(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054470
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】積みブロック擁壁構造及び積みブロック
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
E02D29/02 303
E02D29/02 302
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161540
(22)【出願日】2020-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】596160425
【氏名又は名称】和光コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(72)【発明者】
【氏名】金丸 和生
【テーマコード(参考)】
2D048
【Fターム(参考)】
2D048AA13
2D048AA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業が簡単な布積み施工を可能としつつブロックを大型化でき、高度の熟練を要せず施工が可能で簡単な施工作業で行うことのできる積みブロック擁壁構造並びに積みブロックを提供する。
【解決手段】積みブロック擁壁構造1Aは、面部を有し隣接配置されるブロック同士の合端14を有する台板部12と、面部から離反する方向に台板部12の背面側から一体に突設した控え部20と、を含む積みブロック10,11を布積み状に積み上げながら構築する積みブロック擁壁構造1Aであり、各積みブロック11の上下の合端の重合部15が水平面xと平行な水平重合面16を含む。施工時には台板部12の合端14を面合わせ及び位置合わせ調整しながら擁壁を構築できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面部を有し隣接配置されるブロック同士の合端を有する台板部と、面部から離反する方向に台板部の背面側から一体に突設した控え部と、を含む積みブロックを布積み状に積み上げながら構築する積みブロック擁壁構造であり、
各積みブロックの上下の合端の重合部が水平面と平行な水平重合面を含むことを特徴とする積みブロック擁壁構造。
【請求項2】
控え部は、台板部の板面から直角方向に突設することを特徴とする請求項1記載の積みブロック擁壁構造。
【請求項3】
控え部は、台板部の背面側から1個又は複数個が一体に突設して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積みブロック擁壁構造。
【請求項4】
最下段の積みブロックである基礎ブロックは、台板部の上端側に水平面と平行な合端を有すると共に、控え部の下端側は地面に平行な接地面を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積みブロック擁壁構造。
【請求項5】
最下段の積みブロックである基礎ブロックは、地面上に自立可能であることを特徴とする請求項4記載の積みブロック擁壁構造。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載の積みブロック擁壁構造に用いられる積みブロックであり、各積みブロックの上下の合端の重合部が水平面と平行な水平重合面を形成する合端を含む積みブロック。
【請求項7】
請求項4に記載の積みブロック擁壁構造に用いられる積みブロックであり、上端側に水平面と平行な合端を有すると共に、下端側は地面に平行な接地面を有する積みブロック。
【請求項8】
請求項4に記載の積みブロック擁壁構造に用いられる積みブロックであり、最下段の積みブロックである基礎ブロックは、地面上に自立可能であることを特徴とする請求項4記載の積みブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積みブロック擁壁構造及び積みブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
法面、崖、盛り土などの土留め用にブロックを用いて擁壁を築く方法が知られている。特に、河川護岸や道路・造成など、土が崩れるのを防ぐ法面保護に胴込めコンクリートや裏込めコンクリートを用いて構築される積みブロック擁壁が広く知られている。積みブロックはコンクリートの成型、脱型が比較的に容易で量産可能であり、いわゆる間知ブロックや間知タイプのブロック等が開発され広く普及している。また、積みブロックは河川などの防災・減災工事等において緊急時に短期間で大量使用のニーズが多くなっている。一方、積みブロックは擁壁の強度、耐力保持のため経験を有する技能工による施工が求められる。そして、近時の技能工確保は容易ではなく、このため各ブロック自体を大型化して作業工数を少なくする一方、作業を簡単かつ短時間に行える積みブロックが待望されている。従来、特許文献1の積みブロックとその製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の積みブロックは、普通コンクリートの間知型ブロックの面部表面にポーラスコンクリートを付着させたものであり、自然環境へ配慮し、谷積み施工を例示している。
