(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054308
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】仕切り用シートおよび感染防止用仕切り具
(51)【国際特許分類】
A47G 5/00 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
A47G5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161425
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】豊田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】河端 秀樹
(57)【要約】
【課題】椅子や車両シート等の仕切りとして、圧迫感がなく、着座するときに邪魔になりにくく、非常に安価に提供することができる仕切り素材とそれを使った仕切り具を提供する。
【解決手段】本発明の仕切り用シート3は、座席1と座席1の間に設置される固定具2に取り付けられるものである。好ましくは、厚みが0.10mm以上0.8mm以下、目付が18g/m
2以上100g/m
2以下の不織布からなり、タテ・ヨコの剛軟度がいずれも25mm以上200mm以下であり、タテ・ヨコのKES曲げ剛性がいずれも0.04gf・cm
2/cm以上2.8gf・cm
2/cm以下である仕切り用シートである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席と座席の間に設置される固定具に取り付けられる不織布である仕切り用シート。
【請求項2】
厚みが0.10mm以上0.8mm以下、目付が18g/m2以上100g/m2以下の不織布からなり、タテ・ヨコの剛軟度がいずれも25mm以上200mm以下であり、タテ・ヨコのKES曲げ剛性がいずれも0.04gf・cm2/cm以上2.8gf・cm2/cm以下である請求項1に記載の仕切り用シート。
【請求項3】
単繊維繊度が0.1dtex以上5.5dtex以下の長繊維からなるスパンボンド不織布である請求項1または2に記載の仕切り用シート。
【請求項4】
前記不織布は、機械パルプおよび又は化学パルプからなる繊維の平均直径が20μm以上30μm以下であるセルロース繊維を抄紙したものである請求項1または2に記載の仕切り用シート。
【請求項5】
JIS L1059-1(防シワ性モンサント法)による防シワ性が10%以上90%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の仕切り用シート。
【請求項6】
光透過率が40~75%である請求項1~5のいずれか一項に記載の仕切り用シート。
【請求項7】
JIS L1922(2016)で測定したときの抗ウイルス活性値Mvが2.0~6.5である請求項1~6のいずれか一項に記載の仕切り用シート。
【請求項8】
主面の面積が500cm2以上10000cm2以下である請求項1~7のいずれか一項に記載したシートを有する感染防止用仕切り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染防止のためシートや椅子間の仕切りに用いるシートに関する。
本発明のシートは、特に車両用シート間(座席間)の仕切りとして好適に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、SARSや新型コロナウイルス等の流行が頻発して、公衆での感染予防対策が重視されている。飲食店やホテル等の人が密集するところでは、座れる椅子の数を減らして、人と人との間の空間を大きく取って、また真正面に着座しないようにしたり、衝立や仕切り、パーティション等を設けることで、唾等の飛沫による人々間の感染を防ぐ方法がとられている。
【0003】
このような仕切りの一例として、特許文献1には対面式のカウンター等の任意の対面位置に容易に着脱でき、感染症を予防する簡易的な対面用防護パネルが提案されている。このように衝立やパーティションは、アクリルやポリカーボネート等の樹脂板等で行うことが多く、元々固定されている椅子やシートの間に樹脂板で仕切りをすると酷い圧迫感を感じることが多かった。また、人の入れ替え時に樹脂板を消毒するのに非常に手間がかかっていた。
【0004】
なお、樹脂板でないシート状の抗ウイルス素材としては、例えば特許文献2にポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、スルホン酸塩系界面活性剤を0.1~10.0重量部と、可塑剤10~50重量部と、無機系抗ウイルス剤1~50重量部とを含有することを特徴とするポリ塩化ビニル系樹脂組成物である抗ウイルス性を有する抗ウイルス性シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願2009-696号
