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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055107
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20220331BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20220331BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20220331BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20220331BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20220331BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220331BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
G03B15/00 Q
G03B15/00 D
G03B15/02 F
G03B15/02 J
G03B15/02 M
G03B15/02 P
B60R11/02 C
H04N5/225 100
H04N5/232 190
H04N5/225 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162503
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】猪坂 雄治
(72)【発明者】
【氏名】濱田 一成
【テーマコード(参考)】
2H199
3D020
3D344
5C122
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA28
2H199DA30
2H199DA33
2H199DA41
3D020BA04
3D020BA20
3D020BC03
3D020BD03
3D020BE03
3D344AA16
3D344AB01
3D344AC07
3D344AC13
3D344AC25
3D344AD02
5C122DA14
5C122DA16
5C122EA66
5C122FB11
5C122FH11
5C122FH14
5C122FK23
5C122GE04
5C122GE11
5C122GG04
5C122HA29
(57)【要約】
【課題】ユーザの顔が有する所望の特徴部位を良好に撮像することができるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を提供する。
【解決手段】HUD装置100は、画像を表す可視光である表示光Lを発する表示部10と、表示光Lを反射してウインドシールド2へ導く反射部20と、ウインドシールド2で反射した表示光Lによる画像の虚像Vを視認するユーザUの顔を赤外線IRに基づいて撮像する赤外線カメラ40と、反射部20で反射した表示光Lを通過させる通過口61を有する筐体60と、を備える。反射部20は、表示光Lを反射する一方で赤外線IRを透過する赤外線透過ミラーを含む。赤外線カメラ40は、赤外線透過ミラーの背後に設けられ、そのカメラ光軸Roが、ユーザUが虚像Vを視認可能な範囲であるアイボックスEの中心よりも下方を通る状態で顔を撮像する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表す可視光である表示光を発する表示部と、
前記表示光を反射して透光部材へ導く反射部と、
前記透光部材で反射した前記表示光による前記画像の虚像を視認するユーザの顔を、前記顔に照射される赤外線に基づいて撮像する赤外線カメラと、
前記反射部で反射した前記表示光を前記透光部材に向けて通過させる通過口を有するとともに、前記表示部、前記反射部及び前記赤外線カメラを収容する筐体と、を備え、
前記反射部は、前記表示光を反射する一方で前記赤外線を透過する赤外線透過ミラーを含み、
前記赤外線カメラは、前記赤外線透過ミラーの背後に設けられ、その光軸が、前記ユーザが前記虚像を視認可能な範囲であるアイボックスの中心よりも下方を通る状態で前記顔を撮像する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記赤外線カメラが前記顔を撮像して得られるデータに基づいて前記ユーザの視点位置を推定する推定手段を備え、