図8は、特許文献1の
図4の擁壁の断面説明図であり、図中100は積みブロック、101は胴込めコンクリート、102は裏込め砕石、103は基礎コンクリート、104は擁壁を示す。同図に示すように、擁壁法面に対して錘形の控え体の軸が略直交する状態で積み上げながら胴込めコンクリート、裏込め材等により壁体強度を保持している。しかしながら、特許文献1の積みブロック構造は谷積み施工により熟練技能工が必要であり、また、ブロックは小型のもので施工時の作業工数並びに作業時間がかかる問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、作業が簡単な布積み施工を可能としつつブロックを大型化でき、コンクリートの成型、脱型が簡単で量産が可能であり、高度の熟練を要せず施工が可能であり簡単な施工作業で行うことのできる積みブロック擁壁構造並びに積みブロックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、面部13を有し隣接配置されるブロック同士の合端14を有する台板部12と、面部14から離反する方向に台板部12の背面側から一体に突設した控え部20と、を含む積みブロック11を布積み状に積み上げながら構築する積みブロック擁壁構造であり、各積みブロック11の上下の合端14b1,14b2の重合部15が水平面xと平行な水平重合面16を含む積みブロック擁壁構造1Aから構成される。
【0007】
その際、控え部20は、台板部12の板面から直角方向に突設するとよい。
【0008】
また、控え部20は、台板部12の背面側から1個又は複数個が一体に突設して形成されているとよい。
【0009】
さらに、最下段の積みブロックである基礎ブロック10は、台板部12Aの上端側に水平面xと平行な合端14b1を有すると共に、控え部20Aの下端側は地面に平行な接地面60を有するとよい。
【0010】
また、本発明は、積みブロック擁壁構造1Aに用いられる積みブロックの最下段の積みブロックである基礎ブロック10は、地面上に自立可能であるとよい。
【0011】
また、本発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の積みブロック擁壁構造1Aに用いられる積みブロックであり、各積みブロックの上下の合端の重合部15が水平面xと平行な水平重合面16を形成する合端14b1,14b2を含む積みブロック11から構成される。
【0012】
また、本発明は、請求項4に記載の積みブロック擁壁構造に用いられる積みブロックであり、上端側に水平面xと平行な合端14b1を有すると共に、下端側は地面に平行な接地面60を有する積みブロック10から構成される。
【0013】
また、本発明は、請求項4に記載の積みブロック擁壁構造に用いられる積みブロックであり、最下段の積みブロックである基礎ブロックは、地面上に自立可能であるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の積みブロック擁壁構造及び積みブロックによれば、作業が簡単な布積み施工を可能としつつブロックを大型化でき、コンクリートの成型、脱型が簡単で量産が可能であり、高度の熟練を要せず施工が可能であり簡単な施工作業で行うことのできる積みブロック擁壁構造並びに積みブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る積みブロックを用いた積みブロック擁壁構造の断面説明図である。
【
図2】(a)は、
図1の積みブロック擁壁構造に用いる積みブロックの平面図である。(b)は、
図1の積みブロック擁壁構造に用いる積みブロックの正面図である。(c)は、
図1の積みブロック擁壁構造に用いる積みブロックの側面図である。(d)
図1の積みブロック擁壁構造に用いる積みブロックの底面図である。(e)は、
図1の積みブロック擁壁構造に用いる積みブロックの背面図である。(f)は、
図2(a)のf-f線矢視図である。(g)は、
図2(a)のg-g線矢視図である。
【
図3】
図1の積みブロック擁壁構造に用いる積みブロックの背面斜め方向から見た斜視図である。
【
図4】実施形態による積みブロック擁壁構造の最下段の積みブロック列とその上の二段目の積みブロック列の一部を示した斜視説明図である。
【
図5】
図4の組付け状態の背面側から見た斜視説明図である。
【
図6】
図1の積みブロック擁壁構造を正面側から見た布積み状態を示す説明図である。
【
図7】(a)は、
図1の積みブロック擁壁構造に用いる最下段の積みブロックの平面図である。(b)は、
図1の積みブロック擁壁構造に用いる最下段の積みブロックの正面図である。(c)は、
図1の積みブロック擁壁構造に用いる最下段の積みブロックの側面図である。(d)
図1の積みブロック擁壁構造に用いる最下段の積みブロックの底面図である。(e)は、
