(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054364
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】スリップ抑制パイル織物、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 27/00 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
D03D27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161524
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】394022015
【氏名又は名称】妙中パイル織物株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】妙中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】妙中 正司
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048AB01
4L048AB06
4L048AB21
4L048BA02
4L048BA23
(57)【要約】
【課題】緯糸を縮れやうねりを形成させたフィラメント糸にする等により、「スリップ・目ズレの抑制」などを実現する。
【解決手段】基布2にパイル糸3が織り込まれたパイル織物1である。基布2は経糸4と緯糸5で製織され、パイル糸3は基布2の緯糸5に係止され、緯糸5は縮れやうねりが形成されたフィラメント糸や、スパン糸であったり、緯糸5は経糸4より縮率が大きい。又、各パイル糸3が下を通る1本の緯糸5の一方側から突出する一方側パイル片部3Aと、他方側から突出する他方側パイル片部3Bを有したり、各パイル糸3が下や上を通る3本以上の緯糸5における最も一方側の緯糸5aの一方側から突出する一方側パイル片部3Aと、3本以上の緯糸5における最も他方側の緯糸5bの他方側から突出する他方側パイル片部3Bを有しても良い。パイル織物1の製造方法は、フィラメント糸である緯糸5に仮撚りや熱処理で、縮れやうねりを形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布(2)にパイル糸(3)が織り込まれたパイル織物であって、
前記基布(2)は、経糸(4)と緯糸(5)で製織され、
前記パイル糸(3)は、前記基布(2)の緯糸(5)に係止され、
前記緯糸(5)は、縮れ及び/又はうねりが形成されたフィラメント糸であることを特徴とするパイル織物。
【請求項2】
基布(2)にパイル糸(3)が織り込まれたパイル織物であって、
前記基布(2)は、経糸(4)と緯糸(5)で製織され、
前記パイル糸(3)は、前記基布(2)の緯糸(5)に係止され、
前記緯糸(5)は、スパン糸であることを特徴とするパイル織物。
【請求項3】
基布(2)にパイル糸(3)が織り込まれたパイル織物であって、
前記基布(2)は、経糸(4)と緯糸(5)で製織され、
前記パイル糸(3)は、前記基布(2)の緯糸(5)に係止され、
前記緯糸(5)の縮率は、前記経糸(4)の縮率より大きいことを特徴とするパイル織物。
【請求項4】
前記パイル糸(3)それぞれは、1本の緯糸(5)に対して、当該1本の緯糸(5)の下を通って係止され、
前記パイル糸(3)それぞれは、前記1本の緯糸(5)の下を通った後に当該1本の緯糸(5)の一方側で前記基布(2)から突出する一方側パイル片部(3A)と、前記1本の緯糸(5)の下を通った後に当該1本の緯糸(5)の他方側で前記基布(2)から突出する他方側パイル片部(3B)を有していることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のパイル織物。
【請求項5】
前記パイル糸(3)それぞれは、隣接する3本以上の緯糸(5)に対して、当該隣接する3本以上の緯糸(5)における1本又は複数本の緯糸(5)の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸(5)における別の1本又は複数本の緯糸(5)の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸(5)におけるまた別の1本又は複数本の緯糸(5)の下を通って係止され、
前記パイル糸(3)それぞれは、前記隣接する3本以上の緯糸(5)における最も一方側の緯糸(5a)の下を通った後に当該最も一方側の緯糸(5a)の一方側で前記基布(2)から突出する一方側パイル片部(3A)と、前記隣接する3本以上の緯糸(5)における最も他方側の緯糸(5b)の下を通った後に当該最も他方側の緯糸(5b)の他方側で前記基布(2)から突出する他方側パイル片部(3B)を有していることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のパイル織物。
【請求項6】
基布(2)にパイル糸(3)が織り込まれたパイル織物の製造方法であって、