前記赤外線カメラが前記顔を撮像する際の画角は、前記推定手段が前記視点位置を推定する際に必要な前記顔の部位であって、予め定められた複数の特徴部位を包含する範囲を撮像可能に設定される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記赤外線カメラが前記顔を撮像する際の前記光軸は、前記複数の特徴部位のうち最も上に位置する部位と最も下に位置する部位との中間部を通る状態に設定される、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記反射部は、前記表示光を前記透光部材に向けて反射する凹面鏡と、前記表示部が発した前記表示光を前記凹面鏡に向けて反射する反射鏡と、を有し、
前記反射鏡が前記赤外線透過ミラーであり、
前記推定手段が推定した前記視点位置に応じて前記凹面鏡を回転駆動することで、前記凹面鏡の回転に応じて変化する前記アイボックスの位置を調整する回転駆動手段を備える、
請求項2又は3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記反射部は、前記表示光を前記透光部材に向けて反射する凹面鏡と、前記表示部が発した前記表示光を前記凹面鏡に向けて反射する反射鏡と、を有し、
前記凹面鏡が前記赤外線透過ミラーであり、
前記推定手段が推定した前記視点位置に応じて前記凹面鏡を回転駆動することで、前記凹面鏡の回転に応じて変化する前記アイボックスの位置を調整する回転駆動手段を備え、
前記赤外線カメラは、前記回転駆動手段によって前記凹面鏡と共に回転駆動される、
請求項2又は3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記赤外線透過ミラーの背後に設けられ、前記顔に前記赤外線を照射する赤外線照射部を備える、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を表す可視光である表示光を透光部材に放射し、当該画像の虚像をユーザに視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、表示光を発する表示部と、表示光を反射して透光部材(同文献のコンバイナ部材に相当)へ導くコールドミラーと、コールドミラーの背後に設けられた赤外線カメラと、これら各部を収容する筐体と、を備えるHUD装置が記載されている。この赤外線カメラは、ユーザの顔に照射された赤外線に基づいて当該顔を撮像する。この赤外線は、表示光と逆の進路でコールドミラーを透過して赤外線カメラに到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-126984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のHUD装置の構成では、赤外線カメラは、上述した赤外線の進路に起因してユーザの眼を中心とした範囲を撮像する。このため、例えば、ユーザの視点位置を推定する際に必要な顔の特徴部位(眉、顎など)を赤外線カメラが良好に撮像できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ユーザの顔が有する所望の特徴部位を良好に撮像することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
画像を表す可視光である表示光を発する表示部と、
前記表示光を反射して透光部材へ導く反射部と、
前記透光部材で反射した前記表示光による前記画像の虚像を視認するユーザの顔を、前記顔に照射される赤外線に基づいて撮像する赤外線カメラと、
前記反射部で反射した前記表示光を前記透光部材に向けて通過させる通過口を有するとともに、前記表示部、前記反射部及び前記赤外線カメラを収容する筐体と、を備え、
前記反射部は、前記表示光を反射する一方で前記赤外線を透過する赤外線透過ミラーを含み、
前記赤外線カメラは、前記赤外線透過ミラーの背後に設けられ、その光軸が、前記ユーザが前記虚像を視認可能な範囲であるアイボックスの中心よりも下方を通る状態で前記顔を撮像する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザの顔が有する所望の特徴部位を良好に撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)装置の概略構成図。
図2】同上実施形態に係るHUD装置の制御構成を示すブロック図。
