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特開2022-54520型枠ユニット、及び、型枠の構築方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054520
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】型枠ユニット、及び、型枠の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20220331BHJP
E02D 5/38 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
E02D27/01 D
E02D5/38
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161617
(22)【出願日】2020-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年12月12日に現場名「北陸新幹線福井橋梁JV」にて施工
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520375882
【氏名又は名称】岡三リビック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520374955
【氏名又は名称】石田建設合同会社
(71)【出願人】
【識別番号】520374966
【氏名又は名称】株式会社青東
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】前田 欣昌
(72)【発明者】
【氏名】米田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】平澤 義宏
(72)【発明者】
【氏名】石田 輝秋
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
【Fターム(参考)】
2D041CB01
2D041CB02
2D041DA01
2D046BA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】迅速に設置可能であり、かつ、剛性の大きい、略円形の型枠ユニット並びに型枠の構築方法を提供する。
【解決手段】略円柱形又は略円筒形の鉄筋コンクリート構造物の型枠ユニットFUであって、型枠ユニットFUは、略円筒片状に構成されたせき板であるライナープレート71と、ライナープレート71の上縁に取り付けられる円弧状の上補強リング72であって、上方に突出する凸部を有する上補強リング72と、ライナープレート71の下縁に取り付けられる円弧状の下補強リング74であって、上記凸部に嵌合する凹部を有する下補強リング74と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形、楕円柱形、若しくは、平断面が小判型の柱を含む略円形柱、又は、円筒形、楕円筒形、若しくは、平断面が小判型の筒の輪郭を有する、略円筒形の鉄筋コンクリート構造物の型枠ユニットであって、
略円筒片状に構成されたせき板と、
前記せき板の上縁に取り付けられる円弧状の上補強リングであって、上方に突出する凸部を有する、上補強リングと、
前記せき板の下縁に取り付けられる円弧状の下補強リングであって、前記凸部に嵌合する凹部を有する、下補強リングと、
を備える、型枠ユニット。
【請求項2】
前記上補強リングの前記凸部は、半円形、逆U字形、半円弧形、又は斜辺および上底辺が下底辺より側方に突出していない、三角形、台形、五角形を含む多角形に形成されている、請求項1に記載された、型枠ユニット。
【請求項3】
前記上補強リングの前記凸部には、吊り込み用の吊り孔が設けられる、請求項1又は請求項2に記載された、型枠ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載された型枠ユニットを用いた型枠の構築方法であって、
