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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054651
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】接続体の製造方法、及び熱圧着ツール
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220331BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20220331BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K1/14 J
H01R43/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161797
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】稲瀬 圭亮
【テーマコード(参考)】
5E344
5F044
【Fターム(参考)】
5E344AA02
5E344AA22
5E344BB02
5E344CD04
5E344DD10
5E344EE30
5F044LL09
5F044PP15
5F044PP16
5F044PP19
(57)【要約】
【課題】熱圧着時の近傍への熱影響を抑制することができる接続体の製造方法、及び熱圧着ツールを提供する。
【解決手段】第1の電子部品と第2の電子部品とを熱硬化性接着剤を介して熱圧着ツールにて加熱押圧し、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続させ、熱圧着ツール10が、下端の幅が0.6mm以下である先端部11と、先端部11の上端に連続し、先端部11よりも幅が広い胴部12とを備え、先端部11の幅方向の断面積に対する胴部12の幅方向の断面積の比が、1.3より大きく10より小さい。これにより、熱圧着時の近傍への熱影響を抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子部品と第2の電子部品とを熱硬化性接着剤を介して熱圧着ツールにて加熱押圧し、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続させ、
前記熱圧着ツールが、下端の幅が0.6mm以下である先端部と、前記先端部の上端に連続し、前記先端部よりも幅が広い胴部とを備え、前記先端部の幅方向の断面積に対する前記胴部の幅方向の断面積の比が、1.3より大きく10より小さい接続体の製造方法。
【請求項2】
前記先端部の下端から上端までの長さが、前記先端部及び前記胴部の合計の長さの15%より大きく60%より小さい請求項1記載の接続体の製造方法。
【請求項3】
前記先端部の下端から上端までの長さが、前記先端部及び前記胴部の合計の長さの30%より大きく60%より小さい請求項1記載の接続体の製造方法。
【請求項4】
前記先端部の幅方向の断面積に対する前記胴部の幅方向の断面積の比が、1.5より大きく4より小さい請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接続体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の電子部品が、前記第2の電子部品が接続される電極の近傍に、第3の電子部品が搭載された基板である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接続体の製造方法。
【請求項6】
下端の幅が0.6mm以下である先端部と、
前記先端部の上端に連続し、前記先端部よりも幅が広い胴部とを備え、
前記先端部の幅方向の断面積に対する前記胴部の幅方向の断面積の比が、1.3より大きく10より小さい熱圧着ツール。
【請求項7】
前記先端部の下端から上端までの長さが、前記先端部及び前記胴部の合計の長さの15%より大きく60%より小さい請求項6記載の熱圧着ツール。
【請求項8】
前記先端部の下端から上端までの長さが、前記先端部及び前記胴部の合計の長さの30%より大きく60%より小さい請求項6記載の熱圧着ツール。
【請求項9】
前記先端部の幅方向の断面積に対する前記胴部の幅方向の断面積の比が、1.5より大きく4より小さい請求項6乃至8のいずれか1項に記載の熱圧着ツール。
【請求項10】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の熱圧着ツールを備える接続装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、第1の電子部品と第2の電子部品とを熱硬化性接着剤を介して熱圧着ツールにて加熱押圧し、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続させる接続体の製造方法、及び熱圧着ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表されるように表示画面の小型化が進んでおり、また、液晶画面の枠の形状も狭くなる傾向にある。異方性導電膜での接続についても、液晶画面の枠の狭幅化に伴い、異方性導電膜の幅が狭くなる傾向にある。そのため、接続の際の圧着部を捕らえる実装機器の熱圧着ツール(ボンダーヘッドツール、以下「熱圧着ツール」と呼ぶ。)の幅も、異方性導電膜と同様な幅になってきている。
