(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054370
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】デコレーションケーキ
(51)【国際特許分類】
A23G 3/00 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
A23G3/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020172219
(22)【出願日】2020-09-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】520044601
【氏名又は名称】寺脇 加恵
(72)【発明者】
【氏名】寺脇 加恵
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB11
4B014GE01
4B014GE02
4B014GE03
4B014GE09
4B014GE10
4B014GP18
4B014GQ02
4B014GQ04
(57)【要約】
【課題】生花を配した食用のデコレーションケーキであって、ケーキ本体の保湿性に優れることから長期間の保管が可能であり、保管中の生花の新鮮さも継続することから、生花によるデコレーションが長期間保たれ、更に、ケーキ本体が食用に供された後の生花の活用も可能な、デコレーションケーキを提供すること。
【解決手段】ケーキ本体10の少なくとも上面に生花20を配したデコレーションケーキであって、生花20の花弁がケーキ本体10の上面を覆うように、生花20の花柄等が、ケーキ本体10に刺し込まれ水を収容した貯水チューブに開口を通して挿入されており、ケーキ本体10は、複数のケーキ土台2がつなぎ4で積層されており、生花20が挿入された状態で、水の水位がつなぎ4部分又はそれより上部に位置しており、貯水チューブは、少なくとも2つのケーキ土台2に至るように、ケーキ本体10に刺し込まれているデコレーションケーキ100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーキ本体の少なくとも上面に生花を配したデコレーションケーキであって、
前記生花の花弁が前記ケーキ本体の上面を覆うように、前記生花の花柄、花軸、花茎、花枝又は幹が、前記ケーキ本体に刺し込まれ水を収容した貯水チューブに、当該貯水チューブの開口を通して挿入されており、
前記ケーキ本体は、複数のケーキ土台がつなぎで積層された多層ケーキであり、
前記生花が挿入された状態で、前記水の水位が、前記ケーキ土台で挟まれた前記つなぎ部分又はそれより上部に位置しており、前記貯水チューブは、少なくとも2つの前記ケーキ土台に至るように、前記ケーキ本体に刺し込まれている、デコレーションケーキ。
【請求項2】
前記ケーキ土台の間に加えて、最上層の前記ケーキ土台の上、且つ前記花弁の下に、前記つなぎを有する、請求項1に記載のデコレーションケーキ。
【請求項3】
前記ケーキ土台に挟まれた前記つなぎの少なくとも一層は、前記ケーキ土台間に空隙が生じるように形成されており、前記貯水チューブの少なくとも一部は当該空隙部分に露出している、請求項1又は2に記載のデコレーションケーキ。
【請求項4】
前記ケーキ土台に挟まれた前記つなぎの少なくとも一層は、曲面を持った個別のつなぎが、当該曲面同志が接触するようにして連結した形状で、前記ケーキ土台間に空隙が生じるように形成されており、前記貯水チューブの少なくとも一部は当該空隙部分に露出している、請求項1~3のいずれか一項に記載のデコレーションケーキ。
【請求項5】
前記貯水チューブは、開口から先端方向に向けて先細りとなるテーパー形状を有しており、当該テーパー形状部分と、前記つなぎとの間に、空隙が形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のデコレーションケーキ。
【請求項6】
前記ケーキ本体は、平面視において文字形状を成す、請求項1~5のいずれか一項に記載のデコレーションケーキ。
【請求項7】
前記生花が、前記ケーキ本体の上面の略全面を覆っている、請求項1~6のいずれか一項に記載のデコレーションケーキ。
【請求項8】
前記つなぎの少なくとも一層は、生クリームを含有せず、ココナツミルクを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のデコレーションケーキ。
【請求項9】
前記ケーキ土台の少なくとも一つは、バターを含有せず、ごま油を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のデコレーションケーキ。