図3】同上実施形態に係るアイボックスに対するカメラ光軸の関係を説明するための図。
図4】同上実施形態に係るアイボックスに対するカメラ光軸の関係を説明するための図。
図5】同上実施形態に係る赤外線カメラの撮像範囲を説明するための図。
図6】変形例に係るHUD装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)装置100は、図1に示すように、車両のダッシュボード1(インストルメントパネル)の内部に設けられ、車両のウインドシールド2に向けて画像を表す可視光である表示光Lを放射する。ウインドシールド2で反射した表示光Lは、主に車両の運転者であるユーザUに向かう。ユーザUは、視点をアイボックスE内におくことで、ウインドシールド2の前方に表示光Lが表す画像の虚像Vを視認することができる。虚像Vは、車両に関する各種情報(以下、車両情報と言う。)を表示する。なお、車両情報は、車両自体の情報のみならず、車両の外部情報も含む。
【0012】
HUD装置100は、図1図2に示すように、表示部10と、反射部20と、回転駆動部30と、赤外線カメラ40と、赤外線照射部50と、筐体60と、カバーガラス70と、制御装置80と、を備える。
【0013】
表示部10は、画像を表示することで、その画像を表す表示光Lを発する。表示部10は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)11と、図示しない構成としてLCD11を背後から照明するバックライトと、を有する。LCD11は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型のものである。バックライトは、例えば、LED(Light Emitting Diode)、導光部材等から構成されている。
【0014】
反射部20は、表示光Lを反射してウインドシールド2(透光部材の一例)へ導く構成であり、反射鏡21と、凹面鏡22と、を有する。
【0015】
反射鏡21は、例えば平面鏡からなり、表示部10からの表示光Lを凹面鏡22に向けて反射する。この実施形態に係る反射鏡21は、可視光である表示光Lを反射する一方で、後述の赤外線IRを透過するコールドミラー(赤外線透過ミラーの一例)からなる。なお、反射鏡21は、平面鏡に限られず、凹面鏡、自由曲面鏡などであってもよい。また、赤外線透過ミラーは、可視光である表示光Lを反射する一方で、後述の赤外線IRを透過する機能を有していれば、コールドミラー以外の光学部材であってもよい。
【0016】
凹面鏡22は、反射鏡21からの表示光LをHUD装置100の外部に位置するウインドシールド2に向けて反射する。凹面鏡22は、図示しないホルダに保持され、筐体60に対して軸線AXを中心に回転可能に設けられている。
【0017】
回転駆動部30は、凹面鏡22を、軸線AXを中心に回転駆動する構成である。回転駆動部30は、例えば、制御装置80の制御によって駆動されるモータと、モータの回転動力を凹面鏡22に伝達するギヤとを備える公知の機構によって構成される。
【0018】
赤外線カメラ40は、公知の赤外線撮像素子を有するカメラであり、赤外線透過ミラーである反射鏡21の背後に設けられている。赤外線照射部50は、制御装置80の制御により赤外線IRを発するものであり、例えば赤外線LEDから構成される。この実施形態では、赤外線照射部50は、赤外線カメラ40と一体の機器として構成されている。したがって、赤外線照射部50も反射鏡21の背後に位置する。赤外線照射部50が発した赤外光IRは、反射鏡21を透過した後、凹面鏡22、ウインドシールド2の順で反射してユーザUの顔に到達する光路を辿り、ユーザUの顔に照射される。ユーザUの顔に照射され、当該顔で反射した赤外光IRは、前記光路を逆向きに辿り、赤外線カメラ40に入射する。赤外線カメラ40は、入射した赤外線IRに基づき撮像したユーザUの顔の画像を示す撮像データを制御装置80に伝送する。
【0019】
なお、赤外線照射部50は、ユーザUの顔に赤外線IRを照射することができれば、その配置及び構成は任意である。例えば、赤外線照射部50は、筐体60の外部に設けられていてもよい。また、赤外線照射部50は、HUD装置100の構成でなくともよい。また、ユーザUの顔に照射される赤外線IRは太陽光等の外光によるものであってもよく、赤外線照射部50を省略することも可能である。
【0020】
