(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055058
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】抗力型風車
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
F03D3/06 B
F03D3/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162425
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】507305417
【氏名又は名称】畠山 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】畠山 光雄
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA13
3H178AA14
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC02
3H178CC12
(57)【要約】
【課題】 定量的な風の流れを確保し、振れ幅の少ない、安定した風力の得られる抗力型風車を提供する。
【解決手段】 本発明抗力型風車は、基台3上に出力軸2が回転可能に支持された風車本体1を形成し、該風車本体1の外側に基台に固定される誘導ブレード7a~7fを配設すると共に、該風車本体1の内側に出力軸に連結した回転ブレード8a~8dを配設してなる抗力型の風車において、該誘導7a~7fブレードは、外側からの風を受け入れるよう出力軸を中心とした中心線に対し25~35°の傾斜角度をもった羽根体を等間隔に配設し、該回転ブレード8a~8dは、誘導ブレードからの風を受けて回転する半円筒形の羽根体を等間隔に配設したことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に出力軸が回転可能に支持された風車本体を形成し、該風車本体の外側に基台に固定される誘導ブレードを配設すると共に、該風車本体の内側に出力軸に連結した回転ブレードを配設してなる抗力型の風車において、
該誘導ブレードは、外側からの風を受け入れるよう出力軸を中心とした中心線に対し25~35°の傾斜角度をもった羽根体を等間隔に配設し、
該回転ブレードは、誘導ブレードからの風を受けて回転する半円筒形の羽根体を等間隔に配設した、
ことを特徴とする抗力型風車。
【請求項2】
誘導ブレードを、内側に湾曲した羽根体に形成したことを特徴とする請求項1記載の抗力型風車。
【請求項3】
誘導ブレードを、上円枠4及び下円枠5との間に弾性体を介設して擺動自在としたことを特徴とする請求項1又は2記載の抗力型風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗力型風車に関し、詳しくは半円筒型のブレードを出力軸の周り放射状に配したサボニウム型風車に非回転式の誘導ブレードを配した抗力型風車に関する。
【背景技術】
【0002】
風力エネルギーを利用する一形態として、静音型で起動トルクが大きいという特徴を備えたサボニウム型風車が知られているが、一方で効率が低いという欠点を有している。
そこで本発明者は、その欠点を改善するものとして、半円筒型のブレードに抗力を高める案内ブレーを配設した抗力型風車を提案し、これによって所定の効率改善効果を得ている(特許文献1)。
一方、これには、以下の如き課題が残されていた。
吹いてくる風にブレードが直角に向き合う場合には、その風力を最も効率良く受けて、最大限のトルクが発生するが、しかし、回転に伴って風に向かうブレードの角度が斜め方向となると、その発生トルクが弱まり、やがて最低の回転力となる。
そして、なお回転が続くと、やがて回転角度が回復し、再び直角方向に向かい最大限のトルク発生を得るものとなるが、この最大値と最小値の間の変化を繰り返し、波状のサインカーブを描きながら、回転を続けることとなる。