【特許文献2】特開2018-188571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている樹脂仕切り板の場合、上述したように椅子やシートの間において酷い圧迫感を感じることが多かった。また、人が入れ替わる時に樹脂仕切り板を消毒するのに非常に手間がかかっていた。本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み創案されたものであり、その目的は、椅子や車両シート等の仕切りとして、圧迫感がなく、着座するときに邪魔になりにくく、非常に安価に提供することができる仕切り素材とそれを使った仕切り具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、かかる目的を達成するために仕切りシートについて鋭意検討した結果、本発明の完成に到った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]上記課題を解決し得た本発明の仕切り用不織布シートは、座席と座席の間に設置される固定具に取り付けられるものである。
【0009】
[2]上記仕切り用シートとしては、厚みが0.10mm以上0.8mm以下、目付が18g/m2以上100g/m2以下の不織布からなり、タテ・ヨコの剛軟度がいずれも25mm以上200mm以下であり、タテ・ヨコのKES曲げ剛性がいずれも0.04gf・cm2/cm以上2.8gf・cm2/cm以下である[1]に記載の仕切り用シートであることが好ましい。
【0010】
[3]仕切り用シートとしては、単繊維繊度が0.1dtex以上5.5dtex以下の長繊維からなる スパンボンド不織布である[1]または[2]に記載の仕切り用シートであることが好ましい。
【0011】
[4]前記不織布は、機械パルプおよび又は化学パルプからなる繊維の平均直径が20μm以上30μm以下であるセルロース繊維を抄紙したものである[1]または[2]に記載の仕切り用シート。
【0012】
[5]仕切り用シートとしては、JIS L1059-1(防シワ性モンサント法)による防シワ性が10%以上90%以下である[1]~[4]のいずれか一項に記載の仕切り用シートであることが好ましい。
【0013】
[6]仕切り用シートとしては、光透過率が40~75%である[1]~[5]のいずれか一項に記載の仕切り用シートをもちいることが好ましい。
【0014】
[7]仕切り用シートとしては、JIS L1922(2016)で測定したときの抗ウイルス活性値Mvが2.0~6.5である[1]~[6]のいずれか一項に記載の仕切り用シートを用いることが好ましい。
【0015】
[8]上記課題を解決し得た本発明の感染防止用仕切り具は、主面の面積が500cm2以上10000cm2以下である[1]~[7]のいずれか一項に記載したシートを有する感染防止用仕切り具である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の仕切り用シートは柔らかな不織布でできており、人が接触しても柔軟に曲げ変形することで着座するときに邪魔にならず、また圧迫感を感じず、着座中のストレスを軽減することができる。また、強く変形してもシワになりにくく元の形を維持しやすい不織布である。更には、椅子リクライニングしたときに、椅子に取り付けた仕切り具が背もたれの傾斜とともに傾きを持った場合にも、シートの角が重力に負けて折れ曲がることがない仕切り具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、座席に取り付けられた本発明の実施の形態にかかる仕切り用シートの平面図であり、座席からみた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の仕切り用シートを詳細に説明する。なお、本書において数値A、数値Bを用いて「A~B」と記載しているものは、「A以上B以下」の意味である。
本書において「タテ」と記載しているものは不織布シートの製造時の長手方向、「ヨコ」と記載しているものは不織布シートの製造時の幅方向をそれぞれ指すものとする。タテ方向は不織布を構成する繊維の主配向方向であることが多い。
本書において「縦」と記載しているものは、不織布シートの「タテ」方向を鉛直方向にして座席に取り付ける形態を指し、「横」と記載しているものは、不織布シートの「ヨコ」方向を鉛直方向にして座席に取り付ける形態を指しているものとする。
【0019】
<座席>
本発明において座席とは、人が着座できる構造体一般を指すものであり、例えば食堂の椅子や鉄道車両の座席がこれに該当する。本発明において「座席と座席の間」とは、独立構造体の座席同士の間の位置のみならず、例えば病院で用いられる二人掛けや三人掛け用のベンチなど、各座席が物理的に分離していない構造物であっても、座席として2つとカウントできるものであれば、そのような座席と座席の間の位置を指すものとする。
【0020】