図1の積みブロック擁壁構造に用いる最下段の積みブロックの背面図である。(f)は、
図7(a)のf-f線矢視図である。(g)は、
図7(a)のg-g線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照しつつ本発明の積みブロック擁壁構造及び積みブロックの実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の積みブロックを用いた積みブロック擁壁構造の概略縦断面説明図であり、図において、積みブロックを傾斜面を形成するように複数個段積みして積みブロック擁壁1が構築され、これらの積みブロックの正面側(河川側あるいは道路側)に法面が形成されている。
【0018】
積みブロック擁壁1の基礎部分は、計画施工地の地面を掘削して基礎砕石50を投入し、さらにその上にコンクリートを打設してコンクリート基礎52を構築したもので、上面に平面部53を有している。その平面部53の上面に積みブロックを安息角より大きな角度で地山側に鋭角に傾斜して段積みし、積み上げて積みブロック擁壁1が形成されている。
【0019】
実施形態において、積みブロック擁壁構造1Aは、
図6に示すように積みブロックを布積み状に積み上げながら構築される。積みブロック擁壁1はコンクリート基礎52上に設置される最下段の第1積みブロック10と、第1の積みブロック10から上方へ順次積み上げられる第2の積みブロック11と、を含む。
【0020】
図2ないし
図3は、第1の積みブロック10の上に順次上方へ向けて積み上げられる第2の積みブロック11を示している。
図2(a)は第2積みブロック11の平面図、
図2(b)は第2積みブロック11の正面図、
図2(c)は第2積みブロック11の側面図、
図2(d)は第2積みブロック11の底面図、
図2(e)は第2積みブロック11の背面図である。
図2ないし
図3において、第2積みブロック11は、台板部12と控え部20とを含む。
【0021】
図に示すように、台板部12は、正面視横長四角形の厚みを有する台板で形成されており、ブロックの正面側に面部13を有するとともに四辺の厚み部分に隣接配置されるブロックどうしの当接面を含む合端14を有している。
図2(b)に示すように、台板部12は道路に対面する側となる正面視横長四角形状であり、その4辺に合端14が形成される。合端は積み上げるブロックどうしの接合部分であり、実施形態において詳しくは長矩形の平面を有している。実施形態において、
図2(c)に示すように台板部12は、側面視で一対の対向2辺が他の対の対向2辺より長い長矩形状の平行四辺形合端a1、(a2)を形成している。平行四辺形合端a1,a2は、それぞれ長辺t1、t2、短辺t3、t4を有している。そして、台板部12は、いずれの縦断面においても側面視と略同一の平行四辺形面を有している。台板部12は、さらに
図2(a)に示すように平面視で略長四角形状の合端b1、(b2)を形成している。長四角形状の合端b1、b2は、それぞれ長辺h1、h2、短辺h3、h4を有している。略長四角形状の上下の合端b1、b2がブロック積みした際の重合部15を形成する(
図1参照)。
【0022】
後述するように、
図2(c)において、台板部は、その側面視では控え部20との接合部分から先端(前方)側が斜め下方に突設した断面が平行四辺形の四角形状台である。
【0023】
なお、
図2(b)の正面図において見られる千鳥状の区切り部は台板部12の面部表面の模様であり、必ずしも設けなくともよい。
【0024】
控え部20は、台板部12の背面側において面部13から離反する方向に台板12に一体として突設形成されたブロックの控え手段であり、外部に曝される表面側の面部13を有する台板部12を地山側に連結接合させて地山と一体化させる。
【0025】
図2(a)、(c)、(d)において、控え部20は、台板部12の板面から直角方向に突設している。そして平面視で台板部12の背面側から突設先端方向に向けて錘状にやや台の厚みを小さくしている。これにより、成型後に型枠から取り外しやすく短期間で量産が可能である。
【0026】
実施形態の控え部20は、
図2(a)、(d)に示すように台板部12から離反する方向で同台板部12から一体に突設した脚台であって、台板部12の背面から下駄の刃状に相互に間隔Pを開けて突設した2個の脚台22,23を含む。脚台22,23は、
図2(c)に示すように側面視で一つの長辺側が台板部12の背面側に接合した略縦長四角形状であり、他の長辺の上下略中央部分に台板部12との接合部側に向けて凹状の切欠き24が形成されている。脚台22,23は、
図2(a),
図2(d)に示すように台板部12の背面との接合部からR部を介して突設方向にやや厚みを狭める様に形成されている。切欠き24は、各積ブロック2の背面側においてブロックの胴部を横方向に貫通する空隙を形成する。そして、積ブロック2を積み上げていく際に胴込め材としての胴込めコンクリートを投入すると脚台22,23間の間隔P、切欠き24、脚台22,23の外側部分の空隙にコンクリートが流入し、積ブロックの控え部側が一体化して強固な壁体を形成する。