前記型枠ユニットを構築する工程と、
前記吊り孔を用いて前記型枠ユニットを吊り上げる工程と、
前記上補強リングの前記凸部に前記下補強リングの前記凹部を嵌合させて、前記型枠ユニットを重ね合わせる工程と、
重ね合わされた前記型枠ユニットを上下方向に連結する工程と、
を備える、型枠の構築方法。
【請求項5】
前記型枠ユニットの上補強リング及び下補強リングには、さや管が取り付けられ、
前記型枠ユニットを重ね合わせる工程は、前記下補強リングの前記さや管と、前記上補強リングの前記さや管に、ガイドピンを連通する工程を含む、請求項4に記載された、型枠の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱形、楕円柱形、若しくは、平断面が小判型の柱を含む略円形柱、又は、円筒形、楕円筒形、若しくは、平断面が小判型の筒の輪郭を有する、略円筒形の鉄筋コンクリート構造物に配置される型枠ユニット、及び、型枠の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート構造物を構築する際には型枠が使用される。一方で、1回の最大コンクリート打ち込み高さが10mにも及ぶ高流動コンクリートの側圧に耐えうる大口径型枠はなかった。このように高さのある高流動コンクリートを打設する場合には、剛性の大きいセグメント鋼材を使用し、セグメント間を多数のボルトで連結していく手法が考えられる。この他、例えば、特許文献1には、セグメントではなく、ライナープレートを内型枠とする深礎基礎の形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、工期を短縮することが要望されているところ、セグメント間を多数のボルトで連結する手法では、躯体構築場所での作業となるため、工期の短縮は難しかった。また、ライナープレートのみで型枠を構築した場合には、型枠の剛性が不足するため、構造物の出来形精度を確保できなかった。
【0005】
そこで、本発明は、迅速に設置可能であり、かつ、剛性の大きい、略円形の型枠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の型枠ユニットは、円柱形、楕円柱形、若しくは、平断面が小判型の柱を含む略円形柱、又は、円筒形、楕円筒形、若しくは、平断面が小判型の筒の輪郭を有する、略円筒形の鉄筋コンクリート構造物の型枠ユニットであって、略円筒片状に構成されたせき板と、前記せき板の上縁に取り付けられる円弧状の上補強リングであって、上方に突出する凸部を有する、上補強リングと、前記せき板の下縁に取り付けられる円弧状の下補強リングであって、前記凸部に嵌合する凹部を有する、下補強リングと、を備えている。
【0007】
また、本発明の型枠の構築方法は、上述した型枠ユニットを用いた型枠の構築方法であって、前記型枠ユニットを製造する工程と、前記型枠ユニットを円周方向に連結して略円形型枠とする工程と、吊り孔を用いて前記略円形型枠を吊り上げる工程と、前記上補強リングの前記凸部に前記下補強リングの前記凹部を嵌合させて、前記略円形型枠を重ね合わせる工程と、重ね合わされた前記略円形型枠を上下方向に連結する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の型枠ユニットは、せき板と、上方に突出する凸部を有する上補強リングと、凸部に嵌合する凹部を有する、下補強リングと、を備えている。このため、型枠ユニットを用いることで、迅速に設置可能であり、かつ、剛性の大きい、略円形の型枠となる。
【0009】
また、本発明の型枠の構築方法は、型枠ユニットを製造する工程と、型枠ユニットを円周方向に連結して略円形型枠とする工程と、吊り孔を用いて略円形型枠を吊り上げる工程と、上補強リングの凸部に下補強リングの凹部を嵌合させて、略円形型枠を重ね合わせる工程と、重ね合わされた略円形型枠を上下方向に連結する工程と、を備えている。このため、型枠の構築方法を用いることで、迅速に設置可能であり、かつ、剛性の大きい、略円形の型枠を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ケーソン基礎を構築する全体工程を示すフローチャートである。
