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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055193
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】胸部検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162646
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松平 風香
(72)【発明者】
【氏名】増田 藍
(72)【発明者】
【氏名】長濱 愛望
(72)【発明者】
【氏名】小西 弥生
(72)【発明者】
【氏名】寺田 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】坪田 悠史
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB13
4C601DD08
4C601EE11
4C601EE20
4C601GB05
4C601GC02
4C601GC10
4C601GC22
4C601KK16
4C601KK31
(57)【要約】
【課題】広範囲を検査可能な胸部検査装置を提供する。
【解決手段】胸部検査装置100は、伏臥位の被検者200を支持する支持台1と、被検者200の検査対象の乳房201を挿入する開口22を上端に有するとともに支持台1の上面10から突出して配置される筒21を備え、挿入した乳房201を筒21の内部で超音波検査する検査機構2と、を備える。筒21は、筒21を構成する壁211の内部に、支持台1の上面10よりも上方にまで延在する中空部212を備え、検査機構2は、中空部212を上下方向に移動可能なリング状の超音波送受信機構23を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伏臥位の被検者を支持する支持台と、
前記被検者の検査対象の乳房を挿入する開口を上端に有するとともに前記支持台の上面から突出して配置される筒を備え、挿入した前記乳房を前記筒の内部で超音波検査する検査機構と、を備える
ことを特徴とする胸部検査装置。
【請求項2】
前記筒は、前記筒を構成する壁の内部に、前記支持台の上面よりも上方にまで延在する中空部を備え、
前記検査機構は、前記中空部を上下方向に移動可能なリング状の超音波送受信機構を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の胸部検査装置。
【請求項3】
前記支持台の前記上面に対する前記筒の高さは、前記被検者が痛みを感じ難い所定高さである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の胸部検査装置。
【請求項4】
前記支持台の前記上面に対する前記筒の高さは、5mm以上50mm以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の胸部検査装置。
【請求項5】
前記上面は、側面視で前記筒を境に、前記被検者の下半身側を支持する第1面と、前記被検者の頭部側を配置する第2面とを含み、
前記第2面は、前記第1面よりも低い位置に配置される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の胸部検査装置。
【請求項6】
前記検査機構は、
前記筒に検査液を入れた状態で超音波検査を行うように構成され、
前記開口を通じて溢れる前記検査液を前記筒の内部から外部に流す流路を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の胸部検査装置。
【請求項7】
前記検査機構は、前記筒の少なくとも一部を囲うように、前記流路を通じて流出した検査液を受ける受部を備える
ことを特徴とする請求項6に記載の胸部検査装置。
【請求項8】
上面視で前記被検者の頭部の位置に、前記被検者が視認可能な表示装置を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の胸部検査装置。
【請求項9】
前記表示装置に、伏臥位の前記被検者の乳房又は乳頭の少なくとも一方の位置を案内する第1画面を表示する第1表示部を備える制御装置を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の胸部検査装置。
【請求項10】