【0027】
実施形態において、控え部20は2個の脚台を含む構成であるが、3個、4個あるいはそれ以上の脚台を有する構成であってもよい。また、脚台は1個のみの間知状ブロックであってもよい。
【0028】
図1、
図4~
図6において、前述したように、略長四角形状の上下の合端b1、b2がブロック積みした際の合端14の重合部15を形成する。そして、
図1に示すように重合部15は水平面xと平行な水平重合面16を含む。
【0029】
図1に示すように、第2の積みブロックを上下に段積みすると側面側の両合端a1,a2の平行四辺形の長いほうの対向2辺t1、t2を斜めに立てた状態で、短いほうの対向2辺t3、t4が平行四辺形の斜辺を形成するように配置され、このとき、この短いほうの対向2辺t3、t4を含む長四角形状合端14b1、14b2がブロックの上下の合端14を形成する。そして、
図2(c)の積ブロック2の側面視において、縦長四角形の脚台22(23)との接合部分から台板部12はその側面縦長平行四辺形状のために前下がり状の板状部として接合されている。すなわち、このブロックの上下の合端14b1、14b2は相互に平行な前下がり状の面として形成されている。したがって、台板部12の面部13を計画法面勾配に設定してブロックを積み上げ施工するときに、前下がり形状の台板部12の上下の合端14b1、14b2を水平面としての例えば地面Gと水平となるように設置しながら積み上げることにより、簡単にブロック積み施工を実施することが可能となる。
【0030】
積みブロック11は、台板部の背面側から直角状に控え部の脚台を設けたブロックであって、側面視で台板部の上下合端が地面と平行な面となるように控え部との接合部から平行四辺形状の前下がり態様で台板部が設けられたブロックである。そして、台板部の上下合端を水平面あるいは地面と平行に配置しながら積みブロックを積み上げ施工することにより、簡単な作業により作業時間を短縮し、しかも耐力に優れた擁壁を構築することが可能となる。
【0031】
即ち、
図1において例えば二段目の上に三段目の第2積ブロック2を積み上げ施工する際には、ブロックの正面側である面部を法面勾配に合わせながら上下のブロックの合端14b1(b2)どうしを接合させつつ積み上げることにより簡単かつ効率良く短時間に積み上げ施工することが可能である。
【0032】
また、台板部12の背面から控え部20の脚台22,23は直角あるいは直角状に接合されているから、台板部12の面部側板面に対して脚台22,23は直角あるいは略直角状に接合されている。したがって、
図1のように法面勾配に沿う台板部12の正面側面部と脚台22,23とは直角状に接合されて配置される。このことから、各積ブロックの上下接合部分である合端14b1(b2)は地面に平行な水平重合面を形成して施工を簡易に行える一方、各ブロックの控え部20は法面勾配に対して直交方向に突設方向軸txを形成するから、積み上げ施工時の胴込めコンクリートの打ち継ぎ面yと脚台22,23の突設方向軸txは交差するように設置される。この結果、積みブロックで構築する擁壁1全体は、壁体全体の耐力を十分に備えることとなる。その結果、この種布積みブロック自体を大型に成型して壁体構築に使用することができる。
【0033】
各積みブロック11の上下の合端14b1,14b2の重合部15が水平面xと平行な水平重合面16を含むようにすることにより、耐力十分な壁体を構築できる。このとき、脚台の突設方向軸を台板部12に対して直角方向に設定した状態で控え部20の具体的構成は任意に設定できる。
【0034】
次に、本実施形態の最下段の基礎ブロックとしての第1積みブロック10について説明する。
図7は、第1の積みブロック10を示している。
図7(a)は第1積みブロック10の平面図、
図7(b)は第1積みブロック10の正面図、
図7(c)は第1積みブロック10の側面図、
図7(d)は第1積みブロック10の底面図、
図7(e)は第1積みブロック10の背面図である。
図7において、第1積みブロック10は、台板部12Aと控え部20Aとを含む。
【0035】
第1積みブロック10は第2積みブロック11と、略同一の構成を有しており、台板部12と、控え部20Aを有している。台板部12は第2積みブロックと同一の構成であり、それぞれ上下に長四角形状合端14b1、14b2を有している。
【0036】
図7において、台板部12の背面側から直角方向に控え部20Aが突設されており、さらに控え部20Aは、
図7(a)、(d)に示すように台板部12Aから離反する方向で同台板部12Aから一体に突設した脚台であって、台板部12の背面から下駄の刃状に相互に間隔Pを開けて突設した2個の脚台22,23を含む。
【0037】