【0003】
図6は、従来の熱圧着ツールの幅方向断面の一例を示す断面図である。従来、熱圧着ツールは、先端部101と加熱部103とを備え、加熱部103から先端部101へ熱が供給される。
【0004】
しかしながら、熱圧着ツールの先端部101の幅が狭い場合、異方性導電膜に十分な熱量を供給するために、熱圧着ツールの設定温度を高くする必要があり、熱圧着ツールの輻射熱による圧着部近傍への熱影響が懸念されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-021718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、圧着部近傍への熱影響を抑制することができる接続体の製造方法、及び熱圧着ツールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術に係る接続体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品とを熱硬化性接着剤を介して熱圧着ツールにて加熱押圧し、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続させ、前記熱圧着ツールが、下端の幅が0.6mm以下である先端部と、前記先端部の上端に連続し、前記先端部よりも幅が広い胴部とを備え、前記先端部の幅方向の断面積に対する前記胴部の幅方向の断面積の比が、1.3より大きく10より小さい。
【0008】
本技術に係る熱圧着ツールは、下端の幅が0.6mm以下である先端部と、前記先端部の上端に連続し、前記先端部よりも幅が広い胴部とを備え、前記先端部の幅方向の断面積に対する前記胴部の幅方向の断面積の比が、1.3より大きく10より小さい。
【0009】
本技術に係る接続装置は、前述した熱圧着ツールを備える。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、熱圧着ツールの設定温度を低くすることができ、圧着部近傍への熱影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施の形態に係る熱圧着ツールによる接続工程の一例を示す断面図である。
図2図2は、熱圧着ツールの一例を示す斜視図である。
図3図3(A)は、熱圧着ツールの一例を示す正面図であり、図3(B)は、側面図であり、3(C)は、平面図であり、図3(D)は、底面図である。
図4図4は、熱圧着ツールの幅方向断面の一例を示す断面図である。
図5図5は、熱圧着ツールの幅方向断面の他の例を示す断面図である。
図6図6は、従来の熱圧着ツールの幅方向断面の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.接続体の製造方法
2.熱圧着ツール
3.実施例
【0013】
<1.接続体の製造方法>
本実施の形態における接続体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品とを熱硬化性接着剤を介して熱圧着ツールにて加熱押圧し、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続させ、熱圧着ツールが、下端の幅が0.6mm以下である先端部と、先端部の上端に連続し、先端部よりも幅が広い胴部とを備え、先端部の幅方向の断面積に対する胴部の幅方向の断面積の比が、1.3より大きく10より小さい。これにより、熱圧着ツールの設定温度を低くすることができ、圧着部近傍への熱影響を抑制することができる。
【0014】
特に、第1の電子部品が、第2の電子部品が接続される電極の近傍に、第3の電子部品が搭載された基板である場合、第3の電子部品の接続部への熱影響を抑制することができ、高温高湿試験などの信頼性試験に投入した場合、第3の電子部品の接続部の導通抵抗が上昇するのを抑制することができる。
【0015】
熱硬化性接着剤は、熱硬化型であればよく、熱硬化型と光硬化型を併用してもよい。また、異方性導電接着剤は、フィルム状の異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又はペースト状の異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic conductive paste)のいずれであってもよい。取り扱いのし易さからは異方性導電フィルムが好ましく、コストの面からは異方性導電ペーストが好ましい。また、異方性導電接着剤の重合型は、カチオン重合型、アニオン重合型、又はラジカル重合型のいずれであってもよく、また、特に支障を来たさなければ、併用してもよい。重合型の併用例としては、カチオン重合型とラジカル重合型の併用などが挙げられる。
【0016】
