(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054426
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】プリント配線基板の表面処理方法、およびプリント配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
H05K3/34 503A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141054
(22)【出願日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2020161091
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 泰貴
(72)【発明者】
【氏名】中波 一貴
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA08
5E319AB05
5E319AC02
5E319BB05
5E319BB08
5E319CC33
5E319CD01
5E319CD02
5E319CD21
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】保護被膜の形成後にフラックス洗浄剤によりプリント配線基板を洗浄する場合においても、電極パッドの表面の色ムラを十分に抑制できるプリント配線基板の表面処理方法を提供すること。
【解決手段】本発明のプリント配線基板の表面処理方法は、水溶性プリフラックスを用いて、プリント配線基板の電極パッド上に保護被膜を形成する水溶性プリフラックス処理工程と、前記プリント配線基板の一方の面の電極パッド上にはんだバンプを形成するはんだバンプ形成工程と、前記プリント配線基板をフラックス洗浄剤にて洗浄するフラックス洗浄工程と、を備えるプリント配線基板の製造方法における表面処理方法である。前記水溶性プリフラックス処理工程の前には、前記プリント配線基板に対し、(A)アミン化合物を含有する前処理液を接触させる前処理工程を、さらに備えることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性プリフラックスを用いて、プリント配線基板の電極パッド上に保護被膜を形成する水溶性プリフラックス処理工程と、
前記プリント配線基板の一方の面の電極パッド上にソルダペーストを塗布し、リフロー処理を行ってはんだバンプを形成するはんだバンプ形成工程と、
前記プリント配線基板をフラックス洗浄剤にて洗浄するフラックス洗浄工程と、
を備えるプリント配線基板の製造方法におけるプリント配線基板の表面処理方法であって、
前記水溶性プリフラックス処理工程の前には、前記プリント配線基板に対し、(A)アミン化合物を含有する前処理液を接触させる前処理工程を、さらに備え、
前記水溶性プリフラックス処理工程では、下記一般式(1)で表される化合物を含有する水溶性プリフラックスを用い、かつ、
前記プリント配線基板の他方の面には、前記水溶性プリフラックス処理工程および前記フラックス洗浄工程の両方が施される、
プリント配線基板の表面処理方法。
【化1】
(一般式(1)中、XおよびYは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~7の直鎖または分岐鎖のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、ホルミル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも一つを表し、nは0~4の整数を表し、mは0~10の整数を表し、pは0~4の整数を表し、かつ、XおよびYのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子であり、該ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線基板の表面処理方法において、
前記(A)アミン化合物は、前記前処理液100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下の(A1)イミダゾール化合物、および、0.01質量%以上1質量%以下の(A2)アルカノールアミンを含有する、
プリント配線基板の表面処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプリント配線基板の表面処理方法において、
前記(A)アミン化合物は、前記前処理液100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下のベンゾイミダゾール類、および、0.01質量%以上1質量%以下の(A2)アルカノールアミンを含有する、
プリント配線基板の表面処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載のプリント配線基板の表面処理方法において、
前記(A)アミン化合物は、(A1)イミダゾール化合物、および(A2)アルカノールアミンの両方を含有する、
