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特開2022-54567チップドレス用カッターユニット及び手動型チップドレス
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  • 特開-チップドレス用カッターユニット及び手動型チップドレス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054567
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】チップドレス用カッターユニット及び手動型チップドレス
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20220331BHJP
   B23B 5/16 20060101ALI20220331BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B23K11/30 350
B23B5/16
B23K11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161683
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】591260948
【氏名又は名称】株式会社キョクトー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】友松 裕貴
【テーマコード(参考)】
3C045
4E165
【Fターム(参考)】
3C045BA31
3C045CA30
3C045DA30
4E165BB32
(57)【要約】
【課題】切削カッターの寿命を長くすることができるとともに、切削時に発生する切粉をスムーズに排出可能な使用感の良いチップドレス用カッターユニット及びそれを装着した手動型チップドレスを提供する。
【解決手段】手動型チップドレス1に取り付けるカッターユニット3は、回転ホルダ6と、回転ホルダ6に着脱可能な切削カッター7とを備える。回転ホルダ6は、切削の際、電極チップ11の先端部11aを受け止めるチップ受止部6cと、回転軸心C1方向に貫通する貫通部8とを備え、貫通部8の内側面には、切削カッター7が回転ホルダ6の径方向及び回転軸心C1方向に延びる姿勢で取り付けられる。貫通部8の回転軸心C1方向他側には、回転軸心C1方向一側よりも回転ホルダ6の径方向に広い寸法に設定された幅広部8aが設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心を中心に回転する回転ホルダと、該回転ホルダに着脱可能に取り付けられ、当該回転ホルダの回転動作によりスポット溶接用電極チップの先端部を切削する切削カッターとを備えたチップドレス用カッターユニットであって、
前記回転ホルダは、回転軸心方向一側に設けられ、切削の際、前記電極チップの先端部を受け止めるチップ受止部と、回転軸心方向に貫通して前記チップ受止部に開口するとともに、内側面に前記切削カッターが前記回転ホルダの径方向及び回転軸心方向に延びる姿勢で取り付けられる貫通部とを備え、
前記貫通部の回転軸心方向他側には、回転軸心方向一側よりも前記回転ホルダの径方向に広い寸法に設定された幅広部が設けられていることを特徴とするチップドレス用カッターユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のチップドレス用カッターユニットにおいて、
前記切削カッターは、前記回転ホルダに前記回転軸心から径方向外側に延びる姿勢で取り付けられ、
前記幅広部は、前記切削カッターの取付面を境として当該切削カッターが取り付けられた前記回転ホルダの一側半分の領域よりも前記回転ホルダの他側半分の領域の回転軸心方向の寸法を短い形状にすることにより設けられていることを特徴とするチップドレス用カッターユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のチップドレス用カッターユニットにおいて、
前記切削カッターは、板状をなすとともに板厚方向に貫通するネジ挿通孔を有し、該ネジ挿通孔に挿通させたネジを前記回転ホルダに螺合させることにより当該回転ホルダに取り付けられ、
前記ネジ挿通孔は、前記幅広部に対応する位置に設けられていることを特徴とするチップドレス用カッターユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のチップドレス用カッターユニットと、
一端に前記カッターユニットを前記回転軸心を中心として回転可能に軸支する一方、他端側に使用者が操作時に把持する把持部が設けられたドレッサー本体と、
該ドレッサー本体の内部に設けられ、前記カッターユニットを回転駆動させるモータと、
