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特開2022-54730印刷装置およびインクリボンの巻き取り方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054730
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】印刷装置およびインクリボンの巻き取り方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 35/38 20060101AFI20220331BHJP
   B41J 35/36 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B41J35/38 A
B41J35/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161914
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】302069930
【氏名又は名称】NECエンベデッドプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 和浩
【テーマコード(参考)】
2C068
【Fターム(参考)】
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068NN03
2C068NN28
2C068PP06
2C068PP07
(57)【要約】
【課題】熱転写プリンタに使用されるインクリボンに転写後に残る印刷痕からの情報漏洩を防止する。
【解決手段】巻き取りロールは、少なくともインクリボンに等しい幅を有するシートSにより形成され、シートSの一端を中心とする渦巻き状に形成された芯管Cと、前記一端部に設けられて渦巻きの中心をなす第1の軸1と、シートSの外周側の端部に第1の軸1と平行に設けられた第2の軸2とを有する。印刷装置は、インクリボンの巻き取りロール5を備え、インクリボン4からインクを転写する印刷ヘッド6と、インクリボン4の長手方向に沿う複数の切断線を形成するカッター8と、巻き取りロール5の第1の軸1を駆動する駆動軸10と、駆動軸10と回転中心を同じくして第2の軸2と一体に回転する従動軸20と、従動軸20の回転を規制する規制部9とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物へインクを転写したインクリボンを巻き取る巻き取りロールであって、
少なくとも前記インクリボンに等しい幅を有するシートにより形成され、該シートの一端部を中心とする渦巻き状に形成された芯管と、
前記一端部に設けられて前記渦巻きの中心をなす第1の軸と、
前記渦巻きの外周側の端部に前記第1の軸と平行に設けられた第2の軸と、
を有するインクリボンの巻き取りロールと、
該インクリボンの巻き取りロールに巻き取られるインクリボンから被印刷物へインクを転写する印刷ヘッドと、
この印刷ヘッドと前記巻き取りロールとの間に設けられて前記インクリボンの長手方向に沿う複数の切断線を形成するカッターと、
前記巻き取りロールの第1の軸を駆動する駆動軸と、
この駆動軸と回転中心を同じくして、前記巻き取りロールの第2の軸と一体に回転自在に設けられた従動軸と、
この従動軸の回転を規制する規制部と、
を有する印刷装置。
【請求項2】
前記芯管を構成するシートの一部が前記渦巻きの外周側の端部で前記シートの他の部分に接着された、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第2の軸は、前記第1の軸から半径方向外方に離れた位置で前記芯管の他端に固定された、請求項1または2のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記芯管に巻き取られるインクリボンは、長手方向に沿う切断線によって複数に分割された状態である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記駆動軸の回転および停止、前記規制部による規制および解除、を制御する制御部を有し、
