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特開2022-54373抗菌性・抗ウイルス性の光触媒を製造する方法及び抗菌性・抗ウイルス性の光触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054373
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】抗菌性・抗ウイルス性の光触媒を製造する方法及び抗菌性・抗ウイルス性の光触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20220330BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220330BHJP
   B01J 29/72 20060101ALI20220330BHJP
   B01J 29/50 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J37/08
B01J29/72 A
B01J29/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020172846
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】520399268
【氏名又は名称】フォトジェン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(72)【発明者】
【氏名】神保 裕世
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA06A
4G169BA06B
4G169BA48A
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169FA01
4G169FA03
4G169FB07
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC07
4G169HA02
4G169HB02
4G169HC02
4G169HD10
4G169HE07
(57)【要約】
【課題】可視光照射環境においても抗菌・抗ウイルス効果に優れた光触媒を提供する。
【解決手段】本発明はTiO2粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成る抗菌性・抗ウイルス性の光触媒である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiO2粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して抗菌性・抗ウイルス性の光触媒を製造する方法。
【請求項2】
TiO2に対して0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、前記溶解液とTiO2粉末の水懸濁液とを混合した後に乾燥して得た混合乾燥粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して第2の混合粉末を得、前記第2の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して抗菌性・抗ウイルス性の光触媒を製造する方法。
【請求項3】
TiO2に対して0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、前記溶解液とTiO2粉末の水懸濁液とを混合した後に乾燥して得た混合乾燥粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.5~2wt%のCu若しくはAgの粉末と混合して第3の混合粉末を得、前記第3の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して抗菌性・抗ウイルス性の光触媒を製造する方法。
【請求項4】
TiO2粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成る抗菌性・抗ウイルス性の光触媒。
【請求項5】
TiO2に対して0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、前記溶解液とTiO2粉末の水懸濁液とを混合した後に乾燥して得た混合乾燥粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して第2の混合粉末を得、前記第2の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成る抗菌性・抗ウイルス性の光触媒。
【請求項6】
