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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054258
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】排煙脱硫装置のスプレ配管構造
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20220330BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220330BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20220330BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B01D53/50 245
B01D53/78 ZAB
B01D53/18 150
B05B1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161339
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(72)【発明者】
【氏名】山根 佑一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 紀和
(72)【発明者】
【氏名】木村 晴佳
(72)【発明者】
【氏名】上神 晶寛
(72)【発明者】
【氏名】大倉 一
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4F033
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AC01
4D002BA02
4D002CA01
4D002DA05
4D002DA16
4D002EA12
4D002FA03
4D020AA06
4D020BA02
4D020BA09
4D020BB03
4D020BC05
4D020CB27
4D020CC06
4F033BA03
4F033EA06
4F033LA12
(57)【要約】
【課題】排ガス流通空間の流路断面を増大させた場合であっても、スプレ管のサポート構造の複雑化やポンプの大型化を抑制しつつ、スプレノズルからの吸収液の噴射量の均一性を維持することが可能なスプレ配管構造の提供。
【課題手段】第1スプレ管12は、管延設方向10の一側の第1基端部12Aから中央側の第1先端部12Bへ延び、第1基端部12A側が吸収塔に対して固定され、第1スプレノズルへ吸収液を供給する。第2スプレ管13は、管延設方向10の他側の第2基端部13Aから中央側の第2先端部13Bへ延び、第2基端部13A側が吸収塔に対して固定され、第2スプレノズルへ吸収液を供給する。第1スプレ管12と第2スプレ管13とは、一直線状に並ぶ。第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、近接又は接触し、管延設方向10と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収塔の周壁が上下方向に延びるガス流通空間を区画し、排ガスが前記ガス流通空間を下方から上方へ流通し、複数の第1スプレノズルと複数の第2スプレノズルとを含む複数のスプレノズルが吸収塔内のガス流通空間に配置され、前記ガス流通空間を流れる排ガス中に前記スプレノズルから吸収液を供給して、排ガス中の硫黄酸化物を吸収液で吸収する排煙脱硫装置のスプレ配管構造であって、
前記ガス流通空間を略水平に横断するように直線状に設定される管延設方向の一側に配置される第1基端部と、前記管延設方向の中央側に配置される第1先端部とを有し、前記第1基端部から前記第1先端部へ前記管延設方向に沿って直線状に延び、前記第1基端部側が前記吸収塔に対して固定的に支持され、前記第1基端部側から前記第1先端部側へ吸収液を送液して前記第1スプレノズルへ吸収液を供給する第1スプレ管と、
前記管延設方向の他側に配置される第2基端部と、前記管延設方向の中央側に配置される第2先端部とを有し、前記第2基端部から前記第2先端部へ前記管延設方向に沿って直線状に延び、前記第2基端部側が前記吸収塔に対して固定的に支持され、前記第2基端部側から前記第2先端部側へ吸収液を送液して前記第2スプレノズルへ吸収液を供給する第2スプレ管と、を備え、
前記第1スプレ管と前記第2スプレ管とは、一直線状に並び、
前記第1先端部と前記第2先端部とは、近接又は接触し、前記管延設方向と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結される
ことを特徴とする排煙脱硫装置のスプレ配管構造。
【請求項2】
請求項1に記載のスプレ配管構造であって、
前記第1先端部と前記第2先端部とは、前記管延設方向に沿った相対移動を許容するように離間した状態で連結される
ことを特徴とする排煙脱硫装置のスプレ配管構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスプレ配管構造であって、
前記第1先端部の端面開口と前記第2先端部の端面開口とは、吸収液が流出不能に閉止されている
ことを特徴とする排煙脱硫装置のスプレ配管構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のスプレ配管構造であって、
前記第1基端部から前記第1先端部までの前記第1スプレ管の液送距離と、前記第2基端部から前記第2先端部までの前記第2スプレ管の液送距離とは、略等しく設定されている
ことを特徴とする排煙脱硫装置のスプレ配管構造。
【請求項5】
前記複数のスプレノズルが複数の第3スプレノズルと複数の第4スプレノズルとを含む請求項1~請求項4の何れか1項に記載のスプレ配管構造であって、
