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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054807
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】プレス機械
(51)【国際特許分類】
   B30B 1/26 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
B30B1/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162021
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000100861
【氏名又は名称】アイダエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆夫
【テーマコード(参考)】
4E090
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB01
4E090CC01
4E090EA01
4E090EB01
4E090EC01
(57)【要約】
【課題】スライドの駆動機構を簡素化できるプレス機械を提供する。
【解決手段】往復動自在に支持されたスライド16と、スライド16の長手方向に沿って配置され、複数の偏心部を有するクランク軸32と、クランク軸32を回転させる駆動部36と、クランク軸32の各偏心部に備えられ、クランク軸32の回転によりスライド16の移動方向に沿って往復動する複数のヨーク34A、34Bと、各ヨーク34A、34Bとスライド16とを連結する複数のポイント30A~30Dと、を備え、少なくとも1つのヨーク34A、34Bが、クランク軸32の軸方向と直交する方向に沿って配置された複数のポイント30A~30Dを介して、スライド16に連結される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動自在に支持されたスライドと、
前記スライドの長手方向に沿って配置され、複数の偏心部を有するクランク軸と、
前記クランク軸を回転させる駆動部と、
前記クランク軸の各前記偏心部に備えられ、前記クランク軸の回転により前記スライドの移動方向に沿って往復動する複数のヨークと、
各前記ヨークと前記スライドとを連結する複数のポイントと、
を備え、
少なくとも1つの前記ヨークが、前記クランク軸の軸方向と直交する方向に沿って配置された複数の前記ポイントを介して、前記スライドに連結される、
プレス機械。
【請求項2】
前記クランク軸は、少なくとも軸方向の両端部に前記偏心部を有し、
前記クランク軸の軸方向の両端部の前記偏心部に備えられる前記ヨークが、前記クランク軸の軸方向と直交する方向に沿って配置された複数の前記ポイントを介して、前記スライドの長手方向の両端部に連結される、
請求項1に記載のプレス機械。
【請求項3】
前記クランク軸は、軸方向の両端部の前記偏心部の間に更に前記偏心部を有し、
前記クランク軸の軸方向の両端部の前記偏心部の間の前記偏心部に備えられる前記ヨークが、1つの前記ポイントを介して、前記スライドに連結される、
請求項2に記載のプレス機械。
【請求項4】
前記駆動部は、
前記クランク軸に備えられたメインギヤと、
前記メインギヤに噛み合うピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤを回転させるモータと、
を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のプレス機械。
【請求項5】
前記メインギヤに複数の前記ピニオンギヤが噛み合い、複数の前記モータによって前記メインギヤが駆動される、
請求項4に記載のプレス機械。
【請求項6】
前記メインギヤが、前記クランク軸の複数個所に備えられる、
請求項4又は5に記載のプレス機械。
【請求項7】
前記モータが、前記クランク軸の軸方向に沿って配置される、
請求項4から6のいずれか1項に記載のプレス機械。
【請求項8】
前記駆動部の駆動を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、1サイクルごとに前記スライドが上死点又は上死点の近傍で一定時間停留するように、前記駆動部の駆動を制御する、
請求項1から7のいずれか1項に記載のプレス機械。
【請求項9】
前記制御部は、前記スライドの上死点又は上死点の近傍で前記クランク軸の回転を停止又は減速させる駆動を行う、
請求項8に記載のプレス機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械に係り、特にスライドを複数点で加圧する構成のプレス機械に関する。