前記表示装置に、検査中の前記被検者に対して検査中の緊張を緩和する画面、又は、検査の残時間を示す画面の少なくとも一方を含む第2画面を表示する第2表示部を備える制御装置を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の胸部検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、胸部検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば乳がん検査等の胸部検査時、被検者に与える痛みが大きく、新たな胸部検査装置の開発が求められている。特許文献1には、被検者の身体の少なくとも一部である被検体を収容する浴槽と、所定方向に移動可能に設けられた測定デバイスであって、前記浴槽内に放射波を照射し、散乱した放射波を受信する素子群を有する測定デバイスと、前記被検体の、前記所定方向に直交する平面内における位置、及び前記所定方向における位置、及び前記測定デバイスによって測定されたデータの連続性のうちの少なくとも何れかが、予め定められた条件を満たす場合に、前記測定デバイスによる計測を行う制御部と、を備える医用画像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/069898号(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の医用画像装置では、伏臥位の被検者の乳房が開口部に挿入されることで、開口部の内部で乳房の超音波検査が行われる(図3)。しかし、被検者によっては乳房を開口部に十分挿入できず、検査範囲が限定的になる可能性がある。
本開示が解決しようとする課題は、広範囲を検査可能な胸部検査装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の胸部検査装置は、伏臥位の被検者を支持する支持台と、前記被検者の検査対象の乳房を挿入する開口を上端に有するとともに前記支持台の上面から突出して配置される筒を備え、挿入した前記乳房を前記筒の内部で超音波検査する検査機構と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、広範囲を検査可能な胸部検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の胸部検査装置の斜視図である。
図2】検査機構による検査方法を説明する図であり、検査機構の筒を含む前後方向への断面図である。
図3】検査機構の上面図である。
図4図1のA-A線断面図である。
図5】本実施形態の胸部検査装置の上面図である。
図6】本実施形態の胸部検査装置の側面図である。
図7】本実施形態の胸部検査装置のブロック図である。
図8】第1画面の模式図である。
図9】第2画面の模式図である。
図10】第3画面の模式図である。
図11】本実施形態の胸部検査方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更することがある。
【0009】
図1は、本実施形態の胸部検査装置100の斜視図である。胸部検査装置100は、筒21の内部での乳房201(図2)の超音波検査により、例えば乳がん等の病気を発見できる。胸部検査装置100は、被検者200(図6)が伏臥位の状態で横たわることが可能な程度の大きさに、概ね直方体の形状を有する。
【0010】
胸部検査装置100は、伏臥位の被検者200を支持する支持台1と、乳房201を超音波検査する検査機構2とを備える。支持台1は、前後方向に被検者200が横たわることができ、被検者200が腰掛けることができる程度の高さに構成される。支持台1は、前後方向で高さが異なり、支持台1の前側部分と後側部分とは、後側部分から前側部分に向かって滑らかに下るスロープ17により接続される。スロープ17は、左右方向に延在する。
【0011】
支持台1の上面10(図1では上面10の後側左右端部のみを図示。図2参照)には、例えば低反発ウレタン等の弾性体により構成されたクッション11が配置される。クッション11は、被検者200が横たわったときに凹むように変形し、これにより、身体への痛みを生じ難くできる。クッション11は、上面10の前後方向及び左右方向全域を覆うように、例えば同じ厚さで配置される。
【0012】
別の実施形態では、検査機構2は、筒21(後記)の上下方向位置を調整可能な調整機構(不図示)を備える。調整機構によって筒21の上下方向位置を調整することで、伏臥位の被検者200が感じる筒21の高さを調整できる。これにより、被検者200が感じる痛みを抑制しながら検査できる。
【0013】
別の実施形態では、胸部検査装置100は、厚さの異なる複数のクッション11を備える。載置するクッション11の厚さを変えることで、伏臥位の被検者200が感じる筒21の高さを調整できる。これにより、被検者200が感じる痛みを抑制しながら検査できる。
【0014】
別の実施形態では、胸部検査装置100は、厚さが同じの複数のクッション11を備える。載置するクッション11の枚数を変えることで、伏臥位の被検者200が感じる筒21の高さを調整できる。これにより、被検者200が感じる痛みを抑制しながら検査できる。
