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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054845
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20220331BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20220331BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B41J29/38 206
B41J11/42
B41J2/01 401
B41J29/38 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162082
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘治
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA30
2C056EB12
2C056EB38
2C056EB58
2C056EC12
2C056EC37
2C058AB08
2C058AC07
2C058AD01
2C058AE02
2C058AE09
2C058AF04
2C058AF12
2C058AF17
2C058GA14
2C058GC01
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AR03
2C061AS02
2C061HJ03
2C061HJ04
2C061HK11
2C061HK19
2C061HN15
(57)【要約】
【課題】印刷ジョブの実行開始の遅れが生じることを低減できる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置3は、用紙Pに印刷を行う印刷部11と、印刷部11に用紙Pを給紙する給紙部と、印刷部11で印刷された各用紙Pに対して施される後処理に要する後処理時間を後処理装置4から取得し、取得した後処理時間を用いて、給紙部による給紙タイミングを制御する制御部19とを備え、制御部19は、印刷部11のメンテナンス動作中に、実行前の印刷ジョブがある場合において、当該印刷ジョブの実行時に印刷される各用紙Pに対する後処理時間を後処理装置4から取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部に用紙を給紙する給紙部と、
前記印刷部で印刷された各用紙に対して後処理装置で施される後処理に要する後処理時間を前記後処理装置から取得し、取得した後処理時間を用いて、前記給紙部による給紙タイミングを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記印刷部のメンテナンス動作中に、実行前の印刷ジョブがある場合において、当該印刷ジョブの実行時に印刷される各用紙に対する後処理時間を前記後処理装置から取得することを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置に後処理装置を接続し、印刷装置で印刷された用紙に対して後処理装置で種々の後処理を施す印刷システムが知られている。後処理装置において施される後処理としては、ステープル処理やパンチ処理等がある。
【0003】
このような印刷システムにおいて印刷済みの用紙に後処理を施す場合には、後処理装置においてその処理内容に応じた時間を要する。したがって、印刷装置から後処理装置に用紙を受け渡す際には、後処理装置における処理内容に応じた時間だけ確保する必要がある。ただし、印刷装置から後処理装置に用紙を受け渡すまでの時間を長くし過ぎると生産性の低下を招くおそれがある。
【0004】
そこで、印刷装置において、印刷ジョブの印刷条件ごとに後処理時間を記憶し、後処理時間を考慮して給紙部による印刷部への給紙制御を行うことで生産性低下を回避する方法がある。しかし、後処理と用紙サイズとの組合せは膨大にあるため、全パターンの後処理時間を記憶するのは現実的でない。この方式を主な定形サイズの中で著しく生産性が低下する印刷ジョブに限定して実施するとしても、印刷装置側の条件(各機種の各搬送速度)と後処理との組合せは膨大であり、対象とする印刷ジョブの洗い出しには非常に手間がかかる。この方式は後処理時間が恒久的に変わらない想定のため、サービスマンが後処理装置の調整値を変更して後処理時間がわずかに伸びただけで、生産性が著しく低下することがあり得るという欠点もある。
