(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055209
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】気相成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220331BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20220331BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220331BHJP
C30B 25/12 20060101ALI20220331BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/24
C23C16/455
C30B25/12
C30B29/06 504L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162664
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】503424196
【氏名又は名称】エピクルー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】岡部 晃
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BA04
4G077DA01
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4K030AA06
4K030BA29
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4K030JA03
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4K030LA15
5F045AA04
5F045AA06
5F045AB02
5F045AC01
5F045AC03
5F045AC05
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5F045EM06
5F045EM10
5F045EN04
5F045GB05
5F045HA06
(57)【要約】
【課題】 サセプタ及び予熱リングと反応容器の天板下面との空間が狭小化した構成を採用しつつも、サセプタへ基板を着脱する際の基板搬送部材の移動スペースを十分に確保できる気相成長装置を提供する。
【解決手段】 プロセスチャンバには、サセプタを第一位置と第二位置との間で昇降させるサセプタ昇降機構を設ける。サセプタが第一位置に位置する状態では、サセプタの上面が予熱リングの下面よりも上方に位置し、かつ、反応容器本体の天井板下面との間に、予め定められた高さ方向寸法を有する原料ガス流通空間が確保される。サセプタが第二位置に位置する状態では、サセプタの上面が予熱リングの下面よりも下方に位置し、かつ、サセプタの上面と予熱リングの下面との間に、原料ガス流通空間よりも高さ方向寸法が大きい基板着脱空間が確保される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板の主表面に半導体単結晶薄膜を気相成長させる気相成長装置であって、
水平方向における第一端部側にガス導入口が形成され、同じく第二端部側にガス排出口が形成された反応容器本体を有し、該反応容器本体の内部空間にて回転駆動される円盤状のサセプタ上に前記単結晶基板が略水平に回転保持されるようになっており、前記ガス導入口から前記反応容器本体内に導入される半導体単結晶薄膜形成のための原料ガスが、前記単結晶基板の前記主表面に沿って流れた後、前記ガス排出口から排出されるように構成されるとともに、前記サセプタを取り囲むように予熱リングが配置され、さらに、
前記サセプタの上面が前記予熱リングの下面よりも上方に位置し、かつ、前記サセプタの上面と前記反応容器本体の天井板下面との間に、予め定められた高さ方向寸法を有する原料ガス流通空間を形成する第一位置と、前記サセプタの上面が前記予熱リングの下面よりも下方に位置し、かつ、前記サセプタの上面と前記予熱リングの下面との間に、前記原料ガス流通空間よりも高さ方向寸法が大きい基板着脱空間を形成する第二位置との間で、前記サセプタを昇降させるサセプタ昇降機構と、
前記単結晶基板が水平方向に保持された形で着脱される基板保持部が前端側に設けられた基板搬送部材と、前記第二位置に位置した状態の前記サセプタに対し、前記サセプタの直上に前記基板保持部が位置する基板着脱位置と、前記反応容器本体外に形成される準備室内に前記基板保持部が位置する準備位置との間で前記基板搬送部材を水平方向に往復動させる基板搬送部材駆動部と、
を備えたことを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記第一位置は、前記原料ガス流通空間の高さ方向寸法が5mm以上15mm以下となるように定められている請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記第一位置が、前記サセプタ上の前記単結晶基板の主表面と前記予熱リングの上面とが一致するように定められている請求項1又は請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記反応容器本体は前記準備室が設けられている側が前記第一端部となり、前記サセプタの回転軸線に関して前記準備室が設けられているのと反対側が第二端部となるように前記原料ガスの流通方向が定められるとともに、前記反応容器本体の内部空間にて、前記準備室との間を開閉可能に仕切る準備室シャッタと、前記予熱リングとの間に位置する部分がガス通路とされ、
