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特開2022-54647圧電アクチュエータ及び圧電アクチュエータの検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054647
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ及び圧電アクチュエータの検査方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161792
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相羽 貴司
(72)【発明者】
【氏名】蔵 圭司
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF93
2C057AG15
2C057AG37
2C057AG91
2C057AL13
2C057AN01
2C057AP82
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧電アクチュエータの端部における反りの程度を把握する。
【解決手段】振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43が鉛直方向であるZ方向に、下からこの順に積層されている。第1圧電層42と第2圧電層43との間の面のY方向の端部に、高電位電極の一部である接続部524が配置されている。第2圧電層43の上面のY方向における端部に、接続部524と接続された第2表面電極55a,55b、及び、接続部524とZ方向に重なる検査用電極62a,62bが配置されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1方向における一方側の面において絶縁性を有する振動板と、
前記振動板の前記第1方向における前記一方側の面に配置された第1圧電層と、
前記第1圧電層の前記第1方向における前記一方側の面に配置された第2圧電層と、
前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面に配置された複数の個別電極と、
前記振動板と前記第1圧電層との間の面に配置された、前記複数の個別電極に共通の第1共通電極と、
前記第1圧電層と前記第2圧電層との間の面に配置された、前記複数の個別電極に共通の第2共通電極と、
前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面に配置され、前記第1共通電極と導通する第1表面電極と、
前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面に配置され、前記第2共通電極と導通する第2表面電極と、を備え、
前記第1共通電極及び前記第2共通電極のうち片方の共通電極は、前記片方の共通電極が配置された面の、前記第1方向と直交する第2方向における端部まで延び、
前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面の、前記第2方向における端部に配置され、前記片方の共通電極と前記第1方向に重なり、且つ、前記個別電極、前記第1共通電極及び前記第2共通電極のいずれとも導通していない検査用電極、をさらに備えていることを特徴する圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記振動板、前記第1圧電層及び前記第2圧電層は、前記第2方向の長さが、前記第1方向及び前記第2方向のいずれとも直交する第3方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記片方の共通電極が、前記第2共通電極であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1表面電極が、前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面の、前記第2方向における端部に配置され、
前記第2表面電極が、前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面の、前記第2方向における端部に、前記第1方向及び前記第2方向のいずれとも直交する第3方向に前記第1表面電極と間隔をあけて配置され、
前記検査用電極が、前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面の、前記第1表面電極と前記第2表面電極との間の部分に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面の、前記第1表面電極と前記第2表面電極との間の部分に、前記個別電極、前記第1共通電極、前記第2共通電極及び前記検査用電極のいずれとも導通していない、前記検査用電極とは別の少なくとも1つの非導通電極を備え、
前記少なくとも1つの非導通電極と前記検査用電極とが、前記第3方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記片方の共通電極は、
前記第1表面電極及び前記第2表面電極のうち前記片方の共通電極と導通する片方の表面電極と前記第1方向に重なる位置まで延びた重なり部、を有し、
前記重なり部が、前記検査用電極と前記第1方向に重なる位置まで前記第3方向に延び、
前記検査用電極が、前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面の、前記片方の表面電極と前記非導通電極との間の部分に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記検査用電極は、前記非導通電極よりも、前記第2方向における一方側の端と他方側の端との間の第2方向における長さが長いことを特徴とする請求項5又は6に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記検査用電極は、
前記第3方向に並んで互いに接続され、前記第1方向に投影した形状が前記第2方向を長手方向とする長方形の2つの電極部分、を有することを特徴とすることを特徴とする請求項7に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記2つの電極部分が前記第2方向にずれていることを特徴とする請求項8に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項10】
前記検査用電極は、前記第1方向に投影した形状が、前記第2方向と平行な1組の対向辺を有する平行四辺形であることを特徴とする請求項7に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項11】
前記検査用電極は、
前記第2方向に延びた第1電極部分と、
前記第1電極部分と前記第3方向に離れて配置され、前記第2方向に延び、前記第1電極部分に対して前記第2方向における前記他方側にずれて配置された第2電極部分と、
前記第1電極部分の前記第2方向における前記他方側の端部と、前記第2電極部分の前記第2方向における前記一方側の端部とを接続する第3電極部分と、を有し、
前記第1電極部分の前記第2方向における前記一方側の端と、前記第2電極部分の前記第2方向における前記他方側の端との間の、前記第2方向における長さが、前記非導通電極の前記第2方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項7に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の圧電アクチュエータの検査方法であって、
前記圧電アクチュエータを基材に吸着させ、
前記検査用電極と前記片方の共通電極とにプローブを当てて、前記検査用電極と前記片方の共通電極との間の静電容量を測定し、
測定した静電容量と、静電容量の基準値との差が所定値未満の場合には、圧電アクチュエータが正常であると判定し、
測定した静電容量と、前記基準値との差が所定値以上の場合には、圧電アクチュエータが異常であると判定することを特徴とする圧電アクチュエータの検査方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の圧電アクチュエータの検査方法であって、
前記圧電アクチュエータを基材に吸着させ、
前記検査用電極の前記第2方向の一方側の端部と前記片方の共通電極とにプローブを当てるとともに、前記検査用電極に当てた前記プローブを前記基材に向けて押し付けた状態で、前記検査用電極と前記片方の共通電極との間の静電容量としての第1静電容量を測定し、
前記検査用電極の前記第2方向の他方側の端部と前記片方の共通電極とにプローブを当てるとともに、前記検査用電極に当てた前記プローブを前記基材に向けて押し付けた状態で、前記検査用電極と前記片方の共通電極との間の静電容量としての第2静電容量を測定し、
前記第1静電容量と前記第2静電容量との差が所定値未満の場合には、圧電アクチュエータが正常であると判定し、
前記第1静電容量と前記第2静電容量との差が所定値以上の場合には、圧電アクチュエータが異常であると判定することを特徴とする圧電アクチュエータの検査方法。
【請求項14】