本発明の仕切り用シートは不織布からなっている。不織布にすることで非常に安価に仕切りシートを提供することができ、人の入れ替え毎に取り換えて新しくすることができるため消毒にかかる手間やコストを減らすことができる。 本発明の不織布用いられる繊維材料は、楮、みつまた、雁皮の靭皮等の和紙材料、綿、麻(リネン、ラミー)、化学パルプ・古紙パルプ・機械パルプ等のセルロース系の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、精製セルロース等の再生セルロース繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、カチオン可染ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維、その他合成繊維(ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリウレタン、アセテート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、フッ素、ポリベンザゾール、ポリ乳酸等)が挙げられるが、より安価に製造できるパルプやポリエチレンテレフタレート繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維が好ましい。なおこれら繊維材料は単独、2種類以上の混合(混繊、混紡)、多層構造からなる不織布であっても構わない。
【0021】
上記の材料のうち、例えばパルプを用いる場合は一般的な洋紙の抄紙法で製造することが好ましい。再生セルロース繊維、ポリエステル短繊維、ナイロン短繊維の場合は、ニードルパンチや、スパンレース、サーマルボンド等の手法が好ましく用いられ、ポリエステル長繊維やポリプロピレン長繊維、ナイロン長繊維の場合はスパンボンド方式やメルトブロー方式好ましく用いられる。好ましくは、ポリエステル長繊維やポリプロピレン長繊維を使ったスパンボンド不織布がよい。
【0022】
<固有粘度>
本発明の不織布を構成する繊維がポリエチレンテレフタレート長繊維の場合は、力学特性を保持するために固有粘度が0.60~1.5であることが好ましい。固有粘度が0.60未満では、紡糸時の配向結晶化を生起する引取速度が高くなるので、4000m/分~5500m/分の引取速度範囲では配向結晶化が十分進まない状態になりやすい。他方、固有粘度が1.5を超える場合、4000m/分~5500m/分で配向結晶化が進み過ぎてボイドを発生し、低比重化するため、力学特性の低下を招き好ましくない。本発明のより好ましい固有粘度は0.61~1.1であり、更に好ましくは0.62~0.85である。ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度IVは、オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを式(1)により求め、更に式(2)より固有粘度(IV)を算出することにより特定できる。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)・・・(1)
IV=0.0242ηr+0.2634・・・(2)
(ここで、ηはポリマー溶液の粘度、η0はオルソクロロフェノールの粘度、tは溶液の落下時間(秒)、dは溶液の密度(g/cm3)、t0:はオルソクロロフェノールの落下時間(秒)、d0はオルソクロロフェノールの密度(g/cm3)を、それぞれ表す。)
【0023】
<単繊維引張強度>
本発明にかかる不織布を構成する繊維の単繊維での引張強度は1.5cN/dtex以上であってもよい。1.5cN/dtex未満では仕切りシートとしての必要な強力を満たせない場合がある。好ましい引張強力は3.0cN/dtex以上、より好ましくは3.5cN/dtex以上である。上限は特には限定されないが、本発明の製造方法では8cN/dtexが上限となる。
【0024】
<単繊維直径>
本発明の不織布の平均単繊維直径は0.1μm~35μmであることが好ましい。好ましくは、0.3μm~20μm以下である。平均単繊維直径が、0.1μm未満であると仕切りシートが柔らかくなり過ぎて、風になびき易くなる。一方、平均単繊維直径が、35μmを超える場合には、仕切りシートが硬くなり過ぎたり、重くなったりし易くなる。
【0025】
<単繊維繊度>
本発明の不織布を構成する単繊維の繊度は繊維直径に依存するが、ポリエステルやポリプロピレンの短繊維や長繊維を用いる場合には、平均繊度として0.1dtex~5.5dtexが好ましい。単繊維繊度が0.1dtex未満では不織布が柔らかくなりすぎたり、必要な厚みを得るためにコストが高くなりやすい。5.5dtexを超えると、得られた不織布の剛直性が強くなりすぎて硬くなってしまい嵩高くなりすぎる場合がある。より好ましくは0.3~5dtexである。さらに好ましくは0.5~4dtexである。
【0026】
<目付>
本発明の不織布の目付(又は坪量)は、18g/m2~100g/m2であることが好ましい。より好ましくは、20g/m2~80g/m2以下である。目付が18g/m2未満であると、好ましいウイルス遮断性を満足できず、さらには、機械的強度が不足しやすくなる。一方、150g/m2を超えると、厚みが増えて圧迫感が高まったり柔軟性に劣りやすい。
【0027】
<厚み>
本発明の不織布の厚みは、0.10mm以上0.8mm以下であること好ましい。かかる範囲とすることにより、圧迫感がなく、適度に柔らかいが、風にたなびかない仕切りシートにしやすくなる。0.10mm以下では、剛軟度が低すぎて、空調による気流や人が通った時の風で大きく揺れてしまい不快になりやすい。より好ましくは0.13mm以上である。0.8mmを超えると不織布の存在感が強くて圧迫感がでてしまったり、人と接触したときに不快感が強くなったり、製造コストが高くなる。より好ましくは、0.15mm~0.6mmである。更に好ましくは0.17mm~0.5mmである。