プリント配線基板の表面処理方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のプリント配線基板の表面処理方法が施される、プリント配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板の表面処理方法、およびプリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板は、例えば、半導体パッケージ用途のインターポーザ基板(場合により、半導体用基板ともいう)にも使用される。このインターポーザ基板の電極パッドには、通常、電極パッドの表面の酸化を防止するために、電極パッドの表面に金メッキ処理が施されている。しかしながら、金メッキ処理には貴金属を使用するためにコストが高くなるという問題がある。そこで、通常のプリント配線基板においては、金メッキ処理に代えて、水溶性プリフラックスにより配線の表面に保護被膜を形成する方法が採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インターポーザ基板において、金メッキ処理に代えて、特許文献1に記載のような水溶性プリフラックスにより電極パッドの表面に保護被膜を形成する場合、次のような問題がある。すなわち、半導体パッケージを作製する場合には、インターポーザ基板にチップを接着し、その後封止する。この場合、インターポーザ基板には、一方の面に、はんだバンプが形成され、このはんだバンプによりチップが接着される。チップが接着された後には、はんだバンプを形成した際に生じたフラックス残さをフラックス洗浄剤により除去する。このときに、インターポーザ基板の他方の面(電極パッドの表面の酸化を抑制したい面)に形成された保護被膜も、フラックス洗浄剤により除去されてしまう。このとき、保護被膜が不均一に溶解して、電極パッドの表面に色ムラが発生するという問題がある。
【0005】
本発明は、保護被膜の形成後にフラックス洗浄剤によりプリント配線基板を洗浄する場合においても、電極パッドの表面の色ムラを十分に抑制できるプリント配線基板の表面処理方法、並びに、プリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、水溶性プリフラックスを用いて、プリント配線基板の電極パッド上に保護被膜を形成する水溶性プリフラックス処理工程と、前記プリント配線基板の一方の面の電極パッド上にソルダペーストを塗布し、リフロー処理を行ってはんだバンプを形成するはんだバンプ形成工程と、前記プリント配線基板をフラックス洗浄剤にて洗浄するフラックス洗浄工程と、を備えるプリント配線基板の製造方法におけるプリント配線基板の表面処理方法であって、前記水溶性プリフラックス処理工程の前には、前記プリント配線基板に対し、(A)アミン化合物を含有する前処理液を接触させる前処理工程を、さらに備え、前記水溶性プリフラックス処理工程では、下記一般式(1)で表される化合物を含有する水溶性プリフラックスを用い、かつ、前記プリント配線基板の他方の面には、前記水溶性プリフラックス処理工程および前記フラックス洗浄工程の両方が施される、プリント配線基板の表面処理方法が提供される。
【0007】
【0008】
一般式(1)中、XおよびYは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~7の直鎖または分岐鎖のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、ホルミル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも一つを表し、nは0~4の整数を表し、mは0~10の整数を表し、pは0~4の整数を表し、かつ、XおよびYのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子であり、該ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0009】
本発明の一態様に係るプリント配線基板の表面処理方法においては、前記(A)アミン化合物は、前記前処理液100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下の(A1)イミダゾール化合物、および、0.01質量%以上1質量%以下の(A2)アルカノールアミンを含有することが好ましい。
本発明の一態様に係るプリント配線基板の表面処理方法においては、前記(A)アミン化合物は、前記前処理液100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下のベンゾイミダゾール類、および、0.01質量%以上1質量%以下の(A2)アルカノールアミンを含有することが好ましい。
本発明の一態様に係るプリント配線基板の表面処理方法においては、前記(A)アミン化合物は、(A1)イミダゾール化合物、および(A2)アルカノールアミンの両方を含有することが好ましい。
【0010】
本発明の一態様によれば、前記本発明の一態様に係るプリント配線基板の表面処理方法が施される、プリント配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保護被膜の形成後にフラックス洗浄剤によりプリント配線基板を洗浄する場合においても、電極パッドの表面の色ムラを十分に抑制できるプリント配線基板の表面処理方法、並びに、プリント配線基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のプリント配線基板(半導体パッケージ用)の製造方法を説明するための説明図である。
