IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ avatarin株式会社の特許一覧

特開2022-55165コミュニケーションシステム及び端末装置
<>
  • 特開-コミュニケーションシステム及び端末装置 図1
  • 特開-コミュニケーションシステム及び端末装置 図2
  • 特開-コミュニケーションシステム及び端末装置 図3
  • 特開-コミュニケーションシステム及び端末装置 図4
  • 特開-コミュニケーションシステム及び端末装置 図5
  • 特開-コミュニケーションシステム及び端末装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055165
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】コミュニケーションシステム及び端末装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20220331BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H04M11/00 301
G06F13/00 540E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162610
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】520168055
【氏名又は名称】avatarin株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】深堀 昂
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 ケビン
【テーマコード(参考)】
5B084
5K201
【Fターム(参考)】
5B084AA02
5B084AA07
5B084AA12
5B084AB07
5B084AB13
5B084AB37
5B084AB39
5B084BA01
5B084BA03
5B084BB12
5B084DA15
5B084DC02
5B084DC03
5B084DC05
5B084FA16
5K201AA06
5K201BA01
5K201CA04
5K201EC06
5K201ED05
5K201ED08
5K201EE01
5K201EF09
(57)【要約】
【課題】テレプレゼンスロボットと遠隔操作用の端末装置との間の通信において、多様なユーザのニーズに応え得る柔軟かつ効率的な通信を可能とする。
【解決手段】コミュニケーションシステムは、固定されていないロボットと、ロボットと通信可能な少なくとも1つのコンピュータとを備える。コンピュータは、コンピュータとロボットとの間の通信方式を、所定の条件に従って、通信ネットワークに接続されたデータセンタを介してデータを送受信する第1の通信方式と、通信ネットワークを通じてロボットと直接データを送受信する第2の通信方式との間で切り替える通信切替部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定されていないロボットと、前記ロボットと通信可能な少なくとも1つのコンピュータとを備えるコミュニケーションシステムであって、
前記ロボットは、
カメラと、
前記コンピュータによる遠隔操作が可能な駆動部と、
を有し、
前記コンピュータは、
ユーザからの指示の入力を受け付ける入力部と、
前記カメラで撮影された画像を表示する表示部と、
通信ネットワークを通じて前記ロボットとの間でデータを送受信する通信部と、
当該コンピュータと前記ロボットとの間の通信方式を、所定の条件に従って、前記通信ネットワークに接続されたデータセンタを介してデータを送受信する第1の通信方式と、前記通信ネットワークを通じて前記ロボットと直接データを送受信する第2の通信方式との間で切り替える通信切替部と、
を有する、
コミュニケーションシステム。
【請求項2】
前記通信切替部は、前記入力部に入力される指示に基づいて選択される前記ロボットの用途に応じて通信方式を切り替える、請求項1に記載のコミュニケーションシステム。
【請求項3】
前記通信切替部は、前記ロボットが特定の個人間のコミュニケーションに用いられる場合、通信方式を前記第2の通信方式に切り替える、請求項2に記載のコミュニケーションシステム。
【請求項4】
前記通信切替部は、前記ロボットが不特定のユーザへのサービス提供に用いられる場合、通信方式を前記第1の通信方式に切り替える、請求項2に記載のコミュニケーションシステム。
【請求項5】
前記通信切替部は、前記ロボットに接続する際の料金プランに応じて通信方式を切り替える、請求項2に記載のコミュニケーションシステム。
【請求項6】
前記通信切替部は、前記コンピュータと前記ロボットとの間で送受信されるデータの種類又は形式に応じて、通信方式をデータごとに切り替える、請求項1に記載のコミュニケーションシステム。
【請求項7】