TiO2に対して0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、前記溶解液とTiO2粉末の水懸濁液とを混合した後に乾燥して得た混合乾燥粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.5~2wt%のCu若しくはAgの粉末と混合して第3の混合粉末を得、前記第3の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成る抗菌性・抗ウイルス性の光触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性・抗ウイルス性の光触媒の製造方法に関する。また、本発明は抗菌性・抗ウイルス性の光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナ・ウイルス感染防止を目的として、光触媒による抗菌・抗ウイルスについての研究開発が活発に行われている。光触媒の抗菌・抗ウイルス効果は永続的である点で魅力がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紫外光照射によって従来の光触媒の抗菌・抗ウイルス効果は発揮されるものの可視光照射によっては従来の光触媒の抗菌・抗ウイルス効果は十分でなかった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、可視光照射環境においても抗菌・抗ウイルス効果に優れた新らたな光触媒を開発し提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1に記載の抗菌性・抗ウイルス性の光触媒の製造方法、すなわち、TiO2粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して抗菌性・抗ウイルス性の光触媒を製造する方法によって、達成される。
【0006】
上記目的は、請求項2に記載の抗菌性・抗ウイルス性の光触媒の製造方法、すなわち、TiO2に対して0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、前記溶解液とTiO2粉末の水懸濁液とを混合した後に乾燥して得た混合乾燥粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して第2の混合粉末を得、前記第2の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して抗菌性・抗ウイルス性の光触媒を製造する方法によっても、達成される。
【0007】
上記目的は、請求項3に記載の抗菌性・抗ウイルス性の光触媒の製造方法、すなわち、TiO2に対して0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、前記溶解液とTiO2粉末の水懸濁液とを混合した後に乾燥して得た混合乾燥粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.5~2wt%のCu若しくはAgの粉末と混合して第3の混合粉末を得、前記第3の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して抗菌性・抗ウイルス性の光触媒を製造する方法によっても、達成される。
【0008】
また、上記目的は、請求項4に記載の抗菌性・抗ウイルス性の光触媒、すなわち、TiO2粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成る抗菌性・抗ウイルス性の光触媒によっても、達成される。
【0009】
上記目的は、請求項5に記載の抗菌性・抗ウイルス性の光触媒、すなわち、TiO2に対して0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、前記溶解液とTiO2粉末の水懸濁液とを混合した後に乾燥して得た混合乾燥粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末とを均一に混合して第2の混合粉末を得、前記第2の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成る抗菌性・抗ウイルス性の光触媒によっても、達成される。
【0010】
上記目的は、請求項6に記載の抗菌性・抗ウイルス性の光触媒、すなわち、TiO2に対して0.1~5wt%のCu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、前記溶解液とTiO2粉末の水懸濁液とを混合した後に乾燥して得た混合乾燥粉末と0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と0.5~2wt%のCu若しくはAgの粉末と混合して第3の混合粉末を得、前記第3の混合粉末をるつぼ内に収納し、前記るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成る抗菌性・抗ウイルス性の光触媒によっても、達成される。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明の抗菌性・抗ウイルス性の光触媒によれば、可視光照射環境においても抗菌・抗ウイルス特性が優れていることを本発明者は見出した。