【請求項10】
ケーキ本体の少なくとも上面に生花を配したデコレーションケーキの常温保管時間の延長方法であって、
前記デコレーションケーキとして、請求項1~7のいずれか一項に記載のデコレーションケーキを用い、前記つなぎの少なくとも一層に、生クリームを含有させず、ココナツミルクを含有させる、及び/又は、前記ケーキ土台の少なくとも一つに、バターを含有せず、ごま油を含有させる、延長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デコレーションケーキに関する。
【背景技術】
【0002】
デコレーションケーキは、贈答用を始め多くの用途に使用されている。美味しさと華やかな印象を与えるために、用いる素材やデコレーションの方法に関して様々な工夫が施されており、例えば、花を用いるものとして、飲料アルコールに一定時間浸漬した後、所定時間冷蔵した食用花をトッピングしたケーキが知られている(特許文献1)。
【0003】
食用ケーキとは異なるが、生花を用いたものとしては、ケ-キ風台座を有する盛り花が知られており(特許文献2)、また、ケーキ形状の造花も公知である(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-23961号公報
【特許文献2】特開平10-178898号公報
【特許文献3】特開平2-133602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の発明は、視覚、臭覚及び味覚の全てで楽しむことのできる、食用花をケーキにトッピングとして使用した食用花ケーキを提供するものであって、花を含めケーキ全体を食用に供することを目的としている。
【0006】
一方、特許文献2によれば、ケーキ状の台座に設けられた穴に吸水性スポンジを挿入し、そのスポンジに生花を刺すことによって、従来の問題点、特に、持ち運びする時に、吸水性スポンジが篭の中で遊び、盛り花が移動して花や葉を傷めるといった問題点を解消するものである。
【0007】
特許文献3は、従来ケーキ形状の造花が存在していなかったことに鑑み、造花として飾りになると共に、ケーキの代用として持ち帰り用のお土産に使用できるようにすることを目的としたものである。
【0008】
特許文献1に記載の食用花ケーキは、食用アルコールに浸漬した花の花弁の部分だけをケーキの上にトッピングしたものであり、花は食用に供されるまでしか楽しむことはできない。また使用できる花も食用に適するものに限られる。さらに、毛細管現象や浸透圧等により、ケーキ表面の水分が花に移動することが考えられ、ケーキ自体の新鮮さが失われる恐れがある。
【0009】
なお、特許文献2に記載の発明は花が傷つくことを防ぐためのものであり、特許文献3に記載の発明は、造花を単にケーキ形状としたものであり、いずれも、食用のケーキに適用することを前提としていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、生花を配した食用のデコレーションケーキであって、ケーキ本体の保湿性に優れることから長期間の保管が可能であり、保管中の生花の新鮮さも継続することから、生花によるデコレーションが長期間保たれ、更に、ケーキ本体が食用に供された後の生花の活用も可能な、デコレーションケーキを提供することにある。
【0011】
本発明は、ケーキ本体の少なくとも上面に生花を配したデコレーションケーキであって、上記生花の花弁が上記ケーキ本体の上面を覆うように、上記生花の花柄、花軸、花茎、花枝又は幹が、上記ケーキ本体に刺し込まれ水を収容した貯水チューブに、当該貯水チューブの開口を通して挿入されており、上記ケーキ本体は、複数のケーキ土台がつなぎで積層された多層ケーキであり、上記生花が挿入された状態で、上記水の水位が、上記ケーキ土台で挟まれた上記つなぎ部分又はそれより上部に位置しており、上記貯水チューブは、少なくとも2つの上記ケーキ土台に至るように、上記ケーキ本体に刺し込まれている、デコレーションケーキ、を提供するものである。
【0012】
このデコレーションケーキは、ケーキ本体の上面が生花で覆われたものであるため美観に優れる。また、ケーキ上面を覆った生花の花弁により、ケーキ本体表面からの水分の蒸発が防止され、ケーキの新鮮さがすぐに損なわれることがない。さらに、生花の花弁が単にケーキ本体の表面にトッピングされているのではなく、ケーキ本体に差し込まれた貯水チューブ中に挿入されているため、生花がフレッシュな状態でいる期間が長くなるとともに、直接ケーキ本体上に配されたのと異なって、毛管現象や浸透圧によるケーキ本体からの水分の流出が避けられる。
【0013】