第1の電子部品、第2の電子部品及び第3の電子部品は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電子部品としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル用途、有機ELディスプレイ(OLED)パネル用途、プラズマディスプレイパネル(PDP)用途などのガラス基板、プラスチック基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。また、第2の電子部品及び第3の電子部品としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板などを挙げることができる。また、第1の電子部品と第2の電子部品との接続、又は第1の電子部品と第3の電子部品との接続は、COG(Chip On Glass)、FOG(Film On Glass)、COP(Film On Plastics)、FOP(Film On Plastics)であることが好ましい。また、本技術は、例えば、半導体装置(ドライバICの他、光学素子や熱電変換素子、光電変換素子など半導体を利用したものは全て含む)、表示装置(モニター、テレビ、ヘッドマウントディスプレイなど)、携帯機器(タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末など)、ゲーム機、オーディオ機器、撮像装置(カメラモジュールなどのイメージセンサを用いるもの)、車両(移動装置)用電装実装、医療機器、センサーデバイス(タッチセンサー、指紋認証、虹彩認証など)などの電気的接続を用いるあらゆる電子機器の製造方法に適用することができる。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る熱圧着ツールによる接続工程の一例を示す断面図である。図1に示すように、接続装置は、先端部11と胴部12と加熱部13とを有する熱圧着ツール10と、接続対象の電子部品を支持するステージ20とを備える。接続装置は、ステージ20上に例えば基板と電子部品とを熱硬化性接着剤を介して載置し、例えばシリンダ機構により熱圧着ツール10を押し下げ、先端部11の押圧面で電子部品を押圧することにより、基板と電子部品とを接続させる。
【0018】
熱圧着ツール10は、後述するように、下端の幅が0.6mm以下である先端部11と、先端部11の上端に連続し、先端部11よりも幅が広い胴部12と、胴部12に連続し、胴部12に熱を供給する加熱部13とを備える。熱圧着ツール10の材料としては、ステンレス(SUS)、鉄、アルミニウム、セラミックなどが挙げられ、強度及び耐熱性の観点からは、ステンレスを用いることが好ましい。また、先端部11と胴部12と加熱部13とは、異なる材料で構成されても構わないが、強度及び熱伝導の観点から、先端部11と胴部12と加熱部13とは、同じ材料で構成され、例えば削り出しにより一体として形成されることが好ましい。また、加熱部13は、ヒータブロックに取り付けられても構わないが、ヒータを内蔵することが好ましい。また、加熱方式は、製造コストの観点から、加熱部13から先端部11へ熱が常時供給される、所謂コンスタント方式を用いることが好ましい。
【0019】
ステージ20は、少なくとも熱圧着ツール10の押圧面に対向している。ステージ20の材料としては、熱圧着ツールと同様、ステンレス、鉄、アルミニウム、セラミックなどが挙げられ、強度及び耐熱性の観点からは、ステンレスを用いることが好ましい。また、ステージ20は、熱圧着ツール10からの熱伝導を抑制するため、熱圧着ツール10の押圧面に対向する領域の周囲の少なくとも一部に空隙部を設けてもよい。
【0020】
次に、図1を参照し、接続装置を用い接続体の製造方法の一例について説明する。ここでは、第1の部品としてガラス基板31、第2の電子部品としてフレキシブルプリント基板32、第3の電子部品としてIC33を例に挙げ、ガラス基板31にIC33をCOG(Chip On Glass)接続した後、ガラス基板31にフレキシブルプリント基板32をFOG(Film On Glass)接続する例について説明する。
【0021】
先ず、ガラス基板31のCOG部に第1の熱硬化性接着フィルム34を仮貼りし、第1の熱硬化性接着フィルム34上にIC33を仮搭載する。次に、熱圧着ツールを用いて、IC33の上面を所定温度、所定圧力で所定時間、熱加圧する。これにより、IC33の端子とガラス基板31の端子とが電気的に接続され、接着剤成分が硬化してIC33とガラス基板31とが固定される。
【0022】
COG接続後、ガラス基板31のFOG部に第2の熱硬化性接着フィルム35を仮貼りし、第2の熱硬化性接着フィルム35上にフレキシブルプリント基板32を仮搭載する。次に、図1に示すように、熱圧着ツール10を用いて、フレキシブルプリント基板32の圧着部を所定温度、所定圧力で所定時間、熱加圧する。これにより、フレキシブルプリント基板32の端子とガラス基板31の端子とが電気的に接続され、接着剤成分が硬化してフレキシブルプリント基板32とガラス基板31とが固定される。
【0023】
また、FOG接続において、熱圧着ツール10とレキシブルプリント基板32との間に、緩衝材を挟んで熱圧着することが好ましい。緩衝材としては、テトラフルオロエチレンシート、シリコンラバーシートなどが挙げられ、緩衝材の好ましい厚みは0.01mm~0.50mmである。緩衝材の厚みの観点からは、厚みを小さくできるテトラフルオロエチレンシートを用いることが好ましい。