【0012】
(2)Cu及び/又はAgを光触媒に担持することによって、可視光も紫外光もない環境である「暗所」においても抗菌・抗ウイルス効果が得られることを本発明者は見出した。
【0013】
(3)従来の光触媒については、光照射を開始してから抗菌・抗ウイルス効果が現れるまでに時間を要し、抗菌・抗ウイルス特性は経過時間に対して2段階の抗菌・抗ウイルス速度を示している。すなわち、光照射開始から所定時間経過するまでは抗菌・抗ウイルス速度がゼロに近く、その後は抗菌・抗ウイルス速度が高まる。
他方、本発明の光触媒はCu及び/又はAgを光触媒に担持することによって、抗菌・抗ウイルス速度が初期から高く、ほぼ同程度の抗菌・抗ウイルス速度が得られることを本発明者は見出した。
【0014】
(4)Cu及び/又はAgをTiO2の表面に担持することによって、電荷分離による高活性化、光触媒効率向上及び励起電子の蓄積補償を可能にしている。
【0015】
(5)還元金属を用いて結晶構造を保持したまま光触媒に酸素欠陥を導入することによって、TiO2のバンドギャップ(禁制帯幅)の中間に酸素欠陥準位が形成されるため、可視光照射による酸化・還元反応が生じやすくなり、また、可視光の吸収が増加するとともにTiO2結晶の表面積が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】 真空加熱装置の概略図である。
図2】 加熱パターンを示すグラフである。
図3】 抗菌・抗ウイルス性能評価方法のフローチャートである。
図4】 実施例の可視光光触媒について大腸菌の抗菌・抗ウイルス性能評価を示す写真である。
図5】 実施例の可視光光触媒について大腸菌の抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
図6】 実施例の可視光光触媒についてバクテリオファージの抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
図7】 実施例の可視光光触媒についてインフルエンザ・ウイルスの抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
図8】 比較例の紫外光光触媒について大腸菌の抗菌・抗ウイルス性能評価を示す写真である。
図9】 比較例の紫外光光触媒について大腸菌の抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
図10】 比較例の紫外光光触媒についてバクテリオファージの抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
図11】 比較例の紫外光光触媒についてインフルエンザ・ウイルスの抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。
【0018】
(A)硝酸銅溶液によってTiO2粉末に酸化銅を担持した後に、還元金属MgによってTiO2へ酸素欠陥を導入した抗菌性・抗ウイルス性の光触媒粉末についての実施例
【実施例0019】
試料粉末の作製
TiO2原料粉末は石原産業(株)製のアナターゼ型であり、純度は85%以上であり、1次粒径は7nmである。
【0020】
Mg原料粉末は、関東金属製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は100μmである。
【0021】
まず、25~30%硝酸溶液に担持金属であるCuを0.6g溶解した硝酸銅溶液を作製し、TiO2原料粉末80.0gを水で懸濁させた水懸濁液と前記硝酸銅溶液とを混合して撹拌する。次に、この混合溶液を170℃以上の温度で乾燥して得た混合乾燥粉末とMg原料粉末0.4gを容器内に秤量して、振とうしたところ、混合乾燥粉末とMg原料粉末が均一に混合された第2の混合粉末が得られた。
【0022】
図1は試料粉末作製に使用した製造装置の概略図である。黒鉛るつぼ1は内径φ70mm×高さ125mmであり、上面の中央にガス抜き穴11が設けられている。第2の混合粉末2を黒鉛るつぼ1内に収納した後に、高周波加熱装置4を備えた真空加熱炉3内に水平に配置した。
【0023】
そして、第2の混合粉末2が飛散しないように注意しながら、配管5を通じて真空ポンプ6を用いて真空加熱炉3内を8Paまで真空排気した。
【0024】
8Paまで真空排気した直後に、図2に示す熱処理パターンのように、室温(Tr)~500℃(Tmax)まで1時間(0~t1)かけて昇温し、500℃(Tmax)で3時間(t1~t2)保持し、その後、加熱電源をOFFにして、自然冷却した。昇温、保持、冷却の間も真空ポンプ6を用いて真空排気を続けた。
【0025】
十分に冷却した後、真空ポンプ6を停止し、大気圧に戻し、黒鉛るつぼ1を取り出し、試料粉末を得た。