前記通信切替部は、前記入力部に入力される通信方式を切り替える旨の指示に従って、通信方式を切り替える、請求項1に記載のコミュニケーションシステム。
【請求項8】
前記通信切替部は、前記コンピュータを複数の前記ロボットに同時接続する場合に前記第1の通信方式に切り替え、前記コンピュータを1つの前記ロボットにのみ接続する場合に前記第2の通信方式に切り替える、請求項1に記載のコミュニケーションシステム。
【請求項9】
前記通信切替部は、前記第2の通信方式で通信が行われている間に、所定の周期で所定の期間だけ、前記通信方式を前記第1の通信方式に切り替える、請求項1に記載のコミュニケーションシステム。
【請求項10】
カメラと、遠隔操作可能な駆動部と、を有する移動型又は装着型のロボットを遠隔操作するための端末装置であって、
ユーザからの指示の入力を受け付ける入力部と、
前記カメラで撮影された画像を表示する表示部と、
通信ネットワークを通じて前記ロボットとの間でデータを送受信する通信部と、
当該端末装置と前記ロボットとの間の通信方式を、所定の条件に従って、前記通信ネットワークに接続されたデータセンタを介してデータを送受信する第1の通信方式と、前記通信ネットワークを通じて前記ロボットと直接データを送受信する第2の通信方式との間で切り替える通信切替部と、
を有する、端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニケーションシステム及び端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを用いたテレビ会議システムが普及し、顔を見ながら話すだけでなく、遠隔地にいるユーザがカメラの向きや位置を操作することができるテレプレゼンスロボットが使用されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、遠隔操作者に対して撮影画像を提供するカメラと、撮影画像内の少なくとも一部を遠隔操作者から隠蔽するマスク処理を実行し、かつ、マスク処理を用途に応じて切り替えるマスク処理部と、を備えるカメラ付き移動体(テレプレゼンスロボット)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-062308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信ネットワークにおける端末間の通信方式は、通信ネットワークに接続されたデータセンタを経由してデータを送受信する所謂クラウド方式と、通信ネットワークに接続された端末同士で直接データを送受信し合う所謂P2P(Peer-to-Peer)方式に大別することができる。
【0006】
クラウド方式の場合、クラウドサーバにデータを蓄積し、蓄積されたデータをビッグデータなどとして活用したりすることができるというメリットがある反面、オペレーションコストがかかる等のデメリットがある。他方、P2P方式の場合、低コストといった観点ではメリットがあるが、単に両端末間でデータがやりとりされるだけなので、データの有効活用に適しているとは言えない。
【0007】
テレプレゼンスロボットは、今後ますます、幅広い分野において様々な用途での利用が期待される。しかしながら、テレプレゼンスロボットとこれを遠隔操作する端末装置との間の通信において、いずれか一方の通信方式を採用したのでは、多様なユーザのニーズに応えることができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、テレプレゼンスロボットと遠隔操作用の端末装置との間の通信において、多様なユーザのニーズに応え得る柔軟かつ効率的な通信を可能とするコミュニケーションシステム及び端末装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るコミュニケーションシステムは、固定されていないロボットと、前記ロボットと通信可能な少なくとも1つのコンピュータとを備えるコミュニケーションシステムであって、前記ロボットは、カメラと、前記コンピュータによる遠隔操作が可能な駆動部と、を有し、前記コンピュータは、ユーザからの指示の入力を受け付ける入力部と、前記カメラで撮影された画像を表示する表示部と、通信ネットワークを通じて前記ロボットとの間でデータを送受信する通信部と、当該コンピュータと前記ロボットとの間の通信方式を、所定の条件に従って、前記通信ネットワークに接続されたデータセンタを介してデータを送受信する第1の通信方式と、前記通信ネットワークを通じて前記ロボットと直接データを送受信する第2の通信方式との間で切り替える通信切替部と、を有する。
【0010】
この態様によれば、コンピュータが、遠隔操作するロボットとの通信方式を、所定の条件に従って、通信ネットワークに接続されたデータセンタを介してデータを送受信する第1の通信方式(所謂クラウド方式)と、通信ネットワークを通じてロボットと直接データを送受信する第2の通信方式(所謂P2P方式)との間で切り替えるので、それぞれの通信方式の利点を活かしたデータの送受信を行うことができる。
【0011】
