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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054468
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】電動式の防火ドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/60 20150101AFI20220331BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20220331BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20220331BHJP
   E05F 1/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
E05F15/60
E06B5/16
E05F15/73
E05F1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161538
(22)【出願日】2020-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】391016886
【氏名又は名称】日本フネン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】特許業務法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】村尾 均
【テーマコード(参考)】
2E052
2E239
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052AA03
2E052BA06
2E052CA07
2E052DA00
2E052DB00
2E052DB02
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA06
2E052GB01
2E239CA12
2E239CA29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】重い防火ドアを長期間にわたって安定して開閉する。
【解決手段】防火ドア装置は、引戸の防火ドア1を吊り下げ構造で走行台11の車輪12で走行させるレールバー2を、建物に固定してなる固定バー3に脱着構造で連結しており、リニアモータ6を制御回路で制御して走行台11をレールバー2に沿って移動させる。防火ドア装置は、レールバー2の後端を固定バー3に脱着自在に連結してなる係止機構と、後端から先端に向かって下り勾配に配置してなるレールバー2の傾斜角を調整する傾斜角調整機構5とを備える。固定バー3は、垂直プレート21の側縁に固定リブ32を有し、係止機構は、レールバー2の後端部を垂直プレートとの間に挟んで引き抜き自在に連結する挟持アームを有し、固定リブ32に載せたレールバー2の後端部を挟持アームで固定バー3に連結し、傾斜角調整機構5で戸先側の端部の上下位置を調整している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の防火ドアと、
前記防火ドアを吊り下げ構造で連結してなる車輪を有する走行台と、
前記車輪が走行するレールを有するレールバーと、
それ自体は建物に固定されて、
前記レールバーを脱着できる構造で固定してなる固定バーと、
前記走行台と前記レールバーとに設けられて、
前記走行台を前記レールバーに沿って移動させるリニアモータと、
前記リニアモータを制御して
前記走行台を前記レールバーに沿って移動させる制御回路と、
を備える電動式の防火ドア装置であって、
前記レールバーの後端を前記固定バーに脱着自在に連結してなる係止機構と、
後端から先端に向かって下り勾配に配置してなる前記レールバーの傾斜角を調整して先端を前記固定バーに連結してなる傾斜角調整機構とを備え、
前記固定バーは、
前記レールバーの両端部に伸びる全長であって、
所定の上下幅の垂直プレートの側縁に固定リブを有し、
前記係止機構は、
前記固定バーの前記垂直プレートに固定されて、
前記レールバーの後端部を前記垂直プレートとの間に挟んで、
長手方向に引き抜き自在に連結してなる挟持アームを有し、
前記レールバーが、
後端部を前記固定リブに載せて、後端部を前記挟持アームを介して前記固定バーに連結され、
前記傾斜角調整機構が戸先側の端部の上下位置を調整して前記固定バーに固定されてなることを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動式の防火ドア装置であって、
前記レールバーが、
前記固定リブとの対向位置に配置してなる調整リブを有し、
前記傾斜角調整機構が、
前記固定リブと前記調整リブとの隙間を調整して、
前記レールバーの傾斜角を調整してなることを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動式の防火ドア装置であって、
前記レールバーが、
前記固定バーの上縁に設けてなる固定リブの下方に位置する調整リブを有し、
前記傾斜角調整機構が、
前記固定リブと前記調整リブとの隙間を調整して、
前記レールバーの傾斜角を調整してなることを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電動式の防火ドア装置であって、
前記レールバーが、
前記固定バーの下縁に設けてなる固定リブの上方に位置する調整リブを有し、
前記傾斜角調整機構が、
前記固定リブと前記調整リブとの隙間を調整して、
前記レールバーの傾斜角を調整してなることを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか一項に記載の電動式の防火ドア装置であって、