【0024】
また、第1の熱硬化性接着フィルム34及び第2の熱硬化性接着フィルム35は、略同一のものを使用してもよいが、COG接続に使用される第1の熱硬化性接着フィルム34のガラス転移温度を高くすることが好ましい。第1の熱硬化性接着フィルム34のガラス転移温度を高くすることにより、FOG接続における熱影響を低減させることができる。例えば、第1の熱硬化性接着フィルム34のガラス転移温度をFOG接続においてCOG部に掛かる温度の10℃以上、好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上とすることにより、FOG接続における熱影響を低減させることができる。
【0025】
前述のFOG接続において、熱圧着ツール10が、後述するように、下端の幅が0.6mm以下である先端部11と、先端部11の上端に連続し、先端部11よりも幅が広い胴部12とを備え、先端部11の幅方向の断面積に対する胴部12の幅方向の断面積の比が、1.3以上10以下であることにより、熱圧着ツールの設定温度を低くすることができ、FOG部近傍のCOG部への熱影響を抑制することができる。なお、前述の接続体の製造方法では、COG接続、FOG接続することとして説明したが、これに限らず、第1の電子部品としてプラスチック基板を用いた、COP接続、FOP接続であってもよい。
【0026】
また、本技術を適用した熱圧着ツール10を用いることにより、COG部とFOG部との距離Dを1.0mm以下とすることも、0.6mm以下とすることも、0.4mm以下とすることもできる。また、距離Dの下限は、熱圧着ツール10の先端部11の幅よりも小さくすることができ、例えば0.2mmである。
【0027】
<2.熱圧着ツール>
図2は、熱圧着ツールの一例を示す斜視図であり、図3(A)は、熱圧着ツールの一例を示す正面図であり、図3(B)は、側面図であり、3(C)は、平面図であり、図3(D)は、底面図である。なお、この熱圧着ツールの正面と背面とは略同一であり、右側面と左側面とは略同一である。また、図4は、熱圧着ツールの幅方向断面の一例を示す断面図である。すなわち、熱圧着ツールの幅方向断面の形状と側面の形状とは略同一である。
【0028】
図2図4に示すように、熱圧着ツール10は、先端部11と胴部12と加熱部13とを有し、幅方向の断面において、先端部11の下端の幅Wtが0.6mm以下であり、先端部11の下端から胴部12の上端に向かって幅が広がっている形状である。また、熱圧着ツール10の長手方向の先端部11、胴部12、及び加熱部13の長さは、特に制限されるものではないが、略同一としてもよい。熱圧着ツール10の長手方向の先端部11の長さは、接続端子の長さに応じて適宜設定することができ、先端部11の長さの下限は10mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上であり、先端部11の長さの上限は60mm以下、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下である。接続端子はファインピッチ化が進んでおり、本技術を適用し、設備(接続装置)を転用可能にすることで、技術知見の流用や同一設備での異方性接続が可能になるため、トータルでのコストメリットがある。また、先端部11の長さを適宜設定することにより、大型サイズの基板に異方性接続する際、熱による影響の場所を選択できる、といった最終製品における設計自由度を高める効果も期待できる。
【0029】
先端部11は、下端の幅Wtと上端の幅とが略同一であってもよく、下端から上端に向かって幅が広がっていてもよい。先端部11は、近接する電子部品への熱影響を抑制する観点からは、下端の幅Wtと上端の幅とが略同一であることが好ましい。また、先端部11は、熱圧着ツールの設定温度を低減させる観点からは、下端から上端に向かって幅が広がっていることが好ましい。
【0030】
胴部12は、先端部11と同様、下端の幅Wbと上端の幅とが略同一であってもよく、下端から上端に向かって幅が広がっていてもよく、胴部12の幅方向の断面形状は、矩形でも、扇形でもよい。胴部12は、近接する電子部品への熱影響を抑制する観点からは、下端の幅Wtと上端の幅とが略同一であることが好ましい。また、胴部12は、熱圧着ツールの設定温度を低減させる観点からは、下端から上端に向かって幅が広がっていることが好ましい。
【0031】
先端部11の下端から上端までの長さHtは、先端部11及び胴部12の合計の長さ(Ht+Hb)の15%より大きく60%より小さいことが好ましく、30%より大きく60%より小さいことがより好ましく、40%以上60%以下であることがさらに好ましい。先端部11及び胴部12の合計の長さ(Ht+Hb)は、3mmより大きく10mmより小さいことが好ましく、4mmより大きく8mmより小さいことが好ましく、5mm以上7mm以下であることがさらに好ましい。先端部11の長さHtは、熱圧着ツールの設定温度を低減させる観点から、短い方が好ましいが、短すぎると胴部12からの輻射熱により圧着部近傍へ熱影響を与えてしまう。