該制御部は、前記インクリボンが前記芯管に所定の長さまで巻き取られるまで前記印刷ヘッドによる印刷に連動して前記駆動軸を制御し、前記インクリボンが前記芯管に所定の長さを超えて巻き取られる際に前記規制部により前記従動軸の回転を規制する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記駆動軸の回転および停止、前記規制部による規制および解除、を制御する制御部を有し、
該制御部は、前記インクリボンを巻き出す巻き出しロールから全てのインクリボンが巻き出されたことを条件として、前記規制部により前記従動軸の回転を規制する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
被印刷物へインクを転写したインクリボンを長手方向に移動させながら、この移動方向に沿う複数の切断線を形成する工程と、
少なくとも前記インクリボンに等しい幅を有するシートにより該シートの一端を中心とする渦巻き状に形成された芯管を前記シートの一端の第1の軸を中心として回転させて前記インクリボンを巻き取る工程と、
前記インクリボンが所定の長さ以上巻き取られたことを条件として、前記渦巻き状の芯管を構成するシートの他端の回転を規制した状態で前記芯管を前記第1の軸を中心として回転させる工程と、
前記シートの一端と他端とを前記第1の軸に沿って互いに反対方向へ移動させて前記インクリボンを幅方向へ分割する工程と、
を有する、インクリボンの巻き取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびインクリボンの巻き取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写式のプリンタで使用されるインクリボンには、転写された文字や図形の痕跡が使用後に残ることから、この痕跡からの情報漏洩を防止する対策が求められる。
この情報漏洩への対策として、利用者自身が使用済みリボンをシュレッダーで裁断したり、焼却したりする処理、あるいは、利用者が使用済みインクリボンを鍵のかかるケースなどに一時的に保管し、ある程の数量の溜まるのを待って、所定の処理業者へ引き渡し、この処理業者との契約等に基づくセキュリティ管理環境下での処理を経た廃棄を依頼することが行われている。
【0003】
前記使用済みリボンは、芯に巻かれていることから、通常の印刷用紙に印刷された書類等の裁断に使用されるシュレッダーにそのままの形で挿入することは難しく、また、環境負荷軽減の見地から、排気ガスの発生を伴う焼却処理は好ましくない。さらに、専門の処理業者に依頼する廃棄処理において、この処理業者で行われる廃棄処理の最終的な完了、すなわち使用済みリボンに残存する情報が完全に消滅するに到る迄の各処理工程のセキュリティ水準を追跡、管理することは難しい。
【0004】
このような困難を伴うインクリボンの処理に関連する技術として、特許文献1、2が知られている。
特許文献1には、プリンタに内蔵したカッターによってインクリボンに走行方向に沿って裁断線を入れ、あるいは、粘着剤によってインクリボンの印刷面を互いに接着することによって、痕跡の判別を不可能にする構成が開示されている。
特許文献2には、インクリボンに走行方向に沿って裁断する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-268513号公報
【特許文献2】特開2011-042146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、単にインクリボンに裁断線を入れるに過ぎないから、裁断線に沿ってインクリボンを分離しない限り、痕跡の判読が可能なまま放置される懸念がある。また粘着剤を使用する場合、インクリボンが巻芯と一体の棒状となり、廃棄に手間がかかる。
なお特許文献2の技術は、単に長手方向への裁断線によってインクリボンを裁断する技術に過ぎず、転写後の痕跡を判読不能な程度にまで消滅させるために必要な具体的な技術を開示するものではない。
【0007】
この発明は、インクリボンの転写後の痕跡の判読を困難にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、以下の手段を提案している。