【0015】
図1に戻って、クッション11の上面には、被検者200が横たわる際の目印となる位置合わせガイド15が形成される。位置合わせガイド15は、前後方向に延在する例えば溝により構成される。例えば右の乳房201(図2)を検査するとき、被検者200(図6)は左側の溝を身体の中心(体軸)に配置するように支持台1に横たわることで、右の乳房201を筒21の開口22に挿入し易くできる。
【0016】
胸部検査装置100は、左右側面に、サイドカバー16を備える。サイドカバー16を取り外すことで、内部に配置された制御装置50(図4)等にアクセスでき、メンテナンスを行うことができる。胸部検査装置100は、サイドカバー16の下方に、胸部検査装置100を支持する脚(不図示)を覆う蹴り込み部カバー14を備える。
【0017】
図2は、検査機構2による検査方法を説明する図であり、検査機構2の筒21を含む前後方向への断面図である。検査機構2は、被検者200(図6)の検査対象の乳房201を挿入する開口22を上端に有するとともに支持台1の上面10から突出して配置される筒21を備える。検査機構2は、挿入した乳房201を筒21の内部で超音波検査するため、筒21は被検者200を支持可能な剛性材料(例えば金属、樹脂等)により構成される。図2では、被検者200の身体の一部の図示を省略し、乳房201及び乳頭202のみが図示される。上面10から突出した筒21に乳房201を挿入することで、乳房201を筒21に密着でき、検査中の乳房201の動きを抑制できる。
【0018】
筒21は、例えば円筒であり上面視で真円又は楕円の形状を有し、図示の例では、上面視で真円の形状を有する。筒21の上端面213には、上端面213の形状に対応した円環状のクッション214が載置される。クッション214は、例えばクッション11と同様の材質で同じ厚さにより構成できる。クッション214により、被検者200が乳房201を開口22に挿入した際の痛みを軽減できる。
【0019】
筒21は、筒21を構成する壁211の内部に、支持台1の上面10よりも上方にまで延在する中空部212を備える。中空部212は、特に、被検者200の乳房201よりも下半身側を支持する第1面12よりも上方にまで延在し、上面10に載置されたクッション11の上面111よりも更に上方にまで延在する。検査機構2は、中空部212を上下方向に移動可能なリング状の超音波送受信機構23を備える。超音波送受信機構23を備えることで、支持台1の上面10よりも上方に位置する乳房201の部分を検査できる。
【0020】
超音波送受信機構23は、支持体231及び送受信プローブ232を備え、円環状に形成された支持体231に、超音波を送受信する送受信プローブ232が等間隔で複数配置されることで構成される。アクチュエータ24(図7)によって支持体231を上下動させながら送受信プローブ232が超音波を送受信することで、筒21に挿入された乳房201の断面(前後左右方向に延在する断面)を超音波検査できる。
【0021】
検査機構2は、筒21に検査液を入れた状態で超音波検査を行うように構成される。検査液は超音波を伝搬可能なものであり、無色透明であることが好ましく、例えば冷水、温水等の水であり、好ましくは例えば30~35℃程度のぬるま湯である。検査液を入れた状態で超音波検査を行うことで、SN比を向上して検査精度を向上できる。
【0022】
別の実施形態では、検査機構2は、筒21の内部での液位を検出する液位検出機構(不図示)を備える。例えば、開口22に乳房201を挿入した後、液位検出機構によって検出される液位が開口22に至るまで、検査液の注入機構(不図示)により検査液が注入される。また、例えば、注入機構によって乳房201よりも低い液位まで検査液を入れた後に乳房201を挿入し、この状態で更に、液位が開口22に至るまで検査液を入れることもできる。
【0023】
液位検出機構は、例えば最も上方に配置された超音波送受信機構23である。超音波送受信機構23によって超音波を送受信しながら検査液を注入すると、検査液の液面で超音波の挙動が変化する。挙動変化を検出することで、液位を検出できる。また、詳細は後記するが、検査機構2は、筒21の底側に乳房201を撮影するカメラ25(図4)を備え、カメラ25によって上方を撮像することで、液位を検出できる。カメラ25を使用することで、別途のセンサを使用することなく、液位を検出できる。
【0024】
更に、液位検出機構は、例えば開口22に備えられる液位センサ(不図示)である。また、液位検出機構は、例えば、筒21の外側面に備えられる液検出センサ(不図示)でもよい。液検出センサによって検査液の溢れを検出することで、筒21を検査液で満たされた時に検査液の注入を停止できる。
【0025】
