(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054199
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】電動回転翼航空機
(51)【国際特許分類】
B64D 27/24 20060101AFI20220330BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20220330BHJP
B64D 1/02 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C27/04
B64D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161255
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】520031346
【氏名又は名称】eVTOL Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】御法川 学
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 健司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 義広
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 静
(57)【要約】
【課題】飛行中の安全性が向上された電動回転翼航空機を提供すること。
【解決手段】電動回転翼航空機は、第1のモーターを含む電動部と、第1のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、第1のモーターに第1のバッテリーユニットから電力を供給する第1のバッテリー部と、第2のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、第1のモーターに第2のバッテリーユニットから電力を供給する第2のバッテリー部と、を含み、第1のバッテリー部と第2のバッテリー部とは、離間した位置に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモーターを含む電動部と、
第1のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、前記第1のモーターに前記第1のバッテリーユニットから電力を供給する第1のバッテリー部と、
第2のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、前記第1のモーターに前記第2のバッテリーユニットから電力を供給する第2のバッテリー部と、を含み、
前記第1のバッテリー部と前記第2のバッテリー部とは、離間した位置に配置されている電動回転翼航空機。
【請求項2】
第1のモーターおよび第2のモーターを含む電動部と、
第1のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、前記第1のモーターに前記第1のバッテリーユニットから電力を供給する第1のバッテリー部と、
第2のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、前記第2のモーターに前記第2のバッテリーユニットから電力を供給する第2のバッテリー部と、を含み、
前記第1のバッテリー部と前記第2のバッテリー部とは、離間した位置に配置されている電動回転翼航空機。
【請求項3】
前記第1のバッテリー部は、前記第1のバッテリーユニットと電気的に接続される第1のバッテリーベイを含み、
前記第1のバッテリーベイは、飛行中に、前記第1のバッテリーユニットを切り離し、投棄可能に前記第1のバッテリーユニットを把持する請求項1または請求項2に記載の電動回転翼航空機。
【請求項4】
前記第1のバッテリーユニットを投棄する際、前記第1のバッテリーユニットを覆う機体または延長テールの一部が開口される請求項3に記載の電動回転翼航空機。
【請求項5】
前記第1のバッテリーユニットおよび前記第2のバッテリーユニットの各々は、バッテリーマネージメントシステム、バッテリーセル、および温度センサーを含む請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電動回転翼航空機。
【請求項6】
前記第1のバッテリーユニットおよび前記第2のバッテリーユニットの各々は、さらに、ヒーターおよびファンを含む請求項5に記載の電動回転翼航空機。
【請求項7】
