(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055267
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】消毒用液体組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 59/12 20060101AFI20220331BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20220331BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20220331BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220331BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A01N59/12
A01N25/02
A01N31/02
A01P1/00
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020173593
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸田 聡美
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011AA04
4H011BA01
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB18
4H011BC09
4H011BC19
4H011DA13
4H011DA21
4H011DF04
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】
除菌用及び/又は除ウイルス用として実用的な効果を備えつつも、ヨードの安定性が高い液体組成物を提供すること。
【解決手段】
エタノールを60~89質量%、ポビドンヨードを0.5質量%未満、水を10質量%以上含有する、除菌用及び/又は除ウイルス用液体組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールを60~89質量%、
ポビドンヨードを0.5質量%未満、
水を10質量%以上、
含有する、除菌用及び/又は除ウイルス用液体組成物。
【請求項2】
エタノールを85~89質量%、
ポビドンヨードを0.2質量%以下、
含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
スプレー用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本開示は、消毒用液体組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
ヨードは殺菌力に優れ、かつ、人体に対する毒性が極めて低いために殺菌剤成分として広く用いられている。
しかし、ヨードは水溶液中では安定性に乏しく、長期間貯蔵するとヨードが分解してヨード濃度が減少するという現象が生じる。この現象はヨード濃度が低いほど顕著である。従って、従来の水溶液系のヨード系殺菌剤組成物では、ヨードの減少を抑制する為に、ヨードを0.5%以上の高濃度にて水溶液中に配合することにより、その安定性を維持しているのが通常である。
また、このような事情から、水を実質的に含まないヨード含有殺菌剤組成物の開発も行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、除菌用及び/又は除ウイルス用として実用的な効果を備えつつも、ヨードの安定性が高い液体組成物を提供すべく、検討を重ねた。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水、エタノール、及びポビドンヨードを特定量含有する液体組成物であれば、ヨードを安定に保持し得る可能性を見いだし、さらに改良を重ねた。
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
エタノールを60~89質量%、
ポビドンヨードを0.5質量%未満、
水を10質量%以上、
含有する、除菌用及び/又は除ウイルス用液体組成物。
項2.
エタノールを85~89質量%、
ポビドンヨードを0.2質量%以下、
含有する、請求項1に記載の組成物。
項3.
スプレー用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の効果】
水を含有しつつも、ヨードの経時安定性が高い液体組成物が提供される。当該液体組成物は、例えば、物品に適用することにより、その物品表面に存在し得る菌及び/又はウイルスの除去のために用いることができる。また例えば、ヒト及びそれ以外の哺乳動物の身体(例えば手、足、及びそれらの指等)に適用して除菌用及び/又は除ウイルス用として用いことができる。なお、このような用途も考慮すると、当該液体組成物は、例えばスプレー用(特にポンプスプレー用、トリガースプレー用)組成物として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【
図1】エタノール、ポビドンヨード、及び水を含有する液体組成物におけるヨード経時安定性を検討した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、液体組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
本開示に包含される液体組成物は、エタノールを60~89質量%、ポビドンヨードを0.5質量%未満、及び、水を10質量%以上含有する。以下、本開示に包含される当該液体組成物を「本開示の組成物」ということがある。
本開示の組成物におけるエタノール含有量は、上記の通り60~89質量%である。当該範囲の上限又は下限は例えば61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、又は88質量%であってもよい。例えば、当該範囲は65~88質量%であってもよい。