【0005】
これに対し、特許文献1には、印刷装置が後処理装置から後処理時間を取得し、取得した後処理時間を用いて、給紙部による印刷部への給紙タイミングを制御することで、生産性の低下を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-73630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、後処理装置から後処理時間を取得できるのを待つ必要があるため、印刷ジョブの実行開始に遅れが生じることがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷ジョブの実行開始の遅れが生じることを低減できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の印刷装置は、用紙に印刷を行う印刷部と、前記印刷部に用紙を給紙する給紙部と、前記印刷部で印刷された各用紙に対して後処理装置で施される後処理に要する後処理時間を前記後処理装置から取得し、取得した後処理時間を用いて、前記給紙部による給紙タイミングを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記印刷部のメンテナンス動作中に、実行前の印刷ジョブがある場合において、当該印刷ジョブの実行時に印刷される各用紙に対する後処理時間を前記後処理装置から取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の印刷装置によれば、印刷ジョブの実行開始の遅れが生じることを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る印刷システムの概略構成図である。
図2】「片面印刷、後処理なし」の場合における給紙制御を説明するための図である。
図3】「両面印刷、後処理なし」の場合における給紙制御を説明するための図である。
図4】「片面印刷、後処理あり」の場合における給紙制御を説明するための図である。
図5】「両面印刷、後処理あり」で、用紙ごとの後処理時間が同じ場合における給紙制御を説明するための図である。
図6】「両面印刷、後処理あり」で、用紙ごとの後処理時間が異なる場合における給紙制御を説明するための図である。
図7】各用紙の給紙間隔を2×(Tp(用紙送り時間)+Tg(標準用紙間隔))の整数倍で変更した場合を説明するための図である。
図8】印刷装置が印刷部のクリーニング中に後処理時間を取得する動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0013】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷システムの概略構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係る印刷システム1は、コンピュータ2と、コンピュータ2に有線または無線LANなどのネットワークを介して接続された印刷装置3と、印刷装置3で印刷された用紙Pに対して後処理を施す後処理装置4とを備える。
【0015】
コンピュータ2は、用紙Pに印刷される画像データを編集可能に構成されており、この画像データを含む印刷ジョブを生成し、その印刷ジョブを印刷装置3に出力する。この印刷ジョブは、上述した画像データの他に、片面/両面印刷設定を示す情報、用紙サイズを示す情報、後処理の内容を示す情報等を含む。
【0016】
印刷装置3は、コンピュータ2から出力された印刷ジョブに基づき、用紙Pに対して印刷処理を施す。印刷装置3は、用紙Pに印刷を行う印刷部11を備える。印刷部11は、コンピュータ2から出力された印刷ジョブに含まれる画像データに基づいて、用紙Pに対してインクを吐出することによって印刷処理を施すものである。本実施の形態の印刷部11は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインクをそれぞれ吐出する4つのライン型のインクジェットヘッド12を備える。
【0017】