【0028】
以下に本発明不織布の製法をポリエステル スパンボンドの一例をもって示す。
固有粘度0.60~1.50のポリエチレンテレフタレートを真空乾燥して、少なくとも水分率を0.003重量%以下として紡糸に供することが推奨される。水分率が0.03重量%以上の場合は、水分による加水分解を生じて、本発明に必要な固有粘度0.63以上の繊維を得られない場合があり好ましくない。本発明での好ましい水分率は0.002重量%以下である。乾燥工程を省略して、紡糸段階でベントより水分を除去する場合は、押出機で溶融される直前及び直後に高真空で水分を除去する方法が推奨される。
【0029】
ついで、常法により、溶融紡糸を行う。紡糸温度は、ポリエチレンテレフタレートの融点より15℃~40℃高い温度が推奨される。好ましくは25℃~35℃高い温度が推奨される。固有粘度が低い場合は低い紡糸温度設定、固有粘度が高い場合は高目に設定することが推奨できる。オリフィスから溶融ポリマーを吐出する。吐出量は引取速度に応じて所望の繊度となる最適量とするのが好ましい。本発明では、より好ましい繊度が0.5dtex~5dtexであるから、引取速度が5000m/分であれば、単孔あたりの吐出量は0.1g/分~2.5g/分とするのが好ましい。吐出するノズルは多数列の小さなノズルを必要個数設置しても良いし、多列の孔を有する一枚のノズルを用いてもよい。吐出された溶融線条は、冷却されつつ細化させて引き取られる。
【0030】
スパンボンド法では、アスピレーター機能をもつエジェクターで引取り、搬送ネット上に振落として繊維配列をランダムな状態に開繊積層したウエッブを形成する。このとき、繊維は弾性回復限界内で遅延回復して力学特性が低下する場合がある。このため、本発明では、開繊積層したウエッブの遅延回復を直ちに抑制してウエッブ形態を固定する方法を強く推奨する。具体的には、引取りネットでの挟み込み固定化する方法や、押さえローラーによる固定化方法が例示できる。振り落とす繊維量は、所望の目付けになるように引取ネット速度に応じて調整し振り落とす。振り落とし繊維本数が一定の場合では、引取ネット速度を早くしていくと、開繊された繊維は、ネットの進行方向に配列する確率が多くなる傾向を示す。このような場合は振り落とす繊維本数を多くすることでランダムな状態を調整することが可能となり、より生産性も向上する。引取りウエッブ形成の工程では、必要な厚み調整も配慮する必要がある。
【0031】
ここで、紡糸速度は、平均単繊維径と使用する樹脂の固形密度から長さ10000m当たりの質量を単繊維繊度として、小数点以下第二位を四捨五入して算出した単繊維繊度(dtex)と、各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量(以下、単孔吐出量と略記する。単位はg/分)から、次式(3)に基づき、紡糸速度を算出して求められる。
紡糸速度(m/分)=(10000×単孔吐出量(g/分))/単繊維繊度(dtex)・・・(3)
【0032】
紡糸した繊維を移動するネット上に捕集して不織ウェブ化する。本発明においては、高い紡糸速度で延伸するため、エジェクターから出た繊維は、高速の気流で制御された状態でネットに捕集されることとなり、繊維の絡みが少なく均一性の高い不織布を得ることができる。
【0033】
本工程においては、前記不織ウェブを熱接着してスパンボンド不織布を得る。不織繊維ウェブを熱接着により一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど各種ロールにより、熱接着する方法が挙げられる。
【0034】
不織布は70~220℃の間の温度で、面積率が5%以上のエンボスロールあるいはフラットカレンダー加工により繊維の圧着部を形成してもよい。熱接着時のエンボス接着面積率は、5%~35%であることが好ましい。接着面積率は不織布の強度だけでなく、剛軟度や防シワ性、風合いに直接に関わってくる。接着面積率は不織布の繊度、目付、厚み等で適宜、適正な条件を見つければよいが、本発明での接着面積のより好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上とすることにより、スパンボンド不織布として実用に供し得る強度を得ることができる。一方、接着面積をより好ましくは30%以下、更に好ましくは28%以下とすることにより、十分な柔軟性を得ることができる。加工温度が70℃より低いと室温の影響により不織布物性の変動が起こる可能性がありあまり好ましくない。一方、加工温度が240℃以上では不織布が必要以上に収縮しやすく寸法安定性に問題を生じる恐れがあるので好ましくない。加工速度にもよるが、上下一対のロールの好ましい加工温度は、それぞれ100~210℃である。より好ましくは120~200℃である。ここでいう接着面積とは、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸とが重なって不織繊維ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織繊維ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。