【背景技術】
【0002】
主に大型のプレス機械では、スライドに複数のポイントを配置し、複数点でスライドを加圧する構成が採用される。
【0003】
スライドの長手方向及び長手方向と直交する方向に複数のポイントを配置してスライドを加圧する構成のプレス機械では、従来、複数のクランク軸を用いてスライドの駆動機構が構成されていた(たとえば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-61974号公報
【特許文献2】特開2001-121297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スライドの駆動機構に複数のクランク軸を用いると、駆動機構の構成が複雑かつ大型化するという欠点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スライドの駆動機構を簡素化できるプレス機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)往復動自在に支持されたスライドと、スライドの長手方向に沿って配置され、複数の偏心部を有するクランク軸と、クランク軸を回転させる駆動部と、クランク軸の各偏心部に備えられ、クランク軸の回転によりスライドの移動方向に沿って往復動する複数のヨークと、各ヨークとスライドとを連結する複数のポイントと、を備え、少なくとも1つのヨークが、クランク軸の軸方向と直交する方向に沿って配置された複数のポイントを介して、スライドに連結される、プレス機械。
【0008】
本態様によれば、いわゆるスコッチヨーク機構を採用することにより、1本のクランク軸によって、スライドの長手方向及び長手方向と直交する方向に複数のポイントを配置してスライドを加圧する構成を実現できる。これにより、スライドの駆動機構を簡素化できる。また、スコッチヨーク機構を採用することにより、スライドの駆動機構をコンパクト化できる。すなわち、スコッチヨーク機構は、コンロッドを用いた駆動機構のように、連桿比による傾きの影響がないので、ヨークとポイントとの連結部の長さを短くできる。これにより、上下方向(スライドの移動方向)の寸法をコンパクト化できる。また、これにより、駆動系の慣性モーメントも低減できる。
【0009】
(2)クランク軸は、少なくとも軸方向の両端部に偏心部を有し、クランク軸の軸方向の両端部の偏心部に備えられるヨークが、クランク軸の軸方向と直交する方向に沿って配置された複数のポイントを介して、スライドの長手方向の両端部に連結される、(1)のプレス機械。
【0010】
本態様によれば、少なくともクランク軸の両端部にヨークが備えられる。そして、その両端部に備えられたヨークが、複数のポイントを介して、スライドの長手方向の両端部に連結される。これにより、より安定してスライドを加圧できる。
【0011】
(3)クランク軸は、軸方向の両端部の偏心部の間に更に偏心部を有し、クランク軸の軸方向の両端部の偏心部の間の偏心部に備えられるヨークが、1つのポイントを介して、スライドに連結される、(2)のプレス機械。
【0012】
本態様によれば、クランク軸の両端に加えて、その間の位置(たとえば、中央)にヨークが備えられる。そして、そのヨークが、1つのポイントを介して、スライドに連結される。これにより、スライドの撓みを抑制できる。また、これにより、スライドの剛性を下げることができ、スライドの上下方向の寸法をコンパクト化できる。また、駆動系の慣性モーメントも低減できる。
【0013】
(4)駆動部は、クランク軸に備えられたメインギヤと、メインギヤに噛み合うピニオンギヤと、ピニオンギヤを回転させるモータと、を備える、(1)から(3)のいずれか一のプレス機械。
【0014】
本態様によれば、駆動部が、クランク軸に備えられたメインギヤと、メインギヤに噛み合うピニオンギヤと、ピニオンギヤを回転させるモータと、を備える。モータを駆動すると、そのモータの回転がピニオンギヤを介してメインギヤに伝達され、メインギヤが回転する。そして、メインギヤが回転することにより、クランク軸が回転する。
【0015】
(5)メインギヤに複数のピニオンギヤが噛み合い、複数のモータによってメインギヤが駆動される、(4)のプレス機械。
【0016】
本態様によれば、1つのメインギヤに複数のピニオンギヤが噛み合わされ、1つのメインギヤが複数のモータで駆動される。1つのメインギヤに複数のピニオンギヤが噛み合わされることにより、ギヤの噛み合い部1個所当たりの伝達トルクを低減できる。これにより、メインギヤの歯幅を薄くできる。また、これにより、メインギヤの慣性モーメントを低減できる。
【0017】
(6)メインギヤが、クランク軸の複数個所に備えられる、(4)又は(5)のプレス機械。
