圧力Tで二相共存状態を維持させたまま、最下流にある溶存槽の下部管路である取出配管の内部で圧力損失を与えて外部に水を取り出すことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の密閉容器からなる溶存槽の上部及び下部にそれぞれ上部管路及び下部管路を設けて、前記上部管路から水をその内部に供給し気圧よりも高い圧力で水素と二相共存状態にして、前記下部管路から水を水素水として取り出す水素水製造装置であって、
上流から下流に向けて前記下部管路を前記上部管路へと順次接続して直列接続された複数の前記溶存槽を含み、最上流にある前記溶存槽の前記上部管路である流入配管に送水管を接続し、全ての前記溶存槽を前記流入配管の送水圧力Tで二相共存状態を維持させたまま、最下流にある前記溶存槽の前記下部管路である取出配管の内部で圧力損失を与えて外部に水を取り出すことを特徴とする水素水製造装置。
【請求項2】
前記流入配管に水素供給機構からの水素供給配管を接続され、水素又は/及び水を最上流にある前記溶存槽に供給されることを特徴とする請求項1記載の水素水製造装置。
【請求項3】
前記流入配管及び前記取出配管はそれぞれ流量弁を設けられ、単位時間当たりの前記流入配管及び前記取出配管を流れる水の流量を等しくするように制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素水製造装置。
【請求項4】
前記取出配管は、最上流にある前記溶存槽内の圧力と大気圧との圧力差分の圧力損失を与えるように粘性抵抗を生じさせる径及び長さを有する管状路であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の水素水製造装置。
【請求項5】
前記流入配管には送水圧力調整弁が設けられ、前記送水管からの送水圧力よりも低い前記送水圧力Tに調整されることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の水素水製造装置。
【請求項6】
前記溶存槽は、最上流にある水素溶解溶存槽と、最下流にある水素濃度保持溶存槽と、その間にあって圧力を調整する圧力調整溶存槽と、の3つからなることを特徴とする請求項1乃至5のうちの1つに記載の水素水製造装置。
【請求項7】
前記圧力調整溶存槽には多孔質フィルタを収容することを特徴とする請求項6記載の水素水製造装置。
【請求項8】
前記水素溶解溶存槽にはカーボンフィルタを収容することを特徴とする請求項6又は7に記載の水素水製造装置。
【請求項9】
中空筒状の密閉容器からなる溶存槽の上部及び下部にそれぞれ上部管路及び下部管路を設けて、前記上部管路から水をその内部に供給し気圧よりも高い圧力で水素と二相共存状態にして、前記下部管路から水を水素水として取り出す水素水製造方法であって、
上流から下流に向けて前記下部管路を前記上部管路へと順次接続して直列接続された複数の前記溶存槽について、最上流にある前記溶存槽の前記上部管路である流入配管から送水し、全ての前記溶存槽を前記流入配管の送水圧力Tで二相共存状態を維持させたまま、最下流にある前記溶存槽の前記下部管路である取出配管の内部で圧力損失を与えて外部に水を取り出すことを特徴とする水素水製造方法。
【請求項10】
前記取出配管を開放し全ての前記溶存槽を空とした状態から、水素を前記流入配管から供給し前記溶存槽を水素で満たした後に、前記水素の供給を停止するとともに前記取出配管を閉じて、前記流入配管から供給される水で前記溶存槽を昇圧させ、全ての前記溶存槽を前記流入配管の送水圧力Tで二相共存状態とさせることを特徴とする請求項9記載の水素水製造方法。
【請求項11】
単位時間当たりの前記流入配管及び前記取出配管を流れる水の流量を等しくすることを特徴とする請求項9記載の水素水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に水素を溶存させた水素水を製造するための水素水製造装置及び水素水製造方法に関し、特に、供給される水から連続して水素水を取り出し可能な水素水製造装置及び水素水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水に水素を溶存させた水素水についての効能が報告されている。ここで、気温25℃、1気圧のもとでは、水1lに水素ガス(以下、単に「水素」とする。)は、1.57mg、つまり、1.6ppm程度までしか溶解させることはできず、例えば、二酸化炭素ガスや酸素ガスなど、他のガスを水に溶解させる場合に比べ、非常に微量しか水中には存在しないことになる。そこで、水と水素とを圧力を高めた閉空間に共存させた溶存槽で気液二相状態にて維持して、ヘンリーの法則に従って溶解度(飽和濃度)を高めることが考慮された。一方、溶存槽から水素水を大気中に取り出してしまうと、圧力が元に戻り、溶解度も低下するため、一気に水素水から水素が大気中に抜けてしまい、飽和濃度以下にまで濃度が低下してしまう。