前記圧電アクチュエータが、請求項7~11のいずれかに記載の圧電アクチュエータであることを特徴とする請求項13に記載の圧電アクチュエータの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ及び圧電アクチュエータの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエータの一例として、特許文献1には、インクジェットヘッドにおいて圧力室内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータが記載されている。特許文献1に記載の圧電アクチュエータでは、3つの圧電層が積層されることによって圧電体が形成されている。また、上側の圧電層の上面に、複数の圧力室に個別の複数の個別電極が配置されている。また、下側の圧電層と中央の圧電層との間の面に、複数の個別電極に共通の第1共通電極が配置されている。また、中央の圧電層と上側の圧電層との間の面に、複数の個別電極に共通の第2共通電極が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-189017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧電アクチュエータの製造時には、圧電層及び電極の積層体を加熱するが、このとき、圧電層と電極との線膨張係数の違いから、圧電アクチュエータに反りが発生することがある。圧電アクチュエータに反りが発生すると、圧電層の電極に挟まれた部分の静電容量が変化する。そこで、例えば、圧電層を挟む2つの電極にプローブを当てて静電容量を測定し、測定した静電容量に基づいて圧電アクチュエータの反りの程度を把握することが考えられる。
【0005】
ここで、圧電アクチュエータの中央部は、その周囲の全周に圧電アクチュエータの他の部分が存在しており、当該他の部分によって反りが規制されやすい。これに対して、圧電アクチュエータの端部は、その外側に圧電アクチュエータの他の部分が存在しないため、反りが規制されない。また、圧電アクチュエータの中央部と端部とでは、加熱時の雰囲気(温度等)が異なる。これらの要因から、圧電アクチュエータでは、その端部において反りが大きくなる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の圧電アクチュエータの端部には、上記のような静電容量の測定に使用することのできる電極が存在しない。なお、特許文献1の圧電アクチュエータの端部では、第1接続端子と第1共通電極、及び、第2接続端子と第2共通電極が、それぞれ、圧電層を挟んで配置されているが、第1接続端子と第1共通電極、及び、第2接続端子と第2共通電極は、それぞれ、スルーホールを介して導通しているため、上記のような静電容量の測定に使用することができない。その結果、圧電アクチュエータの端部における反りの程度を把握することができない。
【0007】
圧電アクチュエータの端部における反りの程度を把握できないと、端部における反りが大きい圧電アクチュエータを用いてインクジェットヘッドを製造してしまうことがある。この場合、圧電アクチュエータに流路部材、あるいは、COF等の配線部材を接合したときに圧電層が破損する虞がある。また、中央部と端部とでノズルからのインクの吐出特性に差が生じるなどの問題が発生する虞もある。
【0008】
本発明の目的は、端部における反りの程度を把握することが可能な圧電アクチュエータ、及び、圧電アクチュエータの検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電アクチュエータは、少なくとも第1方向における一方側の面において絶縁性を有する絶縁性材料からなる振動板と、前記振動板の前記第1方向における前記一方側の面に配置された第1圧電層と、前記第1圧電層の前記第1方向における前記一方側の面に配置された第2圧電層と、前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面に配置された複数の個別電極と、前記振動板と前記第1圧電層との間の面に配置された、前記複数の個別電極に共通の第1共通電極と、前記第1圧電層と前記第2圧電層との間の面に配置された、前記複数の個別電極に共通の第2共通電極と、前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面に配置され、前記第1共通電極と導通する第1表面電極と、前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面に配置され、前記第2共通電極と導通する第2表面電極と、を備え、前記第1共通電極及び前記第2共通電極のうち片方の共通電極は、前記片方の共通電極が配置された面の、前記第1方向と直交する第2方向における端部まで延び、前記第2圧電層の前記第1方向における前記一方側の面の、前記第2方向における端部に配置され、前記片方の共通電極と前記第1方向に重なり、且つ、前記個別電極、前記第1共通電極及び前記第2共通電極のいずれとも導通していない検査用電極、をさらに備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータを含むプリンタ1の全体構成図である。
図2図1のヘッド3の平面図である。
図3図2の領域IIIの拡大図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図3のV-V線に沿った断面図である。
図6】第2圧電層43の上面を示す平面図である。
図7】(a)は図6の検査用電極62a及びこれとX方向に並ぶ一部の電極を拡大した図であり、(b)は図6の検査用電極62b及びこれとX方向に並ぶ一部の電極を拡大した図である。
図8】第1圧電層42の上面を示す平面図である。
図9】振動板41の上面を示す平面図である。
図10】(a)は、図6図8図9のXA-XA線断面図であり、(b)は、図6図8図9のXB-XB線断面図である。
図11】(a)は、個別電極51に低電位(GND電位)が付与されているときの図5の断面におけるアクチュエータ部90の状態を示す図であり、(b)は、個別電極51に高電位(VDD電位)が付与されているときの図5の断面におけるアクチュエータ部90の状態を示す図である。
図12】圧電アクチュエータの検査の手順を示すフローチャートである。
図13】(a)は第1静電容量C1aを測定するときの2つのプローブ103の当て方を説明するための図であり、(b)は第2静電容量C2aを測定するときの2つのプローブ103の当て方を説明するための図であり、(c)は第1静電容量C1bを測定するときの2つのプローブ103の当て方を説明するための図であり、(d)は第2静電容量C2bを測定するときの2つのプローブ103の当て方を説明するための図である。
図14】(a)は図13(a)の状態での、吸着ステージ101上に配置された圧電アクチュエータ22をX方向から見た図であり、(b)は図13(b)の状態での、吸着ステージ101上に配置された圧電アクチュエータ22をX方向から見た図であり、(c)は図13(c)の状態での、吸着ステージ101上に配置された圧電アクチュエータ22をX方向から見た図であり、(d)は図13(d)の状態での、吸着ステージ101上に配置された圧電アクチュエータ22をX方向から見た図である。
図15】(a)は、変形例1の図7(a)に対応する図であり、(b)は、変形例1の図7(b)に対応する図である。
図16】(a)は、変形例2の図7(a)に対応する図であり、(b)は、変形例2の図7(b)に対応する図である。
図17】変形例3における圧電アクチュエータの検査の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。以下の説明において、X方向及びY方向は、Z方向と直交し、X方向とY方向とは直交する。例えば、Z方向は鉛直方向であり、X方向及びY方向は水平方向である。なお、Z方向が本発明の「第1方向」に該当し、Y方向が本発明の「第2方向」に該当し、X方向が本発明の「第3方向」に該当する。また、Z方向における上側が本発明の「第1方向の一方側」に該当し、Z方向における下側が本発明の「第1方向の他方側」に該当する。また、Y方向における、図1の左側が本発明の「第2方向の一方側」に該当し、図1の右側が本発明の「第2方向の他方側」に該当する。
【0012】
<プリンタ1の全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、キャリッジ2と、ヘッド3と、2つの搬送ローラ対4とを備えている。
【0013】
キャリッジ2は、Y方向に延びる2本のガイドレール5に支持され、ガイドレール5に沿ってY方向に移動可能である。
【0014】
ヘッド3は、シリアル式のものであって、キャリッジ2に搭載され、キャリッジ2と共にY方向に移動可能である。ヘッド3の下面には、複数のノズル15が形成されている。
【0015】
2つの搬送ローラ対4は、X方向にキャリッジ2を挟んで配置されている。搬送ローラ対4が用紙Pを挟持した状態で回転することで、用紙PがX方向に沿った搬送方向に搬送される。
【0016】
プリンタ1の制御部(図示略)は、キャリッジ2と共にヘッド3をY方向に移動させながらノズル15からインクを吐出させる吐出動作と、搬送ローラ対4によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙Pに画像が記録される。
【0017】
<ヘッド3の構成>
図2に示すように、ヘッド3は、流路ユニット21と、圧電アクチュエータ22とを有する。
【0018】
<流路ユニット21>
図2図4に示すように、流路ユニット21は、Z方向に投影した形状が矩形であり、Z方向に積層された4枚のプレート31~34で構成されている。
【0019】
プレート31には、複数の圧力室10が形成されている。プレート32には、圧力室10毎に、連通路12,13が形成されている。連通路12,13は、それぞれ、対応する圧力室10のY方向の一端部及び他端部とZ方向に重なっている。プレート33には、連通路13毎に、連通路14が形成されている。連通路14は、対応する連通路13とZ方向に重なっている。プレート33には、さらに、12本のマニホールド流路11が形成されている。マニホールド流路11は、X方向に配列された圧力室10の列10R毎に設けられている。各マニホールド流路11は、X方向に延び、対応する列10Rに属する複数の圧力室10と連通路12を介して連通している。プレート34には、複数のノズル15が形成されている。各ノズル15は、連通路14とZ方向に重なっている。
【0020】