【0018】
本態様によれば、メインギヤがクランク軸の複数個所に備えられる。これにより、メインギヤの1つ当たりの伝達トルクを低減できる。これにより、メインギヤの歯幅を薄くできる。また、これにより、メインギヤの慣性モーメントを低減できる。
【0019】
(7)モータが、クランク軸の軸方向に沿って配置される、(4)から(6)のいずれか一のプレス機械。
【0020】
本態様によれば、モータの設置方向とスライドの長手方向を一致させることができる。これにより、軸方向の寸法が大きなモータをコンパクトに搭載できる。
【0021】
(8)駆動部の駆動を制御する制御部を更に備え、制御部は、1サイクルごとにスライドが上死点又は上死点の近傍で一定時間停留するように、駆動部の駆動を制御する、(1)から(7)のいずれか一のプレス機械。
【0022】
本態様によれば、1サイクルごとにスライドが上死点又は上死点の近傍で一定時間停留するように、駆動部が駆動される。これにより、ワークの搬入及び搬出時間を確保でき、スライドのストロークを短くできる。また、これにより、ヨークとポイントとの連結部の長さを短くでき、駆動系の慣性モーメントを低減できる。
【0023】
(9)制御部は、スライドの上死点又は上死点の近傍でクランク軸の回転を停止又は減速させる駆動を行う、(8)のプレス機械。
【0024】
本態様によれば、クランク軸の回転制御(モータの駆動制御)によって、スライドを1サイクルごとに上死点又は上死点の近傍で一定時間停留させる動作を実現できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スライドを複数点で加圧する構成のプレス機械において、スライドの駆動機構を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明が適用されたプレス機械の一実施形態を示す正面部分断面図
図2】本発明が適用されたプレス機械の一実施形態を示す側面部分断面図
図3】スライドの平面図
図4】スライド駆動機構の概略構成を示す正面断面図
図5図4の5-5断面図
図6図4の6-6断面図
図7】スライド駆動機構の概略構成を示す平面部分断面図
図8】クランクを1回転させた場合のスライドの状態の変移を示す図
図9】スライドを5点で加圧する構成のプレス機械の一実施形態を示す正面部分断面図
図10】スライドを5点で加圧する構成のプレス機械の一実施形態を示す側面部分断面図
図11図9及び図10に示すプレス機械に備えられるスライドの平面図
図12】スライド駆動機構の概略構成を示す正面断面図
図13図12の13-13断面図
図14】1サイクルでのスライドの動作を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0028】
《第1の実施の形態》
[装置構成]
図1図2は、それぞれ本発明が適用されたプレス機械の一実施形態を示す正面部分断面図、側面部分断面図である。なお、図1及び図2において、符号xで示す方向を装置の横方向、符号yで示す方向を装置の前後方向、符号zで示す方向を装置の上下方向とする。
【0029】
本実施の形態のプレス機械10は、スライドを4点で加圧する構成のプレス機械である。図1及び図2に示すように、プレス機械10は、フレーム12、ボルスタ14、スライド16及びスライド駆動機構18を備える。
【0030】
フレーム12は、いわゆるストレートサイド型フレームであり、ベッド20、コラム22及びクラウン24を備える。ベッド20、コラム22及びクラウン24は、図示しないタイロッドを介して、一体的に組み付けられる。
【0031】
ベッド20は、プレス加圧を受ける基盤となる部分である。ベッド20の上面20Aは、水平面を構成する。ボルスタ14は、ベッド20の上面20Aに設置される。
【0032】
コラム22は、ベッド20の四隅に備えられる。各コラム22は、ベッド20の上面20Aに対し、垂直に設置される。
【0033】
クラウン24は、コラム22の上端部に備えられる。後述するように、スライド駆動機構18は、クラウン24に備えられる。
【0034】
ボルスタ14は、金型が取り付けられる定盤である。上記のように、ボルスタ14は、ベッド20の上面20Aに設置される。
【0035】
スライド16は、金型が取り付けられて往復運動する部分である。図1に示すように、本実施の形態のスライド16は、前後方向の寸法に比して横方向の寸法が大きな横長の形状を有する。したがって、横方向(x方向)がスライド16の長手方向となる。スライド16は、コラム22に備えられたスライドガイド26を介して、上下方向にスライド自在(往復動自在)に支持される。
【0036】
図3は、スライドの平面図である。
【0037】