すると、最大値と最小値との間に風力の格差が生まれることとなり、得られる出力が不安定となり、効率に悪影響を与えるものとなる。又、一定以上の強い風、若しくは弱い風となると、その振れ幅が出力装置の想定する値から逸脱するものとなり、大きく効率を落とすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を克服しようとしてなされたもので、ブレードが受ける風を流入と回転とに分け、流入を担う誘導ブレードと回転を担う回転ブレードにより定量的な風の流れを確保し、振れ幅の少ない、安定した風力の得られる抗力型風車を開発しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明抗力型風車は、基台上に出力軸が回転可能に支持された風車本体を形成し、該風車本体の外側に基台に固定される誘導ブレードを配設すると共に、該風車本体の内側に出力軸に連結した回転ブレードを配設してなる抗力型の風車において、該誘導ブレードは、外側からの風を受け入れるよう出力軸を中心とした中心線に対し25~35°の傾斜角度をもった羽根体を等間隔に配設し、該回転ブレードは、誘導ブレードからの風を受けて回転する半円筒形の羽根体を等間隔に配設したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の抗力型風車は、誘導ブレードを、内側に湾曲した羽根体に形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の抗力型風車は、誘導ブレードを、上円枠4及び下円枠5との間に弾性体を介設して擺動自在としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明抗力型風車は、誘導ブレードと回転ブレードとの併設により、風の導入と回転力とを分離させ、吹いてきた風は、外側に風の導入を担う誘導ブレードにより中心軸に向かって25°~35°の傾斜角で向心状に配設された羽根体によって流れを変換させ、より中心方向へと流れが誘導される。内側の回転ブレードは、この誘導ブレードからの風を集中的に受けて、安定した回転となり、抗力型風車としてより効率的な発電等を発揮することができる。
【0009】
該誘導ブレードは、基台上に固定的に結合されるので、出力軸に偏った負荷を掛けることがなく、堅牢で故障の少ないものとなる。
【0010】
又、回転ブレードは、同規模の風車と比較して小型の羽根体とすることができるので、比較的強い風が吹いた場合でも回転は抑制され、風切り音の発生する割合が少なく、より静かな音の回転となる。
【0011】
請求項2記載の抗力型風車は、羽根体を、翼状に湾曲させると、誘導ブレードが風を適格に捉え、且つ、それを内側へと導く作用が顕著となる。
【0012】
請求項3記載の抗力型風車は、風力を逃がすための弾性体を設けると、暴風等の強い風が吹いた場合にも、誘導ブレードの風を受ける面積を低減されることができ、故障の原因となることを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明抗力型風車の実施形態を示す正面図である。
【
図3】
図1の抗力型風車の誘導ブレードの作用を示す模式的断面図である。
【
図4】
図1の抗力型風車の回転ブレードの作用を示す模式的断面図である。
【
図5】誘導ブレードの羽根体の一形態を示す一部拡大図正面図である。
【
図6】誘導ブレードにバネを介着した状態を示す一部拡大図正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明すると、
図1は、本発明に係る抗力型風車の実施形態を示す正面図であり、
図2は、
図1のA-A断面図である。図中にあって、1は風車本体であり、その出力軸2が基台3に回転可能に支持されている。基台3には、発電機等の動力を回収する手段が内蔵されている。
風車本体1は、上下に上円枠4及び下円枠5が配設され、その外側に、外からの風を内側へと導く誘導ブレード7a~7fが等間隔に配設され、その内側に出力軸2に連結した略半円筒形をなす回転ブレード8a~8dが等間隔で配設されて構成される。該上円枠4及び下円枠5は、内側と外側に夫々対をなして枠体が配される。
【0015】
上記風車本体1にあって、外側に配される誘導ブレード7a~7fは、平板状の羽根体が出力軸2と並行させて縦方向に並ぶものであって、その上端と下端が円形をなす上円枠4及び下円枠5に連結して、この枠付けで固定される。