前記第1のバッテリーユニットおよび前記第2のバッテリーユニットよりもバッテリー容量の小さい補助バッテリー部を含む請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電動回転翼航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動回転翼航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電動化と並行し、小型航空機の電動化が注目されている。例えば、電動化された垂直離着陸可能な小型航空機は、化石燃料を使用せずに電動モーターを使用し動力を得ることができる。電動化された垂直離着陸可能な小型航空機は、化石燃料を使用しないため、内燃機関を有する航空機と比較して、CO2排出量が少なく、エネルギー補給が容易であり、システム全体の小型化が可能であり、操作性及び静音性が優れている。例えば、ヘリコプターは、垂直離着陸可能な小型航空機の一つである。電動化されたヘリコプターは、例えば、電動ヘリコプターまたは電動回転翼航空機などと呼ばれている。
【0003】
例えば、特許文献1乃至4は電動回転翼航空機の構成または制御方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8931732号明細書
【特許文献2】米国特許第9169027号明細書
【特許文献3】国際公開2016/009824号
【特許文献4】国際公開2015/146608号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動回転翼航空機は、その特徴の一つとして、バッテリーを搭載していることが挙げられる。すなわち、電動回転翼航空機は、化石燃料の代わりに、バッテリーを搭載し、バッテリーから電力が供給されることによって飛行することができる。電動回転翼航空機に搭載するバッテリーは、スマートフォンのバッテリーと比較すると大型である。例えば、スマートフォンで用いられるバッテリー容量は、0.2~0.5Ah程度であるが、電動回転翼航空機で用いられるバッテリー容量は、数100Ahと大容量である。しかも、電動回転翼航空機は連続して数100kWhの電力量を出力として利用するので、電動回転翼航空機のバッテリーは高電流を放出する。そのため、電動回転翼航空機においては、取り扱いやすく、安全性の高いバッテリーを搭載することはもちろんであるが、バッテリー自体だけでなく、電動回転翼航空機自体の安全性を高める必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、飛行中の安全性が向上された電動回転翼航空機を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機は、第1のモーターを含む電動部と、第1のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、第1のモーターに第1のバッテリーユニットから電力を供給する第1のバッテリー部と、第2のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、第1のモーターに第2のバッテリーユニットから電力を供給する第2のバッテリー部と、を含むみ、第1のバッテリー部と第2のバッテリー部とは、離間した位置に配置されている。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機は、第1のモーターおよび第2のモーターを含む電動部と、第1のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、第1のモーターに第1のバッテリーユニットから電力を供給する第1のバッテリー部と、第2のバッテリーユニットが着脱可能に装着され、第2のモーターに第2のバッテリーユニットから電力を供給する第2のバッテリー部と、を含み、第1のバッテリー部と第2のバッテリー部とは、離間した位置に配置されている。
【0009】
第1のバッテリー部は、第1のバッテリーユニットと電気的に接続される第1のバッテリーベイを含み、第1のバッテリーベイは、飛行中に、第1のバッテリーユニットを切り離し、投棄可能に第1のバッテリーユニットを把持してもよい。また、第1のバッテリーユニットを投棄する際、第1のバッテリーユニットを覆う機体または延長テールの一部が開口されてもよい。
【0010】
第1のバッテリーユニットおよび第2のバッテリーユニットの各々は、バッテリーマネージメントシステム、バッテリーセル、および温度センサーを含んでいてもよい。第1のバッテリーユニットおよび第2のバッテリーユニットの各々は、さらに、ヒーターおよびファンを含んでいてもよい。
【0011】
第1のバッテリーユニットおよび前記第2のバッテリーユニットよりもバッテリー容量の小さい予備バッテリー部を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機は、バッテリーユニットが装着されるバッテリー部が分散されて配置されているため、1つのバッテリーユニットに問題が発生した場合であっても、他のバッテリーユニットを用いて飛行することが可能である。また、バッテリーユニットが装着されるバッテリー部が分散されて配置されているため、バッテリーユニットの発火のリスクも分散される。したがって、電動回転翼航空機の安全性が向上する。また、バッテリーユニットは着脱可能であり、複数のバッテリーユニットを同時に充電することで、複数のバッテリーユニットの全バッテリー容量を有する1つのバッテリーユニットに比べて充電時間を短縮することができる。そのため、バッテリーユニットの取り扱いの利便性が向上する。さらに、バッテリーユニットと装着され、バッテリーユニットと電気的に接続されるバッテリーベイは、バッテリーユニットが発火した場合であっても、消火することができ、火の方向を誘導することができ、またはバッテリーユニットを投棄することができる。そのため、電動回転翼航空機の安全性が向上する。