また、印刷装置3は、用紙Pが設置される給紙トレイ13と、給紙トレイ13に設置された用紙Pを取り出して印刷部11に給紙する給紙ローラ14とを備える。給紙トレイ13には、種々の用紙種類、用紙サイズの用紙Pが設置される。印刷装置3において印刷処理が行われる際には、給紙トレイ13に設置された用紙Pが給紙ローラ14によってピックアップされて印刷部11に給紙される。
【0018】
また、印刷装置3は、給紙ローラ14によって給紙された用紙Pを搬送する循環搬送路15を備える。循環搬送路15は、搬送ローラや搬送ベルトから構成され、給紙トレイ13から給紙された用紙Pを、用紙Pの搬送方向における印刷部11の上流側から下流側に向けて搬送する。
【0019】
循環搬送路15は、片面印刷の際には、印刷部11において一方の面に印刷処理の施された用紙Pをそのまま連絡路16を介して後処理装置4に受け渡す。両面印刷の際には、循環搬送路15は、片面の印刷処理が終了した用紙Pを反転部17まで搬送し、反転部17において表裏反転された用紙Pを再び印刷部11へ給紙する。その後、循環搬送路15は、印刷部11において再び印刷処理の施された両面印刷済みの用紙Pを、連絡路16を介して後処理装置4に受け渡す。なお、本実施の形態における給紙ローラ14および循環搬送路15が、給紙部に相当する。
【0020】
また、印刷装置3は、印刷部11をクリーニングするクリーニング部18を備える。クリーニング部18は、インクジェットヘッド12のノズル面をワイプするワイパ等を備える。
【0021】
また、印刷装置3は、印刷装置3全体を制御する制御部19を備える。制御部19は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。制御部19は、給紙ローラ14による用紙Pの給紙タイミング、循環搬送路15による用紙Pの搬送、インクジェットヘッド12からのインクの吐出等を制御する。
【0022】
また、制御部19は、印刷装置3から排紙された印刷済みの用紙Pに対して後処理を行う場合、その後処理に要する時間である後処理時間を後処理装置4から取得する。そして、制御部19は、後処理装置4から取得した後処理時間を用いて、後処理を行う場合における印刷部11への用紙Pの給紙タイミングを制御する。ここで、印刷部11への用紙Pの給紙タイミングには、給紙ローラ14による未印刷の用紙Pの給紙タイミングと、両面印刷時における循環搬送路15による片面印刷済みの用紙Pの給紙タイミングとが含まれる。
【0023】
また、制御部19は、クリーニング部18による印刷部11のクリーニング中において、実行前の印刷ジョブである保留ジョブがあり、クリーニング完了までの時間より後処理時間の取得に要する時間の方が短い場合、当該保留ジョブの実行時に印刷される各用紙Pに対する後処理時間を後処理装置4から取得する。
【0024】
後処理時間を用いた給紙タイミングの算出方法や、その算出した給紙タイミングに基づく印刷部11への給紙制御については、後で詳述する。なお、給紙タイミングに影響するパラメータとして、後処理時間以外に、例えば、用紙サイズ(用紙長さ)、片面/両面印刷設定、搬送速度および標準用紙間隔がある。ここで、搬送速度および標準用紙間隔は、印刷装置3の機種やグレード、1画素あたりに吐出するインクのドロップ数の最大値である最大ドロップ数等に応じて決定されるものである。
【0025】
後処理装置4は、印刷装置3から受け渡された印刷済みの用紙Pに対して所定の後処理を施す。後処理装置4における後処理としては、複数枚の用紙Pをステープルで綴じるステープル処理、部単位でオフセットを付けて排紙トレイに排出するオフセット処理、用紙Pに対して穴開け処理を施すパンチ処理、用紙Pを三つ折りしたり二つ折りしたりする折り処理、用紙Pを用いて製本を行う製本処理等がある。なお、これらの後処理を行うための具体的な機構については公知の機構を利用することができ、ここでは詳細な説明は省略する。
【0026】
後処理装置4は、後処理時間を予め記憶している。後処理装置4は、後処理装置4によって受け入れられる印刷済みの用紙Pごとの後処理時間を記憶している。例えば、後処理がステープル処理である場合には、印刷済みの各用紙Pが後処理装置4に受け入れられた際に行われる処理が用紙Pごとにそれぞれ異なるため、用紙Pごとにそれぞれ異なる後処理時間が予め記憶されることになる。後処理がステープル処理である場合において、印刷済みの各用紙Pが受け入れた際に行われる処理としては、例えば、整合板の移動処理、整合処理、留め処理の3つの処理があり、これらの処理に要する時間が印刷済みの各用紙Pに対応させて記憶される。