また、本開示の組成物におけるポビドンヨードの含有量は、上記の通り0.5質量%未満であり、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、又は0.1質量%以下であってもよい。下限は特に制限されないが、例えば0.01、0.02、又は0.05質量%以上が例示される。
また、本開示の組成物における水の含有量は、上記の通り10質量%以上であり、例えば10.5、11、11.5、又は12質量%以上であってもよい。
特に、本開示の組成物におけるエタノール含有量が85~89質量%である場合、水も含有されているにもかかわらず、ヨードの経時安定性が著しく高まる。特にこの場合は、例えば、40℃静置保管した場合、2ヶ月以降のヨードの減少がほぼ起こらなくなるという顕著な経時安定性が奏される。上記の通り、本開示の組成物には水が10質量%以上含まれるにもかかわらず、2ヶ月以降とはいえ、ヨードの経時減少がほぼ抑制されるというのは、予想外の効果ということができる。
本開示の組成物は、除菌用、及び/又は、除ウイルス用として特に有用である。除菌用として用いる場合、特に限定はされないが、除菌対象とする菌としては、例えば大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、カビ等が挙げられる。また、除ウイルス用として用いる場合、特に限定はされないが、除ウイルス対象とするウイルスとしては、例えばインフルエンザウイルス、コロナウイルス(特にヒトコロナウイルス)等が挙げられる。
本開示の組成物には、さらに多価アルコールを含有させてもよい。このような多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。また、本開示の組成物には、さらに香料を含有させてもよい。香料としては、例えばメントール(l-メントール)やdl-カンフルなどが挙げられる。
本開示の組成物は、公知の方法により調製することができる、例えば、水、エタノール、及びポピドンヨード、並びに必要に応じてその他の成分を適宜混合することにより、調製することができる。
本開示の組成物は、例えば、ポンプ容器等に収容したポンプスプレー製品やトリガースプレー製品としたり、さらに、不織布、紙、布等に含浸して拭き取りタイプの製品とすることもできる。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term ″comprising″ includes ″consisting essentially of” and ″consisting of.″)。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
表1に示す組成に従い、各成分を適宜混合して液体組成物を調製した。なお、表1に示す各成分の値は質量%を示す。
【表1】
そして、得られた液体組成物25gを静置保管し、製造直後(初期)、1ヶ月後、2ヶ月後、及び3ヶ月後に、各液体組成物に含まれるヨウ素量(濃度:ppm)を、チオ硫酸ナトリウム溶液を用いたヨウ素滴定法により測定した。結果を
図1に示す。
エタノールの含有量が60質量%以上であることにより、ヨードの経時的な減少が顕著に抑制される(
図1におけるグラフにおける、右肩下がりの下がり具合が小さくなる)ことがわかった。さらには、エタノールの含有量が85質量%以上になると、2ヶ月以降のヨードの減少がほぼ起こらなくなることもわかった。
また、実施例1において、ポビドンヨード含有量を0.03質量%とし、水含有量を12.97質量%とした液体組成物も調製し、実施例1aとした。実施例1及び実施例1aの液体組成物(除菌剤)について、除菌効果を測定した。なお、除菌効果は、試験菌懸濁法に準じ、次のようにして測定した。
[除菌効果測定方法]
試験菌液(約10
7個/mL)0.05mLにモデル汚れ0.05mLを加えた。これに除菌剤1gを加えて混合した。15秒後および30秒後にLP希釈液8.9mLを加えて混合した。その1mLを採取して、寒天平板混釈法により生菌数を測定した。なお対照については、除菌剤の代わりに滅菌生理食塩水1mLを混合したのち、接種直後、30秒後に生菌数の測定を行った。また、モデル汚れとしては、牛血清アルブミンCohn Fraction Vの3%水溶液を、ろ過滅菌したものを用いた。また、LP希釈液としては、ポリペプトン 1g、エッグレシチン 0.7g、ポリソルベート80 20g、精製水 980mLを混合したものを用いた。
結果(活性値)を表2に示す。活性値が2以上の場合、十分な除菌効果が奏されていると判断することができる。
【表2】
また、実施例1の液体組成物について、インフルエンザウイルス及びネコカリシウイルスの不活化活性をTime-Kill試験法により測定した。
実施例1の液体組成物は、作用時間1分又は5分のいずれであっても、インフルエンザウイルス感染価(PFU/mL)110000を一日で検出限界(100PFU/mL)以下に落とすことが確認できた。また、さらに、実施例1の液体組成物は、作用時間1分又は5分のいずれであっても、ネコカリシウイルス感染価(PFU/mL)155000を一日で検出限界(100PFU/mL)以下に落とすことが確認できた。
また、実施例1の液体組成物について、ヒトコロナウイルス(Human Coronavirus 229E)に対する抗ウイルス効果を、抗ウイルス性試験ISO18184準拠試験にて検討した。すなわち、実施例1の液体組成物0.1mLが入ったバイアル瓶にヒトコロナウイルスを添加して25℃にて保ち、5分後にSCDLP培地を8mL加え、ヴォルテックスで1分間×3回抽出後4℃に保ち、その後MRC-5細胞を用いたプラークアッセイ法により感染価を測定した。
実施例1の液体組成物を5分作用させた際、感染価は4.0×10
3であり、対象(実施例1の液体組成物の代わりにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いたもの)では感染価は3.1×10
6であった、感染価が10の2乗以上低下した場合、抗ウイルス効果があると判断することができることから、実施例1の液体組成物は十分な抗ヒトコロナウイルス効果を有することが分かった。