前記管延設方向の下方で前記ガス流通空間を略水平に横断するように直線状に設定される第2の管延設方向の一側に配置される第3基端部と、前記第2の管延設方向の中央側に配置される第3先端部とを有し、前記第3基端部から前記第3先端部へ前記第2の管延設方向に沿って直線状に延び、前記第3基端部側が前記吸収塔に対して固定的に支持され、前記第3基端部側から前記第3先端部側へ吸収液を送液して前記第3スプレノズルへ吸収液を供給する第3スプレ管と、
前記第2の管延設方向の他側に配置される第4基端部と、前記第2の管延設方向の中央側に配置される第4先端部とを有し、前記第4基端部から前記第4先端部へ前記第2の管延設方向に沿って直線状に延び、前記第4基端部側が前記吸収塔に対して固定的に支持され、前記第4基端部側から前記第4先端部側へ吸収液を送液して前記第4スプレノズルへ吸収液を供給する第4スプレ管と、を備え、
前記第3スプレ管と前記第4スプレ管とは、一直線状に並び、
前記第3先端部と前記第4先端部とは、近接又は接触し、前記第2の管延設方向と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結され、
前記第1スプレ管と前記第2スプレ管とは、上段の連結スプレ管を構成し、
前記第3スプレ管と前記第4スプレ管とは、下段の連結スプレ管を構成し、
前記上段の連結スプレ管と前記下段の連結スプレ管とは、トラス構造を形成する複数の補助部材によって連結される
ことを特徴とする排煙脱硫装置のスプレ配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排煙脱硫装置のスプレ配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所の石炭焚ボイラ等で発生した硫黄酸化物を含む排ガスから硫黄酸化物を除去する装置として、脱硫装置(湿式石灰石-石膏排煙脱硫装置)が実用化されている。従来の脱硫装置には、ガス流通空間を区画する吸収塔を設け、ガス流通空間に複数のスプレノズルを配置したものがある。吸収塔に導入されてガス流通空間を下方から上方へ流れる排ガスに、各スプレノズルから下方へ向けて吸収液を噴射して接触させることによって、排ガスから硫黄酸化物が除去される。
【0003】
スプレノズルから吸収液を噴射する脱硫装置では、スプレノズルに吸収液を供給するためのスプレ管が吸収塔のガス流通空間に挿入される。従来のスプレ管の配管構造として、スプレ管の両端部(基端部及び先端部)のうち基端部が吸収塔の一側で周壁を挿通し、先端部がガス流通空間に位置し、基端部から先端部に向かって略水平に直線状に延びるようにスプレ管を配置し、基端部側から先端部側に向けて吸収液を送液する構造が知られている(例えば、特許文献1)。ガス流通空間の流路断面の全域に対して吸収液を噴射するため、基端部から先端部までのスプレ管の長さは、先端部が吸収塔の他側の周壁の内面に近付くように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6-61423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボイラからの排ガスを脱硫するプラントにおいて、ボイラ1缶分の排ガスに対して1つの脱硫装置を設置するプラントもあれば、複数のボイラからの排ガスを1つの脱硫装置で処理するプラントもある。複数のボイラからの排ガスを1つの脱硫装置で処理するプラントでは、脱硫装置で処理する排ガス量(処理ガス量)が多くなる。また、褐炭のように水分が多く発熱量の小さい石炭を燃料とするボイラの場合も処理ガス量が多くなる。
【0006】
脱硫装置における脱硫効率を最適化するためには、吸収塔のガス流通空間を通過するガス流速を一定の範囲(所定の上限流速を超えない範囲)にしなければならない。このため、処理ガス量が増大する場合には、ガス流速が上限流速を超えないようにガス流通空間の断面積(流路断面積)を増大させる必要がある。
【0007】
しかし、ガス流通空間の流路断面積を増大させると、ガス流通空間において、基端部から先端部までのスプレ管の長さが増大し、スプレ管が重量化する。また、吸収塔内において1つのスプレ管により吸収液を送液する距離(送液距離)が増大し、送液対象となるスプレノズルの数も増大するので、スプレ管の管径が増大する。例えば、基端部から先端部に向かって先細りするように縮径するスプレ管では、基端部側の管径が増大し、スプレ管が重量化する。このため、スプレ管を支持するサポート構造が複雑化するおそれがある。
【0008】
また、吸収塔内のスプレ管の送液距離が増大するため、吸収液を送液するためのポンプ(吸収液循環ポンプ)の所要ヘッド(全楊程)が大きくなる。加えて、処理ガス量が増大すると、必要な吸収液の供給量(吸収液循環量)も増大し、ポンプ容量も大きくなる。そのため、ポンプサイズが大型化し、収集塔の外部でポンプを収容するポンプ室の内部においてレイアウト上の制約が増える。
【0009】
さらに、ポンプを大型化した場合であっても、送液距離の増大による送液性能の低下(送液量のバラツキ)の抑制には限界があり、スプレノズルからの吸収液の噴射量(噴霧量)の均一性を維持することが相対的に難しくなる。
【0010】
そこで本発明は、排ガス流通空間の流路断面を増大させた場合であっても、スプレ管のサポート構造の複雑化やポンプの大型化を抑制しつつ、スプレノズルからの吸収液の噴射量の均一性を維持することが可能なスプレ配管構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様は、排煙脱硫装置のスプレ配管構造であって、第1スプレ管と第2スプレ管とを備える。排煙脱硫装置では、吸収塔の周壁が上下方向に延びるガス流通空間を区画し、排ガスがガス流通空間を下方から上方へ流通し、複数の第1スプレノズルと複数の第2スプレノズルとを含む複数のスプレノズルが吸収塔内のガス流通空間に配置される。ガス流通空間を流れる排ガス中にスプレノズルから吸収液を供給して、排ガス中の硫黄酸化物を吸収液で吸収する。
【0012】
第1スプレ管は、第1基端部と第1先端部とを有する。第1基端部は、ガス流通空間を略水平に横断するように直線状に設定される管延設方向の一側に配置される。第1先端部は、上記管延設方向の中央側に配置される。第1スプレ管は、第1基端部から第1先端部へ管延設方向に沿って直線状に延び、第1基端部側が吸収塔に対して固定的に支持される。第1スプレ管は、第1基端部側から第1先端部側へ吸収液を送液して第1スプレノズルへ吸収液を供給する。
