(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055115
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】医療用把持器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162522
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】706001031
【氏名又は名称】YANCHERS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510183235
【氏名又は名称】ハリキ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】島田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】城尾 たけし
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG24
4C160MM32
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、近位根元側を枢結する第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)を開閉することで所望の部位を把持する医療用把持部材を提供する。
【解決手段】
本医療用把持部材(1)は、第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの把持面には、少なくとも該把持面の長手方向、好ましくは長手方向及び幅方向にわたって滑らかに連続する凹部及び凸部が設けられ、該凹部及び凸部は互いに対応する山谷が当接して噛み合う。また、前記第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの把持面に設けられる前記凹部及び凸部は、それぞれが形成する山及び谷の角度が鈍角である凹部及び凸部を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位根元側を枢結する第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)を開閉することで所望の部位を把持する医療用把持部材(1)であって、
第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの把持面には、少なくとも該把持面の長手方向にわたって滑らかに連続する一連の凹部及び凸部が設けられ、該凹部及び凸部は互いに対応する山谷が当接して噛み合う、医療用把持部材。
【請求項2】
前記第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの把持面に設けられた凹部及び凸部は、該把持面の平面方向にわたって互いに対応する山谷が噛み合う、請求項1に記載の医療用把持部材。
【請求項3】
前記第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの把持面に設けられる前記凹部及び凸部は、それぞれが形成する山及び谷の角度が鈍角である凹部及び凸部を有する、請求項1又は2に記載の医療用把持部材。
【請求項4】
前記第1把持部材(10)及び前記第2把持部材(20)それぞれ把持面に設けられる前記凹部及び凸部は、遠位先端側の領域の先端把持部(11、21)に設けられる凹部及び凸部と近位根元側の領域の根元把持部(12、22)に設けられる凹部及び凸部とで構成され、該根元把持部(12、22)に設けられる凹部及び凸部はそれぞれが形成する山及び谷の角度が鈍角であり、
前記根元把持部(12、22)に設けられる凹部及び凸部は、前記根元把持部(12、22)全体に亘って形成された溝(13,23)によって形成された複数の凹部と、該溝によって形成される複数の凸部(14,24)と、が互いに噛み合う位置に配設され、
前記先端把持部(11、21)に設けられる凹部及び凸部は、前記根元把持部(12、22)に配設された凹部及び凸部よりも小さい互いに噛み合う凸部(15)及び凹部(25)を有して配設される、ことを特徴とする請求項3に記載の医療用把持部材(1)。
【請求項5】
前記第1把持部材(10)及び前記把持部材(20)それぞれの根元把持部(12、22)の凸部(14、24)は、長手方向に対して略45°傾斜して互いに直交する直交溝(13,23)を底辺として形成される略四角錘形状及び略半四角錘形状であり、根元把持部(12、22)の凹部は、前記直交溝(13,23)の交点を頂部として前記凸部(14、24)の間に形成される略逆四角錘形状及び略逆半四角錘形状であり、