前記ドレッサー本体の他側に回動可能に軸支され、前記把持部に接近する側に回動させて前記モータを起動させる一方、前記把持部から離間する側に回動させて前記モータを停止させるスイッチレバーと、を備えていることを特徴とする手動型チップドレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接用電極チップの先端部を切削するために用いるチップドレス用カッターユニット及び当該カッターユニットが取り付けられた手動型チップドレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に開示されているチップドレスは、使用者が手動で操作してスポット溶接用の電極チップの先端部を切削するものであり、内部にモータが収容された略棒状のドレッサー本体を備えている。該ドレッサー本体の一端側には、モータにより中心線を中心として回転するカッターユニットが軸支される一方、ドレッサー本体の他端側は、使用者が把持する把持部になっている。カッターユニットは、短筒状をなす回転ホルダと、該回転ホルダの内方に取り付けられた板状をなす切削カッターとで構成され、該切削カッターは、回転ホルダの回転軸心を通過するように回転ホルダの径方向に延びる姿勢になっている。ドレッサー本体の他端側には、モータの起動又は停止を切り替えるスイッチレバーが回動可能に設けられ、電極チップの中心軸を回転軸心に一致させた状態で電極チップの先端部に切削カッターをカッターユニットの一端側から接触させ、且つ、使用者が把持部を把持しながらスイッチレバーを把持部側に回動させて把持部と共にスイッチレバーを握ることにより、カッターユニットが回転して切削カッターが電極チップの先端部を切削するようになっている。そして、切削時に発生する切粉は、回転ホルダの内周面と切削カッターとの間に設けられた貫通部を通過してカッターユニットの他端側から排出されるようになっている。
【0003】
ところで、特許文献1のカッターユニットは、電極チップの先端部を切削する際に、当該先端部に切削カッターだけが接触する構造になっている。したがって、使用を繰り返すと切削カッターに大きな負荷が掛かってしまい、切削カッターの寿命が短くなってしまうおそれがある。
【0004】
これに対応するために、例えば、特許文献2のように、回転ホルダに電極チップの先端部を受け止める凹状のチップ受止部を設けて、切削時に電極チップの先端部を切削カッターだけでなく回転ホルダにも接触させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-212685号公報
【特許文献2】国際公開第2013/061710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、回転ホルダにチップ受止部を設けると、カッターユニットにおいて切削時に発生する切粉を通過させるための貫通部が狭くなるので、切削時に発生する各切粉が貫通部の通過時に貫通部の内部に詰まることが多くなってしまう。したがって、使用者は、貫通部に切粉が詰まって切削作業ができなくなるたびに貫通部の清掃を行わなければならず、使用感の悪いものになってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切削カッターの寿命を長くすることができるとともに、切削時に発生する切粉をスムーズに排出可能な使用感の良いチップドレス用カッターユニット及びそれを装着した手動型チップドレスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、カッターユニットにおける貫通部の形状に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、回転軸心を中心に回転する回転ホルダと、該回転ホルダに着脱可能に取り付けられ、当該回転ホルダの回転動作によりスポット溶接用電極チップの先端部を切削する切削カッターとを備えたチップドレス用カッターユニットを対象とし、次のような対策を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、前記回転ホルダは、回転軸心方向一側に設けられ、切削の際、前記電極チップの先端部を受け止めるチップ受止部と、回転軸心方向に貫通して前記チップ受止部に開口するとともに、内側面に前記切削カッターが前記回転ホルダの径方向及び回転軸心方向に延びる姿勢で取り付けられる貫通部とを備え、前記貫通部の回転軸心方向他側には、回転軸心方向一側よりも前記回転ホルダの径方向に広い寸法に設定された幅広部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、前記切削カッターは、前記回転ホルダに前記回転軸心から径方向外側に延びる姿勢で取り付けられ、前記幅広部は、前記切削カッターの取付面を境として当該切削カッターが取り付けられた前記回転ホルダの一側半分の領域よりも前記回転ホルダの他側半分の領域の回転軸心方向の寸法を短い形状にすることにより設けられていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