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特開2022-54768画像認識検査装置およびその画像認識検査装置を備えた画像認識検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054768
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】画像認識検査装置およびその画像認識検査装置を備えた画像認識検査システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220331BHJP
   B65F 3/00 20060101ALI20220331BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G06T7/00 660B
B65F3/00 L
B60P3/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161966
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 聡
【テーマコード(参考)】
3E024
5L096
【Fターム(参考)】
3E024AA04
3E024HB02
3E024HD03
3E024HD05
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096CA17
5L096DA02
5L096HA08
(57)【要約】
【課題】安定した環境下で且つ常に同一の検出対象(人物画像)を使用して人物認識システムの検査を行うことを可能にする画像認識検査装置およびその画像認識検査装置を備えた画像認識検査システムを提供する。
【解決手段】人物認識システムが正常に作動するか否かの検査に供される画像認識検査装置200として、箱形の装置本体210に、一方向に開放された窓部213を備えさせ、装置本体210の内面のうちの窓部213に対面するように人物画像表示シート217を配置する。また、装置本体210の内部に、人物画像表示シート217に向けて光を照射するLEDランプ220を備えさせる。これにより、周囲環境の明るさや背景の変化の影響を受けることなく、常に同じ環境下で且つ、同一の検出対象(人物画像)を使用して人物認識システムの検査を行うことができる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体像取得部によって撮像された所定エリア内の画像に基づき当該所定エリア内の人物を認識する人物認識システムが正常に作動するか否かの検査に供される画像認識検査装置であって、
一方向に開放された窓部を備え、前記検査時に当該窓部が前記物体像取得部に対向するように配置される箱形の装置本体と、
前記装置本体の内面のうちの前記窓部に対面する面であって、人物の画像が配置された人物画像表示面と、
前記装置本体の内部に配設され、前記人物画像表示面を明るくする発光手段とを備えていることを特徴とする画像認識検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像認識検査装置において、
前記装置本体は直方体形状の箱体で成り、
前記装置本体の前記窓部は、当該装置本体の一つの面の中央部が開口されて形成されており、
前記発光手段は、前記装置本体の前記一つの面における前記窓部の外側に位置する枠状部分における前記装置本体の内面に配設されていることを特徴とする画像認識検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像認識検査装置において、
前記人物画像表示面には、前記物体像取得部によって撮像された画像内における色の認識を前記人物認識システムに行わせるための色表示部が設けられていることを特徴とする画像認識検査装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の画像認識検査装置を備えた画像認識検査システムであって、
前記検査時に前記物体像取得部によって前記人物画像表示面を撮像することで取得した画像に基づき人物が認識できた場合には、前記人物認識システムが正常に作動していると判定する判定部を備えていることを特徴とする画像認識検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば塵芥収集車等の作業車両における人物認識システムが正常に作動するか否かの検査に供される画像認識検査装置およびその画像認識検査装置を備えた画像認識検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一例として塵芥収集車にあっては、塵芥投入箱の内部に塵芥積込装置が装備されており、塵芥投入箱の塵芥投入口から投入された塵芥を、塵芥積込装置の作動によって塵芥収容箱に積み込むようになっている。また、塵芥投入口に塵芥を投入する作業者(人物)等が、不注意によって塵芥積込装置に巻き込まれることを防止するために、塵芥投入口近傍の人物を認識するようにしている(例えば、特許文献1を参照)。つまり、塵芥投入箱の後方上部に物体像取得部としてのカメラを配設し、塵芥投入口近傍の所定エリアを当該カメラによって撮像する。そして、塵芥積込装置の作動中にカメラによって撮像した画像のデータを画像処理装置に送信し、この画像において予め設定されている侵入禁止エリア内に人物が侵入したと判定すれば、塵芥積込装置の作動を停止させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-193203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで塵芥収集車の生産ラインからの出荷時やメンテナンス時にあっては、前記カメラや前記画像処理装置で構成される人物認識システムが正常に作動する(人物の認識を良好に行う)ことが可能となっているか否かの検査が必要である。
【0005】
従来の検査では、工場内や検査場内等において、塵芥投入口近傍の所定エリア内に人物が立ち、前記カメラによってこの所定エリアを撮像することで、人物認識システムが人物の認識を良好に行えるか否かを検査するようにしていた。例えば、この検査にあっては、人物の認識度合いの指標である人物認識スコアが所定値以上であった場合には検査が合格であると判定するようにしている。
【0006】
しかしながら、従来の検査にあっては、検査の度に周囲環境の明るさや背景が変化してしまう可能性があり、常に同じ環境下で検査が行える保証が無いものであった。また、塵芥投入口近傍の所定エリア内に立つ人物の位置が検査の度に異なる場合があった。このため、人物認識システムが仕様の条件において正常に作動する状況であっても、周囲環境の明るさが不十分であったり、所定エリア内での人物の立つ位置が大きくずれていたりした場合には、人物認識スコアが所定値未満となってしまい検査が不合格(人物認識システムが正常に作動していない)と誤判定されてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安定した環境下で且つ常に同一の条件で人物認識システムの検査を行うことを可能にする画像認識検査装置およびその画像認識検査装置を備えた画像認識検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、物体像取得部によって撮像された所定エリア内の画像に基づき当該所定エリア内の人物を認識する人物認識システムが正常に作動するか否かの検査に供される画像認識検査装置であって、一方向に開放された窓部を備え、前記検査時に当該窓部が前記物体像取得部に対向するように配置される箱形の装置本体と、前記装置本体の内面のうちの前記窓部に対面する面であって、人物の画像が配置された人物画像表示面と、前記装置本体の内部に配設され、前記人物画像表示面を明るくする発光手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、人物認識システムの検査を行うに際しては、装置本体の窓部が物体像取得部に対向するように画像認識検査装置を配置し、この状態で、物体像取得部によって、装置本体の窓部を透して、該装置本体内の人物の画像(人物画像)を撮像し、その撮像した画像に基づき人物が認識できたか否かによって人物認識システムが検査される。
