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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054478
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】着物衣装
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/00 20180101AFI20220331BHJP
【FI】
A41D1/00 101D
A41D1/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161558
(22)【出願日】2020-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】520375572
【氏名又は名称】株式会社タートル
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(72)【発明者】
【氏名】今西 美里
(72)【発明者】
【氏名】東 園江
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕子
【テーマコード(参考)】
3B030
【Fターム(参考)】
3B030BA01
3B030BB01
3B030BC02
3B030BC04
(57)【要約】
【課題】着物本来の外観を損なうことなく、着脱作業の容易化及び時間短縮を図り、着用時の負担を軽減できる着物衣装を提供する。
【解決手段】着物衣装1は、着物の上衣部分を構成する上衣部2と、上衣部2と分離され、着物の下衣部分を構成する下衣部3とを備えている。上衣部2の前側において、衿20の左右前側部分である左前衿部211と右前衿部212とが衿合わせされた状態で固定されている。左前衿部211及び右前衿部212には、半衿の一部を構成する半衿部22(左半衿部221、右半衿部222)が取り付けられている。上衣部2の後側には、衿20の後側部分である後衿部25の上端から後身頃26の下端まで背中心に沿って開閉可能な開閉部27が設けられている。開閉部27は、着脱可能なスナップボタン28及びファスナー29によって開閉できるよう構成されている。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着物の上衣部分を構成する上衣部と、
前記上衣部と分離され、着物の下衣部分を構成する下衣部と、を備え、
前記上衣部の前側において、衿の左右前側部分である左前衿部と右前衿部とが衿合わせされた状態で固定され、
前記左前衿部及び前記右前衿部には、半衿の少なくとも一部を構成する半衿部が取り付けられ、
前記上衣部の後側には、衿の後側部分である後衿部の上端から後身頃の下端まで背中心に沿って開閉可能な開閉部が設けられ、
前記開閉部は、着脱可能な連結部によって開閉できるよう構成されている、着物衣装。
【請求項2】
前記上衣部の両肩部には、それぞれ着物の裄を調節可能な裄調節部が設けられている、請求項1に記載の着物衣装。
【請求項3】
前記裄調節部は、被係止部と、前記被係止部に着脱可能に係止され、前記被係止部よりも着物の袖側に設けられた1又は複数の係止部と、を有する、請求項2に記載の着物衣装。
【請求項4】
前記下衣部は、スカート状に構成され、前記下衣部には、肩掛けベルトが設けられ、前記肩掛けベルトは、ベルトの長さを調節可能なベルト長さ調節部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の着物衣装。
【請求項5】
前記上衣部の上に羽織る被布をさらに備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載の着物衣装。
【請求項6】
着物の上衣部分を構成する着物上衣部と、
前記着物上衣部に固定され、袴を構成する袴部と、を備え、
前記着物上衣部の前側において、衿の左右前側部分である左前衿部と右前衿部とが衿合わせされた状態で固定され、
前記左前衿部及び前記右前衿部には、半衿の少なくとも一部を構成する半衿部が取り付けられ、
前記着物上衣部の前側には、角帯を構成する角帯部が設けられ、
前記袴部の前側には、袴の前紐及び後紐を構成する前紐部及び後紐部が設けられ、
前記着物上衣部及び前記袴部の後側には、前記着物上衣部の衿の後側部分である後衿部の上端から少なくとも前記袴部の上端部まで背中心に沿って開閉可能な開閉部が設けられ、
前記開閉部は、着脱可能な連結部によって開閉できるよう構成されている、着物衣装。
【請求項7】
前記袴部には、前記前紐部の両端部からそれぞれ延設された一対の前紐延設部が設けられ、前記一対の前紐延設部には、前記袴部の後側において前記一対の前紐延設部を着脱可能に係合する一対の係合部が設けられている、請求項6に記載の着物衣装。
【請求項8】
前記着物上衣部には、両袖が設けられていない、請求項6又は7に記載の着物衣装。
【請求項9】
前記着物上衣部の前記角帯部と前記袴部との間には、懐剣を差し込む差込部が設けられている、請求項6~8のいずれか1項に記載の着物衣装。
【請求項10】
前記着物上衣部の上に羽織る羽織をさらに備えている、請求項6~9のいずれか1項に記載の着物衣装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着物衣装に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、七五三のお祝い等において、子供に着物を着せ、写真館で記念に写真を撮ったり、神社やお寺にお参りしたりする。このとき、小さい子供に対して、着物を着せたり脱がせたりする作業(着脱作業)が非常に大変である。そこで、着付けが容易な着物が様々提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-137608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の着物では、特に小さい子供に対して着脱作業が十分に容易であるとは言えなかった。また、紐や帯を締めるため、長時間にわたって着物を着ることが小さい子供にとって大きな負担となっていた。また、着脱作業の容易化を図る一方で、着物本来の外観が損なわれるという問題もあった。
