IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジッコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-昆布佃煮の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054291
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】昆布佃煮の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20220330BHJP
【FI】
A23L17/60 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161396
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】591183625
【氏名又は名称】フジッコ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森本 直也
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 孝行
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LC02
4B019LE05
4B019LK02
4B019LK06
4B019LP01
4B019LP04
4B019LP05
4B019LP09
4B019LP14
4B019LP17
(57)【要約】
【課題】
本発明は、増粘多糖類を含む増粘剤、ゲル化剤および安定剤、加工でん粉などの食品添加物を使用することなく、ペースト状昆布佃煮の粘性と保水性を高める方法を提供することを目的とする。また、ペースト状昆布佃煮を用いることにより昆布佃煮の液垂れを防止する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】生昆布を冷凍処理する工程と、冷凍した昆布を解凍処理する工程と、解凍後昆布を粉砕処理する工程と、粉砕後昆布を調味煮熟処理する工程を、順に含むことを特徴とするペースト状昆布佃煮の製造方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生昆布を冷凍処理する工程と、冷凍した昆布を解凍処理する工程と、解凍後昆布を粉砕処理する工程と、粉砕後昆布を調味煮熟処理する工程を、順に含むことを特徴とするペースト状昆布佃煮の製造方法。
【請求項2】
前記解凍処理した後に次いで昆布を洗浄処理する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のペースト状昆布佃煮の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕処理した後に次いで水煮処理する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のペースト状昆布佃煮の製造方法。
【請求項4】
前記解凍処理した後に次いで昆布を洗浄処理する工程を含み、かつ、前記粉砕処理した後に次いで水煮処理する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のペースト状昆布佃煮の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4記載の方法により得られたペースト状昆布佃煮を、昆布佃煮に混合することを特徴とするペースト状昆布佃煮の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状の昆布佃煮の製造方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に市販されている昆布佃煮は、調味液で煮熟した昆布に、さらにまぶし液と呼ばれる増粘多糖類や寒天を含む調味液を表面に付着させることにより、調味性を高めるだけでなく、昆布表面の照り、艶を増すと共に、保存中の照りの消失、昆布表面の乾燥を防止することで品質を向上させている(特許文献1、2)。
【0003】
通常のまぶし液は粘稠性が高い液状物を用いているため、昆布佃煮をおにぎりに入れた場合には、まぶし液がご飯側へ移行し、おにぎりの外側までまぶし液が液垂れしておにぎりの見栄えを損なう場合があり、従来より液垂れしないまぶし液が所望されていた。
【0004】