【0010】
そして、本解決手段では、装置本体における窓部に対面する面である人物画像表示面に前記人物の画像が配置されており、この人物画像表示面は、装置本体の内部に配設された発光手段からの光で明るくなっている。装置本体は、窓部においてのみ外部に開放されており、人物認識システムの検査時には、この窓部が物体像取得部に対向しているため、装置本体の内部に外光が入り込むことは殆どない。つまり、人物画像表示面を明るくする光は殆ど発光手段の光となっている。また、人物画像表示面には人物の画像が配置されているので、前記窓部を物体像取得部に対向させた状態にあっては、この人物の画像が、物体像取得部の撮像範囲内の適切な位置(例えば撮像範囲内の中央)に位置されることになる。また、装置本体の窓部の外周縁部を物体像取得部に押し当てることによって、物体像取得部から人物の画像までの距離も一定にすることができる。このため、この検査は、周囲環境の明るさ等の影響を受けることなく、常に同じ環境下で且つ、同一の検出対象(人物画像)を使用して行うことができる。所定エリア内に人物が立って検査を行う従来技術にあっては、人物認識システムが正常に作動する状況であるにも拘わらず、周囲環境の明るさが不十分であったり、所定エリア内での人物の立つ位置が大きくずれていたりした場合には検査が不合格であると誤判定されてしまうことがあったが、本解決手段によれば、安定した環境下で且つ常に同一の検出対象を使用して人物認識システムの検査を行うことが可能であるため、検査の信頼性の向上を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記装置本体は直方体形状の箱体で成り、前記装置本体の前記窓部は、当該装置本体の一つの面の中央部が開口されて形成されており、前記発光手段は、前記装置本体の前記一つの面における前記窓部の外側に位置する枠状部分における前記装置本体の内面に配設されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、人物認識システムの検査を行うに際して、物体像取得部によって人物画像表示面の人物の画像を撮像する際、装置本体の一つの面の枠状部分の存在により、物体像取得部の視野内に発光手段が入ることがない。つまり、物体像取得部が発光手段を撮像してしまうことがない。このため、発光手段からの光が外乱として直接的に物体像取得部に入射されることがなく、人物画像表示面の人物の画像を良好に撮像することができる。これにより、より安定した環境下で人物認識システムの検査を行うことが可能になり、検査の信頼性をいっそう向上させることができる。
【0013】
前記人物画像表示面には、前記物体像取得部によって撮像された画像内における色の認識を前記人物認識システムに行わせるための色表示部が設けられていることが好ましい。
【0014】
前述したように、例えば塵芥収集車にあっては、塵芥積込装置の作動中において物体像取得部によって撮像した画像のデータに基づき、予め設定されている侵入禁止エリア内に人物が侵入した場合には塵芥積込装置の作動を停止させるようにしている。そして、侵入禁止エリア内に人物が侵入したことを判定する手段として、作業者が手や足に装着した装着物の色の特徴データを予め人物認識システムの記憶部に設定保存(登録)しておき、塵芥積込装置の作動中に物体像取得部によって撮像した画像のデータの中から装着物の色の特徴データと同一のデータを抽出して作業者の手や足が認識できるようにしている。このため、人物認識システムの検査にあっては、当該人物認識システムが、物体像取得部によって撮像された画像内における色の認識を正確に行うことが可能となっているか否かの検査も行えるようにしておくことが好ましい。本解決手段では、装置本体の内部に配置された人物画像表示面に、色の認識を人物認識システムに行わせるための色表示部を設けたことにより、この人物認識システムが色の認識を正確に行うことが可能となっているか否かを検査することができる。
【0015】
また、本発明は、前述した画像認識検査装置を備えた画像認識検査システムも技術的思想の範疇である。つまり、この画像認識検査システムは、前記検査時に前記物体像取得部によって前記人物画像表示面を撮像することで取得した画像に基づき人物が認識できた場合には、前記人物認識システムが正常に作動していると判定する判定部を備えていることを特徴とする。
【0016】
前述したように、前記画像認識検査装置を使用した画像認識検査システムにより、周囲環境の明るさ等の影響を受けることなく、常に同じ環境下で且つ、同一の検出対象(人物画像)を使用して、人物認識システムが正常に作動するか否かの検査を行うことができる。これにより、検査の信頼性の高い画像認識検査システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、人物認識システムが正常に作動するか否かの検査に供される画像認識検査装置として、箱形の装置本体に、一方向に開放された窓部を備えさせ、装置本体の内面のうちの前記窓部に対面する面に人物画像表示面を配置し、前記装置本体の内部に前記人物画像表示面を明るくする発光手段を備えさせている。これにより、安定した環境下で且つ常に同一の検出対象(人物画像)を使用して人物認識システムの検査を行うことが可能である。このため、人物認識システムの検査の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る塵芥収集車を示す側面図である。
図2図1の塵芥収集車の後面図である。
図3】塵芥収集車に装備された塵芥積込装置の作動の説明図である。
図4図3のX1線矢視図である。
図5】カメラユニットを示す斜視図である。
図6】塵芥収集車の塵芥積込装置の油圧回路図である。
図7】塵芥収集車の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図8】カメラによって撮像された画像の一例であって、塵芥の積み込み時を示す図である。
図9】画像認識検査装置の分解斜視図である。
図10】画像認識検査装置の正面図である。
図11図10におけるXI-XI線に沿った断面図である。
図12】画像認識検査装置の背面図である。
図13】システム検査時を説明するための装置構成を示すブロック図である。
図14】システム検査時における画像認識検査装置の配置状態を示す斜視図である。
図15】システム検査時の手順を示すフローチャート図である。
図16】システム検査時におけるパソコン上の画面の一例を示す図である。
図17】画像処理ユニットが実行する人物認識処理の一例を示すフローチャート図である。
図18】画像処理ユニットが実行する人物認識処理の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る画像認識検査装置および画像認識検査システムを塵芥収集車に適用した実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、塵芥収集車の前後左右を単に「前後左右」と言うこともある。
【0020】
画像認識検査装置および画像認識検査システムについて説明する前に、これらが適用される塵芥収集車について説明する。
【0021】
-塵芥収集車の概略構成-
図1図2は、本発明の実施形態に係る塵芥収集車100を示している。塵芥収集車100は、車台1上に塵芥収容箱2および塵芥投入箱3が設けられており、塵芥収容箱2の後方の開口部と塵芥投入箱3の前面の開口部とが連通されている。また、塵芥投入箱3は、その上部に設けられた左右方向の枢軸3aによって塵芥収容箱2に対して軸支されており、左右一対の傾動シリンダ(図示省略)によって傾動されるようになっている。
【0022】