前記第1把持部材(10)及び前記第2把持部材(20)それぞれの先端把持部(11、21)には、前記根元把持部(12、22)の凸部(14、24)に対して45°位相がずれた略四角錘の凸部(15a、15b)及びこれと噛み合う略逆四角錘の凹部(25a。25b)を有する、請求項4に記載の医療用把持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持を回避されていたような損傷リスクの高い組織であっても把持箇所を損傷させるおそれなく、繊細な操作が可能で安全かつ十分な力で把持することができる医療用把持器具に関する。
【背景技術】
【0002】
組織を手持ちの把持器具としての鑷子は、組織をつまむ(把持する)ための器具、すなわち所謂「ピンセット」であり、組織を傷つけずに、確実に把持することができることが必要である。そのうち代表的な鑷子の1つにドゥベーキ鑷子と称するものがあり、把持面に縦溝と辺縁に鋭角な鋸刃がついているのが特徴である。ドゥベーキ鑷子は、繊細な操作が得意な把持器具であり、組織を挫滅させずに、確実に把持することができるため、心臓血管領域の手術における大動脈などの把持や呼吸器領域の手術における胸膜や血管鞘の把持にも好んで使用される。
【0003】
しかしながら、例えば、呼吸器領域の手術においてはドゥベーキ鑷子で胸膜や血管鞘等の組織を把持することができても、把持面に鋭角な溝等がついている以上、肺動脈や門脈のような特に損傷リスクが高い組織の把持は避けるべきであり、現状、このような組織ではドゥベーキ鑷子に限らず一般的な鑷子全般の使用が規制されている。
【0004】
その一方、実際の手術現場においては上記肺動脈や門脈のような損傷リスクが高い組織であっても、胸膜や血管鞘のような組織同様に把持を所望する状況も存在し、かかる組織を安全かつ確実に把持することができる器具が提供されることへの潜在的ニーズは大きかった。このような損傷リスクが高い組織の把持器具を開発するときには、(1)把持箇所の組織損傷を回避することを優先しつつ、同時に(2)組織への大きな把持力・滑り難くさを確保する、必要がある。
【0005】
また、上述した元来、鑷子の使用が規制されていない薄い胸膜や血管鞘を把持する場合、小さくつまみながら牽引したりする必要もあり、ドゥベーキ鑷子のように繊細な操作を可能としながらも大きな把持力で滑らずしっかりと把持する必要があり、すなわち(2)組織への大きな把持力・滑り難くさを確保することを優先しつつ、同時に(1)把持箇所の組織損傷を回避する、必要がある。したがって、把持する組織により、(1)把持箇所の組織損傷の回避と、(2)組織への大きな把持力・滑り難くさの確保と、の優先順位が異なるが、目的組織に応じて、手術中に把持器具を持ち替えることは作業が煩雑になり、医師の負担、手術時間の短縮化等の妨げになる。このことも考慮すべきである。
【0006】
たしかに特許文献1や特許文献2の鑷子では、ドゥベーキ鑷子のような溝を設けず、鑷子の遠位先端を凹凸にしている例も存在するが、これらはあくまで特定部位向けの先端形状を示したものであり、肺動脈のような鑷子の使用が規制されるような組織を把持するものではなく、又、多組織へ向けとして上記背反する(1)(2)の課題を達成し得るものでもない。また、特許文献3のように把持面全体にわたって非鋭角の凹凸形状とする例もあるが、これも上記(1)(2)を解決するもの構成ではない。従来において1つの把持器具で全く異なる特性を有する組織の把持機能を同時に有する例もなかった。
【0007】
そこで発明者は従来、鑷子による把持が規制されていた損傷リスクの高い組織に対しても(1)把持箇所の組織損傷を回避しつつ、(2)組織への把持力・滑り難くさの確保することが可能な新たな把持部材の開発し、これに加え(3)1つの鑷子で異なる組織の把持を可能とし得る新たな把持部材の構成を提供することを企図した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-111225号公報
【特許文献2】実公平3-107916号公報