【0005】
本発明は、着物本来の外観を損なうことなく、着脱作業の容易化及び時間短縮を図り、着用時の負担を軽減できる着物衣装を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様である着物衣装は、着物の上衣部分を構成する上衣部と、上衣部と分離され、着物の下衣部分を構成する下衣部と、を備えている。上衣部の前側において、衿の左右前側部分である左前衿部と右前衿部とが衿合わせされた状態で固定されている。左前衿部及び右前衿部には、半衿の少なくとも一部を構成する半衿部が取り付けられている。上衣部の後側には、衿の後側部分である後衿部の上端から後身頃の下端まで背中心に沿って開閉可能な開閉部が設けられている。開閉部は、着脱可能な連結部によって開閉できるよう構成されている。
【0007】
上記着物衣装によれば、着物の上衣部と下衣部とが分離された2部式である。そのため、着物用の腰紐やベルト類(コーリンベルト、ウエストベルト等)が不要となり、これらを締める作業も不要となる。また、上衣部の前側において、左前衿部及び右前衿部に半衿部が取り付けられている。そのため、襦袢を着用する必要がなくなり、襦袢用の腰紐やこれを締める作業も不要となる。これにより、着脱作業が容易となり、着脱作業にかかる時間を短縮でき、着用時の負担を軽減できる。また、腰紐やベルト類が一切不要となるため、特に小さい子供にとっては着用時の負担を大きく軽減できる。
【0008】
また、上衣部の前側において、左前衿部と右前衿部とが衿合わせされた状態で固定され、上述したように、左前衿部及び右前衿部に半衿部が取り付けられている。そのため、上衣部を着せる際に、衿合わせをする必要がなくなる。また、着用時における上衣部の衿元の見栄えが良くなり、上衣部の着崩れを抑制できる。これにより、着脱作業にかかる時間を短縮できると共に、着物本来の外観を十分に維持できる。
【0009】
また、上述したように、上衣部の前側は、左前衿部と右前衿部とが衿合わせされた状態で固定され、さらに、上衣部の後側には、後衿部の上端から後身頃の下端まで背中心に沿って、着脱可能な連結部によって開閉できる開閉部が設けられている。そのため、上衣部の前側を閉じた状態で、上衣部の後側を上から下まで開いた状態にすることができる。これにより、上衣部の着脱作業が格段に容易となり、着脱作業にかかる時間を大幅に短縮できる。
【0010】
また、例えば、上衣部の上に被布を羽織ることにより、上衣部と下衣部とが分離されている部分(上衣部と下衣部との境目部分)や上衣部の後側に設けた開閉部が被布によって隠れる。これにより、着物本来の外観を損なうことなく、着脱作業の容易化及び時間短縮を図り、着用時の負担を軽減するという効果を十分に発揮できる。このように、上記着物衣装によれば、特に小さい子供であっても、着たり脱いだりを嫌がることなく、また着用時に着崩れを起こすことなく、この着物衣装を着て写真を撮ったり、神社やお寺にお参りしたりすることができる。
【0011】
さらに、着物衣装の着脱作業の容易化及び時間短縮を図ることにより、着物衣装の着付けを行う作業者に対して、着付けの教育や指導を行うことが容易となり、着付けの教育や指導にかかる時間も短縮できる。また、上衣部と下衣部との2部式であり、上衣部の後側を開いた状態にできるため、作業者は着用者の後側で着付けを容易に行うことができる。例えば小さい子供が親に抱きついた状態でも、その後側で着付けを容易に行うことができる。そして、従来のように作業者が着用者の前側(正面)で密着して着付けを行わなくてよいため、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等の感染症を予防できる。また、腰紐やベルト類が一切不要となるため、着物衣装の保管や管理が容易となる。
【0012】
上記着物衣装において、上衣部の両肩部には、それぞれ着物の裄を調節可能な裄調節部が設けられていてもよい。この場合には、裄調節部によって着物の裄を調節する肩上げが容易となる。また、例えば、上衣部の上に被布を羽織ることにより、上衣部の両肩部に設けた裄調節部が被布によって隠れるので、着物本来の外観を損なうことがない。
【0013】
また、裄調節部は、被係止部と、被係止部に着脱可能に係止され、被係止部よりも着物の袖側に設けられた1又は複数の係止部と、を有していてもよい。この場合には、裄調節部の被係止部に係止部を着脱するだけで、着物の裄を容易に調節できる。
【0014】
また、下衣部は、スカート状に構成され、下衣部には、肩掛けベルトが設けられ、肩掛けベルトは、ベルトの長さを調節可能なベルト長さ調節部を有していてもよい。この場合には、肩掛けベルトによって下衣部の着崩れやずり落ちを抑制できる。また、ベルト長さ調節部によって肩掛けベルトのベルトの長さを調節することにより、着物の丈を調節する腰上げが容易となる。また、上衣部によって肩掛けベルトが隠れるので、着物本来の外観を損なうことがない。
【0015】
また、上衣部の上に羽織る被布をさらに備えていてもよい。この場合には、上衣部の上に被布を羽織ることにより、上衣部と下衣部とが分離されている部分(上衣部と下衣部との境目部分)や上衣部の後側に設けた開閉部が被布によって隠れる。これにより、着物本来の外観を損なうことなく、着脱作業の容易化及び時間短縮を図り、着用時の負担を軽減するという効果を十分に発揮できる。
【0016】
本発明の他の態様である着物衣装は、着物の上衣部分を構成する着物上衣部と、着物上衣部に固定され、袴を構成する袴部と、を備えている。着物上衣部の前側において、衿の左右前側部分である左前衿部と右前衿部とが衿合わせされた状態で固定されている。左前衿部及び右前衿部には、半衿の少なくとも一部を構成する半衿部が取り付けられている。着物上衣部の前側には、角帯を構成する角帯部が設けられている。袴部の前側には、袴の前紐及び後紐を構成する前紐部及び後紐部が設けられている。着物上衣部及び袴部の後側には、着物上衣部の衿の後側部分である後衿部の上端から少なくとも袴部の上端部まで背中心に沿って開閉可能な開閉部が設けられている。開閉部は、着脱可能な連結部によって開閉できるよう構成されている。