【
図2】ケーソン基礎の全体構成を説明する断面図である。
【
図7】上テンプレートの説明図である。(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図8】上下の鉄筋ユニットの接続箇所の拡大図である。
【
図9】左右の鉄筋ユニットの接続箇所の拡大図である。
【
図13】型枠ユニットの補強リングの平面図である。
【
図14】型枠ユニットの断面図である。(a)は全体図であり、(b)は拡大図である。
【
図15】位置合わせ用ロッド材の説明図である。(a)は断面図であり、(b)は正面図である。
【
図16】上下接続プレートの詳細図である。(a)は断面図であり、(b)は正面図である。
【
図17】凹部と凸部の嵌合箇所の近傍を拡大した作用図である。(a)は上側の型枠ユニットFUが下側の型枠ユニットFUより外側にずれている場合の図、(b)は上側の型枠ユニットFUが下側の型枠ユニットFUより内側にずれている場合の図、(c)は半径方向の位置ずれが修正され、上下が通った形で設置された最終状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下では、実施例1で全体工程について説明し、実施例2で鉄筋ユニット(U)について説明し、実施例3で型枠ユニット(FU)について説明する。
【実施例0012】
(全体工程)
まず、
図1のフローチャート、及び、
図2の断面図を用いて、本発明の鉄筋の組立方法、及び、型枠の構築方法を含む、円柱形又は円筒形の鉄筋コンクリート構造物の構築工法について説明する。以下では、円形断面(円筒形断面)のケーソン基礎Cを例として、鋼製のオープンケーソン工法によって構築された円形立坑(S)の内部に円筒状のRC構造物を構築する場合について、高剛性の鉄筋ユニット(円形又は円筒型RC構造物の急速鉄筋組立方法)と高剛性型枠(円形型枠の急速組立方法)とを適用する事例について説明する。
【0013】
事前に、鋼製の分割組立型の(仮設)土留壁Sを用いた圧入ケーソン工法によって、円柱型の空間を構築しておく。すなわち、本実施例の鉄筋ユニットU及び型枠ユニットFUは、外側に円形状の土留壁(兼型枠)Sがすでに構築されている状態で、その内部空間に円筒形の鉄筋コンクリート(RC)構造物を構築する際に使用される。
【0014】
(ステップS1)
はじめに、原位置とは別に設けた地上の仮設ヤードにおいて、架台フレーム10を構築する。次に、架台フレーム10に複数の主筋41、・・・、帯鉄筋42、・・・、せん断補強筋(図示省略)、・・・を結束線等によって取り付けて、鉄筋ユニットUが構築される。
【0015】
鉄筋ユニットUは、鉛直方向(円筒軸方向)には10mずつ分割され、円周方向には中心角90度ずつ4分割される。鉄筋ユニットUは、並行作業によって360度分(4基)を作成しておくことができる。
【0016】
(ステップS2)
次に、鉄筋連結作業に必要な内足場を設置(2段目以上は上昇)する。本実施例では、箱状の浮体を発泡ウレタンで充填したものを連結した後、この上に枠組足場を略円形に組み立てて設置する。足場を上昇させる際には、内型枠の内側に注水して水位を上昇させることで足場を上昇させる。
【0017】
(ステップS3)
次に、地上で架台フレーム10を用いて各鉄筋ユニットUを(機械式継手の仕込みを含めて)組み立てた後、鉄筋ユニットUを一つずつ吊り込む。
【0018】
(ステップS4)
次に、隣接する鉄筋ユニットU、Uどうしを連結し、さらに鉄筋(41、42)についても鉛直方向・円周方向に連結する。
【0019】
(ステップS5)
次に、型枠ユニットFUを設置する。型枠は、鉛直方向(円筒軸方向)には約1.7m(ライナープレート3段分+上下の補強リング)ずつ分割するとともに、円周方向には4分割したものを工場製作し、現場の設置個所近傍で4ピースを組み立てて円形の型枠ユニットFUとして、1つずつ順に吊り込み、上下に連結する。