被印刷物へインクを転写したインクリボンを巻き取る巻き取りロールであって、少なくとも前記インクリボンに等しい幅を有するシートにより形成され、該シートの一端を中心とする渦巻き状に形成された芯管と、前記一端部に設けられて前記渦巻きの中心をなす第1の軸と、前記渦巻きの外周側の端部に前記第1の軸と平行に設けられた第2の軸とを有するインクリボンの巻き取りロールと、該インクリボンの巻き取りロールに巻き取られるインクリボンから被印刷物へインクを転写する印刷ヘッドと、この印刷ヘッドと前記巻き取りロールとの間に設けられて前記インクリボンの長手方向に沿う複数の切断線を形成するカッターと、前記巻き取りロールの第1の軸を駆動する駆動軸と、この駆動軸と回転中心を同じくして、前記巻き取りロールの第2の軸と一体に回転自在に設けられた従動軸と、この従動軸の回転を規制する規制部と、を有する印刷装置である。
【0009】
また本発明の第2の態様は、以下の手段を提案している。
被印刷物へインクを転写したインクリボンを長手方向に移動させながら、この移動方向に沿う複数の切断線を形成する工程と、少なくとも前記インクリボンに等しい幅を有するシートにより該シートの一端を中心とする渦巻き状に形成された芯管を前記シートの一端の第1の軸を中心として回転させて前記インクリボンを巻き取る工程と、前記インクリボンが所定の長さ以上巻き取られたことを条件として、前記渦巻き状の芯管を構成するシートの他端の回転を規制した状態で前記芯管を前記第1の軸を中心として回転させる工程と、前記シートの一端と他端とを前記第1の軸に沿って互いに反対方向へ移動させて前記インクリボンを幅方向へ分割する工程とを有するインクリボンの巻き取り方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、インクリボンを切断線に沿って分離することにより、痕跡からの内容の判読を困難にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の印刷装置の最小構成例を示すもので、(a)は芯管の側面図、(b)は印刷装置の側面図である。
図2】本発明のインクリボンの巻き取り方法の最小構成例の工程図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるインクリボンの巻き取りロールを備えた印刷装置の外観を示す斜視図である。
図4】一実施形態に係る印刷装置におけるインクリボンの走行経路を示す側面図である。
図5】一実施形態にかかる印刷装置のインクリボン巻き取り機構を示し、(a)は回転中心軸を含む矢視線に沿う断面図、(b)は芯管部の回転中心軸と直交する断面図である。
図6図5のインクリボン巻き取り機構における芯管巻き取り機構の駆動側の側面図である。
図7図5のインクリボン巻き取り機構における芯管巻き取り機構の従動側の側面図である。
図8図5のインクリボン巻き取り機構におけるカッター部の詳細図で、(a)はカバー下降状態、(b)はカバー上昇状態の平面図である。
図9図5のインクリボン巻き取り機構により裁断されたインクリボンの切断線を示す平面図である。
図10図5のインクリボン巻き取り機構における芯管抜き取りの際のホイールの回転の説明図で、(a)は外側ガイドホイール、(b)は内側ガイドホイールを示す。
図11図5のインクリボン巻き取り機構における芯管抜き取りの様子を示す斜視図で、(a)は抜き取り開始状態、(b)は(a)に続く状態、(c)は(b)よりさらに抜き取った様態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る印刷装置の最小構成について図1を参照して説明する。
図1(a)は、印刷装置に使用されるインクリボンの巻き取りロールの最小構成例であって、この巻き取りロールは、少なくとも前記インクリボンに等しい幅を有するシートSにより形成され、該シートSの一端を中心とする渦巻き状に形成された芯管Cと、前記一端部に設けられて前記渦巻きの中心をなす第1の軸1と、前記渦巻きの外周側の端部に前記第1の軸1と平行に設けられた第2の軸2とを有する。印刷装置は、図1(b)に示すように、前記インクリボンの巻き取りロール5を備え、インクリボンの巻き取りロール5に巻き取られるインクリボン4から被印刷物へインクを転写する印刷ヘッド6と、この印刷ヘッド6と前記巻き取りロール5との間に設けられて前記インクリボン4の長手方向に沿う複数の切断線を形成するカッター8と、前記巻き取りロール5の第1の軸1を駆動する駆動軸10と、この駆動軸10と回転中心を同じくして、前記巻き取りロールの第2の軸2と一体に回転自在に設けられた従動軸20と、この従動軸20の回転を規制する規制部9と、を有する印刷装置である。
