(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055095
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】ステントおよびステントデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/848 20130101AFI20220331BHJP
A61F 2/95 20130101ALI20220331BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220331BHJP
A61B 8/12 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A61F2/848
A61F2/95
A61B1/00 530
A61B8/12
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162474
(22)【出願日】2020-09-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人日本消化器内視鏡学会 関東支部が2019年12月14日に発行した第109回日本消化器内視鏡学会関東支部例会抄録集に掲載 株式会社東京医学社が2020年3月に発行した消化器内視鏡に掲載 2020年8月11日に、一般社団法人日本消化器内視鏡学会のHP(第99回日本消化器内視鏡学会総会抄録集)にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】518450647
【氏名又は名称】UMIDAS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】覚野 講平
(72)【発明者】
【氏名】松原 三郎
【テーマコード(参考)】
4C161
4C267
4C601
【Fターム(参考)】
4C161AA01
4C161BB08
4C161GG15
4C161WW16
4C267AA45
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB63
4C267CC22
4C267HH11
4C601EE11
4C601FE02
(57)【要約】
【課題】内視鏡を利用してステントの位置確認が可能なステントおよびステントデリバリーシステムを提供する。
【解決手段】ステントデリバリーシステム1は、インナーカテーテル10と、ステント20と、アウターカテーテル30とを備える。ステント20は、ステント管壁部21と、ステント挿通部22と、ステント開口部23と、ステント20の所定の色と異なる色で形成され、所定の長さを有する位置確認部50と、を備える。位置確認部50は、ステント20の後端側に配置されている。位置確認部50は、内視鏡画像でステント20を見た時、ステント20の体内挿入位置を確認するための目印となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡下の手術に利用するステントであって、
ステント管壁部と、
前記ステント管壁部に取り囲まれ空洞のステント挿通部と、
前記ステント挿通部の両端に配置されるステント開口部と、
前記ステント管壁部の少なくとも後端側に設けられる係止部と、
前記係止部に設けられる位置確認部と、を備え、
前記ステントは所定の色で形成され、前記位置確認部は前記所定の色と異なる色で形成され、
前記位置確認部は所定の長さを有することを特徴とする、
ステント。
【請求項2】
前記位置確認部は、前記係止部よりも先端側に向かって延びる第1延在部および後端側に向かって延びる第2延在部の少なくとも何れか1つを有することを特徴とする、
請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記位置確認部は、前記位置確認部の前記所定の長さよりも短い複数の短位置確認部で形成されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のステント。
【請求項4】
前記ステントの前記後端側の前記ステント開口部近傍には、前記位置確認部が設けられていないことを特徴とする、
請求項1~3の何れか1項に記載のステント。
【請求項5】
前記位置確認部よりも前記ステントの先端側よりに注意喚起部が設けられていることを特徴とする、
請求項1~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項6】
前記注意喚起部は、前記所定の色および前記位置確認部と異なる色で形成されていることを特徴とする、
請求項5に記載のステント。
【請求項7】
前記注意喚起部は、複数の短注意喚起部で形成されていることを特徴とする、
請求項5または6に記載のステント。
【請求項8】
前記注意喚起部は、前記係止部の先端側端部から、前記ステントの中央部から前記係止部の先端側端部までの長さの1/3の距離にあるステントの部分にかけて、少なくとも形成されていることを特徴とする請求項5~7の何れか1項に記載のステント。
【請求項9】
前記注意喚起部は、前記係止部の先端側端部から、前記ステントの中央部にかけて形成されていることを特徴とする請求項5~8の何れか1項に記載のステント。
【請求項10】
前記係止部は、巻回形状であることを特徴とする、
請求項1~9の何れか1項に記載のステント。
【請求項11】
前記係止部には、複数の孔が設けられていることを特徴とする、
請求項1~10の何れか1項に記載のステント。
【請求項12】
前記係止部は、少なくともフラップ形状を有することを特徴とする、
請求項1~9の何れか1項に記載のステント。
【請求項13】