上記態様において、前記通信切替部は、前記入力部に入力される指示に基づいて選択される前記ロボットの用途に応じて通信方式を切り替えてよい。この場合において、前記通信切替部は、前記ロボットが特定の個人間のコミュニケーションに用いられる場合、通信方式を前記第2の通信方式に切り替えてよい。また、前記通信切替部は、前記ロボットが不特定のユーザへのサービス提供に用いられる場合、通信方式を前記第1の通信方式に切り替えてよい。あるいは、前記通信切替部は、前記ロボットに接続する際の料金プランに応じて通信方式を切り替えてよい。
【0012】
上記態様において、前記通信切替部は、前記コンピュータと前記ロボットとの間で送受信されるデータの種類又は形式に応じて、通信方式をデータごとに切り替えてよい。
【0013】
上記態様によれば、ロボットの用途や、データの種類又は形式に応じて、通信切替部がバックグラウンドで通信方式を切り替えるので、ユーザが通信方式を意識しなくとも、適切な方式で通信を行うことができる。
【0014】
上記態様において、前記通信切替部は、前記入力部に入力される通信方式を切り替える旨の指示に従って、通信方式を切り替えてよい。この態様によれば、ユーザの明示的な指示に従って通信方式を切り替えるので、ユーザにとって使いやすい方式で通信を行うことができる。
【0015】
上記態様において、前記通信切替部は、前記コンピュータを複数の前記ロボットに同時接続する場合に前記第1の通信方式に切り替え、前記コンピュータを1つの前記ロボットにのみ接続する場合に前記第2の通信方式に切り替えてよい。この態様によれば、例えばコンピュータから複数のロボットに同時接続する場合であっても、通信ネットワークの負荷を低減することができる。
【0016】
上記態様において、前記通信切替部は、前記第2の通信方式で通信が行われている間に、所定の周期で所定の期間だけ、前記通信方式を前記第1の通信方式に切り替えてよい。この態様によれば、第2の通信方式で通信が行われている場合であっても、所定の周期で所定の期間だけ第1の通信方式に切り替えることにより、データをサンプリングすることができる。
【0017】
本発明の別の態様である端末装置は、カメラと、遠隔操作可能な駆動部と、を有する移動型又は装着型のロボットを遠隔操作するための端末装置であって、ユーザからの指示の入力を受け付ける入力部と、前記カメラで撮影された画像を表示する表示部と、通信ネットワークを通じて前記ロボットとの間でデータを送受信する通信部と、当該端末装置と前記ロボットとの間の通信方式を、所定の条件に従って、前記通信ネットワークに接続されたデータセンタを介してデータを送受信する第1の通信方式と、前記通信ネットワークを通じて前記ロボットと直接データを送受信する第2の通信方式との間で切り替える通信切替部と、を有する。
【0018】
この態様によれば、コンピュータが、遠隔操作するロボットとの通信方式を、所定の条件に従って、通信ネットワークに接続されたデータセンタを介してデータを送受信する第1の通信方式(所謂クラウド方式)と、通信ネットワークを通じてロボットと直接データを送受信する第2の通信方式(所謂P2P方式)との間で切り替えるので、それぞれの通信方式の利点を活かしたデータの送受信を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、テレプレゼンスロボットと遠隔操作用の端末装置との間の通信において、多様なユーザのニーズに応え得る柔軟かつ効率的な通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステムのネットワーク構成を示す図である。
図2】本実施形態に係るコンピュータの物理的構成を示す図である。
図3】本実施形態に係るロボットの物理的構成を示す図である。
図4】本実施形態に係るコンピュータにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態に係るコンピュータに表示される画面例を示す図である。
図6】本実施形態に係るコンピュータに表示される画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るコミュニケーションシステム100のネットワーク構成を示す図である。コミュニケーションシステム100は、固定されていないロボット20,21,22と、ロボット20,21,22と通信可能なコンピュータ10,11とを備える。ここで、ロボット20,21,22とコンピュータ10,11が通信可能とは、無線通信又は有線通信が可能であることを含み、インターネット、LAN(Local Area Network)、電話回線等による通信が可能であったり、近距離無線通信が可能であったりする場合を含む。なお、図1においては、3台のロボット20,21,22と、2台のコンピュータ10,11とを例示しているが、その台数は任意である。
【0023】