また、塵芥投入箱3の背面における下寄りの部位には、塵芥G(図8を参照)を投入するための略矩形状の塵芥投入口4が開口され、昇降可能なテールゲート5によって、塵芥投入口4が開閉されるようになっている。このテールゲート5には、開閉操作時に作業者が把持するハンドル51,51が設けられている。塵芥投入口4の左側方には、塵芥積込装置の作動(各種アクチュエータの作動)等の操作のためのスイッチボックス6が設けられている。また、塵芥投入口4の上方位置には、塵芥投入口4およびその近傍のエリアを撮像するようにカメラユニット7が配設されている。カメラユニット7は、塵芥投入口4より上方に配設された塵芥投入箱3の傾斜後面部(湾曲状の後面部)3bから後方に突出する支持部材80を介して、塵芥投入箱3の上部に固定されている。
【0023】
より具体的に説明すると、図1図5に示すように、支持部材80は、傾斜後面部3bの左右両端部に基端部を有する枠状となっている。カメラユニット7は、支持部材80において塵芥投入箱3の左右中央部となる位置に固定されている。カメラユニット7は、塵芥投入口4の近傍の物体の物体像を動画で取得可能な物体像取得部としてのカメラ71と、検出ランプ73と、作動中ランプ72とを有している。カメラ71は、塵芥Gの積込作業中に塵芥投入口4の近傍の人物が危険なエリアにいるかどうかを画像処理によって判定するために設けられている。また、カメラ71は、車両後退時に作業者が車両後方を監視するバックカメラとしても使用される。このカメラ71は、CCD撮像素子やCMOS撮像素子を有する単眼カメラである。カメラ71によって撮像された画像(動画)のデータは、後述する画像処理ユニット9の記憶部(メモリ)M(図7を参照)に保存されるようになっている。
【0024】
カメラ71は、塵芥投入箱3の後方上部に所定の取付角度で取り付けられている。具体的には、カメラ71は、カメラユニット7の左右中央部に設けられた凹部74の中に取付ブラケット75を介して取り付けられている。カメラ71は、撮像レンズ71aを有しており、この撮像レンズ71aが斜め下方に向くようにしてカメラユニット7の取付ブラケット75に対し水平軸回りに上下回動調整可能に取り付けられている。カメラユニット7の凹部74の左右両側には、水平面に対して後方上傾状の(車両後方に向かうにつれて上方に傾斜する)固定面7aが設けられている。左側の固定面7aには作動中ランプ72が下向きに取り付けられている。また、右側の固定面7aには検出ランプ73が下向きに取り付けられている。つまり、作動中ランプ72と検出ランプ73は、カメラ71の撮像レンズ71aの近傍となるカメラ71の左右両側に設けられている。
【0025】
次に、図3に示すように、塵芥投入箱3の内部には、投入された塵芥Gを塵芥収容箱2に積み込む塵芥積込装置(可動装置)が装備されている。この塵芥積込装置によって、塵芥投入箱3に投入された塵芥Gを、塵芥投入箱3の前方に連設された塵芥収容箱2へ押し込むようになっている。塵芥収容箱2には、収容された塵芥Gを排出する図示省略の塵芥排出装置が設けられている。この塵芥排出装置としては、例えば塵芥収容箱2を、車台1と塵芥収容箱2との間に介設されたダンプシリンダによって傾動させて塵芥Gを排出したり、塵芥収容箱2の内部に設けた排出板を排出シリンダにより塵芥収容箱2の後方に移動させて塵芥Gを排出したりするものが考えられる。
【0026】
次に、本実施形態の塵芥積込装置について具体的に説明する。本実施形態の塵芥積込装置は、回転板(積込部材)10の回転によって塵芥Gを掻き上げるとともに、押込板20によって塵芥Gを塵芥収容箱2内へと押し込む、いわゆる回転板式の塵芥積込装置として構成されている。塵芥投入箱3内の下部においてその幅方向に延びるように回転軸11が架設され、これに回転板10の基端側が固定されている。
【0027】
図示の例では、回転軸11の端部に減速機構12を介して正逆回転可能な油圧モータ13が連結されている。この油圧モータ13の回転が減速機構12によりトルクアップされて回転軸11に伝達され、この回転軸11と一体に回転板10が回転されることで、その先端部は、断面略半円弧状に形成された塵芥投入箱3の底壁に沿って前後方向に移動するようになる。
【0028】
一方、押込板20は、回転板10の上方において塵芥投入箱3の幅方向全体に亘って設けられ、その上部に設けられた左右方向の揺動軸21の周りに前後方向に揺動自在に支持されている。また、押込板20には、揺動軸21よりも上方に延びる延設部22が設けられ、この延設部22とその前方の支持ピン23との間に押込シリンダ24が架設されており、その伸縮作動によって押込板20を前後方向に揺動させるようになっている。
【0029】
具体的には、図3に実線で示すように、押込板20が塵芥収容箱2の側に最も揺動した位置(前進限界位置)にあるときは、この押込板20に干渉することなく回転板10が上方に回動するようになり、これに遅れて押込板20が塵芥投入口4側へ揺動する。そして、押込板20が塵芥投入口4側に最も揺動し、図3に仮想線で示す後退限界位置に達した後も、回転板10の回動は継続される。
【0030】
このようにして回転する回転板10は、塵芥Gを塵芥収容箱2側に掻き込んで、図3に実線で示すように、前方の塵芥収容箱2側に延びる設定停止位置に一旦、停止する。そうすると、今度は押込板20が塵芥収容箱2側に揺動して、回転板10上の塵芥Gを塵芥収容箱2に押し込んでいく。そして、押込板20が再び前進限界位置に達すると、再び回転板10が上方へ回動するようになる。
【0031】
このように互いに同期して回転板10の回転および押込板20の揺動が繰り返されることによって、塵芥投入箱3に投入された塵芥Gが連続的に塵芥収容箱2に積み込まれる塵芥積込動作が行われる。このように回転板10および押込板20を作動させるための油圧回路および制御系の構成については後述する。
【0032】
塵芥投入箱3の内部には、回転板10および押込板20の位置を検出するためのスイッチLS1~LS4が設けられている。具体的には、図3に示すように、押込板20が前進限界位置または後退限界位置にあるときにそれぞれONになるスイッチLS1,LS2と、回転板10が設定停止位置にあるときにONになるスイッチLS3と、その設定停止位置から回転板10が正の向き(図3の時計回り)に所定角度回転したときにONになり、更に所定角度回転したときにOFFになるスイッチLS4とが設けられている。
【0033】
なお、スイッチLS1,LS2は、押込板20の揺動軸21の端部に設けられたドグ(図示省略)を検出するようになっており、スイッチLS3,LS4は、回転板10の回転軸11の端部に設けられたドグ(図示省略)を検出するようになっている。また、これらのスイッチLS1~LS4としては、例えばリミットスイッチ、光電スイッチ、近接スイッチ等を用いることができる。また、スイッチLS4は、図3にハッチングで示すように、回転板10が塵芥投入口4の前縁部(上縁部)4aの真下から、その後方へ回転しつつ下降して塵芥投入口4の後縁部(下縁部)4bに最も近接するまでの角度範囲Zを検出するもので、回転板10が塵芥投入口4の近傍にて作動していることを検出するためのセンサである。
【0034】
更に、図1図2に示すように、塵芥投入口4の近傍には、塵芥積込装置の作動を停止させるための緊急停止スイッチ60,61や、緊急停止プレート62等が配設されている。塵芥投入口4の左側に設けられたスイッチボックス6の側面には、塵芥積込装置をサイクル作動させるための積込装置操作スイッチ64と塵芥積込装置を緊急停止させるための緊急停止スイッチ60とが配設され、また、塵芥投入口4の右側に緊急停止スイッチ61が配設されている。緊急停止プレート62は、塵芥投入口4の下方においてスイッチSW2(図3を参照)をON/OFFするように配設されている。また、図2に示すように、スイッチボックス6の後面には、停止解除スイッチ63が配設されている。この停止解除スイッチ63は、後述する画像解析に基づく塵芥積込装置の塵芥積込動作の緊急停止を一時的に解除する際に操作される。
【0035】
-塵芥積込装置の制御系-
次に、図6および図7を参照して、塵芥積込装置を作動させるための制御系について説明する。この制御系は、塵芥積込装置の油圧モータ13や、押込シリンダ24等に供給する油圧を制御する油圧回路と、この油圧回路に設けられた電磁制御弁V1,V2に制御信号を出力する架装本体制御部PLC(プログラマブル ロジック コントローラ)と、カメラ71からの画像データに基づいて人物認識処理を行う画像処理ユニット9とを備えている。なお、架装本体制御部PLCは、塵芥積込装置の駆動だけでなく塵芥排出装置の駆動も制御するようになっている。また、画像処理ユニット9と架装本体制御部PLCとで塵芥収集車100の制御装置を構成している。