プレート31の上面において、圧電アクチュエータ22が配置されない領域に、4つのインク供給口8が形成されている。各インク供給口8は、チューブ(図示略)などを介してインクカートリッジ(図示略)と連通し、かつ、3本のマニホールド流路11と連通している。インクカートリッジから各インク供給口8に供給されたインクは、3本のマニホールド流路11に供給される。各マニホールド流路11から、各列10Rに属する複数の圧力室10に、連通路12を介してインクが供給される。
【0021】
<圧電アクチュエータ22>
図2図5に示すように、圧電アクチュエータ22は、流路ユニット21の上面に配置されている。圧電アクチュエータ22は、それぞれZ方向を厚み方向としてZ方向に積層された振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43と、複数の個別電極51と、高電位電極52(本発明の「第2共通電極」)と、低電位電極53(本発明の「第1共通電極」)とを有する。
【0022】
振動板41は、流路ユニット21(プレート31)の上面に配置されている。第1圧電層42は、振動板41の上面に配置されている。第2圧電層43は、第1圧電層42の上面に配置されている。
【0023】
振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43は、チタン酸とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛等を主成分とする圧電材料からなる。ただし、振動板41は、圧電材料以外の絶縁材料からなるものであってもよい。あるいは、振動板41は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料、合成樹脂材料等からなり、流路ユニット21の上面に配置されたインク分離層と、圧電材料等の絶縁材料からなり、インク分離層の上面に配置された絶縁層と、によって形成されていてもよい。すなわち、振動板41は、少なくともその上面を形成する部分が絶縁性を有していればよい。
【0024】
振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43は、厚み(Z方向の長さ)が例えば15μm程度である。また、振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43は、Y方向の長さLyがX方向の長さLxよりも短い。例えば、Lyが30~35mm程度であり、Lxが35~40mm程度である。これにより、圧電アクチュエータ22は、Y方向の長さがX方向の長さよりも短い。
【0025】
図3に示すように、複数の個別電極51は、第2圧電層43の上面に、圧力室10のそれぞれに対応して配置されている。各個別電極51は、主部51aと、突出部51bとを有する。主部51aは、対応する圧力室10の略全域とZ方向に重なっている。突出部51bは、主部51aからY方向に突出し、対応する圧力室10とZ方向に重なっていない。突出部51bには、COF(Chip On Film)(図示略)と電気的に接続される接点が設けられている。COFに実装されたドライバIC(図示略)は、制御部の制御により、COFの配線を介して各個別電極51に対して個別に、高電位(VDD電位)及び低電位(GND電位)のいずれかを選択的に付与する。
【0026】
図6に示すように、複数の個別電極51は、第2圧電層43の上面の、第2圧電層43におけるX方向の両端部及びY方向の両端部を除く領域において、X方向に配列されており、圧力室10の列10R(図2参照)のそれぞれに対応する、複数の駆動電極列51Rを形成している。複数の駆動電極列51Rは、Y方向に並んでいる。
【0027】
各駆動電極列51Rに対し、X方向の一方側(図6の上側)及び他方側(図6の下側)のそれぞれに、ダミー電極59が設けられている。ダミー電極59は、対応する駆動電極列51Rに属する個別電極51と、サイズ及び形状が同じであり、当該個別電極51と共にX方向に等間隔で並んでいる。ダミー電極59は、COFと電気的に接続されず、電位が付与されない。ダミー電極59を設けることで、X方向に沿ったスクリーン印刷による電極形成時に、X方向の端部にあるダミー電極59の厚みが小さくなった場合でも、個別電極51の厚みには影響が出ず、個別電極51を適切に形成できる。また、各駆動電極列51RにおいてX方向の中央にある個別電極51とX方向の端部にある個別電極51とにおける電極形成による収縮量の差を抑制でき、ひいては各駆動電極列51Rに対応する複数のノズル15からの吐出量のばらつきを抑制できる。
【0028】
第2圧電層43の上面には、個別電極51及びダミー電極59に加え、第1表面電極54a、54b、第2表面電極55a、55b、複数の非導通電極63a,63b、及び、検査用電極62a,62bが配置されている。
【0029】
図6図7(a)、図10(a)に示すように、第1表面電極54aは、第2圧電層43の上面のY方向における一端部(図6の左端部)の領域のうち、X方向における他端部(図6の左下端部)に配置されている。図6図7(b)、図10(b)に示すように第1表面電極54bは、第2圧電層43の上面のY方向における他端部(図6の右端部)の領域のうち、X方向における一端部(図6の右上端部)に配置されている。第1表面電極54a、54bは、X方向に延びている。
【0030】
図6図7(a)、図10(a)に示すように、第2表面電極55aは、第2圧電層43の上面のY方向における一端部(図6の左端部)の領域のうち、X方向における一端部(図6の左上端部)に配置されている。図6図7(b)、図10(b)に示すように第2表面電極55bは、第2圧電層43の上面のY方向における他端部(図6の右端部)の領域のうち、X方向における他端部(図6の右下端部)に配置されている。第2表面電極55a、55bは、X方向に延びている。
【0031】
また、第1表面電極54aと第2表面電極55aとは、Y方向の位置が同じである。そして、第1表面電極54aと第2表面電極55aとは、X方向に間隔をあけて配置されている。また、第1表面電極54bと第2表面電極55bとは、Y方向の位置が同じである。そして、第1表面電極54bと第2表面電極55bとは、X方向に間隔をあけて配置されている。
【0032】
図6図7(a)、図10(a)に示すように、複数の非導通電極63aは、第1表面電極54aと第2表面電極55aとの間に配置され、X方向に並んでいる。図6図7(b)、図10(b)に示すように複数の非導通電極63bは、第1表面電極54bと第2表面電極55bとの間に配置され、X方向に並んでいる。また、各非導通電極63aは、X方向に並ぶ2つの電極部分63a1に分割されている。また、各非導通電極63bは、X方向に並ぶ2つの電極部分63b1に分割されている。電極部分63a1,63b1のZ方向に投影した形状は、Y方向を長手方向とする長方形である。また、電極部分63a1,63b1のY方向の長さは、第1表面電極54a及び第2表面電極55aのY方向の長さとほぼ同じである。また、Y方向において、2つの電極部分63a1の位置、及び、2つの電極部分63a1の位置は、それぞれ同じである。また、X方向において、各非導通電極63aにおける電極部分63a1同士の間隔、及び、各非導通電極63bにおける電極部分63b1同士の間隔は、非導通電極63a同士の間隔、及び、非導通電極63b同士の間隔よりも小さい。
【0033】
ここで、非導通電極63a,63bを、それぞれ、2つの電極部分63a1及び2つの電極部分63b1に分割されたものとしているのは、圧電アクチュエータ22の製造時の加熱の際に、圧電アクチュエータ22のY方向の端部に反りを生じにくくするためである。ただし、各非導通電極63a,63bは、それぞれ、上記とは異なり分割されていない1つの電極であってもよい。
【0034】
図6図7(a)、図10(a)に示すように、検査用電極62aは、第2表面電極55aに最も近い(図7(a)の最も上側の)非導通電極63aと、第2表面電極55aとの間に配置されている。これにより、第1表面電極54aと第2表面電極55aとの間に、検査用電極62aと複数の非導通電極63aとが並んでいる。検査用電極62aは、2つの電極部分62a1,62a2と、連結部62a3とを有する。
【0035】
電極部分62a1のZ方向に投影した形状は、Y方向を長手方向とし、且つ、電極部分63a1よりもY方向の長さが長い長方形である。Y方向において、電極部分62a1の一方側(図7(a)の左側)の端が、非導通電極63aの一方側の端よりも一方側に位置している。また、Y方向において、電極部分62a1の他方側(図7(a)の右側)の端の位置は、非導通電極63aの他方側の端の位置と同じである。
【0036】
電極部分62a2は、電極部分62a1のX方向における一方側(図7(a)の上側)に位置している。電極部分62a2のZ方向に投影した形状は、電極部分62a1と同様の長方形である。Y方向において、電極部分62a2の一方側(図7(a)の左側)の端の位置は、非導通電極63aの一方側の端の位置と同じである。また、Y方向において、電極部分62a2の他方側(図7(a)の右側)の端が、非導通電極63aの他方側の端よりも他方側に位置している。
【0037】
そして、電極部分62a1と電極部分62a2とがこのように配置されていることにより、電極部分62a2が、電極部分62a1に対して、Y方向の他方側(図7(a)の右側)にずれている。
【0038】
また、電極部分62a1と電極部分62a2とは、X方向において隙間をあけて配置されている。この隙間のX方向の長さは、例えば、非導通電極63aにおける電極部分63a1同士の間隔と同程度である。連結部62a3は、電極部分62a1と電極部分62a2との間の隙間に配置されており、電極部分62a1と電極部分62a2とを連結させる。
【0039】
そして、検査用電極62aがこのような構成となっていることにより、検査用電極62aのY方向における一方側の端と他方側の端との間の長さW1aは、非導通電極63aのY方向の長さ(一方側の端と他方側の端との間の長さ)W1bよりも長い。
【0040】