同図に示すように、スライド16の上面部には、4個所にポイント30A~30Dが備えられる。ポイント30A~30Dは、スライド16とスライド駆動機構18との連結部である。したがって、このポイント30A~30Dの設置個所が、スライド16の加圧点となる。図3に示すように、本実施の形態のスライド16には、上面の四隅にポイント30A~30Dが配置される。以下、必要に応じて、ポイント30Aを第1ポイント30A、ポイント30Bを第2ポイント30B、ポイント30Cを第3ポイント30C、ポイント30Dを第4ポイント30Dとして、各ポイント30A~30Dを区別する。
【0038】
図3に示すように、第1ポイント30A及び第2ポイント30Bは、スライド16の前後方向に沿って配置される。同様に、第3ポイント30C及び第4ポイント30Dは、スライド16の前後方向に沿って配置される。また、第1ポイント30A及び第3ポイント30Cは、スライド16の横方向に沿って配置される。同様に、第2ポイント30B及び第4ポイント30Dは、スライド16の横方向に沿って配置される。すなわち、本実施の形態のプレス機械10では、スライド16の長手方向及び長手方向と直交する方向の複数個所にポイント30A~30Dが配置される。
【0039】
各ポイント30A~30Dには、必要に応じてスライド調節機構、過負荷安全装置などが備えられる。これらの機構は公知の構成なので、その詳細についての説明は省略する。
【0040】
スライド駆動機構18は、モータの回転運動を往復運動に変換して、スライドを動作させる。上記のように、スライド駆動機構18は、フレーム12のクラウン24に備えられる。
【0041】
図4は、スライド駆動機構の概略構成を示す正面断面図である。図5は、図4の5-5断面図である。図6は、図4の6-6断面図である。図7は、スライド駆動機構の概略構成を示す平面部分断面図である。
【0042】
スライド駆動機構18は、主として、クランク軸32、クランク軸32の回転運動を往復運動に変換する2つのヨーク34A、34B、及び、クランク軸32を回転させる駆動部36を備える。
【0043】
クランク軸32は、軸方向の2個所にクランクピン32A、32Bを有する。より具体的には、軸方向の両端部にクランクピン32A、32Bを有する。クランクピン32A、32Bは、偏心部の一例である。以下においては、必要に応じて一方のクランクピン32Aを第1クランクピン32A、他方のクランクピン32Bを第2クランクピン32Bとして、両者を区別する。クランク軸32は、クラウン24に備えられた複数の軸支持部38に図示しない軸受を介して回転自在に支持される。軸支持部38に支持されたクランク軸32は、スライド16の長手方向(装置の横方向)に沿って配置される。また、スライド16の前後方向において、中央位置に配置される。
【0044】
2つヨーク34A、34Bは、それぞれクランク軸32に備えられた2つのクランクピン32A、32Bの位置に備えられる。すなわち、一方のヨーク34Aは、第1クランクピン32Aの位置に備えられ、他方のヨーク34Bは、第2クランクピン32Bの位置に備えられる。
【0045】
本実施の形態のプレス機械10において、2つのヨーク34A、34Bの構成は同じである。以下、必要に応じて、一方のヨーク34Aを第1ヨーク34A、他方のヨーク34Bを第2ヨーク34Bとして、両者を区別する。
【0046】
ヨーク34A、34Bは、ヨーク本体40A、40Bと、ヨーク本体40A、40Bから延びる2つの連結部44A1、44A2、44B1、44B2と、ヨーク本体40A、40Bの開口部42A、42Bに備えられるガイドレール46A、46Bと、ガイドレール46A、46Bに沿ってヨーク本体40Aの開口部42A、42B内をスライドする軸受部48A、48Bと、を有する。
【0047】
ヨーク本体40A、40Bは、矩形の平板状の形状を有し、中央部分に矩形状の開口部42A、42Bを有する。開口部42A、42Bには、上辺部及び下辺部に沿ってガイドレール46A、46Bが備えられる。ガイドレール46A、46Bは、スライド16の前後方向(図5のy方向)に沿って水平に配置される。
【0048】
第1ヨーク34Aにおいて、2つの連結部44A1、44A2は、スライド16に備えられた前後2つのポイント30A、30Bに連結される部分である。したがって、第1ヨーク34Aの2つの連結部44A1、44A2は、前後2つのポイント30A、30B(第1ポイント30A及び第2ポイント30B)と同じ間隔で配置される。
【0049】
第2ヨーク34Bにおいて、2つの連結部44B1、44B2は、スライド16に備えられた前後2つのポイント30C、30Dに連結される部分である。したがって、第2ヨーク34Bの2つの連結部44B1、44B2は、前後2つのポイント30C、30D(第3ポイント30C及び第4ポイント30D)と同じ間隔で配置される。
【0050】