前記ガス通路には、板面前端が前記予熱リングの側面に対向するように高さ方向位置が定められた仕切り板が水平に配置され、前記ガス通路の前記仕切り板よりも上側の空間が前記原料ガス流通空間と連通する上側通路空間を、前記ガス通路の前記仕切り板よりも下側の空間が前記予熱リング下方の機器配置空間と連通する下側通路空間をなす請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記仕切り板の上面と前記予熱リングの上面とが一致するように定められている請求項4に記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記サセプタは、該サセプタの下面に上端が結合される回転軸部材を介して回転駆動されるとともに、前記サセプタ昇降機構は前記サセプタを前記回転軸部材とともに昇降させるものである請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項7】
前記サセプタ上の前記単結晶基板の下面外周縁部を下側から突き上げる形で前記単結晶基板をリフトアップさせるリフトピンが、下端側を前記サセプタから下向きに突出させる形で前記サセプタの周方向に複数設けられ、さらに、前記反応容器本体内にて前記予熱リングの下方には、複数の前記リフトピンに対応させる形で複数設けられ、各々対応する前記リフトピンを下方から上向きに付勢するためのリフトピン付勢部が先端側に形成されたリフトピン駆動アームと、前記回転軸部材の回転駆動を許容しつつ、前記回転軸部材の外側に同軸的かつ前記回転軸部材の軸線に沿って昇降可能に配置され、前記リフトピン駆動アームの基端側が結合される昇降スリーブとを有した基板リフト部が設けられている請求項6記載の気相成長装置。
【請求項8】
水平方向における第一端部側にガス導入口が形成され、同じく第二端部側にガス排出口が形成された反応容器本体を有し、該反応容器本体の内部空間にて回転駆動される円盤状のサセプタ上に単結晶基板が略水平に回転保持されるようになっており、前記ガス導入口から前記反応容器本体内に導入される半導体単結晶薄膜形成のための原料ガスが、前記単結晶基板の主表面に沿って流れた後、前記ガス排出口から排出されるように構成されるとともに、前記サセプタを取り囲むように予熱リングが配置され、さらに、前記サセプタの上面が前記予熱リングの下面よりも上方に位置し、かつ、前記サセプタの上面と前記反応容器本体の天井板下面との間に、予め定められた高さ方向寸法を有する原料ガス流通空間を形成する第一位置と、前記サセプタの上面が前記予熱リングの下面よりも下方に位置し、かつ、前記サセプタの上面と前記予熱リングの下面との間に、前記原料ガス流通空間よりも高さ方向寸法が大きい基板着脱空間を形成する第二位置との間で、前記サセプタを昇降させるサセプタ昇降機構と、前記単結晶基板が水平方向に保持された形で着脱される基板保持部が前端側に設けられた基板搬送部材と、前記第二位置に位置した状態の前記サセプタに対し、前記サセプタの直上に前記基板保持部が位置する基板着脱位置と、前記反応容器本体外に形成される準備室内に前記基板保持部が位置する準備位置との間で前記基板搬送部材を水平方向に往復動させる基板搬送部材駆動部と、を備えた気相成長装置を用い、
前記反応容器内にて前記サセプタを前記第二位置に位置させた状態で前記単結晶基板を前記サセプタ上に配置し、次いで前記単結晶基板が配置された前記サセプタを前記第一位置へ上昇させ、該反応容器内に前記原料ガスを流通させて前記単結晶基板上に前記半導体単結晶薄膜を気相エピタキシャル成長させることによりエピタキシャルウェーハを得ることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶基板の主表面に半導体単結晶薄膜を気相成長させるための気相成長装置と、それを用いて実現されるエピタキシャルウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単結晶基板上に半導体単結晶薄膜を形成したエピタキシャルウェーハ、例えばシリコン単結晶基板(以下、単に「基板」と略称する)の表面に、気相成長法によりシリコン単結晶薄膜(以下、単に「薄膜」と略称する)を形成したシリコンエピタキシャルウェーハは、バイポーラICやMOS-IC等の電子デバイスに広く使用されている。近年、例えば直径が200mmないしそれ以上のエピタキシャルウェーハの製造においては、複数枚のウェーハをバッチ処理する方法に代えて、枚葉式気相成長装置が主流になりつつある。これは、反応容器内に1枚の基板を水平に回転保持し、反応容器の一端から他端へ原料ガスを略水平かつ一方向に供給しながら薄膜を気相成長させるものである。また、枚葉式気相成長装置において基板上に形成される半導体単結晶層の膜厚分布は、基板主表面内の温度分布の影響を大きく受けることが知られており、特に、温度低下を起こしやすい基板外周縁部は、半導体単結晶層の膜厚が大きい側にばらつきやすい。これを防止するために枚葉式気相成長装置においては、基板外周縁部の均熱を図るために、サセプタの周囲に予熱リングが設けることが一般的に行われている。
【0003】