【0013】
第2スプレ管は、第2基端部と第2先端部とを有する。第2基端部は、上記管延設方向の他側に配置される。第2先端部は、上記管延設方向の中央側に配置される。第2スプレ管は、第2基端部から第2先端部に向かって上記管延設方向に沿って直線状に延び、第2基端部側が吸収塔に対して固定的に支持される。第2スプレ管は、第2基端部側から第2先端部側へ吸収液を送液して第2スプレノズルへ吸収液を供給する。
【0014】
第1スプレ管と第2スプレ管とは、一直線状に並ぶ。第1先端部と第2先端部とは、近接又は接触し、上記管延設方向と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結される。
【0015】
上記構成では、吸収塔のガス流通空間において、管延設方向の一側の領域には第1スプレ管が配置され、他側の領域には第2スプレ管が配置され、第1スプレ管と第2スプレ管とは一直線状に延びる。すなわち、ガス流通空間の流路断面(水平断面)において、第1スプレ管と第2スプレ管とによって管延設方向の略全域に吸収液が供給される。このため、管延設方向の略全域に対し1つのスプレ管によって吸収液を供給する場合(単一スプレ管を用いる場合)に比べて、1つのスプレ管による吸収液の液送距離を短縮することができ、スプレ管の管径の増大を抑制することができる。また、第1スプレ管は第1基端部側で片持ち支持され、第2スプレ管は第2基端部側で片持ち支持され、且つ第1先端部と第2先端部とは、管延設方向と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結されるので、第1スプレ管と第2スプレ管とから構成されるスプレ管(連結スプレ管)は、両端が支持された状態になる。このため、単一スプレ管を用いる場合に比べて、スプレ管のサポート構造の複雑化を抑制することができる。
【0016】
吸収塔内での1つのスプレ管の液送距離を短縮するとともに、スプレ管の管径の増大を抑制することができるので、吸収液を液送するためのポンプの大型化を抑制することができる。
【0017】
1つのスプレ管の液送距離を短縮することができるので、スプレノズル(第1スプレノズル及び第2スプレノズル)からの吸収液の噴射量の均一性を維持することができる。
【0018】
さらに、ガス流通空間を横断するスプレ管は排ガスの流通抵抗となるが、単一スプレ管に代えて連結スプレ管を設けることにより、スプレ管の管径の増大を抑制することができる。これにより、排ガスの流通抵抗を低減することができ、排ガスを流通させるファンの負荷の増大を抑制することができる。
【0019】
本発明の第2の態様は、第1の態様のスプレ配管構造であって、第1先端部と第2先端部とは、上記管延設方向に沿った相対移動を許容するように離間した状態で連結される。
【0020】
上記構成では、第1先端部と第2先端部とは、管延設方向に沿った相対移動を許容するように離間した状態で連結されるので、連結スプレ管の全長が拘束されない。このため、第1スプレ管及び第2スプレ管を、線膨張係数の高い非金属(例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)などの樹脂材)で形成した場合であっても、第1スプレ管、第2スプレ管及び吸収塔の周壁の破損を防止することができる。
【0021】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様のスプレ配管構造であって、第1先端部の端面開口と第2先端部の端面開口とは、吸収液が流出不能に閉止されている。
【0022】
上記構成では、第1先端部の端面開口と第2先端部の端面開口とは、吸収液が流出不能に閉止されているので、第1先端部と第2先端部との間で吸収液が流通しない。すなわち、第1スプレノズルには第1スプレ管のみから吸収液が供給され、第2スプレノズルには第2スプレ管のみから吸収液が供給される。従って、各第1スプレノズル及び各第2スプレノズルからの吸収液の噴射量の均一性を容易に維持させることができる。
【0023】
本発明の第4の態様は、第1~第3の態様のスプレ配管構造であって、第1基端部から第1先端部までの第1スプレ管の液送距離と、第2基端部から第2先端部までの第2スプレ管の液送距離とは、略等しく設定されている。
【0024】
上記構成では、単一スプレ管を用いる場合に比べて、吸収液の液送距離を半減することができる。
【0025】
本発明の第5の態様は、第1~第4の態様のスプレ配管構造であって、第3スプレ管と第4スプレ管とを備える。複数のスプレノズルは、複数の第3スプレノズルと複数の第4スプレノズルとを含む。
【0026】
第3スプレ管は、第3基端部と第3先端部とを有する。第3基端部は、上記管延設方向の下方でガス流通空間を略水平に横断するように直線状に設定される第2の管延設方向の一側に配置される。第3先端部は、上記第2の管延設方向の中央側に配置される。第3スプレ管は、第3基端部から第3先端部に向かって上記第2の管延設方向に沿って直線状に延び、第3基端部側が吸収塔に対して固定的に支持される。第3スプレ管は、第3基端部側から第3先端部側へ吸収液を送液して第3スプレノズルへ吸収液を供給する。
【0027】
第4スプレ管は、第4基端部と第4先端部とを有する。第4基端部は、上記第2の管延設方向の他側に配置される。第4先端部は、上記第2の管延設方向の中央側に配置される。第4スプレ管は、第4基端部から第4先端部に向かって上記第2の管延設方向に沿って直線状に延び、第4基端部側が吸収塔に対して固定的に支持される。第4スプレ管は、第4基端部側から第4先端部側へ吸収液を送液して第4スプレノズルへ吸収液を供給する。
【0028】
第3スプレ管と第4スプレ管とは、一直線状に並ぶ。第3先端部と第4先端部とは、近接又は接触し、上記第2の管延設方向と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結される。
【0029】
第1スプレ管と第2スプレ管とは、上段の連結スプレ管を構成する。第3スプレ管と第4スプレ管とは、下段の連結スプレ管を構成する。上段の連結スプレ管と下段の連結スプレ管とは、トラス構造を形成する複数の補助部材によって連結される。