、前記切削カッターは、板状をなすとともに板厚方向に貫通するネジ挿通孔を有し、該ネジ挿通孔に挿通させたネジを前記回転ホルダに螺合させることにより当該回転ホルダに取り付けられ、前記ネジ挿通孔は、前記幅広部に対応する位置に設けられていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、手動型チップドレスが、第1から第3の発明のいずれか1つのチップドレス用カッターユニットと、一端に前記カッターユニットを前記回転軸心を中心として回転可能に軸支する一方、他端側に使用者が操作時に把持する把持部が設けられたドレッサー本体と、該ドレッサー本体の内部に設けられ、前記カッターユニットを回転駆動させるモータと、前記ドレッサー本体の他側に回動可能に軸支され、前記把持部に接近する側に回動させて前記モータを起動させる一方、前記把持部から離間する側に回動させて前記モータを停止させるスイッチレバーと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、電極チップの先端部を切削する際、回転ホルダのチップ受止部と切削カッターとの両者で電極チップの先端部を受け止めた状態で切削カッターが電極チップの先端部を切削するようになる。したがって、切削時において切削カッターに掛かる負荷が特許文献1の如き構造のカッターユニットに比べて減るようになり、切削カッターの寿命を長くすることができる。また、貫通孔の幅寸法が切削箇所から離れるにつれて広くなっているので、切削箇所から遠く離れるにつれて切粉の動きが小さくなったとしても、切粉が貫通孔の内部に詰まった状態になり難い。したがって、貫通部の清掃回数が減るようになり、使用感の良いものにすることができる。
【0015】
第2の発明では、貫通部において回転軸心方向他側の領域を広くする加工を比較的簡単に行うことができるので、低コストなカッターユニットにすることができる。
【0016】
第3の発明では、切削カッターを回転ホルダに取り付けた際、ネジの頭部が貫通部における幅広部に位置するようになる。したがって、切粉が貫通部を通過する際にネジの頭部に接触したとしても、貫通部の内周面とネジの頭部との間に挟まることが少なくなり、発生する切粉を確実にカッターユニットの外側に排出することができる。
【0017】
第4の発明では、使用者が一方の手でチップドレスを把持しながらカッターユニットの回転動作の起動と停止とを操作可能になるので、使い勝手の良い装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る手動型チップドレスの斜視図である。
図2図1のII矢視図である。
図3】本発明の実施形態に係るカッターユニットの分解斜視図である。
図4図3のIV矢視図である。
図5図3のV矢視図である。
図6図3のIV-IV線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る手動型チップドレス1を示す。該手動型チップドレス1は、スポット溶接ガン(図示せず)のシャンクに嵌め込まれた電極チップ11(図6参照)の先端部11aを切削するためのものであり、長手方向一側略半分が厚みを有する板状をなす一方、長手方向他側略半分が略円筒状をなす金属製のドレッサー本体2を備えている。
【0021】
該ドレッサー本体2の長手方向一側における厚み方向両側には、互いに対向する一対の円形状をなす開口部2aがドレッサー本体2の内部に連通するようにそれぞれ形成されている。
【0022】
該両開口部2aの間には、略円盤状をなす金属製のカッターユニット3がドレッサー本体2の厚み方向に延びる回転軸心C1を中心に回転可能に軸支されている。
【0023】
一方、ドレッサー本体2の長手方向他側は、使用者が操作時に把持する把持部2bになっていて、その内部には、図示しない歯車噛合機構を介してカッターユニット3を回転駆動させるモータ4が収容されている。
【0024】
ドレッサー本体2における把持部2bの側方には、細長い帯板状をなすスイッチレバー5が設けられ、該スイッチレバー5は、一端側がドレッサー本体2の他端に回動可能に軸支されている。
【0025】
スイッチレバー5は、把持部2bに接近する側に回動させてモータ4を起動させる一方、把持部2bから離間する側に回動させてモータ4を停止させるようになっていて、図示しない付勢部材により把持部2bから離間する側に付勢されている。
【0026】
カッターユニット3は、図2及び図3に示すように、中心線が回転軸心C1に一致する平面視で略C字状をなす回転ホルダ6と、該回転ホルダ6に着脱可能に取り付けられる切削カッター7とを備えている。
【0027】
回転ホルダ6は、回転軸心C1から径方向外側に向かうにつれて次第に回転軸心C1周りの周方向に拡がって外側方に開放するとともに回転軸心C1方向両側にも開放する切欠部6aを有している。
【0028】
回転ホルダ6の回転軸心C1方向一側の周縁部分には、その他の部分よりも外側方に拡がる平面視で略樽形状をなすフランジ部6bが形成されている。