なお、第3ポイント30Cと第4ポイント30Dとの間隔は、第1ポイント30Aと第2ポイント30Bとの間隔と同じである。
【0051】
軸受部48A、48Bは、クランク軸32に連結される部分である。軸受部48A、48Bは、矩形の平板状の形状を有し、中央部分に軸受としての開口部50A、50Bを有する。軸受部48A、48Bは、ヨーク本体40A、40Bの開口部42A、42B内に配置され、かつ、開口部42A、42B内をガイドレール46A、46Bに沿ってスライド自在に支持される。上記のように、ガイドレール46A、46Bは、スライド16の前後方向に沿って水平に配置される。したがって、軸受部48A、48Bは、開口部42A、42B内をスライド16の前後方向に沿って水平にスライドする。軸受部48A、48Bの開口部50A、50Bは、クランクピン32A、32Bの外形形状に対応した形状を有する。すなわち、円形状の形状を有する。軸受部48A、48Bは、開口部50A、50Bにクランクピン32A、32Bが嵌合されて、クランク軸32に連結される。
【0052】
以上のように構成されるヨーク34A、34Bは、連結部44A1、44A2、44B1、44B2がポイント30A、30B、30C、30Dに連結されることにより、スライド16に連結される。そして、スライド16に連結されることにより、移動方向がスライド16の移動方向、すなわち、上下方向に規制される。この結果、クランク軸32を回転させると、その回転運動が往復運動に変換されて、スライド16に伝達される。
【0053】
このように、クランク軸の回転運動をヨークによって往復運動に変換する機構(スコッチヨーク機構)を採用することにより、1つのヨークに複数のポイントを連結することが可能になる。これにより、クランク軸の軸方向と直交する方向(スライドの長手方向と直交する方向)に複数のポイントを配置できる。
【0054】
また、ヨークによって往復運動に変換する機構を採用することにより、コンロッドを用いた機構に比して、ヨークとポイントとの連結部の長さを短くできる。すなわち、コンロッドを用いた機構のように、連桿比による傾きの影響がないので、ヨークとポイントとの連結部の長さを短くできる。これにより、上下方向の寸法をコンパクト化できる。また、これにより、駆動系の慣性モーメントも低減できる。
【0055】
駆動部36は、図4及び図7に示すように、2つのメインギヤ52A、52Bを有し、各メインギヤ52A、52Bをそれぞれ2つのモータ54A1、54A2、54B1、54B2で駆動する構成を有する。
【0056】
2つのメインギヤ52A、52Bは、同じ構成を有し、それぞれクランク軸32に一体的に取り付けられる。1本のクランク軸32を2つのメインギヤ52A、52Bで駆動することにより、メインギヤ1つ当たりの伝達トルクを低減できる。これにより、メインギヤ52A、52Bの歯幅を薄くでき、メインギヤ52A、52Bの慣性モーメントを低減できる。また、各メインギヤ52A、52Bをそれぞれ2つのモータ54A1、54A2、54B1、54B2で駆動することにより、ギヤの噛み合い部1個所当たりの伝達トルクを低減できる。これにより、メインギヤの歯幅を更に薄くでき、メインギヤの慣性モーメントを更に低減できる。
【0057】
各モータ54A1、54A2、54B1、54B2は、同じ構成のサーボモータで構成される。各モータ54A1、54A2、54B1、54B2は、クラウン24に備えられたモータ取付部24A、24Bに取り付けられて、所定位置に配置される。モータ取付部24A、24Bに取り付けられた各モータ54A1、54A2、54B1、54B2は、その出力軸がクランク軸32の軸方向に沿って配置される。この結果、各モータ54A1、54A2、54B1、54B2は、スライド16の長手方向に沿って配置される。これにより、軸方向の寸法が大きなモータを使用する場合であっても、コンパクトに搭載できる。すなわち、スライド16の長手方向と直交する方向に沿ってモータを配置すると、モータがフレーム12の前後方向に張り出して配置される場合があるが、スライド16の長手方向に沿って配置することにより、フレーム12内に収めてモータを配置できる。
【0058】
各モータ54A1、54A2、54B1、54B2の出力軸には、ピニオンギヤ56A1、56A2、56B1、56B2が取り付けられる。ピニオンギヤ56A1、56A2は、メインギヤ52Aに噛み合わされる。また、ピニオンギヤ56B1、56B2は、メインギヤ52Bに噛み合わされる。これにより、各モータ54A1、54A2、54B1、54B2を駆動すると、その回転がピニオンギヤ56A1、56A2、56B1、56B2を介してメインギヤ52A、52Bに伝達され、メインギヤ52A、52Bが回転する。そして、メインギヤ52A、52Bが回転することにより、クランク軸32が回転する。
【0059】