前記内視鏡は、超音波内視鏡であることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載のステント。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載のステントを備えていることを特徴とする、
ステントデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆管や膵管ドレナージ等に用いるステントおよびステントデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
胆管や膵管ドレナージ等に用いるステントおよびステントデリバリーシステムが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、素線を軸線回りに巻回させて形成したコイルと、第一の樹脂材料で略管状に形成され、前記コイルと同軸に前記コイルの外周側に設けられた外部層と、第二の樹脂材料で略管状に形成され、前記コイルと同軸に前記コイルの内周側に設けられた内部層とを備える医療用ステントであり、曲がり易く弾発性が少ない特性を維持しつつも、曲げたときに内腔を潰れ難くし、柔軟性や弾発性などの物性を低下させることなく、造影性を向上させたことが開示されている。
【0004】
また、
図12に示すように、ステントの係止部124よりも中央部側の位置に、軸方向の幅wのマーク150を形成し、内視鏡下でそのマーク150が見えた時点でステント120をリリースすることで、目的部位に留置させることができるステント120が販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2011/118081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内視鏡(消化器領域の軟性内視鏡)を用いてステントを所定の位置(患部)に留置する場合、内視鏡の視野が狭く、かつ消化器官等の狭い空間内で操作を行う必要があることから、ステントを所定の位置に留置し難いという問題点があった。
【0007】
また、上述したマークが形成された従来のステント120は、マーク150の幅wが短いことから、ステント120が内視鏡の視野から外れた際に、そのマーク150が見落とされることが多いという問題点があった。特に、マーク150が、係止部124よりも中央部側に形成されているので、内視鏡下ではそのマーク150と係止部124との距離の感覚(マーク150に対する係止部124の相対的な位置)を把握し難いという問題点があった。その結果、内視鏡の画面において、マーク150がどの位置に表示された時にステント120をリリースすればよいか判断できず、ステント120を目的部位に正確に留置し難いという問題点があった。
【0008】
特に、マーク150が内視鏡の視野から外れた状態でステント120の挿入を続けた後で、内視鏡の視野にステント120が入った際に、内視鏡の画像に表示されたステント120の部分が、マーク150より後端側に位置する部分であるにもかかわらず、マーク150より先端側に位置する部分と誤認して押し続けてしまう可能性がある。その結果、ステント120が迷入してしまう(目的部位とは違うところに留置してしまう)可能性があるという問題点があった。
【0009】
ところで、特許文献1に記載されている発明は、コイルによりステントの基端部の位置をX線透視下において確認することができるため、十二指腸乳頭と胆管の狭窄部に迷走や逸脱を防止したステントの係止が行え、ステントの回収も容易である医療用ステントである。そして、特許文献1には、コイルピッチを変えることでX線不透過度に差が生じ、コイルピッチが相違する境界位置をX線透視下において視認できることが開示されている。
【0010】
一方、医療技術の進展に伴って、患者への負担軽減から超音波内視鏡(EUS)を用いてドレナージを行う手術が注目されている。このような手術(例えば超音波内視鏡下瘻孔形成術)は、従来の十二指腸乳頭を経由したドレナージとは異なり、胃や十二指腸などの消化管壁を貫通して胆管や膵管等との間をステントでつなぐものである。この手術では、ステントの後端を消化管内に必ず留置しなければならず、そうできなかった場合は胆汁や膵液が腹腔内に漏出し、重篤な腹膜炎となる可能性がある。また、胃や十二指腸などの消化管は管腔臓器であるために内視鏡の位置や送気状態によって伸び縮みするため、X線透視だけでは消化管壁の正確な位置は把握できず、ステントの後端を確実に消化管内に留置することもできない。
【0011】
そこで、例えば超音波内視鏡下のドレナージにおいては、内視鏡視野下にステントを留置することが必須条件として求められる。しかし超音波内視鏡は超音波探触子が光学系モニターよりも先端についているという構造上の理由から、通常の内視鏡に比べて内視鏡視野が見えにくいという問題点がある。特許文献1に記載された医療用ステントはX線不透過度の差をステントの位置確認に利用するものであり、その特性は内視鏡による位置確認には使用することはできない。したがって、新たな医術に対応できる位置確認を備えたステントの開発が望まれていた。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑み、内視鏡を利用して、ステントの迷入を防止すると共に、ステントの位置(リリース位置)確認が可能なステントおよびステントデリバリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究を続けた結果、以下のような画期的なステントおよびステントデリバリーシステムを見出した。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、内視鏡下の手術に利用するステントであって、ステント管壁部と、ステント管壁部に取り囲まれ空洞のステント挿通部と、ステント挿通部の両端に配置されるステント開口部と、ステント管壁部の少なくとも後端側に設けられる係止部と、係止部に設けられる位置確認部と、を備え、ステントは所定の色で形成され、位置確認部は所定の色と異なる色で形成され、位置確認部は所定の長さを有することを特徴とする、ステントにある。