前記傾斜角調整機構が、
前記固定リブに垂直姿勢に固定してなる調整ネジと、
前記調整ネジにねじ込んでなる調整ナットとを備え、
前記調整リブは前記調整ネジの貫通穴を有し、
前記傾斜角調整機構は、
前記調整ネジが前記調整ネジの前記貫通穴に挿入されてなる状態で、
前記調整ナットを回転して、
前記固定リブと前記調整リブとの間隔を調整して前記レールバーの傾斜角を調整する構造であることを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【請求項6】
請求項2または3に記載の電動式の防火ドア装置であって、
前記傾斜角調整機構が調整ネジを有し、
前記固定リブと前記調整リブが、
いずれか一方に前記調整ネジを回転自在に挿通する貫通穴を有し、
他方には前記調整ネジの雌ネジ孔を有し、
前記傾斜角調整機構は、
前記調整ネジを前記貫通穴に挿入して先端部を雌ネジ孔にねじ込んで、
前記固定リブと前記調整リブとの間隔を調整して前記レールバーの傾斜角を調整する構造であることを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の電動式の防火ドア装置であって、
前記リニアモータが、
前記防火ドアの移動方向に移動磁界を発生するコイルユニットと、
前記コイルユニットの移動磁界に駆動されて移動すると可動子とを備え、
前記可動子が前記走行台に連結され、前記固定子が前記レールバーに固定されて、
前記可動子と前記固定子が上下に対向して配置されてなることを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の電動式の防火ドア装置であって、
前記リニアモータを制御する非接触センサを備え、
前記リニアモータが前記非接触センサの信号で前記ドア本体を駆動することを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【請求項9】
請求項8に記載する電動式の防火ドア装置であって、
前記非接触センサが、
前記ドア本体に接近する人物を撮影するカメラと、
前記カメラの画像を演算処理する演算回路とを備えることを特徴とする電動式の防火ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防火ドア装置に関し、とくにリニアモータで開閉できる電動式の防火ドアであって、マンションの玄関ドアに最適な防火ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータで引戸を駆動する自動ドア装置は開発されている。(特許文献1参照)
リニアモータは、永久磁石とコイルユニットからなる簡単な構造で、引戸をスムーズに安定して駆動できるので、重い防火ドアをスムーズに開閉できる。ただ、防火ドアは、通路を閉めて防火特性を実現するので、人が通過しないタイミングでは常に閉じていることが大切である。防火ドアは、規定の防火特性を実現するために重くなるので、リニアモータで駆動する構造は、リニアモータによる駆動力でスムーズな開閉を実現できる特長を実現できる。しかしながら、リニアモータで重い防火ドアを開閉するドア装置は、長期間にわたって最適な速度を保持しながら、スムーズに開閉することは決して容易ではなく、このことは防火ドアの電動化を阻害する原因となる。
【0003】
規定の防火特性を有する防火ドアを安価に実現するために、従来の防火ドア装置は、重い防火ドアを、自重により傾斜レールに沿って走行させて閉じる構造としている。この防火ドア装置によると、防火ドアの動きは、傾斜レールの傾斜角度と防火ドアの重量の関係で決定される。例えば、傾斜レールの傾斜がきつすぎたり、ドア本体が重すぎると、防火ドアのスムーズな開閉が難しくなり、駆動電力を多く消費する弊害もある。反対に、傾斜レールの傾斜が緩すぎたり、ドア本体が軽すぎると、停電等による電源OFF時に、速やかに自閉させるのが難しくなる。ここで、防火ドアの重量はドア本体の材質や形状、大きさ等によって異なるので、その都度最適な傾斜角度を見つけることは難しく、また施工精度等によっても変わるおそれがあるので、傾斜レールの傾斜角度を調整可能にすると便利に使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-131993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような従来の弊害を解消することを目的に開発されたもので、本発明の大切な目的は、重い防火ドアを長期間にわたって安定して開閉できる電動式の防火ドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の一実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、引戸の防火ドアと、防火ドアを吊り下げ構造で連結してなる車輪を有する走行台と、車輪が走行するレールを有するレールバーと、それ自体は建物に固定されて、レールバーを脱着できる構造で固定してなる固定バーと、走行台とレールバーとに設けられて、走行台をレールバーに沿って移動させるリニアモータと、リニアモータを制御して走行台をレールバーに沿って移動させる制御回路とを備えている。防火ドア装置は、レールバーの後端を固定バーに脱着自在に連結してなる係止機構と、後端から先端に向かって下り勾配に配置してなるレールバーの傾斜角を調整して先端を固定バーに連結してなる傾斜角調整機構とを備えている。固定バーは、レールバーの両端部に伸びる全長であって、所定の上下幅の垂直プレートの側縁に固定リブを有し、係止機構は、固定バーの垂直プレートに固定されて、レールバーの後端部を垂直プレートとの間に挟んで、長手方向に引き抜き自在に連結してなる挟持アームを有し、レールバーの後端部を固定リブに載せて、後端部を挟持アームを介して固定バーに連結し、傾斜角調整機構で戸先側の端部の上下位置を調整して固定バーに固定している。