【0036】
まず、図6を参照して油圧回路について説明する。この油圧回路は、油圧ポンプPと、オイルリザーバTと、押込シリンダ24を制御するための電磁制御弁V1と、油圧モータ13を制御するための電磁制御弁V2とを備えている。なお、油圧ポンプPには、車両走行駆動源としてのエンジン(図示省略)の動力を取り出すPTO(パワー テイク オフ)によって駆動力が伝達されるようになっている。
【0037】
一例として、電磁制御弁V1,V2は、何れも6ポート3位置の電磁式の方向切換弁からなる。電磁制御弁V1は、ソレノイドSOLaおよびソレノイドSOLbと図示省略のスプールとを有している。電磁制御弁V1は、架装本体制御部PLCによりソレノイドSOLaが励磁されると第1連通位置(図6の上位置)に切り換わって、油圧ポンプPからの作動油を一対の押込シリンダ24のロッド側油室に供給する。一方、電磁制御弁V1は、架装本体制御部PLCによりソレノイドSOLbが励磁されると第2連通位置(図6の下位置)に切り換わって、作動油をヘッド側油室に供給する。
【0038】
そして、電磁制御弁V1から作動油がヘッド側油室に供給されると、一対の押込シリンダ24が伸長作動して押込板20を前方に揺動させる。一方、作動油がロッド側油室に供給されると、一対の押込シリンダ24は収縮作動して、押込板20を後方に揺動させる。また、何れのソレノイドSOLa,SOLbも励磁されていないときに、電磁制御弁V1は中立位置(図6の中央位置)に復帰するようになる。
【0039】
電磁制御弁V2は、ソレノイドSOLcおよびソレノイドSOLdと図示省略のスプールとを有している。電磁制御弁V2は、ソレノイドSOLcが励磁されると第1連通位置(図6の下位置)に切り換わって、作動油を油圧モータ13の正転側油室に供給し、当該油圧モータ13を正転作動させる他、押込シリンダ24も伸縮作動させることができる。一方、ソレノイドSOLdが励磁されると電磁制御弁V2は第2連通位置(図6の上位置)に切り換わって、作動油を油圧モータ13の逆転側油室に供給し、当該油圧モータ13を逆転作動させる。
【0040】
また、何れのソレノイドSOLc,SOLdも励磁されていないときに、電磁制御弁V2は中立位置(図6の中央位置)に復帰するようになる。電磁制御弁V1,V2の両方が中立位置にあるとき、作動油はオイルリザーバTへ還流するようになる。なお、図示の油圧回路において、符号V3はチェック弁であり、また、符号V4は、油圧ポンプPの吐出圧の上限を設定するためのリリーフ弁である。
【0041】
次に、図7を参照して塵芥収集車100の制御系の概略構成について説明する。この塵芥収集車100の制御系としては、前記架装本体制御部PLCと前記画像処理ユニット9とを備えている。これら架装本体制御部PLCと画像処理ユニット9とは制御信号等の送受信が可能に信号線によって接続されている。
【0042】
架装本体制御部PLCには、PTOスイッチ(動力源スイッチ)SWP、前記積込装置操作スイッチ64、排出装置操作スイッチ65、積込・排出切換スイッチ66、積込装置用のアクチュエータ13,24およびセンサ(スイッチ)LS1~LS4、排出装置用のアクチュエータ30およびセンサ31、積込装置用の制御弁(電磁制御弁)V1,V2のソレノイドSOLa~SOLd、排出装置用の制御弁V5のソレノイドSOLeが信号線によって接続されている。
【0043】
PTOスイッチSWPは、図示しないイグニッションがONになっている上でONとなることで図示しないリレーコイルを励磁させて該リレーコイルの接点を閉じ、これにより、架装本体制御部PLCに電力を供給し、該架装本体制御部PLCを作動可能な状態にする。
【0044】
積込装置操作スイッチ64は、ON操作されることにより、架装本体制御部PLCに対して塵芥積込装置を作動させるための信号を出力し、塵芥積込装置にサイクル作動(塵芥積込動作)を行わせる。
【0045】
排出装置操作スイッチ65は、ON操作されることにより、架装本体制御部PLCに対して塵芥排出装置を作動させるための信号を出力し、塵芥収容箱2に収容された塵芥Gを排出するための動作(塵芥排出動作)を行わせる。
【0046】
積込・排出切換スイッチ66は、前述した塵芥積込装置による塵芥積込動作と、塵芥排出装置による塵芥排出動作とを切り換えるためのスイッチである。
【0047】
積込装置用のアクチュエータ13,24は、塵芥積込装置に塵芥積込動作を行わせるためのアクチュエータであって、前述した油圧モータ13および押込シリンダ24が相当する。
【0048】
積込装置用のセンサ(スイッチ)LS1~LS4は、前記回転板10および押込板20の位置を検出するためのセンサであって、前述したスイッチLS1~LS4が相当する。
【0049】
排出装置用のアクチュエータ30は、塵芥排出装置に塵芥排出動作を行わせるためのアクチュエータであって、前述したダンプシリンダや排出シリンダが相当する。
【0050】
排出装置用のセンサ31は、塵芥排出装置が塵芥排出動作を行う際におけるアクチュエータ30の伸縮量を検知する。
【0051】
積込装置用の制御弁V1,V2は、油圧モータ13や押込シリンダ24に供給する油圧を調整するものであって、前述した電磁制御弁V1,V2が相当する。
【0052】
積込装置用のソレノイドSOLa~SOLdは、積込装置用の制御弁V1,V2を切り換えるためのものであり、前述したソレノイドSOLa~SOLdが相当する。
【0053】
排出装置用の制御弁V5は、排出装置用のアクチュエータ30に供給する油圧を調整するためのものである。
【0054】
排出装置用のソレノイドSOLeは、排出装置用の制御弁V5を切り換えるためのものである。
【0055】
前記架装本体制御部PLCは、各種スイッチSWP,64,65,66やセンサLS1~LS4,31等から入力される信号に基づいて、予め設定された手順に従い油圧モータ13や押込シリンダ24等を作動させたり、ダンプシリンダや排出シリンダ等を作動させたりするべく、対応するソレノイドSOLa~SOLeに制御信号を出力するようにプログラムされている。
【0056】
例えば塵芥積込装置が塵芥積込動作を行うときには、PTOスイッチSWPが閉じられて、リレーコイルの接点が閉じられ、架装本体制御部PLCが作動可能な状態になって適宜、ソレノイドSOLa~SOLdに制御信号を出力するようになる。
【0057】
この制御信号を受けてソレノイドSOLa~SOLdが励磁され、電磁制御弁V1,V2のスプール位置が適宜、切り換えられることで、油圧モータ13や押込シリンダ24などに作動油圧が供給される。これにより、油圧モータ13や押込シリンダ24などがそれぞれ作動し、図3を参照して前述したように、回転板10の回転および押込板20の揺動が互いに同期して繰り返されることになる。
【0058】
詳しくは、まず図3に実線で示すように押込板20が前進限界位置にあって、スイッチLS1からON信号が出力されるとともに、回転板10が設定停止位置にあって、スイッチLS3からもON信号が出力されるときに、積込装置操作スイッチ64の信号を受けた架装本体制御部PLCから制御信号が出力され、電磁制御弁V2が第1連通位置に切り換えられて、油圧モータ13が正転作動を開始する。これにより、回転板10は上方に回動し始める。
【0059】
そして、所定の期間が経過すると架装本体制御部PLCから電磁制御弁V1のソレノイドSOLaへ制御信号が出力されて、電磁制御弁V1が第1連通位置に切り換えられ、押込シリンダ24が収縮作動を開始する。これにより押込板20は後方の塵芥投入口4側へ揺動するようになり、この押込板20が後退限界位置に達すると、スイッチLS2からON信号が出力される。
【0060】
これを受けて架装本体制御部PLCがソレノイドSOLaへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V1が中立位置に復帰し、押込板20の揺動が停止する。また、そうして押込板20が揺動している間も回転板10の回動は継続しており、塵芥Gを塵芥収容箱2側に掻き込んでゆくが、こうして回動する回転板10が設定停止位置に至り、スイッチLS3からON信号が出力される。