【0020】
(ステップS6)
次に、内型枠である型枠ユニットFUと鉄筋ユニットUとの間に(手前側のみに)、鉄筋スペーサーを設置する。鉄筋スペーサーは、高さ約1.7mの型枠ユニットFUを2段分設置した後に1回、型枠ユニットFUの補強リング近傍の鉄筋に設置し、補強リングと鉄筋とのかぶりを確保する。鉄筋スペーサーは、例えば、モルタル製の頂部が丸みを帯びた円錐形をし、底面から鉄筋を挟むための2枚の鋼板が出ている。設置する時には円錐形の頂部が型枠と接し、必要なかぶりを確保する。
【0021】
(ステップS7)
次に、さらに上の型枠ユニットFUを設置し、足場を張り出し固定する。
【0022】
(ステップS8)
次に、型枠1リフト分、高さ10m分のコンクリートを1回で打設する。10m下までバイブレーターの振動を届かせ、コンクリートを締固めることが困難なため、コンクリートとしては高流動コンクリートを使用する。
【0023】
(ステップS9)
最後に、例えばコンクリート打設の翌日に、コンクリート上面のレイタンスを除去して、次のリフトの施工サイクルに入る(ステップS1へ戻る)。
【0024】
上述したように、本工法では、各リフトにおいて概略で、「足場の設置又は高さ調整」、「高剛性鉄筋体の設置」、「型枠ユニットの設置」、「鉄筋スペーサー設置」、「コンクリート打設」の順に施工を繰り返していく。
【実施例0025】
(鉄筋ユニットUの構成)
ここで、
図3~
図5を用いて、鉄筋ユニットUの構成について説明する。鉄筋ユニットUは、骨格を構成する架台フレーム10に、複数の主筋41、・・・と、複数の帯鉄筋42、・・・と、複数のせん断補強筋(図示省略)、・・・と、が取り付けられて構成される。架台フレーム10は、
図3~
図5に示すように、等辺山形鋼(アングル)を用いて高剛性の枠体として構築される。架台フレーム10は、上下2段に円弧形状の補鋼材11、12を有し、それに高さ方向の帯鉄筋間隔ごとに帯鉄筋を載せる張り出し(棚部材13a)を取り付けた縦部材13を、周方向に内側外側とも5本ずつ設置して構成される。
【0026】
より具体的に言うと、架台フレーム10は、内側の円弧形(小さい円弧)の補鋼材11と、外側の円弧形(大きい円弧)の補鋼材12と、上下の内側の補鋼材11、11を繋ぐ5本の縦部材13、・・・と、上下の外側の補鋼材12、12を繋ぐ5本の縦部材13、・・・と、内側の円筒殻と外側の円筒殻とを連繋する複数のつなぎ材14、・・・と、補鋼材11、12間を斜めに連繋する複数のブレース材15、・・・と、によって構成される。したがって、架台フレーム10は、全体として高い剛性を有する、円筒片状(厚みのある円筒殻状)に構成される。
【0027】
そして、内側の補鋼材11には、断面内側の主筋41が取り付けられる。すなわち、内側の補鋼材11にはテンプレート(21、22)を用いて主筋41、・・・が等間隔に設置される。さらに、鉛直方向に延びる5本の縦部材13、・・・には、
図4、
図5、
図8に示すように、鉛直方向に等間隔に棚部材13aが水平方向に突設されている。そして、同じ高さの棚部材13a、13aに架け渡すようにして帯鉄筋42、・・・が設置される。
【0028】
同様に、外側の補鋼材12には、断面外側の主筋41が取り付けられる。すなわち、外側の補鋼材12にはテンプレート(21、22)を用いて主筋41、・・・が等間隔に設置される。さらに、鉛直方向に延びる5本の縦部材13、・・・には、
図4、
図5、
図8に示すように、鉛直方向に等間隔に棚部材13aが水平方向に突設されている。そして、同じ高さの棚部材13a、13aに架け渡すようにして帯鉄筋42、・・・が設置される。
【0029】
ここで
図6、
図7を用いて、テンプレート(21、22)の構成について説明する。テンプレート(21、22)は、主筋41の上端を位置決めする上テンプレート21と、主筋41の下端を位置決めする下テンプレート22と、から構成される。下テンプレート22は、