【0032】
先端部11の幅方向の断面積(Wt×Ht)に対する胴部12の幅方向の断面積(Wb×Hb)の比は、1.3より大きく10より小さいことが好ましく、1.5より大きく4より小さいことがより好ましく、2.0以上3.8以下であることがさらに好ましい。これにより、熱圧着ツール10の設定温度を低くすることができ、熱圧着ツール10の輻射熱による熱影響を抑制することができる。
【0033】
図5は、熱圧着ツールの幅方向断面の他の例を示す断面図である。図5に示す熱圧着ツールは、図4に示す熱圧着ツールと同様に、下端の幅が0.6mm以下である先端部41と、先端部41の上端に連続し、先端部41よりも幅が広い胴部42と、胴部42に連続し、胴部42に熱を供給する加熱部43とを備える。図5に示す熱圧着ツールは、胴部42の幅が下端から上端に向かって広がっており、胴部42の幅方向の断面形状が扇形である。先端部41の下端から上端までの長さの好ましい範囲、及び先端部41の幅方向の断面積に対する胴部42の幅方向の断面積の比の好ましい範囲は、図4に示す熱圧着ツールと同様である。
【0034】
本技術を適用した熱圧着ツールは、幅方向の断面において、先端部の下端の幅が0.6mm以下であり、先端部の下端から胴部の上端に向かって幅が広がっている形状であるため、熱圧着ツールの設定温度を低くすることができ、圧着部近傍への熱影響を抑制することができる。
【実施例0035】
<3.実施例>
本実施例では、COG部の近傍にFOG部を備える基板を準備し、COG接続後に所定の形状の熱圧着ツールを用いてFOG接続を行い、接続体を作製した。そして、熱圧着ツールの設定温度、FOG接続時におけるCOG部の温度、COG部の初期及び信頼性試験後の導通抵抗値を測定した。なお、本実施例は、これらに限定されるものではない。
【0036】
[接続体の作製]
評価用ICが実装されるCOG部と、評価用FPCが実装されるFOG部とを備える評価用ガラス基板(外形:30mm×50mm、厚み0.5mmのITOパターン)を準備した。COG部とFOG部との距離は0.5mmであった。
【0037】
(COG接続)
ガラス基板のCOG部に、異方性導電フィルム(4.0mm×40mm、ガラス転移温度:約150℃)を仮貼りし、異方性導電フィルム上に、評価用IC(外形:0.7mm×20mm、厚み0.2mm、バンプ(Au‐plated):幅15μm×長さ100μm、高さ12μm、バンプピッチ14μm)を仮搭載した。そして、緩衝材として厚み50μmのポリテトラフルオロエチレンシートを介して熱圧着ツール(SUS、押圧部:10.0mm×40.0mm)を押し下げ、温度:150℃、圧力:70MPa、時間:5secの条件で熱圧着を行った。
【0038】
(FOG接続)
COG接続後、評価用ガラス基板のFOG部に、異方性導電フィルム(所定幅×40mm)を仮貼りし、異方性導電フィルム上に、評価用FPC(厚み38μm、ポリイミドフィルム、50μmピッチ、ライン:スペース=1:1、端子厚み8μm、Cu(下地)/Sn(表面)メッキ)を仮搭載した。そして、緩衝材として厚み100μmのポリテトラフルオロエチレンシートを介して熱圧着ツール(SUS、押圧部:所定幅×40.0mm)を押し下げ、温度:170℃、圧力:4.5MPa、時間:5secの条件で熱圧着を行った。
【0039】
[熱圧着ツールの設定温度]
熱圧着ツールを押圧した際の圧着部の異方性導電フィルムの温度について、熱電対を用いて測定し、170℃に到達する際の加熱装置の設定温度を、170℃到達設定温度とした。
【0040】
[FOG接続時におけるCOG部の温度測定]
FOG接続時のCOG部の温度について、熱電対を用いて測定し、最大温度をCOG個所の到達温度とした。
【0041】
[COG部の初期及び信頼性試験後の導通抵抗値の測定]
FOG接続後の接続体について、デジタルマルチメーター(商品名:デジタルマルチメーター7561、横河電機社製)を用いて、COG部の初期の抵抗値を測定した。また、信頼試験後(温度85℃、湿度85%、時間500h)の接続体について、初期の抵抗値の測定と同様に、COG部の抵抗値を測定した。
【0042】
<比較例1>
図6に示すような断面形状の熱圧着ツール及び幅0.6mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。比較例1で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅0.6mm、上端幅0.6mm、及び長さ6mmの先端部と加熱部とからなる。
【0043】
表1に示すように、比較例1で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は480℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は140℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は2.1Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は12.8Ωであった。
【0044】
<比較例2>