【0061】
これを受けて架装本体制御部PLCが、電磁制御弁V2のソレノイドSOLcへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V2が中立位置に復帰し、油圧モータ13の回動が停止する。また、架装本体制御部PLCは、電磁制御弁V1のソレノイドSOLbへ制御信号を出力し、電磁制御弁V1が第2連通位置に切り換えられて、押込シリンダ24が伸長作動を開始することで、押込板20が前方へ揺動し始める。
【0062】
こうして前方の塵芥収容箱2側に揺動する押込板20が、回転板10上の塵芥Gを塵芥収容箱2に押し込んでゆき、前進限界位置に達すれば、スイッチLS1からON信号が出力される。これを受けて架装本体制御部PLCがソレノイドSOLbへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V1が中立位置に復帰して、押込シリンダ24の伸長作動、即ち、押込板20の前方への揺動が停止し、一連の動作が終了する。
【0063】
-画像処理の制御系-
ところで、前記のように塵芥積込装置が塵芥積込動作を行っているときには、塵芥投入口4に塵芥Gを投入している作業者(人物)が不注意から回転板10などに巻き込まれる虞がある。そこで、本実施形態の塵芥収集車100においては、塵芥投入口4の近傍を撮像するようにカメラ71を配設し、画像処理によって塵芥投入口4の近傍の人物が危険なエリアにいると判定すれば、直ちに塵芥積込装置の作動を停止させるようにしている。
【0064】
即ち、図1図3に示すように、塵芥投入箱3の背面の上部、即ち塵芥投入口4の上方にはカメラ71が配設され、その撮像レンズ71aが後方の斜め下に向けられている。このカメラ71は、図8に一例を示すように塵芥投入口4およびその後方(近傍)の所定範囲を撮像するようになっている。
【0065】
塵芥投入口4の後方を撮像するためにカメラ71の撮像レンズ71aの光軸は、鉛直下向きから後方に振り向けられて、塵芥投入口4の近傍の人物Hを上方から撮像するようになっている。
【0066】
そして、図7に示すようにカメラ71は、画像分配機77を介して、画像処理ユニット9(画像処理装置であり、例えば図1に破線で示すように運転席周辺に配設されている)および表示部(モニタ)93に接続されている。この表示部93は、塵芥収集車100を運転する作業者Hにカメラ71の画像を提供するものである。また、この画像に基づいて画像処理ユニット9では、作業者Hなどが危険なエリアにいるか否か判定される。
【0067】
即ち、図8には、塵芥投入口4の近傍に立った作業者(人物)Hが両腕を前方に伸ばして、ごみ袋(塵芥)Gを積み込む様子が示されており、この人物Hが危険なエリアにいるか否かを画像処理ユニット9において判定するようになっている。本実施形態にあっては、作業者Hの頭部や手が危険なエリアに入っているか否かを画像処理ユニット9において判定する。なお、この危険なエリアの詳細については後述する。なお、本実施形態では、作業者Hの手が危険なエリアに入っているか否かについては、一般的に作業者Hが手袋GLを装着していることに鑑み、この手袋GLの色を、色設定モードによって予め画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存(登録)しておき、塵芥積込装置の作動中にカメラ71によって撮像した画像のデータの中から手袋GLの色の特徴データ(色特徴データ)と同一のデータ(同一の色データ)を抽出して作業者Hを認識(作業者Hの手を認識)することができるようにしている。
【0068】
図7に模式的に示すように、画像処理ユニット9には、カメラ71からの画像データを入力して、以下に説明する画像処理を行う画像処理部DSPが設けられている。この画像処理部DSPは、画像処理ロジックを高速で行う集積回路であり、例えば図17のフローチャートに示すような画像処理(人物認識処理)のルーチンを実行する。より具体的に、この画像処理部DSPは、後述する制御部(中央処理部)CPUとともに画像解析部に相当する。画像処理部DSPおよび制御部CPUは、カメラ71によって取得された動画のデータに基づいて、記憶部Mに保存された辞書データや前述した色特徴データを参照することによって、塵芥投入口4の近傍の危険なエリアに人物Hが入っているか(危険なエリアに人物Hの頭部や手が入っているか)否かを画像解析によって判定する。
【0069】
画像処理ユニット9には、所定のプログラムを実行して各種の制御を行う制御部CPU、この制御部CPUや前記画像処理部DSPにおいて使用されるデータを記憶する記憶部M、画像処理ユニット9の作動と停止とを切り換える作動スイッチSW4なども設けられている。そして、画像処理部DSPにおいて人物Hが危険なエリアの外にいる(作業者Hの頭部や手が危険なエリアの外にある)と判定されている間、制御部CPUが人物安全信号を架装本体制御部PLCへ出力している。一方で、画像処理部DSPにおいて人物Hが危険なエリアにいる(人物Hの頭部や手が危険なエリアに入っている)と判定すれば、制御部CPUが人物安全信号を架装本体制御部PLCへ出力しないようになっている。画像処理ユニット9の制御部CPUから人物安全信号が出力されなくなると、架装本体制御部PLCは、人物安全信号の入力の遮断をトリガにして塵芥積込装置の作動を停止させることとなる。また、画像処理ユニット9には、パソコン等の端末機器をUSBケーブル等で有線接続するための外部機器接続端子ETや、色設定モードのONとOFFを切り換えるための色設定モードスイッチ91も設けられている。
【0070】
-画像認識検査装置-
ところで塵芥収集車100の生産ラインからの出荷時やメンテナンス時にあっては、カメラ71や画像処理ユニット9で構成される人物認識システムが正常に作動する(人物の認識を良好に行う)ことが可能となっているか否かの検査(システム検査)が必要である。
【0071】
従来の検査では、工場内や検査場内等において、塵芥投入口近傍の所定エリア内に人物が立ち、前記カメラによってこの所定エリアを撮像することで、人物認識システムが人物の認識を良好に行えるか否かを検査するようにしていた。例えば、この検査にあっては、人物の認識度合いの指標である人物認識スコアが所定値以上であった場合には検査が合格であると判定するようにしている。しかしながら、従来の検査にあっては、検査の度に周囲環境の明るさや背景が変化してしまう可能性があり、常に同じ環境下で検査が行える保証が無いものであった。また、塵芥投入口近傍の所定エリア内に立つ人物の位置が検査の度に異なる場合があった。このため、人物認識システムが仕様の条件において正常に作動する状況であっても、周囲環境の明るさが不十分であったり、所定エリア内での人物の立つ位置が大きくずれていたりした場合には、人物認識スコアが所定値未満となってしまい検査が不合格(人物認識システムが正常に作動していない)と誤判定されてしまう虞があった。
【0072】
そこで、本実施形態では、安定した環境下で且つ常に同一の検出対象(人物画像)を使用して人物認識システムの検査を行うことを可能にすることを目的として、人物認識システムの検査に供される画像認識検査装置を使用するようにしている。以下、この画像認識検査装置について具体的に説明する。
【0073】
図9は画像認識検査装置200の分解斜視図である。図10は画像認識検査装置200の正面図である。図11図10におけるXI-XI線に沿った断面図である。図12は画像認識検査装置200の背面図である。
【0074】
これらの図に示すように、画像認識検査装置200は、略直方体形状の箱体で成る装置本体210を備えている。この装置本体210は、例えば樹脂製であって、本体ケース211と本体カバー212とが一体的に組み付けられて構成されている。以下の説明では、図11における右側(後述する窓部213が設けられている側)を装置本体210の前側と呼び、図11における左側(本体カバー212が位置する側)を装置本体210の後側と呼ぶこととする。
【0075】