【0015】
ここで、「係止部」とは、ステントを所定の位置で留置させるための部分をいい、その場所および形状は特に限定されない。係止部としては、例えば、ピッグテール型のステントであれば、後述する巻回形状の部分に相当し、フラップ型のステントであれば、後述するフラップ形状の部分およびそれに対向するステントの部分に相当する。
【0016】
かかる第1の態様では、内視鏡下でステントを体内に挿入し、内視鏡の画像を見ながら位置確認部が視認できるので、体内におけるステントの挿入位置関係が理解できる。特に、従来のステント120と異なり、係止部に所定の長さ(幅広)を有する位置確認部が設けられているので、内視鏡の画像に係止部の一部でも表示されていれば、位置確認部を常に視認することができることになる。その結果、位置確認部が、内視鏡の画像に表示された時点でステントをリリースすることにより、ステントを適切な位置に留置させることができる。すなわち、迷入を防止できると共に、内視鏡を利用してステントの位置(リリース位置)を確認できるステントを提供することができる。
【0017】
特に色の識別はベテランの医者で無くても容易に判定できる。ステントの挿入最中には、臓器の周囲から胆汁や膵液等の体液があふれでて、視野を確保することが難しく、ステントの位置関係が分かり難い。しかし、本態様のステントは、位置確認部が所定の長さを有するので、内視鏡画像で、位置確認部を容易に発見することができる。また、所定の色と異なる色を形成するだけであり、構造が簡単で、低コストのステントを提供することができる。
【0018】
本発明の第2の態様は、位置確認部は、係止部よりも先端側に向かって延びる第1延在部および後端側に向かって延びる第2延在部の少なくとも何れか1つを有することを特徴とする、第1の態様に記載のステントにある。
【0019】
かかる第2の態様では、目的部位の状況や、ステントの種類および形状等に応じて、位置確認部の長さを調整することができる。その結果、内視鏡を利用してステントの位置(リリース位置)を容易に確認できるステントを提供することができる。
【0020】
本発明の第3の態様は、位置確認部は、位置確認部の所定の長さよりも短い複数の短位置確認部で形成されていることを特徴とする、第1または第2の態様に記載のステントにある。
【0021】
かかる第3の態様では、位置確認部が複数の短位置確認部で形成されているので、位置確認部が、より認識し易くなる。その結果内視鏡を利用してステントの位置(リリース位置)を、より容易に確認できるステントを提供することができる。
【0022】
本発明の第4の態様は、ステントの後端側のステント開口部近傍には、位置確認部が設けられていないことを特徴とする、第1~第3の態様の何れか1つに記載のステントにある。
【0023】
かかる第4の態様では、後端側のステント開口部の位置が視認できるので、ステントの迷入を、より防止することができる。
【0024】
また、ステントを製造する際に、ステントの後端部側のステント開口部近傍を治具で固定した上で位置確認部を着色することがある。その場合、その治具が位置確認部の着色を阻害することになる。一方、ステントの後端側のステント開口部近傍に、位置確認部を設けない場合には、その治具は位置確認部のステント開口部近傍の着色を阻害することにならない。その結果、ステントの後端側のステント開口部近傍にまで位置確認部が設けられたステントと比較して、本発明に係るステントは、容易に製造することができる。
【0025】
本発明の第5の態様は、位置確認部よりもステントの先端側よりに注意喚起部が設けられていることを特徴とする、第1~第4の態様の何れか1つに記載のステントにある。
【0026】
かかる第5の態様では、ステントを挿入する際には、内視鏡画像内に、注意喚起部が位置確認部よりも先に現れるので、位置確認部が内視鏡画像に現れることを予想することができる。その結果、ステントの挿入操作のスピードをコントロールできるので、よりステントの迷入を避けることができる。
【0027】
本発明の第6の態様は、注意喚起部は、所定の色および位置確認部と異なる色で形成されていることを特徴とする、第5の態様に記載のステントにある。
【0028】
かかる第6の態様では、注意喚起部と位置確認部の相違が明確となり、注意喚起部の発見を、より正確に行うことができる。
【0029】
本発明の第7の態様は、注意喚起部は、複数の短注意喚起部で形成されていることを特徴とする、第5または第6の態様に記載のステントにある。
【0030】
かかる第7の態様では、注意喚起部が複数の短位置確認部が形成されているので、注意喚起部を認識し易くなる。
【0031】
本発明の第8の態様は、注意喚起部は、係止部の先端側端部から、ステントの中央部から係止部の先端側端部までの長さの1/3の距離にあるステントの部分にかけて、少なくとも形成されていることを特徴とする第5~第7の態様の何れか1つに記載のステントにある。
【0032】
かかる第8の態様では、ステントを押し出す際に、注意喚起部が内視鏡画像に現れるまで相当な時間が得られるので、余裕をもってステントをリリースすることができる。
【0033】
本発明の第9の態様は、注意喚起部は、係止部の先端側端部から、ステントの中央部にかけて形成されていることを特徴とする第5~第8の態様の何れか1つに記載のステントにある。
【0034】
かかる第9の態様では、ステントを押し出す際に、注意喚起部が内視鏡画像に現れるまで十分な時間が得られるので、十分な余裕をもってステントをリリースすることができる。