図6図7(b)、図10(b)に示すように、検査用電極62bは、第2表面電極55bに最も近い(図7(b)の最も下側)非導通電極63bと、第2表面電極55bとの間に配置されている。これにより、第1表面電極54bと第2表面電極55bとの間に、検査用電極62bと複数の非導通電極63bとが並んでいる。検査用電極62bは、2つの電極部分62b1,62b2と、連結部62b3とを有する。
【0041】
電極部分62b1,62b2及び連結部62b3は、それぞれ、電極部分62a1,62a2及び連結部62a3とサイズ及び形状が同じものである。そして、Y方向において、電極部分62b1の一方側(図7(b)の左側)の端が、非導通電極63bの一方側の端よりも、一方側に位置している。また、Y方向において、電極部分62b1の他方側(図7(b)の右側)の端の位置は、非導通電極63bの他方側の端の位置と同じである。また、Y方向において、電極部分62b2の一方側(図7(b)の左側)の端の位置は、非導通電極63bの一方側の端の位置と同じである。また、Y方向において、電極部分62b1の他方側(図7(b)の右側)の端は、非導通電極63bの他方側の端よりも、他方側に位置している。
【0042】
そして、電極部分62b1と電極部分62b2とがこのように配置されていることにより、電極部分62b2が、電極部分62b1に対して、Y方向の他方側(図7(b)の右側)にずれている。また、検査用電極62bがこのような構成となっていることにより、検査用電極62bのY方向における一方側の端と他方側の端との間の長さW2aは、非導通電極63bのY方向の長さ(一方側の端と他方側の端との間の長さ)W2bよりも長い。
【0043】
第1表面電極54a,54b及び第2表面電極55a,55bは、COF(図示略)と電気的に接続されている。ドライバIC(図示略)は、制御部の制御により、COFの配線を介して、第1表面電極54a,54bに低電位(GND電位)を付与し、かつ、第2表面電極55a,55bに高電位(VDD電位)を付与する。一方、非導通電極63a,63b及び検査用電極62a,62bは、COFと電気的に接続されていない。また、非導通電極63a,63b及び検査用電極62a,62bは、個別電極52、高電位電極52及び低電位電極53のいずれとも導通しておらず、電位が付与されない。
【0044】
図4図5に示すように、高電位電極52は、第1圧電層42の上面(第1圧電層42と第2圧電層43との間の面)に配置されている。
【0045】
また、図8図10(a)、(b)に示すように、高電位電極52は、Y方向に延びる2つの幹部521,522と、各幹部521,522から分岐してX方向に延びる複数の枝部523と、X方向に配列されかつ枝部523によって連結された複数の個別部52aと、第2表面電極55a,55bとZ方向に重なる接続部524,525(本発明の「重なり部」)とを含む。各個別部52aは、各圧力室10に対応するものであり、各圧力室10のX方向の中央部分とZ方向に重なっている(図5参照)。各幹部521,522は、複数の枝部523を連結している。
【0046】
第1圧電層42の、X方向における一端部(図8の上端部)の、Y方向における一方側(図8の左側)の部分に、幹部521が配置され、第1圧電層42の、X方向における他端部(図8の下端部)の、Y方向における他方側(図8の右側)の部分に、幹部522が配置されている。幹部521,522は、Y方向に延びている。
【0047】
幹部521から、3つの枝部523が、第1圧電層42のX方向の一端(図8の上端)から他端(図8の下端)に向かって、X方向に延びている。幹部522から、4つの枝部523が、第1圧電層42のX方向の他端(図8の下端)から一端(図8の上端)に向かって、X方向に延びている。各幹部521,522から分岐した枝部523が、Y方向に並んでいる。
【0048】
接続部524は、図8図10(a)に示すように、第1圧電層42のY方向の一端部(図8の左端部)において、第2表面電極55aと検査用電極62aとにわたってX方向に延び、第2表面電極55a及び検査用電極62aとZ方向に重なっている。また、接続部524は、幹部521におけるY方向の一端(図8の左端)に接続し、かつ、幹部521から分岐した複数の枝部523のうち最もY方向の一方(図8の左方)に位置する枝部523に接続している。
【0049】
接続部525は、図8図10(b)に示すように、第1圧電層42のY方向の他端部(図8の右端部)において、第2表面電極55bと検査用電極62bとにわたってX方向に延び、第2表面電極55b及び検査用電極62bとZ方向に重なっている。また、接続部524は、幹部522におけるY方向の他端(図8の右端)に接続し、かつ、幹部522から分岐した複数の枝部523のうち最もY方向の他方(図8の右方)に位置する枝部523に接続している。
【0050】
接続部524,525は、それぞれ、第2圧電層43に形成された貫通孔43xを介して、第2表面電極55a,55bと導通している。
【0051】
第1圧電層42の上面(第1圧電層42と第2圧電層43との間の面)には、高電位電極52に加え、接続電極56A,56B及び複数の非導通電極64,65が配置されている。
【0052】
図8に示すように、接続電極56A,56Bは、それぞれ、L字状であり、Y方向に延びる部分561と、X方向に延びる部分562とを有する。接続電極56Aは、第1圧電層42のX方向の一方側(図8の上側)かつY方向の他方側(図8の右側)の角部に配置されている。接続電極56Bは、第1圧電層42のX方向の他方側(図8の下側)かつY方向の一方側(図8の左側)の角部に配置されている。
【0053】
図8図10(a)、(b)に示すように、接続電極56A,56Bの部分562は、それぞれ、第2圧電層43に形成された貫通孔43yを介して、第1表面電極54a,54bと導通している。
【0054】
接続電極56Aの部分561は、図8の右から1つ目及び2つ目の枝部523とX方向に重なり、また、複数の駆動電極列51Rのうち図6の右側の3つの列とX方向に重なっている。接続電極56Bの部分561は、図8の左から1つ目及び2つ目の枝部523とX方向に重なり、また、複数の駆動電極列51Rのうち図6の左側の3つの列とX方向に重なっている。
【0055】
複数の非導通電極64は、接続部524と、接続電極56Bの部分562との間、及び、接続部525と、接続電極56Aの部分562との間に配置され、Y方向に間隔をあけて並んでいる。複数の非導通電極64は、複数の非導通電極63a,63b及び検査用電極62a,62bに対して個別に設けられており、対応する非導通電極63a,63b又は検査用電極62a,62b電極とZ方向に重なる。非導通電極64は、非導通電極63a,63bとサイズ及び形状が同じ電極である。
【0056】
複数の非導通電極65は、接続電極56Aの部分561と幹部521との間、及び、接続電極56Bの部分561と幹部522との間に配置され、Y方向に間隔をあけて並んでいる。
【0057】
非導通電極64,65は、個別電極52、高電位電極52及び低電位電極53のいずれとも導通しておらず、電位が付与されない。
【0058】
低電位電極53は、図4図5に示すように、振動板41の上面(振動板41と第1圧電層42との間の面)に配置されている。
【0059】
図9図10(a)、(b)に示すように、低電位電極53は、Y方向に延びる2つの幹部531,532と、各幹部531,532から分岐してX方向に延びる複数の枝部533と、X方向に配列されかつ枝部533によって連結された複数の個別部53aと、第1表面電極54a,54b(図6参照)とそれぞれZ方向に重なる接続部534,535とを含む。X方向に配列された複数の個別部53aのうち、X方向の最も一方側及び他方側に位置する個別部53aを除き、各個別部53aは、X方向に互いに隣接する2つの圧力室10に跨り、当該2つの圧力室10のX方向の端部とZ方向に重なる部分を有する(図5参照)。上記X方向の最も一方側及び他方側に位置する個別部53aは、1つの圧力室10のX方向の端部とZ方向に重なる部分を有する。各幹部531,532は、複数の枝部533を連結している。
【0060】
振動板41の、X方向における一端部(図9の上端部)の、Y方向における他方側(図9の右側)の部分に、幹部531が配置され、振動板41の、X方向における他端部(図9の下端部)の、Y方向における一方側(図8の右側)の部分に、幹部532が配置されている。幹部531,532は、Y方向に延びている。
【0061】
幹部531から、4つの枝部533が、第2圧電層43のX方向の一端(図9の上端)から他端(図9の下端)に向かって、X方向に延びている。幹部532から、3つの枝部533が、第2圧電層43のX方向の他端(図9の下端)から一端(図9の上端)に向かって、X方向に延びている。
【0062】
各幹部531,532から分岐した枝部533が、Y方向に並んでいる。ここで、幹部531から分岐した複数の枝部533のうち、最もY方向の一方側(図9の左側)に位置する枝部533Xは、幹部532に接続している。換言すると、幹部531から分岐した4つの枝部533のうち、最もY方向の一方側(図9の左側)に位置する枝部533Xと、幹部532から分岐した3つの枝部533のうち、最もY方向の他方側(図9の右側)に位置する枝部533Xとは、同じである。当該枝部533Xは、X方向の一端が幹部531に接続し、X方向の他端が幹部532に接続している。
【0063】
接続部534は、第2圧電層43のY方向の他端部(図9の右端部)において、X方向に延びている。接続部534は、幹部531におけるY方向の他端(図9の右端)に接続している。接続部535は、第2圧電層43のY方向の一端部(図9の左端部)において、X方向に延びている。接続部535は、幹部532におけるY方向の一端(図9の左端)に接続している。
【0064】
図10(a)、(b)に示すように、接続部534,535は、それぞれ、第1圧電層42に形成された貫通孔42yを介して、接続電極56A,56Bの部分562と導通している。接続電極56A,56Bの部分562は、上述のように、第2圧電層43に形成された貫通孔43yを介して、第1表面電極54a、54b、さらにCOF(図示略)と導通している。したがって、接続部534,535は、接続電極56A,56Bの部分562を介して第1表面電極54a,54b、さらにCOFと導通している。