本体ケース211は、前板211a、上板211b、下板211c、左右の各側板211d,211eを備えている。そして、この本体ケース211の後側は開放されており、この開放部分に本体カバー212が組み付けられて、本体ケース211の後側が閉塞されている。
【0076】
また、前板211aの中央部分には矩形状の窓部(開口)213が形成されている。この窓部213の寸法の一例としては、横方向(水平方向)の長さ寸法が本体ケース211の横方向の長さ寸法の4/5程度に設定され、縦方向(鉛直方向)の長さ寸法が本体ケース211の縦方向の長さ寸法の2/3程度に設定されている。これらの寸法はこれに限定されるものではない。前述したように、窓部213は前板211aの中央部分に形成されているため、この前板211aにあっては窓部213の外側の領域であって当該窓部213を囲む枠状部分214となっている。
【0077】
また、窓部213の外縁に連続して本体ケース211の前側に向かって延在する四角筒形状のフード215が設けられている。このフード215の延在方向の寸法は、本体ケース211の前後方向の長さ寸法の1/4程度に設定されている。この寸法はこれに限定されるものではない。
【0078】
図10図12に示すように、本体ケース211の内部における後側の各四隅部分には、本体カバー212が組み付けられる際に当該本体カバー212の各角部を支持する取付座部216,216,…が設けられている。この取付座部216の内部には、本体ケース211の後側に本体カバー212を組み付ける際にボルトBがねじ込まれるナットNが埋め込まれている。これらナットNは、雌ねじ孔が本体ケース211の前後方向に沿って延在するように取付座部216の内部に埋め込まれている。そして、本体ケース211に本体カバー212が組み付けられる際には、図9および図11に示すように、本体カバー212の各角部に形成されたボルト挿通孔212aと、各取付座部216の内部に埋め込まれたナットNとが位置合わせされ、これらボルト挿通孔212aとナットNに亘ってボルトBが挿通されてナットNにねじ込まれる。
【0079】
そして、この画像認識検査装置200の特徴としては、図9および図11に示すように、前述した如く組み付けられる本体ケース211と本体カバー212との間に、人物の画像が描かれた人物画像表示シート217が挟み込まれている点にある。この人物画像表示シート217は、外形形状が本体カバー212の外形形状と同一または僅かに小さく設定された例えば紙製のシートであって、その中央部に人物の写真(人物画像H1)が印刷されたものである。この人物画像表示シート217に印刷されている人物画像H1としては、塵芥投入口4の後方(近傍)の所定範囲に人物が立った状態でカメラ71によって当該人物を撮像した際の画像(人物の頭部周辺を斜め上方から撮像した画像)に近似した画像となっている。
【0080】
また、本体ケース211に本体カバー212を組み付ける際に、この人物画像表示シート217を、本体ケース211と本体カバー212との間に挟み込んでおくことにより、本体ケース211と本体カバー212とが一体的に組み付けられた状態では、人物画像表示シート217の前面の各角部分が各取付座部216,216,…に当接し、人物画像表示シート217の後面の全面が本体カバー212の前面に当接することになる。これにより、人物画像表示シート217の各角部分が、本体ケース211の取付座部216と本体カバー212の前面の各角部分との間に挟み込まれた状態で、当該人物画像表示シート217は本体カバー212の前面に重ね合わされた状態で配設され、この状態が保持されることになる。この状態では、人物画像表示シート217の前面が前記窓部213に対向することになり、この窓部213を透して、画像認識検査装置200の前側から人物画像表示シート217上の人物画像H1を見ることができる状態となる(図10を参照)。このため、この人物画像表示シート217の前面が本発明でいう「人物の画像が配置された人物画像表示面」となっている。
【0081】
また、人物画像表示シート217上であって、前記人物画像H1の表示領域とは異なる領域には、作業者Hが装着する可能性のある手袋GLの色と同じ色の色表示部C1,C2,C3が描かれている。例えば、作業者Hが装着する可能性のある手袋GLの色として、赤色、青色、緑色が想定される場合、これらの色で四角形状の色表示部C1,C2,C3が人物画像表示シート217上に描かれている。
【0082】
また、本体ケース211の前板211aにおける前記枠状部分214の内側の面には、人物画像表示シート217の前面を明るくするための発光手段としての複数のLED(Light Emitting Diode)ランプ220,220,…が配設されている。具体的には、前板211aの枠状部分214の内側の面(人物画像表示シート217に対向する内面)における四隅部分それぞれにLEDランプ220が配設されている。また、このLEDランプ220は、後方に向けて(人物画像表示シート217に向けて)光を照射するように配設されている。このため、各LEDランプ220,220,…が点灯されると、人物画像表示シート217の前面に印刷されている人物画像H1および色表示部C1,C2,C3に向けて光が照射されることになる。なお、LEDランプ220は、前記枠状部分214の内側の面全体にわたって複数設けるようにしてもよい。
【0083】
LEDランプ220,220,…への電力の供給は、各LEDランプ220,220,…から延びる図示しない電源線が本体ケース211の下板211cから引き出されて、例えば画像処理ユニット9やパソコン(システム検査時に画像処理ユニット9に接続されるパソコン)等に対するUSB接続による電力の供給(USBバスパワーによる電力の供給)が可能な構成とされている。また、モバイルバッテリによる電力の供給が行われるようになっていてもよい。
【0084】
-画像認識検査-
次に、前記画像認識検査装置200を使用した画像認識検査(システム検査)について説明する。このシステム検査は、塵芥収集車100の生産ラインからの出荷時やメンテナンス時に行われるものである。
【0085】
図13は、システム検査時を説明するための装置構成(画像処理ユニット9の外観等)を示すブロック図である。システム検査の概要としては、図13に示すように、画像処理ユニット9に備えられた外部機器接続端子ETにパソコンPCが接続(例えばUSB接続)されると共に、図14に示すように、作業者が画像認識検査装置200を把持して窓部213をカメラユニット7のカメラ71に対向させ(画像認識検査装置200のフード215をカメラユニット7に押し当て)、人物画像表示シート217の前面に印刷されている人物画像H1および色表示部C1,C2,C3がカメラ71によって撮像されることで行われる。これにより、人物画像H1を撮像することによる人物の認識、色表示部C1,C2,C3を撮像することによる色の認識が正常に行える状態となっているか否かの検査が行われる。
【0086】
前記パソコンPCには、検査用のアプリケーションソフトを立ち上げるための操作等を行う入力部300(キーボードやマウス)が設けられ、また、システム検査による検査の合格または不合格の判定を行う判定部310、検査結果を表示する表示部320(モニタ)が備えられている。判定部310での判定動作の一例としては、人物の認識度合いの指標である人物認識スコアを算出し、この人物認識スコアが表示部320上に検査結果と共に表示することが挙げられる。このようにして画像処理ユニット9にパソコンPCが接続されることにより、前記画像認識検査装置200、画像処理ユニット9およびパソコンPCによって本発明に係る画像認識検査システムが構築されることになる。以下、システム検査の具体的な手順について説明する。
【0087】
図15は、システム検査時の手順を示すフローチャートである。この図15に示すように、ステップS1で塵芥収集車(車両)100のACC(アクセサリ)電源がONされる。この際、未だ、PTOスイッチSWPはOFF状態である。そして、ステップS2で、パソコンPCに予めインストールされている検査用のアプリケーションソフトを立ち上げる。
【0088】
ステップS3でパソコンPCと画像処理ユニット9とをケーブル接続し、これにより、画像処理ユニット9はメンテナンスモードとなる。
【0089】