【0027】
一方、後処理がパンチ処理である場合には、印刷済みの各用紙Pが後処理装置4に受け入れられた際に行われる後処理は各用紙Pで同じであるため、その共通の後処理時間が記憶されることになる。
【0028】
なお、後処理時間に影響するパラメータとしては、後処理の種類以外に、例えば、用紙サイズ(用紙長さ、用紙幅)、排紙先トレイ、後処理する枚数、何枚目であるか、用紙種類、用紙の坪量、後処理装置4の調整値(搬送速度等)がある。
【0029】
次に、本実施形態の印刷システム1の作用について説明する。まず、印刷システム1の印刷装置3における用紙Pの給紙タイミングの基本的な制御について説明する。
【0030】
印刷システム1は、上述したとおり片面印刷と両面印刷とが可能であり、また、これらの印刷を行った用紙Pに対してそれぞれ後処理を施すことができるものである。すなわち、印刷システム1における片面/両面印刷設定と後処理の有無との組み合わせとしては、「片面印刷、後処理なし」、「両面印刷、後処理なし」、「片面印刷、後処理あり」および「両面印刷、後処理あり」の4つの組み合わせがある。したがって、これらの各組み合わせにおける印刷装置3の給紙制御についてそれぞれ説明する。
【0031】
まず、「片面印刷、後処理なし」の場合には、図2に示すように、給紙トレイ13から給紙ローラ14により給紙間隔Taで各用紙Pが給紙されるように制御される。給紙間隔Taは、用紙送り時間Tpと標準用紙間隔Tgとを加算した間隔である。用紙送り時間Tpは、1枚の用紙Pの搬送方向の長さを循環搬送路15の搬送速度で除算した値である。この時間は、印刷ジョブに含まれる用紙サイズの情報に基づいて設定される。また、標準用紙間隔Tgは予め設定された用紙間隔であって、例えば、循環搬送路15によって搬送した際、用紙P同士が衝突しない最短間隔に設定される。
【0032】
次に、「両面印刷、後処理なし」の場合には、図3に示すように、給紙トレイ13から給紙ローラ14により給紙間隔Tbで各用紙Pが給紙されるように制御される。給紙間隔Tbは、上述した「片面印刷、後処理なし」の場合における給紙間隔Taの2倍の間隔である。給紙トレイ13から給紙される用紙P間において、1枚の用紙Pの用紙送り時間Tpと標準用紙間隔Tgとが確保されているが、この用紙送り時間Tpの間に、循環搬送路15の反転部17において表裏反転された片面印刷済みの用紙Pが挿入されて搬送される。すなわち、本実施の形態は、両面印刷の際には、給紙トレイ13からの未印刷の用紙Pの給紙と、循環搬送路15の反転部17からの片面印刷済みの用紙Pの給紙(再給紙)とが交互に行われる。
【0033】
次に、「片面印刷、後処理あり」の場合には、図4に示すように、給紙トレイ13から給紙ローラ14により給紙間隔Tc1,Tc2,Tc3で各用紙Pが給紙されるように制御される。給紙間隔Tc1~Tc3は、各用紙Pの後処理時間Tf1~Tf3と同じ間隔であり、Tc1=Tf1、Tc2=Tf2、Tc3=Tf3である。具体的には、各用紙Pの後処理時間Tf1~Tf3が、後処理装置4から読み出されて印刷装置3に出力され、印刷装置3の制御部19によって取得される。そして、制御部19は、入力された後処理時間Tf1~Tf3を各用紙Pの給紙間隔Tc1~Tc3として設定する。なお、後処理時間Tf1~Tf3は、すべて同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。ただし、後処理時間Tf1~Tf3のいずれかが、上述した「片面印刷、後処理なし」の印刷条件の場合における給紙間隔Ta(用紙送り時間Tp+標準用紙間隔Tg)よりも短い場合には、その後処理時間Tf1~Tf3のいずれかに対応する給紙間隔は、給紙間隔Taに設定される。
【0034】
片面印刷の場合には、用紙Pごとにリニアに用紙間隔Tg’1~Tg’3を変更することができる。よって、後処理時間が用紙Pごとに変化したとしても、これに追従して各後処理時間分だけ給紙間隔を確保して給紙を行うことができる。
【0035】
次に、「両面印刷、後処理あり」の場合における給紙制御について説明するが、この場合、用紙Pごとの後処理時間が同じ場合と、用紙Pごとの後処理時間が異なる場合とで各用紙Pの給紙タイミングの算出方法が異なる。
【0036】
まず、「両面印刷、後処理あり」で、かつ用紙Pごとの後処理時間が同じ場合における給紙制御について説明する。
【0037】
