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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054740
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】水系組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20220331BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20220331BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20220331BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20220331BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A61K8/55
A61Q5/10
A61K8/22
A61K8/46
A61K8/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161928
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 紘之
(72)【発明者】
【氏名】河合 航輝
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC122
4C083AC711
4C083AC712
4C083AC781
4C083AC782
4C083AC891
4C083AC892
4C083AD392
4C083BB05
4C083BB07
4C083BB42
4C083BB43
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE07
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】シャンプータイプの酸化染毛剤等における酸および酸化剤の配合に起因する第2剤の調製時の低粘度、及びその粘度の経時的低下を防止できるシャンプー剤の基本配合を提供する。
【解決手段】下記の(a)~(d)成分を含有し、アルカリ剤を含有する組成物と混合して用いられる水系組成物。
(a)酸化剤
(b)酸
(c)アニオン性界面活性剤
(d)両性界面活性剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)~(d)成分を含有し、アルカリ剤を含有する組成物と混合して用いられる水系組成物。
(a)酸化剤
(b)酸
(c)アニオン性界面活性剤
(d)両性界面活性剤
【請求項2】
前記(c)成分がラウリル基を有するアニオン性界面活性剤である請求項1に記載の水系組成物。
【請求項3】
前記(c)成分の含有量が3.0質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の水系組成物。
【請求項4】
前記(d)成分の含有量が3.5質量%以上である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の水系組成物。
【請求項5】
前記(d)成分の含有量に対する(c)成分の含有量の質量比(c)/(d)が0.35~1.50の範囲内である請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の水系組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系組成物に関し、更に詳しくは、酸及び酸化剤の配合下で好適な粘度を実現でき、その粘度を経時的に維持できる水系組成物に関する。この水系組成物は、例えばシャンプータイプの酸化染毛剤、毛髪脱色剤及び毛髪脱染剤の第2剤として好ましく使用される。以下、「酸化染毛剤等」と言う場合は、酸化染毛剤、毛髪脱色剤及び毛髪脱染剤を総称している。
【背景技術】
【0002】
シャンプー剤の基本配合に対して酸化染毛剤等の有効成分を追加したシャンプーヘアカラーとでも呼ぶべき毛髪化粧料が提供されている。このような毛髪化粧料によれば、日常的なシャンプー操作の中で酸化染毛剤等による染毛または脱色・脱染の効果も併せて得ることができる。使用に当たり、例えば非透水性の薄い手袋等を着用することもできる。
【0003】
特許文献1は酸化染毛剤に関し、第1剤がアルカリ剤、酸化染料、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を含有し、第2剤が酸化剤、酸(ヒドロキシエタンジホスホン酸)、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を含有する。そして毛髪への塗布性の点から、酸化染料の高配合(1~20質量%)に起因する酸化染毛剤(第1剤と第2剤の混合物)の粘度低下とたれ落ちの防止を発明の課題とする。なお、第2剤に増粘性高分子を配合できることを記載するが、第2剤の粘度及びその粘度の維持については教示しない。
【0004】
特許文献2は酸化染毛剤あるいは毛髪脱色剤に関し、第1剤がアルカリ剤、両性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤を含有し、第2剤が酸化剤、酸及びノニオン性界面活性剤を含有する。そして特許文献1と同様に毛髪への塗布性の点から酸化染毛剤(第1剤と第2剤の混合物)の粘度維持、たれ落ち防止を発明の課題とする。なお、第2剤に増粘性高分子を配合できること及び第2剤粘度について記載するが、第2剤粘度の維持については教示しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-088891号公報
【特許文献2】特許第5919039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に見られるように、酸化染毛剤等における粘度の維持、たれ落ちの防止は従来より種々に試みられている。