上円枠4及び下円枠5は回転のない固定形とし、その固定の手段は、例えば、支持杆6等を介して基台3に固着するのが簡潔であるが、外側に櫓を組んでそこに固定しても良い。
【0016】
該誘導ブレード7a~7fは、出力軸2を中心とした中心線Tを想定したときに、その中心線との間で25~35°の傾斜角αをなす取り付け構造に配設される。
即ち、平面上、中心軸とそれを取り巻く円形の枠体が筒型に構成されたとき、その枠体側に中心軸に向かって、放射状の中心線Tと交わり、角度αを25~35°(外側には角度145~155°)とする傾斜状の羽根体を固定させ、衝立の如くに立設させて風に抗し、その向きを内側へと変換させる構造を備えるものである。
例えば、その形状を縦長の板体としたとき、その板体が上下を上円枠4と下円枠5とに固定され、その板体の内側端部が中心軸に向かって30°の傾斜角度で立設され、それが6枚等間隔で配置されたものとする。
【0017】
このとき、誘導ブレード7a~7fは、上記の如く平板状を原則とするが、
図5に示す如く、内側に凹んだ湾曲型の翼体として、一旦風を溜め込んで、下流側に流すことのできる構造としても良い。
【0018】
又、上円枠4及び下円枠5との間には、バネ等の弾性体を介着させて、一定以上の風圧が生じた場合に折り畳まれ、風圧が弱まったときに戻る形態としても良い。
【0019】
回転ブレード8a~8dは、上記誘導ブレード7a~7fの内側に配されるもので、中心が出力軸2に軸着され、半円筒形の羽根体例えば4枚を等間隔に配設して構成される。
上記誘導ブレード7a~7fと接触することはなく、その内側で回転するものであるが、誘導ブレード7a~7fからの風を受け入れる作用から、可及的に隣接位置に設けられことが望ましい。
又、その設けられる枚数は任意の枚数であるが、誘導ブレードの枚数や幅寸法との関係から風量等を勘案した最も効率的な枚数とする。
【0020】
出力軸2は、基台3にベアリング等で回転可能に支持され、その回転力を歯車、タイミングベルト等を介して発電機等の動力源に伝えるものとする。
上円枠4及び下円枠5は、固定式のもので、主に基台3に支持杆6等を介して支持される。
【0021】
次に、本発明抗力型風車の作用を説明する。
今、本発明風車を、季節風、海風、陸風等の豊かな場所に設置すると、その吹いてきた風は、例えば、
図3に示す如く左側からの場合、その風は、前方のブレード7a~7cに当たると、それが中心軸に向かって25°~35°の傾斜角で向心状に配設されているから、その傾斜に沿って流れを変換させ、より中心方向へと流れを変えるものとなる。
即ち、方向性をもった風の流れは、傾斜した壁にあたると、そのベクトルを傾斜に沿って変換させ、且つ、それが25°~35°の比較的穏やかな傾斜角度であると、その流れに激しい乱れを起こさせることがなく、円滑な流れの変換となる。
その結果、吹いてくる風は、機体のより内側へと導かれ、且つ、それが固定されたものであるから、一定した角度を保ち、導き入れる風量を定量的に確保したものとなる。
又、それが上側と下側とに渡って誘導ブレード7a~7fの直径幅いっぱいに作用することになるから、取り入れる風の量は、風車の幅いっぱいに広がるものとなる。
【0022】
一方、風の流出にあっては、風下にあたるブレード7a~7bの傾斜角度から、風の流れは拡散方向へと変換され、中心から離れて放散される流れとなる。
即ち、上記前側にあたる誘導ブレードから中心方向に集められた風は、一旦回転ブレードを経た後、それが流出されて風下側に至ると、逆の中心方向から離れた方向へと広がる流れに変換され、周囲へと拡散する方向に導かれるものとなる。
【0023】
斯うして、誘導ブレード7a~7fの全体にあっては、前側の誘導ブレード7a~7cが吹いてくる風を集中的に集め、これを回転ブレードの存する中心方向へと導き入れるが、一旦、回転ブレードを経た風は、逆に後ろ側の誘導ブレード7d~7fによって中心を離れた拡散方向へと導出され、全体として流入と流出が円滑に効率よく作動するものとなる。
【0024】
次に、回転ブレード8a~8dの作用を説明すると、上記誘導ブレード7a~7cによって、内側へと誘導された風は、回転ブレード8a~8dの半円型の羽根体へと入り、これを回転させ、そこで発生した回転トルクが出力軸2へと伝達され、強い風力を生むものとなる。