【0035】
更に本発明不織布の製法例について、パルプを使った抄紙法の一例をもって示す。
本発明において、パルプの種類は限定しないが、クラフトパルプを好ましく用いることができる。クラフトパルプは「蒸解工程」で苛性ソーダと硫化ナトリウムを主成分とする薬液をチップに加え、約170℃で2時間ぐらい加熱して、中間層のリグニンを選択的に溶出して繊維を取り出したものである。漂白では、できる限り繊維を傷めないで、リグニンを分解して漂白効果を上げるために何種類もの漂白剤・薬品で処理する方法を多段漂白が好ましい。特に塩素、アルカリ抽出、次亜塩素酸塩ないし二酸化塩素、アルカリ、二酸化塩素と5段漂白法が好ましく用いられる。それ以外にも酸素漂白法や、完全無塩素漂白法として酸素や過酸化水素、オゾンを使用する方法でもよい。
【0036】
本発明の抄紙方法は、一般的な紙の抄紙方法と同様に、原料となるパルプ繊維を水中に分散して原料スラリーとし、抄紙することで得ることができる。ここで原料スラリー中には、製紙用添加剤や抄紙における操業安定のための薬剤を添加する。ここで製紙用添加剤や操業安定のための薬剤としては、紙力剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、填料、着色剤、嵩高剤、濾水性向上剤、pH調整剤、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、消泡剤、保水剤、分散剤、防腐剤、などの一般的な製紙で用いられる添加剤や薬剤をいう。本発明の紙の抄紙方法としては特に限定するものではなく、長網式抄紙機や円網式抄紙機などの一般の抄紙機を用いて抄紙することがきる。長網式抄紙機での抄紙においては、原料スラリー中のパルプ濃度と抄紙速度を適切に調整することは勿論のこと、地合いが良好になるようにワイヤーのシェイキング速度を調整し、J/W比を適切に制御し繊維の配向性を調整する中で、パルプ繊維のワイヤー上での分散の均一化を図ることが好ましい。また、円網式抄紙機においては、バット内部の原料スラリーを乱流させ、十分に混合された状態とすることは勿論の事、バットから原料スラリーをシリンダー上で脱水しシート形成させる工程で、抄紙速度並びにバットとシリンダー内部の圧力差を適切に制御し、地合いと繊維の配向を整えることが好ましい。このように抄紙された紙は、仕切り具に必要な縦横の剛軟度や曲げ硬度に合わせて、経向きか横向きか使用する方向を適宜決めればよいのであるが、本発明の紙は、幅方向(横)の折り曲げ(折り目が縦方向)に比べて、長手方向(縦)の折り曲げ(折り目が横方向)が強い傾向があるので、本発明の紙では基本的に長手方向(縦方向)仕切り具の横向きに使うのが好ましい。また、本発明の紙は、その紙層が単層であっても2以上の層であってもよい。2以上の層とする場合は抄き合わせとするが、澱粉などの層間の接着性を高めるための接着剤を用いればよい。
【0037】
得られた本発明の不織布は、樹脂加工して本発明に適切な剛軟度、曲げ特性を微調整することもできる。樹脂加工に用いる樹脂は熱硬化性のものが好ましい。例えば、尿素メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等を用いることができる。樹脂組成は基布に必要な剛直性により設定するのが望ましい。不織布を樹脂の水溶液または水系エマルジョンを含浸させて、乾燥、ベーキングすることで樹脂を熱硬化させて加工することができる。
【0038】
本発明の仕切りシートは人が椅子に移動するときや着席中にスクリーンに接触してしまうことを想定しているため、本発明の不織布には抗ウイルス加工素材を用いることが好ましい。抗ウイルス加工剤は、繊維製造中に抗ウイルス加工剤を添加したものでもよく、不織布製造途中または製造後に付着させてもよい。使用する抗ウイルス剤としては、セルロース繊維の場合は、3-(トリエトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドが、ポリエステルやポリアミド繊維などの合成繊維の場合は、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドが抗ウイルス加工剤として好ましい。抗ウイルス加工剤は、純分として、繊維質量に対して0.1~10.0質量%付着させることが好ましい。より好ましくは0.5~5.0質量%である。更に好ましくは0.8~3.0質量%である。付着量が上記範囲を超えると皮膚への刺激性が高くなりやすく、上記範囲未満では抗ウイルス性が発揮されにくい。
なお、本発明における例示は、これらに限定されるものではない。
【0039】
<剛軟度>