【0007】
ただし、本明細書において、固定バーとレールバーの「後端」は戸尻側の端部を、「先端」は戸先側の端部を意味するものとする。
【0008】
以上の電動式の防火ドア装置は、リニアモータの駆動力に加えて、レールバーの傾斜角による防火ドアの自重とで重い防火ドアを移動させるので、長期間にわたって確実に防火ドアを閉めることができる特長がある。さらに、以上の防火ドア装置は、防火ドアが移動するレールバーを、係止機構と傾斜角調整機構と固定バーを介して建物に固定するので、メンテナンスにおいては、一部を戸袋内に配置しているレールバーを建物から外して点検でき、さらに傾斜角調整機構で下り勾配に配置しているレールバーの傾斜角を調整して、重い防火ドアをそれ自体の自重で安定して確実に閉めることで確実な防火特性を実現する。
【0009】
レールバーの点検を簡単にできるのは、戸袋の奥の隠れた位置に連結しているレールバーの後端部を、レールバーを引き抜いて簡単に外すことができ、また押し込んで簡単に連結して上下方向に位置ずれすることなく定位置に連結できるからである。この特長は、レールバーの後端部を、建物に固定している固定バーの固定リブに載せて戸袋内に押し込んで、挟持アームと固定バーの垂直プレートとの間に挿入して連結できることで実現する。固定バーの固定リブに載せて戸袋の内部に挿入されるレールバーの後端部は、下から支持している固定リブで上下方向の位置ずれが防止される。挟持アームは長手方向に挿入されるレールバーを垂直プレートとの間に挟んで固定バーに連結する。固定リブに載る状態で後端部を挟持アームで固定バーに連結しているレールバーは、上下方向に位置ずれすることなく固定バーに載せられて連結される。この状態で建物に固定されるレールバーの後端部は、挟持アームと固定リブの両方で固定バーに連結されるが、固定リブは建物に固定された固定バーと一体構造で、重い防火ドアの荷重に耐える十分な強度を有する。挟持アームは垂直プレートとの間にレールバーを挟んで、レールバーの水平方向の位置ずれを防止するが、重い防火ドアの荷重は垂直方向に作用して、水平方向には作用しない。したがって、挟持アームは単にレールバーを垂直プレートとの間に挟んで定位置に配置する程度の強度のみが要求される。したがって、挟持アームは、例えば金属板の端部を垂直プレートに固定している弾性的に変形する金属板などで実現できる。
【0010】
さらに、以上の防火ドア装置は、レールバーの後端部を挟持アームで固定バーの定位置に連結し、先端部を傾斜角調整機構で下り勾配の傾斜角を最適な角度に調整して重い防火ドアを自重で下り勾配のレールバーに走行させるので、レールバーの傾斜角で走行状態を理想的な状態に調整できる。レールバーは、自重で防火ドアを閉じることができるように、戸尻側から戸先側に向かって下り勾配で建物に固定される。防火ドア装置は、レールバーの傾斜角とリニアモータの駆動力の両方で開閉できるが、リニアモータによる駆動力は経時的な低下を防止できず、種々の条件で駆動力が低下するので、長期間にわたって一定には保持できない。リニアモータの駆動力が、永久磁石の減磁や、永久磁石とコイルユニットとの寸法の変化で変動するからである。永久磁石は経時的に減磁して磁力が低下するのを抑制できない。たとえば、リニアモータに好んで使用されるネオジム磁石は、温度が高くなると減磁しやすく、さらに薄くなっても減磁しやすく、使用状態で次第に磁力が低下する。減磁を少なくするために、ネオジム磁石の保存温度は50℃以下が推奨されるが、現実の使用環境において、とくに夏期の極めて暑い使用環境においては温度が高くなるのを防止できず、温度上昇が減磁する原因となる。とくに、ドア用のリニアモータは、ドアを開閉する移動距離に沿って長い永久磁石を使用するので、薄くしてコストダウンしているが、このことも減磁しやすい形状となる。
【0011】
さらに、リニアモータは、永久磁石とコイルユニットとの隙間の変化も駆動力を変化させる原因となるが、現実の使用環境において、永久磁石とコイルユニットとの隙間を長期間にわたって一定に保持することできない。永久磁石とコイルユニットとの隙間は、たとえば、重い防火ドアを移動させる車輪の摩耗や、重い防火ドアの重量による部材の変形などが原因で発生するので、長期間にわたって使用される防火ドア装置において、隙間の変動を皆無にできない。
【0012】
以上の防火ドア装置は、リニアモータの駆動力に加えて、下り勾配のレールバーを移動する重い防火ドアの自重による駆動力との両方で防火ドアを閉める方向に移動させるので、レールバーの傾斜角を調整して、防火ドアを長期間にわたって最適な速度で確実に閉じることができる。さらに、以上の防火ドア装置は、レールバーの後端部を係止機構で固定バーに連結して、先端部を傾斜角調整機構で上下方向に移動して傾斜角を調整するので、簡単に傾斜角を調整して防火ドアを理想の速度で移動できる。たとえば、リニアモータの駆動力が低下する状態では、レールバーの傾斜角を大きくして、重い防火ドアをスムーズに閉めることができる。逆に、建付け精度が悪く傾斜がきつい場合には、レールバーの傾斜角を小さくして、重い防火ドアをスムーズに開くことができる。
【0013】
本発明の他の実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、レールバーが、固定リブとの対向位置に配置してなる調整リブを有し、傾斜角調整機構が、固定リブと調整リブとの隙間を調整して、レールバーの傾斜角を調整している。
【0014】
本発明の他の実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、レールバーが、固定バーの上縁に設けてなる固定リブの下方に位置する調整リブを有し、傾斜角調整機構が、固定リブと調整リブとの隙間を調整して、レールバーの傾斜角を調整している。
【0015】