図2に戻って、支持台1の上面10に対する筒21の高さLは、被検者200が痛みを感じ難い所定高さである。このようにすることで、乳房201を開口22に挿入したときに被検者200が痛みを感じ難くできる。クッション11,214は、被検者200が横たわったときに同じように変形するとともに被検者200に与える痛みには関与し難いため、ここでは、高さLにはクッション11,214の厚さは含めていない。
【0026】
中でも、支持台1の上面10に対する筒21の高さL(所定高さ)は、5mm以上50mm以下である。このようにすることで、乳房201を開口22に挿入する際、被検者200が胸部を開口22に載せたときに被検者200が痛みを感じ難くできる。特に、被検者200が伏臥位になると、上記のように、クッション11,214が同じように変形する。このため、被検者200が伏臥位になった状態で、クッション11の上面に対するクッション214の高さもこの範囲になることが好ましい。
【0027】
高さL(クッション11の上面に対するクッション214の高さでもよい)は、例えば10mm以上35mm以下、好ましくは15mm以上25mm以下である。これらの中でも、特に15mm以上25mm以下にすることで、被検者200がふくよかであったりバストが大きめであったりしても、痛みを抑制した状態で、腹部の脂肪及び被検査側の乳房201による身体の浮きを抑制できる。これにより、乳房201を筒21の奥に挿入できる。
【0028】
別の実施形態では、支持台1の上面10に対する筒21の高さLは、予め複数の被検者200が痛みを感じ難い高さLをデータとして取得しておき、そのデータのうちの例えば90%以上の被検者200が痛みを感じ難い高さLに設定できる。痛みを感じるか否かは、被検者200に直接確認してもよく、例えば開口22の上端面213に設置された圧力センサ(不図示)の測定値に基づいて判断できる。
【0029】
図2に戻って、上面10は、側面視で筒21を境に、被検者200の下半身側を支持する第1面12と、被検者200の頭部203(図6)側を配置する第2面13とを含む。第2面13は第1面12よりも低い位置に配置され、図示の例では、第1面12は、第2面13に載置されるクッション11の上面111よりも高い位置に配置される。
【0030】
このようにすることで、被検者200が開口22に乳房201を挿入するように横たわったときに、被検者200の肩、鎖骨及び上腕骨頭を、低くなった第2面13側に配置できる。これにより、肩、鎖骨及び上腕骨頭の上面10への接触を抑制して身体の浮きを抑制でき、乳房201を筒21の深くにまで挿入できる。
【0031】
また、第1面12と第2面13とはスロープ17(図1)によって滑らかに接続され、筒21は、スロープ17と同じ位置に配置される(図1も併せて参照)。より具体的には、スロープ17の上端は、上面視(例えば図3)で真円に構成される筒21の中心付近に配置される。
【0032】
図3は、検査機構2の上面図である。検査機構2は、開口22を通じて溢れる検査液を筒21の内部から外部に流す流路215を備える。流路215は例えば溝であり、筒21の上端面213(図2)に載置されたクッション214の上面に形成される。流路215を備えることで、筒21への検査液注入時又は検査中に筒21から溢れた検査液を流路215を通じて筒21の外部に流すことができる。
【0033】
流路215は、被検者200が横たわったときに、被検者200の腋の下周辺に検査液を流すように形成される。被検者200の腋の下周辺とは、具体的には例えば図3に即していえば、前方向に対する角度として左右それぞれに、例えば30°以上150°以下、好ましくは60°以上120°以下である。腋の下周辺は被検者200が支持台1に密着しておらず、流路215が潰れにくいため、検査液を流し易くできる。
【0034】
流路215は、左右対称に形成される。このようにすることで、例えば右側の乳房201の検査時には左側の流路215の上方に被検者200が横たわるため左側の流路215は潰れるが、右側の流路215を通じて検査液を流すことができる。左側の乳房201の検査時についても同様である。
【0035】
図示の例では、流路215は、円筒状の筒21の径方向に直線的に延在し、90°ずつ等間隔で左右対称に、全部で4つ形成される。
【0036】
検査機構2は、筒21の少なくとも一部を囲うように、流路215を通じて流出した検査液を受ける受部216を備える。上面視で流路215の位置と重なるように形成され、図示の例では、筒21の全周を囲うように環状に形成される。受部216は、例えば溝(濠)であり、受部216の下方はタンク(不図示)に接続される。これにより、流路215から流れ出た検査液をタンクに溜めることができる。また、受部216に検査液を流して支持台1への漏出を抑制でき、漏出による被検者200の不快感を抑制できる。更に、漏出による窓31(図4)の濡れを抑制でき、被検者200が表示装置32(図4)を視認できる。