【0017】
上記着物衣装によれば、着物上衣部と袴部とが一体的に構成され、着物上衣部及び袴部の前側に角帯部や前紐部及び後紐部が設けられている。そのため、着物の下衣部分が不要となると共に、着物用の腰紐、角帯、袴の前紐及び後紐が不要となり、これらを締める作業も不要となる。また、着物上衣部の前側において、左前衿部及び右前衿部に半衿部が取り付けられている。そのため、襦袢を着用する必要がなくなり、襦袢用の腰紐やこれを締める作業も不要となる。これにより、着脱作業が容易となり、着脱作業にかかる時間を短縮でき、着用時の負担を軽減できる。また、各種紐類や角帯が一切不要となるため、特に小さい子供にとっては着用時の負担を大きく軽減できる。
【0018】
また、着物上衣部の前側において、左前衿部と右前衿部とが衿合わせされた状態で固定され、上述したように、左前衿部及び右前衿部に半衿部が取り付けられている。そのため、一体である着物上衣部及び袴部を着せる際に、着物上衣部の衿合わせをする必要がなくなる。また、着用時における着物上衣部の衿元の見栄えが良くなり、着物上衣部の着崩れを抑制できる。これにより、着脱作業にかかる時間を短縮できると共に、着物本来の外観を十分に維持できる。
【0019】
また、上述したように、着物上衣部の前側は、左前衿部と右前衿部とが衿合わせされた状態で固定され、さらに、着物上衣部及び袴部の後側において、後衿部の上端から少なくとも袴部の上端部まで背中心に沿って、着脱可能な連結部によって開閉できる開閉部が設けられている。そのため、着物上衣部の前側を閉じた状態で、着物上衣部及び袴部の後側を大きく開いた状態にすることができる。これにより、一体である着物上衣部及び袴部の着脱作業が格段に容易となり、着脱作業にかかる時間を大幅に短縮できる。
【0020】
また、例えば、着物上衣部の上に羽織を羽織ることにより、着物上衣部及び袴部の後側やそこに設けた開閉部が羽織によって隠れる。これにより、着物本来の外観を損なうことなく、着脱作業の容易化及び時間短縮を図り、着用時の負担を軽減するという効果を十分に発揮できる。このように、上記着物衣装によれば、特に小さい子供であっても、着たり脱いだりを嫌がることなく、また着用時に着崩れを起こすことなく、この着物衣装を着て写真を撮ったり、神社やお寺にお参りしたりすることができる。
【0021】
さらに、着物衣装の着脱作業の容易化及び時間短縮を図ることにより、着物衣装の着付けを行う作業者に対して、着付けの教育や指導を行うことが容易となり、着付けの教育や指導にかかる時間も短縮できる。また、一体である着物上衣部及び袴部の後側を大きく開いた状態にできるため、作業者は着用者の後側で着付けを容易に行うことができる。例えば小さい子供が親に抱きついた状態でも、その後側で着付けを容易に行うことができる。そして、従来のように作業者が着用者の前側(正面)で密着して着付けを行わなくてよいため、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等の感染症を予防できる。また、各種紐類や角帯が一切不要となるため、着物衣装の保管や管理が容易となる。
【0022】
上記着物衣装において、袴部には、前紐部の両端部からそれぞれ延設された一対の前紐延設部が設けられ、一対の前紐延設部には、袴部の後側において一対の前紐延設部を係合する一対の係合部が設けられていてもよい。この場合には、一対の係合部によって一対の前紐延設部を袴部の後側において係合することにより、胴回りを適度に絞って調節できる。これにより、着用時における着物上衣部の衿元等の前側の見栄えが良くなり、着物上衣部の着崩れを抑制できる。また、例えば、着物上衣部の上に羽織を羽織ることにより、袴部の後側において一対の前紐延設部を係合する部分が羽織によって隠れるので、着物本来の外観を損なうことがない。
【0023】
また、着物上衣部には、両袖が設けられていなくてもよい。この場合には、着用時に動きやすくなり、着用時の負担を大きく軽減できる。また、七五三の前撮り等で夏頃の気温の高い時期等に着用する場合に好適であり、温度調節も容易となる。また、例えば、着物上衣部の上に羽織を羽織ることにより、両袖が設けられていないことは外観上わからないため、着物本来の外観を損なうことがない。
【0024】
また、着物上衣部の角帯部と袴部との間には、懐剣を差し込む差込部が設けられていてもよい。この場合には、懐剣を差し込む部分である差込部を予め設けておくことにより、従来のように角帯と袴との間に懐剣を差し込む場合に比べて、懐剣の差し込みが容易となり、着用時の負担も軽減できる。また、着用時以外には、差込部に懐剣を収納しておくことができるため、着物衣装の保管時に懐剣の紛失を抑制できる。
【0025】
また、着物上衣部の上に羽織る羽織をさらに備えていてもよい。この場合には、着物上衣部の上に羽織を羽織ることにより、着物上衣部及び袴部の後側やそこに設けた開閉部が羽織によって隠れる。これにより、着物本来の外観を損なうことなく、着脱作業の容易化及び時間短縮を図り、着用時の負担を軽減するという効果を十分に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態の着物衣装の前側全体を示す正面図。
図2】第1実施形態の着物衣装の後側全体を示す背面図。
図3】第1実施形態の着物衣装の上衣部及び下衣部を示す正面図。
図4】第1実施形態の着物衣装の上衣部の前側全体を示す正面図。
図5】第1実施形態の着物衣装の上衣部の前側一部を拡大して示す説明図。
図6】第1実施形態の着物衣装の上衣部の後側全体を示す背面図。
図7】第1実施形態の着物衣装の上衣部の後側が開いた状態を示す説明図。
図8】第1実施形態の着物衣装の下衣部の前側全体を示す正面図。
図9】第2実施形態の着物衣装の前側全体を示す正面図。
図10】第2実施形態の着物衣装の後側全体を示す背面図。