【0065】
振動板41の上面(振動板41と第1圧電層42との間の面)には、低電位電極53に加え、接続電極57A,57B及び複数の非導通電極66が配置されている。
【0066】
接続電極57A,57Bは、それぞれ、L字状であり、Y方向に延びる部分571と、X方向に延びる部分572とを有する。接続電極57Aは、振動板41のX方向の一方側(図9の上側)かつY方向の一方側(図9の左側)の角部に配置されている。接続電極57Bは、振動板41のX方向の他方側(図9の下側)かつY方向の他方側(図9の右側)の角部に配置されている。
【0067】
図10(a)、(b)に示すように、接続電極57A,57Bの部分572は、それぞれ、第1圧電層42に形成された貫通孔42xを介して、高電位電極52の接続部524,525と導通している。高電位電極52の接続部524,525は、上述のように、第2圧電層43に形成された貫通孔43xを介して、第2表面電極55a,55bと導通している。したがって、接続電極57A,57Bは、高電位電極52の接続部524,525を介して第2表面電極55a,55bと導通している。
【0068】
接続電極57Aの部分571は、図9の左から1つ目及び2つ目の枝部533とX方向に重なり、また、複数の駆動電極列51Rのうち図7の左側の5つの列とX方向に重なっている。接続電極57Bの部分561は、図9の右から1つ目~3つ目の枝部523とX方向に重なり、また、複数の駆動電極列51Rのうち図6の右側の7つの列とX方向に重なっている。
【0069】
接続電極57Aの部分571は、高電位電極52の幹部521(図8参照)とZ方向に重なっている。接続電極57Bの部分571は、高電位電極52の幹部522(図8参照)とZ方向に重なっている。
【0070】
複数の非導通電極66は、接続部534と接続電極57Bの部分572との間、及び、接続部535と接続電極57Aの部分572との間に配置され、X方向に並んでいる。複数の非導通電極64は、複数の非導通電極64に対して個別に設けられており、対応する非導通電極64とZ方向に重なる。非導通電極66は、非導通電極64とサイズ及び形状が同じ電極である。
【0071】
非導通電極66は、個別電極51、高電位電極52及び低電位電極53のいずれとも導通しておらず、電位が付与されない。
【0072】
また、振動板41と第1圧電層42との間の面、第1圧電層42と第2圧電層43との間の面、及び、第2圧電層43の上面に配置された上述の各電極の厚みは、例えば0.5~1.5μm程度である。
【0073】
<アクチュエータ部>
圧電アクチュエータ22では、図5に示すように、第2圧電層43のうち、Z方向において個別電極51と高電位電極52の個別部52aとに挟まれた部分が、主に上向きに分極された第1活性部91となっている。また、第1圧電層42及び第2圧電層43のうち、Z方向において個別電極51と低電位電極53の個別部53aとに挟まれた部分が、主に下向きに分極された第2活性部92となっている。圧電アクチュエータ22は、圧力室10毎に、1つの第1活性部91と、X方向に第1活性部91を挟む2つの第2活性部92とから構成される、アクチュエータ部90を有する。
【0074】
ここで、あるノズル15からインクを吐出させる際の、当該ノズル15に対応するアクチュエータ部90の動作について説明する。
【0075】
ヘッド3においてノズル15からのインクの吐出が行われる前には、図11(a)に示すように、各個別電極51に低電位(GND電位)が付与されている。このとき、個別電極51と高電位電極52との電位差によって、第1活性部91にその分極方向に等しい上向きの電界が生じ、第1活性部91が面方向(X方向及びY方向に沿った方向)に収縮している。これにより、振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43の圧力室10とZ方向に重なる部分が、圧力室10に向かって(下向きに)凸となるように撓んでいる。このとき圧力室10は、第1圧電層42及び第2圧電層43がフラットな場合と比べ、容積が小さくなっている。
【0076】
あるノズル15からインクが吐出させる際には、先ず、図11(b)に示すように、当該ノズル15に対応する個別電極51の電位が、低電位(GND電位)から高電位(VDD電位)に切り換えられる。このとき、個別電極51と高電位電極52との電位差がなくなることで、第1活性部91の収縮が解消される。一方、個別電極51と低電位電極53との電位差が生じることで、第2活性部92にその分極方向に等しい下向きの電界が生じ、第2活性部92が面方向に収縮する。ただし、第2活性部92は、クロストーク(ある圧力室10におけるアクチュエータ部90の変形に伴う圧力変動が、当該圧力室10にX方向に隣接する別の圧力室10に伝わる現象)を抑制するためのものであり、アクチュエータ部90の変形にほとんど寄与しない。つまり、このとき第1圧電層42及び第2圧電層43は、圧力室10とZ方向に重なる部分が圧力室10から離れる方向に(上向きに)凸となるように撓まず、フラットな状態となる。これにより、圧力室10の容積は、図11(a)の状態に比べて大きくなる。
【0077】
その後、図11(a)に示すように、当該ノズル15に対応する個別電極51の電位が高電位(VDD電位)から低電位(GND電位)に切り換えられる。すると、上述したのと同様に、第1圧電層42及び第2圧電層43の圧力室10とZ方向に重なる部分が、圧力室10に向かって(下向きに)凸となるように撓む。このとき、圧力室10の容積が大きく減少することで、圧力室10内のインクに大きな圧力が付与され、ノズル15からインクが吐出される。
【0078】
<圧電アクチュエータ22の検査>
次に、圧電アクチュエータ22の検査方法について説明する。
【0079】
圧電アクチュエータ22は、例えば、スクリーン印刷によって表面に電極を形成した、振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43となる圧電材料のシートを積層させて形成した積層体を焼成することによって製造することができる。
【0080】
上記積層体の焼成時の加熱の際に、振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43を構成する圧電材料と、電極を構成する金属材料との線膨張係数の差により、圧電アクチュエータ22に反りが発生することがある。
【0081】
このとき、圧電アクチュエータ22の中央部は、その周囲の全周に圧電アクチュエータ22の他の部分が存在するため、当該他の部分によって反りが抑えられる。これに対して、圧電アクチュエータ22の端部は、これよりも外側に圧電アクチュエータ22の他の部分が存在しないため、当該他の部分によって反りが抑えられにくい。また、圧電アクチュエータの焼成時には、圧電アクチュエータ22の中央部と端部とに雰囲気(温度等)に違いが生じる。これらのことから、圧電アクチュエータ22の端部において、圧電アクチュエータ22の中央部よりも反りが発生しやすい。また、本実施形態では、振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43は、Y方向の長さLyがX方向の長さLxよりも短い。そのため、圧電アクチュエータ22のY方向の端部には、特に反りが生じやすい。
【0082】
Y方向の端部の反りが大きい圧電アクチュエータ22を用いてヘッド3を製造してしまうと、圧電アクチュエータ22を流路ユニット21に接合するときや、圧電アクチュエータ22にCOFを接合する際に圧電アクチュエータ22のY方向の端部に加えられる力によって振動板41、第1圧電層42及び第2圧電層43にクラックが発生してしまう虞がある。また、製造されたヘッド3において、Y方向の中央部と端部とで、ノズル15からのインクの吐出特性が異なってしまう虞がある。
【0083】
そこで、本実施形態では、圧電アクチュエータ22の製造後、以下に説明するようにして圧電アクチュエータ22の検査を行うことで、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りの程度を把握し、その結果に基づいて、圧電アクチュエータ22が正常であるか異常であるかを判定する。
【0084】
圧電アクチュエータ22の検査を行うときには、図12に示すように、まず、製造した圧電アクチュエータ22を、吸着ステージ101(図14(a)~(d)参照、本発明の「基材」)に吸着させる(S101)。
【0085】
吸着ステージ101の、圧電アクチュエータ22が載置される載置面には、負圧ポンプ(図示略)に接続された多数の吸引孔が形成されている。吸着ステージ101に載置された圧電アクチュエータ22は、これら多数の吸引孔によって吸引されることで、吸着ステージ101に吸着される。なお、吸引孔による吸引力はそれほど大きなものではなく、圧電アクチュエータ22のY方向の端部に反りがある場合、吸引孔によって圧電アクチュエータ22が吸引されても、図14(a)~(d)に一点鎖線で示すように、圧電アクチュエータ22の反りが矯正されてフラットな状態とはなることはない。
【0086】
続いて、検査用電極62aと高電位電極52との間の静電容量として第1静電容量C1aを測定する(S102)。より詳細に説明すると、S102では、図13(a)、図14(a)に示すように、静電容量測定装置102に接続された2つのプローブ103を、検査用電極62aのうち、Y方向の最も一方側(図7(a)の左側)の部分である、電極部分62a1のY方向における一方側の端部と、第2表面電極55aとに当てる。さらに、電極部分62a1のY方向における一方側の端部に当てたプローブ103を、吸着ステージ101に向けて押し付ける。この状態では、図14(a)に実線で示すように、圧電アクチュエータ22のうち、Y方向において、プローブ103が押し付けられた電極部分62a1のY方向における一方側の端部が配置された部分、及び、これよりも内側の部分において、反りが矯正されてフラットな状態に近づく。そして、この状態で、静電容量測定装置102により第1静電容量C1aを測定する。