上記課題を解決するために、様々な離水抑制剤や離水の抑制方法が提案されている。具体的には、海苔等の佃煮類やおにぎりの具材を製造するときに、こんにゃく粉、糖質およびでん粉を含む乾燥こんにゃく加工品を用いた離水を防止する方法(特許文献3)、おにぎりやサンドウィッチの具材などにスクシノグリカンを用いた離水を防止する方法(特許文献4)などが開示されているが改善の余地が残されており、さらなる離水防止効果が高い方法が求められている。
【0005】
一方で、近年においては消費者の健康志向の高まりから、より食品添加物の少ない食品を希求される消費者が増えており、ゲル化剤や増粘剤を使用せずに液垂れや離水を抑制する技術が求められている。
【0006】
ところで、昆布を原料としたペースト状の加工食品としては、昆布ペースト状食品の製造法(特許文献5)、食用海藻ペーストの製造方法(特許文献6)に開示されているが、昆布佃煮の液垂れを防止するために昆布ペーストを用いること、また昆布ペーストの粘性をさらに高める技術については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-187207号公報
【特許文献2】特開2011-229522号公報
【特許文献3】特開2004-215646号公報
【特許文献4】特開2016-131509号公報
【特許文献5】特開H3-254654号公報
【特許文献6】特開H6-181722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のまぶし液のように液垂れせず、また増粘多糖類を含む増粘剤、ゲル化剤および安定剤、加工でん粉などの食品添加物を使用することなく、昆布ペーストを用いることにより昆布佃煮の液垂れを防止する方法を提供することを目的とする。また、当該昆布ペーストの粘性と保水性をさらに高める方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意努力した結果、生昆布を冷凍処理し、解凍処理し、これを粉砕処理した後、調味煮熟処理することにより得られたペースト状昆布佃煮が、高い粘性と保水力を有し、離水を抑制できることを見出した。また、当該ペースト状昆布佃煮を昆布佃煮のまぶし液として使用したときに、従来のまぶし液と比べて液垂れが抑制されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関するものである。
[1]生昆布を冷凍処理する工程と、冷凍した昆布を解凍処理する工程と、解凍後昆布を粉砕処理する工程と、粉砕後昆布を調味煮熟処理する工程を、順に含むことを特徴とするペースト状昆布佃煮の製造方法に関する。
[2]前記解凍処理した後に次いで昆布を洗浄処理する工程を含むことを特徴とする[1]記載のペースト状昆布佃煮の製造方法に関する。
[3]前記粉砕処理した後に次いで水煮処理する工程を含むことを特徴とする[1]記載のペースト状昆布佃煮の製造方法に関する。
[4]前記解凍処理した後に次いで昆布を洗浄処理する工程を含み、かつ、前記粉砕処理した後に次いで水煮処理する工程を含むことを特徴とする[1]記載のペースト状昆布佃煮の製造方法に関する。
[5][1]~[4]に記載の方法により得られたペースト状昆布佃煮を、昆布佃煮に混合することを特徴とするペースト状昆布佃煮の使用方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い粘性と保水力を有し、離水を抑制できるペースト状昆布佃煮を得ることができる。また、ペースト状昆布佃煮を、昆布佃煮のまぶし液として用いることにより、昆布佃煮の液垂れを抑制することができる。
本発明のペースト状昆布佃煮は、液垂れを防止するために増粘多糖類を含む増粘剤やゲル化剤、加工でん粉等を使用する必要がないため、食品添加物の使用を減らすことができ、さらに増粘剤などを使用しない場合には、フレーバーリリースがよくなり昆布佃煮の風味を向上させることができる。
また、本発明によれば、当該ペースト状昆布佃煮の粘性をさらに高める方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のペースト状昆布佃煮の製造方法の一実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明においては、原料となる昆布は、生昆布を用いる。本発明において生昆布とは、湿潤状態が保持されている昆布を指し、収穫後に天日乾燥や熱風乾燥された乾燥状態の昆布を除いたものである。生昆布は湿潤状態が保持されている昆布であればよく、具体的には、収穫されたままの生の昆布、収穫後に冷凍保存された冷凍昆布、および収穫後に塩蔵処理された塩蔵昆布を原料昆布として用いることができる。