図11】第2実施形態の着物衣装の着物上衣部及び袴部の前側全体を示す正面図。
図12】第2実施形態の着物衣装の着物上衣部及び袴部の後側全体を示す背面図。
図13】第2実施形態の着物衣装の着物上衣部及び袴部の後側において左前紐延設部及び右前紐延設部を係合した状態を示す説明図。
図14】第2実施形態の着物衣装の着物上衣部及び袴部の後側が開いた状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
図1図2に示すように、本実施形態の着物衣装1は、七五三のお祝いの時に三歳の女の子が着用する被布セットである。着物衣装1は、着物の上衣部分を構成する上衣部2と、着物の下衣部分を構成する下衣部3と、上衣部2の上に羽織る被布10とを備えている。上衣部2と下衣部3とは、互いに分離して構成されている。着物衣装1は、着用時において、従来の被布セットと変わらない外観である。なお、従来の被布セットとは、着物、襦袢、腰紐、ベルト類、被布等を備える被布セットのことである。
【0028】
図3図4に示すように、上衣部2の前側において、衿20の左右前側部分である左前衿部211と右前衿部212とは、衿合わせされた状態で固定されている。具体的には、左前衿部211が右前衿部212の上側に重ね合わされている。左前衿部211と右前衿部212とは、互いが重なる部分において縫い付けて固定されている。
【0029】
左前衿部211及び右前衿部212には、半衿の一部を構成する半衿部22が取り付けられている。半衿部22は、襦袢に縫い付ける替え衿である半衿を模した帯状の部材である。半衿部22は、半衿の左右前側部分である左半衿部221と右半衿部222とにより構成されている。左半衿部221及び右半衿部222の内部には、見栄えを良くするための衿芯が入っている。左半衿部221と右半衿部222とは、衿合わせされた状態で左前衿部211と右前衿部212との間からその一部が露出する位置に固定されている。
【0030】
具体的には、短尺帯状の左半衿部221は、左前衿部211の内側に縫い付けて固定され、短尺帯状の右半衿部222は、右前衿部212の内側に縫い付けて固定されている。左半衿部221と右半衿部222とは、互いが重なる部分において、衿元調節部223を介して縫い付けて固定されている。左半衿部221及び右半衿部222は、衿元調節部223を介して可動でき、両者の衿合わせの角度を調節できる(後述する図7参照)。
【0031】
上衣部2の前側において、前身頃の左側部分である上衣上前部231が、前身頃の右側部分である上衣下前部232の上側に重ね合わされている。上衣下前部232には、左前衿部211が、互いが重なる部分において縫い付けて固定されている。上衣上前部231と上衣下前部232とは、前合わせされた状態で固定されている。
【0032】
上衣部2の両肩部(左右の肩山)には、それぞれ着物の裄を調節可能なスナップボタン(裄調節部)24が設けられている。スナップボタン24は、凸部(雄部、被係止部)241と、凸部241に着脱可能に係止される凹部(雌部、係止部)とにより構成されている。凸部241は、上衣部2の肩部の上げ山(肩上げによる縫い合わせ部分)の内側に設けられている。凹部242は、凸部241よりも着物の袖側に設けられている。
【0033】
図5に示すように、凹部242を凸部241に留めることにより、着物の裄を短くすることができる。また、凹部242を凸部241から外すことにより、着物の裄を元の長さに戻すことができる。すなわち、スナップボタン24により、着物の裄を2段階で調節することができ、着物の肩上げが容易となる。
【0034】
図6図7に示すように、上衣部2の後側には、衿20の後側部分である後衿部25の上端から後身頃26の下端まで背中心に沿って開閉可能な開閉部27が設けられている。開閉部27は、着脱可能な連結部であるスナップボタン(後衿連結部)28及びファスナー(後身頃連結部)29によって開閉できるよう構成されている。
【0035】
後衿部25は、開閉部27を介して左右に分割された左後衿部251と右後衿部252とを有する。左後衿部251には、右後衿部252の内側に配置され、右後衿部252と重なるように延長された延長部253が設けられている。左後衿部251と右後衿部252とは、着脱可能なスナップボタン28によって連結されている。スナップボタン28の凹部(雌部)281は、左後衿部251の延長部253に設けられ、凸部(雄部)282は、右後衿部252に設けられている。スナップボタン28の凹部281と凸部282とを留めたり外したりすることにより、開閉部27における左後衿部251と右後衿部252との間を開閉することができる。
【0036】
後身頃26は、開閉部27を介して左右に分割された左後身頃261と右後身頃262とを有する。左後身頃261と右後身頃262とは、着脱可能なスライド式のファスナー(線ファスナー)29によって連結されている。ファスナー29は、左後身頃261の端縁部及び右後身頃262の端縁部に設けられ、後身頃26の上端から下端までスライドして開閉可能に構成されている。ファスナー29を開けたり閉じたりすることにより、開閉部27における左後身頃261と右後身頃262との間を開閉することができる。
【0037】
図3図8に示すように、下衣部3は、スカート状に形成されている。下衣部3の前側において、前身頃の左側部分である下衣上前部31が、前身頃の右側部分である下衣下前部32の上側に重ね合わされている。下衣上前部31と下衣下前部32とは、前合わせされた状態で、互いが重なる部分において縫い付けて固定されている。下衣部3の上端部には、ウエストの長さを調節できる、伸縮可能なウエストゴム33が全周にわたって設けられている。
【0038】
下衣部3には、サスペンダー(肩掛けベルト)34が設けられている。サスペンダー34は、一対のベルト35を有し、後側で交差して構成されている。各ベルト35の一端は、下衣部3の前側の上端部に着脱可能なクリップ36で取り付けられている。各ベルト35の他端は、下衣部3の後側の上端部に縫い付けて固定されている。各ベルト35には、ベルト35の長さを調節可能なベルト長さ調節部37が設けられている。ベルト長さ調節部37によって、ベルト35の長さを調節することができ、着物の丈(具体的には下衣部3の下端位置)を調節する腰上げが容易となる。
