(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054475
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】アスファルトコーティング骨材
(51)【国際特許分類】
E01C 3/06 20060101AFI20220331BHJP
E01C 7/14 20060101ALI20220331BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
E01C3/06
E01C7/14
E01C7/18
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161549
(22)【出願日】2020-09-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】320006106
【氏名又は名称】株式会社 山豊
(74)【代理人】
【識別番号】100181571
【弁理士】
【氏名又は名称】栗本 博樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 誠司
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF01
2D051AG01
2D051AH02
2D051EB04
(57)【要約】
【課題】舗装工事おいて、特殊で大掛りな機器を用いることなく、プライムコートとしてのアスファルト乳剤散布後、短い養生期間でアスファルト舗装の舗設機器やコンクリート舗装のためのダンプトラックの円滑な走行を可能にし、一般交通への開放が不可欠な現場に対応でき、養生砂による道路粉塵問題が解消されることを課題とする。
【解決手段】プライムコートとしてのアスファルト乳剤散布後、略等厚のストレートアスファルトを表面にコーティングした高温の骨材を養生砂として用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装工における路盤上のプライムコートのためのアスファルト乳剤散布後の養生砂であって、アスファルトをコーティングした高温の5mm未満の粒径の骨材。
【請求項2】
骨材を球形換算して、計算上の平均厚さ0.005mm以下にコーティングした請求項1の骨材。
【請求項3】
骨材を球形換算して、計算上の平均厚さ0.004mm以上0.005mm以下にコー
ティングした請求項1の骨材。
【請求項4】
任意の粒度分布を有する骨材について、骨材全体の重量を、粒度分布に係る各クラスの骨材の重量の小計値を該クラスの骨材のクラス代表径で除した値の総和で、除した値を骨材全体の代表径として、アスファルトのコーティング厚さを算定した請求項2乃至請求項3の骨材。
【請求項5】
コンクリート舗装における路盤工上に施工されるプライムコートのためのアスファル
ト乳剤散布後の養生砂であって、請求項1乃至請求項4の骨材。
【請求項6】
トンネル工事における舗装の路盤上のプライムコートのためのアスファルト乳剤散
布後の養生砂であって、請求項1乃至請求項5の骨材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装工に利用するアスファルトコーティング骨材で、特にプライムコートの養生砂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舗装とは、道路、広場等の地表面を覆うため施工されるものであり、表面の排水や載荷荷重、その他の外力、外的環境に対応するため、地表面のみならず地表面に影響を及ぼす一定の範囲までをも舗装の対象としている。原地盤上に路盤が施工され、その路盤上に施工される舗装の材料によって、舗装の種別は大別される。主としてアスファルト舗装に代表される瀝青系及びコンクリート舗装に代表されるセメント系がある。
【0003】
アスファルト舗装及びコンクリート舗装何れにおいても、路盤工施工後、アスファルト乳剤を散布するプライムコートが施工される。プライムコートの役割は、路盤からの水分の上昇を防ぎ、アスファルト舗装の場合は、アスファルト混合物と路盤のなじみをよくするためであり、コンクリート舗装の場合は打設したコンクリートからの水分の路盤への吸収を防止するためである。プライムコートとしてアスファルト乳剤を散布した路盤(通常は上層路盤)上では、さらに上部の舗装施工のための施工機械や必要に応じて車両の走行がなされる。その車両走行によって、アスファルト乳剤が剥がれたり、車両へ付着するなどによる路盤の損傷を防止するため、養生砂が散布される。本発明は、その養生砂に適用され得るアスファルトコーティング骨材に関するものである。
【0004】