熱圧着ツール及び幅0.6mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。比較例2で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅0.6mm、上端幅0.6mm、及び長さ3mmの先端部と、下端幅0.8mm、上端幅0.8mm、及び長さ3mmの長方形の胴部と、加熱部とからなる。先端部の長さと胴部の長さとの合計に対する先端部の長さの割合は50%であり、先端部の断面積に対する前記胴部の断面積の比は1.3であった。
【0045】
表1に示すように、比較例2で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は430℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は121℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は1.4Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は11.1Ωであった。
【0046】
<実施例1>
図4に示すような断面形状の熱圧着ツール及び幅0.6mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。実施例1で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅0.6mm、上端幅0.6mm、及び長さ3mmの先端部と、下端幅1.2mm、上端幅1.2mm、及び長さ3mmの長方形の胴部と、加熱部とからなる。先端部の長さと胴部の長さとの合計に対する先端部の長さの割合は50%であり、先端部の断面積に対する前記胴部の断面積の比は2.0であった。
【0047】
表1に示すように、実施例1で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は400℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は98℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は1.3Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は7.2Ωであった。
【0048】
<実施例2>
図5に示すような断面形状の熱圧着ツール及び幅0.6mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。実施例2で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅0.6mm、上端幅0.6mm、及び長さ3mmの先端部と、下端幅0.6mm、上端幅4.0mm、及び長さ3mmの扇形の胴部と、加熱部とからなる。先端部の長さと胴部の長さとの合計に対する先端部の長さの割合は50%であり、先端部の断面積に対する前記胴部の断面積の比は3.8であった。
【0049】
表1に示すように、実施例2で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は360℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は95℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は1.2Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は7.1Ωであった。
【0050】
<比較例3>
熱圧着ツール及び幅0.6mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。比較例3で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅0.6mm、上端幅0.6mm、及び長さ1mmの先端部と、下端幅1.2mm、上端幅1.2mm、及び長さ5mmの長方形の胴部と、加熱部とからなる。先端部の長さと胴部の長さとの合計に対する先端部の長さの割合は16.7%であり、先端部の断面積に対する前記胴部の断面積の比は10であった。
【0051】
表1に示すように、比較例3で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は375℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は125℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は1.8Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は11.5Ωであった。
【0052】
<実施例3>
図4に示すような断面形状の熱圧着ツール及び幅0.5mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。実施例3で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅0.5mm、上端幅0.5mm、及び長さ3mmの先端部と、下端幅1.2mm、上端幅1.2mm、及び長さ3mmの長方形の胴部と、加熱部とからなる。先端部の長さと胴部の長さとの合計に対する先端部の長さの割合は50%であり、先端部の断面積に対する前記胴部の断面積の比は2.4であった。