【0035】
本発明の第10の態様は、係止部は、巻回形状であることを特徴とする、第1~第9の態様の何れか1つに記載のステントにある。
【0036】
かかる第10の態様では、本発明に係るダブルピッグテール型やシングルピッグテール型等のステントを提供することができる。
【0037】
本発明の第11の態様は、係止部には、複数の孔が設けられていることを特徴とする、第1~10の態様の何れか1つに記載のステントにある。
【0038】
かかる第11の態様では、胆汁や膵液等の体液等をステント挿通部内に確実に導入させることができる。
【0039】
本発明の第12の態様は、係止部は、少なくともフラップ形状を有することを特徴とする、第1~第9の態様の何れか1つに記載のステントにある。
【0040】
かかる第12の態様では、本発明に係るフラップ型のステントを提供することができる。
【0041】
本発明の第13の態様は、内視鏡が、超音波内視鏡であることを特徴とする第1~第12の態様の何れか1つに記載のステントにある。
【0042】
かかる第13の態様では、超音波内視鏡では、超音波探触子が光学系モニターよりも先端についているという構造上の理由から、通常の内視鏡に比べて内視鏡の視野が見えにくいという問題点を解決することができ、内視鏡を利用してステントの位置(リリース位置)を確認できるステントを提供することができる。
【0043】
本発明の第14の態様は、第1~第13の態様の何れか1つに記載のステントを備えていることを特徴とする、ステントデリバリーシステムにある。
【0044】
かかる第14の態様では、迷入を防止できると共に、内視鏡を利用してステントを目的部位に確実に留置できるステントデリバリーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明に係るステントデリバリーシステムの一例を示す概略側面図である。
【
図2】
図1のインナーカテーテルを示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-A概略断面図である。
【
図3】
図1のステントのピッグテール型を示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図4】
図1のステントのフラップ型を示し、(a)は概略側面図、(b)は側方屈曲型の概略側面図、(c)は(a)(b)のA-A概略断面図である。
【
図5】
図1のアウターカテーテルを示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-概略A断面図である。
【
図6】本発明に係るステントデリバリーシステムを利用してステントを目的部位に留置する一例を示す模式図である。
【
図7】本発明のステントの位置確認部の実施例1を示す概略側面図であり、(a)はピッグテール型、(b)フラップ型である。
【
図8】
図7に続く位置確認部の実施例2を示す概略側面図であり、(a)はピッグテール型、(b)フラップ型である。
【
図9】本発明ステントを示す概略側面図であり、(a)は第1実施形態、(b)は第2実施形態である。
【
図10】
図9に続き、(a)は第3実施形態、(b)は第4実施形態である。
【
図11】
図10に続き、(a)は第5実施形態、(b)は第6実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るステントおよびステントデリバリーシステムの実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
図1は、本発明に係るステントデリバリーシステムの一例を示す概略側面図である。
図2は、
図1のインナーカテーテルを示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-A概略断面図である。
図3は、
図1のステントのピッグテール型を示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-A概略断面図である。
図4は、
図1のステントのフラップ型を示し、(a)は概略側面図、(b)は側方屈曲型の概略側面図、(c)は(a)(b)のA-A概略断面図である。
図5は、
図1のアウターカテーテルを示し、(a)は概略側面図、(b)は(a)のA-A概略断面図である。
図1~
図5を用いて、ステントおよびステントデリバリーシステムの一例を詳述する。
【0048】
本発明のステントデリバリーシステム1は、
図1に示すように、インナーカテーテル10と、ステント20と、アウターカテーテル30とを備えている。
【0049】
インナーカテーテル10は、
図2に示すように、環状形状をなすインナーカテーテル管壁部11と、インナーカテーテル管壁部11に取り囲まれ空洞のインナーカテーテル挿通部12と、一端に医者などが操作する造影ポート、GW(ガイドワイヤ)ルーメンなどが設けられた操作部40と、操作部40と反対側の一端に設けられたインナーカテーテル開口部13とを備えている。インナーカテーテル挿通部12は、図示しないガイドワイヤが貫通し、ガイドワイヤの体内誘導によりステント20を目的部位に到達させることができる。
【0050】
以下、操作部40と反対側の一端方向を先端側と表現し、ステント20およびアウターカテーテル30に対しても同様に先端側と表現する。また、ステント20の先端側と反対側を後端側と表現し、先端側と後端側を併せて両端側と表現する。
【0051】
ステント20は、体内の目的部位に留置させるもので、
図3および
図4に示すように、環状形状をなすステント管壁部21と、ステント管壁部21に取り囲まれ空洞のステント挿通部22と、ステント挿通部22両端に配置されるステント開口部23と、ステント20の両端側にそれぞれ形成された係止部24と、を備えている。