【0003】
例えば、特許文献1では、溶存槽から細い径且つ長尺の細管を介して水に粘性抵抗を与えつつ、徐々に細管内で減圧させて水素を水から抜けないようにして水素水を大気中に取り出すことのできる気体溶解装置が開示されている。ここでは、水槽の水と水素とをポンプで溶存槽へと導き、大気圧よりも高い圧力の気液二相状態に維持して水素を水に溶解させる一方、該溶存槽から細管を通して水素水を再び水槽へと導き、水槽の水を溶解度(飽和濃度)以上に高い濃度で水素を溶存させた水素水とできることを述べている。
【0004】
一方、一般家庭に配給されている水道水や、タンクのミネラルウォータを連続的に水素水として取り出すことの出来る装置も提案されている。
【0005】
特許文献2では、水道配管で液体を圧送する加圧部を形成し、該水道配管に接続される流路に水素のような気体を注入する気体注入部を設け、大気圧よりも高い圧力の気液二相状態とするとともに、圧力調整弁を設けた減圧部を介して気体を溶存させた水を取り出すことのできる気体溶解装置を開示している。ここで、減圧部は、圧力損失を与えるような長さの管路でも良いとしており、水を連続的に水素水として取り出すことができる。また、ポンプを用いていないため、装置構造を簡略化できるとともに、駆動部としてのバルブ機構を減らすことができて、故障の機会を減じ得るのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-101585号公報
【特許文献2】特開2008-188574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、溶存槽を用いて大気圧よりも高い圧力で水と水素とを気液二相状態にすると、ヘンリーの法則に従って大気中よりも水素の水への溶解度を高めることができる。一方、溶存槽に水を供給しながら水素を溶存させた水を取り出そうとすると、水を供給せずに水素を溶解させた水を取り出す場合に比べ、取り出される水に溶解している水素の濃度が低下する傾向となる。そこで、時間当たりに供給する水の量を減らし、溶存槽にて気液二相状態で水を滞留させる時間を長くし、十分に水素を水に溶解させてから取り出すことが考慮されるが、生産性が低下してしまう。また、溶存槽の圧力、水量、そして単位時間の水の供給量及び取り出し量などのパラメータが相互に関連し合って、取り出される水素水の水素濃度を安定させることが難しい。
【0008】
本発明は、以上のような状況を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、供給される水から連続して水素水を取り出し可能であって、生産性に優れるとともに、安定した水素濃度の水素水を得られるような水素水製造装置及び水素水製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による水素水製造装置は、中空筒状の密閉容器からなる溶存槽の上部及び下部にそれぞれ上部管路及び下部管路を設けて、前記上部管路から水をその内部に供給し気圧よりも高い圧力で水素と二相共存状態にして、前記下部管路から水を水素水として取り出す水素水製造装置であって、上流から下流に向けて前記下部管路を前記上部管路へと順次接続して直列接続された複数の前記溶存槽を含み、最上流にある前記溶存槽の前記上部管路である流入配管に送水管を接続し、全ての前記溶存槽を前記流入配管の送水圧力Tで二相共存状態を維持させたまま、最下流にある前記溶存槽の前記下部管路である取出配管の内部で圧力損失を与えて外部に水を取り出すことを特徴とする。
【0010】
かかる特徴によれば、外部から水を供給される溶存槽と、水素水を外部に取り出す溶存槽とを独立させ、安定した水素濃度の水素水を生産性よく得られるのである。
【0011】
上記した発明において、前記流入配管に水素供給機構からの水素供給配管を接続され、水素又は/及び水を最上流にある前記溶存槽に供給されることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、簡便な機構で複数の溶存槽内部の気相部分を水素で満たすことができて、安定した水素濃度の水素水を生産性よく得られるのである。