コンピュータ10,11と、ロボット20,21,22との間でデータを送受信する際の通信方式には、通信ネットワークに接続されたデータセンタを介してデータを送受信する所謂クラウド方式(第1の通信方式N1)と、通信ネットワークを通じてコンピュータ10,11とロボット20,21,22との間で直接データを送受信する所謂P2P方式(第2の通信方式N2)とがある。後で詳しく説明するように、本実施形態においては、コンピュータ10,11が、所定の条件の下で、ロボット20,21,22と通信する通信方式を切り替える。
【0024】
ロボット20,21,22は、カメラと、コンピュータ10,11による遠隔操作が可能な駆動部と、を有する。ロボット20,21,22は、例えばテレプレゼンスロボット又はアバターロボットで構成され、車輪等の移動部を有していてよい。
【0025】
ロボット20,21,22は様々な場所に配置され、様々な用途で使用され得る。例えば、ロボット20,21,22は、個人の住宅に配置され、特別なアクセス権限が付与されたコンピュータ(例えばコンピュータ10)によってのみ遠隔操作が可能で、特定の個人間のコミュニケーションにのみ使用されるものであってもよい。また、ロボット20,21,22は、駅や美術館などのパブリックスペースに配置され、空いていれば、どのコンピュータ10,11からでもユーザ認証不要で遠隔操作することができるものであってもよい。或いは、ロボット20,21,22は、百貨店や医療機関や英会話教室などのサービスプロバイダに配置され、会員登録されたユーザの認証に成功したコンピュータ10,11により遠隔操作されて、ショッピングやオンライン診療やオンラインレッスンなどのサービスのために使用されるものであってもよい。
【0026】
ロボット20,21,22が固定されていないとは、ロボット20,21,22が車輪等の移動部を有する移動型である場合と、人が装着でき、マニピュレータ等の駆動部を有する装着型である場合とを含む。移動型のロボットは、例えば特許文献1に示されている。移動型ロボットの移動部は、一輪、二輪又は多輪により走行するもの、キャタピラにより走行するもの、レールの上を走行するもの、飛び跳ねて移動するもの、二足歩行、四足歩行又は多足歩行するもの、スクリューにより水上又は水中を航行するもの及びプロペラ等により飛行するものを含む。装着型のロボットは、例えばMHD Yamen Saraiji, Tomoya Sasaki, Reo Matsumura, Kouta Minamizawa and Masahiko Inami, ”Fusion: full body surrogacy for collaborative communication,” Proceeding SIGGRAPH ’18 ACM SIGGRAPH 2018 Emerging Technologies Article No. 7.にて公開されている。さらに、ロボット20,21,22は、自動走行又は半自動走行可能な車両や重機であったり、ドローンや飛行機であったりを含む。また、ロボット20,21,22は、スポーツスタジアム等に設置され、レールの上を移動可能なカメラを備えたロボットを含む。また、ロボット20,21,22は、宇宙空間に打ち上げられる衛星型ロボットであって、姿勢制御やカメラの撮影方向の制御が可能なロボットを含む。
【0027】
コンピュータ10,11は、ユーザからの指示の入力を受け付ける入力部と、ロボット20,21,22のカメラで撮影された画像を表示する表示部と、通信ネットワークを通じてロボット20,21,22との間でデータを送受信する通信部と、当該コンピュータ10,11がロボット20,21,22と通信する通信方式を、所定の条件に従ってクラウド方式とP2P方式との間で切り替える通信切替部と、を有する。コンピュータ10,11は、例えばスマートフォンで構成されるが、パーソナルコンピュータ等で構成されてもよい。コンピュータ10,11のユーザは、ロボット20,21,22を介して、ロボット20,21,22が配置されている遠隔地にいる他のユーザとコミュニケーションをとることができる。
【0028】
各コンピュータ10,11は、同時に1つのロボット20,21,22にのみ接続されてもよいし、同時に複数のロボット20,21,22に接続されてもよい。後者の例として、コンピュータ10のユーザ1が、複数の遠隔地にそれぞれ配置されたロボット20,21,22を通じて、それぞれの遠隔地にいるユーザとオンライン会議を行うといった用途が挙げられる。
【0029】
通信切替部が通信方式を切り替える際の条件は、適宜設定することができる。例えば、通信切替部は、入力部に入力される指示に基づいて選択されるロボット20,21,22の用途に応じて通信方式を切り替えてもよい。
【0030】
一例として、ロボット20,21,22が家族間や友人間などの個人間のコミュニケーション(以下、「個人間利用」ともいう。)に用いられる場合、通信方式はコストが割安なP2P方式に切り替えられてもよい。また、ロボット20,21,22が会議等の用途で用いられる場合も、クラウド上にデータを保存する必要がなければ、通信方式はP2P方式に切り替えられてもよい。もちろん、会議等の用途で用いられる場合でも、会議を記録した議事録や動画等をクラウド上に保存することで利便性が高まるような場合には、通信方式をクラウド方式に切り替えられるようにしてもよい。