【0087】
続いて、検査用電極62aと高電位電極52との間の静電容量として第2静電容量C2aを測定する(S103)。より詳細に説明すると、S103では、図13(b)、図14(b)に示すように、2つのプローブ103を、検査用電極62aのうち、Y方向の最も他方側(図7(a)の右側)の部分である、電極部分62a2のY方向における他方側の端部と、第2表面電極55aとに当てる。さらに、電極部分62a2のY方向における他方側の端部に当てたプローブ103を、吸着ステージ101に向けて押し付ける。この状態では、図14(b)に実線で示すように、圧電アクチュエータ22のうち、Y方向において、プローブ103が押し付けられた電極部分62a2のY方向における他方側の端部が配置された部分、及び、これよりも内側の部分において、反りが矯正されてフラットな状態に近づく。ここで、Y方向において、電極部分62a2の他方側の端は、電極部分62a1の一方側の端よりも圧電アクチュエータ22の内側に位置するため、S103における圧電アクチュエータ22の反りの矯正の程度は、S102における圧電アクチュエータ22の反りの矯正の程度よりも小さい。そして、この状態で、静電容量測定装置102により第2静電容量C2aを測定する。
【0088】
続いて、測定した第1静電容量C1aと第2静電容量C2aとの差の絶対値|C1a-C2a|が所定値D未満であるか否かを判定する(S104)。絶対値|C1a-C2a|が所定値D以上である場合には(S104:NO)、圧電アクチュエータ22が異常であると判定する(S105)。
【0089】
絶対値|C1a-C2a|が所定値D未満である場合には(S104:YES)、続いて、検査用電極62bと高電位電極52との間の静電容量として第1静電容量C1bを測定する(S106)。
【0090】
より詳細に説明すると、S106では、図13(c)、図14(c)に示すように、2つのプローブ103を、検査用電極62bのうち、Y方向の最も一方側(図7(b)の左側)の部分である、電極部分62b1のY方向における一方側の端部と、第2表面電極55aとに当てる。さらに、電極部分62b1のY方向における一方側の端部に当てたプローブ103を、吸着ステージ101に向けて押し付ける。この状態では、図14(c)に実線で示すように、圧電アクチュエータ22のうち、Y方向において、プローブ103が押し付けられた電極部分62b1のY方向の一方側の端部が配置された部分、及び、これよりも内側の部分において、反りが矯正されてフラットな状態に近づく。そして、この状態で、静電容量測定装置102により第1静電容量C1bを測定する。
【0091】
続いて、検査用電極62bと高電位電極52との間の静電容量として第2静電容量C2bを測定する(S107)。より詳細に説明すると、S107では、図13(d)、図14(d)に示すように、2つのプローブ103を、検査用電極62bのうち、Y方向の最も他方側(図7(b)の右側)の部分である、電極部分62b2のY方向の他方側の端部と、第2表面電極55aとに当てる。さらに、電極部分62b2のY方向における他方側の端部に当てたプローブ103を、吸着ステージ101に向けて押し付ける。この状態では、図14(d)に実線で示すように、圧電アクチュエータ22のうち、Y方向において、プローブ103が押し付けられた電極部分62b2のY方向の他方側の端部が配置された部分、及び、これよりも内側の部分において、反りが矯正されてフラットな状態に近づく。ここで、Y方向において、電極部分62a2の他方側の端は、電極部分62a1の一方側の端よりも圧電アクチュエータ22の外側に位置するため、S107における圧電アクチュエータ22の反りの矯正の程度は、S106における圧電アクチュエータ22の反りの矯正の程度よりも大きい。そして、この状態で、静電容量測定装置102により第2静電容量C2bを測定する。
【0092】
続いて、測定した第1静電容量C1bと第2静電容量C2bとの差の絶対値|C1b-C2b|が所定値D未満であるか否かを判定する(S108)。絶対値|C1b-C2b|が所定値D以上である場合には(S108:NO)、圧電アクチュエータ22が異常であると判定する(S105)。絶対値|C1b-C2b|が所定値D未満である場合には(S108:YES)、圧電アクチュエータ22が正常であると判定する(S109)。
【0093】
<効果>
上述の実施形態では、第2圧電層43の上面のY方向における端部に、高電位電極52と導通する第2表面電極55a,55b、及び、高電位電極52の接続部524,525とZ方向に重なる検査用電極62a,62bとが配置されている。したがって、静電容量測定装置102に接続された2つのプローブ103を、検査用電極62aと第2表面電極55a、及び、検査用電極62bと第2表面電極55bにそれぞれ当てて、検査用電極62aと高電圧電極52との間の静電容量、及び、検査用電極62bと高電圧電極52との間の静電容量を測定し、測定した静電容量に基づいて、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りの程度を把握することができる。
【0094】
より詳細には、2つのプローブ103を、検査用電極62aのY方向における一方側の端部と、第2表面電極55aとに当てるとともに、検査用電極62aの上記部分に当てたプローブ103を吸着ステージ101に向けて押し付けた状態で第1静電容量C1aを測定する。また、2つのプローブ103を、検査用電極62aのY方向における他方側の端部と、第2表面電極55aとに当てるとともに、検査用電極62aの上記部分に当てたプローブ103を吸着ステージ101に向けて押し付けた状態で第2静電容量C2aを測定する。
【0095】
同様に、2つのプローブ103を、検査用電極62bのY方向における一方側の端部と、第2表面電極55bとに当てるとともに、検査用電極62bの上記部分に当てたプローブ103を吸着ステージ101に向けて押し付けた状態で第1静電容量C1bを測定する。また、2つのプローブ103を、検査用電極62bのY方向における他方側の端部と、第2表面電極55bとに当てるとともに、検査用電極62bの上記部分に当てたプローブ103を吸着ステージ101に向けて押し付けた状態で第2静電容量C2bを測定する。
【0096】
ここで、圧電アクチュエータ22のY方向の端部に反りが生じている場合、圧電アクチュエータ22のY方向におけるより外側の部分が吸着ステージ101に向けられて押し付けられたときほど、反りが大きく矯正されてフラットな状態に近づく。
【0097】
したがって、圧電アクチュエータ22のY方向の端部の反りが大きいときほど、第1静電容量C1aと第2静電容量C2aとの差の絶対値|C1a-C2a|、及び、第1静電容量C1bと第2静電容量C2bとの差の絶対値|C1b-C2b|が大きくなる。そこで、本実施形態では、絶対値|C1a-C2a|及び絶対値|C1b-C2b|が所定値D未満であるか否かに基づいて、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りの程度を把握して、圧電アクチュエータ22が正常であるか否かを判定することができる。
【0098】
また、本実施形態では、圧電アクチュエータ22のY方向の長さLyがX方向の長さLxよりも短いため、圧電アクチュエータ22には、製造時の加熱によって、Y方向の端部に反りが生じやすい。
【0099】
これに対して、本実施形態では、第2圧電層43の上面のY方向の端部に、検査用電極62a,62b及び第2表面電極55a,55bが配置されている。したがって、反りの生じやすい圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りの程度を把握することができる。
【0100】
また、本実施形態と異なり、検査用電極を、低電位電極53とZ方向に重なるように配置し、上記2つのプローブ103を、検査用電極と、低電位電極53と導通する第1表面電極54a,54bとに当てて、検査用電極と低電位電極53との間の静電容量を測定することによっても、上述したのと同様にして、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りの程度を把握することが可能である。
【0101】
しかしながら、この場合の検査用電極と低電位電極53との距離は、本実施形態の場合の検査用電極62a,62bと高電位電極52との距離よりも大きくなるため、測定される静電容量が小さくなり、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りに対する、測定される静電容量の変化も小さくなる。
【0102】
そこで、本実施形態では、上記の通り、検査用電極62a,62bを、高電位電極52とZ方向に重なるように配置し、検査用電極62a,62bと、高電位電極52との間の静電容量に基づいて、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りの程度を把握するようにしている。これにより、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りの程度に対する、測定される静電容量の変化が大きく、圧電アクチュエータのY方向の端部における反りの程度を把握しやすい。
【0103】
また、本実施形態では、第1表面電極54aと第2表面電極55aとがX方向に間隔をあけて配置されているのに対して、検査用電極62aが、第1表面電極54aと第2表面電極55aとの間に配置されている。また、第1表面電極54bと第2表面電極55bとがX方向に間隔をあけて配置されているのに対して、検査用電極62bが、第1表面電極54bと第2表面電極55bとの間に配置されている。これにより、検査用電極62a,62bがこれらの位置に配置されていない場合よりも、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における剛性を高くして、圧電アクチュエータ22のY方向における端部に反りを発生しにくくすることができる。