図3図4に示すように、赤外線カメラ40の光軸であるカメラ光軸Roは、アイボックスEの中心Eoよりも下方の下方位置Pを通る状態(以下、カメラ光軸調整状態と言う。)に設定されている。そして、当該状態で、赤外線カメラ40は、ユーザUの顔を撮像する。なお、ここで言う下方とは、車両の上下方向(ユーザUにとっての上下方向と同義)に従う。
アイボックスEは、ユーザUが虚像Vを視認可能な範囲であり、表示部10の画像表示領域(具体的には、LCD11の画像表示面)の大きさや、反射部20、ウインドシールド2によって構成される光学系に基づいて予め設定される。車両におけるアイボックスEの位置及び範囲は、公知の光学シミュレーションソフトによって予め算出可能である。アイボックスEの中心Eoは、HUD装置100における光学系を通過する光束としての表示光Lの中心光線、つまり、表示光Lの光軸(以下、表示光軸Loと言う。)と一致する。図3では、表示光軸Loが延びる方向から見たアイボックスE(所謂、Nominal Eye Box)を表している。また、図4は、側面視のユーザUと共に、後述の撮像範囲R等を模式的に示したものである。
アイボックスEの中心Eoの位置は、通常は、後述する制御装置80による凹面鏡22の回転位置制御によってユーザUの視点位置に合わせられるため、ユーザUの視点位置と概ね一致すると想定することができる。ここで、後述のようにユーザUの視点位置を推定する際に必要となる顔の特徴部位は額よりも下方に存在するため、カメラ光軸RoがアイボックスEの中心Eoを通る状態では、赤外線カメラ40の画角によっては、当該特徴部位を赤外線カメラ40によって撮像できないおそれがある。一方、この実施形態に係るHUD装置100によれば、カメラ光軸RoがアイボックスEの中心Eoよりも下方を通る状態に設定されることで、赤外線カメラ40によって、ユーザUの視点位置を推定する際に必要となる顔の特徴部位をバランスよく撮像することができる。
【0021】
また、図5に示すように、赤外線カメラ40がユーザUの顔を撮像する際の画角は、ユーザUの視点位置を推定する際に必要な顔の部位であって、予め定められた複数の特徴部位を包含する範囲(以下、撮像範囲Rと言う。)を撮像可能に設定される。一例として、予め定められた複数の特徴部位は、例えば、右眉F1、左眉F2、唇F3である。実際には、ユーザUの顔は撮像範囲Rに対して動くが、撮像範囲Rは、車両内におけるユーザUの顔の位置及び領域を想定して予め定められる。前述の通り、アイボックスEの中心Eoの位置はユーザUの視点位置と概ね一致すると考えることができる。これを利用して、例えば、アイボックスEに対するユーザUの顔の標準モデルの位置を実験やシミュレーションにより定め、当該顔の標準モデルにおける右眉F1、左眉F2、唇F3等の複数の特徴部位を包含する範囲を撮像範囲Rとして予め定めることができる。つまり、HUD装置100の光学系から定まるアイボックスEの範囲を基準として、複数の特徴部位を包含する撮像範囲Rを設定することができる。この撮像範囲Rにより、視点位置の推定に不要な箇所が撮像されることを抑制できるとともに、ユーザUの視点位置を推定する際に必要な複数の特徴部位を適切に撮像することができる。なお、複数の特徴部位は、後述のように、右眉F1、左眉F2、唇F3以外の部位を含んでいてもよい。
【0022】
また、赤外線カメラ40がユーザUの顔を撮像する際のカメラ光軸Roは、複数の特徴部位のうち最も上に位置する部位と最も下に位置する部位との中間部を通る状態に設定されることが好ましい。こうすれば、必要最小限のカメラ画角により、ユーザUの視点位置を推定する際に必要な複数の特徴部位を適切に撮像することができるためである。
図5に示す例では、複数の特徴部位のうち最も上に位置する部位は右眉F1又は左眉F2であり、最も下に位置する部位は唇F3である。この例では、顔を正面から見た場合での、右眉F1又は左眉F2と唇F3との上下方向における中間部にカメラ光軸Roが通る(換言すれば、中間部に前述の下方位置Pを設定する)ようにすればよい。一例として、具体的には、右眉F1の特徴点P1又は左眉F2の特徴点P2と、唇F3の特徴点P3との上下方向における中点にカメラ光軸Roを設定することができる。図5は、特徴点P1又は特徴点P2と特徴点P3との上下方向における間隔が長さhで二等分される位置を通るようにカメラ光軸Roが設定された例を示している。なお、特徴点P1~P3は、後述の視点位置推定によって各特徴部位の代表点として特定可能であるが、このようにカメラ光軸Roの位置を定める際には、前述した顔の標準モデルに基づいて予め定めた特徴点P1~P3を用いればよい。また、中間部は、厳密に前記の中点に限られるものでなく、複数の特徴部位のうち最も上に位置する部位と最も下に位置する部位とに基づいて定めることが可能な位置であればよく、前記の中点から所定量だけずれた位置であってもよい。