【0013】
上記構成によれば、第2の軸2の回転を拘束した状態で第1の軸1を図1の時計回りに回転させることにより、芯管Cを構成するシートSが第1の軸1に巻き付き、第1の軸1と第2の軸2との間でシートSが引っ張られ、渦巻き状のシートSが縮まるように芯管Cの径が収縮する。したがって、この芯管Cの外周にインクリボン等を巻き取った後、第1の軸1を回転させることにより、芯管Cの外径を縮小させて、その周囲に巻き取られたインクリボン等を芯管Cから容易に分離することができる。
【0014】
本発明に係るインクリボンの巻き取り方法の最小構成について図2を参照して説明する。
図2に示すように、被印刷物へインクを転写したインクリボンを長手方向に移動させながら、この移動方向に沿う複数の切断線を形成する工程SP1と、少なくとも前記インクリボンに等しい幅を有するシートにより該シートの一端を中心とする渦巻き状に形成された芯管を前記シートの一端の第1の軸を中心として回転させて前記インクリボンを巻き取る工程SP2と、前記インクリボンが所定の長さ以上巻き取られたことを条件として、前記渦巻き状の芯管を構成するシートの他端の回転を規制した状態で前記芯管を前記第1の軸を中心として回転させる工程SP3と、前記シートの一端と他端とを前記第1の軸に沿って互いに反対方向へ移動させて前記インクリボンを幅方向へ分割する工程SP4とを有する。
【0015】
上記方法によれば、印刷後に切断線が形成されたインクリボンを渦巻き状の芯管Cに巻き取った後、第2の軸2の回転を拘束した状態で第1の軸1を回転させることにより、渦巻き状の芯管Cの外径が収縮し、その周囲に巻き取られたインクリボン等を芯管Cから容易に分離するとともに、前記切断線にそって細かく分離することができる。
【0016】
図3図11を参照して、本発明の一実施形態にかかるインクリボンの巻き取りロールを備える印刷装置について説明する。
図3、4に示すように、この印刷装置は、巻き出しロール3(以下の説明では、インクリボンが巻き取られた未使用のロールと、このロールを支持する軸受け等の機構全体を意味するものとする)から巻き出されたインクリボン4を巻き取りロール5によって巻き取る基本構成を有する。また、この印刷装置は、前記巻き出しロール3から巻き取りロール5に到るインクリボン4の走行経路の途中に印刷ヘッド6を設けた構成を有する。
【0017】
前記印刷装置は、前記印刷ヘッド6の前後に、案内ローラ7、7を備え、これらの案内ローラ7、7は、前記巻き出しロール3から巻き取りロール5に到るインクリボン4の走行経路を前記印刷ヘッド6に適切な角度、圧力で接触するよう規定する。また、前記印刷ヘッド6と巻き取りロール5との間には、カッター8が設けられている。このカッター8は、前記巻き取りロール5に巻き取られる前のインクリボン4へ走行方向に沿う裁断線を形成して、インクリボン4の幅方向(図4の紙面と直交する方向)へ複数に分割可能にする。
【0018】
図5(a)(b)により、前記巻き取りロール5の構成を説明する。
前記巻き取りロール5は、芯管50と、該芯管50の一端(内周側の端部)を支持する内側ガイドホイール51(図5(a)の左右のホイールを51R、51Lと区別する)と、前記芯管50の他端(外周側の端部)を支持する外側ガイドホイール52(図5(a)の左右のホイールを52R、52Lと区別する)とを有する。
前記芯管50は、図5(b)に示すように、例えば、可撓性のプラスティック板により構成されたシートSの一端を第1の軸1に固着し、同シートSの他端を前記第1の軸1と平行な第2の軸2に固着し、第1の軸1を中心とする渦巻き状に成形し、第2の軸2を前記渦巻きを構成するシートSの外周面に固着した構成となっている。
【0019】
前記第1の軸1、第2の軸2とシートSとの固着構造は、例えば、シートSの端部を筒状に形成し、この筒状の部分に前記第1、第2の軸1、2を挿入する構造が採用される。なお前記第2の軸2とシートSとの固着は、例えば、粘着材を介した着脱可能な固着、あるいは、容易に破断可能な薄いプラスティック板による連結など、所定以上の回転力によって破壊される、いわゆる仮止め状態とされている。また、前記第2の軸2とシートSとをこの固着状態から解除することにより、前記シートSを第1の軸1に巻き付け、あるいは巻きをほどく方向へ弾性変形することができるよう構成されている。