図6に示すように、円弧形状の平鋼板に等間隔(等円周角)で複数の孔22aを設けた形状となっている。そして、架台フレーム10の下方の地面に設置・固定されて、複数の主筋41、・・・の下端が嵌め込まれるようになっている。
【0030】
上テンプレート21は、
図7に示すように、円弧形状の平鋼板に等間隔(等円周角)で複数の短円筒容器21aを設けた形状となっている。そして、架台フレーム10の上方において複数の主筋41、・・・の上端が嵌め込まれるようになっている。したがって、鉄筋ユニットUを吊り込む際には、下テンプレート22は作業ヤードに残置されるが、上テンプレート21は鉄筋ユニットUの主筋41、・・・上に嵌め込まれた状態となっている。その後、さらに上の鉄筋ユニットUが吊り込み・設置される前に、上テンプレート21は取り外される。
【0031】
そして、上下の鉄筋ユニットU、Uの連結箇所は、
図8に示すように、下側の既設の鉄筋ユニットUの縦部材13の上端に取り付けられた鉄筋ピン32と、上側の鉄筋ユニットUの縦部材13の下端に取り付けられた円筒形ステープラー31と、から構成されている。すなわち、鉄筋ユニットUには、縦部材13の下端に円筒形ステープラー31が固定されるとともに、縦部材13の上端に鉄筋ピン32が固定される。
【0032】
そして、鉄筋ユニットU、Uを重ねる際には、下側の鉄筋ユニットUの鉄筋ピン32を、上側の鉄筋ユニットUの円筒形ステープラー31内に挿入することで、上側の鉄筋ユニットUを高い精度で位置決めすることができるようになっている。その後、円筒形ステープラーに仕込まれたナット(図示省略)にボルト33、33を締め付けることで、両者の相対的な位置関係を固定できる。なお、上述した上端と下端の部材は逆の配置であってもよい。
【0033】
一方、左右の鉄筋ユニットU、Uの連結箇所は、
図9に示すように、あらかじめ補鋼材11(12)の端部にボルト孔を設けておき、隣接する補鋼材11(12)を突き合わせた状態で添接板51、52によって連結する。すなわち、補鋼材11(12)の縦フランジは、隣接する補鋼材間に架け渡された第1の添接板51とボルト・ナット53、・・・によって接続されるとともに、補鋼材11(12)の横フランジは、隣接する補鋼材間に架け渡された第2の添接板52とボルト・ナット53、・・・によって連結される。
【0034】
(鉄筋の組立方法)
次に、実施例1で説明した全体工程のうち、鉄筋の組立方法に関係する各ステップ(すなわち、ステップS1、ステップS3、及び、ステップS4)について説明する。
【0035】
(ステップS1:架台フレームを構築する工程、及び、鉄筋を取り付ける工程)
まず、ステップ1に相当する「架台フレーム10を構築する工程、及び、鉄筋ユニットUを構成する工程」について説明する。鉄筋ユニットUは、鉛直方向(円筒軸方向)に10mずつ、円周方向に90度ずつ4分割されて構築される。
【0036】
(1-1)まず、鉄筋ユニットUごとに、鉄筋を添える等辺山形鋼(アングル)を用いた円筒殻状の架台フレーム10を構築する。
【0037】
(1-2)次に、架台フレーム10に、複数の主筋(鉛直方向鉄筋)41、・・・を取り付ける。主筋41の取り付けの際には、下端と上端にそれぞれ専用のテンプレート21、22を使用する。下テンプレート22は作業用均しコンクリートに固定されており、これに主筋41を嵌め込んで位置決めする。上端には着脱可能な上テンプレート21を挿入する(嵌め込む)ことで、組立時の主筋41、・・・の周方向間隔が一定となるようにする。
【0038】
(1-3)次に、架台フレーム10に、主筋41、・・・の外側に複数の帯鉄筋(円周方向鉄筋)42、・・・を取り付ける。帯鉄筋42は架台フレーム10の縦部材13に水平に張り出した棚部材(鉄筋架台)13a上に載せる。
【0039】
(1-4)帯鉄筋42、・・・の設置完了後に、せん断補強筋(図示省略)、・・・を設置して鉄筋ユニットUの組立完了となる。
【0040】
(ステップS3:鉄筋ユニットの吊り込み)