本発明の他の実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、レールバーが、固定バーの下縁に設けてなる固定リブの上方に位置する調整リブを有し、傾斜角調整機構が、固定リブと調整リブとの隙間を調整して、レールバーの傾斜角を調整している。
【0016】
本発明の他の実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、傾斜角調整機構が、固定リブに垂直姿勢に固定してなる調整ネジと、調整ネジにねじ込んでなる調整ナットとを備え、調整リブは調整ネジの貫通穴を有し、傾斜角調整機構は、調整ネジが調整リブの貫通穴に挿入されてなる状態で、調整ナットを回転して、固定リブと調整リブとの間隔を調整してレールバーの傾斜角を調整する構造としている。
【0017】
以上の電動式の防火ドア装置は、調整ナットを回転してレールバーの傾斜角を調整できるので、レールバーの下り勾配の角度を簡単かつ容易に、しかも正確に調整できる特長がある。
【0018】
本発明の他の実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、傾斜角調整機構が調整ネジを有し、固定リブと調整リブが、いずれか一方に調整ネジを回転自在に挿通する貫通穴を有し、他方には調整ネジの雌ネジ孔を有し、傾斜角調整機構が、調整ネジを貫通穴に挿入して先端部を雌ネジ孔にねじ込んで、固定リブと調整リブとの間隔を調整してレールバーの傾斜角を調整する構造としている。
【0019】
以上の電動式の防火ドア装置は、調整ネジを回転してレールバーの傾斜角を調整できるので、レールバーの下り勾配の角度を簡単かつ容易に、しかも正確に調整できる特長がある。
【0020】
本発明の他の実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、リニアモータが、防火ドアの移動方向に移動磁界を発生するコイルユニットと、コイルユニットの移動磁界に駆動されて移動すると可動子とを備え、可動子を走行台に連結して、固定子をレールバーに固定して、可動子と固定子を上下に対向して配置している。
【0021】
本発明の他の実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、リニアモータを制御する非接触センサを備え、リニアモータが非接触センサの信号でドア本体を駆動している。
【0022】
本発明の他の実施態様にかかる電動式の防火ドア装置は、非接触センサが、ドア本体に接近する人物を撮影するカメラと、カメラの画像を演算処理する演算回路とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る防火ドア装置の概略正面図である。
図2図1に示す防火ドア装置の概略断面図である。
図3図1に示す防火ドア装置の正面図である。
図4図3に示す防火ドア装置のIV-IV線断面図である。
図5図3に示す防火ドア装置のV-V線拡大断面図である。
図6図3に示す防火ドア装置のVI-VI線断面図である。
図7図3に示す防火ドア装置のVII-VII線拡大断面図である。
図8】傾斜角調整機構の他の一例を示す拡大断面図である。
図9】傾斜角調整機構の他の一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体例を示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0025】
(実施の形態1)
図1は電動式の防火ドア装置の概略正面図、図2図1に示す電動式の防火ドア装置の概略断面図、図3図1に示す防火ドア装置の正面図、図4図3に示す防火ドア装置のIV-IV線断面図、図5図3に示す防火ドア装置のV-V線拡大断面図をそれぞれ示している。これ等の図に示す防火ドア装置100は、引戸の防火ドア1と、防火ドア1を吊り下げ構造で連結している車輪12を連結している走行台11と、車輪12が走行するレール21を有するレールバー2と、それ自体は建物の躯体に固定されて、レールバー2を脱着できるように固定している固定バー3と、走行台11とレールバー2とに設けられて、走行台11をレールバー2に沿って移動させるリニアモータ6と、リニアモータ6を制御して走行台11をレールバー2に沿って移動して防火ドア1を開閉する制御回路7とを備える。さらに、以上の防火ドア装置100は、レールバー2の後端を固定バー3に脱着自在に連結している係止機構4と、下り勾配に配置されるレールバー2の傾斜角を調整する傾斜角調整機構5とを備える。
【0026】
[防火ドア1]
防火ドア1は、防火特性を実現する方形状の引戸で、建築基準法に規定される特性を満たす構造であって、通過する人が自分の意思で開いている時間に限って開放されるが、それ以外は、リニアモータ6と下り勾配のレール21で常に閉鎖される。図5の断面図に示す防火ドア1は、上端面に固定している吊り下げ金具14を介して車輪12のある走行台11に連結されて、走行台11が走行することにより開閉される。
【0027】
[走行台11]
走行台11は、レール21に沿って走行して防火ドア1を開閉方向に移動させる複数の車輪12と、リニアモータ6の可動子64である細長い永久磁石63を固定している。可動子64の永久磁石63は走行台11の上縁に沿って水平方向に伸びる姿勢に配置される。
【0028】
[リニアモータ6]