【0023】
図1に戻って、筐体60は、金属又は樹脂から箱状に形成され、ダッシュボード1に固定される。筐体60は、表示部10、反射部20、回転駆動部30、赤外線カメラ40及び赤外線照射部50を収容する。筐体60は、反射部20(具体的には、凹面鏡22)で反射した表示光Lをウインドシールド2に向けて通過させる通過口61を有する。通過口61は、ウインドシールド2に向かって開口している。
【0024】
カバーガラス70は、表示光L及び赤外線IRのいずれもが透過可能な部材であり、通過口61を塞ぐ態様で筐体60に固定されている。
【0025】
図2に示す制御装置80は、HUD装置100の全体動作を制御するマイクロコンピュータからなり、CPU(Central Processing Unit)等から構成される制御部81と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成される記憶部82と、を備える。記憶部82のROMには、後述の視点位置を推定する処理、凹面鏡22の回転位置を調整する処理などを実行するための動作プログラムが記憶されている。また、記憶部82のROMには、表示部10の表示画像を生成するための画像パーツデータが記憶されている。また、制御装置80は、図示しない構成として、表示部10、回転駆動部30、赤外線カメラ40及び赤外線照射部50のそれぞれを駆動するための駆動回路、他の構成と通信を行うための入出力回路等を備える。なお、制御装置80は、後述の機能を充足する限りにおいては、その構成や配置は任意である。例えば、制御装置80は、互いに通信する複数のコンピュータによって実現されてもよい。
【0026】
制御部81は、図2に示すように、主な機能として、表示制御部81aと、調整部81bと、推定部81cを備える。
【0027】
表示制御部81aは、車両の各部を制御する図示しないECU(Electronic Control Unit)などのシステムと通信を行い、車両情報を示す画像を表示部10に表示させる。
【0028】
調整部81bは、後述のように推定部81cが推定したユーザの視点位置Pe(図5参照)に応じて、回転駆動部30を介して凹面鏡22を回転駆動することで、凹面鏡22の回転に応じて変化するアイボックスEの位置を調整する。
ここで、凹面鏡22が軸線AXを中心として時計周り(図1での時計周り。以下同様。)に回転すると、虚像VとアイボックスEを結ぶ線分は、図1に示す共役軸線BXを中心に反時計回り(図1での反時計周り。以下同様。)に回転する。一方、凹面鏡22が軸線AXを中心として反時計周りに回転すると、虚像VとアイボックスEを結ぶ線分は、共役軸線BXを中心に時計周りに回転する。つまり、凹面鏡22が時計周りに回転すると当該回転前よりもアイボックスEは上方に移動し、凹面鏡22が反時計回りに回転すると当該回転前よりもアイボックスEは下方に移動する。この原理を利用して、調整部81bは、後述の推定部81cが推定した視点位置PeにアイボックスEの中心Eoがくるように、凹面鏡22の軸線AXを中心とした回転位置を調整する。なお、共役軸線BXは、軸線AXをウインドシールド2における表示光L(具体的には、前述の表示光軸Loを通る光線)の入射点に対して、ユーザUから見てウインドシールド2の前方側に折り返した位置にある仮想の軸線である。つまり、共役軸線BXは、軸線AXと光学的に共役関係にある。したがって、共役軸線BXは、凹面鏡22を軸線AX周りに回転させた場合における、ウインドシールド2で反射してユーザUに向かう表示光Lの光路の回転軸線となる。
【0029】
この実施形態では、赤外線透過ミラーである反射鏡21の背後に赤外線カメラ40が配置されているため、凹面鏡22の回転に応じて、表示光軸Loと同様にカメラ光軸Roも移動する。したがって、凹面鏡22が回転しても、アイボックスEの中心Eoとカメラ光軸Roの相対的位置関係(つまり、前述のカメラ光軸調整状態)は保たれたままである。このように、調整部81bは、回転駆動部30を介して凹面鏡22を回転駆動することにより、アイボックスEが移動したとしても前述のカメラ光軸調整状態を保つことができる。このため、カメラ光軸Roを専用に調整する機構を省略することができる。なお、調整部81bは、図示しない操作手段からの入力操作に応じて凹面鏡22の回転位置を調整してもよい。当該操作手段は、例えばタッチパネル、プッシュボタン等であればよい。
【0030】