【0014】
原料となる昆布の産地は、主には北海道、青森などの国産の他、中国産、ロシア産でもよく、特に限定されず、いずれの産地の昆布でも用いることができる。
【0015】
昆布の種類は、真昆布、利尻昆布、日高昆布、長昆布、猫足昆布、ラウス昆布などいずれの種類であってもよく、その種類は問わない。また、使用部位についても、葉昆布、根昆布のいずれの部位であってもよい。
【0016】
以下、本発明を実施するための形態として、ペースト状昆布佃煮の一実施形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。図1は、ペースト状昆布佃煮の製造方法の一実施例を示すフローチャートである。
【0017】
〔前処理(St1)〕
生昆布には砂や貝などの異物が付着している場合があるため、これらを除去するために水洗いやブラシ等で洗浄する前処理(St1)を行う。
また、原料の生昆布は、原藻のサイズのままでも使用できるが収穫された昆布は長く大きいため、前処理(St1)において予め取り扱いがしやすい大きさに切断することができ、その大きさは特に限定されない。
なお、前処理(St1)は、必須の工程ではなく必要に応じて行えばよく、予め異物が除去された原料を使用する場合や、後述する後工程の洗浄処理(St4)を行う場合には前処理(St1)は不要となる。また、使用する原料が塩蔵昆布の場合には、前処理(St1)で脱塩処理を兼ねて洗浄を行う。
【0018】
〔冷凍処理(St2)〕
前処理(St1)した生昆布を冷凍処理(St2)する。本発明における冷凍処理(St2)は、生昆布の保存(品質劣化の防止)を主たる目的にするものではなく、本発明によるペースト状昆布佃煮の粘性と保水性を高めることを目的に行う。
生昆布を冷凍処理(St2)することにより昆布の細胞壁が破壊され、後述する後工程の解凍処理(St3)において、細胞壁内部に内在する成分(以下、「ドリップ」という。) を溶出させ取り除くことで、本発明によるペースト状昆布佃煮の粘性と保水性を高めることができる。
昆布(真昆布の素干し)の栄養成分は、五訂日本食品標準成分表によれば、糖質34.4%、食物繊維27.1%、ミネラル(灰分)19.6%、タンパク質8.2%、脂質1.2%、水分9.5%が含まれ、その内、糖質にはマンニトールが多く含まれ、食物繊維にはアルギン酸などの多糖類が多く含まれる。昆布を冷凍処理(St2)し、解凍処理(St3)することにより、低分子の糖質が多く溶出し、一方、高分子の食物繊維(多糖類)の溶出は少ないため、相対的に食物繊維の比率が高まることにより、多糖類の相互間作用が高まり粘性が増加すると考えられる。
冷凍処理(St2)の処理条件は、昆布が凍結される温度であればよく、好ましくは-4℃以下の氷点下であり、-4℃以下の氷点下で冷凍することでドリップの溶出を促進することができる。
また、冷凍処理(St2)の冷凍方法は、緩慢凍結または急速凍結のいずれでもよく特に限定されない。
【0019】
〔解凍処理(St3)〕
冷凍処理(St2)した生昆布を解凍処理(St3)する。解凍処理(St3)により、生昆布からドリップが多く溶出し、ドリップを取り除くことにより、本発明によるペースト状昆布佃煮の粘性と保水性を高めることができる。
解凍処理(St3)の解凍方法は、昆布を常温下または冷蔵庫内で自然解凍、または、昆布に水をかけ流す、または水に浸漬する流水解凍のいずれかの方法で解凍すればよく、特に限定されない。
【0020】
〔洗浄処理(St4)〕
解凍処理(St3)した生昆布を洗浄処理(St4)する。洗浄処理(St4)により、昆布に付着したドリップを取り除くだけでなく、昆布からさらに低分子の糖質を溶出させ取り除くことにより、 本発明によるペースト状昆布佃煮の粘性と保水性をさらに高めることができる。
洗浄処理(St4)の方法は、昆布を水に浸漬するだけで効果を奏するが、好ましくは昆布を水に浸漬して揺動することにより行われる。洗浄処理(St4)の温度は特に限定されず、常水、温水または熱水のいずれでもよいが、より温度が高い熱水を用いるとより効果的にドリップを取り除くことができる。例えば、常水で洗浄した場合と比較して、熱水で洗浄(水煮)した場合には、本発明によるペースト状昆布佃煮の粘性と保水性を高めることができる。
また、洗浄処理(St4)の揺動手段としては、水槽内で撹拌や曝気処理であってもよく、洗浄機を用いてドラム洗浄やスパイラル洗浄でもよく、特に限定されない。