【0039】
次に、本実施形態の着物衣装1における着脱手順を説明する。
子供に着物衣装1を着せる際には、まず、スカート状の下衣部3を下から穿かせ、サスペンダー34を肩に掛ける。このとき、ベルト長さ調節部37でベルト35の長さを調節することにより、着物の丈を調節して腰上げを行う。
【0040】
次いで、後側が開いた状態(図7の状態)の上衣部2を着せる。具体的には、上衣部2の後側の開いた箇所から両腕を両袖に通す。そして、ファスナー29を下から上に引き上げ、後衿部25のスナップボタン28の凸部282を凹部281に留め、開閉部27を閉じる。上衣部2を着せたときに、着物の裄が長い場合には、両肩部のスナップボタン24の凹部242を凸部241に留め、着物の裄を短くして肩上げを行う。その後、上衣部2の上から被布10を羽織らせる。以上により、着物衣装1を容易に短時間で着せることができる。
【0041】
図1図2に示すように、着物衣装1は、上衣部2の上に被布10を羽織ることにより、上衣部2と下衣部3とが分離されている部分(上衣部2と下衣部3との境目部分)、上衣部2の後側に設けた開閉部27、上衣部2の両肩部に設けたスナップボタン24が被布10によって隠れる。着物が上衣部2と下衣部3とに分離されていることは外観上わからない。また、下衣部3のサスペンダー34は上衣部2によって隠れる。このように、着物衣装1は、着用時において、従来の被布セットと変わらない外観となる。
【0042】
一方、子供に着せた着物衣装1を脱がす際には、まず、被布10を脱がす。次いで、上衣部2の後衿部25のスナップボタン28(凹部281、凸部282)を外し、ファスナー29を上から下に引き下げて開き、後側が開いた状態(図7の状態)にして両腕を両袖から抜き、上衣部2を脱がす。その後、下衣部3を脱がす。以上により、着物衣装1を容易に短時間で脱がすことができる。
【0043】
次に、本実施形態の着物衣装1における作用効果について説明する。
本実施形態の着物衣装1によれば、着物の上衣部2と下衣部3とが分離された2部式である。そのため、着物用の腰紐やベルト類(コーリンベルト、ウエストベルト等)が不要となり、これらを締める作業も不要となる。また、上衣部2の前側において、左前衿部211及び右前衿部212に半衿部22(左半衿部221、右半衿部222)が取り付けられている。そのため、襦袢を着用する必要がなくなり、襦袢用の腰紐やこれを締める作業も不要となる。これにより、着脱作業が容易となり、着脱作業にかかる時間を短縮でき、着用時の負担を軽減できる。また、腰紐やベルト類が一切不要となるため、特に小さい子供にとっては着用時の負担を大きく軽減できる。
【0044】
また、上衣部2の前側において、左前衿部211と右前衿部212とが衿合わせされた状態で固定され、左前衿部211及び右前衿部212に半衿部22が取り付けられている。そのため、上衣部2を着せる際に、衿合わせをする必要がなくなる。また、着用時における上衣部2の衿元の見栄えが良くなり、上衣部2の着崩れを抑制できる。これにより、着脱作業にかかる時間を短縮できると共に、着物本来の外観を十分に維持できる。
【0045】
また、上衣部2の前側は、左前衿部211と右前衿部212とが衿合わせされた状態で固定され、さらに、上衣部2の後側には、後衿部25の上端から後身頃26の下端まで背中心に沿って、着脱可能なスナップボタン28及びファスナー29によって開閉できる開閉部27が設けられている。そのため、上衣部2の前側を閉じた状態で、上衣部2の後側を上から下まで開いた状態にすることができる。これにより、上衣部2の着脱作業が格段に容易となり、着脱作業にかかる時間を大幅に短縮できる。また、後衿部25と後身頃26とで異なる連結部(スナップボタン28、ファスナー29)を用いることにより、開閉部27の開閉がしやすくなる。
【0046】
また、着物衣装1は、上衣部2の上に羽織る被布10をさらに備えている。そのため、上衣部2の上に被布10を羽織ることにより、上衣部2と下衣部3とが分離されている部分(上衣部2と下衣部3との境目部分)、上衣部2の後側に設けた開閉部27が被布10によって隠れる。これにより、着物本来の外観を損なうことなく、着脱作業の容易化及び時間短縮を図り、着用時の負担を軽減するという効果を十分に発揮できる。このように、着物衣装1によれば、特に小さい子供であっても、着たり脱いだりを嫌がることなく、また着用時に着崩れを起こすことなく、この着物衣装1を着て写真を撮ったり、神社やお寺にお参りしたりすることができる。
【0047】
また、上衣部2の両肩部には、それぞれ着物の裄を調節可能なスナップボタン24が設けられている。そのため、スナップボタン24によって着物の裄を調節する肩上げが容易となる。また、上衣部2の上に被布10を羽織ることにより、上衣部2の両肩部に設けたスナップボタン24が被布によって隠れるので、着物本来の外観を損なうことがない。
【0048】
また、スナップボタン24は、凸部241と、凸部241に着脱可能に係止され、凸部241よりも着物の袖側に設けられた凹部242とを有する。そのため、スナップボタン24の凸部241に凹部242を留めたり外したりする(着脱する)だけで、着物の裄を容易に調節することができる。
【0049】
また、下衣部3には、サスペンダー34が設けられている。サスペンダー34は、ベルト35の長さを調節可能なベルト長さ調節部37を有する。そのため、サスペンダー34によって下衣部3の着崩れやずり落ちを抑制できる。また、ベルト長さ調節部37によってサスペンダー34のベルト35の長さを調節することにより、着物の丈を調節する腰上げが容易となる。また、上衣部2によってサスペンダー34が隠れるので、着物本来の外観を損なうことがない。
【0050】