一般的なシリコンエピタキシャルウェーハの製造に際して基板の加熱には、赤外線放射加熱、高周波誘導加熱あるいは抵抗加熱などの方式が用いられ、シリコン基板とサセプタは昇温するが反応容器の温度は低く保たれる、いわゆる、コールドウォールの環境を形成するようにしている。
【0004】
枚葉式気相成長装置においては通常、ガス供給管を介して反応容器の一端部に形成されたガス導入口から原料ガスが供給され、基板主表面に沿って原料ガスが流れた後、容器他端側の排出口から排出される構造となっている。このような構造の装置によりエピタキシャルウェーハを製造する場合、基板主表面に沿った原料ガスの流速を増大させることが、シリコン単結晶薄膜の成長速度を増大させる上で有効であることが知られている。例えば、非特許文献1には、シリコンエピタキシャルウェーハを製造する際に、サセプタ回転速度の上昇により、基板主表面と原料ガスとの相対速度を大きくすると、基板上に堆積するシリコン単結晶層の成長速度を増大できる旨開示されている。
【0005】
非特許文献1に開示された実験では、反応容器に供給する原料ガスの濃度及び流量は一定に設定されており、その状況下でサセプタ回転速度を上昇させた場合に、シリコン単結晶層の成長速度が増加する結果が示されている。また、非特許文献2には、上記のコールドウォール環境下においては、シリコン単結晶層を成長させる際の気相温度が上昇すると、原料ガス成分の輸送速度が律速する領域(すなわち、基板主表面上の拡散層)において、単結晶層の成長速度が低下することが熱力学的に示されている。
【0006】
すなわち、基板主表面のガス流速が増加すれば、基板主表面からの熱移動が促進され基板主表面の温度が下がるとともに、ガス流速増大により基板主表面の拡散層厚さが減少し、拡散層中の原料ガス成分の濃度勾配が増加する。これらの要因により、原料ガスからシリコン単結晶が生成される化学反応の効率が高められ、シリコン単結晶層の成長速度が増加すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6068255号公報
【特許文献2】特開2011-165948号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「450mmφシリコンエピタキシャル成長速度の数値計算」:第75回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集(2014年秋 北海道大学)19a-A19-1
【非特許文献2】「Siエピタキシャル薄膜作製プロセスのシミュレーション」:Journal of the Vacuum Society of Japan, Vol.49 (2006), pp.525-529
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の考察から、枚葉式気相成長装置において、基板主表面の原料ガスの流速を増加させ、半導体単結晶層の成長速度を高めるには、原料ガス流通路となる基板主表面と反応容器の天井板下面との間の空間高さを縮小した構造を採用することが有効と考えられる。具体的には、半導体単結晶の成長工程において、基板を保持するサセプタの位置を高さ方向にて反応容器の天板下面に対し、より接近させた構造を採用することにより、上記の空間高さを縮小できる。
【0010】
ここで、枚葉式気相成長装置においてサセプタに基板を装着する工程は、サセプタ及び予熱リングと反応容器の天板下面との空間(半導体単結晶層の成長時において原料ガス流通空間となる)と、反応容器本体外に形成される準備室との間で、基板搬送部材を出し入れすることにより行っている。しかしながら、サセプタと反応容器の天板下面との距離が縮小した場合、基板搬送部材を出し入れするスペースの確保が困難になる問題がある。
【0011】
本発明の課題は、サセプタ及び予熱リングと反応容器の天板下面との空間が狭小化した構成を採用しつつも、サセプタへ基板を着脱する際の基板搬送部材の移動スペースを十分に確保できる気相成長装置と、それを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の気相成長装置は、単結晶基板の主表面に半導体単結晶薄膜を気相成長させるためのものであり、水平方向における第一端部側にガス導入口が形成され、同じく第二端部側にガス排出口が形成された反応容器本体を有し、半導体単結晶薄膜形成のための原料ガスがガス導入口から反応容器本体内に導入され、該反応容器本体の内部空間にて略水平に回転保持される単結晶基板の主表面に沿う方向に沿って原料ガスが流れた後、ガス排出口から排出されるように構成されるとともに、サセプタを取り囲むように予熱リングが配置される。そして、上記の課題を解決するために、さらに、サセプタの上面が予熱リングの下面よりも上方に位置し、かつ、サセプタの上面と反応容器本体の天井板下面との間に、予め定められた高さ方向寸法を有する原料ガス流通空間を形成する第一位置と、サセプタの上面が予熱リングの下面よりも下方に位置し、かつ、サセプタの上面と予熱リングの下面との間に、原料ガス流通空間よりも高さ方向寸法が大きい基板着脱空間を形成する第二位置との間で、サセプタを昇降させるサセプタ昇降機構と、単結晶基板が水平方向に保持された形で着脱される基板保持部が前端側に設けられた基板搬送部材と、第二位置に位置した状態のサセプタに対し、サセプタの直上に基板保持部が位置する基板着脱位置と、反応容器本体外に形成される準備室内に基板保持部が位置する準備位置との間で基板搬送部材を水平方向に往復動させる基板搬送部材駆動部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、上記本発明の気相成長装置を用いるとともに、反応容器内にてサセプタを第二位置に位置させた状態で単結晶基板をサセプタ上に配置し、次いで単結晶基板が配置されたサセプタを第一位置へ上昇させ、該反応容器内に原料ガスを流通させて単結晶基板上に半導体単結晶薄膜を気相エピタキシャル成長させることによりエピタキシャルウェーハを得ることを特徴とする。