【特許文献3】実開平7-21007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような事情に鑑みて発明者は本発明を創作したものであり、従来、鑷子による把持が規制されていた損傷リスクの高い組織に対しても(1)把持箇所の組織損傷を回避しつつ、(2)組織への把持力・滑り難くさの確保することが可能な新たな把持部材を開発し、これに加え(3)1つの鑷子で異なる組織の把持を可能とし得る新たな医療用把持部材の構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、近位根元側を枢結する第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)を開閉することで所望の部位を把持する医療用把持部材(1)であって、
第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの把持面には、少なくとも該把持面の長手方向にわたって滑らかに連続する一連の凹部及び凸部が設けられ、該凹部及び凸部は互いに対応する山谷が当接して噛み合う、医療用把持部材を提供する。
【0011】
本発明の医療用把持部材では、少なくとも把持の際に長手方向に互いに対応する山谷が噛み合う一連の複数の凹凸部が設けられており、その凹凸部の噛み合いは、それぞれの凹凸部の表面を一連の滑らかな平面で形成して互いに当接させている。従来の把持部材(鑷子)の場合、組織を挟持力で把持しつつ把持面の横溝や縦溝で滑り難くしており、溝の存在は挟持力により溝内に組織を食い込ませることで遠近位方向の滑りを防止していた。しかしながら、本医療用把持部材では、各凹凸部それぞれが対応する凸凹部と噛み合う関係を有し、組織を表面が滑らかな連続する凹凸部でそれぞれ対応する凹凸部の表面に拡く当接させているため、挟持力を当接面全体に押圧力(及びこれに基づく摩擦力)として均一に作用させることができ、医師の挟持力を組織全体に対する大きな把持力と作用させることができる。また、横溝等に組織を食い込ませて把持する従来の鑷子と異なり、本医療用把持部材では凹凸部の把持面全体に当接させて組織を把持するため組織損傷の問題も解消されている。
【0012】
また好ましくは、前記第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの把持面に設けられた凹部及び凸部は、該把持面の平面方向にわたって互いに対応する山谷が噛み合う。
【0013】
この医療用把持部材では、把持の際に把持面の平面方向いずれの方向からも噛み合っているように連続する凹凸部を形成する、すなわち2次元的に噛み合う凹凸部を形成している。したがって、長手方向に噛み合う1次元的な噛み合いよりも全方向に噛み合っており、さらに当接面積も飛躍的に大きくなるため把持力も大幅に増大し、柔らかく挟んだ把持力の小さい状態でも十分に組織を把持すえることができ長手方向のみならず左右方向の滑りもしっかりと防止することができる。
【0014】
なお、本医療用把持部材における把持面の凹凸部は、ウレタン表面のプロファイル加工類似の波型形状が代表的に例示される。
【0015】
また、前記第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの把持面に設けられる前記凹部及び凸部は、それぞれが形成する山及び谷の角度が鈍角である凹部及び凸部を有する、ことが好ましい。
【0016】
本医療用把持部材例では、把持面の凹凸部は、凹部及び凸部の山(隣り合う最下点からその間の頂点を繋ぐ2直線の挟角)及び谷(隣り合う頂点からその間の最下点を繋ぐ2直線の挟角)が鈍角である。凹部及び凸部の山谷を鈍角にすると、頂部や最下点等の変曲部で把持する組織に応力集中し難いため組織損傷リスクを低減でき、また挟持力が当接面の押圧方向に分力し易く、当接面方向(滑る方向)への分力が小さいため把持の際の前後左右の滑りも低減できる。
【0017】
また代表的には、前記第1把持部材(10)及び前記第2把持部材(20)それぞれ把持面に設けられる前記凹部及び凸部は、遠位先端側の領域の先端把持部(11、21)に設けられる凹部及び凸部と近位根元側の領域の根元把持部(12、22)に設けられる凹部及び凸部とで構成され、該根元把持部(12、22)に設けられる凹部及び凸部はそれぞれが形成する山及び谷の角度が鈍角であり、
前記根元把持部(12、22)に設けられる凹部及び凸部は、前記根元把持部(12、22)全体に亘って形成された溝(13,23)によって形成された複数の凹部と、該溝によって形成される複数の凸部(14,24)と、が互いに噛み合う位置に配設され、
前記先端把持部(11、21)に設けられる凹部及び凸部は、前記根元把持部(12、22)に配設された凹部及び凸部よりも小さい互いに噛み合う凸部(15)及び凹部(25)を有して配設される。
【0018】