リニアモータ6は、固定子62のコイルユニット61と可動子64の永久磁石63とで構成され、コイルユニット61の移動磁界で可動子64の永久磁石63を水平方向に移動して防火ドア1を開閉する。リニアモータ6は、可動子64の永久磁石63を走行台11に連結して、固定子62のコイルユニット61をレールバー2に固定して、可動子64と固定子62を上下に対向して配置している。可動子64の永久磁石63の長さは防火ドア1の横幅にほぼ等しく、固定子62のコイルユニット61の長さは、防火ドア1の開閉状態において、常に可動子64と所定の長さで対向位置に配置されて駆動力を発生できるように、可動子64よりも長くしている。可動子64は、複数の永久磁石63を、コイルユニット61との対向面を交互にN極とS極とする配列で防火ドア1の開閉方向に直線状に並べている。固定子62であるコイルユニット61は複数のコイル61aを防火ドア1の開閉方向である水平方向に配列して直線状に並べている。各々のコイル61aは、可動子64の永久磁石63との対向面に磁束を放射する姿勢、すなわち通電する交流で永久磁石63との対向面を交互にN極とS極とする姿勢、さらに言い換えると、図5において上下方向にN極とS極ができる姿勢に配置される。コイルユニット61は、各々のコイル61aに通電する交流の周波数と位相と電圧を制御回路7で制御して、各々のコイル61aが発生する磁界を配列方向に移動して移動磁界を発生する。コイルユニット61は、移動磁界で可動子64の永久磁石63を水平方向に移動する。制御回路7は、コイルユニット61の移動磁界を早くして、防火ドア1の速度を早く、移動磁界を強くして駆動力を強くできる。移動磁界の移動速度と駆動力は、防火ドア1の重量を考慮して、最適な速度で安定して移動させながら、かつ人体に衝突するときの衝撃が強すぎない程度に設定される。
【0029】
[リニアモータ6の制御回路7]
制御回路7は、防火ドア1を開くタイミングを検出する非接触センサ71からの信号でリニアモータ6を制御する。非接触センサ71は、好ましくは、防火ドア1に接近する人物を顔認識してリニアモータ6が防火ドア1を開く信号を制御回路7に出力する。この非接触センサ71は、防火ドア1に接近する人物の顔を撮影するカメラ72と、カメラ72の画像を演算処理する演算回路73とを備える顔認識センサ71Aである。顔認識センサ71Aは、防火ドア1を開く人物の顔画像を、あらかじめメモリ74に記憶している。この顔認識センサ71Aは、カメラ72から入力される入力顔画像とメモリ74に記憶する記憶顔画像とを比較して、入力顔画像と記憶顔画像が一致すると、制御回路7に防火ドア1の開信号を出力する。制御回路7は、開信号を検出するとリニアモータ6を制御して防火ドア1を開き、所定の時間経過すると防火ドア1を閉じるようにリニアモータ6を制御する。防火ドア装置100は、開いた防火ドア1を閉じて防火特性を実現するので、制御回路7に防火ドア1の開時間も記憶している。この顔認識センサ71Aは、特定の人物の接近を検出して防火ドア1を開いた後、開時間が経過すると防火ドア1を閉じるようにリニアモータ6を制御する。非接触センサ71を以上の顔認識センサ71Aとする防火ドア装置100は、鍵を使用することなく防火ドア1を自動的に開くことができるので、特に便利に使用できる。
【0030】
ただ、非接触センサ71は顔認識センサ71Aに特定されず、例えば指紋や瞳孔パターンなどを認識するセンサ等も使用でき、さらにカードキー等のように特定の人が接近したことを検出する他の全てのセンサが使用できる。さらにまた、本発明の防火ドア装置100は、防火ドア1を開く信号を検出するセンサを非接触センサ71に特定するものでなく、通常の鍵や特定の数字を入力して防火ドア1を開くテンキーなどの入力装置も使用できる。
【0031】
図2図5に示す走行台11は、防火ドア1の上面に固定している吊り下げ金具14を介して車輪12を防火ドア1の上に連結している。車輪12は防火ドア1の両端部に連結されて、防火ドア1を水平姿勢に吊り下げてレール21に沿って移動させる。可動子64の永久磁石63は、図2に示すように、防火ドア1の横幅にほぼ等しい長さで、コイルユニット61と対向して、コイルユニット61の移動磁界で移動される。
【0032】
図1図3の防火ドア装置100は、建物の通路、玄関ドアにあっては玄関の防火ドア1を開閉する。防火ドア1は、閉めた状態で建物の通路を閉鎖し、開いた状態では建物の戸袋81内に収納される。戸袋81は、図4に示すように、建物躯体80に固定バー3を固定した後、躯体表面との間に所定の隙間82を設けて戸袋壁83を施工して、建物躯体80と戸袋壁83との間の隙間82に防火ドア1を収納する空間が設けられる。戸袋81は、引戸の防火ドア1を収納するスペースで、戸袋壁83は建物の躯体に固定されるので、防火ドア1のメンテナンスのために取り外しできる構造は採用されない。とくに、玄関ドアは戸袋81の前面の戸袋壁83を周囲の壁と同一意匠とするので、メンテナンスのために取り外しできる構造は採用されず、ほとんど例外なく建物躯体と一体構造で同一意匠に施工される。
【0033】
[固定バー3]
固定バー3は、戸袋81となる建物躯体80に水平姿勢に固定される。ただ、固定バー3には傾斜角を調整してレールバー2を固定するので、必ずしも正確な水平姿勢に固定する必要はない。固定バー3は建物躯体80に固定された状態で、表面にレールバー2が固定される。レールバー2は走行台11が移動させるレール21を備える。レール21を走行台11が移動して、防火ドア1は開位置と閉位置とに移動される。固定バー3は、防火ドア1を開位置と閉位置とに移動するレールバー2を固定できるように、レールバー2よりも長い細長い金属板で製作される。図1図3に示す固定バー3は、レールバー2の両端から突出する全長であって、所定の上下幅の垂直プレート31の側縁に固定リブ32を設けている。固定バー3は、図2図5の断面図に示すように、所定の横幅の金属板を、横断面図がコ字状となる形状に曲げ加工して、垂直プレート31の両側に固定リブ32を設けている。図5の断面図に示す固定バー3は、垂直プレート31と固定リブ32とを一体構造に連結する金属板で、垂直プレート31の両側縁(図において上下の側縁)を、ベースプレート35を介して建物躯体80に固定している。ベースプレート35は、建物躯体80に固定された金属板で、固定バー3を溶接して固定している。図5のベースプレート35は、固定バー3を溶接している第1のベースプレート35Aと、第1のベースプレート35Aを固定している第2のベースプレート35Bと、さらに第2のベースプレート35Bを固定している第3のベースプレート35Cからなり、第3のベースプレート35Cを建物躯体80に固定している。