さらに、着物衣装1の着脱作業の容易化及び時間短縮を図ることにより、着物衣装1の着付けを行う作業者に対して、着付けの教育や指導を行うことが容易となり、着付けの教育や指導にかかる時間も短縮できる。また、上衣部2と下衣部3との2部式であり、上衣部2の後側を開いた状態にできるため、作業者は着用者の後側で着付けを容易に行うことができる。例えば小さい子供が親に抱きついた状態でも、その後側で着付けを容易に行うことができる。そして、従来のように作業者が着用者の前側(正面)で密着して着付けを行わなくてよいため、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等の感染症を予防できる。また、腰紐やベルト類が一切不要となるため、着物衣装1の保管や管理が容易となる。
【0051】
(第2実施形態)
図9図10に示すように、本実施形態の着物衣装4は、七五三のお祝いの時に三歳や五歳の男の子が着用する羽織袴セットである。着物衣装4は、着物の上衣部分を構成する着物上衣部5と、袴を構成する袴部6と、着物上衣部5の上に羽織る羽織40とを備えている。着物上衣部5と袴部6とは、分離されているわけではなく、着物袴部7(後述する図11等参照)として一体的に構成されている。着物衣装4は、着用時において、従来の羽織袴セットと変わらない外観である。なお、従来の羽織袴セットとは、着物、襦袢、腰紐、角帯、袴、羽織等を備える羽織袴セットのことである。
【0052】
図11に示すように、着物上衣部5は、着物の上衣部分のみで構成され、着物の下衣部分が設けられていない。着物上衣部5は、両袖が設けられておらず、袖の無いノースリーブ型である。
【0053】
着物上衣部5の前側において、衿50の左右前側部分である左前衿部511と右前衿部512とは、衿合わせされた状態で固定されている。具体的には、左前衿部511が右前衿部512の上側に重ね合わされている。左前衿部511と右前衿部512とは、互いが重なる部分において縫い付けて固定されている。
【0054】
左前衿部511及び右前衿部512には、半衿の一部を構成する半衿部52が取り付けられている。半衿部52は、襦袢に縫い付ける替え衿である半衿を模した帯状の部材である。半衿部52は、半衿の左右前側部分である左半衿部521と右半衿部522とにより構成されている。左半衿部521及び右半衿部522の内部には、見栄えを良くするための衿芯が入っている。左半衿部521及び右半衿部522は、衿合わせされた状態で左前衿部511と右前衿部512との間からその一部が露出する位置に固定されている。
【0055】
具体的には、短尺帯状の左半衿部521は、左前衿部511の内側に縫い付けて固定され、短尺帯状の右半衿部522は、右前衿部512の内側に縫い付けて固定されている。左半衿部521と右半衿部522とは、互いが重なる部分において、衿元調節部523を介して縫い付けて固定されている。左半衿部521及び右半衿部522は、衿元調節部523を介して可動でき、両者の衿合わせの角度を調節できる(後述する図14参照)。
【0056】
着物上衣部5の前側において、前身頃の左側部分である上衣上前部531が、前身頃の右側部分である上衣下前部532の上側に重ね合わされている。着物上衣部5の前側(上衣上前部531、上衣下前部532)の下側部分には、角帯を構成する角帯部54が縫い付けて固定されている。角帯部54は、角帯を模した帯状の部材であり、着物上衣部5の前側にのみ設けられ、着物上衣部5の後側には設けられていない。上衣上前部531及び上衣下前部532は、前合わせされた状態で角帯部54に対して固定されている。
【0057】
着物上衣部5の前側には、袴部6の前側が縫い付けて固定されている。具体的には、着物上衣部5の前側(上衣上前部531、上衣下前部532)の下側部分に縫い付けて固定された角帯部54に、袴部6の前側の上端部が縫い付けて固定されている。
【0058】
袴部6の前側の上端部には、袴の前紐を構成する前紐部61が設けられている。前紐部61は、袴の前紐を模した帯状の部材であり、袴部6の前側にのみ設けられ、袴部6の後側には設けられていない。前紐部61の位置において、着物上衣部5の角帯部54と袴部6との間には、懐剣612(図9参照)を差し込む空間である差込部611が設けられている。差込部611が設けられている部分は、袴部6が角帯部54に縫い付けられていない。
【0059】
図11図12に示すように、袴部6には、前紐部61の左端部から延設された左前紐延設部(前紐延設部)621と、前紐部61の右端部から延設された右前紐延設部(前紐延設部)622とが設けられている。左前紐延設部621及び右前紐延設部622には、袴部6の後側において左前紐延設部621及び右前紐延設部622を係合する一対の面ファスナー(係合部)631、632が設けられている。図13に示すように、袴部6の後側において、左前紐延設部621と右前紐延設部622とを一対の面ファスナー631、632で留めることにより、胴回りを適度に絞って調節できる。
【0060】
図11に示すように、袴部6の前側の上端部であって、前紐部61の下側の位置には、袴の後紐を構成する後紐部64が縫い付けて固定されている。後紐部64は、袴の後紐を模した帯状の部材であり、袴部6の前側にのみ設けられ、袴部6の後側には設けられていない。後紐部64は、その両端部が袴部6に縫い付けて固定されている。後紐部64には、十文字を模した十文字部65が設けられている。十文字部65は、後紐部64の中央部において縫い付けて固定されている。
【0061】
図12図14に示すように、着物上衣部5の後側には、袴部6の後側が縫い付けて固定されている。具体的には、着物上衣部5の後側の下側部分に、袴部6の後側の上端部が縫い付けて固定されている。
【0062】
着物袴部7(着物上衣部5、袴部6)の後側には、着物上衣部5の衿50の後側部分である後衿部55の上端から袴部6の上端部まで背中心に沿って開閉可能な開閉部71が設けられている。開閉部71は、着脱可能な連結部であるホック(後衿連結部)72及びファスナー(後身頃連結部)73によって開閉できるよう構成されている。
【0063】