【0014】
本発明の気相成長装置において、上記第一位置は、原料ガス流通空間の高さ方向寸法が5mm以上15mm以下となるように定められていることが望ましい。また、該第一位置は、サセプタ上の単結晶基板の主表面と予熱リングの上面とが一致するように定められていることが望ましい。
【0015】
本発明の気相成長装置においては、反応容器本体は準備室が設けられている側が第一端部となり、サセプタの回転軸線に関して準備室が設けられているのと反対側が第二端部となるように原料ガスの流通方向を定めることができる。この場合、反応容器本体の内部空間にて、準備室との間を開閉可能に仕切る準備室シャッタと、予熱リングとの間に位置する部分がガス通路とされる。この場合、ガス通路には、板面前端が予熱リングの側面に対向するように高さ方向位置が定められた仕切り板を水平に配置する形で設けることができる。ガス通路の仕切り板よりも上側の空間は原料ガス流通空間と連通する上側通路空間36Aをなし、ガス通路の仕切り板よりも下側の空間は予熱リング下方の機器配置空間と連通する下側通路空間をなす。該仕切り板の上面も予熱リングの上面と一致するように位置を定めておくのがよい。
【0016】
サセプタは、例えば、該サセプタの下面に上端が結合される回転軸部材を介して回転駆動されるものである。この場合、サセプタ昇降機構は、サセプタを回転軸部材とともに昇降させるように構成される。
【0017】
また、本発明の気相成長装置においては、サセプタ上の単結晶基板の下面外周縁部を下側から突き上げる形で単結晶基板をリフトアップさせるリフトピンを、下端側をサセプタから下向きに突出させる形でサセプタの周方向に複数設けることができる。この場合、反応容器本体内にて予熱リングの下方には、複数のリフトピンに対応させる形で複数設けられ、各々対応するリフトピンを下方から上向きに付勢するためのリフトピン付勢部が先端側に形成されたリフトピン駆動アームと、回転軸部材の回転駆動を許容しつつ、回転軸部材の外側に同軸的かつ回転軸部材の軸線に沿って昇降可能に配置され、リフトピン駆動アームの基端側が結合される昇降スリーブとを有した基板リフト部を設けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の気相成長装置は、サセプタ昇降機構によりサセプタを昇降させることで、反応容器本体内におけるサセプタの高さ方向保持位置を変更可能に構成した。サセプタ位置の変更により、サセプタに装着された単結晶基板の主表面と、反応容器本体の上部壁部下面との間に形成される原料ガス流通空間の高さ方向寸法を段階的又は無段階に変更設定でき、単結晶基板上に半導体単結晶層を成長する際の原料ガスの流速、ひいては半導体単結晶層の調整が可能となる。
【0019】
そして、本発明においては、サセプタの上面が予熱リングの下面よりも上方に位置し、かつ、反応容器本体の天井板下面との間に、予め定められた高さ方向寸法を有する原料ガス流通空間を形成する第一位置と、サセプタの上面が予熱リングの下面よりも下方に位置し、かつ、サセプタの上面と予熱リングの下面との間に原料ガス流通空間よりも高さ方向寸法が大きい基板着脱空間を形成する第二位置との間で、サセプタを昇降させるサセプタ昇降機構を設け、第二位置に位置した状態のサセプタに対し、基板搬送部材により単結晶基板を着脱するようにした。これにより、サセプタ及び予熱リングと反応容器の天板下面との空間が狭小化した構成を採用しつつも、サセプタへ基板を着脱する際の基板搬送部材の移動スペースを、予熱リングの下方に十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の気相成長装置の全体構成の一例を示す模式図。
【
図4】
図1の気相成長装置におけるサセプタの昇降部分の一例を示す斜視図。
【
図5】
図4にてリフトピンの昇降部分を透視可能に示す斜視図。
【
図6】
図1の気相成長装置の制御システムのブロック図。
【
図7】
図6の制御システムにおける、制御プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図8】
図1の気相成長装置の動作を説明する第一の図
【
図9】
図1の気相成長装置の動作を説明する第二の図
【
図10】
図1の気相成長装置の動作を説明する第三の図
【
図11】
図1の気相成長装置の動作を説明する第四の図
【
図12】
図1の気相成長装置の動作を説明する第五の図
【
図13】
図1の気相成長装置の動作を説明する第六の図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る気相成長装置の一例を模式的に示す側面断面図である。気相成長装置100は、
図3に示すように、シリコン単結晶基板W(以下、単に「基板W」ともいう)の主表面(上面)PPにシリコン単結晶薄膜ELを気相成長させ、シリコンエピタキシャルウェーハEWを製造するためのものである。
図1に示すように、気相成長装置100は、基板W上にシリコン単結晶薄膜ELを気相成長させるためのプロセスチャンバ1と、該プロセスチャンバ1の内部に基板Wを搬送するための準備チャンバ(内部空間が準備室を形成する)103と、準備チャンバ103と連結されたロードロックチャンバ104とを備えている。準備チャンバ103は、反応容器本体2とロードロックチャンバ104との間に配置される。