【
図2】フラックス洗浄後の電極パッドにおける色ムラの評価基準を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態のプリント配線基板の表面処理方法は、以下説明する前処理液をプリント配線基板に接触させる前処理工程と、以下説明する水溶性プリフラックスを用いて、プリント配線基板の電極パッド上に保護被膜を形成する水溶性プリフラックス処理工程と、プリント配線基板をフラックス洗浄剤にて洗浄するフラックス洗浄工程と、を備える方法である。
【0014】
[前処理液]
まず、本実施形態のプリント配線基板の表面処理方法に用いる前処理液について説明する。
前処理液は、(A)アミン化合物を含有するものである。なお、前処理液において、(A)成分、および、以下説明する成分以外の残部は水である。
【0015】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)アミン化合物としては、(A1)イミダゾール化合物、および(A2)アルカノールアミンなどが挙げられる。なお、色ムラの抑制の観点から、(A1)成分および(A2)成分の両方を含有することが好ましい。
【0016】
(A1)成分としては、イミダゾール類、およびベンゾイミダゾール類などが挙げられる。これらの中でも、色ムラの抑制の観点から、ベンゾイミダゾール類が好ましい。また、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
イミダゾール類としては、公知のイミダゾール類を適宜使用できる。イミダゾール類としては、2-フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、および2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、色ムラの抑制の観点から、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾールが好ましい。
ベンゾイミダゾール類としては、公知のベンゾイミダゾール類を適宜使用できる。ベンゾイミダゾール類としては、ベンゾイミダゾール、および2-ペンチル-1H-ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、色ムラの抑制の観点から、ベンゾイミダゾールが好ましい。
【0017】
(A1)成分の配合量としては、色ムラの更なる抑制の観点から、前処理液100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上0.3質量%以下であることが特に好ましい。また、被膜厚の観点からは、(A1)成分の配合量は、前処理液100質量%に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。すなわち、(A1)成分の配合量は、前処理液100質量%に対して、0.01質量%以上1.5質量%以下であればよい。
【0018】
(A2)成分としては、エタノールアミン、ヘプタミノール、プロパノールアミン、メタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、およびトリイソプロパノールアミンなどが挙げられる。これらの中でも、色ムラの抑制の観点から、トリイソプロパノールアミンが好ましい。また、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
(A2)成分の配合量としては、色ムラの更なる抑制の観点から、前処理液100質量%に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
[(B)成分]
本実施形態においては、(A)成分を水溶化させるという観点から、(B)有機溶剤を含有することが好ましい。
(B)成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびアセトンなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、イソプロパノールが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
(B)成分の配合量としては、溶解性の観点から、前処理液100質量%に対して、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
[(C)成分]
本実施形態においては、(A)成分を水溶化させるという観点から、(C)アンモニウム塩を含有することが好ましい。
(C)成分としては、酢酸アンモニウム、および塩化アンモニウムなどが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、酢酸アンモニウムが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
(C)成分の配合量としては、溶解性の観点から、前処理液100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
[他の成分]
本実施形態に用いる前処理液は、例えばpHを調整するために、さらに、pH調整剤を含有していてもよい。また、前処理液のpHは、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