【0031】
別の例として、ロボット20,21,22が不特定のユーザへのサービス提供(以下、「不特定利用」ともいう。)に用いられる場合、通信方式はクラウド方式に切り替えられてもよい。この場合、ロボット20,21,22を利用する過程において検出又は送受信されるデータをクラウドサーバに蓄積することができ、蓄積されたデータを活用することも可能となる。
【0032】
例えば、ロボット20,21,22が美術館等の施設に配置されている場合、ユーザがロボット20,21,22を遠隔操作して展示物を鑑賞するときには、コンピュータ10、11がクラウド方式でロボット20,21,22と通信されるように設定されてもよい。この場合、コンピュータ10,11とロボット20,21,22との間で送受信されたデータや、コンピュータ10,11の遠隔操作によるロボット20,21,22の行動履歴(ログデータ)や、ロボット20,21,22の周囲の環境情報(温度、湿度、天気、周囲の混雑状況)等を収集し、クラウドサーバに蓄積することができる。他方、同じ美術館に配置されたロボット20,21,22を夜間警備に使用するときには、ユーザ(例えば警備会社の担当者)が操作するコンピュータ10,11がP2P方式でロボット20と通信されるように設定されてもよい。
【0033】
さらに別の例として、ロボット20,21,22がデパートに配置されている場合、ユーザがロボット20,21,22を遠隔操作して売り場を回り、所望の買い物をするときには、コンピュータ10,11がクラウド方式でロボット20,21,22と通信されるように設定されてもよい。この場合、ロボット20,21,22のログデータや周囲の環境情報の他、ユーザの購買情報や嗜好に関する情報等をクラウドサーバに蓄積することもできる。
【0034】
また、通信切替部は、コンピュータ10,11を介してロボット20,21,22を利用する際の料金プランに応じて通信方式を切り替えてもよい。例えば、定額プランでロボット20,21,22を利用する場合にはクラウド方式とし、単位時間あたりいくらといった従量制プランでロボット20,21,22を利用する場合にはP2P方式としてもよい。
【0035】
また、通信切替部は、コンピュータ10,11とロボット20,21,22との間で送受信されるデータの種類又は形式に応じて、通信方式をデータごとに切り替えてもよい。例えば、コンピュータ10,11からコマンドを送信する場合には、データ量が少ないため、クラウド方式としてもよい。また、例えば、コンピュータ10のユーザ1と、ロボット20が配置されている遠隔地のユーザ2とが会議する場合、リアルタイムな動画はP2P方式で送受信され、画面共有されるスライド資料(例えばPPTファイル)や議事録(例えばテキストファイル)はクラウド方式で送受信されることとしてもよい。
【0036】
或いは、コンピュータ10,11とロボット20,21,22との間で動画を送受信する際、音声データについてはクラウド方式で送受信され、映像データについてはP2P方式で送受信されるように、データごとに通信方式を切り替えてもよい。この場合、コンピュータ10,11及びロボット20,21,22の各々において、受信した映像データと音声データとが同期されて再生される。ここで、映像データは音声データと比較してデータ量が多いため、通信の遅延が生じやすい。そこで、データ量が比較的少ない音声データをクラウド方式で送受信し、データ量が比較的多い映像データをP2P方式で送受信することにより、両データを受信するタイミングのズレを低減することができる。
【0037】
また、通信切替部は、1つのコンピュータ10を1つのロボット20にのみ接続(いわゆる1:1接続)する場合にP2P方式に切り替え、1つのコンピュータ(例えばコンピュータ10)を複数のロボット20,21,22に同時に接続する場合、或いは、1つのロボット20に複数のコンピュータ1,11を同時に接続(いわゆる1:n接続)する場合に、クラウド方式に切り替えてもよい。一例として、1人のユーザがコンピュータ10からロボット20に接続して遠隔操作し、他の複数のユーザが別の複数のコンピュータ11からロボット20にそれぞれ接続して、ロボット20が撮影した画像を共有するといった場合には、クラウド方式に切り替えられることとしてもよい。
【0038】
また、通信切替部は、P2P方式で通信が行われている間であっても、所定の周期で所定の期間だけ、通信方式をクラウド方式に切り替えてもよい。この場合、コンピュータ10,11とロボット20,21,22との間で送受信されているデータを所定のレートでサンプリングすることにより、クラウドサーバにデータを蓄積することができる。例えば、遠隔操作によりロボット20が移動する間にデータをサンプリングすることにより、移動経路の地図情報を取得したりすることもできる。
【0039】
また、通信切替部は、入力部に入力される、通信方式を切り替える旨のユーザからの指示に応じて、コンピュータ10,11とロボット20,21,22との間における通信方式を切り替えてもよい。
