(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055080
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ付形具及びガイドワイヤ付形方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
A61M25/09 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162456
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】596165589
【氏名又は名称】学校法人 聖マリアンナ医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】591050729
【氏名又は名称】株式会社オーゼットケー
(71)【出願人】
【識別番号】591058459
【氏名又は名称】新和商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 祐記
(72)【発明者】
【氏名】明石 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】三橋 克伯
(72)【発明者】
【氏名】森下 喜郎
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB07
4C267CC08
4C267FF03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】繰り返し使用による形状の変化が少なく、ガイドワイヤの微小な付形加工を容易とするガイドワイヤ付形具及びガイドワイヤ付形方法を提供する。
【解決手段】内側面に本体部溝を設けられた本体部と、内側面に回転部溝を設けられた回転部と、本体部と回転部とを軸支し、それぞれの内側面どうしが開く又は閉じるように回転させる回転芯棒(14,15)と、本体部に設けられ、本体部の内側に突出し、かつ、回転芯棒(14,15)が挿通する本体部軸筒と、回転部に設けられ、回転部の内側に突出し、かつ、回転芯棒(14,15)が挿通する回転部軸筒とを備え、ガイドワイヤ(G)は、前記本体部溝と前記回転部溝とによって案内され、回転部の、本体部に対して閉じる向きの回転にともなって回転芯棒(14,15)の周りに巻き付くように構成する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形するように構成されたガイドワイヤ付形具であって、
内側面に本体部溝を設けられた本体部と、
内側面に回転部溝を設けられた回転部と、
前記本体部と前記回転部とを軸支し、それぞれの内側面どうしが開く又は閉じるように回転させる回転芯棒と、
前記本体部に設けられ、前記本体部の内側に突出し、かつ、前記回転芯棒が挿通する本体部軸筒と、
前記回転部に設けられ、前記回転部の内側に突出し、かつ、前記回転芯棒が挿通する回転部軸筒とを備え、
前記ガイドワイヤは、前記本体部溝と前記回転部溝とによって案内され、前記回転部の、前記本体部に対して閉じる向きの回転にともなって前記回転芯棒の周りに巻き付くように構成された、
ガイドワイヤ付形具。
【請求項2】
前記回転芯棒が前記回転部に対して軸心方向に自在に往復動し、
前記回転部を原動節とし、かつ、前記回転芯棒を従動節とするカム機構を有し、
前記カム機構は、前記回転部が前記本体部に対して閉じる向きに回転する際に前記回転芯棒の先端が前記各溝から離れる向きに従動するように構成された、
請求項1に記載のガイドワイヤ付形具。
【請求項3】
前記回転芯棒に固定されるフォロア部材を備え、
前記回転部は、前記回転芯部の軸心に対して略斜めに向くカム端面を有し、
前記回転芯棒は前記フォロア部材がフォロア端面を有し、前記回転時に前記カム端面と前記フォロア端面とが滑り接触するように構成された、
請求項2に記載のガイドワイヤ付形具。
【請求項4】
前記回転芯棒に固定されるフォロア部材を備え、
前記回転部はカム端面を有し、
前記回転芯棒は前記フォロア部材が、前記回転芯部の軸心に対して略斜めに向くフォロア端面を有し、前記回転時に前記カム端面と前記フォロア端面とが滑り接触するように構成された、
請求項2に記載のガイドワイヤ付形具。
【請求項5】
前記回転芯棒は、芯棒基部が前記本体部軸筒及び前記回転部軸筒に挿通し、かつ、前記ガイドワイヤが巻き付くように、前記先端において前記芯棒基部から突出して設けられるピン状の巻き芯部を有し、
該巻き芯部は、前記芯棒基部よりも径小に形成され、かつ、前記巻き芯部の中心線である巻き芯中心線と前記芯棒基部の中心線である基部中心線とが偏心するように設けられる、
請求項3または4に記載のガイドワイヤ付形具。
【請求項6】
前記各溝に対する左右両側に一列に配置され、かつ、それぞれの前記巻き芯部どうしが相対するように配置される一対の前記回転芯棒を備え、
前記一対の回転芯棒に対応し、それぞれ前記左右両側に配置される一対の前記本体部軸筒及び一対の前記回転部軸筒を備える、
請求項5に記載のガイドワイヤ付形具。
【請求項7】
内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形するように構成されたガイドワイヤ付形具であって、
第1の本体部と、
内側面に本体部溝を設けられ、前記第1の本体部に対して前記本体部溝の方向に摺動可能な第2の本体部と、
内側面に回転部溝を設けられた回転部と、
前記本体部と前記回転部とを軸支し、それぞれの内側面どうしが開く又は閉じるように回転させる回転芯棒と、
前記第1の本体部に設けられ、前記第1の本体部の内側に突出し、かつ、前記回転芯棒が挿通する本体軸筒と、
前記回転部に設けられ、前記回転部の内側に突出し、かつ、前記回転芯棒が挿通する回転部軸筒とを備え、
前記ガイドワイヤは、前記本体部溝と前記回転部溝とによって案内され、前記回転部の、前記本体部に対して閉じる向きの回転にともなって前記先端部が前記回転芯棒の周りに巻き付き環状に付形されるとともに、基端部が前記本体部溝に案内されたまま前記第2の本体部がスライドして、前記基端部から引っ張られることにより前記先端部が前記巻き付き時の環状形状よりも径小な環状形状に整形されるように構成された、
ガイドワイヤ付形具。
【請求項8】
ガイドワイヤ付形具の内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形するガイドワイヤ付形方法であって、
ガイドワイヤ案内工程とガイドワイヤ折り曲げ工程とを含み、
前記ガイドワイヤ案内工程は、本体部と回転部とをそれぞれの内側面が同じ側を向くように配置する本体部・回転部配置ステップと、前記ガイドワイヤを前記本体部と前記回転部とを軸支する回転芯棒の裏側に通すように配置するガイドワイヤ配置ステップと、前記ガイドワイヤを前記本体部の内側面に設けられた本体部溝と、前記回転部の内側面に設けられた回転部溝とにセットするガイドワイヤセットステップとを含み、
ガイドワイヤ折り曲げ工程は、前記回転部を、前記本体部と前記回転部との前記内側面どうしを合わせるように回転させ、前記ガイドワイヤを前記回転芯棒の周りに巻き付ける折り畳みステップを含む、
ガイドワイヤ付形方法。
【請求項9】
ガイドワイヤ付形具の内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形するガイドワイヤ付形方法であって、
ガイドワイヤ案内工程とガイドワイヤ折り曲げ工程とを含み、
前記ガイドワイヤ案内工程は、第1の本体部と、内側面に本体部溝を設けられ、前記第1の本体部に対して前記本体部溝の方向に摺動可能な第2の本体部と、内側面に回転部溝を設けられた回転部とをそれぞれの内側面が同じ側を向くように配置する本体部・回転部配置ステップと、前記ガイドワイヤを前記各本体部と前記回転部とを軸支する回転芯棒の裏側に通すように配置するガイドワイヤ配置ステップと、前記ガイドワイヤを前記本体部溝と前記回転部溝とにセットするガイドワイヤセットステップとを含み、
ガイドワイヤ折り曲げ工程は、前記回転部を、前記各本体部と前記回転部との前記内側面どうしを合わせるように回転させ、前記ガイドワイヤの前記先端部を前記回転芯棒の周りに巻き付き環状に付形する折り畳みステップと、前記ガイドワイヤの基端部が前記本体部溝に案内されたまま前記第2の本体部をスライドし、前記ガイドワイヤを前記基端部から引っ張ることにより前記先端部を前記巻き付け時の環状形状よりも径小な環状形状に整形する整形ステップとを含む、
ガイドワイヤ付形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガイドワイヤ付形具及びガイドワイヤ付形方法に関し、特に内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形することのできるガイドワイヤ付形具及びガイドワイヤ付形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガイドワイヤを略直線方向に配置する弾性付形板と、前記ガイドワイヤを付形するワイヤ付形芯棒とを備え、前記ワイヤ付形台が折り畳むように変形して、前記弾性付形板の内側に配置される前記ガイドワイヤを前記弾性付形板ごと前記ワイヤ付形芯棒に巻き付けることのできるガイドワイヤ付形具がある(特許文献1)。