pH調整剤としては、アンモニアなどが挙げられる。
【0025】
[水溶性プリフラックス]
次に、本発明のプリント配線基板の表面処理方法に用いる水溶性プリフラックスについて説明する。
【0026】
水溶性プリフラックスは、(X)下記一般式(1)で表される化合物を含有するものである。なお、水溶性プリフラックスにおいて、(X)成分、および、以下説明する成分以外の残部は水である。
【0027】
[(X)成分]
本実施形態に用いる(X)成分は、下記一般式(1)で表される化合物である。この(X)成分によれば、保護被膜の形成後にフラックス洗浄剤によりプリント配線基板を洗浄する場合においても、電極パッドの表面の酸化を十分に抑制できる。
【0028】
【0029】
一般式(1)において、XおよびYは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~7の直鎖または分岐鎖のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルバモイル基、ホルミル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基およびニトロ基からなる群から選択される少なくとも一つを表す。また、nは0~4の整数を表し、mは0~10の整数を表し、pは0~4の整数を表す。
そして、本実施形態においては、XおよびYのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子であり、このハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であることが必要である。XおよびYのうちにこれらのハロゲン原子が存在しない場合には、保護被膜のフラックス洗浄液に対する耐性が不十分となり、電極パッドの表面の酸化を抑制できない。また、電極パッドのはんだぬれ性の観点から、ハロゲン原子は、塩素原子であることがより好ましい。
【0030】
一般式(1)において、XおよびYのうちの1つまたは2つは、ハロゲン原子であることが好ましい。XおよびYのうちの3つ以上がハロゲン原子である場合には、化合物の溶解性が低下する傾向にあり、水溶性プリフラックスの安定性が低下する傾向にある。
また、一般式(1)において、Yのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子であることが好ましい。一般式(1)におけるYの方に、ハロゲン原子が存在する方が、電極パッドのはんだぬれ性が向上する傾向にある。
【0031】
一般式(1)で表される化合物としては、2-(4-クロロベンジル)ベンゾイミダゾール、2-(3,4-ジクロロベンジル)ベンゾイミダゾール、4-クロロ-2-(3-フェニルプロピル)ベンゾイミダゾール、6-クロロ-2-{(2-ニトロフェニル)エチル}ベンゾイミダゾール、および6-カルボエトキシ-2-(3-ブロモベンジル)ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、電極パッドの表面の酸化抑制の観点から、2-(4-クロロベンジル)ベンゾイミダゾール、2-(3,4-ジクロロベンジル)ベンゾイミダゾール、4-クロロ-2-(3-フェニルプロピル)ベンゾイミダゾールがより好ましい。
【0032】
一般式(1)で表される化合物の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。配合量を前記下限以上とすることによって、防錆膜などの塗膜を形成しやすくなる。また、配合量が前記上限を超えると、不溶解分が多くなり易くなる傾向にあり、経済的にも好ましくない。
【0033】
[(Y)成分]
本実施形態においては、(X)成分を水溶化させるという観点から、(Y)有機酸を含有することが好ましい。
(Y)成分としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ブロモ酢酸、およびメトキシ酢酸などが挙げられる。これらの中でも、ギ酸、酢酸を用いることが好ましい。また、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
有機酸の配合量としては、水溶性プリフラックス100質量%に対して、1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0035】
[有機溶剤]
本実施形態においては、(X)成分を水溶化させるという観点から、有機溶剤を含有していてもよい。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、およびアセトンなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶剤の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0036】
[他の成分]
本実施形態に用いる水溶性プリフラックスは、さらに、銅との錯体被膜形成助剤を含有してもよい。ただし、銅との錯体被膜形成助剤を添加すると条件によっては、基板の金めっき上にも被膜を形成し、金めっきの変色が発生することがあるので注意が必要である。