【0029】
また、回転ホルダ6の回転軸心C1方向一側の面には、当該回転ホルダ6の中央部分に行くにつれて次第に縮径するチップ受止部6cが形成されている。
【0030】
該チップ受止部6cの形状は、電極チップ11の先端部11aの湾曲形状に対応していて、電極チップ11の中心軸が回転軸心C1に一致した状態で電極チップ11の先端部11aを受け止めることが可能になっている。
【0031】
チップ受止部6cには、回転軸心C1を中心として延びる円弧状の複数の段差面部6eが回転軸心C1に向かって連続的に階段状に形成されている。すなわち、各段差面部6eは、水平方向に延びる水平部6fと、垂直方向に延びる垂直部6gとで構成され、水平部6fと垂直部6gとの連続部分6hは、断面直角で尖鋭な形状をなしている。そして、各連続部分6hは、チップ受止部6cで電極チップ11の先端部11aを受け止めた際、当該先端部11aに接触するようになっている。尚、本発明の実施形態の回転ホルダ6では、φ13の電極チップ11をチップ受止部6cで受け止めた場合と、φ16の電極チップ11をチップ受止部6cで受け止めた場合との両方において、各連続部分6hが電極チップ11の先端部11aの表面に接触するよう設計されている。
【0032】
切欠部6aにおける回転軸心C1から外側方に延びる一方の内側面には、切削カッター7を取り付ける位置となる側面視で略T字状をなす段差状に窪む取付面6dが形成されている。
【0033】
回転ホルダ6は、取付面6dを境として切削カッター7が取り付けられた回転ホルダ6の一側半分を領域6Aとする一方、他側半分を領域6Bとすると、当該領域6Bの回転軸心C1方向の寸法が領域6Aよりも短くなっていて、領域6Bにおける回転軸心C1方向他側には、空間S1が形成されている。
【0034】
すなわち、切欠部6aと空間S1とで本発明の貫通部8を構成しており、該貫通部8は、回転軸心C1方向に貫通してチップ受止部6cに開口するとともに、貫通部8の回転軸心C1方向他側には、回転軸心C1方向一側よりも回転ホルダ6の径方向に広い寸法に設定された幅広部8aが設けられている。
【0035】
切削カッター7は、図3乃至図5に示すように、金属板を略T字状に切り出して形成したものであり、取付面6dに対応する形状をなしている。
【0036】
切削カッター7の回転軸心C1方向他側には、板厚方向に貫通するネジ挿通孔7aが形成されていて、切削カッター7は、取付面6dに宛がうとともに、ワッシャ9及びネジ挿通孔7aに順に挿通させたネジ10を回転ホルダ6に螺合させることにより当該回転ホルダ6に取り付けられるようになっている。
【0037】
すなわち、ネジ挿通孔7aは、本発明の幅広部8aに対応する位置に設けられている。
【0038】
切削カッター7は、回転ホルダ6に取り付けると、当該回転ホルダ6の径方向外側及び回転軸心C1方向に延びる姿勢となるようになっている。
【0039】
切削カッター7の一方の板面は、取付面6dに対向する一方、他方の板面がすくい面部7bを構成するようになっていて、該すくい面部7bは、回転軸心C1周りの周方向に対して交差するように延びている。
【0040】
すくい面部7bの回転軸心C1方向一側には、当該すくい面部7bと略直交する逃げ面部7cが設けられている。
【0041】
該逃げ面部7cは、回転軸心C1から離れるにつれて次第に回転軸心C1方向一側に位置する湾曲形状をなしている。
【0042】
そして、逃げ面部7cは、切削カッター7を回転ホルダ6に取り付けた状態でチップ受止部6cに対応する形状をなしていて、電極チップ11にその中心軸が回転軸心C1に一致する状態で接近させると、電極チップ11の先端部11aに対向するようになっている。
【0043】
切削カッター7の回転軸心C1から遠い側の上部及び下部には、側面視で矩形状に切り欠かれた位置決め凹部7dが一対形成されている。
【0044】
すくい面部7b及び逃げ面部7cの連続部分には、回転軸心C1と交差するように延びる切刃部7eが形成されている。
【0045】
そして、中心軸を回転軸心C1に一致させた状態の電極チップ11を回転状態の回転ホルダ6に接触させると、切削カッター7が電極チップ11の先端部11aに接触して当該先端部11aが切刃部7eにより切削され、切粉M1が発生するようになっている。
【0046】
次に、手動型チップドレス1を用いて電極チップ11の先端部11aを切削する作業について説明する。
【0047】
まず、使用者は、手動型チップドレス1の把持部2bを把持するとともに、図4及び図5に示すように、手動型チップドレス1を移動させて図示しないシャンクに取り付けられた電極チップ11の先端部11aを当該電極チップ11の中心軸が回転軸心C1と一致するように回転ホルダ6のチップ受止部6cで受け止める。
【0048】