【0052】
ここで、本実施形態のステント20には、後端側の係止部24に、ステント20の所定の色と異なる色で形成された位置確認部50(
図3斜線参照)が設けられている。位置確認部50は、内視鏡画像でステント20を見た時、ステント20の体内挿入位置(リリース位置)を確認するための目印となる。
【0053】
ステント20は、形状の異なる複数の種類があるが、以下では代表的な形状として、ピッグテール型およびフラップ型を説明する。
【0054】
図3に示すステント20は、ピッグテール型である。係止部24は、ステント20の両端側に配置され、1回巻回した巻回形状をなし、かつステント管壁部21を貫通する孔25が複数設けられている。
【0055】
なお、巻回形状の係止部24を有するピッグテール型では、胆汁や膵液等を排出する重要な孔25を設ける必要があるが、特許文献1に記載されたコイルがある場合、そのコイルが邪魔をして、胆汁や膵液等をうまく排出することができない。なお、孔25は、係止部24に形成されるのであれば、形成位置は特に限定されない。
【0056】
次に、
図4(a)に示すステント20は、フラップ型である。係止部24は、ステント20の両端側に配置され、フラップ形状をなしている。係止部24のフラップ形状は、ステント管壁部21を部分的に切り欠き、フラップの先端をステント管壁部21の外方に突出させて形成する。本実施形態では、係止部24は、フラップ形状のみならずフラップ形状に対応するステント管壁部21も含む。
【0057】
図4(b)に示されたステント20は、
図4(a)と同様フラップ型であるが、後端側が下方に湾曲した側方屈曲形状をなしている。その他は
図4(a)と同様である。
【0058】
本実施形態において、係止部24は両端側に設けてあることを説明したが、ステント20の後端側のみに設けられていてもよい。
【0059】
ステント20の材質として、金属や樹脂が採用され、金属ではステンレス鋼、コバルトクロム合金、プラチナクロム合金等、樹脂では磁性を持たないポリマー化合物等が選択される。金属は、一般的にメッシュ状をなし、金属を樹脂(シリコン、ポリウレタン等)で被覆してもよい。
【0060】
アウターカテーテル30は、
図5に示すように、環状形状をなすアウターカテーテル管壁部31と、アウターカテーテル管壁部31に取り囲まれ空洞のアウターカテーテル挿通部32と、アウターカテーテル30の両端が開口されたアウターカテーテル開口部33とを備えている。
【0061】
そして、ステントデリバリーシステム1は、
図1に示すように、インナーカテーテル10、ステント20およびアウターカテーテル30を一体化したシステムであり、図示しないガイドワイヤを含んでもよい。
【0062】
インナーカテーテル10の全長は、アウターカテーテル30の全長よりも長いため、インナーカテーテル10をアウターカテーテル挿通部32に挿通させると、インナーカテーテル10の先端側がアウターカテーテル30の先端側から突出する。その突出した部分をステント挿通部22内に挿通させると、ステント20の後端側のステント開口部23とアウターカテーテル30の先端側のアウターカテーテル開口部33とが、当接または近接する。インナーカテーテル10のアウターカテーテル30の先端側から突出した部分の長さは、ステント20の全長よりも長いので、ステント20の先端側からインナーカテーテル10の先端側が一部突出した状態で配置される。
【0063】
インナーカテーテル10およびアウターカテーテル30は、可撓性の樹脂材料(例えばポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド等)から成形されるが、その材料は特に限定されない。
【0064】
図6は、本実施形態のステントデリバリーシステム1を利用したステント20の目的部位留置の一例を示している。手術の一例は、内視鏡下の経乳頭的胆道ドレナージである。
【0065】
ステントデリバリーシステム1は、内視鏡の画像を見ながら、ステント20を体内の目的部位に搬送させることができる。例えば、ステント20を十二指腸100から総胆管101に乳頭部102を介して挿入し、胆管がん103の発生している場所まで送り込む。操作を行う医師は、内視鏡の画像を見ながら、位置確認部50によりステント20の挿入位置を確認し、目的部位にステント20を配置する。その後、胆道ドレナージを行うことが確認できた時点で、インナーカテーテル10を引き抜くと、係止部(フラップ)24によりステント20の移動が制止され、ステント20は目的部位に留置される。本実施形態では、フラップ型のステント20を一例としたがピッグテール型でも同様である。
【0066】
次に、
図7~
図11を参照して、位置確認部50を詳述する。ステント管壁部21は、所定の色で形成されている。その所定の色は、白色、黄色、青色で淡色などが用いられる。本実施形態のステント20には、ステント20の後端側に所定の色と異なる色を有する位置確認部50が設けられている。ここで、異なる色とは、ステント管壁部21と異なるものであれば特に限定されず、例えば黒色、紫色、茶色、赤色等が挙げられ、濃色が好ましい。
【0067】
また、
図12に示すような従来のステント120において、マーク150が係止部124よりも中央部側に形成されているが、その軸方向の幅wは数mmと短い。その結果、ステント120が内視鏡の視野から外れた際に、そのマーク150が見落とされることが多かった。
【0068】
一方、本発明における位置確認部50は、係止部24に形成され、所定の長さを有している。「所定の長さ」とは、ステント挿入操作中に、医者等が内視鏡の画像を見て、位置確認部50の存在が十分に確認できる長さである。所定の長さとしては、例えば、係止部24全体の長さであってもよいし、その一部の長さであってもよい。ピッグテール型では、位置確認部50の全長は、例えば約5cmであるが、これは回巻部の半径Rの大きさにより異なる。一方、フラップ型では、位置確認部50の全長は、例えば約1.5cmであるが、これもフラップの大きさと、ステント後端から後端側の係止部の後端部までの距離により異なる。