【0037】
別の実施形態では、環状の受部216は、前側に向かって下る傾斜を有し、受部216のうち最も低い部分の下面には、タンクに接続される排水口(不図示)を備える。排水口は、メッシュ部材により覆われる。流路215を通じて受部216に流出した検査液は、傾斜に沿って流れ、最も低い部分の排水口を通じてタンクに流れる。受部216をこのように形成することで、受部216に異物を落とした場合に、異物を除去し易くできる。
【0038】
別の実施形態では、受部216の幅(円筒により構成された筒21の径方向長さ)は、人の指を入れやすい幅になっている。これにより、受部216の内部に例えば布を入れて受部216を掃除し易くできる。
【0039】
別の実施形態では、受部216は備えられなくてもよい。この場合、流路215を通じて流れ出た検査液は、例えば、タオル等で拭き取ることで、被検者200の不快感を低減できる。
【0040】
図3に戻って、胸部検査装置100は、開口22の下方に、カメラ25及び光源26を備える。カメラ25及び光源26の位置について、図4を参照しながら説明する。
【0041】
図4は、図1のA-A線断面図である。筒21は有底であり、例えば無色透明の樹脂製の底板234を備える。筒21に注入された検査液は、底板234の上方に溜まる。胸部検査装置100は底板234の下方に空間27を備える。空間27には、底板234及び検査液を介して乳房201(図2)を撮像するカメラ25と、撮像時に乳房201に光を照射する光源26とが備えられる。
【0042】
カメラ25は、底板234及び検査液による視野角の変化のため、変化する視野角を考慮して乳房201を撮像する。光源26は、カメラ25により撮像感度を向上させる光を乳房201に照射し、例えば、可視光、赤外光等を照射する。カメラ25が例えば明所で撮像可能な場合、光源26は例えば可視光を照射する。なお、詳細は後記するが、乳房201の開口22への挿入後、超音波検査前に、乳房201及び乳頭202(何れも図2)の位置合わせが行われる。位置合わせにおいて、カメラ25により撮像された映像又は画像は左右反転され、左右反転後の映像又は画像が表示装置32に表示される。
【0043】
胸部検査装置100は、上面視で被検者200(図6)の頭部203(図6)の位置に、被検者200が視認可能な表示装置32を備える。表示装置32を備えることで、伏臥位の被検者に対して視覚を通じて情報を伝達できる。表示装置32は例えば液晶ディスプレイである。胸部検査装置100は、例えば無色透明な樹脂製の窓31を備え、少なくとも窓31と表示装置32との間に空間33が形成される。空間33には例えば空気が存在する。被検者は、窓31及び空間33を介して表示装置32を視認するため、頭部203から表示装置32までの間隔を広くでき、見易さを向上できる。
【0044】
図5は、本実施形態の胸部検査装置100の上面図である。また、図6は、本実施形態の胸部検査装置100の側面図である。検査時、窓31の上には、クッション等の柔らかい材料で構成された円環状の顔枕61が置かれる。顔枕61は、被検者200の頭部203(図6)の位置に応じて、適宜上下左右方向に移動できる。顔枕61の高さは、窓31の上に置いたときに、筒21の上端面213(図6)とほぼ同じ高さである。検査時、被検者200は、検査する乳房201に対応する位置合わせガイド15に沿って伏臥位になるとともに、頭部203を顔枕61に載せることで窓31を通じて表示装置32を視認する。
【0045】
図4に戻って、窓31及び表示装置32の形状は、何れも、上下方向長さより左右方向長さが長い矩形状に構成される。窓31は、表示装置32の大きさよりも大きく構成され、これにより、左右それぞれの乳房201を開口22に挿入しても、被検者200は窓31を介して表示装置32を視認できる。
【0046】
胸部検査装置100は、検査機構2からみて表示装置32とは反対側に、胸部検査装置100の駆動制御を行う制御装置50を備える。制御装置50は、第1面12の下方に形成された空間41に配置され、電源装置(不図示)に接続される。制御装置50について、図7を参照しながら説明する。
【0047】
図7は、本実施形態の胸部検査装置100のブロック図である。制御装置50は、胸部検査装置100の運転を制御する。制御装置50には、例えばボタン、キーボード等を備える入力装置70が接続され、制御装置50は、オペレータ(不図示。例えば検査技師)による入力装置70への入力内容に応じ、胸部検査装置100を駆動する。例えば、オペレータがボタン(不図示)の押下により検査開始を入力すると、制御装置50は、予め記憶された所定のプログラムに沿って、筒21(図2)への検査液の注入、超音波送受信機構23の上下方向への駆動及び超音波の送受信、表示装置32への所定画面の表示等を行う。
【0048】