前記基布(2)を、経糸(4)と緯糸(5)で製織し、
前記パイル糸(3)を、前記基布(2)の緯糸(5)に係止し、
前記緯糸(5)はフィラメント糸であり、
このフィラメント糸である緯糸(5)に、仮撚り及び/又は熱処理で、縮れ及び/又はうねりを形成することを特徴とするパイル織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸及び緯糸で製織された基布と、この基布の緯糸に係止されたパイル糸を有したパイル織物、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地経糸と、少なくとも2本の〆経糸と、複数本のパイル経糸を単位経糸とし、緯糸が、少なくとも3本の緯糸を単位緯糸とする3越以上の多越パイルに裏打層を積層してタイルカーペットに用いられるパイル織物が知られている(特許文献1)。
このパイル織物、単位緯糸を構成する緯糸を、パイル経糸の沈糸と地経糸で上下に仕切り、パイル層と沈糸の間の上層と、沈糸と地経糸の間の中層と、地経糸より裏側の下層との3層に層別し、下層の緯糸と地経糸を、中層の緯糸で仕切って沈糸から引き離し、沈糸に直接接触させず、沈糸をパイル層側に片寄った基布の深部に配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたパイル織物は、その段落0011に記載されたように、寸法安定性を確保するために、緯糸が幅(緯糸)方向に真っ直ぐに続いているため、緯糸に係止されたパイル経糸の緯糸に対する係止位置が、緯糸方向に滑ったり(スリップしたり)、パイル経糸が緯糸に沿ってズレる(目ズレが生じる)虞がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、緯糸を縮れやうねりを形成させたフィラメント糸にする等によって、「スリップ・目ズレの抑制」などを実現できるパイル織物、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパイル織物1は、基布2にパイル糸3が織り込まれたパイル織物であって、前記基布2は、経糸4と緯糸5で製織され、前記パイル糸3は、前記基布2の緯糸5に係止され、前記緯糸5は、縮れ及び/又はうねりが形成されたフィラメント糸であることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係るパイル織物1の第2の特徴は、基布2にパイル糸3が織り込まれたパイル織物であって、前記基布2は、経糸4と緯糸5で製織され、前記パイル糸3は、前記基布2の緯糸5に係止され、前記緯糸5は、スパン糸である点にある。
【0008】
本発明に係るパイル織物1の第3の特徴は、基布2にパイル糸3が織り込まれたパイル織物であって、前記基布2は、経糸4と緯糸5で製織され、前記パイル糸3は、前記基布2の緯糸5に係止され、前記緯糸5の縮率は、前記経糸4の縮率より大きい点にある。
【0009】
本発明に係るパイル織物1の第4の特徴は、上記第1~3の特徴に加えて、前記パイル糸3それぞれは、1本の緯糸5に対して、当該1本の緯糸5の下を通って係止され、前記パイル糸3それぞれは、前記1本の緯糸5の下を通った後に当該1本の緯糸5の一方側で前記基布2から突出する一方側パイル片部3Aと、前記1本の緯糸5の下を通った後に当該1本の緯糸5の他方側で前記基布2から突出する他方側パイル片部3Bを有している点にある。
【0010】
本発明に係るパイル織物1の第5の特徴は、上記第1~3の特徴に加えて、前記パイル糸3それぞれは、隣接する3本以上の緯糸5に対して、当該隣接する3本以上の緯糸5における1本又は複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本又は複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本又は複数本の緯糸5の下を通って係止され、前記パイル糸3それぞれは、前記隣接する3本以上の緯糸5における最も一方側の緯糸5aの下を通った後に当該最も一方側の緯糸5aの一方側で前記基布2から突出する一方側パイル片部3Aと、前記隣接する3本以上の緯糸5における最も他方側の緯糸5bの下を通った後に当該最も他方側の緯糸5bの他方側で前記基布2から突出する他方側パイル片部3Bを有している点にある。
【0011】
これらの特徴により、緯糸5を、縮れやうねりを形成されたフィラメント糸とすることで、特許文献1とは異なり、緯糸5に係止されたパイル糸3の緯糸5に対する係止位置は、縮れやうねりが形成されている分だけ、緯方向に滑り難く(スリップし難く)、パイル糸3における緯糸5に沿ったズレ(目ズレ)が抑制される(「スリップ・目ズレの抑制」)。
【0012】
又、緯糸5をスパン糸としても良く、特許文献1とは異なり、表面に複数の毛羽が存在する分だけ、「スリップ・目ズレの抑制」が実現できる。
尚、緯糸5の縮率を、経糸4の縮率より大きくしても良い。
【0013】
更に、各パイル糸3が下を通る1本の緯糸5の一方側から突出する一方側パイル片部3Aと、他方側から突出する他方側パイル片部3Bを有することで、「スリップ・目ズレの抑制」の実現と共に、パイル糸3の密度を上げることが可能となる(「パイル糸の高密度化」)。
