(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054582
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/56 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
H01R13/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161708
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】築地 英明
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FB07
5E021FC02
5E021FC32
5E021GA05
5E021GB06
(57)【要約】
【課題】ワイヤカバーから独立して電線を束ねることができるのに加えて、電気コネクタを組み上げる作業が容易になる電気コネクタを提供すること。
【解決手段】本発明の電気コネクタ(1)は、それぞれに電線(EW)が電気的に接続される複数の端子を保持するハウジング(10)と、ハウジングに装着され、複数の電線を覆うワイヤカバー(50)と、ハウジングに着脱可能に装着され、複数の電線を支持する電線支持体(70)と、を備える。
電線支持体(70)は、ハウジングに装着された状態において、電線を支持できる支持位置(SP)と電線の支持には関わらない退避位置(EP)との間を往復移動可能とされる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに電線が電気的に接続される端子を保持するハウジングと、
前記ハウジングに着脱可能に装着され、複数の前記電線を支持する電線支持体と、を備え、
前記電線支持体は、
前記ハウジングに装着された状態において、
支持位置と退避位置との間を往復移動可能である、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記電線支持体は、
前記支持位置と前記退避位置の間において、円弧状の移動軌跡または直線状の移動軌跡を移動する、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、
前記電線支持体に支持される複数の前記電線を束ねる結束体が係止される係止構造を備える、
請求項1または請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記電線支持体は、
前記結束体を保持する位置決め構造を備える、
請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングに装着され、複数の前記電線を覆うワイヤカバーを更に備え、
前記ワイヤカバーは、
複数の前記電線が引き出される引き出し口を備え、
前記電線支持体は、
前記支持位置において、前記引き出し口から引き出される複数の前記電線を支持する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き出される複数の電線を束ねる機能を備える電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタの端子から方向を揃えて引き出される複数の電線を覆うのにワイヤカバーが用いられている。ワイヤカバーは、電線カバーなどとも称される。
例えば、特許文献1は、コネクタハウジングに装着可能であり、装着状態では、コネクタハウジングより引き出された複数の電線を電線固定部材との間で所望の方向に導き、且つ、集束状態で保持する電線カバーが開示されている。
また、特許文献2は、緊締ベルトが一体的に構成される位置固定装置との間で電線を覆って保護するワイヤカバーとしてのワイヤ保護装置が開示される。特許文献2における電線は緊締ベルトにより位置固定装置に束ねられので、特許文献2はワイヤカバーから独立して電線を束ねる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-233405号公報
【特許文献2】実用新案登録第3083747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は電線固定部材と電線カバーとで複数の電線を束ねる。したがって、特許文献1の電気コネクタに振動が加わると電線も振動し、この振動が電線の質量により電線カバーに伝搬される。これにより、電線カバーががたついて、電線と端子の間に接続不良が生じたり断線が生じたりするおそれがある。
【0005】
また、特許文献2はワイヤカバーから独立して電線を束ねる。したがって、特許文献2によれば、ワイヤカバーのがたつきによる接続不良、断線などの不具合が生ずるおそれが小さい。
【0006】