制御装置50は、何れも図示はしないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成される。制御装置50は、ROMに格納されている所定の制御プログラムがRAMに展開され、CPUによって実行されることにより具現化される。
【0049】
制御装置50は、検査機構2による乳房201の検査を行う検査部51と、第1表示部52と、第2表示部53と、第3表示部54とを備える。検査部51は、入力装置70への検査開始の入力により、検査機構2を制御して乳房201(図2)を検査する。
【0050】
第1表示部52は、検査部51からの指示により、表示装置32に、伏臥位の被検者200(図6)の乳房201又は乳頭202(何れも図2)の少なくとも一方の位置を案内する第1画面521を表示する。第1表示部52を備えることで、伏臥位になった被検者200が筒21の内部で乳房201又は乳頭202の位置を検査位置に合わせ易くできる。
【0051】
図8は、第1画面521の模式図である。第1画面521は、右側に、乳房201及び乳頭202(何れも図2)の位置を案内する案内部522を備える。案内部522は円形状であり、上下左右方向にそれぞれ延在する基準線523と、基準線523の交差部分に中心円524とを備える。被検者200は、第1画面521を自分で確認しながら中心円524の内部に自身の乳頭202が入るように身体を移動する。これにより、被検者200が自ら乳房201及び乳頭202の位置合わせを直感的かつ速やかに行うことができる。
【0052】
第1表示部52(図7)は、カメラ25(図4)の映像又は画像に基づき、乳頭202の位置を中心円524に誘導するように矢印525を表示する。図示の例では、乳頭202(図8では不図示)の位置が中心円524の右側に存在するため、第1表示部52は左向きの矢印525を表示する。被検者200によっては検査中緊張することがあり、中心円524への乳頭202の位置合わせに手間取る可能性がある。そこで、乳頭202の移動方向を示す矢印525を表示することで、矢印525に沿って乳頭202を移動させればよく、直感的な行動を行えばよいため、被検者200の負担を軽減できる。
【0053】
第1表示部52は、上記のように、カメラ25により撮像された映像又は画像を反転して、表示装置32(図7)に表示する。このため、被検者200は、鏡を視認しているときと同様の動きで、乳頭202を移動できる。これにより、被検者200は第1画面521の指示に沿って直感的な行動を行えばよいため、被検者200の負担を軽減できる。
【0054】
別の実施形態では、胸部検査装置100は、左右それぞれに配置されたスピーカ(不図示)と、音声発生部(不図示)を備える制御装置50(図7)とを備える。スピーカは、例えば、被検者200にのみ聞こえるように、指向性を有する音を発する。第1表示部52による矢印525の表示とともに、又は、この表示に代えて、音声発生部は、乳頭202の移動方向に対応する側のスピーカから、誘導を促す音声を発生させる。左方向への移動を促す図示の例では、音声発生部は、左側のスピーカから例えば「左側に移動してください」等の音声を発生させる。このようにすることで、例えば、検査のために眼鏡を外し、第1画面521を視認できない被検者200においても、位置合わせを容易に行うことができる。
【0055】
別の実施形態では、胸部検査装置100は、嗅覚又は触覚の少なくとも一方の感覚により、被検者200の緊張を緩和するように構成される。例えば嗅覚であれば、胸部検査装置100は、例えばラベンダーの香り等の緊張を緩和させる匂いを発生させる装置(不図示)を備える。例えば触覚であれば、胸部検査装置100は、被検者200の手が届く範囲に例えば柔らかい部材(不図示)を備え、被検者200がその柔らかい部材を検査中に触り続けることで、緊張を緩和できる。
また、更に別の実施形態では、被検者200が胸部検査装置100に横たわる際に衛生面での不快感を感じ難いように、例えば、支持台1の被検者200が接する箇所に抗菌処理が施されたり、当該箇所が消臭効果の高い部材で構成される。不図示の空気清浄機又は除菌脱臭装置(双方でもよい)等が胸部検査装置100の近傍に備えられてもよい。
【0056】
図7に戻って、第2表示部53は、検査部51からの指示により、表示装置32に、検査中の被検者200に対して検査中の緊張を緩和する画面532(図9)、又は、検査の残時間を示す画面533(図9)の少なくとも一方を含む第2画面531(図9)を表示する。第2表示部53を備えることで、被検者200が検査中に感じる不安を緩和したり、検査終了までの残時間を把握したりでき、検査による被検者200への負担を軽減できる。
【0057】