【0003】
ガイドワイヤとは、例えばカテーテルイントロデューサなどの血管への挿入及び留置を容易にするための柔軟性のあるワイヤ状の器具をいう。ガイドワイヤの端部には、患者に挿入する側のガイドワイヤ端を患者側端と、操作する術者側のガイドワイヤ端を手元端とがある。ガイドワイヤは、例えば患者側端を曲げ変形させ、希望する向き、傾きなどに形状付けすることにより、屈曲病変や側枝へのアクセスを容易となる。
【0004】
このとき、患者側端が鋭利であれば、血管の内壁を傷つけ、最悪な場合は血管を破ってしまうおそれがある。そのため、患者側端を例えば環状に付形し、先端を折り返すことにより血管のダメージを低減することが求められる。
【0005】
従来のガイドワイヤ付形具91を
図23に示す。従来のガイドワイヤ付形具91においては、ガイドワイヤGの前記患者側端を、弾性付形板92によって、ワイヤ付形芯棒93に巻き付け変形させて環状に付形する。
【0006】
このとき、ガイドワイヤGは弾性付形板92との間においてワイヤ付形芯棒93の曲面形状に倣うため、その曲面形状の軸方向から視て環状を形成するように変形される。すなわち、弾性付形板92は、最初基端側がワイヤ付形芯棒93に巻き付くように変形してガイドワイヤGを挟み、徐々に前記基端側から先端側にかけてワイヤ付形芯棒93に巻き付くのにつれて、環状を形成するようにガイドワイヤGを挟み込んでゆく。
【0007】
そのため、従来のガイドワイヤ付形具91はワイヤ付形芯棒93の曲面形状に従って環状に付形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のガイドワイヤ付形具91は、ガイドワイヤGを付形する際に弾性付形板92がワイヤ付形芯棒93に巻き付くように変形され、かつ、付形後にワイヤ付形芯棒93から離れるように元の形状に戻されるため、繰り返して使用するうちに弾性付形板92の部分的な塑性変形により一部が元の形状に復元しなくなる可能性が高い。特に、ガイドワイヤGの患者側端を微小に付形する目的においては、繰り返し使用による弾性付形板92の形状の変化が生じ、目指す微小な付形加工が困難となる虞が大きい。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑み、繰り返し使用による形状の変化が少なく、ガイドワイヤの微小な付形加工を容易にするガイドワイヤ付形具及びガイドワイヤ付形方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形するように構成されたガイドワイヤ付形具であって、内側面に本体部溝を設けられた本体部と、内側面に回転部溝を設けられた回転部と、前記本体部と前記回転部とを軸支し、それぞれの内側面どうしが開く又は閉じるように回転させる回転芯棒と、前記本体部に設けられ、前記本体部の内側に突出し、かつ、前記回転芯棒が挿通する本体部軸筒と、前記回転部に設けられ、前記回転部の内側に突出し、かつ、前記回転芯棒が挿通する回転部軸筒とを備え、前記ガイドワイヤは、前記本体部溝と前記回転部溝とによって案内され、前記回転部の、前記本体部に対して閉じる向きの回転にともなって前記回転芯棒の周りに巻き付くように構成された、ガイドワイヤ付形具を提供するものである。
【0012】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形具は、先ず、開いた状態の本体部及び回転部において前記本体部溝及び前記回転部溝に沿うようにガイドワイヤを配置して、次に、前記回転部を前記本体部に対して閉じる向きに回転させることにより、前記ガイドワイヤが前記本体部溝と前記回転部溝とによって回転芯棒の周りに巻き付くことにより前記ガイドワイヤを環状に付形することができる。
【0013】
このとき、本発明のガイドワイヤ付形具は、前記従来のガイドワイヤ付形具のような弾性付形板を用いることがなく、前記回転部の、前記回転芯棒を中心にした回転によって前記ガイドワイヤを巻き付けるため、繰り返し使用による形状の変化が少なく、微小な付形加工を容易にすることができる。
【0014】
また、前記ガイドワイヤを案内する前記本体部溝及び前記回転部溝がそれぞれ内側に設けられる前記本体部及び前記回転部に対して、前記回転芯棒は、前記本体部の内側に突出する本体部軸筒に挿通され、かつ、前記回転部の内側に突出する回転部軸筒に挿通される。このように前記本体部軸筒及び前記回転部軸筒がそれぞれ突出して設けられるため、前記ガイドワイヤは、前記回転芯棒に邪魔されず、前記本体部溝及び前記回転部溝に沿うとともに、前記回転芯棒と前記本体部及び前記回転部との間を潜るように配置されることができる。
【0015】
そのため、本発明のガイドワイヤ付形具は、前記回転芯棒を、前記本体部及び前記回転部を軸支するシャフトとして用いることができ、かつ、前記ガイドワイヤを巻き付けて付形する型として用いることができる。このように、シャフトと型とを別々に備える必要がなく、簡素且つコンパクトな構造を有することができる。
【0016】
(2)また、前記回転芯棒が前記回転部に対して軸心方向に自在に往復動し、前記回転部を原動節とし、かつ、前記回転芯棒を従動節とするカム機構を有し、前記カム機構は、前記回転部が前記本体部に対して閉じる向きに回転する際に前記回転芯棒の先端が前記各溝から離れる向きに従動するように構成されてもよい。
【0017】
すなわち、回転芯棒の先端が各溝から離れることにより、ガイドワイヤが回転部の回転に伴って環状に付形された後は前記回転芯棒が前記ガイドワイヤから逃げることができる。そのため、本発明のガイドワイヤ付形具から、付形された前記ガイドワイヤを取り外す際に、前記回転芯棒が邪魔することがない。このように、術者は付形した前記ガイドワイヤを容易に取り外すことができ、効率的にこのガイドワイヤの付形加工を行うことができる。
【0018】
(3)また、前記回転芯棒に固定されるフォロア部材を備え、前記回転部は、前記回転芯部の軸心に対して略斜めに向くカム端面を有し、前記回転芯棒は前記フォロア部材がフォロア端面を有し、前記回転時に前記カム端面と前記フォロア端面とが滑り接触するように構成されてもよい。
【0019】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形具は原動節である回転部がカム端面を有し、従動節である回転芯棒に固定されるフォロア部材がフォロア端面を有するため、簡素な構造のカム機構を備える。そのため、本発明のガイドワイヤ付形具を効率よく製作することができ、使用することができる。
【0020】
(4)また、前記回転芯棒に固定されるフォロア部材を備え、前記回転部はカム端面を有し、前記回転芯棒は前記フォロア部材が、前記回転芯部の軸心に対して略斜めに向くフォロア端面を有し、前記回転時に前記カム端面と前記フォロア端面とが滑り接触するように構成されてもよい。
【0021】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形具は原動節である回転部がカム端面を有し、従動節である回転芯棒に固定されるフォロア部材がフォロア端面を有するため、簡素な構造のカム機構を備える。そのため、本発明のガイドワイヤ付形具を効率よく製作することができ、使用することができる。
【0022】
(5)また、前記回転芯棒は、芯棒基部が前記本体部軸筒及び前記回転部軸筒に挿通し、かつ、前記ガイドワイヤが巻き付くように、前記先端において前記芯棒基部から突出して設けられるピン状の巻き芯部を有し、該巻き芯部は、前記芯棒基部よりも径小に形成され、かつ、前記巻き芯部の中心線である巻き芯中心線と前記芯棒基部の中心線である基部中心線とが偏心するように設けられてもよい。
【0023】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形具は回転芯棒の巻き芯部が、本体部軸筒及び回転部軸筒に挿通する芯棒基部よりも細いため、ガイドワイヤは、前記芯棒基部の周りに巻き付くよりも前記巻き芯部の周りに巻き付くことによって、より径の小さい環状に付形されることが可能となる。これにより、ガイドワイヤの使用箇所、用途等や術者の好みに合わせて、様々な形状、大きさなどに付形することが容易となる。
【0024】
また、巻き芯中心線と基部中心線とが偏心するため、回転部を本体部に対して閉じる向きに回転する前の状態において、前記回転芯棒を、前記巻き芯中心線が各溝よりも離れた側に偏るような角度に回転させておくことにより、前記巻き芯部と前記各溝との間の隙間を大きく空けることができる。これにより、前記ガイドワイヤを、容易にこの隙間に配置することができる。
【0025】
よって、術者は付形加工を容易にすることができる。
【0026】
(6)また、前記各溝に対する左右両側に一列に配置され、かつ、それぞれの前記巻き芯部どうしが相対するように配置される一対の前記回転芯棒を備え、 前記一対の回転芯棒に対応し、それぞれ前記左右両側に配置される一対の前記本体部軸筒及び一対の前記回転部軸筒を備えてもよい。