【0034】
図5の防火ドア装置100は、第2のベースプレート35Bの上縁に設けている天面プレート36の先端縁に、点検口カバー37を連結している。点検口カバー37を連結するために、天面プレート36は下面に点検口カバー37の係止金具38を固定している。係止金具38は下端に係止リブ38aを設けて、係止リブ38aに点検口カバー37を連結している。点検口カバー37は、防火ドア1の上部をカバーして、防火ドア1の上部に設けられる走行台11、車輪12、レールバー2などを隠蔽する。点検口カバー37は脱着できるように連結され、必要なときは外して、防火ドア1のメンテナンスを容易にできる。
【0035】
以上の防火ドア装置100は、固定バー3を建物躯体80に固定するベースプレート35を、第1のベースプレート35A、第2のベースプレート35B、及び第3のベースプレート35Cで構成して、これ等のベースプレート35を介して固定バー3を建物躯体80に固定しているが、本発明は固定バー3を建物躯体80に固定する構造を特定するものでなく、他の形状のベースプレートを介して固定バーを建物躯体に固定することができ、また、ベースプレートを使用することなく固定バーを直接に建物躯体に固定することもできる。
【0036】
[レールバー2]
図5の断面図に示すレールバー2は、固定レール21の長手方向に伸びる金属板で、上縁に調整リブ22、中間にリニアモータ6、下縁にレール21を設けている。この図のレールバー2は、第1のレールバー2Aと第2のレールバー2Bで構成して、第1のレールバー2Aに調整リブ22を設けて、第2のレールバー2Bにレール21を設けている。このレールバー2は、好ましくは、第1のレールバー2Aを高強度な鉄製として調整リブ22の曲げ強度を強くし、第2のレールバー2Bはコイルユニット61の磁束への影響の少ないアルミニウム製としている。レールバー2は、第1のレールバー2Aの内側に第2のレールバー2Bを溶接や接着などの方法で一体構造に連結されるが、これ等の接合方法以外の方法で固定して一体構造とすることもできる。また、レールバー2は全体を鉄やアルミニウム等の金属で一体構造に成形して製作することもできる。
【0037】
第1のレールバー2Aは、上縁と下縁を内側に曲げ加工して水平姿勢の調整リブ22を設けている。上下の調整リブ22は、固定バー3の内側にあって、固定バー3の固定リブ32と平行で水平姿勢に配置されている。第2のレールバー2Bは、上下縁に内側に突出する連結リブ23を設けている。下縁の連結リブ23は先端縁にレール21を設けて、上縁の連結リブ23は内側に、リニアモータ6の固定子62であるコイルユニット61を固定している。
【0038】
レールバー2は固定バー3に固定されるが、メンテナンス時に固定バー3から外すことができ、また傾斜角を調整できる構造で固定バー3に固定される。この構造で固定バー3に固定するために、レールバー2は、後端を係止機構4で固定バー3に連結して、先端部を傾斜角調整機構5で固定バー3に連結している。
【0039】
[係止機構4]
係止機構4は、表面が閉塞された戸袋81からレールバー2を引き抜きできるように、脱着自在な構造で後端を固定バー3に連結している。係止機構4は、図6及び図7に示すように、レールバー2を長手方向に引き抜いて固定バー3から分離できる挟持アーム41を備え、この挟持アーム41でレールバー2を固定バー3に密着状態に連結している。挟持アーム41は、引き抜き方向と反対側の端部(図1図3おいて左端)を固定バー3の垂直プレート31に固定している金属板で、この金属板は好ましくは弾性アーム板41Aである。挟持アーム41は、固定端の反対側の端部には、レールバー2を挿入できる挿入隙間42を固定バー3との間に設けている。弾性アーム板41Aの挟持アーム41は、挿入隙間42をレールバー2の厚さよりも狭くして、挿入されたレールバー2を弾性的に固定バー3に押出状態で連結できる。ただ、挟持アーム41は必ずしも弾性アーム板41Aとする必要はなく、挿入隙間42をレールバー2の厚さに等しくして、レールバー2を固定バー3に密着状態で連結できる。図7の拡大断面図に示す挟持アーム41は、挿入隙間42の隙間を開口部に向かって次第に大きくして、レールバー2をよりスムーズに挿入できる形状としている。
【0040】
レールバー2は係止機構4で固定バー3に連結されるが、レールバー2には重い防火ドア1の重量が作用する。レールバー2が防火ドア1の重量に耐えるために、レールバー2の後端は、固定バー3の下端縁に設けている固定リブ32の上に載せて固定バー3に連結される。係止機構4は、レールバー2の後端部を固定バー3との間に挟んで、レールバー2が固定リブ32から外れない位置に保持する。レールバー2の下端縁を固定リブ32の上に載せて連結する構造は、レールバー2の端部を重い防火ドア1の重量に耐える支持力で支持しながら、閉鎖された戸袋81内にレールバー2を挿入して簡単に固定バー3に脱着自在に連結できる特長も実現する。それは、レールバー2の後端を固定リブ32の上に載せて、固定バー3をガイドとしてレールバー2を戸袋81内に挿入して、レールバー2の後端を挟持アーム41の挿入隙間42に案内して確実に連結できるからである。
【0041】
[傾斜角調整機構5]
傾斜角調整機構5は、下り勾配に固定バー3に固定されるレールバー2の傾斜角を調整する。レールバー2は、傾斜角調整機構5で傾斜角を調整した後、固定バー3に固定される。レールバー2は、固定バー3から取り外してメンテナンスができるように固定バー3に固定される。この構造でレールバー2を固定バー3に固定する構造は、図5の断面図に示すように、好ましくはレールバー2を貫通する止ネジ33を固定バー3にねじ込んでレールバー2を固定バー3に固定する。レールバー2は、上下方向に伸びるスリット24を設け、このスリット24に止ネジ33を貫通して固定バー3にねじ込んで、傾斜角を調整して上下に移動するレールバー2を固定バー3に固定できる。また、タッピングビス34をレールバー2に貫通して固定バー3にねじ込む構造によっても、傾斜角を調整したレールバー2を固定バー3に固定することができる。