【0104】
さらに、本実施形態では、第1表面電極54aと第2表面電極55aとの間に、検査用電極62aと、複数の非導通電極63aとが、X方向に並んで配置されている。また、第1表面電極54bと第2表面電極55bとの間に、検査用電極62bと、複数の非導通電極63bとが、X方向に並んで配置されている。これにより、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における剛性をさらに高くして、圧電アクチュエータ22のY方向における端部に反りをより発生しにくくすることができる。
【0105】
さらに、本実施形態では、接続部524が第2表面電極55aとZ方向に重なっているとともに検査用電極62aとZ方向に重なる位置までX方向に延びているのに対して、検査用電極62aが、第2表面電極55aと、第2表面電極55aに最も近い非導通電極63aとの間に配置されている。これにより、X方向に延ばす接続部524のX方向の長さを極力短くすることができる。同様に、本実施形態では、接続部525が第2表面電極55bとZ方向に重なっているとともに検査用電極62bとZ方向に重なる位置までX方向に延びているのに対して、検査用電極62bが、第2表面電極55bと、第2表面電極55bに最も近い非導通電極63bとの間に配置されている。これにより、X方向に延びる接続部525のX方向の長さを極力短くすることができる。
【0106】
圧電アクチュエータ22のY方向における端部に、X方向の長さが長い電極があると、圧電アクチュエータ22のY方向における端部に反りが生じやすいが、このように、接続部524,525のX方向の長さを短くすることができることにより、圧電アクチュエータ22のY方向の端部に反りを発生しにくくすることができる。
【0107】
また、検査用電極62aの、第1静電容量C1aを測定するときにプローブ103を当てる部分と、第2静電容量C2aを測定するときにプローブ103を当てる部分とが、Y方向に離れているほど、検査用電極62aに当てたプローブ103を吸着ステージ101に向けて押し付けたときの、圧電アクチュエータ22の反りの矯正の程度の差が大きくなる。その結果、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りに対して、第1静電容量C1aと第2静電容量C2aとの差の絶対値|C1a-C2a|が大きくなる。
【0108】
同様に、検査用電極62bの、第1静電容量C1bを測定するときにプローブ103を当てる部分と、第2静電容量C2bを測定するときにプローブ103を当てる部分とが、Y方向に離れているほど、検査用電極62bに当てたプローブ103を吸着ステージ101に向けて押し付けたときの、圧電アクチュエータ22の反りの矯正の程度の差が大きくなる。その結果、圧電アクチュエータ22のY方向の端部における反りに対して、第1静電容量C1bと第2静電容量C2bとの差の絶対値|C1b-C2b|が大きくなる。
【0109】
そして、本実施形態では、検査用電極62aのY方向における一方側の端と他方側の端との間の長さW1a(電極部分62a1の一方側の端と、電極部分62a2の他方側の端との間の長さ)が、非導通電極63aのY方向の長さW1bよりも長い。また、検査用電極62bのY方向における一方側の端と他方側の端との間の長さW2a(電極部分62b1の一方側の端と、電極部分62b2の他方側の端との間の長さ)が、非導通電極63bのY方向の長さW2bよりも長い。これにより、圧電アクチュエータ22の反りに対する、上記静電容量の差の絶対値|C1a-C2a|、|C1b-C2b|が大きくなり、圧電アクチュエータの反りの程度を把握しやすい。
【0110】
また、本実施形態では、検査用電極62aを、Z方向に投影した形状がY方向を長手方向とする長方形の2つの電極部分62a1,62a2を有するものとし、検査用電極62bを、Z方向に投影した形状がY方向を長手方向とする長方形の2つの電極部分62b1,62b2を有するものとすることにより、検査用電極62a,62bの面積を確保することができる。
【0111】
また、検査用電極62a,62bと第2圧電層43との線膨張係数の差によって生じる、圧電アクチュエータ22に反りを生じさせようとする力は、Y方向における検査用電極62a,62bの中央部において最も大きくなる。これに対して、本実施形態では、検査用電極62aにおいて、電極部分62a1と電極部分62a2とがY方向にずれて配置され、検査用電極62bにおいて、電極部分62b1と電極部分62b2とがY方向にずれて配置されている。したがって、電極部分62a1と第2圧電層43との線膨張係数の差によって生じる、圧電アクチュエータ22に反りを生じさせようとする力が最も大きくなる部分と、電極部分62a2と第2圧電層43との線膨張係数の差によって生じる、圧電アクチュエータ22に反りを生じさせようとする力が最も大きくなる部分とをY方向にずらすことができる。また、電極部分62b1と第2圧電層43との線膨張係数の差によって生じる、圧電アクチュエータ22に反りを生じさせようとする力が最も大きくなる部分と、電極部分62b2と第2圧電層43との線膨張係数の差によって生じる、圧電アクチュエータ22に反りを生じさせようとする力が最も大きくなる部分とをY方向にずらすことができる。これらのことから、圧電アクチュエータ22に反りを生じさせようとする力が、圧電アクチュエータ22の、Y方向の位置が同じ部分集中せず、圧電アクチュエータ22に生じる反りを小さくすることができる。
【0112】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0113】
検査用電極の形状は、上述の実施形態のものには限られない。
【0114】
例えば、電極部分62a1と電極部分62a2のY方向の位置が上述の実施形態とは逆であり、電極部分62a2が、電極部分62a1に対して、Y方向の一方側(図7(a)の左側)にずれていてもよい。この場合には、S102において、プローブ103を第1電極部分62a1のY方向における他方側の端部に当て、S103において、プローブ103を第2電極部分62a2のY方向における一方側の端部に当てる。
【0115】
同様に、電極部分62b1と電極部分62b2のY方向の位置が上述の実施形態とは逆であり、電極部分62b2が、電極部分62b1に対して、Y方向の一方側(図7(a)の左側)にずれていてもよい。この場合には、S102において、プローブ103を第1電極部分62b1のY方向における他方側の端部に当て、S103において、プローブ103を第2電極部分62b2のY方向における一方側の端部に当てる。
【0116】
あるいは、検査用電極62aの電極部分62a1と電極部分62a2、及び、検査用電極62bの電極部分62b1と電極部分62b2のうち、少なくとも片方については、X方向にずれていなくてもよい。なお、電極部分62a1と電極部分62a2とがX方向にずれていない場合には、上述のS102において、プローブ103を、電極部分62a1,62a2のいずれかのY方向における一方側の端部に当てる。また、上述のS103において、プローブ103を、電極部分62a1,62a2のいずれかのY方向における他方側の端部に当てる。また、電極部分62b1と電極部分62b2とがX方向にずれていない場合には、S106において、プローブ103を、電極部分62b1,62b2のいずれかのY方向における一方側の端部に当てる。また、上述のS107において、プローブ103を、電極部分62b1,62b2のいずれかのY方向における他方側の端部に当てる。
【0117】
変形例1では、図15(a)、(b)に示すように、検査用電極111a,111bのZ方向に投影した形状が、それぞれ、X方向と平行な1組の対向辺112を有する平行四辺形となっている。
【0118】
検査用電極111aは、Y方向の一方側且つX方向の他方側の角部(図15(a)の左下の角部)が、Y方向において最も一方側(図15(a)の左側)に位置している。そして、Y方向において、検査用電極111aのこの角部が、非導通電極63aの一方側の端(図15(a)の左端)よりも、一方側(図15(a)の左側)に位置する。
【0119】
また、検査用電極111aは、Y方向の他方側且つX方向の一方側の角部(図15(a)の右上の角部)が、Y方向において最も他方側(図15(a)の右側)に位置している。そして、Y方向において、検査用電極111bのこの角部が、非導通電極63aの他方側の端(図15(a)の右端)よりも他方側(図15(a)の右側)側に位置している。
【0120】
また、検査用電極111bは、Y方向の一方側且つX方向の他方側の角部(図15(a)の左下の角部)が、Y方向において最も一方側(図15(a)の左側)に位置している。そして、Y方向において、検査用電極111bのこの角部が、非導通電極63bの一方側の端(図15(b)の左端)よりも一方側(図15(b)の左側)に位置する。
【0121】
また、検査用電極111bは、Y方向の他方側且つX方向の一方側の角部(図15(a)の右上の角部)が、Y方向において最も他方側(図15(a)の右側)に位置している。そして、Y方向において、検査用電極111bのこの角部が、非導通電極63bの他方側の端(図15(b)の右端)よりも他方側(図15(b)の右側)に位置している。
【0122】
そして、変形例1では、検査用電極111a,111bがこのような形状となっていることにより、検査用電極111a,111bのY方向における一方側の端と他方側の端との間の長さW3a,W4aは、非導通電極63a,63bのY方向の長さW3b,W4bよりも長い。
【0123】
そして、変形例1では、上述のS102,S106において、それぞれ、プローブ103を、検査用電極111a,111bの図15(a)、(b)における左下の角部に当てる。また、上述のS103,S107において、それぞれ、プローブ103を、検査用電極111a,111bの図15(a)、(b)にける右上の角部に当てる。
【0124】