この状態でカメラ71の撮像(画像認識検査装置200の窓部213をカメラ71に対向させていない状態での撮像)が行われる。この際、運転席周辺に配設されている表示部93の画像を確認しながら、取付ブラケット75に対してカメラ71を水平軸回りに回動させることでカメラ71の傾きを調整する(ステップS4)。
【0090】
そして、ステップS5で、画像認識検査装置200の各LEDランプ220,220,…を点灯させ、ステップS6で、図14に示すように、画像認識検査装置200の窓部213をカメラ71に対向させることにより、人物画像表示シート217の前面に印刷されている人物画像H1および色表示部C1,C2,C3をカメラ71によって撮像する。このようにして画像認識検査装置200の窓部213をカメラ71に対向させた場合、装置本体210の内部に外光が入り込むことは殆どない。つまり、人物画像表示シート217の前面の人物画像H1および色表示部C1,C2,C3を明るくしている光は殆どLEDランプ220から照射される光となっている。また、この状態で、カメラ71によって撮像された人物画像H1は、カメラ71の撮像範囲内の略中央に位置することになる。また、画像認識検査装置200のフード215をカメラユニット7に押し当てることによって、カメラ71から人物画像H1までの距離も一定にすることができる。
【0091】
このようにしてカメラ71によって人物画像H1および色表示部C1,C2,C3が撮像されると、前記アプリケーションソフトによってパソコンPCの表示部上に、カメラ71が撮像した画像と共に、検査結果が表示され、これによって検査結果の確認が可能となる(ステップS7)。
【0092】
図16は、このパソコンPCの表示部320上に表示された画像の一例である。中央部にカメラ71が撮像した画像Iが表示されている。また、人物Hの頭部周辺と認識された画像の周囲が四角形状の枠Lで囲まれ、その枠Lの左下部分に人物認識スコアが表示されている。この人物認識スコアは、所定数値以上であった場合には人物Hであると判断できるものであり、図16に示すものでは人物認識スコアが「82」となっており、高い精度で人物Hであると認識できた状態を表している。
【0093】
そして、このシステム検査によって人物認識システムが正常に作動していることが確認された場合には、塵芥収集車100が生産ラインから出荷される、または、メンテナンスが終了されることになる。一方、このシステム検査によって人物認識システムが正常に作動していないと判断された場合には、カメラ71や画像処理ユニット9に不具合(故障等)が生じていると判断でき、人物認識システムのメンテナンス作業に移ることになる。
【0094】
-画像処理のルーチン-
次に、人物認識システムが正常に作動していることが確認された後に、ゴミ収集現場において実施される画像処理のルーチン(画像処理ユニット9における画像処理のルーチン)について説明する。この画像処理のルーチンは、人物Hの頭部の形状認識と、人物Hの手(装着物)の色認識とで異なっている。まず、人物Hの頭部の形状認識を行う画像処理のルーチンについて説明する。
【0095】
人物Hの頭部の形状認識を行う画像処理ルーチンは、人物の特徴データ(辞書データ)が画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存された状態で実施される。人物の特徴データは、予め多くの人物の頭部の画像を撮影して、その大きさや形状などの特徴を抽出したものである。
【0096】
前記画像処理部DSPは、前述した如く公知の画像処理ロジックを高速で行う一般的な集積回路である。この画像処理部DSPと制御部CPUが協働することにより、例えば入力画像データの二値化処理と、この二値化された画像データにおいて互いに近接する各画素について領域化するラベリング処理と、ラベリングにより領域化された物体像の領域が人物の頭部形状であることを識別する人物識別処理と、人物の頭部と識別された物体像の位置が危険なエリアか否か判定する人物位置判定処理とが行われる。
【0097】
具体的に、図17のフローチャートを参照して画像処理のルーチンについて説明すると、まず、スタート後のステップS11において二値化処理が行われる。これは例えば、入力画像データについて各画素毎の輝度値が予め設定された閾値以上である場合に最大輝度値とし、閾値未満であれば最小輝度値とする処理である。生成される二値化画像データは、ノイズや光量変化の影響の多くが除去されたものとなる。
【0098】
次にステップS12ではラベリング処理が行われる。これは、前記の二値化画像データにおいて抽出された互いに近接する各画素を領域化するものであり、例えば同じ輝度値に属するとともに、所定距離内で密接する複数の画素について1つの領域と見なす処理である。ラベリング処理は画像平面全体について行われ、これにより1つの領域とされたものが、それぞれ物体像として認識される。
【0099】
そして、続くステップS13において、前記それぞれの物体像についての人物識別処理が行われる。本実施形態では、人物の頭部の特徴データ(辞書データ)、例えばその大きさや形状などを示すデータを参照し、この特徴データの条件を満たすような物体像を、人物Hの頭部と判定する。
【0100】
このようにして人物Hの頭部であると識別した物体像についてステップS14では、この物体像が予め設定されている危険なエリアに入っているか否か判定する。
【0101】
本実施形態では、図8に示すように、塵芥投入口4の全体に相当するエリア、即ち塵芥投入口4の後縁部4b(境界線B2)よりも前方が、頭部に関しての危険なエリアである第2のエリアとされている。そして、前記のように人物Hの頭部であると識別した物体像(領域)の外形をなす画素の位置座標が、第2のエリアの境界線B2よりも前方にあるか否かを判定する。
【0102】
そのようにして人物Hの頭部が危険なエリアに入っていると肯定判定すれば(YES)、ステップS15に進んで塵芥積込装置の作動を停止させるべく、画像処理ユニット9の制御部CPUは、架装本体制御部PLCに対する人物安全信号の出力を停止し、画像処理ルーチンを終了する(エンド)。一方、人物Hの頭部が危険なエリアに入っていないと否定判定すれば(NO)、人物安全信号の出力は維持して画像処理ルーチンを終了する(エンド)。
【0103】
次に、人物Hの手(装着物)の認識を色に基づいて行う画像処理のルーチンについて説明する。
【0104】
人物Hの手(装着物)の認識を行う画像処理ルーチンは、前述した色設定モードによって手袋GLの色特徴データが画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存された状態で実施される。
【0105】
画像処理部DSPと制御部CPUが協働することにより、例えば入力画像データのカラー二値化処理と、この二値化された画像データにおいて互いに近接する各画素について領域化するラベリング処理と、ラベリングにより領域化された物体像の領域が所定範囲の大きさであることにより装着物を身に着けた人物であることを識別する人物識別処理と、人物像と識別された物体像の位置が危険なエリアか否か判定する人物位置判定処理とが行われる。
【0106】
具体的に、図18のフローチャートを参照して画像処理のルーチンについて説明すると、まず、スタート後のステップS21においてカラー二値化処理が行われる。これは例えば、入力画像データについてRGB色空間からHSV色空間への変換処理を行い、各画素毎の色相と彩度と明度のそれぞれが予め設定された閾値範囲内である場合に抽出色とし、閾値範囲外であれば抽出対象外色とする処理である。生成されるカラー二値化画像データは、ノイズや光量変化の影響の多くが除去されたものとなる。
【0107】
ここで判断基準に使用される抽出色は、前述した色設定モードによって画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存された色特徴データとなる。つまり、カラー二値化処理では、色特徴データと一致する画素を、カメラ71によって撮像した画像のデータの中から抽出することになる。
【0108】
次にステップS22ではラベリング処理が行われる。これは、前記のカラー二値化画像データにおいて抽出された互いに近接する各画素を領域化するものであり、例えば同じ色特徴データに属するとともに、所定距離内で密接する複数の画素について一つの領域と見なす処理である。ラベリング処理は画像平面全体について行われ、これにより一つの領域とされたものが、それぞれ物体像として認識される。