【0040】
さらに、通信切替部は、クラウドサーバがダウンした際に、コンピュータ10,11とロボット20,21,22との間における通信方式をP2P方式に自動的に切り替えてもよい。なお、クラウドサーバがダウンしたか否かは、例えば監視システム(図示略)によるクラウドサーバのモニタリング結果を利用すればよい。
【0041】
本実施形態に係るコミュニケーションシステム100によれば、コンピュータ10,11が、所定の条件に従って、遠隔操作するロボット20,21,22との通信方式を、クラウド方式とP2P方式との間で切り替えるので、それぞれの通信方式の利点を活かしたデータの送受信を行うことができる。それにより、ロボット20,21,22とコンピュータ10,11との間で効率的な通信を行うことが可能となる。
【0042】
以下、コンピュータ10,11を総称してコンピュータ10と呼ぶ。また、ロボット20,21,22を総称してロボット20と呼ぶ。
【0043】
図2は、本実施形態に係るコンピュータ10の物理的構成を示す図である。コンピュータ10は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10bと、記憶部に相当するROM(Read only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例ではコンピュータ10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、コンピュータ10は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、図2で示す構成は一例であり、コンピュータ10はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0044】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、ロボットを介したコミュニケーションを制御するプログラム(コミュニケーションプログラム)を実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bに格納したりする。
【0045】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行するプログラム、ユーザ情報といったデータを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0046】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えばコミュニケーションプログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0047】
通信部10dは、コンピュータ10を他の機器に接続するインターフェースである。通信部10dは、インターネットや電話回線等の通信ネットワークに接続されてよい。
【0048】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。また、入力部10eは、音声入力のためのマイクを含んでよい。
【0049】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、ロボット20のカメラ20hで撮影された画像を表示してよい。
【0050】
コミュニケーションプログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。コンピュータ10では、CPU10aがコミュニケーションプログラムを実行することにより、ロボット20を制御するための様々な動作や、コンピュータ10とロボット20との間の通信方式を切り替える通信切替部としての動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、コンピュータ10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0051】
図3は、本実施形態に係るロボット20の物理的構成を示す図である。ロボット20は、演算部に相当するCPU20aと、記憶部に相当するRAM20bと、記憶部に相当するROM20cと、通信部20dと、入力部20eと、表示部20fと、駆動部20gと、カメラ20hとを有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、図3で示す構成は一例であり、ロボット20はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0052】
CPU20aは、RAM20b又はROM20cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU20aは、ロボットを介したコミュニケーションを制御するプログラム(コミュニケーションプログラム)を実行する演算部である。CPU20aは、入力部20eや通信部20dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部20fに表示したり、RAM20bに格納したりする。また、CPU20aは、駆動部20gを制御し、ロボット20の動作を制御する。