【0020】
前記第1の軸1は、図5(a)に示すように、シートSの幅方向両端から突出して設けられていて、前記内側ガイドホイール51R、51Lへ向かって突出している。また前記第2の軸2は、シートSの幅方向両端から突出して設けられていて、前記外側ガイドホイール52R、52Lへ向かって突出している。
前記第1の軸1の先端には、円周方向に90度の間隔をあけて複数のキー突起50aが形成されている。前記内側ガイドホイール51R(51L)は、図10(b)に示すように、全体として中心軸51aを回転中心とする平歯車状の形状をなし、中心軸51aと同軸状に、前記キー突起50aが挿入されるキー溝51bを有する軸受け穴51cを有する。また前記内側ガイドホイール51R(51L)の外周には、歯車の歯状の凹凸部51dを有する。また前記中心軸51a、52aは、それぞれ、プリンタ筐体30に回転自在に支持されている。前記第1の軸1は、前記内側ガイドホイール51Rと一体回転が可能に連結され、また前記第1の軸1は、前記内側ガイドホイール51Lに、回転を許容する状態で挿入されている。
前記外側ガイドホイール52L(52R)は、図10(a)に示すように、全体として中心軸52aを回転中心とする平歯車状の形状をなし、中心軸52aから偏心した外周寄りの位置に、前記第2の軸2の先端が挿入される軸受け穴52bを有する。また前記外側ガイドホイール52L(52R)は、外周に、歯車の歯状の凹凸部52cを有する。前記中心軸52aは、前記内側ガイドホイール51Lに一体回転が可能に挿入されている。
前記内側ガイドホイール51R(51L)は、一部が小径の円柱状をなし、前記外側ガイドホイール52R(52L)の中心に挿入されて、軸受52dにより回転自在に支持されている。
【0021】
前記内側ガイドホイール51R、51L、外側ガイドホイール52R、52Lは、芯管50の第1の軸1、第2の軸2の取り付け、取り外しの作業性を考慮して、各々中心軸51a、52aに沿って幅方向外方へ移動可能な構成として、ばね等により芯管50を両側から挟んで付勢する機構によって支持されている。
なお前記内側ガイドホイール51R、51L、外側ガイドホイール52R、52Lの前記幅方向への移動機構に代えて、第1の軸1、第2の軸2を軸線方向への相対移動により伸縮可能な構造(いわゆるテレスコピック機構)を採用し、これら第1の軸1、第2の軸2を収縮した状態で前記内側ガイドホイール51R、51L、外側ガイドホイール52R、52Lの間に配置し、伸長させることによって第1の軸1、第2の軸2をそれぞれ外方へ突出させて、軸受け穴51c、あるいは軸受け穴52bへ挿入する構造を採用し、収縮させることによって軸受け穴51c、52bから抜き取ることができる構造としても良い。
さらに、印刷装置に設けられて前記前記内側ガイドホイール51R、51L、外側ガイドホイール52R、52Lの中心軸52aを支持するプリンタ筐体30の図示しない軸受け部を分解可能な構造として前記巻き取りロール5の全体を取り外すことが可能な構造を採用しても良い。
【0022】
図6を参照して、前記内側ガイドホイール51R(一実施形態では、右側の内側ガイドホイール51Rのみが駆動されているものとする)の駆動機構について説明する。
前記内側ガイドホイール51Rの近傍には、電動モータ等により駆動される駆動ホイール53が設けられており、この駆動ホイール53の外周には、前記内側ガイドホイール51Rの凹凸部51dにかみ合って駆動力を伝達する凹凸部53aが形成されている。
なお、前記駆動ホイール53から前記内側ガイドホイール51Rへの駆動力の伝達は、歯車を直接噛み合わせる回転伝達のみならず、タイミングベルトを介した回転伝達であっても良い。
【0023】
図7を参照して、前記外側ガイドホイール52L(一実施形態では、左側の外側ガイドホイール52Lのみにロックおよび解除が行われるものとする)を停止させるロック機構54について説明する。
前記外側ガイドホイール52Lの近傍には、前記外側ガイドホイール52Lと平行な軸54aを中心として、回動自在なアーム54bが設けられている。