【0013】
また、投棄可能または消火可能なバッテリーユニットは、メインのバッテリーとして選択的に利用することもできる。すなわち、投棄または消火可能なバッテリーユニットは、専ら発熱リスクが高い電動機駆動用として利用し、その他のバッテリーユニットは、専ら発熱リスクが低いインバーターまたはポンプなどの補器類駆動用として利用することができる。この場合において、投棄または消火可能なバッテリーユニットが投棄され、または不作動を生じたときであっても、電動回転翼航空機は、その他のバッテリーユニットから緊急的に電力を供給することができるため、数分の緊急飛行時間を確保することができる。そのため、電動回転翼航空機の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機の機体に設置される第1のバッテリー部のバッテリーベイの配置を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機の機体に設置される第1のバッテリー部に着脱されるバッテリーユニットのブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機に搭載されるバッテリーユニットの投棄の方法を説明する模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機から投棄されたバッテリーユニットの状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
本明細書および図面において、同一又は類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用いる。また、一つの構成のうちの複数の部分を区別して表記する際には、ハイフンと自然数を用いる場合がある。
【0017】
[1.電動回転翼航空機10の構成]
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機10の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機10の構成を示す模式図である。電動回転翼航空機10は、電動回転翼航空機10を前方に進めようとする力である「推力」、電動回転翼航空機10を上方に引っ張り、浮き上がらせようとする力である「揚力」、電動回転翼航空機10を下方に引っ張ろうとする力である「重力」、および電動回転翼航空機10を後方に引っ張ろうとする力である「抵抗力」を制御することによって、飛行することができる。
図1に示すように、電動回転翼航空機10は、機体11、メインローター12、テールローター13、マスト14、延長テール15、およびスキッド16を具備する。メインローター12は、機体11の上方に延伸したマスト14の一端に接続されている。テールローター13は、機体11の後方に設けられた延長テール15を介して接続されている。電動回転翼航空機10は、メインローター12を回転させることによって、揚力を発生させ浮き上がることができる。一方で、メインローター12の回転によって、機体11をメインローター12の回転方向とは逆方向に回転させる反トルクが発生する。電動回転翼航空機10は、テールローター13が反トルクを打ち消すことによって、安定して飛行することができる。
【0018】
なお、
図1に示す電動回転翼航空機10は1組のメインローター12およびテールローター13を具備するが、本実施形態に係る電動回転翼航空機10は、テールローター13がない構成も可能である。電動回転翼航空機10は、例えば、テールローター13を設けず、2組のメインローター12を同軸に配置し、お互いの逆方向に回転させる、いわゆる二重反転式ローター(同軸反転式ローター)を具備する構成であってもよい。また、電動回転翼航空機10は、有人であってもよく、無人であってもよい。
【0019】
機体11の内部には、バッテリー部100、補助バッテリー部200、電動部300、調整部310、ドライブシャフト320、テールシャフト330、およびバッテリーユニットラック400が設けられている。
【0020】
電動部300は、ドライブシャフト320を介して調整部310と接続されている。また、調整部310は、マスト14の他端と接続されている。電動部300および調整部310はそれぞれ、例えば、モーターおよび変速機である。電動回転翼航空機10では、電動部300の回転がドライブシャフト320を通じて調整部310に伝達され、調整部310で回転速度(回転数)が調整される。また、調整された回転は、マスト14を通じてメインローター12に伝達され、メインローター12が回転することができる。また、調整部310は、テールシャフト330を介してテールローター13と接続されている。そのため、調整された回転が、テールシャフト330に伝達され、テールローター13が回転することができる。なお、調整部310では、メインローター12の回転速度とテールローター13の回転速度とは別々で調整することができる。