【0014】
そして、各パイル糸3が下や上を通る3本以上の緯糸5における最も一方側の緯糸5aの一方側から突出する一方側パイル片部3Aと、3本以上の緯糸5における最も他方側の緯糸5bの他方側から突出する他方側パイル片部3Bを有することで、パイル糸3における3本以上の緯糸5への係止位置が更に滑り難く、目ズレが発生し難くなる(更なる「スリップ・目ズレの抑制」が実現する)と共に、各パイル糸3が基布2に強固に織り込まれ、各パイル糸3が基布2から抜け難くなる(「パイル糸の抜止め促進」が図れる)。
【0015】
本発明に係るパイル織物1の製造方法は、基布2にパイル糸3が織り込まれたパイル織物の製造方法であって、前記基布2を、経糸4と緯糸5で製織し、前記パイル糸3を、前記基布2の緯糸5に係止し、前記緯糸5に、仮撚り及び/又は熱処理で、縮れ及び/又はうねりを形成することを第1の特徴とする。
【0016】
この特徴により、フィラメント糸である緯糸5に、仮撚りや熱処理で、縮れやうねりを形成することで、特許文献1とは異なり、緯糸5に係止されたパイル糸3の緯糸5に対する係止位置は、仮撚りや熱処理によって縮れやうねりが形成されている分だけ、緯方向に滑り難く(スリップし難く)、パイル糸3における緯糸5に沿ったズレ(目ズレ)が抑制される(「スリップ・目ズレの抑制」)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るパイル織物、及び、その製造方法によると、緯糸を縮れやうねりを形成させたフィラメント糸にする等によって、「スリップ・目ズレの抑制」などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るパイル織物のパイル面を例示する図面代用写真である。
【
図2】パイル織物の緯方向視断面を例示する図面代用写真である。
【
図3】パイル織物の経方向視断面を例示する図面代用写真である。
【
図4】パイル織物のパイル面と裏面を例示する図面代用写真である。
【
図5】パイル織物において、パイル糸が3本以上の緯糸に対して係止されている場合の緯方向視を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<パイル織物1の全体構成>
図1~5には、本発明の実施形態に係るパイル織物1が例示されている。
パイル織物1は、後述する基布2と、この基布2に織り込まれた複数のパイル糸3を有した織物である。
【0020】
パイル織物1は、まず、それぞれ上下二重に織成される2枚のパイル織物に製織され、それらを連結しているパイル糸3を上下のパイル織物1の略中央の線(謂わば、センターカットライン)でセンターカットして2枚のパイル織物1に分割されても良い。
パイル織物1の厚みは、基布2の厚みと、パイル糸3の上下長さ(パイル長)を足した値であって、特に限定はないが、例えば、0.5mm以上5.0mm以下、好ましくは0.7mm以上4.5mm以下、更に好ましくは1.0mm以上4.0mm以下(2.0mmや2.2mm)であっても良い。
【0021】
<基布2>
図1~5に示したように、基布2は、後述する経糸4と、後述する緯糸5(一方側緯糸5aや他方端側緯糸5b、中間緯糸5m)を製織して構成される。
基布2の組織(織組織)は、特に制限はないが、例えば、経糸4が織幅方向に並んで配置され、各経糸4は、複数本の緯糸5の上を通る毎に複数本の緯糸5の下を通っていても良い(綾織組織とも言える)。
【0022】
その他、各経糸4は、1本の緯糸5の上を通る毎に1本以上の緯糸5の下を通っていても良く、各緯糸5と平織組織、又は、綾織組織を構成しているとも言える。
この場合を詳解すれば、各経糸4は、1本の緯糸5の上を通る毎に1本の緯糸5の下を通る場合(平織組織)と、1本の緯糸5の上を通る毎に2本の緯糸5の下を通る場合(綾織組織)と、1本の緯糸5の上を通る毎に3本の緯糸5の下を通る場合(綾織組織)の何れでも構わない。
【0023】
基布2の厚みは、特に限定はないが、例えば、0.01mm以上1.00mm以下、好ましくは0.05mm以上0.90mm以下、更に好ましくは0.10mm以上0.80mm以下(0.3mm)であっても良い。
又、基布2の幅も、特に限定はなく、例えば、20インチ以上100インチ以下(65インチなど)であっても良い。更に、基布2やパイル糸3を製織する織機の筬の数も、特に限定はなく、例えば、10羽/インチ以上90羽/インチ以下であっても良い。
以下、この基布2における経糸4や緯糸5について、まず述べる。
【0024】
<経糸4など>
図1~5で示したように、経糸4は、製織される基布2における製織方向(一方向)又は、経糸4の長手方向(両方向、経方向とも言う)に沿って配置されている(換言すれば、織幅方向に並んで配置されている)。
経糸4は、フィラメント糸(長繊維糸)や、スパン糸(短繊維糸、紡績糸)の何れでも良く、フィラメント糸であれば、モノフィラメントやマルチフィラメントなどであったり、何も加工をしていないフィラメント糸(生糸)であっても構わない。