さらに、貯水チューブの水から蒸発する水蒸気が、ケーキ本体上面を覆った花弁により遮られることで、直接的に大気中に拡散しないことから、ケーキ本体の保湿効果が生じる。また、ケーキを覆っている花が生花であるため、生花からの水の蒸散作用により、ケーキ本体が加湿される。加えて、貯水チューブ中の水の水位(メニスカス)が、ケーキ本体のつなぎ部分又はそれより上部に位置することから、つなぎ部分の断熱効果により、水の蒸発速度が低減し、生花がフレッシュである時間もケーキの新鮮さが保たれる時間も、相当程度長くなる。なお、ケーキ本体が、ケーキ土台で挟まれたつなぎが2以上ある多層ケーキの場合において、貯水チューブ中の水の水位は、貯水チューブが差し込まれているつなぎのうち、最下層にあるつなぎ部分又はそれより上部に位置していればよい。
【0014】
本発明のデコレーションケーキにおいては、貯水チューブが、少なくとも2つのケーキ土台に至るように、ケーキ本体に刺し込まれている。すなわち、第1のケーキ土台/つなぎ/第2のケーキ土台という積層構造を有するデコレーションケーキにおいては、第1及び第2ケーキ土台に亘って貯水チューブが差し込まれるため、貯水チューブが保管中や運搬中に傾くことが防止され、水の漏れが防止されると共に、生花の配置も壊れないために、美観の維持を図ることができる。
【0015】
加えて、食用に供する際に、ケーキ本体から、貯水チューブごとに生花を引き抜くか、生花だけを引き抜くことにより、飾られていた生花をケーキの消費後にも楽しむことができる。例えば、引き抜いた生花でフラワーアレンジメントすることも可能になる。
【0016】
なお、ケーキ土台の間に加えて、最上層の前記ケーキ土台の上、且つ花弁の下に、つなぎを有していてもよい。このように、上面につなぎが配されていると、美観に優れるのみならず、生花の乾燥が長期間に亘って防止され、またケーキ本体自体のみずみずしさも継続する。
【0017】
ケーキ土台に挟まれたつなぎの少なくとも一層は、ケーキ土台間に空隙が生じるように形成されており、貯水チューブの少なくとも一部は空隙部分に露出しているように構成することができる。意外なことに、つなぎを連続層にしてケーキ土台間に空隙を生じさせない場合よりも、上記のように、ケーキ土台間に空隙を生じさせ、貯水チューブをその空隙部分に露出させる方が、上述した本発明の効果が更に顕著となる。生花を長持ちさせ、且つケーキ本体の乾燥を防止するには、貯水チューブ中の水の揮発が極端に遅いよりも、ある程度の速度で生じる方が好ましく、上記構成はこのような目的に適しているものと推察される。
【0018】
ケーキ土台に挟まれたつなぎの少なくとも一層は、曲面を持った個別のつなぎが、当該曲面同志が接触するようにして連結した形状で、ケーキ土台間に空隙が生じるように形成されており、貯水チューブの少なくとも一部は当該空隙部分に露出しているように構成してもよい。曲面を持った個別のつなぎとしては、球状、半球状、紡錘状のものが挙げられ、これらのつなぎが曲面を接しながら連結する形状(例えば、数珠状)にすること、そして貯水チューブを空隙部分に露出することで、上述した効果(貯水チューブ中の水の揮発が極端に遅くならず適度な速度となる等)が更に優れるようになる。
【0019】
貯水チューブは、開口から先端方向に向けて先細りとなるテーパー形状を有しており、テーパー形状部分と、つなぎとの間に、空隙が形成されているように構成されることが好ましい。貯水チューブとしてテーパー形状を有するものを用いることで、今回新たに見出された知見である「ケーキ土台間にある程度の空隙がある方が、生花を長持ちさせ、ケーキ本体の乾燥を防止する効果が高まる」という現象が顕著になる。
【0020】
ケーキ本体は、平面視において文字形状を成すものとすることができる。ケーキ本体の形状を、通常の円筒状のものではなく文字形状のものとすると、表面積が増加し、ケーキ本体の乾燥が進みやすくなるが、本発明では上述した構成を有するため、ケーキのみずみずしさが長期間保たれる。
【0021】
生花は、ケーキ本体の上面の略全面を覆うようにしてもよい。これにより、ケーキ本体からの水分の蒸発が効果的に防止され、貯水チューブから蒸発した水による保湿効果も向上する。
【0022】
本発明のデコレーションケーキにおいては、つなぎの少なくとも一層は、生クリームを含有せず、ココナツミルクを含有することが好ましい。また、ケーキ土台の少なくとも一つは、バターを含有せず、ごま油を含有することが好ましい。つなぎにおいて生クリームの代わりにココナツミルクを使用した場合や、ケーキ土台においてバターの代わりにごま油(例えば、太白ごま油)を使用した場合は、ケーキ本体の乾燥防止効果が顕著になり、生花の持ちも長くなるという、従来知られていない効果が生じることが今回初めて見出された。