この場合には、図5に示すように、給紙トレイ13から給紙ローラ14により給紙間隔Tdで各用紙Pが給紙されるように制御される。給紙間隔Tdは、各用紙Pの後処理時間Tfと同じ間隔である。
【0038】
各用紙Pの後処理時間Tfは、上記と同様に、後処理装置4から読み出されて印刷装置3に出力され、印刷装置3の制御部19によって取得される。そして、制御部19は、入力された後処理時間Tfを給紙トレイ13から給紙される各用紙Pの給紙間隔Tdとして設定する。
【0039】
また、「両面印刷、後処理あり」の場合も、「両面印刷、後処理なし」の場合と同様に、給紙トレイ13から給紙される用紙P間(例えば1枚目の印刷用紙と2枚目の用紙Pとの間)の用紙送り時間Tpの間に、循環搬送路15の反転部17から片面印刷済みの用紙Pが給紙される。すなわち、循環搬送路15が用紙間隔Tg’に基づいて制御され、上述した給紙タイミングで片面印刷済みの用紙Pを給紙する。
【0040】
したがって、制御部19は、Tf=2×(Tp+Tg’)を満たすような用紙間隔Tg’を算出し、この用紙間隔Tg’に基づいて循環搬送路15の反転部17からの給紙タイミングを設定する。
【0041】
次に、「両面印刷、後処理あり」で、かつ用紙Pごとの後処理時間が異なる場合における給紙制御について説明する。
【0042】
この場合にも、図6に示すように、給紙トレイ13から給紙ローラ14により各用紙Pが給紙されるとともに、その給紙トレイ13から給紙される用紙P間の用紙送り時間Tpの間に、循環搬送路15の反転部17から片面印刷済みの用紙Pが給紙されるが、上述した用紙Pごとの後処理時間が同じ場合とは、給紙トレイ13からの各用紙Pの給紙間隔Td1~Td3および用紙間隔Tg’の算出の方法が異なる。
【0043】
具体的には、m枚の用紙Pについて、用紙Pごとに異なる後処理時間Tf1~Tfmが、上記と同様に、後処理装置4から読み出されて印刷装置3に出力され、印刷装置3の制御部19によって取得される。そして、制御部19は、上述した各用紙Pの後処理時間がすべて同じ場合と同様に、Tfi=2×(Tp+Tg’i),i=1~mを満たすようなTg’iを算出する。具体的には、例えばTf1=2×(Tp+Tg’1)を満たすようなTg’1が算出され、Tf2=2×(Tp+Tg’2)を満たすようなTg’2が算出され、以下同様にして、m個の用紙間隔Tg’1~Tg’mが算出される。
【0044】
次いで、制御部19は、すべての用紙間隔Tg’i(i=1~m)に対して、下式を算出する。なお、njは、nj×2×(Tp+Tg’i)≧Tfjとなる最小の整数であり、Σは、j=1~mの場合の累積加算である。
【0045】
Σ(nj×2×(Tp+Tg’i)-Tfj),j=1~m
具体的には、Tg’1~Tg’mに対して下式がそれぞれ算出されて、m個の累積加算値V1~Vmが算出される。
【0046】
Σ(nj×2×(Tp+Tg’1)-Tfj),j=1~m
Σ(nj×2×(Tp+Tg’2)-Tfj),j=1~m
Σ(nj×2×(Tp+Tg’3)-Tfj),j=1~m


Σ(nj×2×(Tp+Tg’m)-Tfj),j=1~m
そして、上記のようにして算出したm個の累積加算値V1~Vmのうちの最小の累積加算値が選択され、その累積加算値を算出した際のTg’iが、最終的な用紙間隔Tg’として設定される。
【0047】
そして、制御部19は、給紙トレイ13から給紙される各用紙Pの給紙間隔Td1~Tdmとして、nj×2×(Tp+Tg’),j=1~mを算出して設定する。なお、njは、nj×2×(Tp+Tg’)≧Tfj,j=1~mを満たす最小の整数である。
【0048】
具体的には、例えば給紙間隔Td1は、n1×2×(Tp+Tg’)を算出することによって設定される。n1は、n1×2×(Tp+Tg’)≧Tf1を満たす最小の整数である。また、給紙間隔Td2は、n2×2×(Tp+Tg’)を算出することによって設定される。n2は、n2×2×(Tp+Tg’)≧Tf2を満たす最小の整数である。また、給紙間隔Td3は、n3×2×(Tp+Tg’)を算出することによって設定される。n3は、n3×2×(Tp+Tg’)≧Tf3を満たす最小の整数である。
【0049】
制御部19は、上記のようにして算出した給紙間隔Td1~Tdmを給紙ローラ14により給紙される各用紙Pの給紙タイミングとして設定するとともに、上記のようにして最終的に算出した用紙間隔Tg’に基づいて循環搬送路15の反転部17からの給紙タイミングを設定する。
【0050】