アスファルトは、高温では液状で、常温になると硬化した状態となるが、アスファルト乳剤は、乳化剤を含む水とアスファルトを混合させたものであり、常温で液体であり、水と分離することにより硬化する。プライムコートのアスファルト乳剤は、路盤表面に浸透し、路盤を安定させる。路盤、特にプライムコートの施工される上層路盤は、十分締固められている上に、散布乳剤が硬化するまでに一定の期間を要するため、施工機械の走行を勘案して、一定の養生期間を経てからアスファルト混合物やコンクリート版の舗設がなされる。プライムコートの養生には、前記の養生砂が散布される。
【0005】
養生砂は、アスファルト乳剤の散布量に対して、多く散布しすぎると無駄な資材になるだけではなく、周辺への粉塵公害の原因となる場合がある。逆に少なすぎると、車両へアスファルト乳剤の付着や路盤損傷の原因となる。養生砂を均等で適量散布に係る先行技術としては、アスファルト乳剤等の結合材を均一にスプレーノズルで散布し、同じ車両の骨材散布装置で適量の骨材を散布し、敷き均しされるような舗装用作業車が提案されている(特開2001-123412号)。また、プライムコートとしてアスファルト乳剤に代えて、フォームドアスファルトを路盤に散布し、直後にアスファルト混合物を舗設するといった極めて短時間養生の実現を提案している(特開2000-178909)。
【0006】
本発明は、養生砂としてストレートアスファルトをコーティングした骨材を用いるものであるが、アスファルト舗装面の不良個所及びその周辺にアスファルト乳剤を散布し、更にその上にアスファルトでコーティングした砂を用いて、余分な乳剤を回収するアスファルト舗装面の補修方法が提案されている(特開2007-113184号)。このアスファルトコーティング砂に関しては、コーティング量4%程度で散布量としては余分な乳剤を吸収するに十分な量としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-123412号公報
【特許文献2】特開2000-178909号公報
【特許文献3】特開特開2007-113184号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】社団法人日本道路協会編集発行 「舗装施工便覧(平成18年版)」平成18年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特殊で大掛りな機器を用いることなく、プライムコートとしてアスファルト乳剤散布後、短い養生期間で通常の舗設機器の円滑な走行を可能にし、一般交通への開放が不可欠な現場に対応でき、養生砂による道路粉塵問題が解消されることを課題とする。また、特にトンネル等のコンクリート舗装版施工の際、路盤工へのコンクリート中の水分の吸収や路盤からの湧水対策のためのプライムコートとして、安定したアスファルト乳剤層の確保が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
アスファルト乳剤散布後、略等厚のストレートアスファルトを表面にコーティングした高温の骨材を養生砂として用いる。
【発明の効果】
【0011】
プライムコートは、路盤表面にアスファルト乳剤を散布後、一定量の砂を散布し、敷き均して養生期間を経て次の工程が実施されるが、この砂に換えて、ストレートアスファルトを薄くコーティングした高温の骨材を用いる。高温状態でのアスファルトの粘性は低いため、コーティング骨材の単独粒子性を失うことなく、換言すると塊になることなく、容易に広く散布することができ、散布中コーティングしたアスファルトは、アスファルト乳剤とのなじみがよく、骨材の一部は容易にアスファルト乳剤中に浸漬する一方で、コーティング骨材のコーティング厚さが薄いため硬化が早く、養生期間を大きく短縮できる。養生後は、散布した砂粒子間でのコーティングしたアスファルトの付着、硬化によって、骨材間のせん断抵抗力を見込めることができ、車両が走行してもタイヤ等への付着も少なく、また舗設機械の走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、アスファルト乳剤散布後、略等厚のアスファルトをコーティングした骨材を散布したプライムコート養生時の説明図である。(実施例1)
【
図2】
図2は、通常のアスファルト乳剤及び養生砂散布の手順の説明図である(実施例1)。
【
図3】
図3は、アスファルト乳剤散布後、人力での養生砂に散布斑(むら)があった場合の説明図である(実施例1)。
【
図4】
図4は、現道での舗装改修工事における施工手順に係る説明図である。(実施例4)
【
図5】
図5は、骨材の粒度分布に係る説明図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0013】