なお、洗浄処理(St4)は、必須の工程ではなく必要に応じて行うことができる。
【0021】
〔粉砕処理(St5)〕
解凍処理(St3)または洗浄処理(St4)した昆布を粉砕処理(St5)する。粉砕処理(St5)は昆布または昆布と水を粉砕機に供して粉砕され、昆布がせん断され昆布に含まれる粘性多糖が溶出して粘性が増加し、昆布がペースト状の粘性物(以下、昆布ペーストという。)となる。また、昆布がより細かく粉砕されるほど昆布の表面積が増加し保水力が高まることにより、本発明によるペースト状昆布佃煮の液垂れを抑制することができる。
粉砕処理(St5)の粉砕サイズ は、目開き5~6mm以下であればよく、特に限定されない。なお、粉砕サイズが目開き5~6mmよりも大きい場合は、粘性が低くなるため不適である。
また、昆布ペーストの粘度と保水性をより増加させること、および食感を滑らかにすることを目的とする場合は、粉砕サイズを目開き2.5mm以下とすることが好ましく、より好ましくは目開き0.8mm以下であり、粉砕サイズが小さくなるほど粘度と保水性が高くなり、食感も滑らかにすることができる。
粉砕処理(St5)の手段は、フードカッターやグラインダーカッターなどでよく、特に限定されない。
【0022】
〔水煮処理(St6)〕
粉砕処理(St5)して得られた昆布ペーストを、さらに水煮処理(St6)する。水煮処理(St6)することにより、昆布を十分に軟化させ、膨潤させることを目的とし、これによりペースト状昆布佃煮の粘度と保水性を高めることができる。
また、水煮処理(St6)で昆布を予め十分に給水、膨潤させることにより、後述する後工程の調味煮熟処理(St7)において昆布をBxが高い調味液と混合したときに、昆布が急激な脱水により硬化することを防ぎ、昆布中の水分と調味料との置換を促進させることができる。
水煮処理(St6)の方法は、昆布ペーストに適宜加水して水煮(加熱)する。加水量は最終製品の品質、用途に応じて調整すればよく、特に限定されないが、本発明の方法により得られるペースト状昆布佃煮を後述する昆布佃煮のまぶし液として用いる場合には、原料の生昆布1重量部に対して、前工程で加水がある場合はこれも含めて3重量部未満とすることが好ましい。加水量が多い場合には昆布ペーストの粘性が下がるため、最終製品の昆布佃煮において液垂れが生じるためである。
水煮処理(St6)の加熱条件 は、特に限定されないが、80℃以上100℃以下で3~60分行うことができる。使用する加熱設備により条件は異なるが、好ましくは80~100℃で5~30分加熱することがよい。
なお、加熱温度が高い状態で長時間加熱した場合には、昆布ペーストの粘性と保水性が低下するため、本発明によるペースト状昆布佃煮を得ることができない。
水煮処理(St6)で用いる加熱設備は、特に限定されず、例えば、蒸気釜を用いて水煮してもよく、ジュール式加熱装置を用いて連続的加熱してもよい。
なお、水煮処理(St6)は、本発明によるペースト状昆布佃煮において粘度、保水性および歩留りを向上させるために行うが、必須の工程ではなく必要に応じて行うことができる。また、水煮処理(St6)をしない場合には、水煮工程(St6)で加水する水量を次工程に加えることで、最終製品の水分量を調整することができる。
【0023】
〔調味煮熟処理(St7)〕
粉砕処理(St5)して得られた昆布ペースト、または水煮処理(St6)された昆布ペーストに調味液を加えて加熱する調味煮熟処理(St7)を行い、本発明のペースト状昆布佃煮が完成する。
調味煮熟処理(St7)においては、粉砕処理(St5)して得られた昆布ペースト、または水煮処理(St6)された昆布ペーストと、醤油および糖質を含む調味液とを混合してBx40以上、水分活性がAw0.9未満となるように調味煮熟処理(St7)を行うことで昆布佃煮に適した保存性を有するペースト状昆布佃煮にすることができる。より保存性を高める場合には水分活性をAw0.88未満となるように調味煮熟処理(St7)すればよく、さらに好ましくは水分活性をAw0.86未満となるように調味煮熟処理(St7)すればよい。
【0024】
調味煮熟処理(St7)に使用する調味液は、醤油および糖質を必須の調味料として含み、その他に使用する調味料は特に制限されず、酸味料、増粘多糖類、保存料などの添加物を使用することができる。
本発明の方法においては、増粘多糖類を含む増粘剤、ゲル化剤および安定剤、寒天、でん粉、加工でん粉を使用することで、さらに保水性を高めて液垂れを抑制することができるが、本発明のペースト状昆布佃煮は保水力が高いため、増粘多糖類等を添加しなくても液垂れを抑制することができる。