【0027】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形具は、左右一対の前記回転芯棒を備え、かつ、それぞれの巻き芯部が左右方向の中央に位置するため、例えば、左手が本体部を支持しつつ右手でガイドワイヤを支持して各溝にセットすることができ、しかも、逆に右手が本体部を支持しつつ左手で前記ガイドワイヤを支持して前記各溝にセットすることができる。なお、本明細書において「セット」とは、対象を特定の場所に動かないように置くことをいい、具体的に、前記ガイドワイヤを前記各溝に動かないように置くことをいう。
【0028】
このように、本発明のガイドワイヤ付形具は、右手又は左手の何れを用いても前記ガイドワイヤをセットすることができるため、術者が左利き及び右利きの何れか場合であっても容易に操作することができる。よって、術者は付形加工を容易にすることができる。
【0029】
(7)また、内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形するように構成されたガイドワイヤ付形具であって、第1の本体部と、内側面に本体部溝を設けられ、前記第1の本体部に対して前記本体部溝の方向に摺動可能な第2の本体部と、内側面に回転部溝を設けられた回転部と、前記本体部と前記回転部とを軸支し、それぞれの内側面どうしが開く又は閉じるように回転させる回転芯棒と、前記第1の本体部に設けられ、前記第1の本体部の内側に突出し、かつ、前記回転芯棒が挿通する本体軸筒と、前記回転部に設けられ、前記回転部の内側に突出し、かつ、前記回転芯棒が挿通する回転部軸筒とを備え、前記ガイドワイヤは、前記本体部溝と前記回転部溝とによって案内され、前記回転部の、前記本体部に対して閉じる向きの回転にともなって前記先端部が前記回転芯棒の周りに巻き付き環状に付形されるとともに、基端部が前記本体部溝に案内されたまま前記第2の本体部がスライドして、前記基端部から引っ張られることにより前記先端部が前記巻き付き時の環状形状よりも径小な環状形状に整形されるように構成されてもよい。
【0030】
ガイドワイヤは、先端部が回転芯棒の周りに巻き付くことにより環状形状に付形された後に、基端部側から適度に引張られることによって、前記巻き付き時の環状形状よりも径小な環状形状に整形されることを見出した。そこで、本発明のガイドワイヤ付形具は、第2の本体部をスライドすることにより、前記本体部溝に案内されている前記ガイドワイヤを引っ張り、前記先端部をより径小な環状形状に整形することができる。
【0031】
ガイドワイヤはより径小な環状形状に整形することにより、血管への挿入時、より血管の内壁へのダメージが小さいことが知られている。よって、本発明のガイドワイヤ付形具により血管の内壁へのダメージを低減することができる。
【0032】
このとき、手指だけによって前記基端部側のガイドワイヤを引っ張る場合に比べて、例えば第1の本体部に対する前記第2の本体部の移動距離を記録し、前記ガイドワイヤを前記第2の本体部を介して一定の距離を引っ張ることができる。これにより、複数回繰り返して付形加工をするときでも、前記整形の度合いを容易に再現することが容易となる。
【0033】
そのため、術者は微小な付形加工を容易にすることができる。
【0034】
(8)本発明はガイドワイヤ付形具の内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形するガイドワイヤ付形方法であって、ガイドワイヤ案内工程とガイドワイヤ折り曲げ工程とを含み、前記ガイドワイヤ案内工程は、本体部と回転部とをそれぞれの内側面が同じ側を向くように配置する本体部・回転部配置ステップと、前記ガイドワイヤを前記本体部と前記回転部とを軸支する回転芯棒の裏側に通すように配置するガイドワイヤ配置ステップと、前記ガイドワイヤを前記本体部の内側面に設けられた本体部溝と、前記回転部の内側面に設けられた回転部溝とにセットするガイドワイヤセットステップとを含み、ガイドワイヤ折り曲げ工程は、前記回転部を、前記本体部と前記回転部との前記内側面どうしを合わせるように回転させ、前記ガイドワイヤを前記回転芯棒の周りに巻き付ける折り畳みステップを含む、ガイドワイヤ付形方法を提供するものである。
【0035】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形方法は、前記従来のガイドワイヤ付形具のような弾性付形板を変形させることがなく、ガイドワイヤ折り曲げ工程の折り畳みステップにおいて、回転部の、回転芯棒を中心にした回転によって前記ガイドワイヤを前記回転芯棒に巻き付ける。そのため、繰り返し使用による部材の形状の変化が少なく、微小な付形加工を容易にすることができる。
【0036】
(9)また、ガイドワイヤ付形具の内側にガイドワイヤを挿入し、前記ガイドワイヤの先端部を環状に付形するガイドワイヤ付形方法であって、ガイドワイヤ案内工程とガイドワイヤ折り曲げ工程とを含み、前記ガイドワイヤ案内工程は、第1の本体部と、内側面に本体部溝を設けられ、前記第1の本体部に対して前記本体部溝の方向に摺動可能な第2の本体部と、内側面に回転部溝を設けられた回転部とをそれぞれの内側面が同じ側を向くように配置する本体部・回転部配置ステップと、前記ガイドワイヤを前記各本体部と前記回転部とを軸支する回転芯棒の裏側に通すように配置するガイドワイヤ配置ステップと、前記ガイドワイヤを前記本体部溝と前記回転部溝とにセットするガイドワイヤセットステップとを含み、ガイドワイヤ折り曲げ工程は、前記回転部を、前記各本体部と前記回転部との前記内側面どうしを合わせるように回転させ、前記ガイドワイヤの前記先端部を前記回転芯棒の周りに巻き付き環状に付形する折り畳みステップと、前記ガイドワイヤの基端部が前記本体部溝に案内されたまま前記第2の本体部をスライドし、前記ガイドワイヤを前記基端部から引っ張ることにより前記先端部を前記巻き付け時の環状形状よりも径小な環状形状に整形する整形ステップとを含んでもよい。
【0037】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形方法は、整形ステップにおいてガイドワイヤの先端部をより径小な環状形状に整形することにより、ガイドワイヤによる血管への挿入時、より血管の内壁へのダメージを低減することができる。
【0038】
また、本発明のガイドワイヤ付形方法は、手指だけによって基端部側のガイドワイヤを引っ張る場合に比べて、例えば第1の本体部に対する第2の本体部の移動距離を記録することにより、ガイドワイヤ折り曲げ工程の整形ステップにおいて前記ガイドワイヤを一定の距離だけ引っ張ることができる。これにより、複数回繰り返して付形加工をするときでも、前記ガイドワイヤの整形の度合いを容易に再現することが容易となる。そのため、術者は微小な付形加工を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0039】
このように本発明では、微小な付形加工を容易にすることができ、また、効率的な付形加工を行うことができるガイドワイヤ付形具及びガイドワイヤ付形方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るガイドワイヤ付形具の平面図である。
【
図4】先端部が環状に付形されたガイドワイヤの説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るガイドワイヤ付形方法のフロー図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るガイドワイヤ付形具の斜視図である。
【
図10】
図6のガイドワイヤ付形具の平面図である。
【
図11】ガイドワイヤを配置された状態の
図6のガイドワイヤ付形具の斜視図である。
【
図13】
図11のガイドワイヤ付形具の右側部分だけを左側から視たときの端面を示した説明図である。
【
図14】
図13の端面であり、回転部を途中まで回転した状態を示す説明図である。
【
図15】右側回転芯棒を左側から視たときの側面図である。
【
図17】
図14の回転部を途中まで回転した状態において、ガイドワイヤ付形具を前方から視た説明図である。
【
図18】右側回転芯棒及びフォロア部材の一部平面図である。
【
図19】(a)先端部が環状に付形されたガイドワイヤの説明図である。(b)先端部が整形途中のガイドワイヤの説明図である。(c)先端部が整形されたガイドワイヤの説明図である。
【
図20】本発明の第2の実施形態に係るガイドワイヤ付形方法のフロー図である。
【
図21】本発明の第3の実施形態に係るガイドワイヤ付形具の斜視図である。
【
図22】他の例の右側回転芯棒を左側から視たときの側面図である。
【
図23】従来のガイドワイヤ付形具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を、
図1~
図5を用いて説明する。図において1が本発明のガイドワイヤ付形具である。
【0042】
ガイドワイヤ付形具1は内側にガイドワイヤGを挿入し、ガイドワイヤGの先端部Gaを環状に付形する。
図1の平面図が示すように、ガイドワイヤ付形具1は本体部2、回転部3及び回転芯棒5を備える。
図1、
図2及び
図4において矢印U方向がガイドワイヤ付形具1の上方を示し、矢印D方向がガイドワイヤ付形具1の下方を示す。矢印L方向がガイドワイヤ付形具1の左方を示し、矢印R方向がガイドワイヤ付形具1の右方を示す。矢印F方向がガイドワイヤ付形具1の前方を示し、矢印B方向がガイドワイヤ付形具1の後方を示す。
【0043】
回転部3は回転芯棒5を中心に、