砂とは、砂粒子を多く含む土。日本統一分類法の粒径区分では、0.075~2.0mmの土粒子を「砂粒子」と定義している(土木用語大辞典 社団法人土木学会編 1999年2月発行)が、本発明において、0.0~5.0mmのまでの骨材も砂とし、養生砂に用いている。骨材とは、コンクリートやアスファルト混合物を作る際に用いられる材料である砕石や砂利や砂などとする。
【0014】
アスファルトをコーティングする際、コーティング厚さの管理をするためには、対象とする骨材の粒径は重要な要素となる。熱した骨材をバッチ内に投入してアスファルトを加え、混合・撹拌してアスファルトをコーティングする場合、添加するアスファルト量によって、コーティング厚さを管理する必要がある。このとき、アスファルト添加量は、アスファルト添加後の重量百分率で管理される。数1に骨材を単一粒径の球形とした場合のアスファルト投入量とコーティング厚さを示す。
【0015】
【0016】
上記の計算は、骨材を粒径d(半径r)の球形とした場合の重量Wの骨材に、重量百分率p%のアスファルトを添加混合して、アスファルトコーティングした場合のコーティング厚さtを示すものである。計算上、単独の骨材粒子に係るものであるが、同一粒径の複数の骨材においても適用できるため、理想的な単粒骨材(同一の粒径の骨材)にも適用される。
骨材の体積は、球形を仮定しているため、重量は数1(1)の通りである。アスファルトコーティング厚さに係るアスファルト容積は、同(2)に示す通りである。その容積は、アスファルト付着後と付着前の体積差であるが、数1に示す通り、骨材半径に比較してコーティング厚さが小なる時(r>>t と表示している。)は、数1(2)に示す通りで、球体の表面積に厚さtを乗じたものになる。アスファルト重量百分率pとアスファルトコーティングtの関係は、数1(4)に示す通りとなる。具体的な計算例を次の表1に示す。
【0017】
【0018】
表1によると、砂粒子の単位体積質量2.53g/cm
3とし、アスファルトの単位体積質量1.0g/cm
3とし、半径0.1mm~10.0mmの骨材に3%の重量百分率のアスファルトを混合した場合、そのコーティング厚さは、0.0026mm~0.26mmとなっている。
一方、自然に存在する土や砂や人工的な骨材については、種々の大きさの固体の集合体である。土や骨材に関して、このような種々の大きさの固体の集合体を粒度分布(所定の範囲の粒径の集合体の重量比)で表現する。
図5に0.075mm~5.0mm骨材の粒度分布をグラフにしたものを表示する。粒径の範囲は、ふるいによって分類されたものである。このような骨材にアスファルトを混合してアスファルトコーティングする場合のアスファルト混合量とアスファルトコーティング厚さについての算出方法を次の数2で示す。
【0019】
【0020】
骨材の粒度分布に関して、骨材は各粒径クラス(数2で表示のi番目の骨材をクラスという。)における平均粒径(数2では、半径表示でriとしている。)の集合体であると仮定し、骨材重量Wiからその個数miを算出し(数2(3)に記載)、該個数miに平均粒径の骨材面積を乗じて、骨材表面積Aiとしている(数2(4)に記載)。アスファルト重量百分率pのアスファルト混合量WASは、数2(2)に示され、アスファルトは、均等に骨材に付着するとして、アスファルトコーティング厚さを求めている。即ち、全アスファルト容量を各粒径のクラスの骨材の表面積の合計で除したものであり、数2(1)及び(5)に示す通りである。本明細書においては、各クラスの骨材に対して、該クラスを代表する骨材のクラス代表径として、最大骨材と最小骨材の粒径の平均を平均粒径としているのは、簡便のため、近似的に用いている。
【実施例0021】
プライムコートとして、アスファルト乳剤散布後、高温のアスファルトコーティング骨材を養生砂として散布した場合の実施例を示す。一般的には、上層路盤施工後、プライムコートとしてアスファルト乳剤が1~2リットル/1平方メートル程度、プライムコートの表面には、0.2~0.5m3/100m2の養生砂が散布される。養生砂の散布は、アスファルト乳剤の施工機械への付着や剥がれを防止するためである(非特許文献1、趣旨は92頁に記載されている。)。プライムコートとしての通常の養生砂の施工手順及びその問題点を記載した後、アスファルトコーティング骨材の施工例を示す。 なお、本例は、プライムコートの養生時の養生砂に関するものであり、アスファルト乳剤の路盤への浸透は、養生砂散布後として、路盤への浸透は考慮しないものとする。
【0022】
図2を用いて手順と示す。
(1)路盤施工後、アスファルト乳剤散布機を用いて、路盤表面に1mm~2.0mm程度の厚さで均等にアスファルト乳剤を散布する(
図2(1))。