しかし、シャンプータイプの酸化染毛剤では、シャンプー剤の基本配合に対してヘアカラーの有効成分を追加するという特有の事情がある。通常の酸化染毛剤における毛髪塗布性のための要求粘度と、シャンプータイプの酸化染毛剤におけるシャンプー剤としての要求粘度とは技術的意味が異なる。このような事情は、シャンプー剤の基本配合に対して毛髪脱色剤又は毛髪脱染剤の有効成分を追加する場合でも同様である。従って、シャンプータイプの酸化染毛剤等に対応したシャンプー剤の基本配合を新たに開発する必要がある。
【0007】
ところで、酸化染毛剤等の第2剤には、過酸化水素の安定化、第1剤のアルカリ剤の中和等の目的で多様な無機酸、有機酸が配合される。また、有機酸であるヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)やその塩は、キレート剤としても使用される。これらの酸は第2剤の粘度を低下させる。更に、酸化染毛剤等の第2剤に配合される酸化剤も第2剤の粘度を低下させる一因となっている。
【0008】
そこで本発明は、シャンプータイプの酸化染毛剤等に対応したシャンプー剤基本配合の開発の一環として、酸及び酸化剤の配合に起因する第2剤の低粘度、及びその粘度の経時的低下を防止できるシャンプー剤の基本配合の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明は、下記の(a)~(d)成分を含有し、アルカリ剤を含有する組成物と混合して用いられる水系組成物である。
【0010】
(a)酸化剤
(b)酸
(c)アニオン性界面活性剤
(d)両性界面活性剤
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明においては、前記第1発明に係る水系組成物の(c)成分がラウリル基を有するアニオン性界面活性剤である。
【0011】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明においては、前記第1発明又は第2発明に係る水系組成物の(c)成分の含有量が3.0質量%以上である。
【0012】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明においては、前記第1発明~第3発明のいずれかに係る水系組成物の(d)成分の含有量が3.5質量%以上である。
【0013】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明においては、前記第1発明~第4発明のいずれかに係る水系組成物の(d)成分の含有量に対する(c)成分の含有量の質量比(c)/(d)が0.35~1.50の範囲内である。
【発明の効果】
【0014】
(第1発明の効果)
酸化染毛剤、毛髪脱色剤、毛髪脱染剤の第2剤は必須成分として過酸化水素等の酸化剤を含有する。また、その過酸化水素を安定化したり、アルカリ剤を含有する第1剤との混合時にアルカリ剤を中和する目的で、多様な種類の無機酸や有機酸が配合される。更に、キレート剤として第2剤にしばしば配合されるヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)等も有機酸である。
【0015】
これらの酸化剤及び酸が配合された第2剤は、シャンプータイプの酸化染毛剤等として調製するに当たって一般的なシャンプーに用いられる界面活性剤と組み合わせると、調製時に低粘度となる。この問題に対して高分子化合物等の増粘剤を配合して増粘すると、製品の保管中に粘度の経時的低下をきたす。
【0016】
本願発明者は、酸化染毛剤等の第2剤であり、アルカリ剤を含有する組成物と混合して用いられる水系組成物に(c)アニオン性界面活性剤と(d)両性界面活性剤を配合すると、水系組成物の調製時低粘度と粘度の経時的低下とを有効に防止できることを見出した。
【0017】
このような効果が得られる理由は、水系組成物が(c)アニオン性界面活性剤と(d)両性界面活性剤を併せ含有する場合、とりわけ、(c)成分がラウリル基を有するアニオン性界面活性剤であり、(c)、(d)両成分が特定の含有量比である場合に、これら両成分が酸及び/又は酸化剤に対して安定な構造をとるコンプレックスを形成するためである。
【0018】
(第2発明の効果)
(c)アニオン性界面活性剤の種類は限定されないが、炭素数12の直鎖アルキル鎖であるラウリル基を有するアニオン性界面活性剤が、水系組成物の調製時低粘度と粘度の経時的低下との防止上、特に好ましい。
【0019】
(第3発明の効果)
水系組成物における(c)成分の含有量は限定されないが、3.0質量%以上であることが、水系組成物の調製時低粘度と粘度の経時的低下との防止上、特に好ましい。
【0020】
(第4発明の効果)
水系組成物における(d)成分の含有量は限定されないが、3.5質量%以上であることが、水系組成物の調製時低粘度と粘度の経時的低下との防止上、特に好ましい。
【0021】
(第5発明の効果)
水系組成物における(d)成分の含有量に対する(c)成分の含有量の質量比(c)/(d)は限定されないが、0.35~1.50の範囲内であることが、水系組成物の調製時低粘度と粘度の経時的低下との防止上、特に好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態をその最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施形態によって限定されない。
〔水系組成物〕
本発明において水系組成物とは、水をベースとする組成物であって、少なくとも水溶液及び水性ジェルが包含される。水性ジェル状の水系組成物が特に好ましい。水に非溶性又は難溶性の成分を乳化させた組成物は包含されない。
【0023】
本発明の水系組成物は、第1剤と共に使用時に泡状やミスト状としても良い。泡状とする場合には、エアゾールフォーマー容器、ノンエアゾールフォーマー容器を使用すればよい。
【0024】
また、本発明の水系組成物を第2剤として用いるシャンプータイプの酸化染毛剤等は、3剤式以上の多剤式であってもよい。多剤式の酸化染毛剤等は、酸化染毛剤等の第1剤中の成分を別剤とすることにより構成できる。例えば、3剤式の酸化染毛剤は、アルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、本発明の水系組成物である第2剤と、第1剤からアルカリ剤及び酸化染料を除いた組成を有する第3剤とから構成される。