ワイヤカバーを備える電気コネクタは、電線に接続される端子のハウジングへの固定、電線の引き出しおよびワイヤカバーの装着などの一連の手順を経て組み上げられる。電気コネクタを組み付ける電気機器、自動車などの製造者にとって、この組み上げの手順における作業が無理なく容易に行えることが望まれる。
以上より、本発明は、ワイヤカバーから独立して電線を束ねることができるのに加えて、電気コネクタを組み上げる作業が容易になる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気コネクタは、それぞれに電線が電気的に接続される端子を保持するハウジングと、ハウジングに着脱可能に装着され、複数の電線を支持する電線支持体と、を備える。
本発明における電線支持体は、ハウジングに装着された状態において、支持位置と退避位置との間を往復移動可能である。
【0008】
本発明における電線支持体は、好ましくは、支持位置と退避位置の間において、円弧状の移動軌跡または直線状の移動軌跡を移動する。
【0009】
本発明におけるハウジングは、好ましくは、電線支持体に支持される複数の電線に関わって拘束する結束体が係止される係止構造を備える。
【0010】
本発明における電線支持体は、好ましくは、結束体を保持する位置決め構造を備える。
【0011】
本発明における電気コネクタは、好ましくは、ハウジングに装着され、複数の電線を覆うワイヤカバーを更に備え、このワイヤカバーは、複数の電線が引き出される引き出し口を備える。この電線支持体は、支持位置において、引き出し口から引き出される複数の電線を支持する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気コネクタによれば、複数の電線は支持位置に置かれる電線支持体に支持されるので、この電線支持体を含めて電線を束ねることができる。つまり、本発明の電気コネクタによれば、ワイヤカバーから独立して電線を束ねることができるので、ワイヤカバーのがたつきによる接続不良、断線などの不具合が生ずるおそれが小さい。
【0013】
また、本発明の電気コネクタによれば、複数の電線を支持する電線支持体がハウジングに着脱可能に装着される。したがって、本発明の電気コネクタによれば、電線支持体をハウジングに装着する前に、電気コネクタを組み上げる作業を行うことができるので、組み上げる作業が容易である。
さらに、本発明の電気コネクタにおける電線支持体は、ハウジングに装着された状態において、電線を支持できる支持位置と電線の支持には関わらない退避位置との間を往復移動可能とされる。したがって、仮に電線支持体がハウジングに装着された後だとしても、電線支持体を退避位置においておけば、電気コネクタの組み付け作業の障害になるのを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係り、電線支持体が支持位置に置かれている電気コネクタを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係り、電線支持体が退避位置に置かれている電気コネクタを示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る電気コネクタを示し、(a)は右側面図、(b)は左側面図である。
【
図4】本実施形態に係る電気コネクタを示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図5】本実施形態に係る電気コネクタを示し、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【
図6】本実施形態に係る電気コネクタの右側面図であって、主構成要素を分離して示す図である。
【
図7】(a)は
図5(a)のVII-VII線矢視断面図であり、(b)は部分拡大図である。
【
図8】(a)は
図4(a)に電線および結束体を加えた図であり、(b)は
図7(a)に電線および結束体を加えた図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付する図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電気コネクタ1について説明する。
電気コネクタ1は、引き出される複数の電線EWを覆うワイヤカバー50を備え、複数の電線EWは電線支持体70に支持された状態で結束体100により束ねられる。この電線支持体70は、電気コネクタ1のハウジング10に対して着脱可能であるとともに、電線EWを支持する支持位置SPと電線EWの支持に関わらない退避位置EPとの間を往復移動可能とされる。
【0016】
[電気コネクタ1の全体構成:
図1、
図2]
電気コネクタ1は、図示が省略される相手電気コネクタとの嵌合動作および嵌合の解除動作が、レバー30の回転動作により実行されるレバー式の電気コネクタに該当する。電気コネクタ1は、
図1および
図2に示すように、ハウジング10と、ハウジング10に正転および逆転が可能に軸支されたレバー30と、ハウジング10に取り付けられるワイヤカバー50と、ワイヤカバー50に正転および逆転が可能に支持される電線支持体70と、を備えている。