【0026】
得られた試料粉末を目視観察したところ、多少黄緑系に色づいた一様の微粉末であった。
【0027】
得られた試料粉末の可視光特性は非常に高いが、紫外光特性は中位であった。
【実施例0028】
試料粉末の作製
TiO2原料粉末は石原産業(株)製のアナターゼ型であり、純度は85%以上であり、1次粒径は7nmである。
【0029】
Mg原料粉末は、関東金属製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は100μmである。
Cu原料粉末は、高純度化学製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は5μmである。
【0030】
まず、25~30%硝酸溶液に担持金属であるCuを0.6g溶解した硝酸銅溶液を作製し、TiO2原料粉末80.0gを水で懸濁させた水懸濁液と前記硝酸銅溶液とを混合して撹拌する。次に、この混合溶液を170℃以上の温度で乾燥して得た混合乾燥粉末とMg原料粉末0.4gとCu原料粉末0.8gとを容器内に秤量して、振とうしたところ、混合乾燥粉末とMg原料粉末とCu原料粉末とが均一に混合された第3の混合粉末が得られた。
【0031】
図1は試料粉末作製に使用した製造装置の概略図である。黒鉛るつぼ1は内径φ70mm×高さ125mmであり、上面の中央にガス抜き穴11が設けられている。第3の混合粉末2を黒鉛るつぼ1内に収納した後に、高周波加熱装置4を備えた真空加熱炉3内に水平に配置した。
【0032】
そして、第3の混合粉末2が飛散しないように注意しながら、配管5を通じて真空ポンプ6を用いて真空加熱炉3内を8Paまで真空排気した。
【0033】
8Paまで真空排気した直後に、図2に示す熱処理パターンのように、室温(Tr)~500℃(Tmax)まで1時間(0~t1)かけて昇温し、500℃(Tmax)で3時間(t1~t2)保持し、その後、加熱電源をOFFにして、自然冷却した。昇温、保持、冷却の間も真空ポンプ6を用いて真空排気を続けた。
【0034】
十分に冷却した後、真空ポンプ6を停止し、大気圧に戻し、黒鉛るつぼ1を取り出し、実施例1-2の試料粉末を得た。
【0035】
得られた実施例1-2の試料粉末を目視観察したところ、多少黒点の見られる黄緑系に色づいた一様の微粉末であった。
【0036】
得られた試料粉末の可視光特性は非常に高く、紫外光特性も高かった。
【0037】
(B)硝酸銀溶液によってTiO2粉末に銀を担持した後に、還元金属MgによってTiO2へ酸素欠陥を導入した抗菌性・抗ウイルス性の光触媒粉末についての実施例
【実施例0038】
試料粉末の作製
TiO2原料粉末は石原産業(株)製のアナターゼ型であり、純度は85%以上であり、1次粒径は7nmである。
【0039】
Mg原料粉末は、関東金属製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は100μmである。
【0040】
まず、25~30%硝酸溶液に担持金属であるAgを0.8g溶解した硝酸銀溶液を作製し、TiO2原料粉末80.0gを水で懸濁させた水懸濁液と前記硝酸銀溶液とを混合して撹拌する。次に、この混合溶液を440℃以上の温度で乾燥して得た混合乾燥粉末とMg原料粉末0.4gを容器内に秤量して、振とうしたところ、混合乾燥粉末とMg原料粉末が均一に混合された第2の混合粉末が得られた。
【0041】
図1は試料粉末作製に使用した製造装置の概略図である。黒鉛るつぼ1は内径φ70mm×高さ125mmであり、上面の中央にガス抜き穴11が設けられている。第2の混合粉末2を黒鉛るつぼ1内に収納した後に、高周波加熱装置4を備えた真空加熱炉3内に水平に配置した。
【0042】
そして、第2の混合粉末2が飛散しないように注意しながら、配管5を通じて真空ポンプ6を用いて真空加熱炉3内を8Paまで真空排気した。
【0043】
8Paまで真空排気した直後に、図2に示す熱処理パターンのように、室温(Tr)~400℃(Tmax)まで1時間(0~t1)かけて昇温し、400℃(Tmax)で3時間(t1~t2)保持し、その後、加熱電源をOFFにして、自然冷却した。昇温、保持、冷却の間も真空ポンプ6を用いて真空排気を続けた。
【0044】
十分に冷却した後、真空ポンプ6を停止し、大気圧に戻し、黒鉛るつぼ1を取り出し、試料粉末を得た。
【0045】
得られた試料粉末を目視観察したところ、多少鼠色系に色づいた一様の微粉末であった。
【0046】
得られた試料粉末の可視光特性は高いが、紫外光特性は中位であった。
【実施例0047】
試料粉末の作製
TiO2原料粉末は石原産業(株)製のアナターゼ型であり、純度は85%以上であり、1次粒径は7nmである。
【0048】
Mg原料粉末は、関東金属製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は100μmである。
Ag原料粉末は、高純度化学製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は1μmである。