【0021】
バッテリー部100は、電動部300に電力を供給することができる。バッテリー部100は、機体11に設置されたバッテリーベイ110と、バッテリーベイ110に着脱可能に装着されるバッテリーユニット120と、を含む。すなわち、ユーザ(例えば、電動回転翼航空機10の操縦者)は、電動回転翼航空機10を操縦するときに、バッテリーユニット120をバッテリーベイ110に装着し、電動回転翼航空機10を操縦しないときには、バッテリーユニット120をバッテリーベイ110から取り外すことができる。そのため、電動回転翼航空機10は、バッテリーを充電するための充電専用駐機場(バッテリーステーション)に駐機することなく、通常の駐機場に駐機したままバッテリーユニット120を取り外し、別途バッテリーユニット120を充電することが可能である。
【0022】
補助バッテリー部200も、バッテリー部100と同様に、電動部300に電力を供給することができる。ただし、補助バッテリー部200は、バッテリー部100に問題が発生した場合に、電動部300と接続し、電力を供給することができる。換言すれば、補助バッテリー部200は、バッテリー部100の予備バッテリーということができる。補助バッテリー部200は予備バッテリーであるため、バッテリー部100より小型(バッテリー容量が小さい)であってももよい。補助バッテリー部200は、バッテリー部100と同様の構成とすることができる。すなわち、補助バッテリー部200は、機体11に設置された補助バッテリーベイ210と、補助バッテリーベイ210に着脱可能に装着される補助バッテリーユニット220と、を含む。上述したように、補助バッテリー部200は、バッテリー部100に問題が発生した場合に使用され、通常時は使用されない予備バッテリーである。そのため、補助バッテリー部200は、補助バッテリーユニット220が着脱不可能に固定されていてもよい。この場合、電動回転翼航空機10の離陸前に、バッテリー部100から補助バッテリー部200に充電してもよい。このようにすることで、電動回転翼航空機10の離陸前に、バッテリー部100が機能するかどうかを確認することもできる。
【0023】
バッテリーユニットラック400は、バッテリーベイ110から取り外されたバッテリーユニット120を収容することができる。バッテリーユニットラック400に収容されているバッテリーユニット120は、充電されていてもよい。電動回転翼航空機10の飛行中に、バッテリー部100のバッテリーユニット120の充電が切れたとき、バッテリーユニットラック400のバッテリーユニット120と交換することができる。そのため、電動回転翼航空機10の航続距離が長くなる。
【0024】
[2.バッテリーベイ110の配置および構成]
[2-1.バッテリーベイ110の配置]
図2を参照して、バッテリーベイ110が配置される位置について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機10の機体11に設置されるバッテリー部100のバッテリーベイ110の配置を示す模式図である。電動回転翼航空機10においては、1つまたは複数のバッテリーベイ110を配置することができる。ただし、バッテリー部100の1つに問題が発生した場合における飛行の安全性を考えると、代替となるバッテリー部100があることが好ましい。そのため、電動回転翼航空機10においては、複数のバッテリーベイ110が配置されていることが好ましい。
図2に示すように、バッテリーベイ110は、マスト14の他端近傍にある第1のスペース111、延長テール15の機体11との接続近傍にある第2のスペース112、荷室の一部である第3のスペース113、または機体11の下方のスレッジの間にある第4のスペース114などに配置することができる。電動回転翼航空機10は、従来の内燃機関を搭載する電動回転翼航空機と比較すると、吸排気系統または燃料系統の部品が不要であるため、これらが搭載されていた第1のスペース111および第2のスペース112において、空いているスペースを確保しやすい。そのため、バッテリーベイ110は、第1のスペース111または第2のスペース112に配置することができる。
【0025】
ただし、バッテリーベイ110は、これらに限られず、機体11内または機体11外の空いているスペースに配置することができる。例えば、機体11の構造的に強い部分にバッテリーベイ110を配置することで、バッテリーベイ110に装着されたバッテリーユニット120は機体11の構造上の構成によって保護される。そのため、電動回転翼航空機10の安全性が高くなる。また、バッテリーベイ110は、電動部300に電力を供給するための制御部または配線などを必要とする。バッテリーユニット120が入るスペースはあるものの、端子部、制御部、および配線を設置するスペースがない場合には、そのスペースは、バッテリーユニットラック400としてもよい。交換用のバッテリーユニット120をバッテリーユニットラック400に収容することで、電動回転翼航空機10の航続距離を長くすることができる。