【0017】
電線支持体70は、
図1に示される支持位置SP(70A)と
図2に示される退避位置EP(70B)の間の移動軌跡MTを往復移動するように、ハウジング10に装着されている。この移動軌跡MTは円弧状をなしている。支持位置SPにおいて、電線支持体70は結束体100で束ねられる複数の電線EWを支持することができる(
図8(a),(b))。この支持位置SPにおいて、電線支持体70はワイヤカバー50の引き出し口52の図中の下方の対応する位置に配置されており、引き出される電線EWを適切な位置で支持できる。また、退避位置EPにおいて、電線支持体70は引き出し口52から離れるので、電線EWの支持に関わらない。
【0018】
なお、電気コネクタ1において、
図1および
図2に示すように、前後方向L、幅方向Wおよび高さ方向Hが特定されるものとする。また、前後方向Lにおいて、
図1および
図2に示すように、電線支持体70が装着される側を前Fと、その反対側を後Bと定義する。
【0019】
[ハウジング10:
図1~
図5]
電気コネクタ1のハウジング10は、
図1~
図5に示すように、第1ハウジング20と、第1ハウジング20に組み付けられる第2ハウジング25と、から構成される。
第1ハウジング20は、大部分が第2ハウジング25に収容、保持されており、図示が省略される複数のメス型端子を収容するとともに保持するキャビティを備えている。
【0020】
第1ハウジング20は、樹脂材料から構成され、例えば射出成形により一体的に成形される。電気コネクタ1の他の構成要素である第2ハウジング25、レバー30、ワイヤカバー50および電線支持体70も同様である。これらの要素は、同じ樹脂材料から構成されていてもよいし、異なる樹脂材料から構成されていてもよい。
【0021】
第2ハウジング25は、幅方向Wの両側(
図4(b)の左右両側)には前後方向Lに延びるスライダ収容溝26,26が形成されている。そして、各々のスライダ収容溝26,26の内部には、スライダ23,23が前後方向Lに往復移動することができるように収容されている。スライダ23について、具体的な構成を省略するが、レバー30の動作に応じて往復移動し、相手電気コネクタとの嵌合を担う。
第2ハウジング25には、
図5(a)に示すように、レバー30を回動可能に装着するための支持軸28が、その幅方向Wの両側に形成されている。
また、第2ハウジング25には、
図7(a),(b)に示すように、電線EWを束ねるのに用いられる結束体100が通過する係止スリット29が形成されている。係止スリット29は、第2ハウジング25の前方Fにおいて、第2ハウジング25を幅方向Wに貫通するように形成されている。結束体100は、例えば弾性を備えるゴム製の帯材から構成され、電線EWを束ねる際には帯材の両端部が接続され、かつ係止スリット29を貫通するため、複数の電線EWを確実に束ねることができる。
【0022】
[レバー30:
図3~
図5]
レバー30は、スライダ23,23の移動を介して、電気コネクタ1と相手電気コネクタとの嵌合を担う。レバー30は、
図3~
図5に示すように、幅方向Wに並ぶ一対の側板31,31と、その先端において一対の側板31,31を繋ぐ連結部32と、備えている。
各々の側板31,31には、第2ハウジング25の支持軸28が挿入されることでレバー30を支持する支持孔33が形成されている。支持孔33は側板31の厚さ方向を貫通して形成されている。
【0023】
[ワイヤカバー50:
図1~
図5]
ワイヤカバー50は、第1ハウジング20に保持される複数のメス型端子に接続されている複数の電線EWを覆うカバー本体51を具備する。これらの電線EWは束ねられた状態でカバー本体51の前方Fに設けられる引き出し口52から外部に引き出される。
【0024】
[電線支持体70:
図1~
図8]
次に、電線支持体70は、引き出される複数の電線を下方から支持する。これら電線は、電線支持体70で支持された状態で、結束体100で束ねられる。電線支持体70は、
図1に示される支持位置SPと
図2に示される退避位置EPとの間を往復移動可能とされる。また、電線支持体70は、ハウジング10に対して着脱が可能である。以下、電線支持体70について、より詳しく説明する。
【0025】
電線支持体70は、
図1、
図2および
図6に示すように、本体71と、支持位置SPにおいて電線EWを支持する支持面73と、本体71の幅方向Wの両側に形成される溝状の位置決め構造75と、第2ハウジング25への装着を担うヒンジ筒77と、を備える。
電線支持体70は、本体71を含め、樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成される。前述したように、この樹脂材料は、ハウジング10などを構成するのと同じであってもよいし、異なってもよい。異なる場合、ハウジング10などを構成する樹脂材料に比べて安価な樹脂材料で電線支持体70を構成することができる。
【0026】