次に、ステップ3に相当する「鉄筋ユニットUの吊り込み工程」について説明する。
【0041】
(3-1)完成した鉄筋ユニットUを1つずつクレーン等の揚重機によって吊り込み、円形立坑の内部に配置する。鉄筋ユニットUの吊り込み時、吊り込む(上側の)鉄筋ユニットUの下端にあらかじめ取り付けられた円筒形ステープラー31の円筒内に、既設(下側の)鉄筋ユニットUの架台フレーム10の上端のあらかじめ取り付けられた鉄筋ピン32を通すように設置する。
【0042】
(ステップS4:鉄筋ユニットの連結)
次に、ステップ4に相当する「鉄筋ユニットUの連結工程」について説明する。
【0043】
(4-1)次に、鉄筋ユニットUの吊り込み完了後、上下の鉄筋ユニットU、Uを円筒形ステープラー31のねじを締めることで連結固定する。
【0044】
(4-2)次に、周方向の鉄筋ユニットU、U間の接続箇所の架台フレーム10、10どうしを添接板51、52を用いて連結する。
【0045】
(4-3)続いて、あらかじめ仕組んでおいた機械式継手を用いて、主筋41、41間、及び、帯鉄筋42、42間の継手箇所で鉄筋どうしを連結する。また、次の(上の)鉄筋ユニットUの吊り込みまでに、上テンプレート21を外して、主筋(軸方向鉄筋)41の上端に機械式継手を設置しておく。
【0046】
(4-4)鉄筋ユニットUの設置が完了したら、型枠ユニットの設置工程となる。
【0047】
(効果)
次に、鉄筋ユニットUの奏する効果を列挙しながら説明する。
(1)上述してきたように、本実施例の鉄筋ユニットUは、円柱形又は円筒形の鉄筋コンクリート構造物に配置される鉄筋ユニットUであって、円筒殻状に構成された架台フレーム10と、架台フレーム10に取り付けられた複数の鉛直方向鉄筋である主筋41、・・・及び複数の円周方向鉄筋である帯鉄筋42、・・・と、を備えている。したがって、剛性が大きく、かつ、鉄筋の設置精度の高い、鉄筋ユニットUを構築することで、設置に手間のかかるスペーサーの数を減らすことができる。
【0048】
なお、本発明の内型枠構築工法は、特に、高流動コンクリートを用いる場合のように、コンクリート打設時に液圧が作用する略円形の内型枠に対して有効である。また、型枠の剛性が大きい場合には、剛性の大きな鉄筋ユニットUと併用することで、打設時の型枠および鉄筋ユニットUの双方の移動・変形の抑制効果が大きいことから、従来技術に比べ、鉄筋スペーサーの個数を大きく削減することが可能となる。
【0049】
(2)また、複数の鉛直方向鉄筋である主筋41、・・・は、その下端が架台フレーム10の下方に固定される下テンプレート22に嵌め込まれて位置決めされるとともに、その上端が架台フレーム10の上方において上テンプレート21に嵌め込まれて位置決めされるようになっているため、架台フレーム10に対して、鉛直方向鉄筋である主筋41、・・・を高い精度で設置することができる。加えて、架台フレーム10の剛性が高いことから、鉄筋ユニットUを吊り込み・設置した場合にも、主筋41、・・・の位置精度を保持することができる。
【0050】
(3)さらに、複数の円周方向鉄筋である帯鉄筋42、・・・は、架台フレーム10の縦部材13に略水平方向に取り付けられる複数の棚部材13a、・・・に載置されて位置決めされるようになっているため、架台フレーム10に対して、円周方向鉄筋である帯鉄筋42、・・・を高い精度で設置することができる。加えて、架台フレーム10の剛性が高いことから、鉄筋ユニットUを吊り込み・設置した場合にも、帯鉄筋42、・・・の位置精度を保持することができる。
【0051】
(4)また、本実施例の鉄筋の組立方法は、円柱形又は円筒形の鉄筋コンクリート構造物に配置される鉄筋の組立方法であって、円筒殻状に構成された架台フレーム10を構築する工程と、架台フレーム10に複数の鉛直方向鉄筋である主筋41、・・・及び複数の円周方向鉄筋である帯鉄筋42、・・・を取り付けて鉄筋ユニットUを構成する工程と、鉄筋ユニットUを吊り込んで配置する工程と、円周方向に隣接する鉄筋ユニットUの架台フレーム10を互いに連結する工程と、円周方向に隣接する鉄筋ユニットUの円周方向鉄筋である帯鉄筋42、・・・を互いに連結する工程と、を備えている。したがって、剛性が大きく、かつ、鉄筋の設置精度の高い、鉄筋ユニットUを構築することで、設置に手間のかかるスペーサーの数を減らすことができる。