【0025】
本発明の方法により得られたペースト状昆布佃煮は、増粘多糖類や寒天を使用したまぶし液の代わりに用いることができる。昆布を醤油および糖質を含む調味液で煮熟して得られた昆布(以下、「昆布佃煮」という)とペースト状昆布佃煮とを混合することで、当該まぶし液と比べて液垂れが抑制された昆布佃煮を製造することができる。
また、ペースト状昆布佃煮は保水力が高いため、品温が高くなっても液垂れを抑制することができるが、一方、増粘多糖類や寒天を使用した従来のまぶし液は品温上昇に伴って粘性が低下して液垂れが増加する。従って、本発明のペースト状昆布佃煮を用いることによって、従来のまぶし液を用いた昆布佃煮と比べて、夏季の高温下においても液垂れが改善される昆布佃煮を製造することができる。
【0026】
また、昆布佃煮とペースト状昆布佃煮の混合比率は、特に限定されないが、昆布佃煮100重量部に対して、ペースト状昆布佃煮を10重量部以上、200重量部以下の範囲で混合することができる。見栄えの観点からは、好ましくは15重量部~100重量部であり、より好ましくは20重量部~50重量部 である。
【0027】
かくして、本発明の方法によって、ペースト状昆布佃煮の粘性と保水性が向上され、当該ペースト状昆布佃煮を従来まぶし液の代わりに昆布佃煮と合わせることにより、液垂れが抑制された昆布佃煮を製造することができる。
【実施例0028】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
〔材料および方法 〕
下記の実施例および比較例は、特記しない限り、下記の材料および条件を用いて行った。
[St1] 原料の真昆布の生昆布820gを、常水で5分間スパイラル洗浄機を用いて前処理(St1)した。
[St2,St3] 前処理(St1)した昆布を-20℃の氷点下で3日間冷凍処理(St2)した後、10℃の冷蔵庫内で自然解凍(解凍処理(St3))した。
[St4] 解凍処理(St3)した昆布を、昆布の10倍量の常水(25℃)に浸漬し5分間撹拌して洗浄処理(St4)した。
[St5] 洗浄処理(St4)した昆布を、粉砕機(ミクロマイスター、増幸産業株式会社製、回転速度2,000rpm)を用いて、粉砕サイズを目開き0.76mmで粉砕処理(St5)して昆布ペーストを得た。
[St6] 粉砕処理(St5)後の昆布ペーストに、原料の生昆布重量に対して750gの水(湯)と混合し、100℃30分間水煮処理(St6)した。
[St7] 水煮処理(St6)後の昆布ペーストに対して、表1に記載の調味液A(750g)を加え、煮熟終了時にBx52となるよう調味煮熟処理(St7)してペースト状昆布佃煮のサンプルを得た(実施例1)。
比較のために、洗浄処理(St4)を含まないもの(実施例2)、洗浄処理(St4)および水煮処理(St6)を含まないもの(実施例3)、洗浄処理(St4)の温度が90℃であるもの(実施例4)について、実施例1と同様にして調味液Aを加えて調味煮熟処理(St7)して同一Bxのペースト状昆布佃煮のサンプルを得た。なお、水煮処理(St6)を含まないものについては、調味煮熟処理(St7)において同量の水(湯)を加え調整した。
また、実施例1に対して原料の生昆布の使用量を減らし、水煮処理(St6)の加水量および調味煮熟処理(St7)の調味液量を同一にして調味煮熟処理(St7)し、同一Bxのペースト状昆布佃煮のサンプルを得た。具体的には、実施例1の原料生昆布の使用量を100%とした場合に、原料生昆布の使用量が44%(実施例5)、40%(実施例6)、および33%(比較例1)に減じたペースト状昆布佃煮のサンプルを得た。
得られたペースト状昆布佃煮の各サンプルについて粘度および歩留りを測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
〔実施例1~6、比較例1〕: 液垂れの評価
細切の昆布佃煮(Bx52、Aw=0.86、切断サイズ3×60mm)と、上記で得られた各ペースト状昆布佃煮を混合して得られた昆布佃煮について、保存中の液垂れ量について評価した。なお、混合比率については、細切の昆布佃煮100重量部に対して、ペースト状昆布佃煮は30重量部となるように混合した。
結果を表2,表3に示す。
【0032】
〔保存中の液垂れ量の測定〕