電線EWを支持する支持面73は、
図4(a)に示すように、本体71の幅方向Wの中央に向けて連続的に窪む円弧状の面を構成する。電線支持体70は、支持面73を有することにより、複数の電線EWを幅方向Wの中央に寄せた状態で結束体100により束ねられる。結束体100で電線EWを束ねるには、
図8(b)に示すように、結束体100は位置決め構造75の内部に収容されることで、位置決めされる。これにより、電気コネクタ1に振動が加わっても、結束体100に位置ずれが生ずるのを防ぐことができる。位置決め構造75は、結束体100が隙間なく挿入される程度の幅を有している。
【0027】
ヒンジ筒77は、第2ハウジング25に形成されるヒンジ軸27を周囲から覆って嵌合するC字状の部材である。ヒンジ軸27にヒンジ筒77が嵌合されると、電線支持体70はヒンジ軸27を中心にして正転および逆転の動作ができる。ヒンジ軸27とヒンジ筒77は互いに嵌合されることで、ヒンジ機構を構成する。なお、本実施形態において、退避位置EPから支持位置SPに向けた移動動作を正転とし、その逆、つまり支持位置SPから退避位置EPに向けた移動動作を逆転と定義する。電線支持体70の退避位置EPから支持位置SPへの移動およびその逆の移動は、ヒンジ軸27とヒンジ筒77を中心にした円弧状の移動軌跡にならって行われる。
【0028】
[電線支持体70の動作:
図1および
図2]
電線支持体70は、
図1に示される支持位置SPと
図2に示される退避位置EPとの間を移動することができる。このように退避位置EPと支持位置SPとの間を往復移動できるようにされているのは以下の理由による。
支持位置SPに置かれる電線支持体70は、
図1に示すように、電線EWが引き出されるワイヤカバー50の引き出し口52の一部を塞いでしまう。また、ワイヤカバー50が取り付けられる前であっても、例えば電線EWに繋がる端子の第1ハウジング20への接続作業、電線EWの引き出し口52に相当する位置への引き回し作業などの作業の支障になるおそれがある。しかし、電線支持体70が
図2に示される退避位置EPに置かれていれば、電線EWの引き出しなどの電気コネクタ1の組み立てなどの作業の障害となるのを最小限に抑えることができる。
【0029】
電線EWの引き回し作業の後など、支持位置SPに置かれていても支障とならない状態となったなら、電線支持体70は正転することにより
図1に示される支持位置SPに移動する。電線支持体70が支持位置SPに移動したならば、引き回されている複数の電線EWは、電線支持体70に載せられ、結束体100で束ねられる。
【0030】
[電線EWの結束:
図8]
電線EWは、
図8(a),(b)に示されるように、電線支持体70の支持面73に載って支持された状態で結束体100により束ねられる。
電線EWを束ねる結束体100は、複数の電線EWを覆い、かつ、幅方向Wの両側において電線支持体70の位置決め構造75を通り、さらに第2ハウジング25に形成される係止スリット29を通過して、電線EWを束ねる。結束体100は、本発明の係止構造の一例である係止スリット29を介して電線支持体70に係止される。こうして、結束体100は、
図8(b)において、下方は第2ハウジング25に支持され、かつ、上方は電線EWを介して電線支持体70に支持される。このように、結束体100は、第2ハウジング25と電線支持体70という異なる部材に跨って支持されるが、ワイヤカバー50には関わっていない、つまり、電線EWはワイヤカバー50から独立して結束体100により束ねられる。
【0031】
[効果]
本実施形態に係る電気コネクタ1の効果について説明する。
<電線支持体70の着脱による効果>
電気コネクタ1は、電線支持体70がハウジング10に対して着脱可能である。つまり、電気コネクタ1は、電線支持体70を未だハウジング10に装着する前に、複数の電線EWをハウジング10に組み付ける作業、ワイヤカバー50をハウジング10に装着する作業などの電気コネクタ1を組み上げる作業を行うことができる。電線支持体70がハウジング10に装着されるとこれらの組み上げ作業の障害となり得るのに対して、電気コネクタ1は組み上げ作業を終えた後に電線支持体70を装着することができるので、組み上げ作業が容易である。
【0032】
また、異なる種類の電線支持体70を着脱可能とすれば、電気コネクタ1が適用される対象、例えば自動車の適用部位に応じた電線支持体70を選択して装着できる。そうすれば、適用対象が異なり、または、同じ適用対象であっても適用される具体的な部位が異なる場合であっても、それぞれに適合する電線支持体70を用いることにより、適用対象に適合する電気コネクタ1が提供される。なお、異なる種類の電線支持体70としては、一例として、支持できる電線EWの数が異なる場合があり、この数に応じた異なる寸法を有する電線支持体70が該当する。
【0033】
さらに、電線支持体70を着脱可能として、ハウジング10とは別な部材とすることにより、ハウジング10よりも安価な樹脂材料で構成することもできる。