図9は、第2画面531の模式図である。図示の例では、第2画面531は、画面532及び画面533を含む。画面532は、例えば、左右に僅かに異なる2枚の絵を含む。これにより、検査中の被検者200が2枚の絵同士の間違え探しを行うことができ、検査以外のことに集中させることで、被検者200の緊張を緩和できる。また、被検者200が検査以外のことに集中することで、被検者200が乳房201を動かすことを抑制でき、検査精度を向上できる。画面532は、例えば他にも、動物の映像、風景等を含むことができる。
【0058】
画面533は、第2画面531の中央付近に、検査の残り時間を含む。これにより、最も被検者200の目に留まり易い位置に検査の残り時間を表示でき、被検者200の負担を軽減できる。第2画面531は、更に、検査の進捗をイラストによって示す画面534を含む。超音波検査は、上記のように、超音波送受信機構23(図2)が上下方向に移動することで行われる。そこで、乳房201のうちの検査済みの部位及び未検査の部位をイラストで描写することで、被検者200が直感的に検査の進捗を把握できる。
【0059】
図7に戻って、第3表示部54は、検査部51からの指示により、表示装置32に、検査終了時にその旨を被検者200に知らせる第3画面541(図10)を表示するものでる。第3表示部54を備えることで、被検者200が検査終了を把握できる。
【0060】
図10は、第3画面541の模式図である。第3画面541は、検査終了を知らせる文言542の他、更に、検査前に外した腕時計、眼鏡、アクセサリ等を忘れずに持ち帰るべきの注意喚起を行う画面543を含む。これにより、置き忘れを抑制できる。
【0061】
以上の胸部検査装置100によれば、上面10から突出した筒21の内部に乳房201を挿入するため、筒21の奥に乳房201を挿入し易くできる。これにより、乳房201の高さ方向で広い範囲を検査できる。
【0062】
図11は、本実施形態の胸部検査方法を示すフローチャートである。図11に示すフローは、胸部検査装置100(図1)によって実行できる。
【0063】
被検者200(図6)は、上面10に載置されたクッション11(何れも図1)上で伏臥位になり、乳房201を開口22(何れも図2)に挿入する(ステップS1)。これにより、被検者200の頭部203(図6)は窓31(図5)の位置に配置され、被検者200は、表示装置32(図4)を視認する。胸部検査装置100のオペレータは、被検者200に対し、痛みの有無を確認する(ステップS2)。痛みがあれば、被検者200にいったん立ってもらい、オペレータは、例えばクッション11を厚いものに交換し、上面10に対する筒21の上端面213の相対的高さを低くする。
【0064】
相対的高さの調整後、被検者200は、再度、乳房201を開口22に挿入する。痛みが無い、又は我慢できる程度の痛みであることを確認後、オペレータが入力装置70(図7)を操作することで、第1表示部52(図7)が第1画面521(図8)を表示装置32に表示する(ステップS3)。被検者200は、第1画面521を確認しながら、乳房201及び乳頭202を自ら位置合わせする。位置合わせ完了後、オペレータが入力装置70を操作して、筒21に開口22の高さまで検査液を注入する(ステップS4)。注入完了後、検査機構2(図7)による乳房201の超音波検査が開始する(ステップS5)。
【0065】
検査機構2による検査中、第2表示部53(図7)は第2画面531(図9)を表示装置32に表示する(ステップS6)。これにより、第2画面531を被検者200に視認させて、検査による被検者200の負担を軽減できる。検査機構2による乳房201の全域における超音波送受信完了後、第3表示部54(図7)は第3画面541(図10)を表示装置32に表示し、検査が終了する(ステップS7)。これにより、被検者200は検査終了を把握できる。
【符号の説明】
【0066】
1 支持台
10 上面
100 胸部検査装置
11 クッション
111 上面
12 第1面
13 第2面
14 蹴り込み部カバー
15 位置合わせガイド
16 サイドカバー
17 スロープ
2 検査機構
200 被検者
201 乳房
202 乳頭
203 頭部
21 筒
211 壁
212 中空部
213 上端面
214 クッション
215 流路
22 開口
23 超音波送受信機構
231 支持体
232 送受信プローブ
234 底板
24 アクチュエータ
25 カメラ
26 光源
27 空間
31 窓
314 上端面
32 表示装置
33 空間
41 空間
50 制御装置
51 検査部
52 第1表示部
521 第1画面
522 案内部
523 基準線
524 中心円
525 矢印
53 第2表示部
531 第2画面
532,533,534 画面
54 第3表示部
541 第3画面
542 文言
543 画面
61 顔枕
70 入力装置
L 高さ
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11