変形例1では、検査用電極111a,111bのZ方向に投影した形状を、Y方向と平行な1組の対向辺112を有する平行四辺形とすることによって、検査用電極111a,111bのY方向における一方側の端と他方側の端との間の長さを長くすることができる。
【0125】
変形例2では、図16(a)に示すように、検査用電極121aが、第1電極部分122aと第2電極部分122bと第3電極部分122cとを有している。第1電極部分122aは、Y方向に延びている。また、Y方向において、第1電極部分122aの一方側の端(図16(a)における左端)が、非導通電極63aの一方側の端(図16(a)における左端)よりも一方側(図16(a)における左側)に位置している。
【0126】
第2電極部分122bは、Y方向に延びている。また、Y方向において、第2電極部分122bの他方側の端(図16(a)における右端)が、非導通電極63bの他方側の端(図16(a)における右端)よりも他方側(図16(a)における右側)に位置している。第3電極部分122cは、第1電極部分122aと第2電極部分122bとの間に位置し、第1電極部分122aのY方向における他方側の端(図16(a)における右端)と、第2電極部分122bのY方向における一方側の端(図16(a)における左端)とを連結する。
【0127】
また、変形例2では、図16(b)に示すように、検査用電極121bが、第1電極部分123aと第2電極部分123bと第3電極部分123cとを有している。第1電極部分123a、第2電極部分123b及び第3電極部分123cは、それぞれ、第1電極部分122a、第2電極部分122b及び第3電極部分122cとサイズ及び形状が同じである。
【0128】
そして、変形例2では、検査用電極121a,121bがこのような構成となっていることにより、検査用電極121a,121bのY方向における一方側の端と他方側の端との間の長さW5a,W6aは、非導通電極63a,63bのY方向の長さW5b,W6bよりも長い。
【0129】
そして、変形例2では、上述のS102において、プローブ103を、検査用電極121aの第1電極部分122aのY方向における一方側(図16(a)の左側)の端部に当てる。また、上述のS103において、プローブ103を、検査用電極121aの第2電極部分122bのY方向における他方側(図16(a)の右側)の端部に当てる。また、上述のS106において、プローブ103を、検査用電極121bの第1電極部分123aのY方向における一方側(図16(b)の左側)の端部に当てる。また、上述のS107において、プローブ103を、検査用電極121bの第2電極部分123bのY方向における他方側(図16(b)の右側)の端部に当てる。
【0130】
そして、変形例2では、検査用電極121a,121bを、それぞれ、上記のような第1~第3電極部分122a~122c、第1~第3電極部分123a~123cを有するものとすることによって、検査用電極121a,121bのY方向における一方側の端と他方側の端との間の長さを長くすることができる。
【0131】
また、検査用電極を、Z方向に投影した形状が以上に説明したのとは別の形状となるものとすることによって、Y方向における一方側の端と他方側の端との間のY方向における長さが、非導通電極63a,63bのY方向の長さよりも長くなるようにしてもよい。
【0132】
また、検査用電極は、Y方向における一方側の端と他方側の端との間のY方向における長さが、非導通電極63a,63bのY方向の長さよりも長いものであることにも限られない。検査用電極の、Y方向における一方側の端と他方側の端との間のY方向における長さは、非導通電極63a,63bのY方向の長さ以下であってもよい。
【0133】
また、上述の実施形態では、第2表面電極55aとZ方向に重なる接続部524が、検査用電極62aとZ方向に重なる位置まで延び、検査用電極62aが、第2表面電極55aと、第2表面電極55aに最も近い非導通電極63aとの間に配置されている。また、第2表面電極55bとZ方向に重なる接続部525が、検査用電極62bとZ方向に重なる位置まで延び、検査用電極62bが、第2表面電極55bと、第2表面電極55bに最も近い非導通電極63bとの間に配置されている。しかしながら、これには限られない。
【0134】
例えば、第2表面電極55aとZ方向に重なる接続部524が、検査用電極62aとZ方向に重なる位置まで延びている構成において、検査用電極62aが、2つの非導通電極63aの間、あるいは、第1表面電極54aと、前記第1表面電極54aに最も近い非導通電極63aとの間に配置されていてもよい。
【0135】
同様に、第2表面電極55bとZ方向に重なる接続部525が、検査用電極62bとZ方向に重なる位置まで延びている構成において、検査用電極62bが、2つの非導通電極63bの間、あるいは、第1表面電極54bと、前記第1表面電極54bに最も近い非導通電極63bとの間に配置されていてもよい。
【0136】
また、上述の実施形態では、第1表面電極54aと第2表面電極55aとの間に、検査用電極62aと、複数の非導通電極63aとが、X方向に並んでいる。また、第1表面電極54bと第2表面電極55bとの間に、検査用電極62bと、複数の非導通電極63bとが、X方向に並んでいる。しかしながら、これには限られない。
【0137】
例えば、第1表面電極54aと第2表面電極55aとの間、及び、第1表面電極54bと第2表面電極55bとの間のうち、少なくともいずれか片方に配置される非導通電極は1つであってもよい。また、例えば、第1表面電極54aと第2表面電極55aとの間、及び、第1表面電極54bと第2表面電極55bとの間のうち、少なくともいずれか片方において、非導通電極が配置されていなくてもよい。
【0138】
また、上述の実施形態では、第1表面電極54aと第2表面電極55aとの間に検査用電極62aが配置されている。また、第1表面電極54bと第2表面電極55bとの間に検査用電極62bが配置されている。しかしながら、これには限られない。
【0139】
例えば、検査用電極62aは、X方向において、第1表面電極54aよりも外側、あるいは、第2表面電極55aよりも外側に配置されていてもよい。同様に、例えば、検査用電極62bは、X方向において、第1表面電極54bよりも外側、あるいは、第2表面電極55bよりも外側に配置されていてもよい。
【0140】
また、上述の実施形態では、検査用電極62a,62bが、第1圧電層42と第2圧電層43との間の面に配置された高電圧電極52とZ方向に重なっていたが、これには限られない。検査用電極が、振動板41と第1圧電層42との間の面に配置された低電圧電極51とZ方向に重なっていてもよい。
【0141】
また、上述の実施形態では、圧電アクチュエータのY方向の長さLyがX方向の長さLxよりも短くなっていたが、これには限られない。長さLyは、長さLx以上であってもよい。
【0142】
また、圧電アクチュエータの検査方法は、上述の実施形態で説明したものには限られない。変形例3では、図17のフローに沿って圧電アクチュエータの検査を行う。なお、以下では、圧電アクチュエータ22の検査を行う場合を例に挙げて説明するが、以上に説明した他の圧電アクチュエータについても、以下に説明するとの同様の方法で検査を行うことができる。
【0143】
図17に示すように、変形例3でも、上述の実施形態と同様、圧電アクチュエータ22を吸着ステージ101に吸着させる(S201)。続いて、2つのプローブ103を検査用電極62aと第2表面電極55aとに当てて、検査用電極62aと高電圧電極52との間の静電容量C3aを測定する(S202)。
【0144】
続いて、測定した静電容量C3aと、静電容量の基準値C0との差の絶対値|C3a-C0|が所定値E未満であるか否かを判定する(S203)。絶対値|C3a-C0|が所定値E以上である場合には(S203:NO)、圧電アクチュエータ22が異常であると判定する(S204)。
【0145】
絶対値|C3a-C0|が所定値E未満である場合には(S203:YES)、続いて、2つのプローブ103を検査用電極62bと第2表面電極55bとに当てて、検査用電極62bと高電圧電極52との間の静電容量C3bを測定する(S205)。
【0146】
続いて、測定した静電容量C3bと、基準値C0との差の絶対値|C3b-C0|が所定値E未満であるか否かを判定する(S206)。絶対値|C3b-C0|が所定値E以上である場合には(S206:NO)、圧電アクチュエータ22が異常であると判定する(S204)。絶対値|C3b-C0|が所定値E未満である場合には(S206:YES)、圧電アクチュエータ22が正常であると判定する(S207)。
【0147】
上記のように、変形例3では、検査用電極62a,62bと高電位電極52との間の静電容量C3aと基準値C0との差の絶対値に基づいて、圧電アクチュエータ22のY方向における端部の反りの程度を把握して、圧電アクチュエータ22が正常であるか異常であるかを判定することができる。
【0148】
また、以上では、ノズルからインク吐出するヘッドを構成する圧電アクチュエータ及びその検査に本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。ヘッド以外の装置を構成する圧電アクチュエータ及びその検査に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0149】
22 圧電アクチュエータ
41 振動板
42 第1圧電層
43 第2圧電層
51 個別電極
52 高電位電極
53 低電位電極
54a,54b 第1表面電極
55a,55b 第2表面電極
62a,62b 検査用電極
62a1,62a2,62b1,62b2 電極部分
63a,63b 非導通電極
111a,111b 検査用電極
121a,121b 検査用電極
122a、123a 第1電極部分
122b、123b 第2電極部分
122c、123c 第3電極部分
524,525 接続部
図1
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