図1の太字矢印が示すようにガイドワイヤ付形具1の上方且つ前方に頭を持ち上げ、そのまま略180°の角度まで回転することができる。このとき、回転部3は回転部3の内側面である回転部内側面3aが本体部2の内側面である本体部内側面2aに対して閉じるように回転することができる。ここで内側とは、
図1及び
図2においてガイドワイヤ付形具1の上側を指す。上で述べたように回転部3が閉じる向きの回転を、以下において「正回転」と記載することがある。また回転部3は、閉じた状態から、回転部内側面3aが本体部内側面2aに対して開くように回転することができる。このように回転部3が開く向きの回転を、以下において「逆回転」と記載することがある。また、
図1のように本体部2と回転部3とが開いた状態を、以下において「開状態」と記載することがある。逆に、本体部2と回転部3とが閉じた状態を、以下において「閉状態」と記載することがある。
【0044】
開状態において本体部内側面2aと回転部内側面3aとが面一になるように、本体部2及び回転部3は配置される。
【0045】
本体部2及び回転部3はそれぞれ内側に突出する本体部軸筒2b,2b及び回転部軸筒3b,3bを備える。
図2はガイドワイヤ付形具2を正面、平面及び左側面から見た斜視図を示す。回転芯棒5は本体軸筒2b,2b及び回転部軸筒3b,3bに挿通し、本体部2と回転部3とを軸支する。
【0046】
回転芯棒5は、本体軸筒2b,2b及び回転軸筒3b,3bに挿通されている芯棒基部5aの部分と、芯棒基部5aから左向きに突出して設けられるピン状の巻き芯部5bの部分とを有する。巻き芯部5bは芯棒基部5aよりも径小な円柱状に形成される。
【0047】
ガイドワイヤGは、例えば血管用ガイドワイヤの場合、日本工業規格JIST3267:2017に示すように種類によってセーフティワイヤ、コアワイヤ、コイル、プラスチックジャケットなどの部材によって構成される。
【0048】
図3(a)~(d)は、ガイドワイヤGの例を示す詳細図である。
図3(a)は、
図3(b)に示すセーフティワイヤ付ガイドワイヤGの横断面を示す。
図3(c)は、
図3(d)に示すプラスチックジャケット付ガイドワイヤGの横断面を示す。
【0049】
本体部2は本体部内側面2aに前後方向に設けられた溝である本体部溝2cを有する。また、回転部3は回転部内側面3aに前後方向に設けられた溝である回転部溝3cを有する。開状態において本体部溝2cと回転部溝3cとは前後方向に連通して一本の連続した溝を形成する。各溝2c,3cは、左右方向の幅及び上下方向の深さが、後述するようにガイドワイヤGをはめ込み、セットすることができるように、ガイドワイヤGの直径と同一又はガイドワイヤGの直径よりもわずかに大きい。また、各溝2c,3cは、回転芯棒5の巻き芯部5bの下側を通るように設けられている。
【0050】
ガイドワイヤGは、開状態において本体部溝2c及び回転部溝3cに案内される。このとき、各溝2c,3cが回転芯棒5の巻き芯部5bよりも下側に設けられることにより、ガイドワイヤGは巻き芯部5bの下側に潜るように案内される。このとき、ガイドワイヤGを案内するための、各溝2c,3cの底部と巻き芯部5bの外周面との間のすき間を、以下において「ガイドワイヤパス」と記載することがある。
【0051】
そして、回転部3が開状態から正回転することに伴って、ガイドワイヤGは回転芯棒5の巻き芯部5bの周りに巻き付く。これにより先端部Gaは回転芯棒5の外周形状に倣って環状に付形される。先端部Gaが環状に付形された状態のガイドワイヤGの例を
図4に示す。
【0052】
このとき、回転芯棒5の巻き芯部5bが芯棒基部5aよりも細いため、ガイドワイヤGは、芯棒基部5bの周りに巻き付くよりも巻き芯部5aの周りに巻き付くことによって、より径の小さい環状に付形されることが可能となる。これにより、ガイドワイヤGの使用箇所、用途等や術者の好みに合わせて、様々な形状、大きさなどに付形することが容易となる。
【0053】
以上の構成により、ガイドワイヤ付形具1は、先ず、開状態の本体部2及び回転部3において本体部溝2c及び回転部溝3cに沿うようにガイドワイヤGを配置して、次に、回転部3を正回転させることにより、ガイドワイヤGが本体部溝2cと回転部溝3cとによって回転芯棒5の周りに巻き付くことによりガイドワイヤGを環状に付形することができる。
【0054】
このとき、ガイドワイヤ付形具1は、前記従来のガイドワイヤ付形具のような弾性付形板を用いることがなく、回転部3の、回転芯棒5を中心にした回転によってガイドワイヤGを巻き付けるため、繰り返し使用による形状の変化が少なく、微小な付形加工を容易にすることができる。
【0055】
また、ガイドワイヤGを案内する本体部溝2c及び回転部溝3cがそれぞれ内側に設けられる本体部2及び回転部3に対して、回転芯棒5は、本体部2の内側に突出する本体部軸筒2b,2bに挿通され、かつ、回転部3の内側に突出する回転部軸筒3b,3bに挿通される。このように本体部軸筒2b,2b及び回転部軸筒3b,3bがそれぞれ突出して設けられるため、操作者Nは、回転芯棒5に邪魔されず、ガイドワイヤGを前記ガイドワイヤパスに配置することができる。
【0056】
そのため、ガイドワイヤ付形具1は、回転芯棒5を、本体部2及び回転部3を軸支するシャフトとして用いることができ、かつ、ガイドワイヤGを巻き付けて付形する型として用いることができる。このように、シャフトと型とを別々に備える必要がなく、簡素且つコンパクトな構造を有することができる。
【0057】
なお、
図1及び
図2において左側に本体部溝2c及び回転部溝3cが配置され、その右側に本体部軸筒2b,2b及び回転部軸筒3b,3bが配置されているが、その左右反対に、右側に本体部溝及び回転部溝が配置され、その左側に本体部軸筒及び回転部軸筒が配置されてもよい。このとき、巻き芯部は芯棒基部から右向きに突出して設けられる。
【0058】
[付形方法]
本発明の第1の実施形態におけるガイドワイヤ付形方法を、
図5を用いて説明する。図において110が本発明のガイドワイヤ付形方法である。
【0059】
ガイドワイヤ付形方法110は、ガイドワイヤ付形具1の内側にガイドワイヤGを挿入し、ガイドワイヤGの先端部を環状に付形する方法であり、ガイドワイヤ案内工程120とガイドワイヤ折り曲げ工程130とを含む。
【0060】
ガイドワイヤ案内工程120は、順に、本体部・回転部配置ステップ121とガイドワイヤ配置ステップ122とガイドワイヤセットステップ123とを含む。
【0061】
本体部・回転部配置ステップ121において、操作者Nは本体部内側面2aと回転部内側面3aとが同じ上側を向くように本体部2及び回転部3を配置する。この状態は本体部2及び回転部3の開状態であり、
図1及び
図2に表される。
【0062】
このとき操作者Nは、開状態の本体部2及び回転部3を、本体部内側面2a及び回転部内側面3aが手前に向くように支持する。
【0063】
ガイドワイヤ配置ステップ122において、操作者Nは、ガイドワイヤ付形具1の前側から後側に向けてガイドワイヤGを先端から回転芯棒5の巻き芯部5bの下側に潜らせるように導く。
【0064】
このとき操作者Nは、例えば、右手の手指によりガイドワイヤ付形具1を支持しつつ、左手の手指によりガイドワイヤGを支持して操作する。あるいは、本体部溝及び回転部溝が右側に配置されている場合は、左手の手指によりガイドワイヤ付形具1を支持しつつ、右手の手指によりガイドワイヤGを支持して操作する。
【0065】
ガイドワイヤセットステップ123において、操作者Nは、ガイドワイヤGを本体部溝2c及び回転部溝3cに沿うようセットする。その際、ガイドワイヤGが前記ガイドワイヤパスを通るように各溝2c,3cに案内する。このようにして、次のガイドワイヤ折り曲げ工程130に進められるようガイドワイヤGはガイドワイヤ付形具1にセットされる。
【0066】
ガイドワイヤ折り曲げ工程130は折り畳みステップ131を含む。折り畳みステップ131において、操作者Nは、回転部3を、本体部内側面2a及び回転部内側面3aどうしを合わせるように正回転させ、ガイドワイヤGを折り畳むようにして回転芯棒5の周りに巻き付ける。これらの各ステップ121,122,123,131を経て、ガイドワイヤGの先端部Gaは、例えば
図4の形状のような環状に付形される。
【0067】
以上の方法により、ガイドワイヤ付形方法110は、前記従来のガイドワイヤ付形具のような弾性付形板を変形させることがなく、ガイドワイヤ折り曲げ工程130の折り畳みステップ131において、回転部3の、回転芯棒5を中心にした正回転によってガイドワイヤGを回転芯棒5に巻き付ける。そのため、繰り返し使用による部材の形状の変化が少なく、微小な付形加工を容易にすることができる。
【0068】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を、
図6~
図21を用いて説明する。図において11が本発明のガイドワイヤ付形具である。
図6はガイドワイヤ付形具11の正面、平面及び右側面を表す斜視図である。
図6において矢印U方向がガイドワイヤ付形具11の上方を示し、矢印D方向がガイドワイヤ付形具11の下方を示す。矢印L方向がガイドワイヤ付形具11の左方を示し、矢印R方向がガイドワイヤ付形具11の右方を示す。矢印F方向がガイドワイヤ付形具11の前方を示し、矢印B方向がガイドワイヤ付形具11の後方を示す。各矢印の方向は、他の図面においても同様である。