錯体被膜形成助剤としては、ギ酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、シュウ酸銅、酢酸銅、水酸化銅、炭酸銅、リン酸銅、硫酸銅、ギ酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸ニッケル、酢酸バリウム、水素化亜鉛、塩化第一鉄、塩化第二鉄、酸化第一鉄、酸化第二鉄、ヨウ化銅、臭化第一銅、および臭化第二銅などの金属化合物が挙げられる。これらの錯体被膜形成助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
錯体被膜形成助剤の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態に用いる水溶性プリフラックスには、さらに、金属化合物から分離する金属イオンに対する塩基を含有する緩衝液を併用してもよい。
緩衝液中の塩基としては、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、イソプロピルエタノールアミン、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0038】
本実施形態に用いる水溶性プリフラックスは、はんだ付特性を向上させるという観点から、さらに、ハロゲン化合物を含有してもよい。
ハロゲン化合物としては、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、臭化プロピオン酸、およびヨードプロピオン酸などが挙げられる。これらのハロゲン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ハロゲン化合物の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
[プリント配線基板の表面処理方法およびプリント配線基板の製造方法]
次に、本実施形態のプリント配線基板の表面処理方法、およびプリント配線基板の製造方法について説明する。
本実施形態のプリント配線基板の表面処理方法は、前処理工程と、水溶性プリフラックス処理工程と、フラックス洗浄工程と、を備える方法である。
本実施形態のプリント配線基板の製造方法は、前処理工程と、水溶性プリフラックス処理工程と、はんだバンプ形成工程と、チップ接着工程と、フラックス洗浄工程と、を備える方法である。
なお、ここでは、プリント配線基板のうち、半導体パッケージ用のプリント配線基板を作製する場合を例に挙げて説明する。また、本実施形態の半導体パッケージ用のプリント配線基板の製造方法は、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の半導体パッケージ用のプリント配線基板の製造方法を説明するための図である。なお、以下説明するのは、プリント配線基板(半導体パッケージ用)の製造方法の一つの実施形態であって、本発明のプリント配線基板の表面処理方法や、本発明のプリント配線基板の製造方法がこれに限定されるわけではない。
本実施形態は、(i)前処理工程と、(ii)水溶性プリフラックス処理工程と、(iii)はんだバンプ形成工程と、(iv)第一フラックス洗浄工程と、(v)チップ接着工程と、(vi)第二フラックス洗浄工程と、(vii)アンダーフィル工程と、(viii)モールド工程と、(ix)はんだボール形成工程とをこの順で行う方法である。
【0040】
(i)前処理工程においては、
図1(A)に示す半導体用基板1に対して、前述の前処理液を接触させる。
具体的には、処理対象の半導体用基板1の表面を脱脂、化学研磨(ソフトエッチング)、酸洗、および水洗を行った後に、前処理液を接触させる。
前処理液を接触させるためには、例えば、半導体用基板1を前処理液に浸漬させればよい。
前処理液の温度は、10℃以上40℃以下であることが好ましく、20℃以上30℃以下であることがより好ましい。前処理液の温度が前記範囲内であれば、適切な前処理工程を施すことができる。
前処理液の接触時間は、10秒間以上120秒間以下であることが好ましく、15秒間以上90秒間以下であることがより好ましい。前処理液の温度が前記範囲内であれば、適切な前処理工程を施すことができる。
【0041】
(ii)水溶性プリフラックス処理工程においては、
図1(A)に示すように、半導体用基板1の電極パッド11A,11B上に保護被膜を形成する。
保護被膜の形成方法としては、例えば、処理対象の半導体用基板1の電極パッド11A,11Bに対して前処理工程を施した後、前述の水溶性プリフラックスに、10~60℃で1秒間~100分間(好ましくは20~50℃で、5秒間~60分間、より好ましくは30~50℃で、10秒間~10分間)半導体用基板1を浸漬する方法を採用できる。このようにして一般式(1)で表される化合物は電極パッドの表面に付着するが、その付着量は処理温度を高く、処理時間を長くする程多くなる。このときに、超音波を利用するとより好ましい。なお、他の塗布手段、例えば噴霧法、刷毛塗り、ローラー塗りなどで保護被膜を形成してもよい。このようにして得られた保護被膜により、電極パッドの表面が高温加熱されて劣化することを抑制できる。そのため、電極パッドの表面が高温に曝されても、十分なはんだぬれ性を維持できる。
【0042】
(iii)はんだバンプ形成工程においては、
図1(B)に示すように、保護被膜を形成後の半導体用基板1の一方の面の電極パッド11A上にソルダペーストを塗布し、リフロー処理を行ってはんだバンプ2を形成する。