【0023】
このような知見により、ケーキ本体の少なくとも上面に生花を配したデコレーションケーキの常温保管時間の延長方法であって、デコレーションケーキとして、上述したデコレーションケーキを用い、つなぎの少なくとも一層に、生クリームを含有させず、ココナツミルクを含有させる、及び/又は、ケーキ土台の少なくとも一つに、バターを含有せず、ごま油を含有させる、延長方法が提供可能であることが判明した。なお、常温は日本国における典型的な室温を意味し、例えば5~30℃の範囲である。湿度については任意であるが、例えば20~75%である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、生花を配した食用のデコレーションケーキであって、ケーキ本体の保湿性に優れることから長期間の保管が可能であり、保管中の生花の新鮮さも継続することから、生花によるデコレーションが長期間保たれ、更に、ケーキ本体が食用に供された後の生花の活用も可能な、デコレーションケーキが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係るデコレーションケーキの斜視図である。
【
図2】実施形態に係るデコレーションケーキの平面図である。
【
図3】
図1に示すIII-III線に沿った断面図である。
【
図5】実施形態に係るデコレーションケーキに用いることのできる貯水チューブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、好適な実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いている場合があり、寸法比率は説明のものとは必ずしも一致しない。
【0027】
図1は実施形態に係るデコレーションケーキ100の斜視図であり、
図2はデコレーションケーキ100の平面図である。
【0028】
図1及び
図2に示すデコレーションケーキ100は、2つのケーキ土台2がつなぎ4で積層され最表面にもつなぎ4を有するケーキ本体10(多層ケーキ)と、ケーキ本体10の上面に配された生花20とを備えており、平面視においてアルファベットHの形状を成すものである。生花20はケーキ本体10の上面の略全面を覆っている。なお、生花20は、少なくとも花弁12と、ケーキ本体10中の貯水チューブに挿入できる部位(花柄、花軸、花茎、花枝又は幹)とを有していればよく、
図1及び2に示すように葉14を有していてもよい。
【0029】
図3は、
図1に示すIII-III線に沿った断面図である。
図3に示すように、デコレーションケーキ100において、ケーキ本体10には、開口から先端方向に向けて先細りとなるテーパー形状を有する貯水チューブ30が差し込まれており、貯水チューブ30内部には水40が収容されている。貯水チューブ30は、上層のケーキ土台2を貫通し、下層のケーキ土台2に至るまでケーキ本体10に差し込まれている。そして、水40は、貯水チューブ30の上部まで満たされており、上層のケーキ土台2と下層のケーキ土台2との間のつなぎ4の部分には水40が存在する。すなわち、水40の水位は、2つのケーキ土台2で挟まれたつなぎ4の部分より上部に位置している。
【0030】
図3においては、つなぎ4のそれぞれは、略球形の形状を有し、曲面を接しながら連結して配置されている。また、つなぎ4がこのような形状を有することから、ケーキ土台2の間には空隙部分が形成されており、貯水チューブ30はその空隙に表面の一部を晒している。さらに貯水チューブ30のテーパー形状部分とつなぎ4との間に、空隙が形成されている。
【0031】
生花20は花弁12、葉14及び花柄16から構成されており、ケーキ本体10に差し込まれ、水40を収容した貯水チューブ30に、花柄16が挿入されている。
図3においては、葉14の下側が最上層のつなぎ4の上に載せられたように置かれており、貯水チューブ30の中の花柄16は、貯水チューブ30の底に達していない。しかし、花柄16の長さを長くすることで、貯水チューブ30の底に達するようにして、花弁12や葉14とケーキ本体の最上層との間を調整することもできる。
【0032】
貯水チューブ30中の水40は、貯水チューブ30の上部開口付近まで収容すると、生花20のもちが長くなり、またケーキ本体10への加湿効果が高まり、好適である。水40のメニスカス(液面)はもっと低い位置でもよいが、水40の断熱効果(外気温等により水40が容易に蒸発しない効果)を発揮させるため、つなぎ4の存在する部分に水40の少なくとも一部が来るように液量を調整する。なお、ケーキ土台2に挟まれたつなぎ4が複数ある多層ケーキにおいては、つなぎ4の少なくとも一つの部分に水40が来るように液量を調整する。また、上述したように、ケーキ土台2の間をつなぎ4で完全に充填させて、ケーキ土台2の間に隙間を作らないようにするよりも、敢えて隙間を形成させ、その部分に貯水チューブ30を露出することで、貯水チューブ30中の水の揮発の度合いが適度になり、生花20の持ちとのケーキ本体10の乾燥防止とのバランスが取れるようになる。