【0053】
RAM20bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM20bは、CPU20aが実行するプログラムを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM20bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0054】
ROM20cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM20cは、例えばコミュニケーションプログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0055】
通信部20dは、ロボット20を他の機器に接続するインターフェースである。通信部20dは、インターネット等の通信ネットワークに接続されてよい。
【0056】
入力部20eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、タッチパネルを含んでよい。また、入力部20eは、音声入力のためのマイクを含んでよい。
【0057】
表示部20fは、CPU20aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCDにより構成されてよい。コンピュータ10がカメラを備える場合、表示部20fは、コンピュータ10のカメラで撮影された画像を表示してもよい。
【0058】
駆動部20gは、遠隔操作可能なアクチュエータを含み、車輪等の移動部やマニピュレータ等を含む。ロボット20が移動型のロボットである場合、駆動部20gは、少なくとも車輪等の移動部を含むが、マニピュレータを含んでもよい。ロボット20が装着型である場合、駆動部20gは、少なくともマニピュレータを含む。
【0059】
カメラ20hは、静止画又は動画を撮像する撮像素子を含み、撮像した静止画又は動画を、通信部20dを介してコンピュータ10に送信する。
【0060】
コミュニケーションプログラムは、RAM20bやROM20c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部20dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。ロボット20では、CPU20aがコミュニケーションプログラムを実行することにより、ロボット20を制御するための様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、ロボット20は、CPU20aとRAM20bやROM20cが一体化したLSIを備えていてもよい。
【0061】
図4は、本実施形態に係るコンピュータ10により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0062】
コンピュータ10は、入力部10eにおいてロボット20と接続する指示を受け付けると(S10)、ユーザからの指示またはシステム設定に応じて通信方式を選択する(S11)。ここでは、例えば「個人間利用の場合にはP2P方式」、「不特定利用の場合にはクラウド方式」等のシステム設定がなされている場合を想定する。
【0063】
<個人間利用の場合>
コンピュータ10は、上記設定がなされた状態において、個人間利用のためにロボット20と接続する指示を受けた場合には、ロボット20との通信方式としてP2P方式を選択する(S12)。
【0064】
図5は、個人間利用を目的とするロボット20との接続指示を受け付けた場合に、表示部10fに表示される通話先選択画面を例示した図である。
この通話先選択画面には、予め登録された個人の接続先を示すアイコン111~114が表示されている。コンピュータ10は、例えば「Aさん」と表示されたアイコン111が操作されたことを検知すると、通信方式としてP2Pを選択し、Aさん宅に配置されたロボット20との間でP2P方式による通信を開始し、データの送受信を行う。
【0065】
その後、コンピュータ10は、通信方式を切り替える操作がなされたか否かを判断する(S13)。コンピュータ10は、通信方式を切り替える操作がなされない場合には(S13:No)、引き続きP2P方式でロボット20と通信を行い、データの送受信を行う。その後、コンピュータ10は、切断操作を検知したか否かを判断する(S16)。コンピュータ10は、切断操作を検知しない場合には(S16:No)、S11に戻り、上述した一連の処理を繰り返し実行する一方、切断操作を検知すると(S16:Yes)、ロボット20との通信を切断し(S17)、処理を終了する。
【0066】