昆布佃煮の保存中の液垂れ量は以下の方法により行った。得られた昆布佃煮の各サンプル60gを蓋付容器の半分に詰め、昆布佃煮のある方を上になるようにして水平面から約60度に傾けて静置し、液垂れが下方に落ちるような状態にして30℃で24時間保存した。24時間後に容器下部に溜まった液垂れ量の質量を測定し、液垂れ量の質量(g)÷各サンプル量60g×100%を液垂れ率(%)として評価した。また、液垂れ率について下記評価基準で評価した。
〔液垂れ量の評価基準〕
○:液垂れ率が、5%以下である。
×:液垂れ率が、5%を超える。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表2の結果より、洗浄処理(St4)および水煮処理(St6)をすることにより、ペースト状昆布佃煮の粘度を増加させることができる。また、測定できないため数値上の評価はできないが、洗浄処理(St4)を熱水処理(90℃)することにより、常水(25℃)と比べて粘度をより増加できることが分かった。
また、表3の結果より、本発明の製造方法を用いることで、実施例1の原料生昆布の使用量を100%とした場合に、原料使用料対比で40%まで使用量を減らしても昆布佃煮の液垂れを抑制できる。すなわち、本発明の製造方法によれば、昆布の使用量を低減させ、昆布の歩留りを増加、向上できることが分かった。
【0036】
〔実施例7~8、比較例2~4〕: 液垂れの評価
上記実施例1に対して原料生昆布の使用量を50%に減らし、水煮処理(St6)の加水量および調味煮熟処理(St7)の調味液量を同一にして、同一Bxとなるように調味煮熟処理(St7)したペースト状昆布佃煮(実施例7)、および実施例7に対して粉砕工程(St5)において、粉砕サイズが目開き2.5mmで粉砕処理(St5)したペースト状昆布佃煮(実施例8)を得た。
比較対照として、実施例7に対して冷凍処理(St2)、解凍処理(St3)、洗浄処理(St4)および水煮処理(St6)を含まないものを、加水量および調味液量を同一にして、同一Bxとなるよう調味煮熟処理(St7)したペースト状昆布佃煮(比較例2)を得た。
また、比較対象として従来のまぶし液(表2に記載の調味料B)を加熱溶解して同一Bxの従来まぶし液(比較例3、比較例4)を作成した。
得られたペースト状昆布佃煮の各サンプルおよび従来まぶし液について、粘度および歩留りを測定した。
次いで、細切の昆布佃煮(Bx52、Aw=0.86、切断サイズ3×60mm)と、上記で得られた各ペースト状昆布佃煮、または、従来まぶし液とを混合して得られた昆布佃煮について、保存中の液垂れ量について評価した。なお、混合比率については、細切の昆布佃煮100重量部に対して、ペースト状昆布佃煮は30重量部、従来まぶし液は15重量部(比較例3)および30重量部(比較例4)となるように混合した。
なお、保存中の液垂れ量の測定および評価は、段落〔0032〕の方法により行った。
結果を表5に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
表5の結果より、実施例7は実施例8と比べて、粘度が高く液垂れが抑制されていることから、粉砕工程(St5)において粉砕サイズを小さくすることにより粘度を増加させ、液垂れを抑制できる。実施例7は、冷凍処理(St2)、解凍処理(St3)、洗浄処理(St4)および水煮処理(St6)を含まない比較例2と比べて、ペースト状昆布佃煮の粘度を増加させることができる。
また、実施例7および比較例2は従来まぶし液(比較例3、比較例4)と比べて、粘度が高く液垂れが抑制されていることから、ペースト状昆布佃煮を従来のまぶし液に置き換えることにより、液垂れを抑制できることが分かった。
【0040】
〔実施例5、比較例3〕: 高温時の液垂れの評価
上記実施例5、比較例3について、保存温度を30℃から45℃に上げた場合の保存中の液垂れ量を測定した。
測定の結果、保管温度を上げることにより粘性が下がり液垂れ量は増加するが、本発明のペースト状昆布佃煮を用いたもの(実施例5)は、従来まぶし液(比較例3)と比べて液だれの増加率が少なく、本発明のペースト状昆布佃煮は温度が上がった場合でも液垂れを抑制できることが分かった。
【0041】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の方法によって製造されるペースト状昆布佃煮は、液垂れを抑制することができるため、おにぎりの具芯に用いたときに液垂れがなく、見栄えに優れたおにぎりを提供することができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2020-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】