【0042】
傾斜角調整機構5は、図5の断面図に示すように、固定バー3に固定リブ32を、レールバー2に調整リブ22を設けて、固定リブ32と調整リブ22とを対向位置に配置して、固定リブ32と調整リブ22との隙間53を調整して、レールバー2の傾斜角を調整することができる。図5の傾斜角調整機構5は、レールバー2の上縁に設けている調整リブ22を、固定バー3の上縁に設けている固定リブ32の下方に配置して、固定リブ32と調整リブ22との隙間53を調整して、レールバー2の傾斜角を調整している。この傾斜角調整機構5は、固定リブ32と調整リブ22の間隔を狭くして、すなわち調整リブ22を上方に移動して、レールバー2の下り勾配の傾斜角を小さくでき、固定リブ32と調整リブ22の間隔を広くして、すなわち調整リブ22を下方に移動して、レールバー2の下り勾配の傾斜角を大きくできる。
【0043】
図5の傾斜角調整機構5は、固定リブ32と調整リブ22の間隔を調整ネジ51で調整している。この傾斜角調整機構5は、固定リブ32に垂直姿勢に調整ネジ51を回転しない構造に固定して、調整ネジ51には調整ナット52をねじ込んでいる。レールバー2の調整リブ22は調整ネジ51の貫通穴22aを設けて調整ネジ51を貫通穴22aに挿入して、調整ネジ51の先端から調整ナット52をねじ込んでいる。この構造の傾斜角調整機構5は、調整ナット52を回転して、固定リブ32と調整リブ22との間隔を調整して、レールバー2の傾斜角を調整することができる。この傾斜角調整機構5は、調整ナット52を調整ネジ51にねじ込んで、調整リブ22を上昇させてレールバー2の傾斜角を小さくし、反対に調整ナット52を緩める方向に回転して、調整リブ22を降下してレールバー2の傾斜角を大きくできる。
【0044】
傾斜角調整機構5は、図8に示す構造でレールバー2の傾斜角を調整することもできる。この図の傾斜角調整機構5は、調整リブ22に調整ネジ51を回転自在に挿通する貫通穴22aを設けて、固定リブ32には調整ネジ51をねじ込む雌ネジ孔54を設けている。図に示す雌ネジ孔54は、固定リブ32に開口された貫通孔32aと同軸に配置されたナット部材55を、溶接等により固定リブに32に固定することにより設けている。ただ、雌ネジ孔は、固定リブに雌ネジを切って設けることもできる。この傾斜角調整機構5は、調整リブ22に下から上に挿通している調整ネジ51の先端部を固定リブ32の雌ネジ孔54にねじ込んで、固定リブ32と調整リブ22との間隔を調整してレールバー2の傾斜角を調整する。調整ネジ51をねじ込んで、調整リブ22を固定リブ32に接近して、レールバー2の傾斜角を小さくし、調整ネジ51を緩める方向に回転して、調整リブ22と固定リブ32の間隔を広くして、レールバー2の傾斜角を大きくできる。
【0045】
以上の傾斜角調整機構5は、固定リブ32に雌ネジ孔54を設けて調整ネジ51をねじ込んでレールバー2の傾斜角を調整しているが、傾斜角調整機構は、図示しないが、固定リブに調整ネジを回転自在に挿通する貫通穴を設け、この貫通穴に挿通している調整ネジの雌ネジ孔を調整リブに設ける構造とすることもできる。調整リブの雌ネジ孔は、調整リブに開口された貫通孔と同軸にナット部材を固定して設けることも、調整リブに雌ネジを切って設けることもできる。この傾斜角調整機構は、調整ネジをねじ込んで、調整リブを固定リブに接近して、レールバーの傾斜角を小さくし、調整ネジを緩める方向に回転して、調整リブと固定リブの間隔を広くして、レールバーの傾斜角を大きくできる。
【0046】
固定リブ32又は調整リブ22に設けている雌ネジ孔54に調整ネジ51をねじ込んで、固定リブ32と調整リブ22の間隔を調整する傾斜角調整機構5は、固定リブ32と調整リブ22のいずれか一方に調整ネジ51を回転自在に挿通する貫通穴32a、22aを設け、他方には調整ネジ51の雌ネジ孔54を設け、調整ネジ51を貫通穴22a、32aに挿入して先端部を雌ネジ孔54にねじ込んで、固定リブ32と調整リブ22との間隔を調整してレールバー2の傾斜角を調整することができる。
【0047】
さらに、傾斜角調整機構5は、図9の断面図に示すように、固定バー3の下縁に設けている固定リブ32の上方に、レールバー2の調整リブ22を設けて、固定リブ32と調整リブ22との隙間53を調整して、レールバー2の傾斜角を調整することもできる。この傾斜角調整機構5は、固定リブ32に垂直姿勢に調整ネジ51を回転しない構造に固定して、調整ネジ51には調整ナット52をねじ込んでいる。レールバー2の調整リブ22は調整ネジ51の貫通穴22aを設けて、調整ナット52がねじ込まれた調整ネジ51の先端部を貫通穴22aに挿入して調整リブ22に貫通させている。この構造の傾斜角調整機構5は、調整ナット52を回転して、固定リブ32と調整リブ22との間隔を調整して、レールバー2の傾斜角を調整することができる。この傾斜角調整機構5は、調整ナット52を調整ネジ51の先端方向に移動するように回転させて、調整リブ22を押し上げる状態で上昇させてレールバー2の傾斜角を小さくし、反対に調整ナット52を調整ネジ51のねじ頭の方向に移動するように回転させて、調整リブ22を降下させてレールバー2の傾斜角を大きくできる。
【0048】
さらに、固定バーの下縁の固定リブとレールバーの下端の調整リブの隙間を調整して、レールバーの傾斜角を調整する傾斜角調整機構は、図示しないが、調整リブに垂直姿勢に調整ネジを回転しない構造に固定して、調整ネジには調整ナットをねじ込むと共に、固定リブに調整ネジの貫通穴を設けて、調整ナットがねじ込まれた調整ネジの先端部を貫通穴に挿入して固定リブに貫通させることもできる。この構造の傾斜角調整機構も、調整ナットを回転して、固定リブと調整リブとの間隔を調整して、レールバーの傾斜角を調整することができる。この傾斜角調整機構は、調整ナットを調整ネジの先端方向に移動するように回転させて、調整リブを上昇させてレールバーの傾斜角を小さくし、反対に調整ナットを調整ネジのねじ頭の方向に移動するように回転させて、調整リブを降下してレールバーの傾斜角を大きくできる。