第1積みブロック10が第2積みブロック11と異なるのは第1積みブロック10の控え部20Aの下端が斜めに切り取られて切り取られた跡の斜辺部分を接地面60としている点である。即ち、最下段の積みブロックである第1積みブロック10は、上端側に水平面xと平行な合端を有すると共に、下端側は地面に平行な接地面60を備えている。そして、控え部20Aの下端が斜めに切り取られて切り取られた跡の斜辺部分を接地面60としている。実施形態において、台板部12Aの下合端14b2と接地面60は面一状に設けられており、コンクリート基礎52上への設置一体化を簡単に行えるようになっている。本実施形態において、特に、この第1積みブロック10である基礎ブロックは、地面上にそれ単独で自立可能である。これによって、裏込め材の投入や胴込めコンクリートの作業中にブロックのサポート即ち倒れ防止操作が不要であり、ブロック壁体の構築を円滑に行うことが可能である。さらに、製造が簡単な形状であり、施工が容易であると同時に水平面すなわち地面と平行な合端を有する台板部12Aと控え部20Aとは直角接合であるため第2積みブロックと同様に、擁壁全体の耐力向上に寄与する。さらに、第1積みブロック10が自立可能であるから、各上下の合端の短辺側幅方向長さを、積み上げるブロックが安定するバランスに設定することにより、その上の第2積みブロックである第2段、第3段目の積みブロックも自立して配置可能である。このため、擁壁の構築の際の作業労力の軽減と、工期の短縮に寄与することが可能である。
【0038】
第1積みブロックの構成は、実施形態のように、台板部12Aの下合端14b2と接地面60を面一状に設けた構成に限定されるものではなく、少なくとも第2段目の第2積みブロック11の下合端14b2に重合する上合端14b1を有する台板部12Aを有する構成であればよい。
【0039】
本実施形態の積みブロック10,11を用いて擁壁を構築する場合、
図1、
図6において、コンクリート基礎52上に最下段の基礎ブロックとしての第1積みブロック10を側面接合しながら配置する。この時、第1積みブロック10の上合端14b1は地面に平行な面として設置される。次に、第1積みブロック10上に第2積みブロック11を積み上げ設置する。このとき、第1積みブロック10の上合端14b1に第2積みブロック11の下合端14b2を面合わせして位置調整しながら設置する。第3段以上のブロックについても同様に積み上げてゆく。1段又は数段の積み上げごとに施工計画に従い胴込めコンクリート72を打設し締め固めながら上方に積み上げてゆく。その際、ブロックを据え付けるごとに胴込めコンクリートの打ち込み高さと同じ高さ程度にその都度裏込め砕石70を投入して地山との一体化を図る。そして、胴込めコンクリート72の打設ごとに水平状のコンクリート打ち継ぎを数回行いながら各積みブロックの控え部と地山側を連結させつつ一体化させて擁壁を構築する。計画高さに到達したら上端側に天端コンクリート74を打設して施工完了する。本実施形態の積みブロック擁壁とすることで、各ブロックのサイズを大型化でき施工の機械化、省力化に資することができる。また、台板部と控え部の簡単な構造により、型枠に投入したコンクリートの打ち込みが容易で、固化後の脱型も簡単に行える。ブロックはポーラスコンクリートブロックを用いてもよく、自然景観を配慮した透水ブロックや植栽ブロックの擁壁を構築することも可能である。
【0040】
図1において、構築された擁壁の法勾配で台板部12、12Aが設置され、このとき各台板部12の上下合端の面及び位置合わせ調整しつつ胴込めコンクリート72を打設し固めながらブロックを積み上げると、側面視で台板部の板面から控え部20、20Aの脚台22,23の突設方向軸txが直交方向に設定される結果、水平面xと平行にコンクリート打ち継ぎ面yが形成されるから、擁壁が道路側となる正面側方向に滑動して崩落しにくくなり、耐力を大きくした擁壁を築造することが可能となる。
【0041】
以上のように、本発明の積みブロック擁壁構造及び積みブロックによれば、作業が簡単な布積み施工を可能としつつブロックを大型化でき、コンクリートの成型、脱型が簡単で量産が可能な擁壁構造及び積みブロックを実現することができる。また、高度の熟練を要せず施工が可能であり簡単な施工作業で行うことのできる積みブロック擁壁構造並びに積みブロックを実現可能である。
【0042】
本発明の積みブロック擁壁構造及び積みブロックは、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、他の実施形態を用いるようにしてもよい。例えば、控え部20、20Aの脚台22,23の平面視の横幅サイズの大小や側面視の外形形状を丸みをつけたり通孔を設けたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の積みブロック擁壁構造及び積みブロックは、河川、護岸、道路その他で必要な擁壁構築を実現し得る。
【符号の説明】
【0044】
1 積みブロック擁壁
1A 積みブロック擁壁構造
10 第1積みブロック(基礎ブロック)
11 第2積みブロック
12 台板部
12A 第1積みブロックの台板部
14 合端
14a1、14a2 平行四辺形合端(側面)
14b1、14b2 長四角形状合端(平面)
15 重合部
16 水平重合面
20 控え部
20A 第1積みブロックの控え部
22、23 脚台
22A,23A 第1積みブロックの脚台
24 切り欠き
60 接地面
x 水平面
y 胴込めコンクリート打ち継ぎ面
tx 突設方向軸