【0069】
ガイドワイヤ付形具11は内側にガイドワイヤGを挿入し、ガイドワイヤGの先端部Gaを環状に付形する。ガイドワイヤ付形具11は本体部12、回転部13及び2本の回転芯棒14,15を備える。
[本体部]
【0070】
本体部12は本体枠部16及び本体スライド部17により構成される。本体枠部16を第1の本体部ともよび、本体スライド部17を第2の本体部ともよぶ。
【0071】
本体部12はそれぞれ内側に突出する、4つの本体部軸筒12b,12b,12b,12bを備える。各本体部軸筒12bは
図7が示すように本体部12の本体枠部16が一体に有する。ここで内側とは、
図6、
図7などにおけるガイドワイヤ付形具11の上側を指す。また、本体部内側面12aとは、本体枠部16の内側面である本体枠部内側面16aと本体スライド部17の内側面である本体スライド部内側面17aとを総称する。
【0072】
2本の回転芯棒14,15のうち、ガイドワイヤ付形具11の左側に配置される回転芯棒を左側回転芯棒14とよぶ。この左側回転芯棒14は、4つの本体部軸筒12b,12b,12b,12bのうちの左側の2つの本体部軸筒12b,12bに挿通する。同様に、ガイドワイヤ付形具11の右側に配置される回転芯棒を右側回転芯棒15とよぶ。この右側回転芯棒15は、4つの本体部軸筒12b,12b,12b,12bのうちの右側の2つの本体部軸筒12b,12bに挿通する。
【0073】
本体部12の本体スライド部17は、本体枠部16に対して摺動可能に構成されている。
図7が示すように本体枠部16が前後方向の一対のレール16b,16bを有し、本体スライド部17は、
図8が示すように、それぞれのレール16b,16bに嵌まる前後方向の一対の摺動溝17b,17bを有する。これにより、
図6が本体スライド部17が最も後方に位置する状態を示すのに対して、本体スライド部17は
図6の状態よりも前方に摺動して移動させることができる。なお、以下において、本体スライド部17が最も後方に位置する状態を「スライド前状態」と記載することがある。
【0074】
本体部12には本体部内側面12aのうち、本体スライド部17の内側面である本体スライド部内側面17aに前後方向の本体部溝12cが設けられる。本体部溝12cは、左右方向の幅及び上下方向の深さが、後述するようにガイドワイヤGをはめ込み、セットすることができるように、ガイドワイヤGの直径と同一又はガイドワイヤGの直径よりもわずかに大きい。
【0075】
[回転部]
回転部13はそれぞれ内側に突出する、2つの回転部軸筒13b,13bを備える。各回転部軸筒13bは
図9が示すように回転部13が一体に有する。ここで内側とは、
図6、
図9などにおけるガイドワイヤ付形具11の上側を指す。左側回転芯棒14は、2つの回転部軸筒13b,13bのうちの左側の回転部軸筒13bに挿通する。同様に、右側回転芯棒15は2つの回転部軸筒13b,13bのうちの右側の回転部軸筒13bに挿通する。
【0076】
これらにより、左側回転芯棒14及び右側回転芯棒15は、本体部軸筒12b,12b,12b,12bと回転部軸筒13b,13bとに挿通して本体部12及び回転部13を軸支する。
【0077】
回転部13には回転部内側面13aに前後方向の回転部溝13cが設けられる。回転部溝13cは、本体部溝12cと同様に左右方向の幅及び上下方向の深さが、後述するようにガイドワイヤGをはめ込み、セットすることができるように、ガイドワイヤGの直径と同一又はガイドワイヤGの直径よりもわずかに大きい。
【0078】
回転部13は回転芯棒14,15によって、
図6の太字矢印が示すようにガイドワイヤ付形具11の上方且つ前方に向けて頭を持ち上げ、そのまま略180°の角度まで回転することができる。このとき、回転部13は回転部13の内側面である回転部内側面13aが本体部12の内側面である本体部内側面12aに対して閉じるように回転することができる。
【0079】
なお、以下において、このように回転部13が閉じる向きの回転を「正回転」と記載することがある。
【0080】
また、回転部13は、閉じた状態から逆の向きに回転部内側面13aが本体部内側面12aに対して開くように回転することができる。なお、以下において、このように回転部13が開く向きの回転を「逆回転」と記載することがある。また、
図6のように本体部12と回転部13とが開いた状態を「開状態」と記載することがある。逆に、本体部12と回転部13とが閉じた状態を「閉状態」と記載することがある。
【0081】
開状態において本体部内側面12aと回転部内側面13aとが面一になるように、本体部12及び回転部13は配置される。また、開状態において本体部溝12cと回転部溝13cとは前後方向に連通して一本の連続した溝を形成する。開状態且つスライド前状態のガイドワイヤ付形具11を表す
図10の平面図により、本体部溝12cと回転部溝13cとが連通した状態を示す。
【0082】
[ガイドワイヤの付形]
図11はガイドワイヤGを、開状態且つスライド前状態のガイドワイヤ付形具11の本体部溝12c及び回転部溝13cに案内した状態を表す斜視図を示す。ガイドワイヤGは本部溝12c及び回転部溝13cに埋まるように案内されている。
【0083】
ところで、左右の各回転芯棒14,15は、それぞれ本体部軸筒12b,12b及び回転部軸筒13bに挿通されている芯棒基部14a,15aの部分と、各芯棒基部14a,15aから突出して設けられるピン状の巻き芯部14b,15bの部分とを有する。左側回転芯棒14の巻き芯部14bは芯棒基部14aよりも径小な円柱状であり、左側回転芯棒14の右向きの先端に突出する。右側回転芯棒15の巻き芯部15bは芯棒基部15aよりも径小な円柱状であり、右側回転芯棒15の左向きの先端に突出する。
【0084】
このように、一対の回転芯棒14,15は本体部溝12c及び回転部溝13cに対する左右両側に一列に配置され、かつ、それぞれの巻き芯部14b,15bどうしが相対するように配置される。そして、これらの一対の回転芯棒14,15に対応して、それぞれ左側の本体部軸筒12b,12b及び右側の本体部軸筒12b,12b並びに左側の回転部軸筒13b及び右側の回転部軸筒13bが備えられている。
【0085】
図12は、
図11の状態のガイドワイヤ付形具11の平面図であり、右側且つ後側の部分だけを拡大した図である。右側回転芯棒15は
図12が示すように、巻き芯部15bが本体部溝12c及び回転部溝13cの上に重なるように配置されている。これにより、巻き芯部15bは、セットされたガイドワイヤGの上方に位置する。
【0086】
図13は、
図12に示したガイドワイヤ付形具11の右側部分だけを左側から視たときの断面を示した説明図である。ガイドワイヤGは、
図13が示すように本体部溝12c及び回転部溝13cの内部に案内される。
【0087】
この図が示すように、本体部溝12cは後方において、下向きに凹むように曲線を描くように形成される。また、回転部溝13cは前方において、下向きに凹むように曲線を描くように形成される。これによって、操作者NがガイドワイヤGを本体部溝12c及び回転部溝13cに案内する際に巻き芯部15bが邪魔にならないようにセットすることができる。このときの、ガイドワイヤGを案内するための、各溝12c,13cの底部と巻き芯部15bの外周面との間のすき間を、以下において「ガイドワイヤパスP」と記載することがある。
【0088】
図14は、
図13と同様にガイドワイヤ付形具11の右側部分だけを左側から視たときの断面を示し、かつ、回転部13を開状態から135°まで正回転した状態を示した説明図である。ガイドワイヤGは、本体部溝12c及び回転部溝13cとによって案内され、回転部13の正回転にともなって回転芯棒15の巻き芯部15bの周りに巻き付く。回転部13が最終的に略180°まで正回転することにより、ガイドワイヤGの先端部Gaは、回転芯棒15の巻き芯部15bの外周形状に倣って環状に付形される。この先端部が環状に付形された状態のガイドワイヤGの例は
図4に示される。
【0089】
なお、ガイドワイヤ付形具11は、
図12と左右反対に、左側回転芯棒14の巻き芯部14bが本体部溝12c及び回転部溝13cの上に重なるように配置されてもよい。これにより、セットされたガイドワイヤGの上方に巻き芯部14bが位置する。そして、ガイドワイヤGの先端部Gaは、左側回転芯棒14の巻き芯部14bの周りに巻き付き、左側回転芯棒14の巻き芯部14bの外周形状に倣って環状に付形されるような構成でもよい。
【0090】
以上の構成により、ガイドワイヤ付形具11は回転芯棒14,15の巻き芯部14b,15bが、本体部軸筒12b及び回転部軸筒13bに挿通する芯棒基部14a,15aよりも細いため、ガイドワイヤGは、芯棒基部14a,15aの周りに巻き付くよりも巻き芯部14b,15bの周りに巻き付くことによって、より径の小さい環状に付形されることが可能となる。これにより、ガイドワイヤGの使用箇所、用途等や術者の好みに合わせて、様々な形状、大きさなどに付形することが容易となる。
【0091】
また、ガイドワイヤ付形具11は、左右一対の回転芯棒14,15を備え、かつ、それぞれの巻き芯部14b,15bが左右方向の中央に位置するため、例えば、左手が本体部12を支持しつつ右手でガイドワイヤGを支持して各溝12c,13cにセットすることができ、しかも、逆に右手が本体部12を支持しつつ左手でガイドワイヤGを支持して各溝12c,13cにセットすることができる。