【0069】
ステント20は、二つの臓器間を跨ぐように留置される。例えば、乳頭部を通して十二指腸と胆管と接続するように留置される場合は、ステント20は、先端部が乳頭部を通って胆管内に入った状態で、それぞれの臓器内の乳頭部近傍に、係止部24で係止することで留置される。その手術の際に、内視鏡画像が利用される。
【0070】
本実施形態では、ステントデリバリーシステム1を利用して、ステント20を目的部位まで誘導した後、留置することになる。本実施形態のステント20では、内視鏡画像で位置確認部50がどの位置にあるか特定できるので、ステント20の挿入操作が確実に行われ、ステント20を目的部位に正確に留置させることができる。すなわち、本実施形態のステント20には位置確認部50が形成されているので、医師等は、内視鏡画像で位置確認部50が確認できた段階で、目的部位へのステントの挿入を停止して、リリースすべき状態にあることを把握することができる。その結果、ステント20を目的部位に正確に留置させることができる。
【0071】
ここで、ステント20の挿入は容易ではなく、かなりの医術を必要とし、場合によってはステント20の先端が目的部位を超えて深く入り過ぎて、ステント20の迷入を生じることがある。
【0072】
特許文献1では、X線画像を利用してコイルピッチの相違による確認を行っているが、内視鏡を用いた手術では、X線不透過度の相違によるステント20の位置確認だけでは不十分であり、内視鏡画像での位置確認も必要となる。特に、超音波内視鏡を用いた、例えば超音波内視鏡下瘻孔形成術においては、ステント20の迷入は腹膜炎という重篤な偶発症に直結することから、内視鏡画像での位置確認が非常に重要となる。
【0073】
また、特許文献1では、コイルピッチが異なることで起こる色相の濃淡により、外観上でも、その境界を特定できることが開示されている。しかし、例えば超音波内視鏡を用いた超音波内視鏡下瘻孔形成術においては、超音波探触子が内視鏡の先端に付いているという構造上の理由、また周囲から胆汁や膵液等があふれ出ることから、内視鏡の視野を確保することが非常に難しく、コイルピッチの境界を確認することは極めて困難である。
【0074】
本実施形態のステント20およびステントデリバリーシステム1は、内視鏡を利用し、内視鏡画像で、位置確認部50の色の識別を行うことができる。この色の識別はベテランの医者で無くても容易に判定することができる。
【0075】
図7は、本発明のステントの位置確認部の実施例1を示す側面図であり、(a)はピッグテール型、(b)フラップ型である。
図8は、
図7に続く位置確認部の実施例2を示す側面図であり、(a)はピッグテール型、(b)フラップ型である。なお、
図7(b)および
図8(b)のフラップ形状の係止部の例は、
図4(b)の直線型であり、位置確認部の位置関係が同じ
図4(c)の側方屈曲形状型は省略してある。
図7および
図8に基づいて、位置確認部の形成位置を説明する。
【0076】
図7は、ステント20の後端側の係止部24に位置確認部50が設けられた例を示している。本実施形態では、位置確認部50が係止部24全体に設けられているが、係止部24において、位置確認部50を設ける箇所は、用途に応じて選択可能である。
【0077】
図8は、位置確認部50をさらに先端側および、より後端側に延長した例である。先端側に延びた領域を第1延在部51、より後端側に延びた領域を第2延在部52として説明する。
【0078】
図8(a)のピッグテール型において、第1延在部51の領域は巻回が形成された際の外径R以内にあることが好ましく、第1延在部51がステント20の巻回が形成された際の外径Rに等しいことが特に好ましい。第1延在部51がステント20の巻回が形成された際の外径Rに等しく形成されている場合には、内視鏡画像で第1延在部51が確認できた段階(場所)でステント20をリリースすると、その場所の近傍に係止部24の外径が形成されることになる。その結果、ステント20がその場所から移動し難くなり、ステント20を目的部位に、より正確に留置させることができる。
【0079】
また、第2延在部52の領域は、後端側のステント開口部23までが好ましいが、そのステント開口部23の近傍は、第2延在部52が形成されていないことがより好ましい。
【0080】
図8(b)のフラップ型において、係止部24を中心に、第1延在部51および第2延在部52が設けられている。フラップ型では、係止部24の長さにより、第1延在部51および第2延在部52の長さが異なる。係止部24が長ければ第1延在部51および第2延在部52はそれほど長くなくてもよく、係止部24が短ければ第1延在部51および第2延在部52は長く取る必要がある。
【0081】
図7(b)の実施例1では、位置確認部50は、係止部24に対応して設けられていたが、
図8(b)の実施例2では、位置確認部50は、第1延在部51と第2延在部52とを含み、実施例1よりも長く形成されている。第1延在部51および第2延在部52の長さは、選択可能である。すなわち、第1延在部51と第2延在部52のどちらか一方または両方で、位置確認部50の長さが調整できる。また、第1延在部51または第2延在部52のどちらか一方のみが形成されていてもよい。
【0082】
次に、
図9から
図11に基づいて、位置確認部のいくつかの実施形態を説明する。位置確認部は係止部に設けられている場合を一例とし、位置確認部の一部である延在部は便宜上省略してある。
【0083】