【0022】
準備チャンバ103の内部には、ロードロックチャンバ104とプロセスチャンバ1との間で基板Wを相互に搬送するための搬送ロボット107が設けられている。搬送ロボット107は、リンク機構をなす複数のロボットアーム105a,105b,105cを備えている。ロボットアーム105a,105b,105cは個々の回転軸線A1,A2,A3の周りに互いに回転可能に結合され、ロボットアーム105cがモータ107mにより旋回駆動されることで、基板搬送部材をなす末端のロボットアーム105a(以下、「基板搬送部材105a」ともいう)が水平方向に進退駆動される。基板搬送部材105aの先端には基板保持部105Hが設けられている。基板保持部105Hの上面に基板を載置し、その状態で基板搬送部材105aが進退することにより、基板を搬送することができる。すなわち、搬送ロボット107は、後述の第二位置(
図2: PS)に位置した状態のサセプタ9に対し、サセプタ9の直上に基板保持部105Hが位置する基板着脱位置と、反応容器本体2外に形成される準備室内に基板保持部105Hが位置する準備位置との間で基板搬送部材105aを水平方向に往復動させる基板搬送部材駆動部としての役割を果たす。
【0023】
準備チャンバ103の反応容器本体2と連なる部分には、反応容器本体2と準備チャンバ103との気密を確保するための準備室シャッタ108(L型ゲートバルブ)が開閉可能に配置されている。また、ロードロックチャンバ104は複数の基板Wを集積状態でストックするためのものである。
【0024】
図2はプロセスチャンバ1の詳細構造を示すものである。プロセスチャンバ1は、水平方向における第一端部側にガス導入口22が形成され、同じく第二端部側にガス排出口21が形成された反応容器本体2を有する。薄膜形成のための原料ガスGは、ガス導入口22から反応容器本体2内に導入され、該反応容器本体2の内部空間5にて略水平に回転保持される基板Wの主表面に沿って流れた後、ガス排出口21から排出されるように構成されている。反応容器本体2は、全体が内部の他の構成部材とともに石英及びステンレス鋼等の金属材料により形成されている。
【0025】
図2において、反応容器本体2の内部空間5には、垂直な回転軸線Oの周りにモータ40により回転駆動される円盤状のサセプタ9が配置され、その上面に形成された浅い座ぐり9B(
図4参照)内に、
図3のシリコンエピタキシャルウェーハEWを製造するための基板Wが1枚のみ配置される。すなわち、該プロセスチャンバ1は水平枚葉型気相成長装置として構成されている。基板Wは、例えば直径が100mmあるいはそれ以上のものである。また、基板Wの配置領域に対応して反応容器本体2の上下には、
図1に示すように、基板加熱のための赤外線加熱ランプ11が所定間隔にて配置されている。また、
図2に示すように、反応容器本体2内には、サセプタ9を取り囲むように予熱リング32が配置されている。
【0026】
原料ガスGは、上記の基板W上にシリコン単結晶薄膜を気相成長させるためのものであり、SiHCl3、SiCl4、SiH2Cl2、SiH4、Si2H6等のシリコン化合物の中から選択される。原料ガスGには、ドーパンドガスとしてのB2H6あるいはPH3や、希釈ガスとしてのH2、N2、Ar等が適宜配合される。また、薄膜の気相成長処理に先立って基板前処理(例えば自然酸化膜や付着有機物の除去処理)を行う際には、HCl、HF、ClF3、NF3等から適宜選択された腐蝕性ガスを希釈ガスにて希釈した前処理用ガスを反応容器本体2内に供給する処理を行なうか、又は、H2雰囲気中で高温熱処理を施す。
【0027】
図2に示すように、サセプタ9は、該サセプタ9の下面に上端が結合される回転軸部材15を介して、モータ40により回転駆動される。回転軸部材15の先端はサセプタ9の下面中央領域に結合される一方、回転軸部材15の軸線方向中間位置には、複数のサセプタ支持アーム15Dの基端部が結合されている。各サセプタ支持アーム15Dは、先端側がサセプタ9の半径方向に水平に延び、各々先端部が結合ピン15Cによりサセプタ9の下面に結合されている。結合ピン15Cはサセプタ支持アーム15Dとサセプタ9の下面との間に微小な隙間(本実施形態では1mm程度)を形成するためのスペーサの役割を果たしている。回転軸部材15は、
図5に示すように、軸本体15Aと熱電対15Bとにより構成され、軸本体15Aの上端部外周面は先端側が径小となるテーパ面とされている。軸本体15Aの縮径する上端部は筒状のスリーブ15S内に相対回転不能に嵌合している(なお、
図5では、サセプタ支持アーム15D及び結合ピン15Cを省略して描いている)。
【0028】
プロセスチャンバ1には、サセプタ9を
図2に示す第一位置PPと第二位置PS(
図2において、各位置PP,PS及びPhは基材BP1の位置を表すが、以下の説明においてはサセプタ9の位置を表すものとして取り扱う)との間で昇降させるサセプタ昇降機構39が設けられている。サセプタ9が第一位置PPに位置する状態では、サセプタ9の上面が予熱リング32の下面よりも上方に位置し、かつ、サセプタ9の上面と反応容器本体2の天井板下面との間に、予め定められた高さ方向寸法を有する原料ガス流通空間5P(
図13参照)が確保される。上記の第一位置PPは、確保される原料ガス流通空間5Pの高さ方向寸法が、5mm以上15mm以下の比較的狭小な値となるように定められている(本実施形態では、約10mm)。