【0109】
そして、続くステップS23において、前記それぞれの物体像についての人物識別処理が行われる。本実施形態では、大きさを示すデータを参照し、所定範囲の大きさであるという条件を満たすような物体像を、人物Hと判定する。即ち、ステップS23においては、色設定モードによって画像処理ユニット9の記憶部Mに設定保存された手袋GLの色特徴データと一致した物体像である場合に、その大きさが所定範囲の大きさであるという限定を行うことによって、人物Hの手を認識する。
【0110】
このようにして人物Hの手であると識別した物体像についてステップS24では、この物体像が予め設定されている危険なエリアに入っているか否か判定する。
【0111】
本実施形態では、図8に示すように、塵芥投入口4の前縁部4aおよび後縁部4bの中央の境界線B1よりも前方、即ち塵芥投入口4の奥側が、手に関しての危険なエリアである第1のエリアとされている。そして、前記のように人物Hの手であると識別した物体像(領域)の外形をなす画素の位置座標が、第1のエリアの境界線B1よりも前方にあるか否かを判定する。
【0112】
そのようにして人物Hの手が危険なエリアに入っていると肯定判定すれば(YES)、ステップS25に進んで塵芥積込装置の作動を停止させるべく、画像処理ユニット9の制御部CPUは、架装本体制御部PLCに対する人物安全信号の出力を停止し、画像処理ルーチンを終了する(エンド)。一方、人物Hの手が危険なエリアに入っていないと否定判定すれば(NO)、人物安全信号の出力は維持して画像処理ルーチンを終了する(エンド)。
【0113】
そうして制御部CPUからの人物安全信号の入力が停止されると、これを受けた架装本体制御部PLCは、スイッチLS4からの信号がONであれば、即ち、回転板10が危険な角度範囲Zにあれば、電磁制御弁V1,V2の全てのソレノイドSOLa~SOLdへの通電を停止する。よって、第1連通位置または第2連通位置にある電磁制御弁V1,V2が全て中立位置に復帰するようになり、その結果、直ちに油圧モータ13および押込シリンダ24の作動が停止される。
【0114】
-実施形態の効果-
以上説明したように、本実施形態では、人物認識システムが正常に作動するか否かの検査に供される画像認識検査装置200として、箱形の装置本体210に、一方向に開放された窓部213を備えさせ、装置本体210の内面のうちの前記窓部213に対面する面に人物画像表示シート217を配置し、装置本体210の内部に、人物画像表示シート217に向けて光を照射するLEDランプ220を備えさせている。これにより、周囲環境の明るさ等の影響を受けることなく、常に同じ環境下で且つ、同一の検出対象(人物画像)を使用して人物認識システムの検査を行うことができる。その結果、検査の信頼性の向上を図ることができる。
【0115】
また、本実施形態では、LEDランプ220を、本体ケース211の前板211aにおける窓部213の外周側に位置する枠状部分214における装置本体210の内面に配設している。これによれば、人物認識システムの検査を行うに際して、カメラ71によって人物画像表示シート217上の人物の画像を撮像する際、枠状部分214の存在により、カメラ71の視野内にLEDランプ220が入ることがない。つまり、カメラ71がLEDランプ220を撮像してしまうことがない。このため、LEDランプ220からの光が外乱として直接的にカメラ71の撮像レンズ71aに入射されることがなく、人物画像表示シート217上の人物の画像を良好に撮像することができる。これにより、より安定した環境下で人物認識システムの検査を行うことが可能になり、検査の信頼性をいっそう向上させることができる。
【0116】
また、本実施形態では、作業者Hが装着する可能性のある手袋GLの色と同じ色の色表示部C1,C2,C3が人物画像表示シート217上に描かれている。これにより、人物認識システムが色の認識を正確に行うことが可能となっているか否かを検査することができる。
【0117】
-他の実施形態-
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0118】
前記実施形態では、いわゆる回転板式の塵芥積込装置を装備した塵芥収集車100に適用される画像認識検査装置200を例に挙げて説明し、塵芥積込装置の主要部は回転板10および押込板20により構成されたものとしていた。しかし、これに限らず、塵芥積込装置の主要部は昇降板および押込板によって構成されていてもよく、その構造を特に限定するものではない。また、本発明は、ダンプトラック、ミキサ車、タンクローリ、コンテナ荷役車両、吸引車等、塵芥収集車以外の作業車両にも適用することが可能であり、車台に架装される可動装置としては塵芥積込装置以外の種々のものが考えられる。
【0119】
また、前記実施形態では、人物画像H1が描かれた人物画像表示シート217を、本体ケース211と本体カバー212との間に挟み込むようにしていた。本発明はこれに限らず、本体カバー212の前面に人物画像表示シート217を貼り付けるようにしてもよい。また、本体カバー212の前面に人物画像H1を描くようにしてもよい。この場合、この本体カバー212の前面が、本発明でいう人物画像表示面となる。
【0120】
また、前記実施形態では、人物認識システムが正常に作動しているか否かを判定する判定部310はパソコンPCに備えられていた。本発明はこれに限らず、画像処理ユニット9に判定部310を備えさせ、この画像処理ユニット9上の表示等によって人物認識システムが正常に作動しているか否かを確認できるようにしてもよい。
【0121】
また、前記実施形態では、人物画像表示シート217上に色表示部C1,C2,C3を設けていた。これは、作業者Hが装着している手袋GLを認識するためであるが、この認識を行わないシステムにあっては、人物画像表示シート217上に必ずしも色表示部C1,C2,C3は必要ない。
【0122】
また、前記実施形態では、物体像取得部は、CCD撮像素子やCMOS撮像素子を有する単眼カメラとして構成されていたが、本発明はこれに限らず、ステレオカメラや、距離画像とカラー画像とを同時に取得できる距離画像センサによって物体像取得部を構成してもよい。
【0123】
また、前記実施形態では、人物画像表示面は、外形形状が本体カバー212の外形形状と同一または僅かに小さく設定された紙製の人物画像表示シート217で構成されていた。また、本体ケース211の前板211aにおける枠状部分214の内側の面には、人物画像表示シート217の前面を明るくするための発光手段としての複数のLEDランプ220,220,…が配設されていた。本発明はこれに限らず、上記人粒画像表示シート217に代えて、画像データを表示可能なディスプレイによって人物画像表示面を構成してもよい。この場合、発光手段としては、ディスプレイのバックライトであってもよいし、自発光する有機EL素子であってもよい。
【0124】
人物画像表示面をディスプレイで構成すれば、人物画像の切替作業が容易であり、動画も表示させることができる。これにより、状況を変えて検査を行うこともできる。例えば、塵芥積込装置の作動を停止させるための危険なエリアにディスプレイ上の人物を移動させて実際に作動中の塵芥積込装置が停止するかどうかの検証を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、塵芥収集車の生産ラインからの出荷時やメンテナンス時に、人物認識システムが正常に作動するか否かの検査に供される画像認識検査装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0126】
71 カメラ(物体像取得部)
200 画像認識検査装置
210 装置本体
213 窓部
214 枠状部分
217 人物画像表示シート(人物画像表示面)
220 LEDランプ(発光手段)
310 判定部
C1~C3 色表示部
H 作業者(人物)
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