このアーム54bの一端54cは、ソレノイド54dに連結されており、このソレノイド54dの図7矢印方向への左右の往復動に連動して、前記アーム54bが軸54aを中心として回動することにより、上下の矢印方向へ移動する。すなわち、前記ソレノイド54dの動作により、前記外側ガイドホイール52Lの外周の凹凸部52cに前記アーム54bの先端部54eを挿入して外側ガイドホイール52Lの回転を規制し、あるいは挿入位置から外側ガイドホイール52Lの回転軌跡より外方の位置に退避させて外側ガイドホイール52Lの回転を許容することができる。
【0024】
なお前記アーム54bは、詳細には、図示しないねじりばねを用いて、図7の反時計回りに付勢されている。したがって、ソレノイド54dを通電しない状態では、アーム54bが図7の反時計回りに回転して凹凸部52cから離れた位置に待機し、ソレノイド54dの通電に伴う収縮によってアーム54bを図7の時計回りに回転させて凹凸部52cに先端部54eを挿入し、ソレノイド54dの通電を解除することにより、図示しないばねの弾性力により反時計回りの力を作用させて、凹凸部52cからアーム54bの先端部54eを退避させるよう構成されている。なお一実施形態では、内側ガイドホイール51R(51L)と外側ガイドホイール52L(52R)とを同一仕様の平歯車状に構成したが、外側ガイドホイール52L(52R)は、必ずしも平歯車状に構成する必要はなく、例えば、アーム54bが挿入される凹部が複数個所に存在していれば足りるものである。
【0025】
図8を参照して、前記インクリボン4を長手方向に沿って多数のテープ状に切断するカッター8について説明する。図5(a)は切断に備える待機状態、図5(b)は切断のための下降状態を示す。
カッター8は、カッター本体81と、このカッター本体81に重なって配置されていて、該カッター本体81にお対してスライド移動可能なカバー82とを備える。支持部材83は、これらカッター本体81とカバー82とを下部(インクリボン4の走行経路に近い側)に備えている。前記カッター本体81の先端は、幅方向に所定の相互間隔をおいて、複数の刃先部81aを有する。これらの刃先部81aの相互間隔Wは、例えばインクリボン4により印刷される痕跡の判別が不能となる程度に細かい間隔であり、例えば、3mm以下に設定されている。
【0026】
前記カバー82は、図8(a)(b)の上下方向に弾性変形可能な圧縮コイルばね84を備えていて、図8(a)の下降位置から、図8(b)の上昇位置へ前記圧縮コイルばね84を弾性変形させながら移動することができる。このカバー82の移動ストロークyは、例えば20mmに設定されていて、前記カッター本体81の刃先部81aのほぼ全部を露出させることができるよう構成されている。
【0027】
なお、一実施形態の芯管50に巻き取られるインクリボン4は、図9に示すように、芯管50に巻き取られる際の巻き初めとなるリード部4aと、これに続くインクが塗布された本体部4bとを有し、前記リード部4aには、幅方向に向かう断続的な切断線であるミシン目4cが形成されている。また前記インクリボン4には、前記カッター8の刃先部81aと交差しながら移動することにより、切断線4dが形成される。
【0028】
一実施形態の印刷装置における印刷の動作および印刷後のインクリボンの取り出しの動作について説明する。
【0029】
(1)インクリボンの装着および印刷の準備
図4に示すように、未使用のインクリボン4が巻き付けられた巻き出しロール3を印刷装置に装着し、インクリボン4を図4の走行経路に沿って引き回し、印刷ヘッド6を経由して巻き取りロール5の芯管50に巻き付ける。この時、カッター8は、インクリボン4の走行経路より僅かに上の位置に配置されている。なおカッター8は、インクリボン4の走行経路に対して近接、離間する方向へのストロークを有する往復動機構(図示略)によって移動可能な構成としても良く、また、カッター8を一定の位置に固定しておき、インクリボン4の弛みによってわずかに隙間が空き、印刷に伴ってインクリボン4が所定の張力を与えられた状態でカッター本体81の刃先81aと接するような配置であっても良い。
【0030】
ここで、前記カッター8は、図8(a)に示すように、カバー82がカッター本体81を覆うように下がった状態とされていることから、巻き出しロール3、巻き取りロール5の取り付け、あるいは、インクリボン4の引き回しに際して、作業員の手指等が触れて傷付くことを防止することができる。
【0031】
(2)印刷およびこれに伴うインクリボンの走行