経糸4の総繊度も、特に制限はないが、例えば、20d(デニール)以上1500d以下、好ましくは50d以上1000d以下、更に好ましくは100d以上600d以下(50d/30フィラメントや、50d/20フィラメントなど)であっても構わない。又、経糸4の単繊維繊度も、特に制限はないが、例えば、0.1d(デニール)以上1500d以下、好ましくは0.5d以上1000d以下、更に好ましくは1d以上600d以下であっても良い。
【0025】
経糸4の素材も、同様に特に制限はないが、例えば、PETなどのポリエステル繊維や、コットン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、これらの交撚糸、混紡糸などでも良い。
又、経糸4の1インチに当りの本数も、特に制限はなく、例えば、10本以上30本以下(21本など)等であっても良い。
【0026】
<緯糸5、縮れ、うねり>
図1~5に示したように、緯糸5は、製織される基布2における織幅方向又は緯糸5の長手方向5L(両方向、緯方向とも言う。)に沿って配置されている(換言すれば、製織方向に並んで配置されている)。
緯糸5は、縮れ及び/又はうねりが形成されたフィラメント糸(長繊維糸)であっても良く、この場合には、緯糸5はウーリー加工糸であるとも言え、その構成は、モノフィラメントやマルチフィラメントなどであっても構わない。
【0027】
ここで、本発明における「縮れ」とは、緯糸5において、捲縮している部分(螺旋状に丸まっている部分など)であり、クリンプとも言う。
又、本発明における「うねり」とは、緯糸5において、曲がりくねっている部分である。
【0028】
尚、上述した経糸4がフィラメント糸である場合、当該経糸4にも縮れやうねりが形成されていたり、当該経糸4には縮れやうねりは形成されていなくとも(経糸4が、何も加工をしていないフィラメント糸(生糸)であっても)良い。
ここで、フィラメント糸である経糸4に縮れやうねりは形成されていない、且つ、緯糸5のみが縮れやうねりが形成されたフィラメント糸である場合は、パイル織物1は、当該パイル織物1自体の寸法安定性を保持しながら、後述するパイル糸3の「スリップ・目ズレの抑制」の両立が図れるとも言える。
【0029】
緯糸5は、その他、スパン糸(短繊維糸、紡績糸)であっても良い。
この場合、経糸4がスパン糸であり、且つ、緯糸5のみが縮れやうねりが形成されたフィラメント糸である場合にも、上述と同様に、パイル織物1は、当該パイル織物1自体の寸法安定性を保持しながら、後述するパイル糸3の「スリップ・目ズレの抑制」の両立が図れるとも言える。
緯糸5の総繊度も、特に制限はないが、例えば、20d(デニール)以上1500d以下、好ましくは50d以上1000d以下、更に好ましくは100d以上600d以下(50d/20フィラメントや、50d/30フィラメントなど)であったり、その他、綿番手の20番手単糸を2本撚り合わせた双糸(20/2)であっても構わない。又、緯糸5の単繊維繊度も、特に制限はないが、例えば、0.1d(デニール)以上1500d以下、好ましくは0.5d以上1000d以下、更に好ましくは1d以上600d以下であっても良い。
【0030】
緯糸5の素材も、同様に特に制限はないが、例えば、PETなどのポリエステル繊維や、コットン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、これらの交撚糸、混紡糸などでも良い。
又、緯糸5の打込み本数(製織方向1インチにおいて打ち込んだ緯糸5の本数)も、特に制限はなく、例えば、20本以上250本以下、好ましくは30本以上200本以下、更に好ましくは40本以上150本以下(130本)等であっても良い。
尚、緯糸5の打込み本数が多いほど、製織方向1インチにおける当該緯糸5に係止されるパイル糸3の本数も多くなり、より隣接する緯糸5間でパイル糸3を挟み込み易くなったり、隣接するパイル糸3同士が互いに係止し合い易くなるとも言え、更に「スリップ・目ズレの抑制」が図れると共に、より「パイル糸の抜止め促進」も実現できるとも言える。
【0031】
<縮率S>
ここまで述べた緯糸5や経糸4の縮率Sは、特に限定はないが、例えば、緯糸5の縮率S5は、経糸4の縮率S4より大きくても良い。
ここで、本発明における「緯糸5の縮率S5」とは、織成された後のパイル織物1における緯糸5の長手方向5Lに略沿った当該パイル織物1の緯方向における一定の長さL15と、この当該パイル織物1に織り込まれ且つパイル織物1の緯方向における一定の長さL15に対応する緯糸5自体の長さL25と、緯糸5自体の長さL25とパイル織物1の緯方向における一定の長さL15との差ΔL5(=L25-L15)を求め、この差ΔL5における当該パイル織物1の緯方向における一定の長さL15に対する比率S5(=100×ΔL5/L15)を意味する。
【0032】
又、本発明における「緯糸4の縮率S4」とは、織成された後のパイル織物1における経糸4の長手方向4Lに略沿った当該パイル織物1の経方向における一定の長さL14と、この当該パイル織物1に織り込まれ且つパイル織物1の経方向における一定の長さL14に対応する経糸4自体の長さL24と、経糸4自体の長さL24とパイル織物1の経方向における一定の長さL14との差ΔL4(=L24-L14)を求め、この差ΔL4における当該パイル織物1の経方向における一定の長さL14に対する比率S4(=100×ΔL4/L14)を意味する。