【0030】
上記構成では、スプレ管(第1~第4スプレ管)を下方から支持するスプレ管サポート梁を吸収塔内に設置する必要がないので、スプレ管のサポート構造を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、排ガス流通空間の流路断面を増大させた場合であっても、スプレ管のサポート構造の複雑化やポンプの大型化を抑制しつつ、スプレノズルからの吸収液の噴射量の均一性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施形態に係る排煙脱硫装置を模式的に示す右側面図である。
図2図1の前面図である。
図3図1のスプレ配管構造の平面図(III-III矢視断面図)である。
図4図2のスプレ配管構造の側面図である。
図5図4の要部側断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るスプレ配管構造の要部側断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るスプレ配管構造の要部側断面図である。
図8】本発明の第4実施形態に係るスプレ配管構造の要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前方は吸収塔1における排ガスの流入側を意味し、左右は前方から後方を視た状態での左右を意味する。また、図4図5及び図6ではスプレノズル5の図示を省略している。
【0034】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の排煙脱硫装置は、火力発電所等で発生した硫黄酸化物を含む排ガスから硫黄酸化物を除去する湿式石灰石-石膏法排煙脱硫装置であり、硫黄酸化物を含む排ガスが導入される吸収塔(脱硫吸収塔)1と、吸収塔1から流出した吸収液を石膏と脱水濾液とに分離する分離装置(図示省略)とを備える。
【0035】
図1図3に示すように、吸収塔1は略鉛直に起立する円筒状の周壁2を有し、周壁2の内周面は上下方向に延びるガス流通空間3を区画する。周壁2の前側には入口ダクト4が接続され、ボイラ(図示省略)からの排ガスは入口ダクト4を介してガス流通空間3に導入される。導入された排ガスは、ガス流通空間3を下方から上方へ流通する。
【0036】
吸収塔1内のガス流通空間3の上部には、多数のスプレノズル5が設置され、スプレノズル5から吸収液が微細な液滴として噴射(噴霧)される。噴霧された吸収液が排ガスと接触(気液接触)することにより、排ガス中の硫黄酸化物が吸収液滴の表面で化学的に除去され、上後方の排ガス出口7から排出される。このように、スプレノズル5は、吸収液を微細な液滴として噴霧し、噴霧した液滴を上方へ流れる排ガスに接触させる噴霧式であり、スプレノズル5から供給された吸収液により排ガス中の硫黄酸化物が吸収除去される。排ガス流れに同伴する微小な液滴は、吸収塔1のガス出口側に設置されたミストエリミネータ(図示省略)で除去される。ミストエリミネータで微小な液滴が取り除かれたガスは、必要に応じて吸収塔1の後流側に設置される再加熱設備(図示省略)によって昇温されて、煙突(図示省略)から排出される。スプレノズル5から噴霧された大部分の液滴は、硫黄酸化物を吸収した後、吸収塔1の下部に設けられた吸収塔タンク8に落下する。吸収塔タンク8内に滞留する吸収液は、吸収液循環ポンプ9によって送液されて吸収液循環配管6からスプレノズル5に供給される。また、吸収塔タンク8には、滞溜する吸収液に空気を供給する空気供給装置(図示省略)が設けられている。
【0037】
複数のスプレノズル5は、上段の複数の第1スプレノズル5A及び複数の第2スプレノズル5Bと、下段の複数の第3スプレノズル5C及び複数の第4スプレノズル5Dとを含む(図2参照)。各段におけるスプレノズル5の数及び配置は任意に設定可能である。複数のスプレノズル5は、ガス流通空間3を流通する排ガスに吸収液が均等に噴霧されるように配置することが好適である。
【0038】
図1図5に示すように、ガス流通空間3の上部には、上段管軸配置ライン(管延設方向)10と、下段管軸配置ライン(第2の管延設方向)20とがそれぞれ複数設定される。複数の上段管軸配置ライン10は、各々がガス流通空間3を略水平に横断するように直線状に延び、ガス流通空間3の流路断面(上流路断面)において略等間隔に離間して平行に並ぶ。複数の下段管軸配置ライン20は、各々が上管軸配置ライン10の鉛直下方でガス流通空間3を略水平に横断するように直線状に延び、上流路断面の下方の流路断面(下流路断面)において略等間隔に離間して平行に並ぶ。本実施形態の上段管軸配置ライン10及び下段管軸配置ライン20は、左右方向に沿って設定される。なお、上段管軸配置ライン10及び下段管軸配置ライン20の方向は、左右方向に限定されず、任意の方向(例えば、前後方向など)に設定可能である。
【0039】
上段管軸配置ライン10には、上段の連結スプレ管11が配置され、下段管軸配置ライン20には、下段の連結スプレ管21が配置される。上段の連結スプレ管11は、第1スプレ管12と第2スプレ管13とによって構成され、下段の連結スプレ管21は、第3スプレ管22と第4スプレ管23とによって構成される。
【0040】
第1スプレ管12は、第1基端部12Aと第1先端部12Bとを有する。第1基端部12Aは、上段管軸配置ライン10の一側(図示の例では左側)に配置され、第1先端部12Bは、上段管軸配置ライン10の中央側に配置される。第1スプレ管12は、第1基端部12Aから第1先端部12Bへ上段管軸配置ライン10に沿って直線状に延び、第1基端部12A側が吸収塔1に対して固定的に支持される。第1スプレ管12には、複数の第1スプレノズル5Aが取付けられる。
【0041】
第2スプレ管13は、第2基端部13Aと第2先端部13Bとを有する。第2基端部13Aは、上段管軸配置ライン10の他側(図示の例では右側)に配置され、第2先端部13Bは、上段管軸配置ライン10の中央側に配置される。第2スプレ管13は、第2基端部13Aから第2先端部13Bへ上段管軸配置ライン10に沿って直線状に延び、第2基端部13A側が吸収塔1に対して固定的に支持される。第2スプレ管13には、複数の第2スプレノズル5Bが取付けられる。