駆動ホイール53によって、これに噛み合う内側ガイドホイール51を回転させると、軸受け穴51cに挿入された第1の軸1に駆動力が伝達される。ここで、外側ガイドホイール52は、図7に示すアーム54bが同図の反時計回りに回転して先端部54eが外側ガイドホイール52の凹凸部52cから外れているので、前記第1の軸1の回転にともなって、芯管50とともに回転する。なお第2の軸2は、軸受け穴52bに挿入されて、前記第1の軸1と同心上にある中心軸51aを中心として公転する。
【0032】
この回転に伴い、インクリボン4に所定の張力が与えられて印刷ヘッド6に所定の圧力で接触し、印刷ヘッド6から受ける熱によって、図示しない被印刷物へインクリボン4からインクを転写する。また、インクリボン4に張力が生じることにより、図8(b)に示すように、該インクリボン4に接触しているカッター8のカバー82が圧縮コイルばね84を縮めながら上方へ移動する。
この移動により、カッター本体81の刃先81aが露出し、インクリボン4の走行に伴い、図9に示すように、図中矢印で示す走行方向(巻き取り方向)に沿って切断線4dが形成されるとともに、切断線4dが形成された状態で芯管50に巻き取られる。
【0033】
(3)インクリボンの取り出し
印刷が終了し、巻き出しロール3から巻き取りロール5へインクリボン4の全部が移動すると、巻き出しロール3が停止する。停止後、全部のインクリボン4が巻き取られるまでの所定時間経過を待って、ロック機構54のソレノイド54dを動作させてアーム54bを図7の時計回りに回転させると、先端部54eが凹凸部52cに挿入されて外側ガイドホイール52の回転が規制された状態となる。
【0034】
前記外側ガイドホイール52の回転を規制した状態、すなわち、第2の軸2を第1の軸1に対して偏心した位置で固定した状態で、内側ガイドホイール51R(51L)を回転させると、図11(a)および(b)に示すように、仮付けされていた第2の軸2とシートSとが分離し、渦巻き状のシートSが第1の軸1に巻き付くように変形して行く。内側ガイドホイール51R(51L)とともに第1の軸1が1~数回にわたって回転すると、芯管50の外径が縮むように渦巻きが変形し、芯管50に巻き付いていたインクリボン4の内周部との間に隙間が生じる。このように、芯管50と分離することにより、前記インクリボン4を構成するプラスティックフィルムを前記切断線4dによって分離させながら、多数の細いテープ状に裁断することが可能な状態となる。
【0035】
内側ガイドホイール51Rを停止させ、内側ガイドホイール51R(51L)、外側ガイドホイール52L(52R)の少なくともいずれかを軸線方向外方へ移動させると、第1の軸1を軸受け穴51cから抜き取り、第2の軸2を軸受け穴52bから抜き取ることができる。ここで、図11(c)に示すように、第1の軸1を軸線方向へ引くと、巻き取りロール5を構成するシートSが第1の軸1に沿って円柱状のインクリボン4が中心から引き出され、これに伴い、インクリボン4が切断線4dに沿って細いテープ状に分離される。すなわち、前記第1の軸1、第2の軸2と平行な方向へ前記シートSの一端と多他端とを相対的に移動させることにより、芯管50に巻き取られていたインクリボン4を細いテープ状に分離することができる。
【0036】
すなわち、インクリボン4は、あたかも印刷物をシュレッダーによって裁断した場合と同様に、細いテープ状に裁断され、この結果、インクリボン4に残った印刷痕から印刷内容を判別することが困難な状態となる。
このように、巻き取りロール5を印刷装置から取り外す操作に伴って、廃棄すべき印刷済みのインクリボン4が細いテープ状に裁断されるので、インクリボン4に残された印刷痕への情報の残留を防止することができる。
【0037】
なお、一実施形態にかかる印刷装置は、インクリボンの巻き取り側の芯管として図5(b)等に示すような態様のものを用い、印刷ヘッド6と巻き取りロール5との間にカッターを追加装備すれば良いので、一般的な熱転写式の印刷装置に軽微な改良を加えるだけで実現することができる。