尚、緯糸5の縮率S5は、経糸4の縮率S4より大きい(S5>S4)場合にも、パイル織物1は、当該パイル織物1自体の寸法安定性を保持しながら、後述するパイル糸3の「スリップ・目ズレの抑制」の両立が図れるとも言える。
又、緯糸5の縮率S5は、経糸4の縮率S4より大きい場合において、緯糸5の縮率S5と経糸4の縮率S4の差ΔSは、特に限定はないが、例えば、5%より大きく90%以下、好ましくは10%以上70%以下、更に好ましくは15%以上50%以下であっても良い。
【0033】
このような緯糸5に対して、後述するパイル糸3は係止されており、パイル糸3が係止される緯糸5の本数は、特に限定はないが、例えば、各パイル糸3は、1本の緯糸5に対して係止されていたり、隣接する3本以上の緯糸5に係止されていても良い。
以下、隣接する3本以上の緯糸5に対してパイル糸3が係止されている場合における各種の緯糸3について述べる。
【0034】
<3本以上の緯糸5に対してパイル糸3が係止している場合の各種緯糸5>
図1~5(特に、
図5)に示したように、緯糸5は、経糸4と製織されて基布2を構成するのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、これら一方側緯糸5aと他方側緯糸5bの間にある中間緯糸5mを有していても良く、これらの緯糸5a、5b、5mは、製織方向に並んで配置されていても良い。
ここで、一方側緯糸5aは、経糸4の長手方向4Lにおいて隣接する(前後する)3本以上の緯糸5のうち最も一方側にあり、且つ経糸4の下側又は上側に織り込まれた緯糸5であり、他方側緯糸5bは、経糸4の長手方向4Lにおいて隣接する(前後する)3本以上の緯糸5のうち最も後側にあり且つ経糸4の上側又は下側に織り込まれた緯糸5であり、中間緯糸5mは、経糸4の長手方向4Lにおいて隣接する(前後する)3本以上の緯糸5のうち上述した一方側緯糸5a及び他方側緯糸5b以外の緯糸5(一方側緯糸5aと他方側緯糸5bの間の緯糸5)である。
【0035】
一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5mは、その繊度(総繊度)が全て略同じであったり、逆に少なくとも2つが互いに異なっていても良く、又、一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5mは、その素材も、互いに同じであったり、逆に少なくとも2つが異なっていても構わない。
その他、各緯糸5a、5b、5mそれぞれに対しては、複数のパイル糸3が経糸4の長手方向4Lに沿って、1本以上(又は、0本)隣接した緯糸5に係止されたり、あるパイル糸3にとっては、一方側緯糸5aとなる緯糸5や、別のパイル糸3にとっては、他方側緯糸5bや、中間緯糸5mとなっても(兼用されていても)良い。
【0036】
尚、各緯糸5a、5b、5mの本数は、後述する1本のパイル糸3に対して、一方側緯糸5aや他方側緯糸5bは、それぞれ1本ずつであると言えるが、中間緯糸5mは、1本以上(1本や、2本、3本・・・など)であっても良い。
よって、各パイル糸3が係止する、製織方向に隣接する緯糸5(一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5m)の本数は、2本以上であるとも言え、特に、各パイル糸3が係止する製織方向に隣接する緯糸5が2本であれば、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本で、中間緯糸5mが0本となり、各パイル糸3が係止する製織方向に前後する緯糸5が3本以上であれば、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本で、中間緯糸5mが1本以上となる。
【0037】
<パイル糸3>
図1~5に示したように、パイル糸3は、上述した基布2に複数織り込まれている。
パイル糸3は、基布2に織り込まれているのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、ある経糸4と別の経糸4の間に挟まれて、製織方向に沿って複数配置されても良い。
【0038】
パイル糸3は、フィラメント糸(長繊維糸)や、スパン糸(短繊維糸、紡績糸)の何れでも良く、フィラメント糸であれば、モノフィラメントやマルチフィラメントなどであったり、何も加工をしていないフィラメント糸(生糸)であっても構わない。
パイル糸3の繊度(総繊度)も、特に制限はないが、例えば、20d(デニール)以上1500d以下、好ましくは50d以上1000d以下、更に好ましくは100d以上600d以下であっても構わない。又、パイル糸3の単繊維繊度も、特に制限はないが、例えば、0.1d(デニール)以上1500d以下、好ましくは0.5d以上1000d以下、更に好ましくは1d以上600d以下であっても良い。