【0012】
上記した発明において、前記流入配管及び前記取出配管はそれぞれ流量弁を設けられ、単位時間当たりの前記流入配管及び前記取出配管を流れる水の流量を等しくするように制御されることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、安定した水素濃度の水素水を連続して生産性よく得られるのである。
【0013】
上記した発明において、前記取出配管は、最上流にある前記溶存槽内の圧力と大気圧との圧力差分の圧力損失を与えるように粘性抵抗を生じさせる径及び長さを有する管状路であることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、圧力調整のためのバルブのような駆動機構を用いることなく、安定した水素濃度の水素水を連続して生産性よく得られるのである。
【0014】
上記した発明において、前記流入配管には送水圧力調整弁が設けられ、前記送水管からの送水圧力よりも低い前記送水圧力Tに調整されることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、供給される水道水の供給圧力に依存せず、安定した水素濃度の水素水を連続して生産性よく得られるのである。
【0015】
上記した発明において、前記溶存槽は、最上流にある水素溶解溶存槽と、最下流にある水素濃度保持溶存槽と、その間にあって圧力を調整する圧力調整溶存槽と、の3つからなることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、簡便な装置で、安定した水素濃度の水素水を連続して生産性よく得られるのである。
【0016】
上記した発明において、前記圧力調整溶存槽には多孔質フィルタを収容することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、安定した水素濃度の水素水を連続して生産性よく得られるのである。
【0017】
上記した発明において、前記水素溶解溶存槽にはカーボンフィルタを収容することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、飲用に適した安定した水素濃度の水素水を連続して生産性よく得られるのである。
【0018】
本発明による水素水の製造方法は、中空筒状の密閉容器からなる溶存槽の上部及び下部にそれぞれ上部管路及び下部管路を設けて、前記上部管路から水をその内部に供給し気圧よりも高い圧力で水素と二相共存状態にして、前記下部管路から水を水素水として取り出す水素水製造方法であって、上流から下流に向けて前記下部管路を前記上部管路へと順次接続して直列接続された複数の前記溶存槽について、最上流にある前記溶存槽の前記上部管路である流入配管から送水し、全ての前記溶存槽を前記流入配管の送水圧力Tで二相共存状態を維持させたまま、最下流にある前記溶存槽の前記下部管路である取出配管の内部で圧力損失を与えて外部に水を取り出すことを特徴とする。
【0019】
かかる特徴によれば、外部から水を供給される溶存槽と、水素水を外部に取り出す溶存槽とを独立させ、安定した水素濃度の水素水を生産性よく得られるのである。
【0020】
上記した発明において、前記取出配管を開放し全ての前記溶存槽を空とした状態から、水素を前記流入配管から供給し前記溶存槽を水素で満たした後に、前記水素の供給を停止するとともに前記取出配管を閉じて、前記流入配管から供給される水で前記溶存槽を昇圧させ、全ての前記溶存槽を前記流入配管の送水圧力Tで二相共存状態とさせることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、複数の溶存槽の内部を水素でパージし、安定した水素濃度の水素水を生産性よく得られるのである。
【0021】
上記した発明において、単位時間当たりの前記流入配管及び前記取出配管を流れる水の流量を等しくすることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、安定した水素濃度の水素水を連続して生産性よく得られるのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の代表的な一例による水素水製造装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1乃至