【0026】
なお、上述したように、電動回転翼航空機10では、空きスペースを確保しやすく、レイアウトの自由度が高い。そのため、電動回転翼航空機10のペイロードまたはミッションを考慮して、バッテリーベイ110を配置してもよい。また、バッテリーベイ110の配置においては、バッテリーベイ110にバッテリーユニット120を装着した後の重心位置を考慮してもよい。従来の内燃機関を搭載する電動回転翼航空機では、飛行中に燃料が消費されるため、離陸前と飛行中とでは燃料の重さによって重心位置が変化する。一方、電動回転翼航空機10では、離陸前と飛行中とでバッテリーユニット120の重さがほとんど変化しない。そのため、電動回転翼航空機10では、離陸前の重心位置を考慮するだけで、飛行中の重心位置も安定させることができる。
【0027】
[2-2.バッテリーベイ110の構成]
バッテリーベイ110には、バッテリーユニット120と電気的に接続するための端子部、電動部300への電力を供給するか否かを制御する制御部、および端子部と電動部300とを電気的に接続する配線が設置されており、バッテリーユニット120を装着して電動部300に電力を供給することができる。また、バッテリーベイ110は、飛行中にバッテリーユニット120が動かないようにするため、装着されたバッテリーユニット120を固定することができる。さらに、バッテリーベイ110は、飛行中の電動回転翼航空機10からバッテリーユニット120を投棄することができる。電動回転翼航空機10の飛行中に、バッテリーユニット120に、例えば、温度制御ができなくなるような問題が発生した場合、バッテリーユニット120がその状態のまま飛行することは重大な事故につながりかねない。そのため、飛行の安全を確保するため、電動回転翼航空機10では、バッテリーベイ110からバッテリーユニット120を切り離し、バッテリーユニット120を投棄することができる。バッテリーユニット120の投棄は、例えば、バッテリーベイ110の底面(下方側の面)側の機体11または延長テール15が開くことで、バッテリーユニット120自身の重さによって、バッテリーユニット120をバッテリーベイ110から切り離し、投棄することができる。
【0028】
なお、投棄可能なバッテリーユニットは、電動回転翼航空機10の飛行で通常使用されるバッテリー部100のバッテリーユニット120のみであってもよい。すなわち、補助バッテリー部200のバッテリーユニットは投棄不可能な構成(着脱不可能な構成)としてもよい。このような構成であっても、バッテリー部100のバッテリーユニット120に異常が発生した場合、バッテリーユニット120を投棄し、補助バッテリー部200のバッテリーユニットからの電力の供給によって、電動回転翼航空機10は安全に飛行することができる。
【0029】
また、バッテリーベイ110は、バッテリーベイ110に装着されたバッテリーユニット120が発火した場合に、バッテリーベイ110を覆う機体11または延長テール15の一部を開口して、バッテリーユニット120と外部とを繋げることができる。機体11または延長テール15が開口することにより、バッテリーユニット120からの火を開口した方向に誘導することができる。バッテリーユニット120からの火が機体11または延長テール15内に留まらず、開口部を介して外部へ抜ける構造となっているため、電動回転翼航空機10の安全性が高くなる。なお、機体11または延長テール15の一部の開口は、開口した方向の先に、操縦席(乗客席)、電動部300、メインローター12、およびテールローター13が無いことが好ましい。操縦席(乗客席)、電動部300、メインローター12、およびテールローター13に火が燃え移る可能性があると、電動回転翼航空機10の飛行における安全に問題が生じることになるためである。
【0030】
さらに、バッテリーベイ110は、バッテリーユニット120の発火を消化するための消火ユニットを備えていてもよい。消火ユニットは、例えば、バッテリーユニット120にCO2を吹き付けることができる。なお、バッテリー部100のバッテリーユニット120は投棄可能であるため、投棄不可能なバッテリーユニットが装着される補助バッテリー部のバッテリーベイにのみ消火ユニットが備えられていてもよい。
【0031】
[3.バッテリーユニット120の構成]