本医療用把持部材(1)では、第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)ともにその把持面を先端把持部(11,21)と根元把持部(12,22)とに領域分けし、領域によって把持する部位・目的を異なるようにしている。
【0019】
具体的には、先端把持部(11,21)では複数の小さい凸部(先端凸部15)と凹部25(先端凹部25a等)とを噛合わせることで胸膜や血管鞘等の微細な組織を繊細な操作をしながら大きな把持力でしっかりと滑らずにつまむ・牽引することができ、根元把持部(12,22)では肺動脈や門脈等の損傷リスクが高い組織であっても複数の大きな凸部(中心凸部14a、24a等)全体で傷つけずに把持することができる。すなわち、本医療用把持部材(1)では一つの把持部材で特性の異なる組織を把持することができ、例えば内視鏡ポートで使用する際にも持ち替え、部位ごとに抜去・挿入する必要がなく、安全に施術負担・施術時間を低減することが可能となる。なお、本医療用把持部材(1)の把持面は切削等の金属加工における所謂プロファイル加工で高精度に成形することができる組織を拡く当接面で押圧把持することができる。
【0020】
さらに、前記第1把持部材(10)及び前記把持部材(20)それぞれの根元把持部(12、22)の凸部(14、24)は、長手方向に対して略45°傾斜して互いに直交する直交溝(13,23)を底辺として形成される略四角錘形状及び略半四角錘形状であり、根元把持部(12、22)の凹部は、前記直交溝(13,23)の交点を頂部として前記凸部(14、24)の間に形成される略逆四角錘形状及び略逆半四角錘形状であり、
前記第1把持部材(10)及び前記第2把持部材(20)それぞれの先端把持部(11、21)には、前記根元把持部(12、22)の凸部(14、24)に対して45°位相がずれた略四角錘の凸部(15a、15b)及びこれと噛み合う略逆四角錘の凹部(25a。25b)を有する、ことが好ましい。
【0021】
本医療用把持部材によれば、第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)それぞれの根元把持部(12、22)の凸部/凹部を長手方向(中心軸)から45°傾斜する底辺の略四角錘/略逆四角錘とすることで横方向の滑り防止効果を増強することができる。
【0022】
また、先端把持部(11、21)の凸部/凹部では長手方向の位置で対応して噛み合う凹部/凸部を設け、それぞれの凸部/凹部は根元把持部(12、22)の凸部/凹部に対して45°位相をずらしている。根元把持部(12、22)では第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)ともに同形状の一連の凸部/凹部が形成され、互いに同様の半ピッチずれて噛み合わせているが、先端把持部(11、21)では、胸膜や血管鞘のような薄い組織や微細な組織をつまむ必要があり同ピッチでしっかり噛み合わせる必要があるため第1把持部材(10)及び第2把持部材(20)の一方が凹部で同位置の他方が凸部となって互いに噛み合うように形成されている。このとき根元把持部(12、22)の凸部/凹部に対して先端把持部(11、21)の凸部/凹部の位相がすれていれば遠位最先端の切片において近位側への奥行を持たせた凹部とすることができ、有鉤鑷子における鉤のような状態にならず、損傷リスクを回避することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の医療用把持部材によれば、肺動脈や門脈のように把持を回避されていたような損傷リスクの高い組織であっても把持箇所を損傷させるおそれなく、繊細な操作が可能で安全かつ十分な力で把持することができる。これと同時に本医療用把持部材では、1つの把持部材で異なる特性の組織を把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】鑷子や鉗子の先端に使う本発明の把持部材が開放した状態を示している。
【
図2】鑷子や鉗子の先端に使う本発明の把持部材が閉鎖した状態を示している。
【
図3】第1把持部材の把持面を上向きにして前上方から見た斜視図を示している。
【
図4】第1把持部材の把持面を正面向きにしてその左斜め上方から見た斜視図を示している。
【
図5】第1把持部材の把持面を上向きにしてその左斜め上方から見た斜視図を示している。
【
図6】第1把持部材の把持面を上向きにした平面写真図を示している。
【
図7】(a)に第1把持部材の正面図、(b)に第1把持部材の底面図、(c)に第1把持部材の右側面図が示されている。
【