(2)次に、養生砂を斑(むら)なく均等に散布する。養生砂の投入によってアスファルト乳剤の表面位置が一様に水平に上昇する(
図2(2))。
(3)その後も(2)と同様に均等に養生砂を投入し、その後敷き均しをして、簡易な締固めを行う。
図2(3)が最終的なアスファルト乳剤と養生砂の関係を示すものである。
均等に養生砂の投入し、敷き均しすることによって、養生砂表面とアスファルト乳剤表面の位置は水平を保って、養生砂に大きな載荷荷重や衝撃的な輪荷重が生じない限り、アスファルト乳剤表面位置は安定し、養生砂表面を走行する舗設のための車両がタイヤに付着したりするなど、下方にある路盤に影響を与えることは少ない。
【0023】
しかしながら、上記のような均等で斑(むら)のない養生砂の散布は、散布機械や熟練作業員による作業を除いて、困難であり、通常の人力手作業の場合は、
図3に示すように、投入時に散布箇所に斑が生じる。
図3(1-1)に示すように、養生砂を一度に多く投入し山状になっている箇所ではアスファルト乳剤表面は低下し、その周辺に該乳剤を押し出す。次に、その周辺部に同様な砂散布を行った場合、同図に示すように散布した山状の養生砂間の谷状部にアスファルト乳剤が池の様になって溜まっていることが起こる。これは、アスファルト乳剤と養生砂の関係において、アスファルト乳剤の粘性、砂とアスファルト乳剤の表面張力及び砂表面の粗面の影響、砂に含まれる空気等様々な要因による。養生砂が谷状になっている箇所の溜まったアスファルト乳剤が養生砂の中を流動して、該乳剤が水平面を形成するのに大きな時間を必要とする。乳剤が溜まった状態で、次に養生砂を敷き均しても、更にアスファルト乳剤表面は上昇し、表面にアスファルト乳剤が現れるようなこととなる(
図3(1-2))。その結果、表面近くでの養生砂に付着したアスファルト乳剤は、降下することないため、アスファルト乳剤層の薄い部分に流れ込む量が少なくなり、アスファルト乳剤層の厚薄が現出する。
図3(1-2)におけるように、表面近くまでアスファルト乳剤が存在する箇所或いはアスファルト乳剤が付着した養生砂の箇所では、その後の車両の走行によって、タイヤに養生砂を付着させる結果となり、逆の箇所では養生砂による粉塵の巻揚げを起こす。更に、車両の走行を繰り返すと、養生砂表面の凹凸が生じ、更に凹凸は一層大きなものになり、路盤の損傷に至ることとなる。このようなプライムコートでは、アスファルト混合物と路盤との間に砂の層が生じ、コンクリート舗装の場合は打設したコンクリートからの水分の吸収を惹起する。
【0024】
通常の養生砂に換えて、高温のアスファルトコーティング骨材を散布した場合について記載する。アスファルトコーティングに用いたアスファルトは、表2のストレートアスファルトであり、骨材は、表3の粒度分布を有する骨材である。散布するアスファルトコーティング骨材について、コーティングは、150℃以上で混合し、散布は、140℃~150℃である。
【0025】
【0026】
【0027】
表3の骨材に、全体重量百分率で3.0%の表2のストレートアスファルトを添加した場合について、数2の仮定によるコーティング厚さの計算例を表4に示す。
【0028】
【0029】
粒度分布を有する骨材に関しての表4の計算例は、骨材粒子を球形と仮定することに加え、粒度分布の各クラスを代表する粒径(表4の平均粒径)の骨材に置換して、各クラスの骨材の全表面積を算出している。加えて、表4では、0.075mmのふるいを通過する約3%(表4の19.2gに相当する。)の骨材に関しては、粒子単独状態でアスファルトをコーティングすることを想定していない。なぜなら、粒径が小さくなると、砂粒子へのアスファルトの付着に関して、砂粒子に対するアスファルトの粘性やアスファルトと砂粒子の接触角度に係る付着性の悪さ等によって、コーティングが困難になる一方で、細骨材粒子が他のアスファルトコーティングされた骨材に付着するケースは多くなると考える。そのような仮定の下ではあるが、平均アスファルト厚さは、t=0.0044mmである。
【0030】
上記アスファルトコーティング骨材を高温状態で、
図3に示すような斑(むら)のある骨材散布を行った場合の状況を
図3(2)に示す。アスファルトコーティング骨材の場合については、
図3(1-1)に示したような池のような深い溜まり状態は確認できない。骨材投入時のアスファルト乳剤表面を押し下げる効果は減少しているのか、或いは、骨材投入斑によるによるアスファルト乳剤による溜まり状態の乳剤が投入後短時間でアスファルト乳剤が骨材間を移動しているのか、いずれかであり、
図3(2)に示すような水平面に近い状態になる。これは、骨材にアスファルトをコーティングすることによって、コーティングされた骨材とアスファルト乳剤とが極めて濡れの良い状態になったものと考えられる。また、骨材中のアスファルト乳剤の流動速度が大きくなったものと考える。