図3を用いて、本発明による水素水製造装置及びこれを用いた水素水製造方法について具体的に説明する。
【0024】
図1に示すように、水素水製造装置10は、複数の溶存槽を備え、例えば水道に接続させるなどして気圧よりも高い圧力で水を供給しつつ連続的に水素水を製造することのできるものである。
【0025】
水の経路に沿って順に説明する。まず、水を供給する送水管1は気圧よりも高い水圧を有する水源に接続させて、水圧を確保する。例えば水道に接続すると好適である。ここで、水素水製造装置10では送水管1から送水される水の圧力により送水圧力Tを得ている。そこで、送水管1には圧力制御バルブ21が設けられ、送水管1に供給される水源の圧力よりも低い送水圧力Tに調整できるようにされている。これによって、送水管1に供給される水道水などの圧力に依存せずに、送水圧力Tで安定して水素水製造装置10に水を送水できる。送水管1は、さらに逆流防止のためのチェックバルブ22を備え、チェックバルブ22を介して流入配管2へ接続される。流入配管2は分岐配管2aを備えて水の流れを一部分岐させ得るとともに、さらに後述する水素供給機構30からの水素供給配管2bも備えて水素を合流させることもできるがこれらについては後述する。
【0026】
流入配管2は、上部管路として第1溶存槽11の上部に接続する。第1溶存槽11は中空筒状の縦型の密閉容器であり、上部管路である流入配管2から水を落下させつつ水素とともに内部に供給させることができる。第1溶存槽11の内部では水素と水とが二相共存状態にされ、供給される水によって圧力を付与されることで水素の水への溶解を促進させることができる。また、上部から水を落下させることで水相中に気相の泡を形成させ、これによっても水素の溶解を促進させ得る。
【0027】
第1溶存槽11の下部管路は上流側の接続配管3であり、第2溶存槽12の上部管路として第2溶存槽12の上部に接続されている。第2溶存槽12も同様に、中空筒状の縦型の密閉容器であり、内部では水素と水(水素水)とが二相共存状態にされている。さらに、第2溶存槽12の下部管路である下流側の接続配管4が、第3溶存槽13の上部管路として第3溶存槽13の上部に接続されている。第3溶存槽13も同様に、中空筒状の縦型の密閉容器であり、内部では水素と水(水素水)とが二相共存状態にされている。つまり、上流から下流に向けて下部管路を上部管路へと順次接続して第1溶存槽11、第2溶存槽12及び第3溶存槽13を直列接続している。これにより、全ての溶存槽を流入配管2の送水圧力Tで二相共存状態とし、これを維持させたまま水素水を製造できる。
【0028】
なお各溶存槽には適宜フィルタを設けてもよい。水素水製造装置10においては、第1溶存槽11にカーボンフィルタを収容し、第2溶存槽12にはナノフィルタなどの多孔質フィルタを収容している。カーボンフィルタでは飲用に適した水素水を製造することができ、多孔質フィルタでは生じた水素の気泡を細かくして水素水中に長時間留まるようにさせ得る。つまり、飲用に適するとともに安定した水素濃度の水素水を得ようとするものである。一方、第3溶存槽はフィルタのないブランクタンクとされている。
【0029】
第3溶存槽13の下部管路としての取出配管5は、取り出す水素水の圧力を大気圧付近まで低下させる圧力降下機構23を備えている。圧力降下機構23は、急激な減圧による水素水からの水素の離脱を抑制するためのものである。例えば、圧力降下機構23は、第1溶存槽11内の圧力と大気圧との圧力差分の圧力損失を流れる水素水に与えるように粘性抵抗を生じさせる径及び長さを有する管状路とし得る。これには比較的長い経路を有する細管を好適に用いることができる。これによって、安定した流れを形成して急激な圧力低下を防止することができ、圧力調整のためのバルブのような駆動機構を用いることなく減圧できる。取出配管5のさらに下流には、流量計測センサ24が備えられ、取出配管5からの水素水の流量を測定している。取出配管5はさらに下流に電磁弁25を備え、取出し口6に接続している。電磁弁25は蛇口としてもよい。
【0030】