ここで、「両面印刷、後処理あり」で、後処理時間が図3に示す給紙間隔Tbよりも長い場合において、本実施の形態とは異なり、図7に示すように、給紙間隔Tbを整数倍して給紙間隔Td1に変更することで後処理時間を確保する制御を行うと、変更後の給紙間隔と後処理時間との差が大きくなって生産性の低下を招くことがある。
【0051】
これに対し、本実施の形態の印刷システム1では、後処理装置4において両面印刷済みの各用紙Pに対して施される後処理に要する後処理時間を取得し、その取得した両面印刷済みの用紙Pごとの後処理時間を用いて給紙トレイ13から給紙される用紙Pの給紙間隔Tdを設定するとともに、両面印刷済みの用紙Pごとの後処理時間を用いて給紙トレイ13から給紙される用紙Pと片面印刷済みの用紙Pとの用紙間隔Tg’を算出し、その用紙間隔Tg’を用いて片面印刷済みの用紙Pの給紙タイミングを設定するようにしたので、上述したような後処理時間に基づいて図3に示す給紙間隔Tbを整数倍して給紙間隔を変更する方法と比較すると、給紙トレイ13から給紙される用紙Pと片面印刷済みの用紙Pとの用紙間隔Tg’を最適化することができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0052】
また、印刷システム1において、両面印刷済みの用紙Pごとの後処理時間が互いに異なる場合に、その互いに異なる各後処理時間Tf1~Tfmを用いて、その各後処理時間Tf1~Tfmに対応する用紙間隔Tg’1~Tg’mをそれぞれ算出し、その算出した複数の用紙間隔Tg’1~Tg’mの中から、その各用紙間隔を用いて算出された上記給紙間隔(nj×2×(Tp+Tg’i),j=1~m)とその給紙間隔に対応する後処理時間Tfj(j=1~m)との差の合計が最小となるような用紙間隔を選択し、その選択した用紙間隔Tg’ を用いて給紙トレイ13から給紙される用紙Pと片面印刷済みの用紙Pの給紙タイミングを設定するようにした場合には、両面印刷済みの用紙Pごとに異なる後処理時間に対してより最適な用紙間隔を選択することができ、より生産性の向上を図ることができる。
【0053】
次に、印刷装置3が印刷部11のメンテナンス動作であるクリーニング中に後処理時間を取得する動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0054】
図8のフローチャートの処理は、印刷ジョブの実行開始により、開始となる。図8のステップS1において、制御部19は、次の印刷部11のクリーニングのタイミングは、後処理装置4における後処理が未完了状態のタイミングであるか否かを判断する。ここで、印刷装置3では、印刷部11のクリーニング周期が、例えば、所定印刷枚数ごとに印刷部11のクリーニングを行うように設定されている。
【0055】
次のクリーニングのタイミングが、後処理が未完了状態のタイミングではないと判断した場合(ステップS1:NO)、制御部19は、ステップS3に進む。
【0056】
次のクリーニングのタイミングが、後処理が未完了状態のタイミングであると判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部19は、次の印刷部11のクリーニングまでのクリーニング周期を調整する。具体的には、制御部19は、後処理が未完了状態のまま印刷部11のクリーニングが実行されないようにするために、クリーニング周期を所定範囲内で前か後にずらすように調整する。この後、制御部19は、ステップS3に進む。
【0057】
ここで、後処理装置4は、印刷装置3により後処理時間の取得が要求されると搬送予約を行う。このため、印刷装置3が後処理時間を取得すると、後処理装置4では排紙先トレイやステープルユニット等におけるメカ準備動作が始まる。
【0058】
このような後処理装置4では、後処理の途中で搬送予約が入ってしまうと正しく動作できない場合がある。このため、印刷装置3による後述するステップS5のクリーニング中の後処理時間の取得が後処理の途中で行われないようにするために、上述のステップS2におけるクリーニング周期の調整を行っている。
【0059】
クリーニングのタイミングになると、ステップS3において、制御部19は、クリーニング部18による印刷部11のクリーニングを開始させる。
【0060】