推定部81cは、赤外線カメラ40及び赤外線照射部50を駆動し、赤外線カメラ40からユーザUの顔の画像を示す撮像データを取得する。例えば、推定部81cは、赤外線カメラ40から所定周期で送信される撮像データの周期毎の差分を演算し、ユーザUの顔における部位として、予め定められた複数の特徴部位(例えば図5に示す右眉F1、左眉F2、唇F3)を特定する。そして、推定部81cは、特定した複数の特徴部位に基づいて、各特徴部位の代表点を示す特徴点P1~P3の座標情報を抽出する。そして、推定部81cは、特徴点P1~P3に基づき、図5に示すユーザUの視点位置Peを推定する。視点位置Peの演算アルゴリズムは、抽出した特定点P1~P3に対する位置として演算可能に予め記憶部82のROMに記憶されている。なお、前述のように複数の特徴部位をどのように定めるかは任意である。例えば、予め定められた複数の特徴部位に右眼と左眼の少なくともいずれかの特徴部位が含まれ、推定部81cは、当該特徴部位に基づいて、視点位置Peを特徴点として直接演算することもできる。また、推定部81cによる特徴部位の特定手法や特徴点の抽出手法は任意であり、公知の手法を用いることができる。例えば、パターンマッチング法や、HOG(Histogram of Oriented Gradients)、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)、LBP(Local Binary Pattern)、Haar-Likeなどの特徴点算出手法を用いることができる。本実施形態に係るHUD装置100の説明は以上である。
【0031】
(変形例)
図6に示すように、赤外線カメラ40及び赤外線照射部50の配置を変形してもよい。この変形例に係るHUD装置101では、凹面鏡22が赤外線透過ミラーとして構成される。そして、赤外線カメラ40及び赤外線照射部50は、凹面鏡22の背後に設けられている。具体的には、変形例に係るHUD装置101では、凹面鏡22を保持するホルダ22aに、赤外線カメラ40及び赤外線照射部50が固定されている。そして、回転駆動部30によってホルダ22a及び凹面鏡22が軸線AX周りに回転すると、赤外線カメラ40及び赤外線照射部50も凹面鏡22と共に軸線AX周りに回転する。なお、変形例に係るHUD装置101における赤外線カメラ40及び赤外線照射部50の配置以外の構成は、前述の実施形態の構成と同様である。
変形例に係るHUD装置101では、赤外線照射部50が発した赤外光IRは、凹面鏡22を透過した後、ウインドシールド2で反射してユーザUの顔に到達する光路を辿り、ユーザUの顔に照射される。ユーザUの顔に照射され、当該顔で反射した赤外光IRは、前記光路を逆向きに辿り、赤外線カメラ40に入射する。
変形例に係るHUD装置101では、赤外線透過ミラーである凹面鏡22の背後に赤外線カメラ40が配置されているため、凹面鏡22の回転に応じて、表示光軸Loと同様にカメラ光軸Roも移動する。したがって、凹面鏡22が回転しても、アイボックスEの中心Eoとカメラ光軸Roの相対的位置関係(つまり、前述のカメラ光軸調整状態)は保たれたままである。このように、変形例に係るHUD装置101の構成においても、回転駆動部30を介して凹面鏡22を回転駆動することにより、アイボックスEが移動したとしても前述のカメラ光軸調整状態を保つことができる。このため、カメラ光軸Roを専用に調整する機構を省略することができる。なお、前記実施形態と同様に赤外線照射部50の配置は任意であり、赤外線照射部50を省略することもできる。
【0032】
なお、本発明は以上の実施形態、変形例及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0033】
以上の実施形態及び変形例では、回転駆動部30を利用してカメラ光軸Roを調整する例を示したが、HUD装置100,101は、カメラ光軸Roを専用に調整するカメラ光軸調整手段を備えていてもよい。カメラ光軸調整手段は、赤外線カメラ40に備えられていてもよいし、筐体60内に配置されたミラー、プリズム、液晶素子等の光学部材であってもよい。例えば、カメラ光軸調整手段は、アイボックスEを通るカメラ光軸Roの位置を上下方向に調整可能であればよい。そして、赤外線カメラ40は、カメラ光軸調整手段によってカメラ光軸RoがアイボックスEの中心Eoよりも下方を通る状態に設定された後にユーザUの顔を撮像すればよい。
【0034】