上記したように、流入配管2は分岐配管2aを備えて水の流れを一部分岐させ得る。分岐配管2aは、水素供給機構30に接続され分岐した水を供給することができる。水素供給機構30では、分岐配管2aからの水を逆浸透膜からなるROフィルタ31及びイオン交換樹脂からなるイオンフィルタ32を介して電解槽33に供給する。電解槽33では水を電気分解することで水素を製造できる。水素と同時に生成される酸素は電解槽33の上部から排出される。製造された水素は電解槽33から上記した水素供給配管2bを通って流入配管2に供給され、流入配管2内部の水と合流される。水素供給配管2bには圧力センサ39が接続され、電磁バルブ34によって水素供給配管2bに供給される水素の圧力や量を調整できる。
【0031】
圧力センサ39及び上記した取出配管5の流量計測センサ24からは、計測された値に対応する信号が制御基板40に入力される。制御基板40では、これらの入力信号に対応しつつ、予め定められたプログラムに従って電解槽33、圧力制御バルブ21、電磁バルブ34の動作を制御できる。
【0032】
次に、水素水製造装置10を用いた水素水の製造方法について説明する。
【0033】
水素水製造装置10の使用開始にあたり、電磁弁25を開放して取出配管5を開放し、第1溶存槽11、第2溶存槽12及び第3溶存槽13のいずれも内部が空の状態、つまり内部に空気が満たされた状態から使用を開始する。なお、説明をわかりやすくするために、溶存槽の内部のフィルタについては無いものとする。
【0034】
図1を再び参照すると、まず、圧力制御バルブ21を開け、送水管1から流入配管2に水を導く。さらに、流入配管2からの水の一部を分岐配管2aから水素供給機構30に導き、ROフィルタ31及びイオンフィルタ32を介して電解槽33に供給し、水の電気分解によって水素を生成させる。生成された水素は水素供給配管2bから流入配管2に合流し水と混合され、又は直接第1溶存槽11の上部に供給される。
【0035】
すると、
図2に示すように、第1溶存槽11では、気液二相共存状態で下側に液体、上側に気体を貯留させる。水に併せ気体(水素)を供給することで、第1溶存槽11の内部圧力を第2溶存槽12の内部圧力に釣り合わせるように、水が接続配管3へ追い出され、第2溶存槽12へ流入する。さらに、気体の一部、特に、水素に比べ比重の大きい空気が水とともに接続配管3へ流入し、第2溶存槽12へ移動する。同様に、第2溶存槽12では、接続配管3を介して第1溶存槽11から水に併せ気体(空気)が供給されるが、接続配管4を介して、空気が水とともに第3溶存槽13へと移動する。また、第3溶存槽13では、接続配管4を介して第2溶存槽12から水に併せ気体(空気)が供給されるが、接続配管5を介して、空気が水とともに外部に排出されるのである。つまり、第1溶存槽11、第2溶存槽12、第3溶存槽13の水面Sは底部近傍にあってほとんど上昇しない。
【0036】
この状態で時間が経過すると、第1溶存槽11の内部の空気が全て第2溶存槽12に移動し、第1溶存槽11の内部は水素に置換される。同様に、第2溶存槽12、第3溶存槽13においても、若干の時差を生じつつ、順次、内部が水素に置換される。
【0037】
図3に示すように、第1溶存槽11、第2溶存槽12、第3溶存槽13の内部を水素で満たしたら、電磁弁25を閉じ取出配管5を閉塞するとともに、水素の供給を停止して流入配管2から水のみを第1溶存槽11に供給する。すると、水面Sが上昇し、第1溶存槽11内の気相部分の体積が圧縮されて内部圧力を上昇させる。一方、第1溶存槽11の内部圧力が第2溶存槽12よりも高くなろうとするため、下部管路である接続配管3から第2溶存槽12へ向けて水を流出させ、第1溶存槽11及び第2溶存槽12の内部圧力を釣り合わせようとする。
【0038】
更に、第2溶存槽12でも、接続配管3から水が流入し、水面Sを上昇させることで、気相部分の体積が圧縮されて内部圧力を上昇させる。すると、接続配管4から第3溶存槽13へ向けて水を流出させ、第2溶存槽12及び第3溶存槽13の内部圧力を釣り合わせようとする。
【0039】
一方、第3溶存槽13でも、接続配管4から水が流入し、水面Sを上昇させることで、気相部分の体積が圧縮されて内部圧力を上昇させるが、取出配管5が閉塞されているため、そのまま内部圧力が上昇しようとする。これにより、第3溶存槽13の内部圧力と釣り合うように、第2溶存槽12の内部圧力が高くなる、つまり、水面Sが上昇し、同様に、第1溶存槽11の水面も上昇する。ここで、第1溶存槽11、第2溶存槽12、第3溶存槽13の内径(断面積)が同じであれば、水面Sの高さもほぼ同等となる。
【0040】
そして、
図4に示すように、第1溶存槽11、第2溶存槽12、第3溶存槽13の内部圧力が送水圧力Tとつり合うまで水が供給されて、圧力制御バルブ21が閉じられる。各溶存槽11~13では、送水圧力Tによって加圧された水素による気相部分を形成するとともに、貯留された水に水素を溶解させて水素水を製造することができる。