【0025】
水系組成物は、前提条件として水をベースとする他、(a)~(d)成分を必須成分として含有する。(a)成分は酸化剤であるから、水系組成物の代表的な該当例として酸化染毛剤、毛髪脱色剤、毛髪脱染剤のそれぞれ第2剤が挙げられる。
【0026】
酸化染毛剤は、アルカリ剤と酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とを混合して、酸化染料を酸化剤により発色させて毛髪を染色させるものである。アルカリ剤は、毛髪を膨潤させて、染料や酸化剤の浸透を促進する作用を有し、酸化剤は、酸化染料を酸化する作用の他、毛髪の内部のメラニンを分解する作用を有している。
【0027】
毛髪脱色剤及び毛髪脱染剤は、第1剤に酸化染料を含まず、毛髪を脱色するものである。毛髪脱色剤は、毛髪中のメラニンを酸化分解することにより、毛髪を脱色するものであり、毛髪脱染剤は、染毛した毛髪から染料とメラニンを脱色するものである。
【0028】
水系組成物のpHは特に制限されないが、水に10質量%の濃度で溶解した際25℃において、好ましくはpH1~6であり、より好ましくはpH1.5~5.5であり、更に好ましくはpH2~5.2であり、特に好ましくはpH2.5~5である。
【0029】
〔(a)酸化剤〕
酸化剤は、酸化染料を酸化して発色させる作用や毛髪の内部のメラニンを分解する作用を有する。具体的には、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、過酢酸及びその塩、過ギ酸及びその塩、過マンガン酸塩、臭素酸塩等が例示される。これらの中でも、過酸化水素が好ましい。また、水系組成物が毛髪脱染剤の第2剤である場合、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を酸化助剤として含有してもよい。
【0030】
水系組成物における(a)酸化剤の含有量は特に限定されないが、下限値は、染毛力、脱染・脱色性能等の点から、好ましくは0.1質量%、より好ましくは2質量%、特に好ましくは3質量%であり、上限値は、毛髪損傷抑制等の点から、好ましくは15質量%、より好ましくは9質量%、特に好ましくは6質量%である。
【0031】
水系組成物が酸化剤として過酸化水素を含有する場合、その安定性を向上させる安定化剤として、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩等を配合することが好ましい。
【0032】
〔(b)酸〕
酸は、水系組成物の第1剤との混合時にアルカリ剤を中和する効果を示すものであり、例えば、リン酸、ピロリン酸等のリン酸類、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、レブリン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、アスコルビン酸等の有機酸類である。好ましくは、リン酸類やクエン酸等の価数が三価以上の酸であり、より好ましくはリン酸類又は有機酸類であり、特に好ましくはリン酸、クエン酸又はヒドロキシエタンジホスホン酸である。
【0033】
三価以上の酸を含有することにより、毛髪の感触、耐褪色性、乳化安定性、塗布操作性を向上することができる。更に、酸の添加による色調の変化が抑制されるという効果も奏する。
【0034】
水系組成物における酸の含有量は特に限定されないが、下限値として好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.05質量%、特に好ましくは0.1質量%である。
また、酸の含有量の上限値も特に制限されないが、水系組成物の安定性等の点から、好ましくは1.0質量%であり、より好ましくは0.5質量%であり、特に好ましくは0.3質量%である。酸の含有量を1.0質量%以下とすることにより、水系組成物の安定性や、染毛力や塗布操作性等の毛髪処理剤としての性能を向上することができる。
【0035】
〔(c)アニオン性界面活性剤〕
アニオン性界面活性剤として、アルキルエーテル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステルおよび高級脂肪酸が例示される。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンは、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンのいずれであってもよい。
【0036】
具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩類(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-ラウロイルメチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの高級脂肪酸の塩が例示される。好ましいアニオン性界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウムである。
【0037】
水系組成物におけるアニオン性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは3.0質量%以上であり、より好ましくは3.3質量%以上であり、更に好ましくは4.0質量%以上である。アニオン性界面活性剤の含有量の上限値については特段の制約がないが、酸化剤の安定化という見地からは、例えば6.0質量%程度とすることができる。
【0038】
〔(d)両性界面活性剤〕
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0039】
アミノ酸型両性界面活性剤としては、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(ラウロアンホ酢酸Na)、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、パーム油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムなどのグリシン型両性界面活性剤、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミンなどのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤等が例示される。