次いで、ステップS4において、制御部19は、クリーニング終了までの時間より保留ジョブの後処理時間の取得に要する時間の方が短いか否かを判断する。ここで、保留ジョブは、制御部19に入力済みの実行前の印刷ジョブである。ここでは、制御部19に記憶されている保留ジョブがあるものとする。保留ジョブの後処理時間の取得に要する時間がクリーニング終了までの時間以上であると判断した場合(ステップS4:NO)、制御部19は、ステップS6に進む。
【0061】
クリーニング終了までの時間より保留ジョブの後処理時間の取得に要する時間の方が短いと判断した場合(ステップS4:YES)、ステップS5において、制御部19は、保留ジョブの実行時に印刷される各用紙Pに対する後処理時間を後処理装置4から取得する。制御部19は、取得した保留ジョブの後処理時間を当該保留ジョブと関連付けて記憶する。この後、制御部19は、ステップS6に進む。
【0062】
ここで、複数の保留ジョブがあり、それらのうち、クリーニング終了までに後処理時間を取得可能な保留ジョブが複数ある場合、それら複数の保留ジョブの後処理時間を取得してもよい。
【0063】
ステップS6では、制御部19は、印刷部11のクリーニングが終了したか否かを判断する。クリーニングが終了していないと判断した場合(ステップS6:NO)、制御部19は、ステップS6を繰り返す。クリーニングが終了したと判断した場合(ステップS6:YES)、制御部19は、一連の動作を終了する。この後、クリーニングで中断していた印刷ジョブが再開される。
【0064】
上述のようにクリーニング中に後処理時間を取得して記憶した保留ジョブの実行時には、制御部19は、取得済みの当該保留ジョブの後処理時間を用いて、印刷部11への用紙Pの給紙タイミングを制御する。
【0065】
以上説明したように、印刷装置3では、制御部19は、印刷部11のメンテナンス動作であるクリーニング中において、保留ジョブがあり、クリーニング完了までの時間より後処理時間の取得に要する時間の方が短い場合、当該保留ジョブの実行時に印刷される各用紙Pに対する後処理時間を後処理装置4から取得する。これにより、クリーニング中に後処理時間を取得した保留ジョブの実行時には、後処理装置4から後処理時間を取得できるのを待つ必要がない。この結果、印刷ジョブの実行開始の遅れが生じることを低減できる。
【0066】
また、クリーニング中に後処理時間を取得するので、スタンバイ中に後処理時間を取得するのに比べて、騒音や消費電力への影響が抑えられる。
【0067】
なお、通常は、後処理時間の取得に要する時間は、印刷部11のクリーニングに要する時間よりも十分に短い。このため、クリーニング中に保留ジョブがある場合において、クリーニング完了までの時間より後処理時間の取得に要する時間の方が短いか否かの判断を省略し、当該保留ジョブの後処理時間を後処理装置4から取得するようにしてもよい。
【0068】
また、上述した実施の形態では、次のクリーニングのタイミングが、後処理が未完了状態のタイミングである場合に、次のクリーニングまでのクリーニング周期を調整したが、この処理を省略してもよい。また、後処理が未完了状態で印刷部11のクリーニングが開始された場合には、保留ジョブの後処理時間の取得を省略してもよい。
【0069】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0070】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0071】
(付記1)
用紙に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部に用紙を給紙する給紙部と、
前記印刷部で印刷された各用紙に対して後処理装置で施される後処理に要する後処理時間を前記後処理装置から取得し、取得した後処理時間を用いて、前記給紙部による給紙タイミングを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記印刷部のメンテナンス動作中に、実行前の印刷ジョブがある場合において、当該印刷ジョブの実行時に印刷される各用紙に対する後処理時間を前記後処理装置から取得することを特徴とする印刷装置。
【符号の説明】
【0072】
1 印刷システム
2 コンピュータ
3 印刷装置
4 後処理装置
11 印刷部
12 インクジェットヘッド
13 給紙トレイ
14 給紙ローラ
15 循環搬送路
16 連絡路
17 反転部
18 クリーニング部
19 制御部
P 用紙
図1
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図8