(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054792
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】散水装置,散水器,及び散水方法
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20220331BHJP
F24F 1/0087 20190101ALI20220331BHJP
F24F 1/037 20190101ALI20220331BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20220331BHJP
F24F 6/14 20060101ALN20220331BHJP
【FI】
F24F6/00 A
F24F6/00 E
F24F1/0087
F24F1/037
F24F3/14
F24F6/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162002
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】石川 誠司
【テーマコード(参考)】
3L050
3L053
3L055
【Fターム(参考)】
3L050AA08
3L053BC05
3L055AA10
3L055BB01
3L055DA01
(57)【要約】
【課題】 空調装置の加湿器の有効利用を図るとともに、簡便な構成でありながら、効率的に夏季における空調負荷を削減し、省エネルギー化や夏場の電力供給のピークカットを実現するとともに、屋外に設置された電気設備等に対しても、効果的な高温対策を行う。
【解決手段】 外調機100では、ファン120の回転によって、吸気口102からダクト104を通じて外気が取り込まれ、これがダクト106を通じて送気口108から室内の空調機に供給される。夏季においては、手動弁140を散水器150側に切り替え、外気温度が温度調節器141の設定値よりも上昇したときは、散水/加湿切替スイッチ134によって電磁弁132を開き、給水管130から手動弁140を通じて、散水器150に水を供給する。これにより、外調機100やダクト104,106に散水器150で散水され、冷却されるようになる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を加湿する加湿器を備えた空調装置を利用した散水装置であって、
前記加湿器に供給される加湿用の水を、散水対象に対して散水する散水器を備えたことを特徴とする散水装置。
【請求項2】
前記散水対象が、屋外に設置された屋外設置設備もしくは建物の外部の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1記載の散水装置。
【請求項3】
前記加湿用の水を、前記加湿器もしくは前記散水器のいずれに供給するかを切り替える切替手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の散水装置。
【請求項4】
前記切替手段は、外気の温度が設定値よりも上昇したときに、前記散水器に対して加湿用の水を供給することを特徴とする請求項3記載の散水装置。
【請求項5】
散水対象に対して散水を行う散水器であって、
空気を加湿する空調装置の加湿器に供給される加湿用の水を、前記散水対象に供給する供給手段を備えたことを特徴とする散水器。
【請求項6】
請求項5記載の散水器を利用して、散水対象に散水を行う散水方法であって、
外気の温度が設定値よりも上昇したときに、前記供給手段によって、前記散水器に前記加湿用の水を供給することを特徴とする散水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置された空調設備,受変電設備,蓄電設備,太陽光発電設備などに散水する散水装置,散水器,及び散水方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外設置設備、例えば空調設備の外調機は、建物の屋上に設置されていることが多いが、屋外に設置された空調機やダクト冷水配管は、直射日光にさらされており、冷房の空調負荷が大きい炎天下の猛暑日に、更なる空調負荷を生じさせている。このような空調機器に対して省エネルギー化を図るための手法の一つとして、打ち水ないし散水を行うようにしたものが提案されている。
例えば、下記特許文献1には、コンパクト且つ簡易な構成で省エネを図ることを目的としたドレン水散水装置及び空調装置が開示されている。これは、空調用室内機のドレン水が導入される水量調整部と、空調用室外機の熱交換器上に配置されて前記水量調整部に接続される散水管とを備えており、ドレン水を散水管から室外機の熱交換器に散水するようにしている。下記特許文献2にも、同様にドレン水を室外機の外表面に散布するようにした空気調和機が開示されている。下記特許文献3には、室外機の熱交換器からの放熱における蒸発潜熱による冷却効果を散水量に対して効率よく得ることを目的とした室外機の補助冷却装置が開示されている。補助冷却装置は、保湿部材とノズルとを備えており、ノズルで保湿部材に散水し、保湿部材で、室外機の熱交換器を濡れた状態に維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-150564号公報