【0040】
ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤等が例示される。好ましい両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインである。
【0041】
水系組成物における両性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは3.5質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは4.5質量%以上である。両性界面活性剤の含有量の上限値は特段の制約がないが、酸化剤の安定化という見地からは、例えば7.0質量%程度とすることができる。
【0042】
〔質量比(c)/(d)〕
本発明の効果に関連して、水系組成物における(d)成分の含有量に対する(c)成分の含有量の質量比(c)/(d)が0.35~1.50の範囲内であることが好ましく、0.40~1.25の範囲内であることがより好ましく、0.50~1.25の範囲内であることが更に好ましい。
【0043】
〔合計含有量(c)+(d)〕
本発明の効果に関連して、水系組成物における(c)成分の含有量と(d)成分の含有量の合計「(c)+(d)」が、7.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは8.5質量%以上であり、さらに好ましくは9.5質量%以上である。
【0044】
〔水系組成物における任意成分〕
本発明の水系組成物には、上記の(a)~(d)成分以外にも、本発明の効果を助長し、あるいは本発明の効果を阻害しない限りにおいて、以下に例示するような各種の任意成分を配合することができる。
【0045】
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、モノアルキル型、ジアルキル型、トリアルキル型、ベンザルコニウム型、モノアルキルエーテル型等のアルキル4級アンモニウム塩類の他、各種のアミン塩類や塩化ベンゼトニウム等も例示される。
【0046】
具体的には、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12~15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0047】
水系組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量は特に限定されず、例えば0.01~1.0質量%の範囲内で適宜に選択できる。水系組成物の透明性を高める見地からは、0.5質量%以下であることが好ましく、特に0.2質量%以下であることが好ましい。
【0048】
(ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤としては、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEモノ脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、アルキルポリグルコシド類、脂肪酸アルカノールアミド類等が挙げられる。
【0049】
POEアルキルエーテル類の具体例として、POE(2)ラウリルエーテル、POE(7)セチルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(5)ベヘニルエーテル等が例示される。
【0050】
POEソルビタン脂肪酸エステル類の具体例として、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン等が例示される。
【0051】
POEグリセリン脂肪酸エステル類の具体例として、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン等が例示される。
ソルビタン脂肪酸エステル類の具体例として、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ等が例示される。
【0052】
脂肪酸アルカノールアミド類の具体例として、例えばラウリン酸モノエタノールアミド、及びステアリン酸モノエタノールアミド、POEラウリン酸モノエタノールアミド、POEヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、及びポリオキシプロピレンミリスチン酸モノエタノールアミド等が例示される。これらの成分は、その具体例の一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0053】
水系組成物におけるノニオン性界面活性剤の含有量は特に限定されず、例えば0.01~5質量%の範囲内で適宜に選択できる。
(油性成分)
油性成分としては、高級アルコール、油脂、ロウ類、炭化水素、エステル類、シリコーン油等が例示される。
【0054】
高級アルコールとしてはセチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール等が例示され、油脂としてはオリーブ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、ナタネ油、小麦胚芽油、アボカド油、卵黄油等が例示され、ロウ類としてはミツロウ(蜜蝋)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ等が例示され、炭化水素としては流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、α-オレフィンオリゴマー等が例示され、高級脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸等例示され、エステル類としてはアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル等が例示され、シリコーン油としてはジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が例示される。