【0029】
他方、サセプタ9が第二位置PSに位置する状態では、サセプタ9の上面が予熱リング32の下面よりも下方に位置し、かつ、サセプタ9の上面と予熱リング32の下面との間に、原料ガス流通空間5Pよりも高さ方向寸法が大きい基板着脱空間5T(
図9~
図12参照)が確保される。
【0030】
サセプタ昇降機構39は、サセプタ9を回転軸部材15(及びモータ40)とともに昇降させるように構成され、本実施形態ではその昇降駆動部をエアシリンダ41(電動シリンダでもよい)にて構成している。エアシリンダ41のシリンダロッドの先端は、基材BP1を介して回転軸部材15及びモータ40を含むサセプタアセンブリに結合されている。
【0031】
なお、本実施形態では、サセプタ9の高さ方向位置を、第一位置PP、第二位置PS及びそれらの中間に位置する基準位置Pmの3つの間で切替できるように、エアシリンダ41を3ポジションシリンダにて構成している。また、サセプタ9の第一位置PPは、該サセプタ9上の基板Wの主表面が予熱リング32の上面と一致するように定めている。予熱リング32の上面を、サセプタ9上のシリコン単結晶基板Wの主表面と一致させることで、基板Wの主表面と予熱リング32との間に段差が生じなくなり、これを通過する際の原料ガス流れの乱れを効果的に抑制できる。
【0032】
図2において、反応容器本体2のガス導入口22側にはガス通路36が形成されている。ガス通路36内には、板面前端が予熱リング32の側面に対向するように高さ方向位置が定められた仕切り板34が水平に配置されている(仕切り板34の周縁部は、例えばガス通路36を形成する側壁部内面に固定することができる)。ガス通路36の仕切り板34よりも上側の空間が、原料ガス流通空間5P(
図13参照)と連通する上側通路空間36Aとされている。また、ガス通路36の仕切り板34よりも下側の空間は、予熱リング32下方の機器配置空間と連通する下側通路空間36Bとされている。上記の仕切り板34を設けることで、
図13に示すように、原料ガスGは、予熱リング32の周側面からその下側に回り込む渦流等に乱されることなく原料ガス流通空間5P内を基板Wの主表面に沿って流れることができ、得られるシリコン単結晶膜の膜厚をより均一なものとすることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、仕切り板34の上面は予熱リング32の上面と一致するように定められている。これにより、予熱リング32と仕切り板34の間に段差が生じなくなり、これを通過する際の原料ガス流れの乱れを効果的に抑制できる。
【0034】
次に、サセプタ9の外周縁部には複数のリフトピン13が設けられている。リフトピン13は基板Wの下面外周縁部を下側から突き上げる形で該基板Wをリフトアップさせるものであり、各々下端側をサセプタ9から下向きに突出させている。具体的には、
図4に示すように、サセプタ9の座ぐり9Bの底部外周縁部には、該底部を上下に貫く形でリフトピンの挿通孔14が周方向に複数貫通形成されている。
図5に示すように、リフトピン13の上端部は基端側よりも径大の頭部とされ、
図4の挿通孔14の上端部はリフトピン13の頭部に合わせて拡径された座ぐり部となっている。リフトピン13の頭部下面が挿通孔14の座ぐり部の底面に当たることで、サセプタ9からのリフトピンの脱落が阻止される。
【0035】
図2に示すように、予熱リング32の下方には基板リフト部20(フィンガーウェーハリフト)が設けられている。
図5に示すように、基板リフト部20は、昇降スリーブ12Bと、該昇降スリーブ12Bに基端側が結合される複数のリフトピン駆動アーム12Aとからなる。リフトピン駆動アーム12Aは各リフトピン13に対応する形で設けられ、リフトピン13を下方から上向きに付勢するためのリフトピン付勢部12Cが先端側に形成されている。本実施形態では、リフトピン駆動アーム12Aはサセプタ9の中心軸線回りに等角度間隔にて3つ配置され、各々昇降スリーブ12Bからサセプタ9の半径方向に水平に延びている。また、リフトピン駆動アーム12Aの各先端部をなすリフトピン付勢部12Cは、リフトピン駆動アーム12Aの基端側を含む部分よりも拡幅され、リフトピン13の下端面と下側に対向するリフトプレートとされている。また、昇降スリーブ12Bは円筒状であり、回転軸部材15の回転駆動を許容しつつ、回転軸部材15の外側に同軸的かつ回転軸部材15の軸線O1に沿って、複数のリフトピン駆動アーム12Aと一体的に昇降可能とされている。
【0036】
図2に示すように、基板リフト部20は上昇位置PP’と下降位置PS’との間で基板リフト部昇降機構12により昇降駆動される(
図2において、各位置PP’及びPS’は基材BP2の位置を表すが、以下の説明においては基板リフト部20の位置を表すものとして取り扱う)。本実施形態ではその昇降駆動部をエアシリンダ42(電動シリンダでもよい)にて構成している。エアシリンダ42のシリンダロッドの先端は、基材BP2を介して昇降スリーブ12Bに結合されている。
【0037】
回転軸部材15に沿って昇降スリーブ12Bがサセプタ9の下面に対し相対的に接近すると、リフトピン駆動アーム12Aのリフトピン付勢部12Cによりリフトピン13が上方に付勢される。これにより、サセプタ9上の基板Wはリフトピン13により下側から突き上げられてリフトアップされ、シリコン単結晶薄膜を形成後の基板Wを容易に回収することができる。
【0038】
以下、プロセスチャンバ1の制御形態の一例について説明する。