【0039】
パイル糸3の素材も、同様に特に制限はないが、例えば、PETなどのポリエステル繊維や、コットン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、これらの交撚糸、混紡糸などでも良い。
又、パイル糸3の1インチに当りの本数も、特に制限はなく、例えば、10本以上100本以下であっても良い。
【0040】
各パイル糸3は、上述したように、1本の上述した緯糸5に対して、当該1本の緯糸5の下を通って係止されても良い。
この場合、各パイル糸3は、ルーズパイル(Loose Pile)を構成しているとも言える。又、この場合は、各パイル糸3は、経糸4には係止されていないとも言える。
【0041】
又、各パイル糸3は、上述したように、製織方向に隣接する(前後する)3本以上の緯糸5(上述した一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5m)に対して、当該隣接する3本以上の緯糸5における1本又は複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本又は複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本又は複数本の緯糸5の下を通って係止されていても良い。
この場合、各パイル糸3は、ファストパイル(Fast Pile)を構成しているとも言える。又、この場合も、各パイル糸3は、経糸4には係止されていないと言える。
【0042】
各パイル糸3が3本以上の緯糸5に係止している場合を詳解すれば、各パイル糸3は、<1-1-1>当該隣接する3本以上の緯糸5における1本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本の緯糸5の下を通って係止されたり、<1-1-2>当該隣接する3本以上の緯糸5における1本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の複数本の緯糸5の下を通って係止されたり、<1-2-1>当該隣接する3本以上の緯糸5における1本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本の緯糸5の下を通って係止されたり、<1-2-2>当該隣接する3本以上の緯糸5における1本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の複数本の緯糸5の下を通って係止されたり、<2-1-1>当該隣接する3本以上の緯糸5における複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本の緯糸5の下を通って係止されたり、<2-1-2>当該隣接する3本以上の緯糸5における複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の1本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の複数本の緯糸5の下を通って係止されたり、<2-2-1>当該隣接する3本以上の緯糸5における複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の1本の緯糸5の下を通って係止されたり、<2-2-2>当該隣接する3本以上の緯糸5における複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する3本以上の緯糸5における別の複数本の緯糸5の上を通った後に、当該隣接する3本以上の緯糸5におけるまた別の複数本の緯糸5の下を通って係止されても良い。
【0043】
<一方側パイル片部3A、他方側パイル片部3Bなど>
図1~4に示したように、一方側パイル片部3Aや他方側パイル片部3Bは、各パイル糸3において、上述した基布2から突出した部分である。尚、これらパイル片部3A、3Bは突出した側の面を、パイル織物1におけるパイル面とも言う。
各パイル糸3は、上述した一方側パイル片部3Aと他方側パイル片部3Bの間に、中間部3Mを有しており、この中間部3Mは、各パイル糸3において、上述した基布2から突出していない部分であるとも言える。
【0044】
各パイル糸3が1本の緯糸5に係止されている場合においては、上述した一方側パイル片部3Aは、1本の緯糸5の下を通った後に当該1本の緯糸5の一方側で基布2から突出することとなる。
又、この場合においては、上述した他方側パイル片部3Bは、1本の緯糸5の下を通った後に当該1本の緯糸5の他方側で基布2から突出することとなる。
【0045】
一方、各パイル糸3が隣接する3本以上の緯糸5に係止されている場合においては、上述した一方側パイル片部3Aは、隣接する3本以上の緯糸5における最も一方側の緯糸(一方側緯糸)5aの下を通った後に当該最も一方側緯糸5aの一方側で基布2から突出することとなる。
又、この場合においては、上述した他方側パイル片部3Bは、隣接する3本以上の緯糸5における最も他方側の緯糸(他方側緯糸)5bの下を通った後に当該最も他方側緯糸5bの他方側で基布2から突出することとなる。