【0034】
<退避位置と支持位置との間の往復移動による効果>
仮に電線支持体70が装着された後だとしても、電線支持体70を退避位置EPにおいておけば、電気コネクタ1の組付け作業の障害になるのを最小限に抑えることができる。また、一度は電線支持体70を支持位置SPにして組み上げ作業を行ったものの、不都合が生じた場合には、電線支持体70を退避位置EPに戻すことができる。そうすれば、支持位置SPに電線支持体70が置かれたままだと困難な作業を行うことができる。
【0035】
<結束体100が電線支持体70を含めて電線EWを束ねることによる効果>
電気コネクタ1は、電線支持体70に支持される複数の電線EWをハウジング10に係止される結束体100により拘束される。つまり、電気コネクタ1は、ワイヤカバー50から独立して電線EWを束ねるので、その振動により電線EWがワイヤカバー50のがたつきを生じさせることがない。一方で、電気コネクタ1が振動したとしても、電線EWにはハウジング10と同じ位相の振動が加わるため、電線EWへのダメージを最小限に抑えることができる。こうして、電気コネクタ1によれば、電線EWの端子との接続不良、断線などの不具合が生ずるおそれが小さい。
【0036】
<往復移動がヒンジ機構による効果>
電気コネクタ1において、電線支持体70はヒンジ軸27およびヒンジ筒77からなるヒンジ機構により、電線支持体70は支持位置SPと退避位置EPとの間を移動する。ヒンジ機構は、回転動作に伴う摩擦抵抗が小さいので、移動操作が容易である。
【0037】
以上、本発明の好ましい電気コネクタの実施形態を説明したが、上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0038】
[電線支持体70の移動軌跡]
例えば、以上説明した電気コネクタ1の電線支持体70は、支持位置SPと退避位置EPの間の円弧状の移動軌跡を往復移動することとしたが、本発明における電線支持体の移動軌跡はこれに限らず、直線状の移動軌跡を往復移動することができる。例えば
図1と同様の支持位置SPに置かれる電線支持体70が下降することで退避位置EPに移動し、この退避位置EPから支持位置SPまで上昇する形態が想定される。この場合には、ハウジング10に電線支持体70が昇降移動できるスリットを高さ方向Hに設け、このスリットの内部を電線支持体70が昇降移動できるようにすればよい。
【0039】
[結束体100の所属]
以上説明した電気コネクタ1は、電気コネクタ1およびその構成要素とは別体の結束体100を用いて電線EWを束ねるが、本発明の結束体はこれに限らない。例えば、ハウジング10または電線支持体70と一体的に形成される結束体を用いて複数の電線EWを束ねてもよい。例えば、ハウジング10および電線支持体70は、電気的な絶縁材料である樹脂材料から構成され、射出成形で作製されるので、結束体を射出成形時にハウジング10または電線支持体70と一体的に作製することができる。
【0040】
[結束体100の電線支持体70への係止]
本実施形態においては、ハウジング10の係止スリット29に結束体100を通過させることで、結束体100をハウジング10に係止されるが、これもまた本発明の一例に過ぎない。例えば、帯材からなる結束体100の両端部に係止用の孔を設けるのに加えて、ハウジング10の幅方向Wの両側に係止用の孔に挿入される係止用の突起を設けることができる。電線EWが電線支持体70に支持された状態で、結束体100の係止用の孔をハウジング10の係止用の突起に係止させることにより、電線支持体70を結束体100で束ねることができる。
【0041】
[位置決め構造75の代替]
本実施形態においては、溝状の位置決め構造75により結束体100の位置ずれを防ごうとしているが、これもまた本発明の一例に過ぎない。例えば、溝を設けるのではなく、本体71の幅方向Wの両側のそれぞれに一対の突条からなる位置決め構造75を設け、この突条の間に結束体100を挿入することによっても、結束体100の位置ずれを防ぐことができる。この突条は連続的に設けられていてもよいし、間欠的に設けられていてもよい。
【0042】
[電線の引き出しの向き]
以上説明した電気コネクタ1は、ハウジング10に保持される端子(図示なし)の向きとワイヤカバー50から引き出される複数の電線EWは概ね直交するが、本発明はこれに限らない。例えば、ハウジング10に保持される端子の向きとワイヤカバー50から引き出される複数の電線EWは概ね平行をなす電気コネクタにも本発明の電線支持体は適用され得る。
【符号の説明】
【0043】
1 電気コネクタ
10 ハウジング
20 第1ハウジング
23 スライダ
25 第2ハウジング
26 スライダ収容溝
27 ヒンジ軸
28 支持軸
29 係止スリット
30 レバー
31 側板
32 連結部
33 支持孔
50 ワイヤカバー
51 カバー本体
52 引き出し口
70,70A,70B 電線支持体
71 本体
73 支持面
75 位置決め構造
77 ヒンジ筒
100 結束体
EW 電線