図6は、気相成長装置100の制御システムの電気的構成を示すブロック図である。該制御システムは制御用コンピュータ70を制御主体とする形で構成されている。制御用コンピュータ70はCPU71、制御プログラム72aを格納したROM72(プログラム記憶部)、CPU71が制御プログラム72aを実行する際のワークメモリとなるRAM73、制御情報の電気的な入出力を行なう入出力部74などを、内部バス75(データバス+アドレスバス)により相互に接続した構造をなす。
【0039】
図1に示すプロセスチャンバ1の各駆動要素は、制御用コンピュータ70に以下のようにして接続されている。赤外線加熱ランプ11は、ランプ制御回路11cを介して入出力部74に接続される。また、基板温度を検出するための熱電対(温度センサ)15Bは入出力部74に接続される。ガス流量調整機器52,54は、いずれも流量検出部及び内蔵バルブ(図示せず)を有し、入出力部74に接続されることで、制御用コンピュータ70からの指示を受け、各配管上の原料ガスを上記内蔵バルブにより連続可変に制御する。
【0040】
サセプタ9を駆動するモータ40はサーボ制御部40cを介して入出力部74に接続される。サーボ制御部40cは、モータ40の回転速度をモニタリングするとともに、制御用コンピュータ70からの回転速度指示値を参照してモータ40(ひいてはサセプタ9)の回転速度が一定に保たれるように駆動制御を行なう。
【0041】
また、サセプタ9を昇降駆動するエアシリンダ41はシリンダドライバ41cを介して、基板リフト部20を昇降駆動するエアシリンダ42はシリンダドライバ42cを介して、それぞれ入出力部74に接続される。さらに、搬送ロボット107を駆動するモータ107m(
図1)がサーボ制御部107cを介して入出力部74に接続される。サーボ制御部107cは、モータ107mの出力軸に取り付けられたパルスジェネレータ40p(回転センサ)からのパルス入力に基づき、基板搬送部材105aの位置を把握し、制御用コンピュータ70からの駆動指令情報を受け、その駆動制御を行なう。
【0042】
以下、
図7のフローチャートと
図8~
図13の動作説明図を参照し、制御プログラム72aにより制御される気相成長装置100の動作について説明する。
図7のS101では、制御プログラム72aの実行開始に伴い、エアシリンダ41,42(
図6)を作動させることにより、
図8に示す基準位置Phにサセプタ9を移動させ、基板リフト部20(フィンガーウェーハリフト:以下、
図7内では「FWL」と記載する)を上昇位置PP’に移動させる。サセプタ9の基準位置Phと基板リフト部20の上昇位置PP’は、サセプタ9の下面と基板リフト部20のリフトピン付勢部12Cとの距離が、サセプタ9の下面からのリフトピン13の突出長よりも短くなるように定められている。よって、リフトピン13は基板リフト部20により上方に付勢され、サセプタ9の上面から突出した状態となっている。また、この間、
図1にて、ロードロックチャンバ104から基板Wが準備チャンバ103内に移送され、基板搬送部材105aの基板保持部105Hにマウントされる。
【0043】
次に、
図7のS102では、エアシリンダ41,42(
図2)を作動させることにより、
図9に示すように、第二位置PSにサセプタ9を移動させ、基板リフト部20を下降位置PS’に移動させる。サセプタ9と基板リフト部20とは、サセプタ9の上面からリフトピン13を突出させた状態で一体的に下降し、リフトピン13と予熱リング32の下面との間には、基板搬送部材105aを受け入れるための隙間、すなわち基板着脱空間5Tが確保された状態となる。
【0044】
この状態で、
図7のS103ではエアシリンダ81(
図6)を駆動し、準備室シャッタ108(
図1)を開状態とする。そして、S104ではモータ107m(
図1)を駆動し、基板Wがマウントされた状態の基板搬送部材105aを前進させる。これにより、
図10に示すように、基板搬送部材105aの基板保持部105Hは、基板Wとともに基板着脱空間5T内に進入する。このとき、リフトピン13の上端と基板保持部105Hの下面との間、及び基板保持部105Hの上面と予熱リング21の下面との間には、それぞれ隙間が形成されている。本実施形態において、これらの隙間の大きさは、いずれも3.5mm程度に設定されている。
【0045】
続いて
図7のS105ではエアシリンダ41,42(
図2)を作動させ、
図11に示すように、サセプタ9を基準位置Phに、基板リフト部20を上昇位置PP’に復帰させる。サセプタ9と基板リフト部20とは、サセプタ9の上面からリフトピン13を突出させた状態で一体的に上昇する。上昇したリフトピン13は、基板保持部105Hから露出する基板Wの裏面に当接しつつ、該基板Wを基板保持部105Hの上方にリフトアップする。
【0046】
図7に戻り、S106ではモータ107m(
図1)を駆動し、
図12に示すように、基板Wが離脱した状態の基板搬送部材105aを後退させる。基板搬送部材105aの後退が完了すればS107に進み、エアシリンダ81(
図6)を駆動して、準備室シャッタ108(
図1)を閉状態とする。続いてS108に進んでエアシリンダ41(
図2)を作動させ、
図13に示すように、サセプタ9のみを第一位置PPに上昇させる。基板リフト部20の高さ方向位置が維持されリフトピン13は静止状態であることから、リフトピン13の上端に支持されている基板Wの裏面に対しサセプタ9の上面が相対的に接近し、その座ぐり9B(