アスファルトコーティング骨材敷き均し後は、
図1の状態となり、骨材表面への車両の走行等に対して、車両走行への極めて大きな安定性を確保できた。走行の安定性とは、散布した骨材表面への車両走行による凹凸の発生が生じることなく、散布骨材の飛散等は、殆ど確認出来なかったことを意味する。そのことは、アスファルトコーティング骨材粒子間の接触箇所のアスファルトの膜が温度低下後にアスファルトの硬化によって、骨材粒子間に大きな付着力を生むことによって説明される。上記付着力は、散布骨材表面への載荷荷重に対して剪断抵抗となって、アスファルト乳剤表面を保護することとなる。コーティング骨材の散布時から微細な骨材の飛散等が認められなかったことから、一定粒径以下の骨材は、骨材粒子単独での存在することはないものと考えられる。
高温のアスファルトコーティング骨材を養生砂として使用することによって、プライムコート上へのアスファルト合材の舗設に関しては、アスファルト乳剤の表面が骨材表面から一定の位置に安定して存在するため、不要な養生砂が路盤とアスファルト合材に挟まった状態にはなり得ない。
結論として、プライムコートの養生砂として高温のアスファルトコーティング骨材は、アスファルト乳剤との馴染みの良さ、コーティング骨材間の付着力の発生、微細骨材の飛散防止等、極めて有効な資材である。
養生砂として、アスファルトコーティング骨材の有効性は、上記の通りであるが、次にどの程度のコーティングを施すのが最良であるかが問題となる。そこで、実施例2として、高温処理した5mm未満の骨材にストレートアスファルトの添加量を変えた実証実験の結果を示す。重量百分率で2%添加して混合処理したアスファルトコーティング骨材、同じく2.5%のコーティング骨材、同じく3%のコーティング骨材、同じく3.5%のコーティング骨材による実験に加えて、アスファルトを添加しない高温の骨材(アスファスルト乳剤の骨材表面への付着の促進や付着後の乳剤中の水分の分離促進を狙いとしたもので、砂を150℃以上に熱したもの。以下焼き砂ともいう。)を用いた場合も比較の対象とした。
本実施例は、養生砂として、表2のストレートアスファルトを、表3の5mm未満の骨材に対して、上記のそれぞれの重量百分率で添加し、混合しコーティングした骨材と、表3の骨材を140℃~150℃の高温で散布する焼き砂を、プライムコートの養生砂として使用するものである。これらは、施工例1と同様で、全て150℃以上の高温で混合若しくは処理され、大きな温度低下のない状態で、施工されている。焼き砂の散布は先述の理由で、アスファルト混合量は、アスファルトコーティングによる骨材とアスファルト乳剤の馴染みの程度、骨材粒子間のアスファルト膜の付着によって塊にならないか否かといった扱い易さの程度、養生砂として投入後、コーティングしたアスファルトの硬化によって、砂粒子間のせん断強度に及ぼす影響等勘案して行ったものである。コーティングの厚さに関しては、表4と同じ手法で算出したものである。
実証実験は、路盤施工後の8m×10mの5つの区画にアスファルト乳剤を2リットル/平方メートル散布し、直後に上記の骨材を0.4m3/100m2人力で散布して敷き均し、ダンプトラックを走行させて、その様子を観察した。実験結果を表5に表す。
アスファルト乳剤と骨材の馴染みの良否に関しては、骨材にアスファルトコーティングしていること自体に起因するものであるが、アスファルトコーティング厚さは、作業時の散布における施工性や養生砂散布後の車両走行等による輪荷重に対する安定に関して、支配的なパラメータであると考える。
同じ作業員の人力投入による散布に関して、表5のような結果が生じたのは、まず、焼き砂に関しては、アスファルト乳剤との骨材との接触面での粘性の低下はあまり期待できず、骨材とアスファルト乳剤の馴染みは悪く、通常の養生砂散布との優位性は認められなかった。
重量百分率で3.5%の量のアスファルトのコーティングは、骨材間の付着力が大きすぎるため、作業に支障をきたしている。人力による散布及びその後の敷き均しが困難となっている。3.5%のアスファルト混合は、上記の骨材が球形とした場合の平均コーティング厚さ0.0052mmは、先述の様に粒径0.075mm以下の粒径の骨材への付着を勘案すると更に小さいものとなる。
2.0%及び2.5%の量のアスファルトのコーティングでは、骨材散布、敷き均しの作業に支障はないが、養生砂の散布後の車両走行に対する抵抗性、車両走行時の粉塵に若干の課題を残す。
3.0%のアスファルトのコーティングは、作業性、散布後の車両の走行時の路盤の損傷、粉塵の発生など全ての点において、優れた結果を得た。この3.0%のアスファルト量による上記計算方法による平均アスファルトコーティング厚さは、0.0044である。