【特許文献2】特開2005-114200号公報
【特許文献3】特開2007-240107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1及び2に記載の背景技術では、ドレン水がないとき、あるいは少量のときは、良好な冷却効果が得られない。また、特許文献3記載の背景技術では、補助冷却装置を別途設ける必要があり、装置構成が複雑となる,補助冷却を行う電力も必要となる,といった課題がある。
【0005】
一方、空調設備には、冬季の加湿用の加湿器が設置されていることがある。空調設備に付属する加湿装置は、空調設備内部で上水を散布あるいは蒸発せしめて流体空気の湿度を上げる装置であるが、加湿に利用されるのは冬期の数か月のみで、冷房時期の有効活用ができれば好都合である。
【0006】
加えて、屋外には、受変電設備や蓄電設備、太陽光発電設備などの電気設備も設置される場合があり、これら電気設備に対する昨今の気象変動による夏季の高温対策も必要となる。例えば、
a,屋外設置の受変電設備の設置条件は、例えば、周囲の温度が-20℃~+40℃以内で、かつ、温度の24時間の平均値が+35℃以下となっており、高温下ではケーブルの許容電流値の低下を招く恐れがある。してみると、例えば、周囲温度40℃以上で外函に対して散水を行うようにすると好都合である。
b,蓄電設備(蓄電池)は、周辺温度の上昇により短寿命となる。してみると、蓄電池保護のためには、周囲温度が予め決めた設定値以上となった場合に外函に対して散水を行うようにすると好都合である。
c,太陽光発電設備はある温度を超えると発電効率が低下する。してみると、太陽光発電設備の効率的運用のためには、周囲温度が予め決めた設定値以上となった場合に外函に対して散水を行うようにすると好都合である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、その目的は、空調装置の加湿器の有効利用を図るとともに、簡便な構成でありながら、効率的に夏季における空調負荷を削減し、省エネルギー化や夏場の電力供給のピークカットを実現することである。他の目的は、屋外に設置された各種設備に対しても、効果的な高温対策を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の散水装置は、空気を加湿する加湿器を備えた空調装置を利用した散水装置であって、前記加湿器に供給される加湿用の水を、散水対象に対して散水する散水器を備えたことを特徴とする。主要な形態の一つによれば、前記散水対象が、屋外に設置された屋外設置設備もしくは建物の外部の少なくとも一方であることを特徴とする。他の形態によれば、前記加湿用の水を、前記加湿器もしくは前記散水器のいずれに供給するかを切り替える切替手段を設けたことを特徴とする。更に他の形態によれば、前記切替手段は、外気の温度が設定値よりも上昇したときに、前記散水器に対して加湿用の水を供給することを特徴とする。
【0009】
本発明の散水器は、散水対象に対して散水を行う散水器であって、空気を加湿する空調装置の加湿器に供給される加湿用の水を、前記散水対象に供給する供給手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の散水方法は、前記散水器を利用して、散水対象に散水を行う散水方法であって、外気の温度が設定値よりも上昇したときに、前記供給手段によって、前記散水器に前記加湿用の水を供給することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、屋外に設置される屋外設置設備もしくは建物の外部に対して、空調装置の加湿器に供給される加湿用の水を散水することとしたので、夏季における加湿器の有効利用を図るとともに、簡便な構成でありながら、効率的に夏季における空調負荷を削減し、省エネルギー化や夏場の電力供給のピークカットを実現することができ、更には、屋外設置設備に対して効果的な高温対策を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例の散水装置の構成を示す図である。(A)は手動切替式の実施例1を示し、(B)は自動切替式の実施例2を示す。
【
図2】本発明の実施例3の散水装置の構成を示す図である。
【
図3】前記実施例における散水器の設置の様子を示す図である。
【
図4】本発明の実施例4の散水装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0014】
最初に、
図1(A)を参照しながら、本発明の実施例1について説明する。
図1(A)には、本発明を適用した空調装置の構成が示されている。本実施例は、手動で弁を切り替えるようにした例である。同図において、空調装置のうち、屋外に設置されている外調機100は、吸気口102からダクト104を通じて外気を取り込んでおり、ダクト106を通じて送気口108から送出し、更にダクト(図示せず)を介して屋内の空調機(図示せず)に供給されるようになっている。外調機100には、加湿器110が設けられており、この加湿器110で加湿された空気が、ファン120によって前記送気口108に送られるようになっている。
【0015】