着物上衣部5の後衿部55は、開閉部71を介して左右に分割された左後衿部551と右後衿部552とを有する。左後衿部551と右後衿部552とは、上下に間隔を設けて配置された、着脱可能な2つのホック(スプリングホック)72によって連結されている。各ホック72は、輪部(アイ)721と、輪部721に引っ掛ける鉤部(ホック)722とを有する。輪部721は、左後衿部551の端縁部に設けられ、鉤部722は、右後衿部552の端縁部に設けられている。
【0064】
ホック72の輪部721に鉤部722を引っ掛けて留めることにより、左後衿部551の端縁部と右後衿部552の端縁部とを突き合せた状態で連結することができる。ホック72の輪部721と鉤部722とを留めたり外したりすることにより、開閉部71における左後衿部551と右後衿部552との間を開閉することができる。
【0065】
着物袴部7(着物上衣部5、袴部6)の後身頃74は、開閉部71を介して左右に分割された左後身頃部741と右後身頃部742とを有する。左後身頃部741と右後身頃部742とは、着脱可能なスライド式のファスナー(線ファスナー)73によって連結されている。ファスナー73は、左後身頃部741の端縁部及び右後身頃部742の端縁部に設けられ、着物上衣部5の後身頃の上端から袴部6の後身頃の上端部までスライドして開閉可能に構成されている。ファスナー73を開けたり閉じたりすることにより、開閉部71における左後身頃部741と右後身頃部742との間を開閉することができる。
【0066】
次に、本実施形態の着物衣装4における着脱手順を説明する。
子供に着物衣装4の着せる際には、まず、後側が開いた状態(図14の状態)の着物袴部7(着物上衣部5、袴部6)を下から穿かせ、着物上衣部5に両腕を通す。そして、ファスナー73を下から上に引き上げ、ホック72の輪部721に鉤部722を引っ掛けて留め、開閉部71を閉じる。
【0067】
次いで、袴部6の左前紐延設部621と右前紐延設部622とを袴部6の後側に回し、胴回りを適度に絞って調節し、一対の面ファスナー631、632で留める。そして、袴部6の前紐部61の差込部611に懐剣612を差し込む。その後、着物上衣部5の上から羽織40を羽織らせ、羽織紐41(図9参照)を取り付ける。以上により、着物衣装4を容易に短時間で着せることができる。
【0068】
図9図10に示すように、着物衣装4は、着物上衣部5の上に羽織40を羽織ることにより、着物上衣部5及び袴部6の後側やそこに設けた開閉部71、袴部6の後側における前紐延設部621及び右前紐延設部622の係合部分が羽織40によって隠れる。また、羽織40によって着物上衣部5に両袖が設けられていないことは外観上わからない。また、着物の下に袴を穿いているかのように見えるし、角帯部54、袴部6の前紐部61及び後紐部64によって、角帯、袴の前紐及び後紐を締めているかのように見える。このように、着物衣装4は、着用時において、従来の羽織袴セットと変わらない外観となる。
【0069】
一方、子供に着せた着物衣装4を脱がす際には、まず、羽織40を脱がす。次いで、着物袴部7の後側のホック72(輪部721、鉤部722)を外し、ファスナー73を上から下に引き下げて開く。そして、後側が開いた状態(図14の状態)にした着物袴部7を下から脱がす。以上により、着物衣装4を容易に短時間で脱がすことができる。
【0070】
次に、本実施形態の着物衣装4における作用効果について説明する。
本実施形態の着物衣装4によれば、着物上衣部5と袴部6とが一体的に構成され、着物上衣部5及び袴部6の前側に角帯部54や前紐部61及び後紐部64が設けられている。そのため、着物の下衣部分が不要となると共に、着物用の腰紐、角帯、袴の前紐及び後紐が不要となり、これらを締める作業も不要となる。また、着物上衣部5の前側において、左前衿部511及び右前衿部512に半衿部52(左半衿部521、右半衿部522)が取り付けられている。そのため、襦袢を着用する必要がなくなり、襦袢用の腰紐やこれを締める作業も不要となる。これにより、着脱作業が容易となり、着脱作業にかかる時間を短縮でき、着用時の負担を軽減できる。また、各種紐類や角帯が一切不要となるため、特に小さい子供にとっては着用時の負担を大きく軽減できる。
【0071】
また、着物上衣部5の前側において、左前衿部511と右前衿部512とが衿合わせされた状態で固定され、左前衿部511及び右前衿部512に半衿部52が取り付けられている。そのため、一体である着物上衣部5及び袴部6を着せる際に、着物上衣部5の衿合わせをする必要がなくなる。また、着用時における着物上衣部5の衿元の見栄えが良くなり、着物上衣部5の着崩れを抑制できる。これにより、着脱作業にかかる時間を短縮できると共に、着物本来の外観を十分に維持できる。
【0072】
また、着物上衣部5の前側は、左前衿部511と右前衿部512とが衿合わせされた状態で固定され、さらに、着物上衣部5及び袴部6の後側において、後衿部55の上端から袴部6の上端部まで背中心に沿って、着脱可能なホック72及びファスナー73によって開閉できる開閉部71が設けられている。そのため、着物上衣部5の前側を閉じた状態で、着物上衣部5及び袴部6の後側を大きく開いた状態にすることができる。これにより、一体である着物上衣部5及び袴部6の着脱作業が格段に容易となり、着脱作業にかかる時間を大幅に短縮できる。また、後衿部55と後身頃74とで異なる連結部(ホック72、ファスナー73)を用いることにより、開閉部71の開閉がしやすくなる。
【0073】
また、着物上衣部5の上に羽織る羽織40をさらに備えている。そのため、着物上衣部5の上に羽織40を羽織ることにより、着物上衣部5及び袴部6の後側やそこに設けた開閉部71が羽織40によって隠れる。これにより、着物本来の外観を損なうことなく、着脱作業の容易化及び時間短縮を図り、着用時の負担を軽減するという効果を十分に発揮することができる。このように、着物衣装4によれば、特に小さい子供であっても、着たり脱いだりを嫌がることなく、また着用時に着崩れを起こすことなく、この着物衣装4を着て写真を撮ったり、神社やお寺にお参りしたりすることができる。
【0074】