【0053】
表2に示すように、実施例3で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は403℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は104℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は1.4Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は7.4Ωであった。
【0054】
<実施例4>
図4に示すような断面形状の熱圧着ツール及び幅0.4mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。実施例4で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅0.4mm、上端幅0.4mm、及び長さ3mmの先端部と、下端幅1.2mm、上端幅1.2mm、及び長さ3mmの長方形の胴部と、加熱部とからなる。先端部の長さと胴部の長さとの合計に対する先端部の長さの割合は50%であり、先端部の断面積に対する前記胴部の断面積の比は3.0であった。
【0055】
表2に示すように、実施例4で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は408℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は110℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は1.4Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は7.7Ωであった。
【0056】
<従来例1>
図6に示すような断面形状の熱圧着ツール及び幅1.0mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。従来例1で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅1.0mm、上端幅1.0mm、及び長さ6mmの先端部と加熱部とからなる。
【0057】
表2に示すように、従来例1で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は320℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は82℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は1.2Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は6.8Ωであった。
【0058】
<従来例2>
図6に示すような断面形状の熱圧着ツール及び幅0.8mmの異方性導電フィルムを用いてFOG接続を行った。従来例2で用いた熱圧着ツールの幅方向の断面は、下端幅0.8mm、上端幅0.8mm、及び長さ6mmの先端部と加熱部とからなる。
【0059】
表2に示すように、従来例2で用いた熱圧着ツールによる圧着部の170℃到達設定温度は340℃であり、FOG接続時におけるCOG部の温度は93℃であった。また、COG部の初期の導通抵抗値は1.2Ωであり、信頼性試験後の導通抵抗値は7.0Ωであった。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】
【0062】
従来例1、2のように、先端部の下端幅が1.0mm、0.8mmの場合、熱圧着ツールの設定温度が低くてよいため、COG部への熱影響はほとんど現れなかった。比較例1のように、先端部の下端幅が0.6mmであり、胴部を有しない場合、170℃到達設定温度が高くなってしまい、その結果、熱圧着ツールの輻射熱により、COG部の異方性導電膜の樹脂が緩み、接続信頼性が低下してしまった。
【0063】
一方、実施例1~4のように、先端部の下端幅が0.6mm以下であり、胴部を有し、先端部の幅方向の断面積に対する胴部の幅方向の断面積の比が、1.3より大きく10より小さいことにより、比較例1~3よりも170℃到達設定温度を低減させることができ、COG部への熱影響を抑制することができた。特に実施例1~4のように、先端部の幅方向の断面積に対する胴部の幅方向の断面積の比が、1.5より大きく4より小さいことにより、COG部への熱影響を十分に抑制することができた。
【符号の説明】
【0064】
10 熱圧着ツール、11 先端部、12 胴部、13 加熱部、20 ステージ、31 ガラス基板、32 フレキシブルプリント基板、33 IC、34 第1の熱硬化性接着フィルム、35 第2の熱硬化性接着フィルム、41 先端部、42 胴部、43 加熱部、101 先端部、103 加熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6