【0033】
図4は、
図3のAで示す部分の拡大図である。
図4において、破線aで示されるように、貯水チューブ30中の水40が、貯水チューブ30の開口から蒸発するときに、生花20の花弁12、葉14又は花柄16で、直接大気中に逃げて行くことが妨げられ、生花20とケーキ本体10の間の空間でとどまることから、貯水チューブ30の液量(水40の量)の減少が緩やかになり、生花20が長持ちするのみならず、ケーキ本体10の上面(
図4においてはつなぎ4)の保湿が図られる。
【0034】
また、破線bで示されるように、ケーキ本体10の上面(
図4においてはつなぎ4)からの揮発する水分も、生花20とケーキ本体10の間の空間でとどまることから、ケーキ本体10の保湿が可能となる。さらに、デコレーション用に、生花20を使用していることから、破線cに示されるように、生花20から蒸散する水蒸気が直ちに空気中に放出されず、ケーキ本体10の保湿効果が高まる。なお、貯水チューブ30の液量の減少が緩やかであることから、ケーキ本体10には長期間、上述した効果が生じることになる。
【0035】
図5は、デコレーションケーキ100に用いることのできる貯水チューブ30の斜視図である。
図5に示す貯水チューブ30は、開口から先端方向に向けて、先細りとなるテーパー形状を有している。なお、
図5に示す形状のものはスピッツ管と呼ばれる場合もある。貯水チューブは、
図5に示す形状に限られず、先細りのない円筒形状のものであってもよい。また、開口において、生花20を支持し、貯水チューブ30からの水40の揮発を防止する蓋を取り付けてもよい。なお、蓋には花柄16等を通すために開口が形成されるが、開口のサイズを花柄16等の径とほぼ同じにしてしまうと、
図4に示すような水の蒸発に伴うケーキ本体10の加湿が効率的でなくなることから、蓋の開口のサイズは、花柄16等が挿入された状態でも隙間が生じるようなサイズであることが好ましい。なお、蓋の代わりにアルミホイル等で覆うようにしてもよいが、この場合においても所定の隙間が生じるように被覆することが好ましい。
【0036】
貯水チューブ30は断熱効果の高さと軽さの点から樹脂からなるものが好ましいが、その他の素材(例えばガラス)で構成されているものであってもよい。樹脂としては、食品に対する影響が少ない、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合等のポリオレフィンが好適である。
【0037】
貯水チューブ30は、着脱可能にケーキ本体10に刺し込むことが好ましい。また、貯水チューブ30に収容される生花20は、貯水チューブ30の脱着後に、生花20によるフラワーアレンジメントを作成可能なサイズの花柄、花軸、花茎、花枝又は幹を有していることが好ましい。このような構成にすることにより、デコレーションケーキ100を食に供した後、又は食に供する前に、貯水チューブ30ごと生花20をケーキ本体10から取り除くことができ、生花20をフラワーアレンジメントなどに使用できる。なお、ケーキ本体10に貯水チューブ30を残したまま、生花20を引き抜いてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、ケーキ本体10が2つのケーキ土台2から成っているが、ケーキ土台2の数を3又はそれ以上とし、それぞれのケーキ土台2の間につなぎ4を配置することもできる。なお最上層のケーキ土台2の上にはつなぎ4を配してもよい。ケーキ土台2の厚さや種類、つなぎ4の厚さや種類は、同一のケーキ本体10において、それぞれ異なっていてもよく、同一であってもよい。ケーキ土台2及びつなぎ4の厚さは、例えば1~5cmにすることができるが、素材の種類や用途に従って、つなぎ4の厚さは、例えばケーキ土台2の厚さの50%~500%にデザインすることできる。つなぎ4の厚さは、ケーキ土台2の厚さ以上であってもよく、その場合は、つなぎ4の厚さはケーキ土台2の厚さの100%~400%、又は150~300%、或いは200~300%とすることができる。
【0039】
ケーキ本体10は、平面視において
図1~2に示すのとは異なる文字形状にしてもよく、その場合、一文字又は複数文字が連結した、アルファベット、平仮名、片仮名又は漢字の形状にすることが可能である。なお、アルファベットには、英文字のみならず、英文字以外の言語のもの、例えば、フランス語アルファベット、イタリア語アルファベット、スペイン語アルファベット、ポルトガル語アルファベット、ロシア語アルファベット、ギリシア語アルファベット、ハングルなども含まれる。