図8】第2把持部材の把持面を上向きにして前上方から見た斜視図を示している。
【
図9】第2把持部材の把持面を正面向きにしてその左斜め上方から見た斜視図を示している。
【
図10】第2把持部材の把持面を上向きにしてその左斜め上方から見た斜視図を示している。
【
図11】第2把持部材の把持面を上向きにした平面写真図を示している。
【
図12】(a)に第2把持部材の正面図、(b)に第2把持部材の底面図、(c)に第2把持部材の右側面図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の医療用把持器具(以下、単に「本把持部材」、「把持部材」とも称する)の1つの実施形態を
図1~
図12を参照しつつ例示説明する。本実施形態では、同一参照番号を付す部材・部分は、同一の部材・部分を意味し、下1桁が同一の参照番号を付す部材・部分は、互いに対応する同種の部材・部分を意味する。
【0026】
図1は鑷子や鉗子の先端に使う本把持部材が開放した状態、
図2は本把持部材が閉鎖した状態を示している。本把持部材1は、図中上側の第1把持部材10と図中下側の第2把持部材20とが互いに近位側(図中右側)で枢結されて(参照番号2)、閉鎖・開放される。なお、本把持部材1は、鑷子や鉗子等の先端の医療用把持部材であるため閉鎖・開放機構について明細書ではその構成及び説明を省略する。
【0027】
まず、本医療用把持部材1の上側又は下側の第1把持部材10について
図3~
図7を参照しつつ説明する。具体的に、
図3は第1把持部材10の把持面を上向きにして前上方から見た斜視図、
図4は第1把持部材10の把持面を正面向きにしてその左斜め上方から見た斜視図、
図5は第1把持部材10の把持面を上向きにしてその左斜め上方から見た斜視図、
図6は第1把持部材10の把持面を上向きにした平面写真図、
図7は(a)に第1把持部材10の正面図、(b)に第1把持部材10の底面図、(c)に第1把持部材10の右側面図、を示している。
【0028】
第1把持部材10の把持面はその表面に複数の凸部を設けているが、その把持対象機能の違いから遠位先端側の先端把持面11と近位根元側の根元把持面12とで領域を分けて構成している。まず、把持面から最初に切削等の金属加工で形成される根元把持面12から説明する。根元把持面12は十字から45°位相をずらして(傾斜して)交互に直交させた溝13(直交溝13とも称する。)を有している。根元把持面12の遠位先端側から順に溝13a、これと直交する溝13bを近位根元側に向かって順次、形成している。
【0029】
直交溝13を形成すると同時に直交溝13を底辺とする略四角錘の凸部14が形成される。凸部14は、長手方向中心に沿った位置に頂点を有する中心凸部14aが順に形成される。図の例では中心凸部14aが4つ形成されている。中心凸部14aは、略四角錘の4つの斜辺が幅方向及び長手方向に向く位相で配設されている。また、第1把持部材10は遠位先端側に先細りするテーパ形状を有する(近位根元側に向かって拡がっている)ため、
図3の1
3、<1
4に示すように中心凸部14aが近位根元側に向かって徐々に大きくなっている。
【0030】
また、中心凸部14aの両幅側には長手方向に半ピッチずらせた位置に中心凸部14aと同位相に配設され、四角錘の対向する斜辺を第1把持部材10の縁部として切られた半四角錘の縁側凸部14bが形成されている。縁側凸部14bの底辺は中央凸部14aと同様に直交溝13に沿って形成され、根元把持部12の遠位先端側は中央凸部14aより縁側凸部14bからはじまっている。
【0031】
また、第1把持部材10は近位根元側に向かって拡がっているため縁側凸部14bは、中心凸部14aと同様に近位根元側に向かって徐々に大きくなっている。したがって、中央凸部14aと縁側凸部14bとが組み合わされて根元把持部12は全体として近位根元に大きくなる複数の凹凸部を設けていることとなる。
【0032】
なお、第1把持部材10は
図2に示すように閉鎖時には後述する第2把持部材20と噛み合って一体として先細りの筒状部材を形成するため第1把持部材10の両縁部18は、根元把持部12の領域では縁側凸部14bの外側縁部(及び先端把持部11の領域では後述する縁側壁部16aの外側縁部)によって全体として遠位先端に向かって緩やかに減衰する波形状を形成することとなる。さらに、中央凸部14aと縁側凸部14bとは共につかむ部位を損傷させないよう各縁部を研磨しR形状を設けている。
【0033】