座席背もたれを傾けた分だけ、仕切り具も角度がつくが、本発明のシートは薄いながら、傾いた角が重力で折れ曲がらない特徴がある。また、換気による気流や人が通ったときに巻き起こる風にも大きく揺れないことが着用時の快適性に直結する。その為には、JIS L1096:2010の45°カンチレバー法で測定したときに、仕切り具に装着したときの、シート剛軟度が、タテ・ヨコの両方向のいずれも25~200mmであることが好ましい。より好ましくは、仕切り具に取り付けるときのタテ方向剛軟度が35~180mm、ヨコ方向剛軟度が25~160mmであるのが好ましい。より好ましくはタテ方向剛軟度が45~160mm、ヨコ方向剛軟度が40~150mmであることが好ましい。更に好ましくは、タテ方向50~150mm、ヨコ方向55~200mmである。タテ方向に25mm未満であったりヨコ方向に30mm未満であったりすると、空調機等からの風にたなびきやすく着席中に不快になりやすく、背もたれと仕切り具を傾けた時に仕切り具の下角が重力で折れ曲がってしまう恐れがある。タテ方向剛軟度が200mm、ヨコ方向剛軟度が250mmを超えると不織布の硬さが強くなり不快になりやすい。
【0040】
<KES曲げ剛性>
狭い座席では、着座するときや着席中に仕切りシートと頻繁に接触することが考えられる。この接触したときの異物間や抵抗感は人を不快にさせるものである。この抵抗感を極力へらすために、本発明の仕切りシートには柔らかさが求められる。仕切りシートの柔らかさを表現するために本発明ではKES曲げ剛性の指標を用いる。KES法によるタテ方向及びヨコ方向の曲げ剛性Bの平均値が0.06~2.8gf・cm2/cmであることが好ましい。より好ましくは0.08~2.5gf・cm2/cmであるとよい。曲げ剛性Bの平均値が0.06gf・cm2/cmを下回ると接触したときの不快感は少なくて済むが、ちょっとした風で揺れ易く、目障りになったり、肌に接触して不快になりやすくなる。2.8gf・cm2/cmを超えると接触したときの抵抗感が強く感じやすくなる。
【0041】
<防シワ性>
着席中に仕切りシートと頻繁に接触して折れ曲がったときに、シワが残ると見た目が悪くなり、また仕切りシートがシワを起点に曲がり易いためシワは起こりにくいことが好ましい。このシワになりやすさはJIS L1059-1モンサント法のシワ復元性で評価ができる。このシワ復元性は縦横共に25%~95%であることが好ましく、より好ましくはタテ・ヨコ共に35%以上であることがよい。更に好ましくは縦横共に50%以上である。25%未満になると着席中にシワが発生しやすく見た目が早く悪くなる。95%を超えるとシートの弾発性が強くなりすぎて接触したときの抵抗感が強くなりやすい。
【0042】
<可視光透過性>
波長400nm~780nmの可視光透過性は、60~90%であることが好ましい。この範囲だと照明の光を十分に取り込めて暗くならず、また透明性も低いためプライバシーの点で好ましい。可視光透過性が60%未満だと着席したときに暗く感じて雰囲気が好ましくない。可視光透過率が90%を超えると、透明性が高すぎることで意外にも違和感が発現してしまう。
【0043】
<通気性>
本発明の不織布の通気性は、JIS L 1096(2010) 8.26.1(フラジール形法)に記載の方法による通気性試験で、5cm3/cm2・sec以上80cm3/cm2・sec以下であることが好ましい。より好ましくは、7cm3/cm2・sec以上50cm3/cm2・sec以下である。通気性が5cm3/cm2・sec未満であると、不織布が風の影響をうけて揺れやすくなってしまい、着席している者に不快感を与える可能性がる。
【0044】
本発明の仕切りシートは飛沫感染を防止来ることに主な目的があるため、仕切りシートは抗ウイルス性を有することが好ましい。この抗ウイルス性は抗ウイルス活性値Mvにおいて、好ましくは2.0~7.0であることがよい。更に好ましくは3.0以上である。2.0未満であると、抗ウイルス加工素材に十分な感染予防効果を得られにくい。
【0045】
<仕切り用不織布シートを備えた仕切り具の形態>
本発明の実施の形態における仕切り具は、例えば、少なくとも仕切りシートと仕切りシートを平らな状態で把持する固定具の部分からなる。仕切り具に取り付ける仕切りシートの形状は、例えば菱型や矩形、台形および平行四辺形等の四角形とするのが好ましい。
【0046】
図1は、座席1に取り付けられた本発明の実施の形態にかかる仕切り用シート3の平面図であり、座席1からみた側面図である。
図1のように、仕切り用シート3の上辺および又は一方の側辺を固定具2により把持または補強して、下辺を自然に垂らす形態でシートに設置することができる。このように把持する部分を極力少なくすることで、乗客が座席1に座った時の圧迫感を軽減することができる。また、より好ましい態様は、上辺の把持する範囲として、仕切り用シート3の前面側の少なくとも15%以上で把持せず、フリーな状態にしておくことである。こうすることで、座席に着席するときに仕切り具が接触しても変形して邪魔になりにくく、仕切り用シートも自身の剛軟度と防シワ性で折れ曲がったり、シワにならずに元の形を維持できる。
【0047】
仕切り用シートは、面積が900cm2~20000cm2の大きさにして使うのが好ましい。900cm2未満だと小さすぎて飛沫感染の予防効果が十分でない、20000cm2を超えると座席間の仕切りとして大きすぎて使い難くなる。本発明の仕切り具はシートの上辺の少なくとも一部か、上辺の少なくとも一部と背もたれ側側面の少なくとも一部を把持する固定具を持つ。固定具が仕切りシートを把持する方法は特にこだわらないが、クリップや針をつかってもよいし、接着剤やファスナーテープの雄側を用いてもよく、バネの力で把持してもよい。固定具は樹脂性のプラスチックであったり、金属や木材であってもよく、これをシート背もたれ側面に固定できる構造とする。座席への固定の方法は限定しないが、ファスナーテープや粘着テープ、接着剤を使ったり、縫性でぬいつけたり、針で止めたりすることができる。脱着できるようにしたり、完全に固定してもよい。