ソルダペーストの塗布方法としては、メタルマスク印刷機を用いた方法など、適宜公知の方法を採用できる。
リフロー処理の条件としては、はんだバンプ2のはんだ合金組成に応じて、適宜設定することができる。例えばスズ、銀および銅を含有する鉛フリーはんだ合金(SAC系)のソルダペーストを用いる場合には、特に限定されないが、プリヒート温度150~180℃を70~100秒間とし、ピーク温度を230~250℃とし、200℃以上のキープ時間を50~80秒間とすればよい。
【0043】
(iv)第一フラックス洗浄工程においては、半導体用基板1をフラックス洗浄剤にて洗浄する。半導体用基板1では、はんだバンプ2を形成した際に生じたフラックス残さをフラックス洗浄剤により除去しなければならない。そのために、この第一フラックス洗浄工程が必要になる。
フラックス洗浄剤としては、公知のフラックス洗浄剤(好ましくは、水系のフラックス洗浄剤)を用いることができる。このフラックス洗浄剤としては、花王製のクリンスルー750HS、クリンスルー750K、荒川化学工業社製のパインアルファST-100Sなどが挙げられる。
半導体用基板を洗浄する際の洗浄条件は特に限定されない。例えば、洗浄剤温度30~50℃で、1~5分間(好ましくは40℃で2~4分間)半導体用基板を洗浄すればよい。
【0044】
(v)チップ接着工程においては、
図1(C)に示すように、はんだバンプ2を形成後の半導体用基板1のはんだバンプ2上にチップ3を配置し、リフロー処理を行ってチップ3を半導体用基板1に接着する。
リフロー処理の条件としては、はんだバンプ2のはんだ合金組成に応じて、適宜設定することができる。
【0045】
(vi)第二フラックス洗浄工程においては、チップ3を接着後の半導体用基板1をフラックス洗浄剤にて再度洗浄する。
フラックス洗浄剤や洗浄条件としては、前記第一フラックス洗浄剤と同様のものや同様の洗浄条件を採用できる。
【0046】
(vii)アンダーフィル工程においては、
図1(D)に示すように、フラックス洗浄後における半導体用基板1とチップ3との隙間にアンダーフィル4を充填する。
アンダーフィル4としては、適宜公知のアンダーフィル材料を用いることができる。
アンダーフィル4の硬化条件としては、アンダーフィル材料の種類に応じて、適宜設定することができる。例えば、温度120~180℃で1~3時間加熱すればよい。
なお、アンダーフィル4が充填される前には、温度100~150℃で1~3時間の予備加熱処理が施されることが好ましい。
【0047】
(viii)モールド工程においては、
図1(E)に示すように、アンダーフィル4を充填後の半導体用基板1におけるチップ3をモールド5で封止する。
モールド5としては、適宜公知のモールド材料を用いることができる。
モールド5の硬化条件としては、モールド材料の種類に応じて、適宜設定することができる。例えば、温度150~200℃で2~6時間(好ましくは、170~180℃で3~5時間)加熱すればよい。
【0048】
(ix)はんだボール形成工程においては、
図1(F)に示すように、モールド5で封止後の半導体用基板1における電極パッド11B上にはんだボールを配置し、リフロー処理を行ってはんだボール6を形成する。
はんだボールの配置方法としては、適宜公知のはんだボールの搭載方法を採用できる。また、ソルダペーストを用いてはんだボールを形成してもよい。この場合、ソルダペーストの塗布方法としては、メタルマスク印刷機を用いた方法など、適宜公知の方法を採用できる。
リフロー処理の条件としては、はんだボール6のはんだ合金組成に応じて、適宜設定することができる。
【0049】
本実施形態の半導体パッケージ用のプリント配線基板の製造方法においては、以上のように、水溶性プリフラックス処理工程の後で、第一および第二のフラックス洗浄工程を行うことから、半導体用基板1の電極パッド11B上の保護被膜がフラックス洗浄剤で洗浄されてしまう。また、フラックス洗浄工程からはんだボール形成工程の前までに、モールド工程などの加熱を行うことから、電極パッド11Bの表面が高温長時間に曝されることになる。このように、電極パッド11Bの表面が劣化しやすい状況においても、本実施形態によれば、電極パッドの表面の酸化を十分に抑制でき、また、電極パッドの表面の色ムラを十分に抑制できる。
【実施例0050】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A1)成分)
イミダゾール化合物A:ベンゾイミダゾール
イミダゾール化合物B:2-メチルイミダゾール
イミダゾール化合物C:2-ウンデシルイミダゾール
((A2)成分)
アルカノールアミン:トリイソプロパノールアミン
((B)成分)
有機溶剤:イソプロパノール
((C)成分)
アンモニウム塩:酢酸アンモニウム
((X)成分)
イミダゾール化合物D:2-(4-クロロベンジル)ベンゾイミダゾール
イミダゾール化合物E:2-(3,4-ジクロロベンジル)ベンゾイミダゾール
((Y)成分)有機酸:酢酸
(他の成分)
錯体被膜形成助剤:塩化亜鉛
アンモニア水:28%アンモニア水、大盛化工社製
水:純水
【0051】
[実施例1]
水98.96質量%に対し、イミダゾール化合物A0.02質量%、アルカノールアミン0.01質量%、有機溶剤1質量%、およびアンモニウム塩0.01質量%を溶解させて、前処理液を得た。