図3を参照して、バッテリーユニット120の構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機10の機体11に設置されるバッテリー部100に着脱されるバッテリーユニット120のブロック図である。バッテリーユニット120は、第1のバッテリーモジュール121-1、第2のバッテリーモジュール121-2、・・・、第nのバッテリーモジュール121-nを含む(nは2以上)。すなわち、バッテリーユニット120は、複数のバッテリーモジュール121を含む。バッテリーユニット120が複数のバッテリーモジュール121を含むことにより、1つのバッテリーモジュール121に不具合が生じた場合であっても、それ以外のバッテリーモジュール121を用いて電動部に電力を供給することが可能であり、電動回転翼航空機10の揚力を確保することができる。そのため、電動回転翼航空機10は、1つのバッテリーモジュールに不具合が生じた場合であっても、緊急着陸などの緊急動作を行うことが可能であり、電動回転翼航空機10の飛行における安全を高めることができる。また、複数のバッテリーモジュール121の各々は、バッテリーマネージメントシステム(BMS)122およびバッテリーセル123を含む。BMS122は、バッテリーセル123への充電およびバッテリーセル123からの放電(電動部300への電力の供給)を管理し、制御することができる。バッテリーセル123のバッテリーは、例えば、リチウムイオンバッテリーであるが、これに限られない。
【0032】
バッテリーユニット120は、温度センサー124を含んでいてもよい。温度センサー124は、バッテリーユニット120の温度を検出することができる。バッテリーユニット120の温度が高すぎる場合は、バッテリーユニット120に何らかの問題が発生している可能性が高い。そのため、バッテリーユニット120の温度を監視することで、バッテリーユニット120に問題が発生したことを検知することができる。温度センサー124による温度は、ユーザが監視できるようになっていてもよい。また、バッテリーユニット120は、さらに、ヒーター125を含んでいてもよい。バッテリーユニット120がヒーター125を含むことで、バッテリーユニット120の温度を制御することができる。すなわち、温度センサー124によって検出された温度を基にヒーター125を制御し、バッテリーユニット120を一定の温度に保持することができる。バッテリーユニット120が装着されるバッテリーベイ110の位置によっては、地上と上空とで温度が大きく異なる場合がある。また、電動回転翼航空機10の飛行する場所が寒冷地である場合もある。バッテリーセル123の温度が低いと、バッテリーセル123の電力供給効率が低下する。そのため、温度センサー124とヒーター125を用いて、一定の温度になるようにバッテリーユニット120が管理され、制御されていることが好ましい。さらに、バッテリーユニット120を冷却する必要がある場合には、バッテリーユニット120は、ファン126を含んでいてもよい。
【0033】
なお、バッテリーユニット120の大きさを考慮して、温度センサー124およびヒーター125の各々は、1つまたは複数配置することができる。バッテリーユニット120の温度は均一になっていることが好ましく、複数の温度センサー124および複数のヒーター125が、バッテリーユニット120に配置されていることが好ましい。
【0034】
また、上述したように、バッテリーユニット120は、バッテリーベイ110から切り離され、投棄されることができる。その場合、投棄されたバッテリーユニット120は、位置を確認することができることが好ましい。そのため、例えば、投棄されたバッテリーユニット120は、警告音を発してもよく、ランプを点灯または点滅させてもよい。また、バッテリーユニット120はトランスポンダを搭載してもよい。投棄されたバッテリーユニット120のトランスポンダが航空交通管制に信号を送信することによって、航空交通管制は、投棄されたバッテリーユニット120の位置を把握することができるようになる。さらに、バッテリーユニット120にパラシュートまたは翼などを設けて、投棄されたバッテリーユニット120の落下速度が減速されるように制御することができるような構成としてもよい。また、バッテリーユニット120にエアバッグなどを設けて、投棄されたバッテリーユニット120の着地時の衝撃を緩和することができるような構成としてもよい。
【0035】
バッテリーユニット120は、端子部127を含む。バッテリーユニット120がバッテリーベイ110に装着されると、バッテリーユニット120の端子部127は、バッテリーベイの端子部と電気的に接続され、バッテリーユニット120のバッテリーセル123は、電動部300に電力を供給することができるようになる。バッテリーユニット120の端子部127とバッテリーベイの端子部とは、直接接続されてもよく、ケーブルを用いて接続されてもよい。
【0036】
バッテリーユニット120の外装筐体は、難燃性で強固な材料であることが好ましい。バッテリーユニット120の外装筐体としては、例えば、カーボンを含む樹脂または金属を用いることができる。
【0037】
電動部300が第1のモーター301-1および第2のモーター301-2を含むとき、第1のモーター301-1および第2のモーター301-2の各々に対して、バッテリーユニット120から電力を供給してもよい。すなわち、第1のモーター301-1には、第1のバッテリー部100-1に装着された第1のバッテリーユニット120-1から電力を供給し、第2のモーター301-2には、第2のバッテリー部100-2に装着された第2のバッテリーユニット120-2から電力を供給することができる。具体的には、第1のバッテリーユニット120-1は、第1のバッテリーベイ110-1に装着され、第2のバッテリーユニット120-2は、第2のバッテリーベイ110-2に装着される。なお、第1のバッテリーベイ110-1と第2のバッテリーベイ110-2とは、機体11の別々の位置(例えば、隣接せずに、離間した位置)に配置されていてもよい。