【0042】
第3スプレ管22は、第3基端部22Aと第3先端部22Bとを有する。第3基端部22Aは、下段管軸配置ライン20の一側(図示の例では左側)に配置され、第3先端部22Bは、下段管軸配置ライン20の中央側に配置される。第3スプレ管22は、第3基端部22Aから第3先端部22Bへ下段管軸配置ライン20に沿って直線状に延び、第3基端部22A側が吸収塔1に対して固定的に支持される。第3スプレ管22には、複数の第3スプレノズル5Cが取付けられる。
【0043】
第4スプレ管23は、第4基端部23Aと第4先端部23Bとを有する。第4基端部23Aは、下段管軸配置ライン20の他側(図示の例では右側)に配置され、第4先端部23Bは、下段管軸配置ライン20の中央側に配置される。第4スプレ管23は、第4基端部23Aから第4先端部23Bへ下段管軸配置ライン20に沿って直線状に延び、第4基端部23A側が吸収塔1に対して固定的に支持される。第4スプレ管23には、複数の第4スプレノズル5Dが取付けられる。
【0044】
図5に示すように、第1スプレ管12と第2スプレ管13とは、上段管軸配置ライン10に沿って一直線状に並び、第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、近接して相対向する。第1先端部12Bの端面と第2先端部13Bの端面とには、円板状の閉止板30がそれぞれ固定される(図5参照)。第1先端部12Bの端面開口と第2先端部13Bの端面開口とは、閉止板30によって密閉され、これらの端面開口からの吸収液の流出が阻止される。
【0045】
第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、円筒状のサポートリング31を介して連結される。第1先端部12Bの外径と第2先端部13Bの外径は略等しく設定され、サポートリング31の内径は、第1先端部12B及び第2先端部13Bの外径よりも僅かに大きく設定される。第1先端部12Bの先端は、サポートリング31の内径部に一側から挿入され、第2先端部13Bの先端は、サポートリング31の内径部に他側から挿入され、サポートリング31は、第1先端部12Bと第2先端部13Bとに跨る。サポートリング31は、第1先端部12B及び第2先端部13Bの一方(例えば第1先端部12B)に固定され、第1先端部12B及び第2先端部13Bの他方(例えば第2先端部13B)とサポートリング31とは、上段管軸配置ライン10に沿って相対移動可能に係合する。すなわち、第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、上段管軸配置ライン10に沿った相対移動を許容するように離間するとともに、上段管軸配置ライン10と交叉する方向(本実施形態では、上下方向及び前後方向)への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結される。なお、第1先端部12Bと第2先端部13Bとを連結する構造は上記に限定されず、例えば、第1先端部12B及び第2先端部13Bの双方をサポートリング31に固定せず、上段管軸配置ライン10に沿って相対移動可能に係合させ、サポートリング31の脱落(抜け)を阻止する脱落防止部材(例えば円環状の部材)32を第1先端部12B及び第2先端部13Bの外周にそれぞれ固定するなど、他の構造であってもよい。
【0046】
第3スプレ管22と第4スプレ管23とは、下段管軸配置ライン20に沿って一直線状に並び、第3先端部22Bと第4先端部23Bとは、近接して相対向する。第3先端部22Bの端面と第4先端部23Bの端面とには、上段の連結スプレ管11と同様に、閉止板30がそれぞれ固定される。また、第3端部22Bと第4先端部23Bとは、上段の連結スプレ管11と同様に、下段管軸配置ライン20に沿った相対移動を許容するように離間するとともに、下段管軸配置ライン20と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で、サポートリング31を介して連結される。
【0047】
上段の連結スプレ管11(第1スプレ管12、第2スプレ管13)と、下段の連結スプレ管21(第3スプレ管22、第4スプレ管23)と、閉止板30と、サポートリング31とは、耐食性や耐スラリ摩耗性に優れ、線膨張係数の高い非金属(例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)などの樹脂材)で形成されている。本実施形態では、吸収塔1内の高塩素濃度(例えば塩素濃度が20,000~35,000ppm)の腐食環境を考慮し、金属製(例えばステンレス製)ではなく、耐食性及び耐スラリ摩耗性に優れ、軽量で安価な非金属製のスプレ管を用いている。
【0048】
図3に示すように、本実施形態では10本の上段管軸配置ライン10が設定される。上段管軸配置ライン10は、ガス流通空間3の流路断面で左右方向に延びる中心線(直径)33の前側と後側とにそれぞれ5本ずつ設定される。第1スプレ管12のうち前後方向の中央側の6本の上段管軸配置ライン10に沿う第1スプレ管12の第1基端部12Aは、吸収塔1の左側の周壁2に対してボルト等によって固定(二重管座図示省略)され、これら中央側の第1基端部12Aの先端は、吸収塔1の左外側へ延びて左側上段のヘッダ35に接続される。第1スプレ管12と同様に、第2スプレ管13のうち前後方向の中央側の6本の上段管軸配置ライン10に沿う第2スプレ管13の第2基端部13Aは、吸収塔1の右側の周壁2に対してボルト等によって固定(二重管座図示省略)され、これら中央側の第2基端部13Aの先端は、吸収塔1の右外側へ延びて右側上段のヘッダ35に接続される。第1スプレ管12のうち前側2本及び後側2本の上段管軸配置ライン10に沿う第1スプレ管12の第1基端部12Aは、隣接する第1スプレ管12の第1基端部12Aに接続されて連通する。同様に、第2スプレ管13のうち前側2本及び後側2本の上段管軸配置ライン10に沿う第2スプレ管13の第2基端部13Aは、隣接する第2スプレ管13の第2基端部13Aに接続されて連通する。