次いで、使用者は、スイッチレバー5が把持部2bに接近する側に回動するよう把持部2bとともにスイッチレバー5を握る。すると、モータ4が起動してカッターユニット3が回転軸心C1を中心に回転し、切削カッター7の切刃部7eが電極チップ11の先端部11aに接触して当該先端部11aを切削する。このように、電極チップ11の先端部11aを切削する際、回転ホルダ6のチップ受止部6cと切削カッター7との両者で電極チップ11の先端部11aを受け止めた状態で切削カッター7が電極チップ11の先端部11aを切削するようになる。したがって、切削時において切削カッター7に掛かる負荷が特許文献1の如き構造のカッターユニットに比べて減るようになり、切削カッター7の寿命を長くすることができる。
【0049】
切削カッター7の切刃部7eが電極チップ11の先端部11aを切削する際、チップ受止部6cの段差面部6eにおける断面が尖鋭である各連続部分6hがそれぞれ電極チップ11の先端部11aに接触する。この状態で回転ホルダ6が回転すると、各連続部分6hが電極チップ11の先端部11aに対して中心軸と交差する方向に引っ掛かるとともに、電極チップ11の先端部11aに対する回転ホルダ6の回転を案内するようになる。したがって、切削作業時において、回転ホルダ6の回転時に電極チップ11の先端部11aがその中心軸と交差する方向にチップ受止部6cに対して滑って回転軸心C1が電極チップ11の中心軸からずれるといったことがなくなり、切削カッター7の切削動作を安定させることができる。また、電極チップ11の先端部11aとチップ受止部6cとの間の接触面積が減り、回転ホルダ6の回転時における電極チップ11の先端部11aに対する切刃部7eの食い込み量が増えるので、切削カッター7の切削能力を高めて効率良く電極チップ11の先端部11aを切削することができる。
【0050】
切削カッター7の切刃部7eが電極チップ11の先端部11aを切削すると、図4に示すように、切粉M1が切欠部6aに発生する。この切粉M1は、切欠部6aから当該切欠部6aよりも幅寸法の広い空間S1(幅広部8a)に移動した後、カッターユニット3の外側に排出される。つまり、本発明の実施形態の貫通部8は、その幅寸法が切削箇所から離れるにつれて広くなっているので、切削箇所から遠く離れるにつれて切粉M1の動きが小さくなったとしても、切粉M1が貫通部8の内部に詰まった状態になり難い。したがって、貫通部8の清掃回数が減るようになり、使用感の良いものにすることができる。
【0051】
空間S1は、切削カッター7の取付面6dを境として当該切削カッター7が取り付けられた回転ホルダ6の一側半分の領域6Aよりも他側半分の領域6Bの回転軸心C1方向の寸法を短い形状にすることにより設けられているので、貫通部8において回転軸心C1方向他側の領域を広くする加工が比較的簡単であり、低コストなカッターユニット3にすることができる。
【0052】
また、切削カッター7のネジ挿通孔7aは、幅広部8aに対応する位置に設けられているので、切削カッター7を回転ホルダ6に取り付けた際、ネジ10の頭部10aが貫通部8における幅広部8aに位置するようになる。したがって、切粉M1が貫通部8を通過する際にネジ10の頭部10aに接触したとしても、貫通部8の内周面とネジ10の頭部10aとの間に挟まることが少なくなり、発生する切粉M1を確実にカッターユニット3の外側に排出することができる。
【0053】
使用者は、所定の時間切削作業を行うと、スイッチレバー5から手を離してスイッチレバー5を把持部2bから離間する側に回動させることによりモータ4を停止させて電極チップ11の先端部11aの切削作業を終了する。このように、本発明の実施形態の手動型チップドレス1は、使用者が一方の手で把持部2bを把持しながらカッターユニット3の回転動作の起動と停止とを操作可能になるので、使い勝手の良い装置にすることができる。
【0054】
尚、本発明の実施形態では、貫通部8の幅広部8aを、切削カッター7の取付面6dを境として当該切削カッター7が取り付けられた回転ホルダ6の一側半分の領域6Aよりも他側半分の領域6Bの回転軸心C1方向の寸法を短い形状にすることにより設けているが、回転ホルダ6をその他の形状にすることで貫通部8の回転軸心C1方向他側領域を幅広な寸法にするようにしてもよい。
【0055】
また、本発明のカッターユニット3は、手動型チップドレス1に装着して使用しているが、自動型チップドレスに装着して使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、スポット溶接用電極チップの先端部を切削するために用いるチップドレス用カッターユニット及び当該カッターユニットが取り付けられた手動型チップドレスに適している。
【符号の説明】
【0057】
1 手動型チップドレス
2 ドレッサー本体
2b 把持部
3 カッターユニット
4 モータ
5 スイッチレバー
6 回転ホルダ
6c チップ受止部
6d 取付面
7 切削カッター
7a ネジ挿通孔
8 貫通部
8a 幅広部
10 ネジ
10a 頭部
11 電源チップ
11a 先端部
C1 回転軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6