次に、第1把持部材10の把持面において根元把持面12の後工程で切削等の金属成形される先端把持面11について説明する。先端把持面11の両側縁部は、連続して緩やかな波形状を形成する第1把持部材10の両縁部18の先端領域を形成し、内側に長手方向に並列して遠位先端から根元把持部12に至るまで切削等加工された2つの直線溝17が形成されている。この直線溝17を境界として先端把持面11の両側に長手方向に延びて両縁部18の遠位先端を形成する縁側壁部16(16a、16b)が配設されている。
【0034】
また、先端把持部11の並列する直線溝17の間には根元把持部12の中央凸部14aと45°位相をずらした略四角錘の先端凸部15が形成される。先端凸部15は、中心凸部14a同様に長手方向中心に沿った位置に頂点を有し、図の例では頂点から遠位先端側が半分切除された略半四角錘の先端凸部15aと、同じ大きさの四角錘全体の先端凸部15b、15cとが順次、配設されている。先端凸部15aは中央凸部14aと略45°位相がずらされているため頂点が第1把持部材10の遠位最先端に位置し、同位相の先端凸部15b、15cと合わさって有鉤鑷子の鉤と同様に機能する(3点の先端凸部15a~cと縁側壁部16a~bで部位を把持するため有鉤鑷子の鉤のような部位の損傷のおそれがない)。なお、先端把持部11の先端凸部15と縁側壁部16とも根元把持部12と同様にその各縁部を研磨しR形状を設けている。
【0035】
次に、本把持部材1の下側又は上側で第1把持部材10と噛み合う第2把持部材20について
図8~
図12を参照しつつ説明する。具体的に、
図8は第2把持部材20の把持面を上向きにして前上方から見た斜視図、
図9は第2把持部材20の把持面を正面向きにしてその左斜め上方から見た斜視図、
図10は第2把持部材20の把持面を上向きにしてその左斜め上方から見た斜視図、
図11は第2把持部材20の把持面を上向きにした平面写真図、
図12は(a)に第2把持部材20の正面図、(b)に第2把持部材20の底面図、(c)に第2把持部材20の右側面図、を示している。
【0036】
第2把持部材20の把持面も表面に複数の凸部を設けているが、第1把持部材10と同様に遠位側の先端把持面21と近位側の根元把持面22とで領域を分けて構成している。第2把持部材20においても先の工程で加工される根元把持面22から説明する。根元把持面22は十字から略45°傾斜して(略45°位相をずらして)交互に直交する溝(直交溝)23を有している。
【0037】
直交溝23が形成されると、同時に直交溝23を底辺とする四角錘の凸部24が形成される。凸部24は、長手方向中心に沿った位置に頂点を有する中心凸部24aが順に形成される。図の例では中心凸部24aが5つ形成されている。また、中心凸部24aが略四角錘の4つの斜辺が幅方向及び長手方向に向く位相で配設され、第2把持部材20は近位根元側に向かって拡がり中心凸部24aに近位根元側に向かって徐々に大きくなっている点も第1把持部材10と同様である。
【0038】
また、中心凸部24aの両幅側には長手方向に半ピッチずらせた位置に中心凸部24aと同位相であって略四角錘の対向する斜辺を第1把持部材10の縁部として切った略半四角錘の縁側凸部24bが形成されている点も第1把持部材10と同様である。また、縁側凸部24bの底辺は中央凸部24aと同様に直交溝23に沿って形成され、根元把持部22の遠位先端側は中央凸部24aより縁側凸部14bからはじまっている点、縁側凸部24bが近位根元側に向かって徐々に大きくなっている点も、第1把持部材10と同様である。
【0039】
なお、上述したように第2把持部材20の両縁部28は、根元把持部22の領域では縁側凸部24bの縁部によって全体として遠位先端に向かって緩やかに減衰する波形状を形成することとなり、中央凸部24aと縁側凸部24bとは共につかむ部位を損傷させないよう各縁部を研磨しR形状を設けている点も第1把持部材10と同様である。
【0040】
ここで第2把持部材20の根元把持部22と第1把持部材10の根元把持部12との噛み合いについて言及する。
図2に示すように第1把持部材10と第2把持部材20は上下に噛み合う必要があるためそれぞれの凹凸部が対応する凸凹部に嵌合する。具体的に第1把持部材10の根元把持部12と第2把持部材20の根元把持部22との対応関係を
図3及び
図8の丸囲み数字及び四角囲み数字で遠位側から例示説明する。
【0041】
まず、第1把持部材10の最遠位先端の中心凸部14a(丸囲み1)は、第2把持部材20の最遠位先端の中心凸部24a(丸囲み2)とその近位隣の中心凸部24a(丸囲み3)との間に形成された直交溝23による凹部(丸囲み1)に対応して嵌合する。また、第2把持部材20の最遠位先端の中心凸部24a(丸囲み2)は、第1把持部材10の最遠位先端の中心凸部14a(丸囲み1)の遠位隣に形成された直交溝13による凹部(丸囲み2)に対応して嵌合する。