【0041】
このように、使用開始時に溶存槽内に空気が満たされていても溶存槽内の気相部分を水素で満たすことができて、安定して送水圧力Tに対応した濃度の水素水を製造し得る。
【0042】
続いて、電磁弁25を開いて水素水を取り出すとともに、圧力制御バルブ21が開放されて水が第1溶存槽11へ供給される。ここで、第3溶存槽13内部の水が減少することで気相部分が膨張し圧力が低下しようとする。これに対して、第2溶存槽12から水が供給され、圧力をつり合わせようとする。同様に第2溶存槽12の圧力が低下しようとすると第1溶存槽11から水が供給される。ここで、第1溶存槽11の圧力が低下しようとした分を流入配管2から水を供給し第1溶存槽11の圧力を維持するように圧力制御バルブ21によって供給する水量及び圧力を制御する。このとき、取出配管5の圧力降下機構23によって、その上流側である第3溶存槽13の圧力を所定の値に維持させて、全体の圧力をバランスさせるように、圧力制御バルブ21は制御される。例えば、取出配管5の流量と等しい流量を流入配管2に与えるようにするとよい。これによって、系全体の圧力低下を抑制し、安定した濃度の水素水を連続的に製造することができる。
【0043】
特に、溶存槽を複数設けたため、最上流の溶存槽である第1溶存槽11に水素の溶解していない水を供給して一時的に第1溶存槽11内の水素水を希釈させて水素濃度を低下させたとしても、下流側の溶存槽12及び13には第1溶存槽11からの水素水が供給されるため、希釈の度合いは小さくなる。その結果、下流側の特に溶存槽13では、常に送水圧力Tに対応した濃度に近い水素水を貯留し続けることができ、安定した水素濃度の水素水を連続的に製造することができる。つまり、外部から水を供給される溶存槽と、水素水を外部に取り出す溶存槽とを独立させたことで、安定した水素濃度の水素水を生産性よく得られる。
【0044】
水素水製造装置10では、溶存槽を3つとしたので、最下流の溶存槽である第3溶存槽13では、特に安定した水素濃度の水素水を貯留し続けることができ、かかる水素濃度の水素水を常に取出配管5から取り出すことができる。特に、第1溶存槽11は水素を溶解させることを主とした水素溶解溶存槽であり、第3溶存槽13は、取り出す水素水の水素濃度を保持するための水素濃度保持溶存槽である。また、第2溶存槽12は、水素濃度の維持に寄与するだけでなく、第1溶存槽11での圧力変動を吸収し、第3溶存槽13の圧力変動を抑制する圧力調整溶存槽としても機能する。
【0045】
なお、上記した実施例において、第1溶存槽11、第2溶存槽12、第3溶存槽13のそれぞれの高さを11インチ(約280mm)とし、送水圧力Tを、3Bar(0.3MPa)とし、圧力降下機構23として5/32インチ(約4mm)の内径と80mm以上の長さを有する細管を用いたところ、安定して2.5ppm以上の水素濃度の水素水を連続的に製造できることを確認した。
【0046】
なお、取出配管5の流量計測センサ24及び電磁弁25は流量弁として動作し得るが、流入配管2の下流側にさらに流量弁を設け、流入配管2と取出配管5のそれぞれを流れる水の流量を等しくするよう制御できるようにすることも好ましい。これによって、安定した水素濃度の水素水を連続してさらに生産性よく得ることができる。
【0047】
使用開始時において、水と水素を同時に供給する方法を説明したが、最初に第1溶存槽11~第3溶存槽13に水素をパージするようにしてもよい。この場合、流入配管2のうちの、分岐配管2aと水素供給配管2bとの間に水の供給を絶つバルブを追加しておく。そして、このバルブを閉じて、水素供給機構30にのみ水を供給し、水素を生成し、流入配管2から第1溶存槽11へは水素のみを供給する。これにより、全ての溶存槽に水素をパージし、その後水素の供給を止めて、水のみを供給するようにしても、水素水を製造できる。特に、各溶存槽11~13は上部から水素を供給できるので、比重の大きな空気を先んじて下部から排出でき、速やかに水素のパージを完了できて、生産性の向上に寄与する。
【0048】
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0049】
1 送水管
2 流入配管
2b 水素供給配管
5 取出配管
10 水素水製造装置
11 第1溶存槽
12 第2溶存槽
13 第3溶存槽
23 圧力降下機構
30 水素供給機構