水76質量%およびアンモニア水3質量%に対し、イミダゾール化合物D0.5質量%、有機酸20質量%、および錯体被膜形成助剤0.5質量%を溶解させて、水溶性プリフラックスを得た。なお、得られた水溶性プリフラックスは、緩衝液として25質量%アンモニア水でpH調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
両面銅張積層板(大きさ:25mm×50mm、厚み:1.6mm、FR-4基材)を脱脂し、ソフトエッチングし、水洗して表面を清浄にした。その後、得られた前処理液に室温で1分間浸漬して、水洗し、温風乾燥した。次いで、得られた水溶性プリフラックスに40℃で2分間浸漬して、銅箔表面に被膜形成して、水洗し、温風乾燥して、被膜厚評価用基板を得た。
ランド開口直径0.2mmおよび1mmの電極パッドを有する基板を脱脂し、ソフトエッチングし、水洗して表面を清浄にした。その後、得られた前処理液に室温で1分間浸漬して、水洗し、温風乾燥した。次いで、得られた水溶性プリフラックスに40℃で2分間浸漬して、銅箔表面に被膜形成して、水洗し、温風乾燥して、色ムラ評価用基板を得た。
【0052】
[実施例2~10]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、前処理液、および水溶性プリフラックスを得た。
そして、得られた前処理液を用いたこと、および、得られた水溶性プリフラックスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被膜厚評価用基板、および色ムラ評価用基板を作製した。
【0053】
[比較例1および2]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、水溶性プリフラックスを得た。
そして、得られた水溶性プリフラックスを用いたこと、および、前処理液による前処理工程を施さなかった以外は、実施例1と同様にして、被膜厚評価用基板、および色ムラ評価用基板を作製した。
【0054】
[実施例11~20]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、前処理液、および水溶性プリフラックスを得た。
そして、得られた前処理液を用いたこと、および、得られた水溶性プリフラックスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被膜厚評価用基板、および色ムラ評価用基板を作製した。
【0055】
[比較例3および4]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、前処理液、および水溶性プリフラックスを得た。
そして、得られた前処理液を用いたこと、および、得られた水溶性プリフラックスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被膜厚評価用基板、および色ムラ評価用基板を作製した。
【0056】
[参考例1~5]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、前処理液、および水溶性プリフラックスを得た。
そして、得られた前処理液を用いたこと、および、得られた水溶性プリフラックスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被膜厚評価用基板、および色ムラ評価用基板を作製した。
【0057】
<水溶性プリフラックスによる保護被膜の評価>
水溶性プリフラックスによる保護被膜の性能(被膜厚、フラックス洗浄後の色ムラ)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1および表2に示す。
(1)被膜厚
両面で表面積25cm
2の被膜厚評価用基板上の被膜を、0.5%塩酸50mLに抽出した後、抽出液中の被膜有効成分に起因する極大吸光度を測定した。そして、換算式から被膜厚(単位:μm)を算出した。
(2)フラックス洗浄後の色ムラ
色ムラ評価用基板に、下記リフロー条件で2回リフロー処理を行い、その後、フラックス洗浄剤(花王社製の「クリンスルー750HS」)を用いて下記フラックス洗浄条件にて洗浄処理を行った。洗浄処理後の色ムラ評価用基板における電極パッド(直径:1mm)を、40~200倍の光学顕微鏡にて観察した。そして、下記の基準に従って、フラックス洗浄後の色ムラを評価した。なお、フラックス洗浄後の電極パッドにおける色ムラの評価基準を
図2に示す。
A:色ムラが全くない。
B:電極パッドの周縁部などに限り、僅かに、分かりにくい色ムラがある。
C:分かりにくい色ムラがある。
D:色ムラがある。
(リフロー条件)
酸素濃度:2000ppm以下(N
2リフロー)
プリヒート:150~180℃にて80秒間
ピーク温度:240℃(200℃以上の時間60秒間)
(フラックス洗浄条件)
洗浄液温度:40℃
洗浄時間:3分間
その他:浸漬揺動および超音波有り
【0058】
【0059】
【0060】
表1および表2に示す結果からも明らかなように、本発明の表面処理方法によりプリント配線基板に保護被膜を形成した場合(実施例1~20)には、被膜厚、およびフラックス洗浄後の色ムラの全てにおいて十分な結果が得られた。そのため、本発明によれば、保護被膜の形成後にフラックス洗浄剤によりプリント配線基板を洗浄する場合においても、電極パッドの表面の色ムラを十分に抑制できることが確認された。