【0042】
また、第2把持部材20の最遠位先端から2番目の中心凸部24a(丸囲み3)は、第1把持部材10の最遠位先端の中心凸部14a(丸囲み1)の近位隣に形成された直交溝13による凹部(丸囲み3)に対応して嵌合する。このように第1把持部材10及び第2把持部材20の近位根元側に順次嵌合する。また、第1把持部材10及び第2把持部材20それぞれの両縁部18,28においても同様に、第1把持部材10の四角囲み1~3が第2把持部材20の四角囲み1~3に対応して嵌合し、近位根元側に順次嵌合する。
【0043】
また、第1把持部材10及び第2把持部材20における先端把持部11、21と根元把持部12,22との境界近傍の噛み合いについては、第1把持部材10の先端把持部11の最近位側の先端凸部15c(丸囲み4)は、第2把持部材20の最遠位先端の中心凸部24a(丸囲み2)の遠位隣に形成された直交溝23による凹部(丸囲み4)に対応して嵌合する。また、両縁部18,28においても同様に、第1把持部材10の四角囲み4が第2把持部材20の四角囲み4に対応して嵌合する。したがって、第2把持部材20の根元把持部22の遠位先端は、第1把持部材10の先端把持部11の近位根元端に対応して嵌合することとなり、第2把持部材20の先端把持部21が第1把持部材10の先端把持部11より短くなっている。
【0044】
次に第1把持部材10及び第2把持部材20における先端把持部11、21での噛み合いについて説明する前に、第2把持部材20の先端把持部21について説明する。先端把持部21の両側縁部は、緩やかな波形状を形成する第2把持部材20の両縁部28の先端領域を形成し、最遠位側の直交溝23(23a、23b)から緩やかに隆起した頂部に中心線に沿って、最遠位先端には先端凹部25a、その近位隣(直交溝23側)には根元凹部25bの2つの凹部25が設けられている。先端凹部25aは最底部で切断されて先端方向に開放しており、その幅方向の両壁面が第2把持部材20の両縁部28の最遠位先端として波形状の上昇部としての縁側壁部26a、26bが配設されている。
【0045】
また、先端凹部25aと根元凹部25bはそれぞれ略逆半四角錘、略逆四角錘の内壁を有する凹部であり、根元把持部22の中心凸部24aと45°位相がずれている。ここで再び第1把持部材10及び第2把持部材20の先端把持部11、21の噛み合いについて、第1把持部材10の先端凸部15c(丸囲み4)は、第2把持部材20の中心凸部24a(丸囲み2)の遠位隣の直交溝23に形成された凹部(丸囲み4)に対応して嵌合し、両縁部18,28においても第1把持部材10の四角囲み4が第2把持部材20の四角囲み4に対応して嵌合する。また、第1把持部材10の先端把持部11の先端凸部15b(丸囲み5)は、第2把持部材20の先端把持部21の根元凹部25b(丸囲み5)に対応して嵌合し、両縁部18,28においても第1把持部材10の縁側壁部16a(四角囲み5)が第2把持部材20の直交溝23a端部(四角囲み5)に対応して嵌合する。
【0046】
さらに、第1把持部材10の先端把持部11の先端凸部15a(丸囲み6)は、第2把持部材20の先端把持部21の根元凹部25a(丸囲み6)に対応して嵌合し、両縁部18,28においても第2把持部材20の縁側壁部26a、26bが第1把持部材10の直線溝17に対応して嵌合する。なお、先端把持部21の先端凹部25a、根元凹部25b及び縁側壁部26a、26bもその各縁部を研磨しR形状を設けている。
【0047】
以上、本発明の1つの実施形態について例示説明してきたが、当業者は本発明の思想・精神から種々の改良例・変形例を想定するであろう。例えば、第1把持部材10と第2把持部材20との把持面の凸部/凹部について互いに対応して噛み合うのであれば、中心凸部14、24の個数、中心凸部15及び中心凹部25の個数が変わっても良い。中心凸部14、24、中心凸部15及び中心凹部25が位相の関係が上記と同様であれば多角錘であっても良い。また、第1把持部材10と第2把持部材20との素材はチタン、ステンレス、超硬合金等でも考えられる。
【符号の説明】
【0048】
1…医療用把持部材
10…第1把持部材
11、21…先端把持部
12、22…根元把持部
13、23…溝(直交溝)
14、24…凸部
14a、24a…中心凸部
14b、24b…縁側凸部
15…凸部(先端凸部)
15a、15b、15c…先端凸部
16、26…縁側壁部
17…直交溝
18、28…縁部
20…第2把持部材
25…凹部
25a…先端凹部
25b…根元凹部