【0040】
デコレーションケーキは、贈答用に用いられることが多いため、例えば、デコレーションケーキ自体の形状を、贈り先の名前やイニシャルにしたり、デコレーションケーキ自体の形状を連結した文字形状として短文のメッセージにすることも可能となる。例えば、IとハートとUの形状を連結させて、ケーキ形状自体をメッセージにすることができる。
【0041】
デコレーションケーキが文字形状を有する場合、通常の円筒状の場合に比べて、断面が増加し、ケーキ本体から容易に水分が抜けて長期間の保管に適さなくなるが、本発明においては上記のような構成を有するため、ケーキ本体の保湿性が高まり、文字形状を有している場合であっても長期間ケーキ及び生花を楽しむことができる。
【0042】
また、生花20は、平面視においてケーキ本体10の上面の略全面を覆っていることが好ましい。なお、略全面とは、ケーキ本体の形状にも依存するが、例えば、平面視において、ケーキ本体の80%以上、好ましくは90%以上の上面が覆われた状態に該当する。この被覆の割合は、例えば上面からの画像を撮影し、生花20の部分とそれ以外の部分との面積を、画像処理等により算出して求めることができる。
【0043】
水40は、例えば、水は、ローズウォーター、ハーブウォーター、ミネラルウォーター、タップウオータ(水道水)及び蒸留水から選ぶことができる。これらの水は飲用水であることからケーキの食の安全が図られる。また、ローズウォーターやハーブウォーターを含有させることで、その香りを楽しむことができ、デコレーションケーキが更に美味しく感じられる。
【0044】
また、つなぎ4は、ホイップクリーム、バタークリーム、カスタードクリーム、チョコレートムース、チーズクリーム、ガナッシュ等とすることができ、ケーキ土台2としては、スポンジケーキ、ビスケット、フィユタージュ、タルト台、ムース、クッキーを用いることができる。
【0045】
なお、つなぎ4が生クリームを含む場合、少なくともその一部、好ましくはその全てをココナツミルクで置換することが好ましい。また、ケーキ土台2がバターを含む場合、少なくともその一部、好ましくはその全てをごま油で置換することが好ましい。このような構成にすることで、生花20の持ち及びケーキ本体10の乾燥防止、という効果が顕著になる。
【0046】
デコレーションケーキの形状としては、スポンジケーキとホイップクリームで層状にした、いわゆる日本式ショートケーキ(レイヤーケーキ)形状や、ビスケットと各種クリームで層状にした、いわゆるアメリカ式ショートケーキ(レイヤーケーキ)形状、フランス式のフレジエの形状、フィユタージュ等を用いたミルフィーユの形状等にすることが可能である。
【0047】
なお、つなぎ4は、上記の成分のみならず、ナッツ、チョコレートチップ、プラリネ、カカオニブ、パールシュガー、フルーツピール、ドライフルーツ等を含んでいてもよい。
【0048】
ケーキ本体10の上面や側面には、フルーツ、菓子、キャンドル、メッセージプレート等を更に配することにより、デコレーション性を高め、ギフト用としての価値を高めることができる。
【実施例0049】
上面から見たときにアルファベットのHの形状であるスポンジ2つ(「ケーキ土台」に相当し、厚さは2cm。バターを含有する。)と、つなぎとなるクリーム(生クリーム含有)を準備した。一方のスポンジの上に、丸口金を使用して半球状~球状に次々とクリームを押出し、他のスポンジと積層した。積層後は押し出されたクリームは表面の曲面同志が接触していた。同様の形状になるように、上層のスポンジ上にもクリームを塗った。これによりクリーム部分の厚さが2cmのH形状のケーキ本体を作成した。ケーキ本体は、下層から上層に向けて、スポンジ/クリーム/スポンジ/クリームの構造を有しており、全体の厚みは8cmであった。そして、内径18mm長さ7cmのポリプロピレン製貯水チューブ(
図5に示すような形状のもの)を8本、ケーキ本体に差し込んだ。この際、貯水チューブは、上層のスポンジ(ケーキ土台)を貫通し、下層のスポンジ(ケーキ土台)の中ほどで止まるように挿入した。その後、バラの花の花柄を3cmの長さになるように水切りし、ローズウォーターを開口付近まで満たした貯水チューブの中に挿入した。以上により、
図1~3に示すような形状のデコレーションケーキを得た。
【0050】
上記デコレーションケーキにおいて、水の水位は、クリームの層(つなぎ部分)より上位にあった。また、上面から見てケーキ本体の80%以上はバラの花で覆われており、ケーキ本体とバラの花の花柄の下部との間の隙間は1~2mm程度であった。