【0052】
(5)また、架台フレーム10に複数の鉛直方向鉄筋である主筋41、・・・を取り付ける工程は、複数の鉛直方向鉄筋である主筋41、・・・の下端を架台フレーム10の下方に固定される下テンプレート22に嵌め込む工程と、上端を架台フレーム10の上方において上テンプレート21に嵌め込む工程と、を含んでいる。したがって、架台フレーム10に対して、鉛直方向鉄筋である主筋41、・・・を高い精度で設置することができる。加えて、架台フレーム10の剛性が高いことから、鉄筋ユニットUを吊り込み・設置した場合にも、主筋41、・・・の位置精度を保持することができる。
【0053】
(6)さらに、架台フレーム10に複数の円周方向鉄筋である帯鉄筋42、・・・を取り付ける工程は、複数の円周方向鉄筋である帯鉄筋42、・・・を、架台フレーム10に略水平方向に取り付けられる複数の棚部材13a、・・・に載置する工程を含んでいる。したがって、架台フレーム10に対して、円周方向鉄筋である帯鉄筋42、・・・を高い精度で設置することができる。加えて、架台フレーム10の剛性が高いことから、鉄筋ユニットUを吊り込み・設置した場合にも、帯鉄筋42、・・・の位置精度を保持することができる。
【0054】
(7)また、上下方向に隣接する鉄筋ユニットU、Uの架台フレーム10、10を互いに連結する工程と、上下方向に隣接する鉄筋ユニットU、Uの鉛直方向鉄筋である主筋41、・・・を互いに連結する工程と、をさらに備えている。このため、架台フレーム10、10どうしの相対的な位置を高い精度で位置決めすることができる。その結果、上下の架台フレーム10、10に高い精度で設置されている主筋41、・・・どうしを、機械式継手等を用いて連結することができる。
つまり、型枠ユニットFU、FU間の鉛直方向の連結は、下側の型枠ユニットFU上端の上補強リング72のフランジ側面の上に、上側の型枠ユニットFU下端の下補強リング74のフランジ側面が線接合するが、フランジ側面は幅が1~2cm程度と狭いため不安定である。
そこで、半径方向のずれを防止するために考案した「精度出し兼ずれ止め鋼材」を有することで、吊込み時の半径方向の位置が正確になり、円周方向の回転位置を合わせて設置すればよい。さらに、設置後、添接板85による連結までの間、円周方向および半径方向のずれが生じないように、上下の補強リング72、74にさや管81、82を溶接し、設置後に上下のさや管81、82を通すようにガイドピン83を挿入することで位置ずれを防ぐことができる。
具体的には、下側の型枠ユニットFUの上補強リング72と、上側の型枠ユニットFUの下補強リング74と、を正確に位置決めして、H形鋼のフランジ端面どうしを重ね合わせた状態で、添接板85をボルト・ナット86によって締め付け固定する。なお、上述した「凸部(精度出し兼ずれ止め鋼材)」によって型枠ユニットFU、FUが高い精度で設置されているため、本実施例においては半径方向の位置の調整作業はほぼ不要である。
(5-2)型枠ユニットFUを吊り上げる工程は、円形に地組された上側の型枠ユニットFUをクレーンによって吊込むことにより行う。吊込みには、型枠ユニットFUの上補強リング72の凸部75に設けた吊り孔75aを使用する。
(1)上述してきたように、本実施例の型枠ユニットFUは、円柱形又は円筒形の鉄筋コンクリート構造物の型枠ユニットFUである。そして、型枠ユニットFUは、円筒片状に構成されたせき板であるライナープレート71と、ライナープレート71の上縁に取り付けられる円弧状の上補強リング72であって、上方に突出する凸部75を有する、上補強リング72と、ライナープレート71の下縁に取り付けられる円弧状の下補強リング74であって、凸部75に嵌合する凹部76を有する、下補強リング74と、を備えている。このため、型枠ユニットFUを用いることで、迅速に設置可能であり、かつ、剛性の大きい、円形の型枠となる。