【0046】
各パイル糸3における一方側パイル片部3Aや他方側パイル片部3Bの基布2(基布2の上面(表面))に対する角度は、略90°であっても良い。
その他、各パイル糸3における一方側パイル片部3Aや他方側パイル片部3Bは、基布2に対して傾斜していても良く、この場合の角度(傾斜角度)は、10°以上80°以下、好ましくは30°以上75°以下、更に好ましくは50°以上70°以下(60°や、65°など)であっても構わない。
【0047】
尚、各パイル糸3における一方側パイル片部3Aや他方側パイル片部3Bを、基布2に対して傾斜させるには、織成時において、基布2を構成する経糸4のうち、隣接する数本1組(2本1組など)の経糸4にテンション差(張力差)を付けても良く、その他、パイル糸3を、基布2を構成する2本1組となった太い経糸と、この太い経糸より細い経糸の間に、製織方向に沿って複数配置させることで、一方側パイル片部3Aや他方側パイル片部3Bを、基布2に対して傾斜させても構わない。
各パイル糸3の上下長さ(パイル長)とは、これら各パイル片部3A、3Bの上下方向の長さであって、特に制限はないが、例えば、0.1mm以上10.0mm以下、好ましくは0.5mm以上8.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以上6.0mm以下(3.0mmなど)であっても良い。
【0048】
ここからは、各パイル糸3が3本以上の緯糸5に係止する場合における緯糸5全体の本数・中間緯糸5mの本数と、各パイル糸3における中間部3Mとの関係について、以下に述べる。
緯糸5全体の本数が3本の場合、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本となるため、中間緯糸5mの本数は1本となり、各パイル糸3は、製織方向に隣接する(前後する)3本の緯糸5(それぞれ1本の一方側緯糸5aや他方側緯糸5b、中間緯糸5m)に対して、最も一方側の緯糸5aの下を通り、その後に1本の中間緯糸5mの上を通り、その後に最も他方側の緯糸5bの下を通ることとなる。
【0049】
又、緯糸5全体の本数が4本の場合、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本となるため、中間緯糸5mの本数は2本となり、各パイル糸3は、製織方向に隣接する4本の緯糸5(それぞれ1本の一方側緯糸5aや他方側緯糸5bと、2本の中間緯糸5m)に対して、最も一方側の緯糸5aの下を通り、例えば、その後に2本の中間緯糸5mの上を纏めて通り、その後に最も他方側の緯糸5bの下を通ることとなっても良い。
以下同様に、緯糸5全体の本数が5本の場合、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本となるため、中間緯糸5mの本数は3本となり、各パイル糸3は、製織方向に隣接する5本の緯糸5(それぞれ1本の一方側緯糸5aや他方側緯糸5bと、3本の中間緯糸5m)に対して、最も一方側の緯糸5aの下を通り、例えば、その後に1本の中間緯糸5mの上を通る毎に1本の中間緯糸5mの上を通り(3本の中間緯糸5mのうち、最も一方側の中間緯糸5mの上を通り、その後に製織方向中央の中間緯糸5mの下を通り、その後に最も他方側の中間緯糸5mの上を通り)、その後に最も他方側の緯糸5bの下を通ることとなっても良い。
【0050】
更に、緯糸5全体の本数が6本の場合、一方側緯糸5aと他方側緯糸5bがそれぞれ1本となるため、中間緯糸5mの本数は4本となり、各パイル糸3は、製織方向に隣接する6本の緯糸5(それぞれ1本の一方側緯糸5aや他方側緯糸5bと、4本の中間緯糸5m)に対して、最も一方側の緯糸5aの下を通り、例えば、その後に2本の中間緯糸5mの上を通る毎に2本の中間緯糸5mの上を通り(4本の中間緯糸5mのうち、最も一方側の中間緯糸5mと製織方向中央における一方側の中間緯糸5mの上を纏めて通り、その後に製織方向中央における他方側の中間緯糸5mと最も他方側の中間緯糸5mの上を纏めて通り)、その後に最も他方側の緯糸5bの下を通ることとなっても良い。
その他、緯糸5全体の本数が7本以上である場合も同様である。
【0051】
<パイル織物1の製造方法>
本発明の実施形態に係るパイル織物1の製造方法は、ここまで述べた基布2にパイル糸3が織り込まれたパイル織物1の製造方法(以下、「当該製造方法」とも言う)である。
当該製造方法は、基布2を経糸4と緯糸5で製織し、パイル糸3を基布2の緯糸5に係止し、緯糸5はフィラメント糸であり、このフィラメント糸である緯糸5に仮撚り及び/又は熱処理で縮れ及び/又はうねりを形成する。
【0052】
ここで、基布2を経糸4と緯糸5で製織し、パイル糸3を基布2の緯糸5に係止する工程を、織成工程としても良い。この織成工程では、上下二重に織成される2枚のパイル織物(2枚の基布)に対して、それらの2枚の基布を、当該2枚の基布における緯糸5に係止するパイル糸3で連結させたり、一重織りのパイル織物(1枚の基布)において、その1枚の基布を、当該1枚の基布における緯糸5にパイル糸3を係止させても良い。