【0092】
このように、ガイドワイヤ付形具11は、右手又は左手の何れを用いてもガイドワイヤGをセットすることができるため、操作者Nが左利き及び右利きの何れか場合であっても容易に操作することができる。よって、操作者Nは付形加工を容易にすることができる。
【0093】
[巻き芯部の偏心]
図15は右側回転芯棒15を左側から視たときの側面図である。また、
図16は右側回転芯棒15を正面、平面及び左側面から視たときの斜視図である。ガイドワイヤ付形具11において、右側回転芯棒15は芯棒基部15aが本体部軸筒12b,12b及び回転部軸筒13bに挿通されている。
【0094】
右側回転芯棒15の巻き芯部15bは、芯棒基部15aよりも径小に形成され、かつ、巻き芯部15bの中心線である巻き芯中心線Cbが芯棒基部15aの中心線である基部中心線Caよりも上側に位置することによりお互いに偏心するように設けられている。
【0095】
このように巻き芯中心線Cbが基部中心線Caよりも上側に偏心することにより、偏心していないときに比べ、
図13が示すガイドワイヤパスPを大きく設定することができる。そのため、操作者Nは開状態においてより容易にガイドワイヤGを各溝12c,13cに案内することができる。
【0096】
しかも、回転部12は巻き芯中心線Cbよりも低い位置の基部中心線Caを中心に正回転するため、上で述べたようにガイドワイヤGを容易に案内することができつつ、回転部溝13cは、ガイドワイヤGを巻き芯部15bに固く巻き付けることができる。これにより、ガイドワイヤGを巻き芯部15bの外周面に確実に倣わせて付形することが可能になる。
【0097】
また、左側回転芯棒14も右側回転芯棒15と同様の構成である。すなわち、左側回転芯棒14の基部中心線Caと巻き芯中心線Cbとの関係は、右側回転芯棒15の基部中心線Caと基部中心線Cbとの関係と同様である。これにより、ガイドワイヤGを左側回転芯棒14を用いて付形するときも、操作者Nは開状態において容易にガイドワイヤGを案内することができ、しかも、ガイドワイヤGを巻き芯部14bに固く巻き付けることができる。
【0098】
[カム機構]
本体部軸筒12b,12b及び回転部軸筒13bにより支持される右側回転芯棒15は、本体部12及び回転部13に対して左右方向に自在に往復動する。そして、ガイドワイヤ付形具11は、回転する回転部13を原動節とし、直線運動する右側回転芯棒15を従動節とするカム機構を有する。このカム機構により、右側回転芯棒15は、回転部13が正回転する際に右側回転芯棒15の巻き芯部15bが各溝12c,13cから離れるようにガイドワイヤ付形具11の右方を向いて従動する。
【0099】
図17は、回転部13を開状態から135°まで正回転させた状態を示し、右側回転芯棒15の巻き芯部15bを、ガイドワイヤ付形具11の前方から視た説明図である。右側回転芯棒15は、前記のカム機構により、回転部13が正回転するのに従動してガイドワイヤ付形具11の右方に直線移動する。そのため、回転部13が開状態から閉状態まで正回転する途中で、巻き芯部15bは各溝12c,13cから離れるように移動し、
図17のように、環状に付形されたガイドワイヤGの先端部Gaから右向きに抜けることができる。
【0100】
また、左側回転芯棒14も、右側回転芯棒15と同様に本体部12及び回転部13に対して左右方向に自在に往復動する。そして、ガイドワイヤ付形具11は、回転する回転部13を原動節とし、直線運動する左側回転芯棒14を従動節とするカム機構を有する。このカム機構により、左側回転芯棒14は、回転部13が正回転する際に左側回転芯棒14の巻き芯部14bが各溝12c,13cから離れるようにガイドワイヤ付形具11の左方を向いて従動する。
【0101】
すなわち、ガイドワイヤGが左側回転芯棒14の巻き芯部14bに巻き付いて付形されるときは、回転部13が開状態から閉状態まで正回転する途中で、巻き芯部14bが各溝12c,13cから離れるように移動し、環状に付形されたガイドワイヤGの先端部Gaから左向きに抜けることができる。
【0102】
下記においてガイドワイヤGが右側回転芯棒15の巻き芯部15bに巻き付いて付形される場合の構造について記載する。しかし、逆にガイドワイヤGが左側回転芯棒14の巻き芯部14bに巻き付いて付形される場合でも、各部分の左右が異なるだけで左右が異なる以外は同様に構成される。
【0103】
なお、ガイドワイヤGを開状態で各溝12c,13cに案内する前に、各溝12c,13cの上方の位置に右側回転芯棒15の巻き芯部15bが配置されるように右側回転芯棒15を左方にシフトしておくか、逆に、各溝12c,13cの上方の位置に左側回転芯棒14の巻き芯部14bが配置されるように左側回転芯棒14を右方にシフトしておくかによって、操作者Nは、ガイドワイヤGを右側回転芯棒15の巻き芯部15bに巻き付けるか、または、左側回転芯棒14の巻き芯部14bに巻き付けるかを選ぶことができる。
【0104】
以下に、カム機構について詳述する。
図15及び
図16が示すように、ガイドワイヤ付形具11は、右側回転芯棒15から前方に延びるように固定されるフォロア部材18を備える。フォロア部材18は長手方向がガイドワイヤ付形具11の前後方向と一致する直方体部分を有し、右側回転芯棒15の上側半分から前方に延びるように設けられる。
図18は右側回転芯棒15とフォロア部材18の一部との平面図を示す。
【0105】
図15に、この直方体部分の底面であるフォロア部材底面18aを示す。また、
図15にフォロア部材18が環状体部分を右側回転芯棒15の周りに有し、その環状体部分の左側の端面であるフォロア端面18bを示す。このフォロア端面18bは、
図18が示すように、平面視においてガイドワイヤ付形具11の左前から右後を向く斜面を構成している。
【0106】
一方で、回転部13は、
図9及び
図12に示すように、左右方向の各回転芯棒14,15の軸心に対して斜めに向く端面であるカム端面13dを有する。カム端面13dは、平面視においてガイドワイヤ付形具11の左前から右後を向く斜面を構成している。
【0107】
そして、回転部13が開状態から正回転するのに対して、フォロア部材18は、フォロア部材底面18aが本体枠部内側面16aに当接するため本体部12に対して回転しない。また、フォロア部材18に固定される右側回転芯棒15も回転しない。これにより、回転部13の正回転時にカム端面13dとフォロア端面18bとが滑り接触を生ずる。このときカム端面13d及びフォロア端面18bがそれぞれガイドワイヤ付形具11の左前から右後を向く斜面を構成するため、回転部13の正回転に従って右側回転芯棒15は右方に移動する。
【0108】
このように、回転部13の正回転に伴って右側回転芯棒15が右方に移動し、巻き芯部15bはガイドワイヤGの環状に付形された先端部Gaから右向きに抜けることができる。そして、回転部13が略180°正回転してガイドワイヤGの付形が完了した後に、操作者Nは回転部13を逆回転させる。このとき、右側回転芯棒15及びフォロア部材18は右側に移動したままで、カム端面13dがフォロア端面18bを引っ張ってフォロア部材18を左向きに移動させることはない。これにより、回転部13が逆回転後に開状態に戻った後も、巻き芯部15bはガイドワイヤGから離れたままで、環状に付形された先端部Gaに再挿入することがない。
【0109】
そのため、操作者Nは、回転部13が逆回転してガイドワイヤ付形具11が開状態に戻った後に、巻き芯部15bによって邪魔されることなく、付形後のガイドワイヤGを各溝12c,13cから外し、ガイドワイヤ付形具11から取り外しことができる。
【0110】
なお、カム端面13d及びフォロア端面18bが共に斜面を形成する例を挙げたが、これらが滑り接触を行なうことができれば、カム端面13d及びフォロア端面18bの何れかだけが斜面を形成してもよい。この場合、斜面を形成しない側のカム端面13d又はフォロア端面18bは、例えば相手側の端面と当接することのできる突起を有して、一方が他方に従動するように構成されていてもよい。
【0111】
さらに、左側回転芯棒14についても右側回転芯棒15と同様の構成を有する。
【0112】
[ガイドワイヤの整形]
ところで、発明者は、ガイドワイヤGの先端部Gaが
図19(a)のように付形された後、ガイドワイヤ付形具11が閉状態のままガイドワイヤGが基端部Gbから引っ張られることにより、先端部Gaが
図19(c)が示すようにより径小な環状形状に整形されることを見出した。また、
図19(c)に至る前に、
図19(b)の例が示すような歪な環状形状を経ることも見出した。
【0113】
そこで、このようなガイドワイヤGが引張られることによって整形される性質を利用し、ガイドワイヤ付形具11は、先端部Gaをより径小な環状形状に整形することができる。
【0114】
先ず、先に述べたように回転部13を略180°まで正回転させ、先端部Gaが回転芯棒15の巻き芯部15bの外周形状に倣って