加湿器110には、給水管(給水設備)130から電磁弁132,手動弁140を介して加湿用の水が供給されている。電磁弁132は、散水/加湿切替スイッチ134によって切替えられるようになっている。そして、散水/加湿切替スイッチ134によって、前記ダクト104に設置された温度調節器141による散水制御と、室内ないし屋内に設置された湿度調節器142による加湿制御とに切り替えられるようになっている。また、ファン連動接点144の信号に基づいて、空調機停止中に電磁弁132が閉となるように、インターロック制御が行われるようになっている。
【0016】
前記手動弁140は、散水器150に接続されている。散水器150は、外調機100の上部と、外気取入れ側のダクト104の上部と、外気給気側のダクト106の上部に、それぞれ散水可能に設けられている。手動弁140は、給水管130の水を、冬季は加湿器110に供給するように、夏季は散水器150に供給するように、作業者によって手動で切り替えられる。
【0017】
次に、本実施例の全体の動作を説明する。外調機100では、ファン120の回転によって、吸気口102からダクト104を通じて外気が取り込まれ、これがダクト106を通じて送気口108から室内の空調機に供給される。この場合において、外気の温度は、ダクト104の温度調節器141によって制御され、室内に供給される空気の湿度は、湿度調節器142によって制御される。温度調節器141,湿度調節器142が、温度検出器,湿度検出器,制御動作指示調節器による構成であっても同様である。
【0018】
ここで、冬季の暖房運転中においては、手動弁140が加湿器110側に切り替えられる。そして、空調機が運転されてファン連動接点144がONとなれば、ファン120が回転するとともに、インターロックが解除され、電磁弁132の制御が可能となる。この状態で、室内湿度が、湿度調節器142に設定された値よりも低下したときは、電磁弁132が「開」となり、給水管130から手動弁140を通じて、矢印F1で示すように、加湿器110に水が供給される。また、これにより、外調機100で取り込んだ空気が加湿器110で加湿されて室内の空調機に供給されるようになる。
【0019】
一方、夏季の冷房運転中においては、手動弁140が散水器150側に切り替えられる。そして、そして、空調機が運転されてファン連動接点144がONとなれば、ファン120が回転するとともに、インターロックが解除され、同様に電磁弁132の制御が可能となる。この状態で、外気温度が、温度調節器141に設定された値よりも上昇したときは、電磁弁132が「開」となり、給水管130から手動弁140を通じて、矢印F2で示すように、散水器150に水が供給される。これにより、外調機100やダクト104,106に散水器150で散水され、冷却されるようになる。なお、散水器150への水の供給は、給水管130における配管の直圧で行ってもよいし、給水管130にポンプを設けて行ってもよい。
【0020】
以上のように、本実施例によれば、散水器150を屋外の炎天下に置かれた空調設備である外調機100やダクト104に設け、夏季の外気温上昇時に加湿用の水を散水することとしたので、外調機100やダクト104を散水の蒸発による潜熱で奪うことで冷却して温度を下げることができる。これにより、これまで空調装置により処理されていた直射日光による空調負荷を削減でき、省エネルギー化や夏場の電力供給のピークカットを実現できる。加えて、夏季利用されていない加湿用の配管を利用することで、新たに送水用の配管を増設する必要がなく、初期設備費用を削減することが可能である。
上述した温度調節器141は、散水用電磁弁162,補助リレー164,ファン連動接点144に接続されており、湿度調節器142は、補助リレー164に接続されており、この補助リレー164が、散水/加湿切替スイッチ134と加湿用電磁弁160に接続されている。散水/加湿切替スイッチ134が散水側となっているときは、温度調節器141と接続される散水用電磁弁162が制御可能となり、加湿用電磁弁160は常に「閉」となる、一方、散水/加湿切替スイッチ134が加湿側となっているときは、湿度調節器142と接続される加湿用電磁弁160が制御可能となり、散水用電磁弁162は常に「閉」となる。
冬季においては、空調機が運転されてファン連動接点144がONとなれば、ファン120が回転するとともに、インターロックが解除され、電磁弁160の制御が可能となる。この状態で、室内湿度が、湿度調節器142に設定された値よりも低下したときは、加湿用電磁弁160が「開」となり、散水用電磁弁162は常に「閉」であることから、給水管130から、矢印F1で示すように、加湿器110に水が供給され、外調機100で取り込んだ空気が加湿器110で加湿されて室内の空調機に供給されるようになる。
一方、夏季においては、空調機が運転されてファン連動接点144がONとなれば、ファン120が回転するとともに、インターロックが解除され、電磁弁162の制御が可能となる。この状態で、外気温度が、温度調節器141に設定された値よりも上昇したときは、散水用電磁弁162が「開」となり、加湿用電磁弁160は常に「閉」であることから、給水管130から、矢印F2で示すように、散水器150に水が供給され、外調機100やダクト104,106が散水器150で散水され、冷却されるようになる。
以上のように、本実施例においても、夏季の外気温上昇時に加湿器用の水が散水されるので、外調機100やダクト104,106を散水の蒸発によって潜熱を奪うことで冷却することができ、温度を下げることができる。