このとき、ブレードの回転角度によって回転トルクが最大値と最小値の間の変化を繰り返すことは、従来の風車と変わりはないが、流入される風の量はブレードの面積のみによらず、上記誘導ブレードによって、一定した定量的な値となる。
即ち、等容量の風車と比較したとき、外側に誘導ブレードを配置した分、内側の回転ブレードの風を受ける羽根の面積はより小さい値で済むこととなるので、そのブレードから発生する回転力の最大値と最小値は、その振れ幅は抑えられたものとなる。
その結果、繰り返されるサインカーブの幅はより小さく、安定した回転トルクを発生させるようになる。
【0025】
このとき、上記誘導ブレードと回転ブレードの相互関係を探ると、例えば、
図6に示す如く、左側から風が吹いてきた場合に、上述の如く、誘導ブレード7a~7cに当たった風が流れを変換させる場合に、その傾斜角度が25°~35°の比較的穏やかな角度であるから円滑な流路を形成し、この流れを中心軸から放射状に配置された半円筒形の回転ブレードが受けて、効率的良く回転するものとなる。
一方、この回転を終了させて、風が装置内を出る場合には、内側にある回転ブレード8a~8bの形状が半円筒形のお盆状であるから、そのお尻側が風の流れを押し出す方向に作用させ、後ろ側にある誘導ブレード7d~7fへと渡し、そこから拡散方向へと放散させるものとなる。
従って、誘導ブレードと回転ブレードとの相互関係により、風の流入と流出とが極めて円滑で効率的なものとなり、この作用が周囲からの風を集めて吸引し、且つ、拡散する効果を促す。
尚、上記図示は、風の吹く方向を一例に限って説明したが、各ブレードは出力軸を中心に放射状に配設されるので、異なった方向から吹く風にも同様の原理で作用するものとなる。
【0026】
次いで、以上の作用に基づく本発明風車の効果を説明する。
本発明抗力型風車は、風の導入と回転力とを分離させ、外側に風の導入を担う誘導ブレードを配したので、吹いてきた風は、中心軸に向かって25°~35°の傾斜角で向心状に配設された羽根によって流れを変換させ、より中心方向へと流れを変え、それが回転ブレードを回転させる機動力となる。
従って、吹いてきた風は、ブレードの回転角度には影響されることなく、常に一定の状態で内側へと導入されることとなり、それを受けた回転ブレードは、一定した風の供給により、安定した回転トルクを発生させることが可能となる。
羽根体の回転角度により最大値と最小値の大きな幅の変化を繰り返すことがなく、その振れ幅の少ない、効率的な発電力を獲得することができるものとなる。
【0027】
回転ブレードを回転させた風は、それが流出されて風下側に至ると、逆の中心方向から離れた方向へと拡散する流れに変換されるので、周囲へと拡散する方向に導かれる。
従って、風の流出も円滑なものとなり、流れの乱れを起こすことなく、回転の効率を上げることができる。
この結果、安定した回転力を得ることができ、より効率的な風力を獲得することができるものとなる。
【0028】
ときに強い風が吹き、抗力型風車の限界を超えるような場合でも、誘導ブレードの風を受ける面積等には一定の制限があり、過剰の風を誘導することがなく、倒壊等を避けることができる。
又、弱い風で所定の風力が得難い場合にも、誘導ブレードには、ブレードの直径幅いっぱいに風の誘導作用が働き、風を集中的に受け入れることができ、効率的な回転を促すことができる。
【0029】
誘導ブレード7a~7fは、基台3等に固定的に結合させることができるので、出力軸2に偏った負荷を掛けることがなく、堅牢で故障の少ない構造とすることが可能となる。
【0030】
比較的強い風が吹いた場合でも、回転ブレード8a~8dの回転は抑制されているので、風切り音の発生する割合が少なく、静音効果を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明抗力型風車は、季節風、海風、陸風等の豊かな場所に設置されて効力を発揮するが、小型で静音性に優れるので、住宅地、都市等にも好適に使用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 風車本体
2 出力軸
3 基台
4 上円枠
5 下円枠
6 支持杆
7a~7f 誘導ブレード
8a~8d 回転ブレード