図19(a)のように付形される。次に、回転部13が閉状態のまま、本体スライド部17を前向きにスライドさせる。すなわち、本体スライド部17は、上から手指で押さえ付けられつつ本体枠部16よりも前方に移動するように押されることにより、左右一対の摺動溝17b,17bが本体枠部16の左右一対のレール16b,16bに対してスライドし、スライド前状態に比べ前側に移動する。このとき、前記の手指は、本体スライド部17の本体スライド部内側面17aと、本体部溝12c内のガイドワイヤGの基端部Gbとを一緒に上から押さえ付ける。そして、前記の手指が基端部Gbを上から押さえ付けたままであり、かつ、本体スライド部17が前方にスライドすることに伴い、前記の手指によって本体部溝12cに押さえ付けられた状態のガイドワイヤGは基端部Gbから前向きに引っ張られる。
【0115】
このように、ガイドワイヤ付形具11は、本体スライド部17をスライドすることにより、先端部Gaを
図19(c)のようなより径小な環状形状に整形することができる。
【0116】
また、上で述べたようにガイドワイヤGを本体スライド部17のスライドに伴って引っ張るだけでなく、例えば、基端部Gbを本体部溝12cから外して、操作者Nが手指でガイドワイヤ付形具11の前方に引っ張ってもよい。このときも、同様に先端部Gaを略円弧状に整形することができる。この場合、必ずしも本体部12が本体枠部16と本体スライド部17とに分割されている必要がなく、スライド機構を有しない一体ものの本体部12を構成してもよい。
【0117】
なお、本体枠部16の前部に、
図6に示されるような左右方向のバー状の本体スライド部ストッパー19を設けてもよい。本体スライド部ストッパー19は、
図7に示される本体枠部16の前部に設けられる、左右一対のストッパー溝16c,16cに嵌合する。また、本体スライド部ストッパー19は、後方壁面19aが
図8に示される本体スライド部17の前方壁面17cと前後方向に相対する。
【0118】
そして、本体スライド部17はスライド前状態から、
図10に示すスライド許容距離Dだけ前方にスライドすれば、前方壁面17cが本体スライド部ストッパー19の後方壁面19aに当接して制止される。
【0119】
そこで、上で述べたようなガイドワイヤGの先端部Gaをより径小な環状形状に整形する上で、本体スライド部17と本体スライド部ストッパー19との関係におけるスライド許容距離Dを、最適な引っ張るべき距離に合うように設定しておけば、本体スライド部17はこのような最適距離のスライド後に確実に制止される。このように、本体スライド部ストッパー19は、ガイドワイヤGを最適な状態で整形されるように本体スライド部17のスライドを制御することができる。
【0120】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0121】
以上の構成から、ガイドワイヤ付形具11は前記のカム機構を採用して回転芯棒14,15の先端が各溝12c,13cから離れることにより、ガイドワイヤGが回転部12の正回転に伴って環状に付形された後は回転芯棒14,15がガイドワイヤGから逃げることができる。そのため、ガイドワイヤ付形具11から、付形されたガイドワイヤGを取り外す際に、回転芯棒14,15が邪魔することがない。このように、操作者Nは、付形したガイドワイヤGを容易に取り外すことができ、効率的にこのガイドワイヤGの付形加工を行うことができる。
【0122】
また、ガイドワイヤ付形具11は原動節である回転部13がカム端面13dを有し、従動節である回転芯棒14,15に固定されるフォロア部材18がフォロア端面18bを有するため、簡素な構造のカム機構を備える。そのため、ガイドワイヤ付形具11を効率よく製作することができ、使用することができる。
【0123】
また、巻き芯中心線Cbと基部中心線Caとが偏心するため、正回転する前の開状態において、回転芯棒14,15を、巻き芯中心線Cbが各溝12c,13cよりも上向きに離れた側に偏るような角度に回転させておくことにより、巻き芯部14b,15bと各溝12c,13cとの間の隙間を大きく空けることができる。これにより、ガイドワイヤGを、容易にガイドワイヤパスPに配置することができる。よって、操作者Nは付形加工を容易にすることができる。
【0124】
また、ガイドワイヤ付形具11は、左右一対の回転芯棒14,15を備え、かつ、それぞれの巻き芯部14b,15bが左右方向の中央に位置するため、例えば、左手が本体部12を支持しつつ右手でガイドワイヤGを支持して各溝12c,13cにセットすることができ、しかも、逆に右手が本体部12を支持しつつ左手でガイドワイヤGを支持して各溝12c,13cにセットすることができる。
【0125】
このように、ガイドワイヤ付形具11は、右手又は左手の何れを用いてもガイドワイヤGをセットすることができるため、操作者Nが右利き及び左利きの何れか場合であっても容易に操作することができる。よって、操作者Nは付形加工を容易にすることができる。
【0126】
また、ガイドワイヤGは、先端部Gaが回転芯棒14,15の周りに巻き付くことにより環状形状に付形された後に、基端部Gb側から適度に引張られることによって、前記巻き付き時の環状形状よりも径小な環状形状に整形されることを見出した。そこで、ガイドワイヤ付形具11は、本体スライド部17をスライドすることにより、本体部溝12cに案内されているガイドワイヤGの基端部Gbを引っ張り、先端部Gaをより径小な環状形状に整形することができる。
【0127】
ガイドワイヤGはより径小な環状形状に整形することにより、血管への挿入時、より血管の内壁へのダメージが小さいことが知られている。よって、ガイドワイヤ付形具11により血管の内壁へのダメージを低減することができる。
【0128】
このとき、手指だけによって基端部Gb側のガイドワイヤGを引っ張る場合に比べて、例えば本体枠部16に対する本体スライド部17の移動距離を記録し、基端部Gbを本体スライド部17を介して一定の距離を引っ張ることができる。これにより、複数回繰り返して付形加工をするときでも、前記整形の度合いを容易に再現することが容易となる。これらのため、術者は微小な付形加工を容易にすることができる。また、本体スライド部ストッパー19を併せて用いることにより、ガイドワイヤGを最適な状態で整形するように本体スライド部17の移動距離を制御することができる。
【0129】
また、本体スライド部17が前向きにスライドされ、その際、摺動溝17b,17bを有する本体スライド部17の移動方向はレール16b,16bを有する本体枠部16によって前後方向に規制される。そのため、ガイドワイヤGは整形時の向きが左右に振れることがなく、整形後の環状形状が捩ることがない。そのため、操作者Nは先端部Gaを的確且つ安全に血管に挿入することができる。
【0130】
[付形方法]
本発明の第2の実施形態におけるガイドワイヤ付形方法を、
図20を用いて説明する。図において210が本発明のガイドワイヤ付形方法である。
【0131】
ガイドワイヤ付形方法210は、ガイドワイヤ付形具11の内側にガイドワイヤGを挿入し、ガイドワイヤGの先端部Gaを環状に付形する方法であり、ガイドワイヤ案内工程220とガイドワイヤ折り曲げ工程230とを含む。
【0132】
ガイドワイヤ案内工程220は、順に、本体部・回転部配置ステップ221とガイドワイヤ配置ステップ222とガイドワイヤセットステップ223とを含む。
【0133】
本体部・回転部配置ステップ221において、操作者Nは本体部12と回転部13とをそれぞれの内側面が同じ側を向くように配置する。これらの本体部内側面12a及び回転部内側面13aがともに上向きに配置された状態は
図6に示されている。本体部内側面12aとは本体枠部内側面16aと本体スライド部内側面17aとの総称であるので、この状態は、本体枠部内側面16a、本体スライド部内側面17a及び回転部内側面13aがいずれも上向きに配置された状態を指す。
【0134】
これらのステップを経て、ガイドワイヤGは、次のガイドワイヤ折り曲げ工程230に進められるようにガイドワイヤ付形具11にセットされる。
【0135】
ガイドワイヤ折り曲げ工程230は、順に折り畳みステップ231と整形ステップ232とを含む。折り畳みステップ231において、操作者Nは、回転部13を、本体部内側面12a及び回転部内側面13aどうしを合わせるように正回転させ、ガイドワイヤGを折り畳むようにして回転芯棒14,15の周りに巻き付ける。これによって、ガイドワイヤGの先端部Gaは、例えば
図19(a)の形状のような環状に付形される。
【0136】
整形ステップ232において、操作者Nは、回転部13が閉状態のまま、手指を本体スライド部17の本体スライド部内側面17aと本体部溝12c内のガイドワイヤGの基端部Gbとを一緒に上から押さえ付ける。そして、前記の手指が基端部Gbを上から押さえ付けたまま、本体スライド部17を前方にスライドする。これにより、前記の手指によって本体部溝12cに押さえ付けられた状態のガイドワイヤGは基端部Gbから前向きに引っ張られる。このように閉状態のままで前向きに引っ張られたガイドワイヤGの先端部Gaは、
図19(c)のような、
図19(a)よりも径小な環状形状に整形される。
【0137】
このとき、操作者Nは、回転部13が閉状態のままで、例えば本体枠部16を一方の手の手指によって押さえて、他方の手の手指によって、本体スライド部内側面17aと基端部Gbとを押さえ付けたまま、本体スライド部17を前方に押し出す。
【0138】
その他は、第1の実施形態と共通する。
【0139】