各モータ54A1、54A2、54B1、54B2の駆動は、制御部60によって制御される。制御部60は、たとえば、プロセッサ及びメモリ等を備えたマイクロコンピュータで構成される。この場合、マイクロコンピュータは、所定の制御プログラムを実行することにより、制御部60として機能する。
【0060】
[プレス動作]
以上のように構成される本実施の形態のプレス機械10は、モータ54A1、54A2、54B1、54B2を駆動してクランク軸32を回転させると、そのクランク軸32の回転運動がヨーク34A、34Bによって往復運動に変換されて、スライド16が上下方向に往復動する。
【0061】
図8は、クランクを1回転させた場合のスライドの状態の変移を示す図である。同図では、スライド16が上死点に位置しているときのクランク軸32の回転角度θを0°としている。
【0062】
図8(A)は、クランク軸32の回転角度θが0度のときのスライド16の状態を示している。図8(B)は、クランク軸32の回転角度θが90度のときのスライド16の状態を示している。図8(C)は、クランク軸32の回転角度θが180度のときのスライド16の状態を示している。図8(D)は、クランク軸32の回転角度θが270度のときのスライド16の状態を示している。
【0063】
図8(A)~(D)に示すように、クランク軸32を回転させることにより、クランクピン32A、32Bが、クランク軸32を中心にして偏心して回転する。そして、クランクピン32A、32Bが偏心して回転することにより、クランクピン32A、32Bに嵌合した軸受部48A、48Bが、ヨーク本体40A、40Bの開口部42A、42B内をガイドレール46A、46Bに沿って移動する。この結果、ヨーク34A、34Bが、上下方向に往復動する。そして、ヨーク34A、34Bが往復動することにより、スライド16が上下方向に往復動する。
【0064】
図8(A)~図8(C)に示すように、スライド16は、クランク軸32の回転角度θが、0°~180°までの範囲で下降する。そして、180°の位置で下死点に達した後、上昇に転じ、360°(0°)の位置で元の位置、すなわち、上死点に復帰する。
【0065】
クランク軸32を一定速度で連続的に回転させることにより、スライド16が、周期的に上下方向に往復動する。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態のプレス機械10によれば、1本のクランク軸32でスライド16を動作させることができる。これにより、スライド16の長手方向及び長手方向と直交する方向の複数個所にポイントを配置してスライド16を加圧する場合であっても、スライド16の駆動機構の構成を簡素化できる。
【0067】
また、スライド16の駆動機構として、スコッチヨーク機構を採用することにより、ヨーク34A、34Bとポイント30A~30Dとの連結部の長さを短くできる。これにより、スライド16の駆動機構の上下方向の寸法をコンパクト化できる。また、これにより、駆動系の慣性モーメントも低減できる。
【0068】
なお、本実施の形態では、1本のクランク軸を2つのメインギヤで駆動しているが、1つのメインギヤで駆動する構成とすることもできる。1本のクランク軸を複数のメインギヤで駆動することにより、メインギヤ1つ当たりの伝達トルクを低減できる。これにより、メインギヤの歯幅を薄くでき、各メインギヤの慣性モーメントを低減できる。
【0069】
なお、クランク軸を複数のメインギヤで駆動する場合は、クランク軸を複数に分離して配置することもできる。この場合、分離された複数のクランク軸が同軸上に配置されている限り、全体として1本のクランク軸とみなすことができる。
【0070】
また、本実施の形態では、1つのメインギヤを2つのモータで駆動しているが、1つのモータで駆動する構成とすることもできる。本実施の形態のプレス機械10のように、1つのメインギヤを複数のモータで駆動することにより、ギヤの噛み合い部の1個所当たりの伝達トルクを低減できる。これにより、各メインギヤの歯幅を薄くでき、メインギヤの慣性モーメントを低減できる。
【0071】
《第2の実施の形態》
上記実施の形態では、スライドを4点で加圧する構成について説明したが、本発明によれば、更に複数点で加圧する構成も実現できる。以下においては、スライドを5点で加圧する場合について説明する。
【0072】
図9図10は、スライドを5点で加圧する構成のプレス機械の一実施形態を示す正面部分断面図、側面部分断面図である。また、図11は、図9及び図10に示すプレス機械に備えられるスライドの平面図である。
【0073】
本実施の形態のプレス機械10には、スライド16の上面部の5個所にポイント30A~30Eが備えられる。5つのポイント30A~30Dは、スライド16の上面の四隅及び中央に配置される。ポイント30Aを第1ポイント30A、ポイント30Bを第2ポイント30B、ポイント30Cを第3ポイント30C、ポイント30Dを第4ポイント30D、ポイント30Eを第5ポイント30Eとして、各ポイント30A~30Eを区別する。