【0049】
まず、25~30%硝酸溶液に担持金属であるAgを0.8g溶解した硝酸銀溶液を作製し、TiO2原料粉末80.0gを水で懸濁させた水懸濁液と前記硝酸銀溶液とを混合して撹拌する。次に、この混合溶液を440℃以上の温度で乾燥して得た混合乾燥粉末とMg原料粉末0.4gとAg原料粉末0.8gとを容器内に秤量して、振とうしたところ、混合乾燥粉末とMg原料粉末とAg原料粉末とが均一に混合された第3の混合粉末が得られた。
【0050】
図1は試料粉末作製に使用した製造装置の概略図である。黒鉛るつぼ1は内径φ70mm×高さ125mmであり、上面の中央にガス抜き穴11が設けられている。第3の混合粉末2を黒鉛るつぼ1内に収納した後に、高周波加熱装置4を備えた真空加熱炉3内に水平に配置した。
【0051】
そして、第3の混合粉末2が飛散しないように注意しながら、配管5を通じて真空ポンプ6を用いて真空加熱炉3内を8Paまで真空排気した。
【0052】
8Paまで真空排気した直後に、図2に示す熱処理パターンのように、室温(Tr)~400℃(Tmax)まで1時間(0~t1)かけて昇温し、400℃(Tmax)で3時間(t1~t2)保持し、その後、加熱電源をOFFにして、自然冷却した。昇温、保持、冷却の間も真空ポンプ6を用いて真空排気を続けた。
【0053】
十分に冷却した後、真空ポンプ6を停止し、大気圧に戻し、黒鉛るつぼ1を取り出し、実施例2-2の試料粉末を得た。
【0054】
得られた実施例2-2の試料粉末を目視観察したところ、多少黒点の見られる鼠色系に色づいた一様の微粉末であった。
【0055】
得られた試料粉末の可視光特性は高く、紫外光特性も高かった。
【0056】
(C)可視光光触媒による抗菌・抗ウイルス性能評価方法
実施例1、1-2、2、2-2の可視光光触媒による抗菌・抗ウイルス性能評価はJIS R 1752に準拠して行った。
【0057】
図3を参照して、実施例1、1-2、2、2-2の可視光光触媒による抗菌・抗ウイルス性能評価に用いた抗菌・抗ウイルス性能評価方法の概要について説明する。
【0058】
ステップ1においては、光触媒試料(サンプル)に菌液を接種する。菌液の例としては、大腸菌、バクテリオファージ、インフルエンザ・ウイルスが挙げられる。
【0059】
ステップ2においては、スピンコートによって菌液を接種した光触媒懸濁液40mgをフィルムの片面上に一定面積4cm×4cmで塗布する。
【0060】
ステップ3においては、可視光光触媒評価用光源として、蛍光灯3000lx(380nm以下をカット)を用い、所定時間照射する。
【0061】
ステップ4においては、所定時間光照射した菌液を接種した光触媒懸濁液を採取し、光触媒を除去して菌液を回収する。
【0062】
ステップ5において、培養地に回収した菌液を培養して、生残している菌を計測する。
【0063】
(D)可視光光触媒による抗菌・抗ウイルス性能評価結果
培養地に生残している大腸菌の写真
図4は実施例1の可視光光触媒について大腸菌の抗菌・抗ウイルス性能評価を示す写真である。
菌液として大腸菌を用い、実施例1の無加工品(大腸菌を培養したままの初期の試験サンプル)は培養地に多数の大腸菌が生残している(左の写真)が、実施例1の明所(可視光照射あり)かつ可視光光触媒存在下で培養地に生残している大腸菌はほとんど認められない(右の写真)ことがわかる。
【0064】
抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフ
図5は、実施例1の可視光光触媒について大腸菌の抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
【0065】
実施例1の可視光光触媒が無く、かつ光が無い、暗所では、大腸菌は増殖し、その数は0hrで210,000個、8hrで164,000個、16hrで780,000個、24hrで1,500,000個と増えている。
【0066】
実施例1の可視光光触媒が無く、かつ光が有る、明所でも、大腸菌は増殖し、その数は0hrで210,000個、8hrで184,000個、16hrで1,500,000個、24hrで3,400,000個と増えている。
【0067】
他方、実施例1の可視光光触媒が有り、かつ光が無い、暗所では、大腸菌は増殖せず、その数は0hrで210,000個、8hrで200,000個、16hrで150,000個、24hrで120,000個と多少減少している。実施例1の可視光光触媒によって大腸菌が多少死滅していると考えられるが、実施例1の可視光光触媒に担持されているCuが抗菌金属であるため大腸菌が多少死滅したものと考えられる。
【0068】
実施例1の可視光光触媒が有り、かつ光が有る、明所では、大腸菌の数は0hrで210,000個、8hrで81,000個、16hrで34,800個、24hrで10個と約16時間経過すると大腸菌が急激に死滅して24時間経過するとほぼゼロになっている。
【0069】