【0049】
図示は省略するが、下段管軸配置ライン20、第3スプレ管22及び第4スプレ管23は、上段管軸配置ライン10、第1スプレ管12及び第2スプレ管13と同様に設定される。中央側の第3基端部22Aは、吸収塔1の左側の周壁2に対してボルト等によって固定(二重管座図示省略)され、その先端は、吸収塔1の左外側へ延びて左側下段のヘッダに接続される。中央側の第4基端部23Aは、吸収塔1の右側の周壁2に対してボルト等によって固定(二重管座図示省略)され、その先端は、吸収塔1の右外側へ延びて右側下段のヘッダに接続される。前側2本及び後側2本の第3基端部22Aは、隣接する第3基端部22Aに接続されて連通し、前側2本及び後側2本の第4スプレ管23の第4基端部23Aは、隣接する第4基端部23Aに接続されて連通する。
【0050】
左上段、右上段、左下段及び右下段のヘッダ35には吸収液循環配管6が接続され、吸収液循環配管6を流通した吸収液は、各ヘッダ35から第1スプレ管12の第1基端部12A、第2スプレ管13の第2基端部13A、第3スプレ管22の第3基端部22A、及び第4スプレ管23の第4基端部23Aへ流入する。第1スプレ管12へ流入した吸収液は、第1基端部12A側から第1先端部12B側へ送液され、第1スプレノズル5Aに供給されて噴霧される。第2スプレ管13へ流入した吸収液は、第2基端部13A側から第2先端部13B側へ送液され、第2スプレノズル5Bに供給されて噴霧される。第3スプレ管22へ流入した吸収液は、第3基端部22A側から第3先端部22B側へ送液され、第3スプレノズル5Cに供給されて噴霧される。第4スプレ管23へ流入した吸収液は、第4基端部23A側から第4先端部23B側へ送液され、第4スプレノズル5Dに供給されて噴霧される。
【0051】
図3に示すように、第1スプレ管12の第1先端部12Bと第2スプレ管13の第2先端部13Bとは、ガス流通空間3の流路断面で前後方向に延びる中心線(直径)34の近傍に配置される。上段の各連結スプレ管11において、第1スプレ管12の第1基端部12Aから第1先端部12Bまでの液送距離と、第2スプレ管13の第2基端部13Aから第2先端部13Bまでの液送距離とは、略等しく設定されている。図示は省略しているが、上段と同様に、第3プレ管22の第3先端部22Bと第4スプレ管23の第4先端部23Bとは、ガス流通空間3の流路断面で前後方向に延びる中心線(直径)の近傍に配置される。下段の各連結スプレ管21において、第3スプレ管22の第3基端部22Aから第3先端部22Bまでの液送距離と、第4スプレ管13の第2基端部13Aから第2先端部13Bまでの液送距離とは、略等しく設定されている。
【0052】
また、上段及び下段の連結スプレ管11,21は、ガス流通空間3の上下の各流路断面において、左右方向に延びる中心線33を中心として前後対称に構成されるとともに、前後に延びる中心線34を中心として左右対称に構成される。
【0053】
図3及び図4に示すように、第1~第4スプレ管12,13,22,23は、内径及び外径が基端部12A,13A,22A,23Aから先端部12B,13B,22B,23Bに向かって(吸収液の流通方向の上流側から下流側に向かって)縮径する円管形状を有する。なお、第1~第4スプレ管12,13,22,23は、段階的に縮径してもよく、連続して縮径してもよい(図3及び図4には、段階的に縮径する例を示す)。
【0054】
図4及び図5に示すように、上段の連結スプレ管11と下段の連結スプレ管21との間には、上段管軸配置ライン10及び下段管軸配置ライン20の一側(左側)から他側(右側)に向かって斜め上方へ傾斜するブレース(補助部材)40Aと、斜め下方へ傾斜するブレース(補助部材)40Bとが交互に配置され、上段の連結スプレ管11と下段の連結スプレ管21とは、複数のブレース40A,40Bによって連結される。各ブレース40A,40Bの上端部及び下端部は、上段の連結スプレ管11及び下段の連結スプレ管21に対して固定され、上段及び下段の連結スプレ管11,21とブレース40A,40Bとによってトラス構造15が形成される。本実施形態のブレース40A,40Bは、第1~第4スプレ管12,13,22,23と同様に、耐食性や耐スラリ摩耗性に優れた非金属(例えばFRP)で形成されている。
【0055】
本実施形態によれば、上段管軸配置ライン10の左側の領域には第1スプレ管12が配置され、右側の領域には第2スプレ管13が配置され、第1スプレ管12と第2スプレ管13とは一直線状に延びる。また、下段管軸配置ライン20の左側の領域には第3スプレ管22が配置され、右側の領域には第4スプレ管23が配置され、第3スプレ管22と第4スプレ管23とは一直線状に延びる。ガス流通空間3の上流路断面では、第1スプレ管12と第2スプレ管13とによって上段管軸配置ライン10略全域に吸収液が供給され、ガス流通空間3の下流路断面では、第3スプレ管22と第4スプレ管23とによって下段管軸配置ライン20の略全域に吸収液が供給される。このため、上段管軸配置ライン10の略全域や下段管軸配置ライン20の略全域に対してそれぞれ1つのスプレ管によって吸収液を供給する場合(単一スプレ管を用いる場合)に比べて、1つのスプレ管による吸収液の液送距離を短縮することができる。従って、排ガス流通空間3の流路断面を増大させた場合であっても、スプレ管の管径の増大を抑制することができる。特に本実施形態では、上段の連結スプレ管11において、第1基端部12Aから第1先端部12Bまでの第1スプレ管12の液送距離と、第2基端部13Aから第2先端部13Bまでの第2スプレ管13の液送距離とが、略等しく設定され、下段の連結スプレ管21において、第3基端部22Aから第3先端部22Bまでの第3スプレ管22の液送距離と、第4基端部23Aから第4先端部23Bまでの第4スプレ管23の液送距離とが、略等しく設定される。このため、単一スプレ管を用いる場合に比べて、吸収液の液送距離を半減することができる。
【0056】