【0074】
四隅に加えて中央の1点にポイントを追加することにより、スライド16の剛性を下げても、スライド中央に集中荷重を受けたときのスライドのたわみを極小化できる。これにより、スライド16の上下方向の寸法(高さ)をコンパクト化できる。この結果、イナーシャを低減できる。また、プレス機械全体の高さも低減できる。
【0075】
図12は、スライド駆動機構の概略構成を示す正面断面図である。図13は、図12の13-13断面図である。
【0076】
スライド16の中央のポイント(第5ポイント30E)を加圧する機構を更に有する点以外は、上記第1の実施の形態のプレス機械10のスライド駆動機構18の構成と同じである。したがって、ここでは、上記第1の実施の形態のプレス機械10のスライド駆動機構18と相違する点についてのみ説明する。
【0077】
図12に示すように、本実施の形態のスライド駆動機構18には、3つのヨーク34A~34Cが備えられる。以下、必要に応じて、ヨーク34Aを第1ヨーク34A、ヨーク34Bを第2ヨーク34B、ヨーク34Cを第3ヨーク34Cとして、各ヨーク34A~34Cを区別する。
【0078】
第1ヨーク34A及び第2ヨーク34Bの構成は、上記第1の実施の形態のプレス機械10の第1ヨーク34A及び第2ヨーク34Bと同じである。第1ヨーク34Aは、そのヨーク本体40Aの開口部42Aに備えられた軸受部48Aの開口部50Aにクランクピン32Aが嵌合されて、クランク軸32に連結される。また、第1ヨーク34Aは、そのヨーク本体40Aから延びる2つの連結部44A1、44A2が、スライド16に備えられた第1ポイント30A及び第2ポイント30Bに連結されて、スライド16に連結される。第2ヨーク34Bは、ヨーク本体40Bの開口部42Bに備えられた軸受部48Bの開口部50Bにクランクピン32Bが嵌合されて、クランク軸32に連結される。また、第2ヨーク34Bは、ヨーク本体40Bから延びる2つの連結部44B1、44B2が、スライド16に備えられた第3ポイント30C及び第4ポイント30Dに連結されて、スライド16に連結される。
【0079】
第3ヨーク34Cは、スライド16の中央に備えられた第5ポイント30Eに連結される。第3ヨーク34Cは、ヨーク本体40Cと、ヨーク本体40Cから延びる1つの連結部44Cと、ヨーク本体40Cの開口部42Cに備えられるガイドレール46Cと、ガイドレール46Cに沿ってヨーク本体40Aの開口部42C内をスライドする軸受部48Cと、を有する。
【0080】
クランク軸32は、第1クランクピン32A及び第2クランクピン32Bに加えて、第3クランクピン32Cを有する。第3クランクピン32Cは、軸方向の中央に配置される。
【0081】
第3ヨーク34Cは、第3クランクピン32Cの位置に備えられる。第3ヨーク34Cは、ヨーク本体40Cに備えられた軸受部48Cの開口部50Cに第3クランクピン32Cが嵌合されて、クランク軸32に連結される。
【0082】
駆動部36の構成は、上記第1の実施の形態のプレス機械10と同じである。すなわち、クランク軸32に2つのメインギヤ52A、52Bを有し、各メインギヤ52A、52Bをそれぞれ2つのモータ54A1、54A2、54B1、54B2で駆動する構成を有する。
【0083】
以上の構成により、モータ54A1、54A2、54B1、54B2を駆動すると、クランク軸32が回転し、そのクランク軸32の回転運動がヨーク34A~34Cによって往復運動に変換されて、スライド16が上下方向に往復動する。
【0084】
このように、本実施の形態のプレス機械10によれば、スライド16を5点で加圧する場合であっても、1本のクランク軸32でスライド16を動作させることができる。
【0085】
なお、本実施の形態では、スライドを5点で加圧する場合を例に説明したが、本発明によれば、更に多点で加圧する構成も実現できる。
【0086】
また、本実施の形態では、スライドを5点で加圧する場合において、スライド16の四隅と中央を加圧する構成としているが、スライド16を加圧する位置(ポイント)は、これに限定されるものではない。加圧する位置は、ワーク等に応じて適宜設定できる。特に、四隅以外の5点目(第5ポイント)については、中央からずらした位置に設定することもできる。たとえば、スライド16の中央からクランク軸32の軸方向に沿って所定量ずらした位置に設定することもできる。
【0087】
《第3の実施の形態》