表示光Lが放射される透光部材は、ウインドシールド2に限られず、HUD装置100,101に専用のコンバイナであってもよい。また、HUD装置100,101内における光学系の構成は、表示部10からの表示光Lを透光部材に放射することができれば任意であり、表示光Lを反射するミラーの枚数、形状及び配置は適宜変更することができる。
【0035】
以上では、LCD11を用いた表示部10について説明したが、表示部10の構成は限定されず、任意である。例えば、表示部10は、OLED(Organic Light-Emitting Diode)を用いたものであってもよい。また、表示部10は、DMD(Digital Micromirror Device)と、DMDによる反射光を受けて画像を表示する透過型スクリーンを備えるものであってもよい。
【0036】
HUD装置100,101が搭載される乗り物の種類は、車両に限定されず任意であり、農耕機械、建設機械、航空機、船舶などであってもよい。
【0037】
(1)以上に説明したHUD装置100,101において、反射部20は、表示光Lを反射する一方で赤外線IRを透過する赤外線透過ミラーを含む。そして、赤外線カメラ40は、赤外線透過ミラーの背後に設けられ、その光軸(カメラ光軸Ro)が、アイボックスEの中心Eoよりも下方を通る状態でユーザUの顔を撮像する。
この構成によれば、ユーザUの顔が有する所望の特徴部位を良好に撮像することができる。
【0038】
(2)HUD装置100,101は、赤外線カメラ40がユーザUの顔を撮像して得られるデータに基づいてユーザUの視点位置Peを推定する推定部81c(推定手段の一例)を備える。赤外線カメラ40がユーザUの顔を撮像する際の画角は、推定部81cが視点位置Peを推定する際に必要な顔の部位であって、予め定められた複数の特徴部位を包含する範囲(撮像範囲R)を撮像可能に設定される。
この構成によれば、前述のように、視点位置Peの推定に不要な箇所が撮像されることを抑制できるとともに、ユーザUの視点位置Peを推定する際に必要な複数の特徴部位を適切に撮像することができる。
【0039】
(3)また、赤外線カメラ40が顔を撮像する際の光軸(カメラ光軸Ro)は、複数の特徴部位のうち最も上に位置する部位と最も下に位置する部位との中間部を通る状態に設定されることが好ましい。
こうすれば、前述のように、必要最小限のカメラ画角により、ユーザUの視点位置Peを推定する際に必要な複数の特徴部位を適切に撮像することができる。
【0040】
(4)上記実施形態に係るHUD装置100では、反射鏡21が赤外線透過ミラーであり、回転駆動手段(例えば、回転駆動部30及び調整部81b)は、推定部81cが推定した視点位置Peに応じて凹面鏡22を回転駆動することで、凹面鏡22の回転に応じて変化するアイボックスEの位置を調整する。
この構成によれば、カメラ光軸Roを専用に調整する機構を省略することができる。
【0041】
(5)上記変形例に係るHUD装置101では、凹面鏡22が赤外線透過ミラーであり、回転駆動手段(例えば、回転駆動部30及び調整部81b)は、推定部81cが推定した視点位置Peに応じて凹面鏡22を回転駆動することで、凹面鏡22の回転に応じて変化するアイボックスEの位置を調整する。そして、変形例に係るHUD装置101では、赤外線カメラ40は、回転駆動手段によって凹面鏡22と共に回転駆動される。
この構成によれば、カメラ光軸Roを専用に調整する機構を省略することができる。
【0042】
(6)HUD装置100,101は、赤外線透過ミラーの背後に設けられ、ユーザUの顔に赤外線を照射する赤外線照射部50を備えていてもよい。
こうすれば、ユーザUの顔を示す撮像データを適切に得ることができる。
【0043】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0044】
100,101…ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置
10…表示部、11…LCD
20…反射部、21…反射鏡、22…凹面鏡
30…回転駆動部
40…赤外線カメラ
50…赤外線照射部
60…筐体、61…通過口
70…カバーガラス
80…制御装置
81…制御部、81a…表示制御部、81b…調整部、81c…推定部
82…記憶部
1…ダッシュボード、2…ウインドシールド
V…虚像、L…表示光、Lo…表示光軸
E…アイボックス、Eo…中心
R…撮像範囲、Ro…カメラ光軸、P…下方位置
IR…赤外線、AX…軸線、BX…共役軸線
F1…右眉、F2…左眉、F3…唇、P1~P3…特徴点、Pe…視点位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6