【実施例0048】
次に、実施例および比較例を用いて本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に記載の評価方法は以下の通りである。
<平均単繊維直径>
走査型電子顕微鏡写真を適当な倍率でとり、写真の中の繊維側面を100本以上測定して、その平均値から求めた。
【0049】
<平均繊維繊度>
本発明における平均繊維繊度は、実測した平均単繊維直径から、繊維の断面が円形と考えて、繊維の直径をD(μm)、繊維の比重をρfとして,繊維の直径とdtex値の関係を次式の理論値で表す。PETの比重ρf=1.38、セルロース繊維の比重ρf=1.54として求めた。
D(μm)={4/(π×ρf×100000)}1/2×(dtex値×10)1/2×10000
=0.00357×{dtex値×10/ρf} 1/2×10000
【0050】
<目付(坪量)>JIS L1096(2010)8.3で測定した。
【0051】
<厚み>JIS L1096(2010)8.4で測定した。
【0052】
<熱圧着面積率>
仕切り用不織布より任意の20箇所で30mm角に裁断し、SEMにて50倍の写真を撮る。撮影写真をA3サイズに印刷して圧着単位面積を切り抜き、面積(S0)を求める。次いで圧着単位面積内において圧着部のみを切り抜き圧着部面積(Sp)を求め、圧着面積率(P)を算出する。その圧着面積率P20点の平均値を求めた。
P=Sp/S0 (n=20)
【0053】
<剛軟度>
JIS L1096(2010)の45°カンチレバー法にて測定した。
【0054】
<曲げ剛性>
カトーテック株式会社製KES-FB2(KAWABATAS EVALUATION SYSTEM-2 PURE BENDING TESTER)を用い、試料は10cm角とし、1cm間隔のチャックに試料を把持して、曲率-2.5~+2.5cm-1の範囲で、0.50cm-1の変形速度で純曲げ試験を行い、曲げ剛性(B)を求めた。
【0055】
<シワ復元性>
JIS L1059-1(2009)モンサント法にて測定した。
【0056】
<通気性>
JIS L1096(2010)8.26.1 A法(フラジール形法)で測定した。
【0057】
<抗ウイルス性>
JIS L1922(2016)繊維製品の抗ウイルス性試験方法にて行った。ウイルス種は附属書Aに規定するインフルエンザウイルスを用いて、プラーク測定法にて実施して、抗ウイルス活性値Mvを求めた。
【0058】
<可視光透過率>
分光光度計全波長平均法にて行った。測定機器は島津製作所製3100PC紫外線可視近赤外分析光度計(ダブルビーム方式)を用いた。測定波長は400~780nm、試料は一枚重ねで行ない、下記式で可視光透過率を算出した。
可視光透過率(%)=(透過光強度/入射光強度)×100
【0059】
<仕切り具の官能評価>
本発明の実施の形態にかかる仕切り用シートを
図1の形状の固定具2に接着して固定して、実施例および比較例の仕切り用シートを固定具2に把持させた。これを実際に着席して下記の官能評価を行った。官能評価は30~55才の中肉中背の男性4名とし、シートに15分間着席した感想をアンケート評価した。シートはリクライニングできる旅客列車用座席の頭位置左右に仕切り具を取り付て行った。
【0060】
<着席時の座り易さ>
前後座席の狭い空間を意識しながら着席したときの、仕切りに体が接触するときの抵抗感と座り易さを1(悪い)<5(良い)の5段階評価として、4人の平均値を座り易さの値とした。3.0以上が座り易さがよいものと判定した。
【0061】
<着席時の圧迫感・異物感>
15分間着席している間に感じた圧迫感や異物感に関わるストレス度を1(悪い)<5(良い)の5段階でアンケート評価した。この4人の平均値を結果として採用した。3.0以上はストレスが少ないものと判定した。
【0062】
<仕切り具の揺れ>
15分間着席している間に、空調の空気の流れや人が通った時の気流による仕切りシートの揺れがどれ位気になったか1(悪い)<5(良い)の5段階でアンケート評価した。結果はこの4人の平均値とした。3.0以上はシートの揺れが気にならないレベルと判定した。
【0063】
以下に本発明の実施例を示す。本発明は、実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
水分率0.002重量%に乾燥した固有粘度0.63のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)を紡糸温度285℃にて、オリフィス径φ0.3mmのノズルより、単孔吐出量0.75g/分で紡糸し、ノズル下50mmより25℃の空気を風速0.5m/秒にて冷却しつつ、ノズル下1.2mの点に設置したエジェクターで糸速5000m/分の速度で吸引させつつ引取り、下方1.5mの50m/分の速度で移動している引取ネット面へ繊維束を開繊させつつ振り落とし積層した。その後、金属フラットロールと圧着面積率10%の丸柄のエンボスローラーにて、加熱温度として205℃にて、線圧30kN/mにてエンボス加工を行い、引き取りローラーに巻き取った。得られたスパンボンド不織布の厚みは0.21mm、目付が30g/m