また、袴部6には、前紐部61の両端部からそれぞれ延設された左前紐延設部621及び右前紐延設部622が設けられ、左前紐延設部621及び右前紐延設部622には、袴部6の後側において左前紐延設部621及び右前紐延設部622を係合するための一対の面ファスナー631、632が設けられている。そのため、一対の面ファスナー631、632によって左前紐延設部621及び右前紐延設部622を袴部6の後側において留める(係合する)ことにより、胴回りを適度に絞って調節できる。これにより、着用時における着物上衣部5の衿元等の前側の見栄えが良くなり、着物上衣部5の着崩れを抑制できる。また、袴部6の後側において左前紐延設部621及び右前紐延設部622を係合する部分が羽織40によって隠れるので、着物本来の外観を損なうことがない。
【0075】
また、着物上衣部5には、両袖が設けられていない。そのため、着用時に動きやすくなり、着用時の負担を大きく軽減できる。また、七五三の前撮り等で夏頃の気温の高い時期等に着用する場合に好適であり、温度調節も容易となる。また、着物上衣部5の上に羽織40を羽織ることにより、両袖が設けられていないことは外観上わからないため、着物本来の外観を損なうことがない。
【0076】
また、着物上衣部5の角帯部54と袴部6との間には、懐剣612を差し込む差込部611が設けられている。懐剣612を差し込む部分である差込部611を予め設けておくことにより、従来のように角帯と袴との間に懐剣を差し込む場合に比べて、着用時の負担を軽減できる。また、着用時以外には、差込部611に懐剣612を収納しておくことができるため、着物衣装4の保管時に懐剣612の紛失を抑制できる。
【0077】
さらに、着物衣装4の着脱作業の容易化及び時間短縮を図ることにより、着物衣装4の着付けを行う作業者に対して、着付けの教育や指導を行うことが容易となり、着付けの教育や指導にかかる時間も短縮できる。また、一体である着物上衣部5及び袴部6の後側を大きく開いた状態にできるため、作業者は着用者の後側で着付けを容易に行うことができる。例えば小さい子供が親に抱きついた状態でも、その後側で着付けを容易に行うことができる。そして、従来のように作業者が着用者の前側(正面)で密着して着付けを行わなくてよいため、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス等の感染症を予防できる。また、各種紐類や角帯が一切不要となるため、着物衣装4の保管や管理が容易となる。
【0078】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0079】
(1)上記実施形態(第1実施形態)において、半衿部22(左半衿部221、右半衿部222)は、左前衿部211及び右前衿部212に縫い付けて固定したが、メンテナンスの観点から、例えば、スナップボタン等の留め具を用いて、左前衿部211及び右前衿部212に着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【0080】
(2)上記実施形態(第1実施形態)において、開閉部27は、着脱可能な2種類の連結部(スナップボタン28、ファスナー29)によって開閉できるよう構成されているが、連結部は、1種類でもよいし複数種類でもよい。連結部の数も、1つでもよいし複数でもよい。連結部としては、例えば、スナップボタン、ホック、スライド式ファスナー(線ファスナー)、面ファスナー等の各種留め具、その他連結手段等を用いることができる。
【0081】
(3)上記実施形態(第1実施形態)において、裄調節部は、スナップボタン24であるが、裄調節部としては、スナップボタン以外にも、例えば、ホック、面ファスナー等の各種留め具を用いることができる。また、上衣部2の各肩部に裄調節部(スナップボタン24)を1つ設けたが、複数設けてもよい。また、裄調節部(スナップボタン24)の係止部(凹部242)を1つ設けたが、所定の間隔を空けて複数設けてもよい。このようにすることで、着物の裄を3段階以上で調節することが可能となる。
【0082】
(4)上記実施形態(第2実施形態)において、半衿部52(左半衿部521、右半衿部522)は、左前衿部511及び右前衿部512に縫い付けて固定したが、メンテナンスの観点から、例えば、スナップボタン等の留め具を用いて、左前衿部511及び右前衿部512に着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【0083】
(5)上記実施形態(第2実施形態)において、開閉部71は、着物上衣部5及び袴部6の後側において、後衿部55の上端から少なくとも袴部6の上端部まで設けられていればよく、それより下の位置まで設けられていてもよいが、羽織40で隠れる位置(羽織40の下端より上の位置)までとすることが好ましい。
【0084】
(6)上記実施形態(第2実施形態)において、開閉部71は、着脱可能な2種類の連結部(ホック72、ファスナー73)によって開閉できるよう構成されているが、連結部は、1種類でもよいし複数種類でもよい。連結部の数も、1つでもよいし複数でもよい。連結部としては、例えば、スナップボタン、ホック、スライド式ファスナー(線ファスナー)、面ファスナー等の各種留め具、その他連結手段等を用いることができる。
【0085】
(7)上記実施形態(第2実施形態)において、一対の前紐延設部である左前紐延設部621及び右前紐延設部622には、一対の面ファスナー(係合部)631、632が設けられているが、係合部としては、面ファスナー以外の各種係合手段を用いてもよい。また、一対の前紐延設部に伸縮可能な部材を用いてもよい。
【0086】
(8)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【符号の説明】
【0087】
1…着物衣装、2…上衣部、3…下衣部、20…衿、211…左前衿部、212…右前衿部、22…半衿部、25…後衿部、26…後身頃、27…開閉部、28…スナップボタン(連結部)、29…ファスナー(連結部)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図11
図12
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図14