第1スプレ管12は第1基端部12A側で片持ち支持され、第2スプレ管13は第2基端部13A側で片持ち支持され、且つ第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、上段管軸配置ライン10と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結されるので、上段の連結スプレ管11は、両端が支持された状態になる。同様に、第3スプレ管22は第3基端部22A側で片持ち支持され、第4スプレ管23は第4基端部23A側で片持ち支持され、且つ第3先端部22Bと第4先端部23Bとは、下段管軸配置ライン20と交叉する方向への相対移動を規制するように互いを支持した状態で連結されるので、下段の連結スプレ管21は、両端が支持された状態になる。このため、上段及び下段のそれぞれに単一スプレ管を用いる場合に比べて、スプレ管のサポート構造の複雑化を抑制することができる。
【0057】
上述したように吸収塔1内での1つのスプレ管の液送距離を短縮するとともに、スプレ管の管径の増大を抑制することができるので、排ガス流通空間3の流路断面を増大させた場合であっても、吸収液を液送するための吸収液循環ポンプ9の大型化を抑制することができる。
【0058】
1つのスプレ管の液送距離を短縮することができるので、排ガス流通空間3の流路断面を増大させた場合であっても、スプレノズル5(第1スプレノズル5A、第2スプレノズル5B、第3スプレノズル5C、第4スプレノズル5D)からの吸収液の噴射量の均一性を維持することができる。
【0059】
ガス流通空間3を横断するスプレ管は排ガスの流通抵抗となるが、単一スプレ管ではなく連結スプレ管11,21を設けているので、スプレ管の管径の増大を抑制することができる。これにより、排ガスの流通抵抗を低減することができ、排ガス流通空間3の流路断面を増大させた場合であっても、排ガスを流通させるファン(図示省略)の負荷の増大を抑制することができる。
【0060】
上段及び下段の連結スプレ管11,21は、ガス流通空間3の上下の各流路断面において、左右方向に延びる中心線33を中心として前後対称に構成されるとともに、前後に延びる中心線34を中心として左右対称に構成される。これに対し、基端部から先端部に向かって段階的に又は連続的に先細りする単一スプレ管を設ける場合、左右対称に構成することができない。このため、排ガスの流通抵抗の流路断面内での偏り(バラツキ)に関し、単一スプレ管を設ける場合よりも本実施形態の方が偏りが生じ難い(バランスが崩れ難く、流れが乱れ難い)構成とすることができる。
【0061】
第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、上段管軸配置ライン10に沿った相対移動を許容するように離間した状態で連結されるので、上段の連結スプレ管11の全長は拘束されない。同様に、第3端部22Bと第4先端部23Bとは、下段管軸配置ライン20に沿った相対移動を許容するように離間した状態で連結されるので、下段の連結スプレ管21の全長は拘束されない。このため、第1スプレ管12、第2スプレ管13、第3スプレ管22及び第4スプレ管23を線膨張係数の高い非金属で形成した場合であっても、第1~第4スプレ管12,13,22,23の熱膨張による破損や、これらを固定的に支持する吸収塔1の周壁2の破損を防止することができる。
【0062】
第1先端部12Bの端面開口と第2先端部13Bの端面開口とは、吸収液が流出不能に閉止され、第1先端部12Bと第2先端部13Bとの間で吸収液は流通しない。このため、第1スプレノズル5Aには第1スプレ管12のみから吸収液が供給され、第2スプレノズル5Bには第2スプレ管13のみから吸収液が供給される。従って、各第1スプレノズル5A及び各第2スプレノズル5Bからの吸収液の噴射量の均一性を容易に維持させることができる。同様に、第3先端部22Bの端面開口と第4先端部23Bの端面開口とは、吸収液が流出不能に閉止され、第3先端部22Bと第4先端部23Bとの間で吸収液は流通しない。このため、第3スプレノズル5Cには第3スプレ管22のみから吸収液が供給され、第4スプレノズル5Dには第4スプレ管23のみから吸収液が供給される。従って、各第3スプレノズル5C及び各第4スプレノズル5Dからの吸収液の噴射量の均一性を容易に維持させることができる。なお、吸収液が流出不能に閉止される状態とは、端面開口が密閉されている場合の他、吸収液が流出不能(空気は入出可能)な微小な大きさで開口している場合も含む。
【0063】
また、上段の連結スプレ管11と下段の連結スプレ管21とを複数のブレース40A,40Bによって連結してトラス構造を形成しているので、連結スプレ管11,21を下方から支持するスプレ管サポート梁を吸収塔1内に設置する必要がなく、スプレ管のサポート構造を簡略化することができる。
【0064】
なお、連結スプレ管11,21の段数は2段に限定されず、1段(本実施形態の上段の連結スプレ管11のみ)であってもよく、2段を超える段数であってもよい。また、2段を超える段数の場合、トラス構造で連結する段数を隣接する上下2段に制限する(例えば、4段の場合、上から1段目と2段目をトラス構造で連結し、上から3段面と4段目をトラス構造で連結し、2段目と3段面を連結しない)ことが好ましい。
【0065】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、連結スプレ管11,21及び閉止板30の材質、第1先端部12Bと第2先端部13Bとを連結する態様、及び第3先端部22Bと第4先端部23Bとを連結する態様が第1実施形態と相違し、他の構成は第1実施形態と共通する。このため、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