【0038】
[4.バッテリーユニット120の投棄の構成]
図4および
図5を参照して、バッテリーユニット120を投棄する構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機10に搭載されるバッテリーユニット120の投棄の方法を説明する模式図である。また、
図5は、本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機10から投棄されたバッテリーユニット120の状態を説明する模式図である。なお、
図4および
図5においては、バッテリーベイ110とバッテリーユニット120との電気的な接続が省略されている。
【0039】
図4(A)および
図4(B)は、それぞれ、バッテリーユニット120の側面図および平面図である。投棄可能なバッテリーユニット120には、パラシュート130、エアバッグ140、またはビーコン150が取り付けられている。また、バッテリーユニット120は、シャフト501、アーム502、および支持部503を用いて、電動回転翼航空機10のバッテリーベイ110内に把持されている。アーム502は、貫通孔を有し、貫通孔にはシャフト501が挿通されている。アーム502は、シャフト501の軸方向に移動することができ、バッテリーユニット120を把持した状態でシャフト501に固定されるように制御されてもよい。支持部503は、バッテリーベイ110近傍に設けられ(バッテリーベイ110の一部であってもよい)、シャフト501を支持することができる。
【0040】
アーム502の一端には爪が設けられ(
図4(C)参照)、バッテリーユニット120が爪によって吊り下げられるように把持されていてもよい。また、アーム502が磁石または電磁石を具備し、電磁気力によってバッテリーユニット120が把持されていてもよい。
【0041】
図4(C)は、バッテリーユニット120を把持していたアーム502が、バッテリーユニット120から遠ざかる方向へ移動し、バッテリーユニット120がアーム502から離れた状態を示す。すなわち、
図4(C)は、バッテリーユニット120が投棄された状態を示す。アーム502の制御は、操縦席に設置されたレバーまたはボタンによって行うことができる。電動回転翼航空機10の飛行中にバッテリーユニット120が投棄された場合、バッテリーユニット120は、重力の影響を受け、地面に向かって落下する。
【0042】
図5(A)は、バッテリーユニット120の落下中に、バッテリーユニット120に取り付けられたパラシュート130が展開した状態を示す。バッテリーユニット120の落下速度は、展開されたパラシュート130によって減速する。パラシュート130は、バッテリーユニット120の落下を検知し、自動で展開されるようにしてもよい。例えば、パラシュート130は、落下してから所定の時間を経過した後に展開されてもよく、気圧差を検知して展開されてもよい。また、、バッテリーユニット120が燃えている場合を考慮すると、パラシュート130は、不燃性または難燃性の材料で構成されていることが好ましい。なお、パラシュート130は、バッテリーユニット120の落下速度を減速させるものであればよく、パラシュートでなくてもよい。パラシュート130の代わりに、パラフォイルまたはグライダーを用いてもよい。
【0043】
図5(B)は、バッテリーユニット120が地面に着地する際に、バッテリーユニット120に取り付けられたエアバッグ140が膨張した状態を示す。エアバッグ140は、バッテリーユニット120が地面に着地した衝撃を検知して膨張する。そのため、バッテリーユニット120は、エアバッグ140によって、地面への着地の衝撃が緩和される。なお、エアバッグ140は、バッテリーユニット120の地面への衝撃を緩和させるものであればよく、エアバッグでなくてもよい。エアバッグ140の代わりに、ウレタン、ゴム、またはシリコンを含むゲルを用いてもよい。
【0044】
図5(C)は、地面に着地したバッテリーユニット120のビーコン150が作動した状態を示す。ビーコン150から発信される信号を受信することによって、バッテリーユニット120の位置を特定することができるため、落下したバッテリーユニット120を回収することができる。なお、ビーコン150は、トランスポンダの一例であって、バッテリーユニット120が着地した位置を知らせるものであればよく、ビーコンでなくてもよい。ビーコン150の代わりに、警告音を発してもよく、ランプを点灯または点滅してもよい。
【0045】
[5.バッテリーユニット120の交換の構成]
図4および