図4)に基板Wがはまり込む。こうして、サセプタ9に基板Wが装着されるとともに、基板Wの主表面が予熱リング32の上面に位置合わせされた状態となる。このとき、原料ガス流通空間5Pの高さ方向寸法は、5mm以上15mm以下(本実施形態では、約10mm)の比較的狭小な値に確保される。
【0047】
次いで、S109では赤外線加熱ランプ11を作動させて内部空間5を設定温度に昇温する。S110では、サセプタ9の回転駆動を開始し、S111では予め定められた設定流量にて原料ガスの流通を開始する。これにより、基板W上にはシリコン単結晶層が成膜される。
【0048】
このとき、
図13に示すように、原料ガス流通空間5Pの高さ方向寸法が上記のように狭小な値となっていることから、基板W上におけるシリコン単結晶層の成長速度が高められ、生産効率の向上を図る上で好都合となる。また、サセプタ9が赤外線加熱ランプ11に接近するため、基板Wを目標温度まで加熱する際の昇温速度が高められ、加熱シーケンスの短縮を図ることができる。また、原料ガス流通空間5Pのガス充填速度が増加することも、基板Wの昇温速度向上に寄与する。原料ガス流通空間5Pの高さ方向寸法が15mmを超えると、シリコン単結晶層の成長速度を向上させる効果が不十分となる場合がある。他方、原料ガス流通空間5Pの高さ方向寸法が5mm未満では、原料ガス流通空間5Pに対する原料ガスの流通抵抗が過剰となり、原料ガスの流速を確保することが困難となる場合がある。
【0049】
なお、プロセスチャンバ1はコールドウォール型の気相成長装置として構成されているが、このようなコールドウォール型の気相成長装置を採用する場合、特許文献2には、原料ガスの流速を増大させることで、エピタキシャル成長中に、反応容器本体2を形成する石英ガラスの内壁への、反応生成物であるシリコン堆積物の蓄積を抑制できる可能性が示唆されている。本発明の構成に基づき、例えば
図13のように、原料ガス流通空間5Pの高さ方向寸法を縮小設定し原料ガスの流速を増大させることで、反応容器本体2の内面へのシリコン堆積物の蓄積もまた、効果的に抑制できる可能性がある。上記の効果は、例えばシリコンソースガスとしてSiH
2Cl
2(ジクロロシランS)を用い、高温(たとえば1150℃)かつ減圧(たとえば60Torr)でのエピタキシャル成長を実施する場合など、シリコン堆積物の蓄積が生じやすい条件が採用される場合に、特に顕著に発揮されると考えられる。
【0050】
図7に戻り、成膜が完了すればS112に進み、サセプタ9の回転を停止する。また、S113では、原料ガスの流通を停止する。S114では、エアシリンダ41,42(
図2)を作動させることにより基準位置Phにサセプタ9を移動させ、基板リフト部20を上昇位置PP’に移動させる。すると、
図12と同様の状態となり、リフトピン13が上昇し、成膜完了後の基板Wが基板保持部105Hの上方にリフトアップされる。
【0051】
そして、
図7のS115では、エアシリンダ81(
図6)を駆動し、準備室シャッタ108(
図1)を開状態とする。S116ではモータ107m(
図1)を駆動し、空の状態の基板搬送部材105aを前進させる(
図11と同様の状態)。S117では、エアシリンダ41,42(
図6)を作動させることにより、
図2の第二位置PSにサセプタ9を移動させ、基板リフト部20を下降位置PS’に移動させる。サセプタ9と基板リフト部20とは、サセプタ9の上面からリフトピン13を突出させた状態で一体的に下降する。すると、
図10と同様の状態となり、リフトピン13の上端に支持されていた成膜後の基板Wは、基板保持部105Hにより下降を規制されつつこれにセットされ、他方、リフトピン13は基板Wの下方に離脱する。
【0052】
そして、
図7のS118ではモータ107m(
図1)を駆動し、基板Wがセットされた状態の基板搬送部材105aを後退させる。これにより、成膜済みの基板Wが準備チャンバ103に回収される。S119ではエアシリンダ81(
図6)を駆動し、準備室シャッタ108(
図1)を閉状態とする。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記の実施形態ではプロセスチャンバ1として、CVD(Chemical Vapor Deposition)によりシリコンエピタキシャルウェーハを製造する枚葉式装置を例示したが、製造対象物はシリコンエピタキシャルウェーハに限らず、例えばサファイアやシリコンなどの単結晶基板上に化合物半導体単結晶層をMOVPE(Metal-Oxide Vapor Phase Epitaxy)によりエピタキシャル成長させる装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 プロセスチャンバ
2 反応容器本体
5 内部空間
5P 原料ガス流通空間
5T 基板着脱空間
7 排出管
9 サセプタ
9A スリーブ
9B 座ぐり
11 赤外線加熱ランプ
12 基板リフト部昇降機構
12A リフトピン駆動アーム
12B 昇降スリーブ
12C リフトピン付勢部
13 リフトピン
14 挿通孔
15 回転軸部材
15A 軸本体
15B 熱電対
15C 結合ピン
15D サセプタ支持アーム
20 基板リフト部
21 ガス排出口
22 ガス導入口
32 予熱リング
34 仕切り板
36 ガス通路
36A 上側通路空間
36B 下側通路空間
39 サセプタ昇降機構
40 モータ
41,42 エアシリンダ
100 気相成長装置
105a 基板搬送部材
105H 基板保持部
EL シリコン単結晶薄膜
EW シリコンエピタキシャルウェーハ
PP 第一位置
PS 第二位置
O 回転軸線
PP 主表面
W シリコン単結晶基板