本実施形態の連結スプレ管11,21(第1~第4スプレ管12,13,22,23)は、樹脂に比べて熱膨張し難い金属製(例えばステンレス鋼製やニッケル基合金製など)である。図6に示すように、サポートリング31(図5参照)は設けられておらず、第1先端部12Bの閉止板30と第2先端部13Bの閉止板30とは、何れも金属製で円板状であり、互いに面接触した状態で溶接固定され、第1先端部12Bと第2先端部13Bとは相対移動しない。同様に、第3先端部22Bの閉止板30と第4先端部23Bの閉止板30とは、何れも金属製で円板状あり、互いに面接触した状態で溶接固定され、第3先端部22Bと第4先端部23Bとは相対移動しない。このように、第1スプレ管12と第2スプレ管13とを一体化するので、上段の連結スプレ管11の剛性を高めることができる。また、第3プレ管22と第4スプレ管23とを一体化するので、下段の連結スプレ管21の剛性を高めることができる。なお、ブレース40A,40Bは、金属製であってもよく、非金属製であってもよい。また、上段の閉止板30の外径は、第1先端部12B及び第2先端部13Bの外径と同じ大きさが好ましく、下段の閉止板30の外径は、第3先端部22B及び第4先端部23Bの外径と同じ大きさが好ましい。
【0067】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態は、第1先端部12Bと第2先端部13Bとを連結する態様、及び第3先端部22Bと第4先端部23Bとを連結する態様が第2実施形態と相違し、他の構成は第2実施形態と共通する。このため、第2実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。第1先端部12Bの閉止板30と第2先端部13Bの閉止板30との間には、金属製で円筒状の接続リング36が配置される。接続リング36は、第1先端部12Bの外径及び第2先端部13Bの外径よりも小さい内径を有する。接続リング36の一端面は第1先端部12Bの閉止板30の外面に面接触した状態で溶接固定され、接続リング36の他端面は第2先端部13Bの閉止板30の外面に面接触した状態で溶接固定される。同様に、第3先端部22Bの閉止板30と第4先端部23Bの閉止板30との間には、金属製で円筒状の接続リング36が配置される。接続リング36は、第3先端部22Bの外径及び第4先端部23Bの外径よりも小さい内径を有する。接続リング36の一端面は第3先端部22Bの閉止板30の外面に面接触した状態で溶接固定され、接続リング36の他端面は第4先端部23Bの閉止板30の外面に面接触した状態で溶接固定される。このように、第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、上段の閉止板30及び接続リング36を介して連結され、第3先端部22Bと第4先端部23Bとは、下段の閉止板30及び接続リング36を介して連結される。なお、上段の閉止板30及び接続リング36の外径は、第1先端部12B及び第2先端部13Bの外径と同じ大きさが好ましく、下段の閉止板30及び接続リング36の外径は、第3先端部22B及び第4先端部23Bの外径と同じ大きさが好ましい。
【0068】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態は、第1先端部12Bと第2先端部13Bとを連結する態様、及び第3先端部22Bと第4先端部23Bとを連結する態様が第2及び第3実施形態と相違し、他の構成は第2及び第3実施形態と共通する。このため、第2及び第3実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、金属製で円筒状の接続リング37を介して連結される。接続リング37の内径は、第1先端部12B及び第2先端部13Bの外径よりも僅かに大きく設定される。第1先端部12Bの先端は、接続リング37の内径部に一側から挿入され、第2先端部13Bの先端は、接続リング37の内径部に他側から挿入され、接続リング37は、第1先端部12Bと第2先端部13Bとに跨る。接続リング37は、第1先端部12Bの外周面と第2先端部13Bの外周面とに溶接固定される。同様に、第3先端部22Bと第4先端部23Bとは、金属製で円筒状の接続リング37を介して連結される。接続リング37の内径は、第3先端部22B及び第4先端部23Bの外径よりも僅かに大きく設定される。第3先端部22Bの先端は、接続リング37の内径部に一側から挿入され、第4先端部23Bの先端は、接続リング37の内径部に他側から挿入され、接続リング37は、第3先端部22Bと第4先端部23Bとに跨る。接続リング37は、第3先端部22Bの外周面と第4先端部23Bの外周面とに溶接固定される。このように、第1先端部12Bと第2先端部13Bとは、上段の接続リング37を介して連結され、第3先端部22Bと第4先端部23Bとは、下段の接続リング37を介して連結される。なお、本実施形態の閉止板30の材質は、金属以外であってもよい。
【0069】
第3及び第4実施形態においても、第2実施形態と同じく、第1スプレ管12と第2スプレ管13とを一体化するので、上段の連結スプレ管11の剛性を高めることができる。また、第3プレ管22と第4スプレ管23とを一体化するので、下段の連結スプレ管21の剛性を高めることができる。
【0070】
なお、本発明は、一例として説明した上述の実施形態及び変形例に限定されることはなく、上述の実施形態等以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、吸収塔1の周壁2の筒形状は円筒状に限定されず、他の形状(例えば、前後方向に離間する前壁及び後壁と左右方向に離間する左壁及び右壁とが略鉛直に起立する矩形筒状)であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1:吸収塔(脱硫吸収塔)
2:周壁
3:ガス流通空間
4:入口ダクト
5:スプレノズル
5A:第1スプレノズル
5B:第2スプレノズル
5C:第3スプレノズル
5D:第4スプレノズル
6:吸収液循環配管
9:吸収液循環ポンプ
10:上段管軸配置ライン(管延設方向)
11,21:連結スプレ管
12:第1スプレ管
12A:第1基端部
12B:第1先端部
13:第2スプレ管
13A:第2基端部
13B:第2先端部
20:下段管軸配置ライン(第2の管延設方向)
22:第3スプレ管
22A:第3基端部
22B:第3先端部
23:第4スプレ管
23A:第4基端部
23B:第4先端部
30:閉止板
31:サポートリング
36,37:接続リング
40A,40B:ブレース(補助部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8