実施例1の可視光光触媒においては、抗菌金属であるCuを担持しているため、光の無い、暗所においても抗菌・抗ウイルス効果が現れていることがわかる。
【0070】
実施例1の可視光光触媒においては、経過時間が短い時期から抗菌・抗ウイルス効果が得られることがわかる。
【0071】
図6は実施例1の可視光光触媒についてバクテリオファージの抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
【0072】
実施例1の可視光光触媒が無く、かつ光が無い、暗所では、バクテリオファージは増殖し、その数は0hrで1,900,000個、8hrで2,600,000個と増えている。
【0073】
実施例1の可視光光触媒が無く、かつ光が有る、明所でも、バクテリオファージは増殖し、その数は0hrで1,900,000個、8hrで2,100,000個と増えている。
【0074】
他方、実施例1の可視光光触媒が有り、かつ光が無い、暗所では、バクテリオファージは増殖せず、その数は0hrで1,900,000個、8hrで550,000個と減少している。
【0075】
実施例1の可視光光触媒が有り、かつ光が有る、明所では、バクテリオファージは増殖せず、その数は0hrで1,900,000個、8hrで9,200個と減少している。
【0076】
図7は実施例1の可視光光触媒についてインフルエンザ・ウイルスの抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
【0077】
実施例1の可視光光触媒が無く、かつ光が無い、暗所では、インフルエンザ・ウイルスは減少し、その数は0hrで4200000個、8hrで1,600,000個と減っている。
【0078】
実施例1の可視光光触媒が無く、かつ光が有る、明所でも、インフルエンザ・ウイルスは減少し、その数は0hrで4,200,000個、8hrで170,000個と減っている。
【0079】
他方、実施例1の可視光光触媒が有り、かつ光が無い、暗所では、インフルエンザ・ウイルスは大幅に減少し、その数は0hrで4,200,000個、8hrで6,000個と減少している。
【0080】
実施例1の可視光光触媒が有り、かつ光が有る、明所では、インフルエンザ・ウイルスはほとんどすべて死滅し、その数は0hrで4,200,000個、8hrで10個と大幅に減少している。
【0081】
(E)紫外光光触媒粉末についての比較例
【0082】
<比較例1>
試料粉末の作製
TiO2原料粉末は石原産業(株)製のアナターゼ型であり、純度は85%以上であり、1次粒径は7nmである。
【0083】
Mg原料粉末は、関東金属製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は100μmである。
【0084】
Cu原料粉末は、高純度化学製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は5μmである。
【0085】
TiO2原料粉末80.0gとMg原料粉末0.8gとCu原料粉末0.8gを容器内に秤量して、振とうしたところ、TiO2原料粉末とMg原料粉末とCu原料粉末が均一に混合された第1の混合粉末を得た。
【0086】
図1は試料粉末作製に使用した製造装置の概略図である。黒鉛るつぼ1は内径φ70mm×高さ125mmであり、上面の中央にガス抜き穴11が設けられている。第1の混合粉末を黒鉛るつぼ1内に収納した後に、高周波加熱装置4を備えた真空加熱炉3内に水平に配置した。
【0087】
そして、第1の混合粉末2が飛散しないように注意しながら、配管5を通じて真空ポンプ6を用いて真空加熱炉3内を8Paまで真空排気した。
【0088】
8Paまで真空排気した直後に、図2に示す熱処理パターンのように、室温(Tr)~475℃(Tmax)まで1時間(0~t1)かけて昇温し、475℃(Tmax)で3時間(t1~t2)保持し、その後、加熱電源をOFFにして、自然冷却した。昇温、保持、冷却の間も真空ポンプ6を用いて真空排気を続けた。
【0089】
十分に冷却した後、真空ポンプ6を停止し大気圧に戻し、黒鉛るつぼ1を取り出し、試料粉末を得た。
【0090】
得られた試料粉末を目視観察したところ、全体的に少し鼠色系に色づいている一様の微粉末であった。
【0091】
得られた試料粉末の紫外光特性は非常に高いが、可視光特性は劣っていた。
【0092】
(F)紫外光触媒による抗菌・抗ウイルス性能評価方法
比較例1の紫外光触媒による抗菌・抗ウイルス性能評価はJIS R 1702に準拠して行った。
【0093】
図3を参照して、比較例1の紫外光触媒による抗菌・抗ウイルス性能評価に用いた抗菌・抗ウイルス性能評価方法の概要について説明する。
【0094】
ステップ1においては、光触媒試料(サンプル)に菌液を接種する。菌液の例としては、大腸菌、バクテリオファージ、インフルエンザ・ウイルスが挙げられる。
【0095】
ステップ2においては、スピンコートによって菌液を接種した光触媒懸濁液40mgをフィルムの片面上に一定面積4cm×4cmで塗布する。