したがって、型枠ユニットFUを用いれば、躯体構築現場の急速化の実現と、真円度精度の確保が可能となる。また型枠ユニットFUの剛性が高いことから、1リフト高さ10mのコンクリート打設を可能にするために必要な、高流動コンクリートを打設した際に生じる、大きな側圧(コンクリートの液圧)にも耐えうる構造となっている。つまり、円形型枠を地組で事前に構築できることで、躯体構築場所での作業量を低減できるため、全体工程を1/2程度以下にまで低減可能である。
さらに、型枠ユニットFUの剛性を大きくすることが可能であることから、剛性の大きな鉄筋ユニットUと併用することで、打設時の型枠および鉄筋体の双方の移動・変形の抑制効果を高めることが可能になり、従来技術に比べ、鉄筋スペーサーの個数を削減することが可能となる。
なお、型枠ユニットFUを円筒片状の型枠ピースに分割するため、型枠ピースの3辺のうち1辺を2.5m以下、1辺を概ね3.5m以下にすることで、型枠ピースの工場製作と公道を用いた運搬が可能になる。また型枠ピース自体を定型化することで、単純に製造するのに比べて工場内の工数も削減可能となる。
(2)また、上補強リング72の凸部75は、半円形、逆U字形、又は、半円弧形に形成されていることで、上下の型枠ユニットFU、FUを重ね合わせる際に、位置決めしやすく、かつ、製作しやすい凸部75となる。
(3)さらに、上補強リング72の凸部75には、吊り込み用の吊り孔75aが設けられることで、精度出し兼ずれ止め鋼材を吊輪としても利用可能となる。さらに、吊り孔75aは、各型枠ピースに分散して配置されているため、吊り孔75aを利用して吊り上げた際にバランスよく吊り上げることができる。
(4)そして、本実施例の型枠の構築方法は、上述したいずれかの型枠ユニットFUを用いた型枠の構築方法であって、型枠ユニットFU、FUを構築する工程と、吊り孔75aを用いて型枠ユニットFUを吊り上げる工程と、上補強リング72の凸部75に下補強リング74の凹部76を嵌合させて、型枠ユニットFU、FUを重ね合わせる工程と、重ね合わされた型枠ユニットFU、FUを上下方向に連結する工程と、を備えている。このため、型枠の構築方法を用いることで、迅速に設置可能であり、かつ、剛性の大きい、円形の型枠を構築できる。
(5)また、型枠ユニットFUの上補強リング72及び下補強リング74には、さや管81、82が取り付けられ、型枠ユニットFU、FUを重ね合わせる工程は、下補強リング74のさや管82と、上補強リング72のさや管81に、ガイドピン83を連通する工程を含んでいる。
以上、図面を参照して、本発明の実施例1~3を詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例1~3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
また、せき板はライナープレートに限定されず、コンクリートが漏れることなく、コンクリートから型枠に作用する側圧を支持することができれば、ライナープレート以外の鋼板等を用いてもよい。
そして、さや管のうち、上補強リング74に取り付けられるさや管82については、孔が下まで貫通してなくてもよい。すなわち、ガイドピン83が上側の型枠ユニットFUの下補強リング74に備えられたさや管81を貫通し、下側の型枠ユニットFUの上補強リング72に備えられたさや管82の孔に連通されていれば、さや管82の孔については下まで貫通してなくてもよい。
また、架台フレーム10に用いる材料は、架台フレームに求められる剛性が実現できれば、等辺山形鋼(アングル)に限定されず、溝形鋼(チャンネル)、H型鋼、フラットバー、角パイプなどを用いてもよい。さらに、材質については、鋼に限らず、架台フレームに求められる剛性を実現するに十分な縦弾性係数を有し、温度変化によるコンクリートのひび割れを誘発しないよう線膨張係数がコンクリートと概ね同じであれば、ステンレスなどの他の金属、材料であってもよい。