以上のガイドワイヤ付形方法210により、ガイドワイヤ折り曲げ工程230の整形ステップ232においてガイドワイヤGの先端部Gaをより径小な環状形状に整形することから、ガイドワイヤGによる血管への挿入時、より血管の内壁へのダメージを低減することができる。
【0140】
また、手指だけによって基端部Gb側のガイドワイヤGを引っ張る場合に比べて、例えば本体枠部16に対する本体スライド部17の移動距離をマークして記録することにより、整形ステップ232においてガイドワイヤGを決まった距離だけ引っ張ることができる。これにより、例えば複数回繰り返して付形加工をするときでも、ガイドワイヤGの整形の度合いを容易に再現することが容易となる。そのため、操作者Nは微小な付形加工を容易にすることができる。
【0141】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を、
図21を用いて説明する。図において21が本発明のガイドワイヤ付形具である。
図21はガイドワイヤ付形具21の正面、平面及び右側面を表す斜視図である。
図21において矢印U方向がガイドワイヤ付形具21の上方を示し、矢印D方向がガイドワイヤ付形具21の下方を示す。矢印L方向がガイドワイヤ付形具21の左方を示し、矢印R方向がガイドワイヤ付形具21の右方を示す。矢印F方向がガイドワイヤ付形具21の前方を示し、矢印B方向がガイドワイヤ付形具21の後方を示す。
【0142】
ガイドワイヤ付形具21は内側にガイドワイヤGを挿入し、ガイドワイヤGの先端部Gaを環状に付形する。ガイドワイヤ付形具21は本体部22、回転部23及び2本の回転芯棒24,25を備える。
【0143】
本体部22は本体枠部26及び本体スライド部27により構成される。本体枠部26を第1の本体部ともよび、本体スライド部27を第2の本体部ともよぶ。本体スライド部27の上面を本体スライド部内側面27aとよぶ。また、回転部23の
図21の開状態における上面に相当する面を回転部内側面23aとよぶ。
【0144】
本体部22には本体スライド部内側面27aに前後方向の本体部溝22cが設けられる。また、回転部には回転部内側面23aに前後方向の回転部溝23cが設けられる。ガイドワイヤGは、開状態且つスライド前状態のガイドワイヤ付形具21の本体部溝22c及び回転部溝23cに案内される。
【0145】
本体部22の本体スライド部27は、本体枠部26に対して前後方向に摺動可能に構成されている。また、本体スライド部27は本体スライド部内側面27aの前側部分において一段低く形成される上面であるワイヤ押さえ面27dを有する。ワイヤ押さえ面27dは、ワイヤ押さえ面27d以外の本体スライド部内側面27aよりも、ガイドワイヤGの直径と略同一の高さにおいて低く形成されている。
【0146】
操作者Nは、先ず、先に述べたように回転部23を略180°まで正回転させ、ガイドワイヤGの先端部Gaが回転芯棒25の巻き芯部25bの外周形状に倣って
図19(a)のように付形される。
【0147】
次に、回転部23が閉状態のまま、本体スライド部27を前向きにスライドさせる。すなわち、本体スライド部27は、上から手指で押さえ付けられつつ本体枠部26よりも前方に移動するように押されることにより、スライド前状態に比べ前側に移動する。このとき、前記の手指は、本体スライド部27のワイヤ押さえ面27dと、このワイヤ押さえ面27d上において露出する状態のガイドワイヤGの基端部Gbとを一緒に上から押さえ付ける。そして、前記の手指が基端部Gbを上から押さえ付けたまま本体スライド部27を前方にスライドすることに伴い、前記の手指によって押さえ付けられた状態のガイドワイヤGは本体スライド部27と共に前方へ移動し、基端部Gbから前向きに引っ張られる。
【0148】
このように、ガイドワイヤ付形具21は、本体スライド部27をスライドすることにより、先端部Gaを
図19(c)のようなより径小な環状形状に整形することができる。
【0149】
その他は、第2の実施形態と共通する。
【0150】
本実施形態において、本体スライド部27がワイヤ押さえ面27dを有するため、本体部溝22cの上下方向の深さがガイドワイヤGの直径よりも大きく、ガイドワイヤGの外周面がスライド部内側面27aよりも低い位置に在るときでも、ガイドワイヤGがワイヤ押さえ面27d上において露出しているため、操作者Nは、前記の手指によってガイドワイヤGを容易に押さえ付けつつ本体スライド部27を前方にスライドすることができる。よって、操作者Nはガイドワイヤ付形具21を容易に操作することができる。
【0151】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0152】
例えば、本体部溝2c,12c,22c又は回転部溝3c,13c,23cの深さは、ガイドワイヤGの直径と同一又はガイドワイヤGの直径よりも大きなものでなくともよく、ガイドワイヤGが各溝2c,3c,12c,13c,22c,23cから外れてしまうことがなければ、例えば、ガイドワイヤGの一部がそれぞれ本体部内側面2a,12a,22a又は回転部内側面3a,13a,23aよりもわずかに飛び出す程度の深さであってもよい。
【0153】
また、本体部軸筒2b,12bの本数又は回転部軸筒3b,13bの本数は、各実施形態の説明において挙げた本数の例に限らず、回転部3,13,23が本体部2,12,22に対して安定して回転することができれば、これらの本数の例より多少してもよい。
【0154】
また、回転部3,13,23が本体部2,12,22に対して略180°まで正回転するする形態の例を挙げたが、回転部3,13,23は必ずしも180°まで正回転する必要がなく、ガイドワイヤGを必要な形状に付形することができれば、正回転の角度は180°以下にとどまってもよい。
【0155】
また、回転芯棒5,14,15,24,25が芯棒基部5a,14a,15aと、これよりも径小な巻き芯部5b,14b,15bとの二つの部分から形成される例を挙げたが、回転芯棒5,14,15,24,25は、必ずしもこれらの径が異なる二つの部分から形成される必要がなく、ガイドワイヤGを希望する形状に付形することができれば、例えば、芯棒基部と巻き芯部との境目がなくこれらが同径に構成されるものでもよい。
【0156】
また、第2の実施形態の説明において、ガイドワイヤ付形具11が各溝12a,13aを中心に左右対称に構成される場合の例を挙げたが、ガイドワイヤ付形具11,21は左右対称以外の構造でもよい。例えば、第1の実施形態と同様に、各溝は本体部及び回転部の左右何れかの側に偏って配置され、また、回転芯棒については、右側回転芯棒15,25又は左側回転芯棒14,24だけを備えるような構成でもよい。
【0157】
また、第2の実施形態の説明において、左右両側の回転芯棒14,15の巻き芯部14b,15bの巻き芯中心線Cbが芯棒基部14a,15aの基部中心線Caに対して偏心している場合の例を挙げたが、ガイドワイヤGを配置するためのガイドワイヤパスPを十分に確保することができれば、左側回転芯棒14,24及び右側回転芯棒15,25の何れかの巻き芯部又は両方の巻き芯部は、芯棒基部14a,15aに対して偏心せずに同心であってもよい。すなわち、基部中心線Caと巻き芯中心線Cbとが一致していてもよい。一例として、右側回転芯棒15の芯棒基部15aと巻き芯部とが同心の場合の、右側回転芯棒15,25を左側から視たときの側面図を
図22に示す。
【0158】
また、第2の実施形態の説明において、カム端面13d及びフォロア端面18bの何れか又は両方が斜面を構成する場合の例を挙げたが、回転部13,23の正回転に従動して回転芯棒14,15,24,25が直線移動するようなカム機構を構成すれば、各部材は、例えば円筒カム、端面カムのような異なる構造に形成されてもよい。
【0159】
また、第2の実施形態の説明において、環状に付形後のガイドワイヤGの基端部Gb側を前方に引っ張ってより径小な環状形状に整形する場合の例を挙げたが、このような事後的な整形が必要なく、例えば回転部13,23の正回転による付形だけで希望する形状に先端部Gaを整形できる場合は、本体スライド部17,27によるスライド機構がなくともよい。この場合、本体部12,22が本体枠部16,26と本体スライド部17,27とに分割されている必要がなく本体部12,22が一体ものとして構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、ガイドワイヤを付形することのできるガイドワイヤ付形具及びガイドワイヤ付形方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0161】
1,11,21 ガイドワイヤ付形具
2,12,22 本体部
2c,12c,22c 本体部溝
3,13,23 回転部
3c,13c,23c 回転部溝
14,24 右側回転芯棒
5,15,25 左側回転芯棒
5a,14a,15a 芯棒基部
5b,14b,15b 巻き芯部
16,26 本体枠部
17,27 本体スライド部
18 フォロア部材
19 本体スライド部ストッパー
110,210 ガイドワイヤ付形方法
120,220 ガイドワイヤ案内工程
121,221 本体部・回転部配置ステップ
122,222 ガイドワイヤ配置ステップ
123,223 ガイドワイヤセットステップ
130,230 ガイドワイヤ折り曲げ工程
131,231 折り畳みステップ
232 整形ステップ