図9(a)の第1実施形態では、位置確認部50がステント20の後端部の係止部24に設けられている。先端側は例えば胆道内に挿入され、後端側は例えば消化管内に挿入される。第1実施形態の位置確認部50は、所定の長さ間で色が途切れること無く連続に形成されている。ステント20をこのように構成することにより、内視鏡画像で位置確認部50の位置を容易かつ明確に確認することができるので、係止部24を一方の臓器内に確実に留置させることができる。
【0084】
図9(b)の第2実施形態では、位置確認部50は、所定の長さ間で、第1実施形態の位置確認部50の長さよりも短い複数の短位置確認部50aが適宜間隔を保って配列されている。すなわち、複数の短位置確認部50aの集合が位置確認部50である。また、各短位置確認部50aの長さが後端側のステント開口部23に向かって徐々に長くなる、例えばグラデーション配置でもよい。各短位置確認部50aの長さ、および配置間隔は、適宜変更可能である。ステント20をこのように構成することにより、位置確認部50が複数の短位置確認部50aで形成されているので、内視鏡画像で位置確認部50の位置を、より容易かつ、より明確に確認することができるので、係止部24を一方の臓器内に、より確実に留置させることができる。
【0085】
図10(a)の第3実施形態では、位置確認部50よりもステント20の先端側寄りに、ステント20を挿入中に位置確認部50がまもなく現れることを知らせる注意喚起部60(
図10(a)斜め破線参照)が設けられている。注意喚起部60と位置確認部50は連続的に設けられていることが好ましい。注意喚起部60の先端側の位置は特に限定されないが、係止部24の先端側端部から、ステント20の中央部から係止部24の先端側端部までの長さの1/3の距離にあるステントの部分にかけて形成されていると、注意喚起部60が内視鏡画像に現れるまで相当な時間が得られるので好ましく、係止部24の先端側端部から、ステント20の中央部にかけて形成されていると、注意喚起部60が内視鏡画像に現れるまで十分な時間が得られるので特に好ましい。
【0086】
なお、注意喚起部60が現れたことを確認できると、ステント20の挿入制御を開始するため、注意喚起部60と位置確認部50とが不連続になっていると操作上のミスに繋がる可能性がある。また、位置確認部50の第1延在部51が設けられている場合、第1延在部51と注意喚起部60とが連続的に設けられていることが好ましい。第1延在部51と注意喚起部60とが連続的に設けられることにより、視野の狭い内視鏡画像においても見えている部分がステント20のどこの位置か判別し易くなるという効果を奏する。なお、注意喚起部60は、位置確認部50およびステント20の所定の色とは異なる色または同色系であるが位置確認部50の色よりもやや淡い色で形成してもよい。
【0087】
図10(b)の第4実施形態は注意喚起部60の別の実施例であり、第2実施形態と同様に、第3実施形態の注意喚起部60の長さよりも短い複数の短注意喚起部61が配列されている。すなわち、複数の短注意喚起部61の集合が注意喚起部60である。ステント20の所定の色が黄色で、短注意喚起部61の色が黒である場合、視認性の高い配色となる。さらに、各短注意喚起部61の長さが、位置確認部50に向かって徐々に長くなる配列でもよい。注意喚起部60を複数の短注意喚起部61で構成することにより、位置確認部50と同じ色や素材等であっても、位置確認部50と注意喚起部60とを明確に区別することができる。すなわち、位置確認部50と同じ素材(色)や加工方法で注意喚起部60を形成することができる。
【0088】
図11(a)の第5実施形態は、フラップ型に適用した場合である。位置確認部50は、ステント20の後端側に配置される係止部24に設けられている。位置確認部50は、本実施形態において、フラップ形状のみならずフラップ形状に対応するステント管壁部21も含む係止部24に設けられていることを説明したが、フラップ形状部分のみに設けてもよく、ステント管壁部21のみに設けてもよい。
図11(b)の第6実施形態では、第3実施形態と同様に、注意喚起部60を設けている。その他の形態は、第2実施形態および第4実施形態と同様である。ステント20をこのように構成することにより、内視鏡画像で位置確認部50の位置を、容易かつ明確に確認することができるので、係止部24を一方の臓器に、より確実に留置させることができる。
【0089】
位置確認部50は、ステント20の挿入位置を内視鏡下で確認する一種の目印であり、ステント20の所定の色と異なる色であればよく、選択された色が同一色、複数の色の配列、また、ステント20の後端面に向かって色が変化してもよい。色の変化、配列等は適宜選択が可能であり、注意喚起部60も同様である。
【0090】
位置確認部50は、2色成形する、ステント20の表面を塗装する、ステント20の表面を粗す等の表面加工する、ステント20を被覆する、ステント20と位置確認部50とを結合する、等で形成できる。
【0091】
例えば、超音波内視鏡ガイド下で胆道ドレナージを行い、ステント20を目的部位に留置させる場合、ステント20の先端側を挿入させ透視画像や内視鏡画像でステントの位置を確認するが、ステント20の迷入を生じる可能性がある。本実施形態のステント20であれば内視鏡画像で位置確認部50が視認でき、ステント20の挿入位置関係が確認でき、その視認によりステント20の挿入を止めることにより、ステント20を目的部位に正確に留置させることができる。さらに、注意喚起部60により、位置確認部50がまもなく内視鏡画像内に現れることが理解でき、ステント20の挿入操作のスピードをコントロールすることが可能となる。すなわち、ステント20の挿入操作において、挿入スピードを急に止めることは容易でないが、注意喚起部60の視認により、そのような操作が確実となる。
【0092】