【0096】
ステップ3においては、紫外光触媒評価用光源として、ブラックライト0.25mW/cm2を用い、所定時間照射する。
【0097】
ステップ4においては、所定時間光照射した菌液を接種した光触媒懸濁液を採取し、光触媒を除去して菌液を回収する。
【0098】
ステップ5において、培養地に回収した菌液を培養して、生残している菌を計測する。
【0099】
(G)紫外光触媒による抗菌・抗ウイルス性能評価結果
培養地に生残している大腸菌の写真
図8は比較例1の紫外光光触媒について大腸菌の抗菌・抗ウイルス性能評価を示す写真である。
菌液として大腸菌を用い、比較例1の無加工品(大腸菌を培養したままの初期の試験サンプル)は培養地に多数の大腸菌が生残している(左の写真)が、比較例1の明所(紫外線照射あり)かつ紫外光光触媒存在下で培養地に生残している大腸菌はほとんど認められない(右の写真)ことがわかる。
【0100】
抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフ
図9は、比較例1の紫外光光触媒について大腸菌の抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
【0101】
比較例1の紫外光光触媒が無く、かつ光が無い、暗所では、大腸菌は増殖し、その数は0hrで230,000個、8hrで240,000個と増えている。
【0102】
比較例1の紫外光光触媒が無く、かつ光が有る、明所でも、大腸菌はわずかに減少し、その数は0hrで230,000個、8hrで220,000個と減っている。
【0103】
他方、比較例1の紫外光光触媒が有り、かつ光が無い、暗所では、大腸菌は増殖せず、その数は0hrで230,000個、8hrで170,000個と減少している。
【0104】
比較例1の紫外光光触媒が有り、かつ光が有る、明所では、大腸菌の数は0hrで230,000個、8hrで10個大腸菌が急激に死滅して8時間経過するとほぼゼロになっている。
【0105】
図10は比較例1の紫外光光触媒についてバクテリオファージの抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
【0106】
比較例1の紫外光光触媒が無く、かつ光が無い、暗所では、バクテリオファージは増殖し、その数は0hrで2,200,000個、4hrで2,200,000個とほぼ横ばいである。
【0107】
比較例1の紫外光光触媒が無く、かつ光が有る、明所でも、バクテリオファージは減少し、その数は0hrで2,200,000個、4hrで280,000個と減っている。
【0108】
他方、比較例1の紫外光光触媒が有り、かつ光が無い、暗所では、バクテリオファージはほぼ横ばいであり、その数は0hrで2,200,000個、4hrで2,400,000個とほとんど変化がない。
【0109】
比較例1の紫外光光触媒が有り、かつ光が有る、明所では、バクテリオファージは増殖せず、その数は0hrで2,200,000個、4hrで10個とほとんどすべてが死滅している。
【0110】
図11は比較例1の紫外光光触媒についてインフルエンザ・ウイルスの抗菌・抗ウイルス性能評価を示すグラフである。
【0111】
比較例1の紫外光光触媒が無く、かつ光が無い、暗所では、インフルエンザ・ウイルスは減少し、その数は0hrで14,000,000個、4hrで7,000,000個と減っている。
【0112】
比較例1の紫外光光触媒が無く、かつ光が有る、明所でも、インフルエンザ・ウイルスは減少し、その数は0hrで14,000,000個、4hrで350,000個と減っている。
【0113】
他方、比較例1の紫外光光触媒が有り、かつ光が無い、暗所では、インフルエンザ・ウイルスは減少し、その数は0hrで14,000,000個、4hrで2,000,000個と減少している。
【0114】
比較例1の紫外光光触媒が有り、かつ光が有る、明所では、インフルエンザ・ウイルスはほとんどすべて死滅し、その数は0hrで14,000,000個、4hrで10個と大幅に減少している。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係る抗菌・抗ウイルス性の光触媒を粒子表面が現れるように塗料や樹脂に練りこみ、公共建物の内壁、天井、例えば地下鉄道の駅建物の内壁、天井や鉄道の駅建物の内壁、天井や、飛行場建物の内壁、天井、地下街の内壁、天井、に塗布することによって、長時間にわたり、ほぼ一定の高い抗菌・抗ウイルス効果が得られる。これによって、菌類やバクテリオファージあるいはウイルスによる感染拡大の防止に寄与することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 黒鉛るつぼ
2 混合粉末
3 真空加熱炉
4 高周波加熱装置
5 配管
6 真空ポンプ
11 ガス抜き穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11