ここでは、ワークを連続自動加工する場合のプレス機械の運転方法について説明する。たとえば、トランスファプレスにおいて、ワークを連続自動加工する場合、1サイクル中にワークの搬送時間を確保する必要がある。従来は、プレスストローク長さ(スライドのストローク長さ)を十分に長くすることで、ワーク搬送に必要な時間を確保していた。
【0088】
しかし、プレスストローク長さが長くなると、クランク軸トルク、駆動系周りのギヤトルク、サーボプレスにおいてはサーボモータの必要トルクも大きくなり、その結果、プレス機械が大型化するという問題があった。また、駆動系の慣性モーメントも増大し、プレス速度の加減速性能が低下するという問題もあった。
【0089】
そこで、本実施の形態のプレス機械では、連続自動加工する場合に、1サイクルごとにスライドを上死点で一定時間停留させる。スライドを上死点で一定時間停留させることにより、停留時間をワーク搬送に利用できる。これにより、プレスストローク長さを必要最小にできる。
【0090】
必要最小なプレスストローク長さは、加工後のワークの高さをH、加工後のワークの搬送に必要なワーク下端と下型上面との間の隙間をh1、加工後のワークの搬送に必要なワーク上端と上型下面との間の隙間をh2とすると、2H+h1+h2である。
【0091】
図14は、1サイクルでのスライドの動作を示すグラフである。同図において、横軸は時間及びクランク軸の回転角度を示し、縦軸はスライドストロークを示している。
【0092】
スライド16は、時間T0において、上死点に位置している。クランク軸32が回転することにより、スライド16は下降し、時間T1で下死点に到達する。この時、クランク軸32の回転角度θは180°である。その後、更にクランク軸32が回転することにより、スライド16は上昇し、時間T2で上死点に到達する。この時、クランク軸32の回転角度θは0°(360°)である。この後、時間T3までクランク軸32の回転が停止され、スライド16の移動が停止される。すなわち、上死点で停留する。
【0093】
制御部60は、上記サイクルでスライド16が動作するように、駆動部36の駆動を制御する。すなわち、スライド16が上死点で一定時間停留するように、モータ54A1、54A2、54B1、54B2の駆動を制御する。この場合、スライド16の上死点でクランク軸32の回転を一定時間停止させることで、上記制御が実現される。
【0094】
このように、本実施の形態のプレス機械によれば、スライド16を上死点で一定時間停留させる運転を行うことで、ワークを連続自動加工する際のワークの搬送時間を確保できる。これにより、プレスストローク長さを必要最小にできる。そして、プレスストローク長さを必要最小にできることにより、駆動系周りのコンパクト化が図れる。また、駆動系周りの慣性モーメントも小さくできる。
【0095】
なお、本実施の形態では、スライドを上死点で一定時間停止させる構成としているが、上死点の近傍で一定時間停止させる構成としてもよい。ワークの搬送時間が確保されればよい。したがって、上死点又は上死点の近傍でクランク軸の回転を減速させることによっても、本目的は達成できる。
【符号の説明】
【0096】
10…プレス機械、12…フレーム、14…ボルスタ、16…スライド、18…スライド駆動機構、20…ベッド、20A…上面、22…コラム、24…クラウン、24A…モータ取付部、24B…モータ取付部、26…スライドガイド、30A…ポイント(第1ポイント)、30B…ポイント(第2ポイント)、30C…ポイント(第3ポイント)、30D…ポイント(第4ポイント)、30E…ポイント(第5ポイント)、32…クランク軸、32A…クランクピン(第1クランクピン)、32B…クランクピン(第2クランクピン)、32C…クランクピン(第3クランクピン)、34A…ヨーク(第1ヨーク)、34B…ヨーク(第2ヨーク)、34C…ヨーク(第3ヨーク)、36…駆動部、38…軸支持部、40A…ヨーク本体、40B…ヨーク本体、40C…ヨーク本体、42A…開口部、42B…開口部、42C…開口部、44A1…連結部、44A2…連結部、44B1…連結部、44B2…連結部、44C…連結部、46A…ガイドレール、46B…ガイドレール、46C…ガイドレール、48A…軸受部、48B…軸受部、48C…軸受部、50A…開口部、50B…開口部、50C…開口部、52A…メインギヤ、52B…メインギヤ、54A1…モータ、54A2…モータ、54B1…モータ、54B2…モータ、56A1…ピニオンギヤ、56A2…ピニオンギヤ、56B1…ピニオンギヤ、56B2…ピニオンギヤ、60…制御部
図1
図2
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図4
図5
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図10
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図14