本発明のステント20は、内視鏡下のドレナージに利用するステント20であって、ステント管壁部21と、ステント管壁部21に取り囲まれ空洞のステント挿通部22と、ステント挿通部22の両端に配置されるステント開口部23と、ステント管壁部21の少なくとも後端側に設けられる係止部24と、ステント20の後端側に設けられた位置確認部50と、を備え、ステント20は所定の色で形成され、位置確認部50は所定の色と異なる色で形成され、位置確認部50は所定の長さを有する。
【0093】
このようにステント20を構成することにより、内視鏡下でステント20を体内に挿入し、内視鏡の画像を見ながら位置確認部50が視認できるため、ステント20の挿入位置関係が理解でき、確実なステント20の目的部位留置ができる。色の識別はベテランの医者で無くても容易に判定できる。ステント20の挿入最中は、周りから胆汁や膵液などがあふれでて、視野を確保することが難しく、ステント20の位置関係が分かり難いが、位置確認部50が所定の長さを有しているので、内視鏡画像で、位置確認部50が容易に発見し易い。また、所定の色と異なる色を形成するだけであり、構造が簡単で、低コストのステント20を提供することができる。
【0094】
本発明のステント20の一態様として例えば、位置確認部50は、係止部24よりも先端側に向かって延びる第1延在部51および後端側に向かって延びる第2延在部52の少なくとも1つを有する。このようにステント20を構成することにより、位置確認部50の長さが調整でき、目的部位の状況に応じてステント20の種類や形状を変えても、適切な長さを有する位置確認部50を提供することができる。
【0095】
本発明のステント20の一態様として例えば、位置確認部50は、位置確認部50の所定の長さよりも短い複数の短位置確認部50aで形成されている。これにより、位置確認部50の発見がし易くなる。
【0096】
本発明のステント20の一態様として例えば、ステント20の後端側のステント開口部23近傍には、位置確認部50が設けられていない。ステント20を製造する際に、ステント20の後端部側のステント開口部23近傍を治具で固定した上で位置確認部50を着色することがある。その場合、その治具が位置確認部50の着色を阻害することになる。一方、ステントの後端側のステント開口部23近傍に、位置確認部50を設けない場合には、その治具は位置確認部50のステント開口部23近傍の着色を阻害することにならない。その結果、後端側のステント開口部23近傍に位置確認部50が設けられていないステント20は、ステント20の後端側のステント開口部23近傍まで位置確認部50が設けられたステントと比較して、容易に製造することができる。
【0097】
本発明のステント20の一態様として例えば、位置確認部50よりもステント20の先端側寄りに注意喚起部60が設けられている。このようにステント20を構成することにより、位置確認部50が内視鏡画像で確認できる挿入状態に近づいていることが理解でき、挿入操作のスピードをコントロールでき、ステント20の迷入を避けることができる。ステント20の挿入最中は、周囲から胆汁や膵液等があふれでて、視野を確保することが難しく、ステント20の位置関係が分かり難くなる。しかし、注意喚起部60の存在により、落ち着いたステント20の挿入操作をすることができる。
【0098】
本発明のステント20の一態様として例えば、注意喚起部60は、位置確認部50と異なる色で形成されている。このようにステント20を構成することにより、注意喚起部60と位置確認部50の相違が明確となり、注意喚起部60の発見を、より正確に行うことができる。
【0099】
本発明のステント20の一態様として例えば、注意喚起部60は、複数の短注意喚起部61で形成されている。このようにステント20を構成することにより、注意喚起部60の発見をし易くすることができる。
【0100】
本発明のステント20の一態様として例えば、係止部24は、巻回形状である。このようにステント20を構成することにより、ピッグテール型のステント20にも本発明を適用することができる。
【0101】
本発明のステント20の一態様として例えば、係止部24には、複数の孔25が設けられている。このようにステント20を構成することにより、胆汁や膵液等の体液を確実にステント挿通部22内に導入させることができる。
【0102】
本発明のステント20の一態様として例えば、係止部24は、少なくともフラップ形状を有する。このようにステント20を構成することにより、フラップ型のステント20にも本発明を適用することができる。
【0103】
本発明のステントデリバリーシステム1は、上述したステント20を備えている。このように構成することにより、ステント20を確実に目的部位に留置させるステントデリバリーシステム1提供できる。
【0104】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、係止部には、孔が形成されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のステントおよびステントデリバリーシステムは、ステント挿入中にステントの位置関係を内視鏡画像を介して確実に確認できることを望む分野に最適である。
【符号の説明】
【0106】
1 ステントデリバリーシステム
10 インナーカテーテル
11 インナーカテーテル管壁部
12 インナーカテーテル挿通部
13 インナーカテーテル開口部
20、120 ステント
21 ステント管壁部
22 ステント挿通部
23 ステント開口部
24、124 係止部
25 孔
30 アウターカテーテル
31 アウターカテーテル管壁部
32 アウターカテーテル挿通部
33 アウターカテーテル開口部
40 操作部
50 位置確認部
50a 短位置確認部
51 第1延在部
52 第2延在部
60 注意喚起部
61 短注意喚起部
R 巻回が形成された際の外径
100 十二指腸
101 総胆管
102 乳頭部
150 マーク