【0049】
以上の電動式の防火ドア装置100は以下の工程で施工して建物に固定する。
1.戸袋81の表面を塞ぐ戸袋壁83が設けられておらず、戸袋81の表面が開放された状態で、戸袋81内に位置する建物躯体80の表面に固定バー3を固定する。図5の防火ドア装置100は、あらかじめ建物に固定しているベースプレート35に溶接して固定バー3を固定する。固定バー3は下縁をベースプレート35に溶接して、上部を止ネジ(図示せず)でベースプレート35に固定する。固定バー3は後端から先端に向かって下り勾配に固定する。
さらに、レールバー2を固定バー3に脱着自在に連結する係止機構4の挟持アーム41を固定する。挟持アーム41は一端(図1及び図3において左端部をネジ止めして固定バー3に固定する。挟持アーム41は、レールバー2を挟んで固定バー3に連結できる位置に固定する。
【0050】
2.建物躯体80に固定バー3を固定した後、建物躯体80から離して戸袋81の表面に戸袋壁83を施工して、建物躯体80と戸袋壁83との間に防火ドア1を収納する収納スペースのある戸袋81を施工する。戸袋81は側面を開口して、防火ドア1を開閉する開口部としている。
【0051】
3.戸袋81内にレールバー2の後端を挿入して、レールバー2の先端を、固定バー3と挟持アーム41との隙間42に案内して、レールバー2を挟持アーム41で固定バー3の表面に連結する。レールバー2は、固定バー3の下縁に設けている固定リブ32に先端を載せて、固定バー3の表面に沿って戸袋81に挿入して、後端を挟持アーム41と固定バー3との間に案内して、固定バー3に連結できる。
【0052】
4.後端を固定バー3に連結した状態で、レールバー2の先端部を傾斜角調整機構5で上下に移動して、レールバー2の傾斜角を調整する。レールバー2は調整リブ22を固定リブ32に載せた状態で、図5の傾斜角調整機構5の調整ネジ51を、固定リブ32から調整リブ22に上から下に挿通して、調整リブ22から下方に突出する調整ネジ51のネジ部に調整ナット52をねじ込んで、調整ネジ51でレールバー2を固定バー3に仮止めする。この状態で、調整ナット52を回転して、固定リブ32と調整リブ22の上下位置を調整して、レールバー2の傾斜角を調整する。調整リブ22を調整ナット52で押し上げて、言い換えると調整ネジ51と調整ナット52とで調整リブ22を吊り上げてレールバー2の傾斜角を最適値に調整するので、傾斜角が調整された状態で、レールバー2の先端の下面は固定リブ32の上面から離れた位置にある。この状態でレールバー2を最適な下り勾配とするために、固定バー3はレールバー2の最大傾斜角よりも大きな下り勾配で建物躯体80に固定される。
【0053】
5.傾斜角調整機構5で下り勾配の傾斜角を調整したレールバー2を固定バー3に固定する。レールバー2はこれを貫通する止ネジ33を固定バー3にねじ込んで固定バー3に固定される。止ネジ33は、戸袋81の外部に表出している領域でレールバー2を固定バー3に固定する。レールバー2を固定バー3から外すときに、止ネジ33を外してレールバー2を戸袋81から引き出してメンテナンスするからである。レールバー2は後端を係止機構4で固定バー3に連結して、戸袋81の外部に表出する領域を止ネジ33で固定バー3に連結される。
【0054】
6.レールバー2を固定バー3に連結した後、走行台11に吊り下げ状態で防火ドア1を連結している走行台11を、レールバー2のレール21に載せて、防火ドア1をレールバー2に連結する。
リニアモータ6のコイルユニット61は、あらかじめレールバー2に固定され、固定バー3の永久磁石63はあらかじめ走行台11に固定しているので、走行台11をレールバー2に連結する状態で、コイルユニット61と可動子64の永久磁石63は対向位置に配置される。したがって、制御回路7でリニアモータ6のコイルユニット61の移動磁界を制御して、防火ドア1を開閉できる。
【0055】
7.リニアモータ6を非接触センサ71で制御する装置は、リニアモータ6の制御回路7に非接触センサ71を連結して、非接触センサ71から信号で制御回路7がリニアモータ6を制御して、防火ドア1を開閉する。非接触センサ71に顔認識センサ71Aを使用する装置は、顔認識センサ71Aを防火ドア1を固定しているドア枠(図示せず)に設けて、防火ドア1に接近する人物を顔を認識して、防火ドア1を開閉する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、リニアモータで開閉できる電動式の防火ドア装置として、マンションの玄関ドア等に好適に使用される。
【符号の説明】
【0057】
100…防火ドア装置
1…防火ドア
2…レールバー
2A…第1のレールバー
2B…第2のレールバー
3…固定バー
4…係止機構
5…傾斜角調整機構
6…リニアモータ
7…制御回路
11…走行台
12…車輪
14…吊り下げ金具
21…レール
22…調整リブ
22a…貫通穴
23…連結リブ
24…スリット
31…垂直プレート
32…固定リブ
32a…貫通穴
33…止ネジ
34…タッピングビス
35…ベースプレート
35A…第1のベースプレート
35B…第2のベースプレート
35C…第3のベースプレート
36…天面プレート
37…点検口カバー
38…係止金具
38a…係止リブ
41…挟持アーム
41A…弾性アーム板
42…挿入隙間
51…調整ネジ
52…調整ナット
53…隙間
54…雌ネジ孔
55…ナット部材
61…コイルユニット
61a…コイル
62…固定子
63…永久磁石
64…可動子
71…非接触センサ
71A…顔認識センサ
72…カメラ
73…演算回路
74…メモリ
80…建物躯体
81…戸袋
82…隙間
83…戸袋壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9