2、構成する長繊維の繊度1.5dtex、固有粘度0.60であった。この不織布に、大阪化成(株)製マルカサイドV1(主成分ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)を繊維重量に対して、主成分付着量0.35質量%付着させて乾燥後、180℃×1分乾熱処理したものを用いた。出来上がった仕切り用シートをタテ45cm×ヨコ45cmに切り取り、仕切り用シートのタテ方向を鉛直方向にして
図1のように固定具2に把持させて、鉄道車両シートに取り付けて評価に供した。仕切り用シートの評価結果および着席官能評価の結果を表1に示す。以下の実施例の結果も同様に表1に示すこととする。
【0064】
(実施例2)
実施例1と同じPETを紡糸温度285℃にて、オリフィス径φ0.3mmのノズルより、単孔吐出量1.5g/分で紡糸し、25℃の空気を風速0.5m/秒にて冷却しつつ、ノズル下1.2mの位置に設置したエジェクターで糸速5000m/分の速度で吸引させつつ引取り、下方1.5mの位置で50m/分の速度で移動している引取ネット面へ繊維束を開繊させつつ振り落とし積層した。その後、円形柄のエンボスローラーにて、接着面積率10%で圧着して引取ローラーに巻き取った。得られたスパンボンド不織布の厚みは0.32mm、目付が60g/m2、構成する長繊維の繊度は3.0dtexであった。この不織布に実施例1と同様にして、繊維重量に対する主成分付着量0.35質量%の付着量で抗ウイルス加工を施した。
【0065】
(実施例3)
実施例1と同じPETを紡糸温度285℃にて、オリフィス径φ0.3mmのノズルより、単孔吐出量0.75g/分で紡糸し、25℃の空気を風速0.5m/秒にて冷却しつつ、ノズル下1 .2mの位置に設置したエジェクターで糸速5000m/分の速度で吸引させつつ引取り、下方1.5mの位置で50m/分の速度で移動している引取ネット面へ繊維束を開繊させつつ振り落とし積層した。その後、菱型のエンボスローラーにて、接着面積率25%で圧着して引取ローラーに巻き取った。得られたスパンボンド不織布の厚みは0.22mm、目付が30g/m2、構成する長繊維の繊度は1.5dtexであった。この不織布に実施例1と同様にして、繊維重量に対する主成分付着量0.35質量%の付着量で抗ウイルス加工を施した。
【0066】
(実施例4)
晒しクラフトパルプを、叩解機によってカナダ標準濾水度(CSF)が520mlとなるように叩解処理した後、水中に分散してパルプスラリーとし、内添薬品として、ロジンサイズ剤1%owf、硫酸バンド5%owf、および抗ウイルス剤(3-(トリエトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド)を5%owfが付着するように添加して長網式抄紙機を用い、坪量が56g/m2、厚み0.13mmの抄紙を得た。
【0067】
(実施例5)
仕切り用シートとして、市販のポリエチレンテレフタレート(PET)系スパンボンド不織布(東洋紡株式会社製、「エクーレ(登録商標)3151A」、目付け15g/m2)、厚み0.12mmのものを用いた。この不織布に実施例1と同様にして、繊維重量に対する主成分付着量0.35質量%の付着量で抗ウイルス加工を施した。
【0068】
(実施例6)
実施例1と同じPETを紡糸温度285℃ にて、オリフィス径φ0.3mmのノズルより、単孔吐出量3.0g/分で紡糸し、25℃の空気を風速0.5m/秒にて冷却しつつ、ノズル下1.2mの位置に設置したエジェクターで糸速5000m/分の速度で吸引させつつ引取り、下方1.5mの位置で50m/分の速度で移動している引取ネット面へ繊維束を開繊させつつ振り落とし積層した。その後、菱型のエンボスローラーにて、接着面積率25%で圧着引取ローラーに巻き取った。得られたスパンボンド不織布の厚みは0.9mm、目付が100g/m2、構成する長繊維の繊度6.0dtex、目付が120g/m2であった。この不織布に実施例1と同様に抗ウイルス加工を施した。
【0069】
(実施例7)
実施例4と同様にしてパルプスラリーを作り、円網式抄紙機を用いて秤量が60g/m2である紙層を2層抄き合わせて、秤量が120g/m2、厚み0.19の抄紙を得た。この抄紙に実施例1と同様にして、繊維重量に対する主成分付着量0.35質量%の付着量で抗ウイルス加工を施した。
【0070】
【0071】
表1に示すように、実施例1~実施例7の仕切り用シートは、着席時の座り易さ、着席時の圧迫感・異物感、仕切り具の揺れの少なくとも一つの項目において良好な結果を示した。また、厚みが0.10mm以上0.8mm以下、目付が18g/m2以上100g/m2以下の不織布からなり、タテ・ヨコの剛軟度がいずれも25mm以上200mm以下であり、タテ・ヨコのKES曲げ剛性がいずれも0.04gf・cm2/cm以上2.8gf・cm2/cm以下の条件を満たす実施例1~実施例4の仕切り用シートは、着席時の座り易さ、着席時の圧迫感・異物感、仕切り具の揺れの全ての項目において良好な結果を示した。