また、前記インクリボンの巻き取り完了後に芯管50を収縮させる際の外側ガイドホイール52Lのロック、内側ガイドホイール51Rを駆動する駆動ホイール53の運転、停止を制御する制御部は、印刷装置の印刷を制御するコンピュータのソフトウェアで実行される印刷制御の一部として実現される。ここに、前記インクリボン4を使い切った旨(いわゆるリボンエンドに達した)の判定は、巻き出しロール3が全てのインクリボン4を巻き出し、インクリボン4の張力による回転が停止したことの検知により行うことができる。なお、インクリボン4を使い切った場合以外、例えば、巻き出しロール3に巻き取られたインクリボン4(あるいはその巻き初めの案内部分)が所定以下の長さとなったことをインクリボン4の送り量等から換算して所定長さ以上使用したことを検知した場合、巻き出しロール3に巻き取られたインクリボン4の終端近くに形成されたニアエンド検出用の印を検出した場合等に巻き取りロールの裁断処理を開始するようにしても良い。
【0038】
上記印刷装置において行われる処理を前記印刷装置の動作に沿って工程順に説明すると、下記の通りである。
(1)内側ガイドホイール51と外側ガイドホイール52との間に芯管50を装着した状態で、インクリボン4を長手方向へ移動させながら、カッター8の刃先81aを転写後のインクリボン4と交差させ、インクリボン4の長手方向に沿う切断線4dを形成する。
(2)前記インクリボン4は、少なくとも前記インクリボン4に等しい幅を有するシートSにより該シートSの一端を中心とする渦巻き状に形成された芯管50を前記シートの一端の第1の軸1を中心として回転させて前記インクリボン4を巻き取る。
【0039】
(3)前記インクリボン4がリボンエンドに達して巻き出しロールが停止する等、インクリボン4が予め定められた長さ以上巻き取られたことを条件として、前記渦巻き状の芯管50を構成するシートSの他端の回転を前記外側ガイドホイール52の凹凸部52cにロック機構54のアーム54bを挿入することにより、その回転を規制した状態で前記芯管50を前記第1の軸1を中心として回転させる。
(4)前記シートSの一端と他端とを前記第1の軸1に沿って互いに反対方向へ移動させて、換言すれば、前記第1の軸1と第2の軸2とを軸線方向へ互いに反対方向へ相対的に移動させることにより、前記インクリボン4が切断線4dを介して幅方向へ分割される。
【0040】
上記(1)~(4)の工程により、使用済みのインクリボン4を印刷装置から取り外す操作とともに、印刷済みのインクリボン4が印刷痕の判別が困難な程度まで、細いテープ状に裁断されるので、インクリボン4に残された印刷痕への情報の残留を防止することができる。
【0041】
本発明が適用される印刷装置の具体的構成は前記一実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
(1)内側ガイドホイール51Rの中心軸51aに直結された電動モータによる直接駆動等、他の駆動方式を採用してもよい。
(2)外側ガイドホイール52Lの回転の規制は、外側ガイドホイール52Lの中心軸52aに制動力を作用させる方式等、他の制動方式を採用しても良い。
(3)カッター本体81の刃先部81aの形状、個数、相互間隔は一実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更しても良い。またカッター8の配置は、印刷ヘッド6の下流側であれば、巻き取りロール5までのいずれの位置であっても良い。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの一実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、転写式のインクリボンを使用する印刷装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 第1の軸
2 第2の軸
3 巻き出しロール
4 インクリボン
4a リード部
4b 本体部
4c ミシン目
4d 切断線
5 巻き取りロール
6 印刷ヘッド
7 案内ローラ
8 カッター
9 規制部
10 駆動軸
20 従動軸
50 芯管
50a キー突起
51、51R、51L 内側ガイドホイール
51a 中心軸
51b キー溝
51c 軸受け穴
51d 凹凸部
52、52R、52L 外側ガイドホイール
52a 中心軸
52b 軸受け穴
52c 凹凸部
52d 軸受
53 駆動ホイール
53a 凹凸部
54 ロック機構
54a 軸
54b アーム
54c 一端
54d ソレノイド
54e 先端部
81 カッター本体
81a 刃先部
82 カバー
83 支持部材
84 圧縮コイルばね
S シート
C 芯管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11