【0055】
(その他の任意成分)
本発明の水系組成物には、上記の任意成分以外に、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、エタノール等の有機溶剤、ソルビトール、マルトース等の糖類、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液、塩化ジアリルジメチルアンモニウム・ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン化水溶性高分子、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム二水塩、塩化ナトリウム等の無機塩、炭酸水素アンモニウム等のpH調整剤、直接染料、育毛成分、植物抽出物、生薬抽出物、アミノ酸・ペプチド、尿素、ビタミン類、香料、及び紫外線吸収剤等を任意に含有することができる。
【実施例0056】
以下に本発明の実施例を、対応する比較例と共に説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例、比較例によって限定されない。
〔実施例、比較例の調製〕
末尾の表1及び表2に示すように、実施例1~実施例5及び比較例1~比較例4に係る酸化染毛用又は毛髪脱色用の第2剤(即ち、水系組成物)を常法に従って室温下で調製した。剤型は各例によって水性ジェル状ないし水溶液状に相違し、各実施例は水性ジェル状であったが、各比較例は水溶液状又は水溶液に近い水性ジェル状であった。
【0057】
なお、本発明は酸を配合した酸化染毛用等の第2剤における低粘度と経時的粘度低下の防止を目的とする。そのため、これらの第2剤と組み合わせて用いる酸化染毛用等の第1剤の詳細な説明、及び第1剤と第2剤を混合して毛髪に適用する酸化染毛試験等の詳細な説明は省略する。しかし、これらの第2剤を一般的な組成からなる酸化染毛用及び毛髪脱色用の第1剤とそれぞれ組み合わせて用いた酸化染毛試験及び毛髪脱色試験の結果には、問題がなかった。
【0058】
表1、表2において、成分名の欄に示す成分が本発明の(a)~(d)成分のいずれかに該当する場合は、成分記号の欄にその旨を付記した。なお、表2の成分記号の欄に「d比」と記載した成分は、(d)成分に対する比較用の成分であることを示している。各成分について含有量を示す数値は、各実施例又は各比較例に係る第2剤中の当該成分の質量%単位の含有量を意味する。
【0059】
実際の調製では、過酸化水素として35%過酸化水素水を使用し、ヒドロキシエタンジホスホン酸として60%ヒドロキシエタンジホスホン酸液を使用したが、表1、表2ではこれら両成分について純分(正味配合量)を表記した。
【0060】
表1、表2に「c+d」と表記した項は各実施例又は各比較例に係る第2剤中の(c)成分と(d)成分との合計含有量を質量%単位で示したものであり、同じく「c/d」と表記した項は(d)成分の含有量に対する(c)成分の含有量の質量比(c)/(d)を示したものである。
【0061】
〔実施例、比較例の評価〕
表1、表2に示す各実施例及び各比較例に係る第2剤の一部を用い、調製直後に粘度を測定した。粘度測定にはVISCOMETER TV-10粘度計(東機産業株式会社製)を使用し、粘度2500mPa・s以上10000mPa・s未満の場合は、25℃、1分間、回転速度:12rpm、3号ローター使用の条件下で測定した。粘度10000mPa・s以上50000mPa・s未満の場合は、25℃、1分間、回転速度:12rpm、4号ローター使用の条件下で測定した。それらの測定値を表1、表2の「粘度値(実測)」の欄中の「(1)室温・当日」の項に示す。数値の単位はmPa・sである。
【0062】
次に、各実施例及び各比較例に係る第2剤の他の一部を調製後に25℃で24時間保管した後に、同上の測定条件で粘度を測定した。それらの測定値を表1、表2の「粘度値(実測)」の欄中の「(2)室温・1日後」の項に示す。数値の単位はmPa・sである。
【0063】
次に、各実施例及び各比較例に係る第2剤の更に他の一部を調製後に60℃で24時間保管した後に、同上の測定条件で粘度を測定した。それらの測定値を表1、表2の「粘度値(実測)」の欄中の「(3)60℃・1日後」の項に示す。数値の単位はmPa・sである。
【0064】
なお、表2に示す各比較例については、以上の3項目の測定値が全て「-」と表記されているが、これは各比較例に係る第2剤が精製水と同等の低粘度であったため、粘度測定を行えなかったことを示す。
【0065】
表1の「(3)/(2)」の欄は第2剤の経時的な粘度低下の指標となるパラメーターであり、「(2)室温・1日後」の粘度値に対する「(3)60℃・1日後」の粘度値の比率を百分比で表している。
【0066】
〔実施例、比較例の評価基準〕
表1、表2の「粘度評価」、即ち調整直後の第2剤の粘度が低くないことの評価基準は、上記の「(1)室温・当日」が10000mPa・s以上である場合に最高ランクの「5」とし、以下、5000 mPa・s以上で10000mPa・s未満である場合にランク「4」とし、3000 mPa・s以上で5000mPa・s未満である場合にランク「3」、2000 mPa・s以上で3000mPa・s未満である場合にランク「2」、2000mPa・s未満である場合に最低ランクの「1」とした。この評価ランクを表1、表2の「粘度評価」の欄に示す。
【0067】
第2剤の経時的な粘度低下が少ないこと、即ち「粘度安定性」の評価基準は、上記の「(3)/(2)」の欄の数値が95以上である場合に最高ランクの「5」とし、以下、80以上で95未満である場合をランク「4」とし、45以上で80未満である場合をランク「3」とし、20以上で45未満である場合をランク「2」とし、20未満である場合に最低ランクの「1」とした。この評価ランクを表1、表2の「粘度安定性」の欄に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、酸及び酸化剤の配合に起因する酸化染毛剤等の第2剤の低粘度、及びその粘度の経時的低下を防止できるシャンプー剤の基本配合が提供される。