一方、S13において、コンピュータ10は、通信方式を切り替える操作がなされたことを検知すると(S13:Yes)、通信方式をP2P方式からクラウド方式に切り替えるべく、クラウド方式を選択する(S14)。例えば、コンピュータ10は、図5に例示する通信方式を切り替える指示を入力するためのアイコン115に対する操作を検知すると、通信方式をP2P方式からクラウド方式に切り替える。
【0067】
これにより、例えば、個人間の日常的な連絡を行う場合には、基本的には、通信コストが割安なP2P方式が選択されるが、記録をクラウドサーバに保存したいといったユーザの希望がある場合には、クラウド方式に切り替えることができる。
【0068】
<不特定利用の場合>
一方、コンピュータ10は、上記設定がなされた状態において、個人間利用ではなく、不特定利用のためにロボット20と接続する指示を受けた場合には、ロボット20との通信方式としてクラウド方式を選択する(S14)。
【0069】
図6は、不特定利用を目的とするロボット20との接続指示を受け付けた場合に、表示部10fに表示されるサービス選択画面を例示した図である。
このサービス選択画面には、例えば、英会話、医療相談、買い物といったサービスを示すアイコン121~123が表示されている。コンピュータ10は、例えば「英会話」と表示されたアイコン121に対する操作を検知すると、通信方式としてクラウド方式を選択し、英会話教室に配置されたロボット20との間でクラウド方式による通信を開始し、データの送受信を行う。この場合、例えば英会話レッスンの教材や、レッスン記録などのデータをクラウドサーバに蓄積したり、クラウドサーバに蓄積されたデータを利用したりすることができる。また、コンピュータ10は、「買い物」と表示されたアイコン123に対する操作を検知すると、デパートに配置されたロボット20との間でクラウド方式による通信を開始し、データの送受信を行う。この場合、コンピュータ10の遠隔操作によるロボット20の行動履歴、ユーザが購入した商品情報、ロボット20の周囲の環境情報等をクラウドサーバに蓄積することができる。
【0070】
その後、コンピュータ10は、通信方式を切り替える操作がなされたか否かを判断する(S15)。コンピュータ10は、当該操作がなされない場合には(S15:No)、引き続きクラウド方式でロボット20と通信を行い、データの送受信を行う。その後、コンピュータ10は、切断操作を検知したか否かを判断する(S16)。コンピュータ10は、切断操作を検知しない場合には(S16:No)、S11に戻り、上述した一連の処理を繰り返し実行する一方、切断操作を検知すると(S16:Yes)、ロボット20との通信を切断し(S17)、処理を終了する。
【0071】
一方、S15において、コンピュータ10は、通信方式を切り替える操作がなされたことを検知すると(S15:Yes)、通信方式をクラウド方式からP2P方式へ切り替えるべく、P2P方式を選択する(S12)。例えば、コンピュータ10は、図6に例示する通信方式を切り替える指示を入力するためのアイコン124に対する操作を検知すると、通信方式をクラウド方式からP2P方式に切り替える。
【0072】
具体例を挙げて説明すると、コンピュータ10は、図6に示す「医療相談」と表示されたアイコン122に対する操作を検知すると、まずはクラウド方式を選択し、ユーザの操作に従って、クラウド方式で通信しながら相談先(接続先)の医師を検索し、医師の元に配置されたロボット20と接続する。その後、ユーザの操作に従って、通信方式をP2Pに切り替えることもできる。
【0073】
このように、本実施形態では、システム設定に応じて、通信方式がP2P方式又はクラウド方式に自動設定されるので、柔軟かつ効率的な通信を行うことが可能となる。このとき、コンピュータ10のユーザは、設定されている通信方式を意識することなく、効率よく、遠隔操作によりロボット20を利用することができる。
【0074】
また、本実施形態においては、デフォルトの設定に対し、ユーザが、通信方式をP2P方式又はクラウド方式に適宜切り替えることができるので、多様なユーザのニーズに応じた通信方式でロボット20を遠隔制御することができる。
【0075】
なお、上記実施形態においては、コンピュータ10においてロボット20との通信方式が設定されることとしたが、クラウドサーバにおいて通信方式が設定されることとしてもよい。例えば、買い物など特定のサービスのために使用されるロボット20は、クラウド方式でしかコンピュータ10と接続することができず、コンピュータ10側の操作では通信方式を切り替えることができない設定としてもよい。
【0076】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1,2…ユーザ、10,11…コンピュータ、10a,20a…CPU、10b,20b…RAM、10c,20c…ROM、10d,20d…通信部、10e,20e…入力部、10f,20f…表示部、20g…駆動部、20h…カメラ、20e…入力部、20,21,22…ロボット、100…コミュニケーションシステム、111~115,121~124…アイコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6