又、フィラメント糸である緯糸5に仮撚り及び/又は熱処理で縮れ及び/又はうねりを形成する工程を、糸処理工程としても良く、換言すれば、当該製造方法は、織成工程と、糸処理工程を有している。
【0053】
当該製造方法においては、先に、糸処理工程にてフィラメント糸である緯糸5に縮れ及び/又はうねりを形成し、糸処理工程の後に、当該糸処理工程にて縮れ及び/又はうねりが形成されたフィラメント糸である緯糸5を用いて、経糸4と共に基布2を製織し、縮れ及び/又はうねりが形成されたフィラメント糸である緯糸5にパイル糸3を係止するとも言える。
当該製造方法は、糸処理工程や織成工程以外に、上述したように、上下二重に織成される2枚のパイル織物に製織され、それらを連結しているパイル糸3を上下のパイル織物1の略中央の線でセンターカットして2枚のパイル織物1に分割するセンターカット工程などを有していても良い。尚、センターカット工程を有する場合、当該製造方法における各工程の順番は、糸処理工程、織成工程、センターカット工程の順となる。
【0054】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。パイル織物1、パイル織物1の製造方法等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
パイル糸3それぞれは、隣接する複数本の緯糸5に対して、当該複数本の緯糸5の下を纏めて通って係止され、その複数本の緯糸5における最も一方側の緯糸5aの下を通った後に当該最も一方側の緯糸5aの一方側で基布2から突出する一方側パイル片部3Aと、その複数本の緯糸5における最も他方側の緯糸5bの下を通った後に当該最も他方側の緯糸5bの他方側で基布2から突出する他方側パイル片部3Bを有していても良い。
この場合も、各パイル糸3は、ある意味、ルーズパイル(Loose Pile)を構成しているとも言える。又、この場合も、各パイル糸3は、経糸4には係止されていないと言える。
【0055】
パイル糸3それぞれが隣接する複数本の緯糸5に対して係止された場合において、「当該隣接する複数本の緯糸5における1本又は複数本の緯糸5の下を通る毎に、当該隣接する複数本の緯糸5における別の1本又は複数本の緯糸5の上を通った後」とは、当該隣接する複数本の緯糸5において、1番目のある1本又は複数本の緯糸5の下を通った後に、1番目の別の1本又は複数本の緯糸5の上を通り、2番目のある1本又は複数本の緯糸5の下を通った後に、2番目の別の1本又は複数本の緯糸5の上を通り、3番目のある1本又は複数本の緯糸5の下を通った後に、3番目の別の1本又は複数本の緯糸5の上を通り・・・、n番目のある1本又は複数本の緯糸5の下を通った後に、n番目の別の1本又は複数本の緯糸5の上を通る際、1番目、2番目、3番目・・・n番目に下や上を通る緯糸5の本数は、全て同じでも良いが、それぞれが全て異なっていたり、2つだけ同じであったり、3つだけ同じである等でも構わない。
基布2の裏面に、アクリル樹脂系接着剤などの合成樹脂を塗布して、バックコーティング(バッキング)していても良い。尚、
図3における基布2の裏面には、バックコーティングはしていない。
パイル織物1の製造方法は、上述したように、基布2の裏面にアクリル樹脂系接着剤などの合成樹脂を塗布して、バックコーティング(バッキング)するバッキング工程を有していても良い。尚、バッキング工程とセンターカット工程を有する場合、当該製造方法における各工程の順番は、糸処理工程、織成工程、センターカット工程、バッキング工程の順であったり、糸処理工程、織成工程、バッキング工程、センターカット工程の順であっても良い。
パイル織物1の製造方法は、センターカット工程の代わりに、一重織りのループパイルを刈り揃える(シャーリングする)シャーリング工程を有していても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るパイル織物、及び、パイル織物の製造方法により製造されたパイル織物は、化粧パフ(化粧用パフ)や、液晶パネル用のラビング材に用いたり、自動車ボディ塗装研磨用パフ剤、サッシ用隙間ブラシ、家電用ブラシ、モップ用生地、回転ブラシ(当該パイル織物のパイル糸側を回転させながら清掃する対象物に当てるブラシ等)などのブラシに用いたり、椅子張り生地やカーテン、壁張り、クッション素材などのインテリア材に用いたり、乗用車や、鉄道車両、バス、航空機などの椅子(シート)の表皮材に用いたり、アパレル製品(衣料)などに用いることが出来、その他、電気掃除機のノズルにおける吸込口の周辺に用いたり、布帛表面の塵埃拭取り、衣服表面の塵埃拭取り、シーツ表面の塵埃拭取り、ソファやベッド表面の塵埃拭取り、座席表面の塵埃拭取り、液晶パネル表面の塵埃拭取り、プラスチックフィルム表面の塵埃拭取り、金属シート表面の塵埃拭取り等にも使用できるなど、塵芥を掃き取る何れの製品にも利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 パイル織物
2 基布
3 パイル糸
3A 一方側パイル片部
3B 他方側パイル片部
4 経糸
5 緯糸
5a 最も一方側の緯糸
5b 最も他方側の緯糸