図5を参照して、バッテリーユニット120の投棄について説明したが、同様の構成を用いて、バッテリーユニット120を交換することもできる。例えば、バッテリーステーションにおいて、アーム502の固定を解除してバッテリーベイ110からバッテリーユニット120を取り外し、別のバッテリーユニット120を取り付け、アーム502でバッテリーユニット120を把持することができる。また、図示しないが、バッテリーベイ110近傍にガイドを設け(バッテリーベイ110の一部であってもよい)、ガイドに沿って別のバッテリーユニット120を挿入することによって、バッテリーベイ110に装着されていたバッテリーユニット120を押し出して交換することもできる。バッテリーユニット120の交換は、電動回転翼航空機10が地上で停止しているときに行ってもよく、電動回転翼航空機が空中で停止している(いわゆる、ホバリング)ときに行ってもよい。
【0046】
以上説明したとおり、本実施形態に係る電動回転翼航空機10は、バッテリーユニット120が装着されるバッテリー部100が複数配置され、バッテリー部100が分散されて配置されているため、1つのバッテリーユニット120に問題が発生した場合であっても、その他のバッテリーユニット120を用いて飛行することができる。また、電動回転翼航空機10は、補助バッテリー部200が配置されるため、たとえ全てのバッテリーユニット120に問題が発生した場合であっても、補助バッテリー部200の補助バッテリーユニット220を用いて緊急着陸などの緊急動作を行うことが可能である。さらに、電動回転翼航空機10は、バッテリーユニットラック400を具備してもよく、充電された予備のバッテリーユニット120を収容することができる。そのため、問題の発生したバッテリーユニット120を、バッテリーユニットラック400に収容されたバッテリーユニット120に交換することができる。また、バッテリーユニットラック400に収容されたバッテリーユニット120を利用し、電動回転翼航空機10の航続距離を長くすることもできる。
【0047】
また、分散された複数のバッテリーユニット120は着脱可能であり、複数のバッテリーユニット120を同時に充電することができる。そのため、複数のバッテリーユニット120の全バッテリー容量を有する1つのバッテリーユニットと比べて充電時間を短縮することができる。
【0048】
また、バッテリーユニット120と装着され、バッテリーユニット120と電気的に接続されるバッテリーベイ110は、バッテリーユニット120が発火した場合にはCO2を吹き付けて消火する消火ユニットを備える。また、バッテリーベイ110は、バッテリーベイ110を覆う機体11または延長テール15の一部を開口して、バッテリーユニット120からの火の方向を誘導することができる。さらに、バッテリーベイ110は、バッテリーベイ110からバッテリーユニット120を切り離し、バッテリーユニット120を投棄することができる。そのため、電動回転翼航空機10では、機体11内にバッテリーユニット120からの火が燃え広がらないようにすることができる。
【0049】
したがって、本実施形態に係る電動回転翼航空機10は、飛行中に発生したバッテリーユニット120の問題に対しての対応策が講じられているため、飛行の安全性が向上している。
【0050】
本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機10は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜構成を組み合わせて実施することができる。また、本発明の一実施形態に係る電動回転翼航空機10を基にして、当業者が適宜構成を追加し、削除し、または修正したものも、本発明の要旨を具備する限り、本発明の範囲に含まれる。
【0051】
また、本発明の各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0052】
10:電動回転翼航空機、 11:機体、 12:メインローター、 13:テールローター、 14:マスト、 15:延長テール、 16:スキッド、 100:バッテリー部、 100-1:第1のバッテリー部、 100-2:第2のバッテリー部、 110:バッテリーベイ、 110-1:第1のバッテリーベイ、 110-2:第2のバッテリーベイ、 111:第1のスペース、 112:第2のスペース、 113:第3のスペース、 114:第4のスペース、 120:バッテリーユニット、 120-1:第1のバッテリーユニット、 120-2:第2のバッテリーユニット、 121:バッテリーモジュール、 121-1:第1のバッテリーモジュール、 121-2:第2のバッテリーモジュール、 121-n:第nのバッテリーモジュール、 122:バッテリーマネージメントシステム(BMS)、 123:バッテリーセル、 124:温度センサー、 125:ヒーター、 126:ファン、 127:端子部、 130:パラシュート、 140:エアバッグ、 150:ビーコン、 200:補助バッテリー部、 210:補助バッテリーベイ、 220:補助バッテリーユニット、 300:電動部、 301-1:第1のモーター、 301-2:第2のモーター、 310:調整部、 320:ドライブシャフト、 330:テールシャフト、 400:バッテリーユニットラック、 501:シャフト、 502:アーム、 503:支持部